説明

プラスチック製ノズルキャップ

【課題】医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップであって、プラスチック製でありながら、シリンジのルアロック部に強固に接合することができるうえ、医薬品の使用期限にわたって使用し続けた場合も、高い密封性も保持することができる耐久性にも優れるプラスチック製ノズルキャップを提供すること。
【解決手段】シリンジノズルの外周面に対峙して形成されたルアロックと係合する構造を有する脚部、該シリンジのノズルの先端部と接触し密封性を保持する曲面である内腔天面部、および、前記脚部の上側に設けられた、プラスチックシリンジと該ノズルキャップが係合した状態で該ルアロックの上側に突出する、該ノズルキャップの着脱操作部を備えてなることを特徴とするプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップに関し、詳しくは、シリンジのルアロック部に強固に接合することができるうえ、高い密封性も保持することができるプラスチック製ノズルキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の容器兼注射器として使用されているプレフィルドシリンジ(既充填注射器)は、その利便性から、近年、需要が増加している。プレフィルドシリンジは、一般に、一方の端部に注射針を装着するために形成されたノズルと他方の端部に開放端が形成されている略円筒状のシリンジ外筒、シリンジ外筒の開放端を密封しシリンジ外筒内を摺動可能な略円柱状のピストン、該ピストンと係合してピストンの摺動操作を可能とするプランジャーロッド、及び、シリンジ外筒のノズルを密封するための、一方の端部が閉鎖されている略円筒状のノズルキャップによって構成されている。このプレフィルドシリンジは、シリンジ外筒にピストンとノズルキャップが係合されることにより形成されるシリンジ外筒の内部空間に薬液を保存する。
【0003】
プレフィルドシリンジは、中の薬液が使用されるまで、その密封性を保持する必要があり、医薬品は数年から5年程度の使用期限が設けられることが多い。よって少なくともその間、その密封性が保持される必要がある。一方、医薬品の保管や輸送の条件は様々で、高温にさらされるもの、極低温で保管されるもの、加圧下や減圧下におかれることもある。医薬品自体ももちろん、プレフィルドシリンジの構成材もその様な状況下では体積の膨張や収縮は避けられず、またその膨張率、収縮率もその材料によって異なる。そのような状況下においても密封性を保持することができるプレフィルドシリンジが要求されている。プレフィルドシリンジが密封性を保持するためには、ピストンやノズルキャップがシリンジ外筒とどのような状況においても安定的に密着していることが必要であるが、シリンジ外筒内に摺動可能に挿入されているピストンに対して、ノズルキャップはシリンジのノズルを外側から覆う形状のものであり、ピストンよりも密封性の保持が難しい部品である。このため、プレフィルドシリンジにおいて、ノズルキャップの密封性を向上させることが待望されている。
【0004】
従来、ノズルキャップは、その形成材料としてゴム系材料が使用されてきた。例えば、特許文献1に記載のノズルキャップはその構成材料として、ブチルゴムや塩素化ブチルゴムが挙げられており、特許文献2に記載のルアー栓体は、シリコーンゴムからなることが記載されている。近年、加工性に優れることから特許文献3に記載の先端キャップのように、樹脂材料からなるノズルキャップについての提案もあり、実用化もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008−59863号パンフレット
【特許文献2】特開2002−153539号公報
【特許文献3】特表2007−507308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、密封性をより向上させる観点からすると、上記したゴム系材料からなるノズルキャップの場合は、そのゴム弾性から密封性に優れる反面、シリンジノズルとの係合もゴム弾性と摩擦抵抗に頼らざるを得ないという課題がある。また、上記した従来の樹脂材料からなるノズルキャップでは、シリンジノズルとの係合をプラスチック同士の螺合により確保できるが、その可撓性、すなわちノズルキャップ密封性を確保するために十分な弾性を付与するために、20〜50重量%もの熱可塑性エラストマーの添加を必要としており、下記の課題を生じる。このような多量のエラストマーを含有したプラスチックを用いる場合、エラストマーからの溶出物を完全に防ぐことはできないという別の課題を生じるおそれがある。また、密封性を保持する期間が長くなると、その期間中、応力を受け続けることによって材料自体が塑性変形を起こす、いわゆる応力緩和が生じることが知られており、この場合は密着性が損なわれるため、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップであって、プラスチック製でありながら、シリンジのルアロック部に強固に接合することができるうえ、医薬品の使用期限にわたって使用し続けた場合も、高い密封性も保持することができる耐久性にも優れるプラスチック製ノズルキャップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、[1]医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップであって、該シリンジのノズルの外周面に対峙して形成されたルアロックと係合する構造を有する脚部、該シリンジのノズルの先端部と接触し密封性を保持する、0.6〜12.0の曲率半径を有する曲面を備えてなる内腔天面部、および、前記脚部の上側に設けられた、プラスチックシリンジと該ノズルキャップが係合した状態で該ルアロックの上側に突出する、該ノズルキャップの着脱操作部を備えてなることを特徴とするプラスチック製ノズルキャップを提供する。
【0009】
また、本発明の好ましい形態としては下記のものが挙げられる。すなわち、[2]上記脚部の外周に、プラスチックシリンジのルアロック部に螺合係合するための、ねじ、または、突起が設けられているプラスチック製ノズルキャップ、[3]上記内側天面部側面に、さらにシリンジノズルのガイドが形成されているプラスチック製ノズルキャップ、[4]その形成材料が、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及び環状オレフィンからなる群から選ばれるいずれかの樹脂であるプラスチック製ノズルキャップ、および[5]その形成材料が、70%以上の可視光透過率(400nm〜800nm)を有する光線透過性樹脂であるプラスチック製ノズルキャップを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップであって、シリンジのルアロック部に強固に接合することができるうえ、長期間にわたって使用し続けた場合にも高い密封性を保持することができるプラスチック製ノズルキャップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一例のプラスチック製ノズルキャップの概略図
【図2】図1に示したプラスチック製ノズルキャップの断面図
【図3】本発明の別の一例のプラスチック製ノズルキャップの断面図
【図4】図1に示したプラスチック製ノズルキャップとシリンジ外筒を組み合わせた状態の断面図
【図5】本発明の一例のプラスチック製ノズルキャップのシリンジとの組み合わせ例の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明を実施するための最良の形態を示す図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に本発明の一例のプラスチック製ノズルキャップ1の概略図、図2に該ノズルキャップ1の断面図を示した。また、図5は、図1に示したプラスチック製ノズルキャップを、シリンジ外筒の先端にあるルアロック部に螺合係合させる様子を示した概略図であり、図4は、シリンジ外筒の先端にあるルアロック部にノズルキャップが螺合係合した状態を示す断面図である。
本発明のノズルキャップ1は、図1及び図4に示したように、シリンジノズル21の外周面23に対峙して形成されたルアロック24と係合する構造を有する脚部11、該シリンジノズル1の先端22と接触し密封性を保持する曲面である内腔天面部14、および、前記脚部11の上側に設けられ、シリンジ外筒2と該ノズルキャップ1が係合した状態で該ルアロック24の上側に突出する着脱操作部12を備えてなることを特徴とする。また、図2に示したように、内腔天面部14に隣接する内腔側面端部16にガイド17が形成されていることが好ましい。図3は、このガイド17の形状を図2に示したものとは別の形状にした他の実施例の断面図である。
【0013】
図2に示したように、脚部11はシリンジのノズル先端22を挿入可能な内腔13を有し、該内腔13の天面にあたる部分に、凸の曲面状を有する内腔天面部14が形成されている。該内腔天面部14は、0.6〜12.0mm、より好ましくは1.3〜8.1mmの曲率半径を有する曲面を備える。曲率半径が0.6mmよりも小さいと内腔天面部14がノズル21の先端開口部にほぼ入り込む形状となり、ノズルキャップ1の着脱の際にこの部分が破損して異物となる虞が否定できないので好ましくない。一方、12.0mmよりも大きいとノズル先端22との接触面がほぼ平坦となることから、ノズル先端22のわずかな寸法誤差で漏れを生ずる虞が高くなるので好ましくない。曲率半径が1.3〜8.1mmの範囲であれば、シリンジノズル21の先端開口部の内径が1.0〜2.5mmの範囲において必ず内腔天面部14の曲面が先端開口部の内縁と接触し、より安定して密封性を保持することが確認されている。
【0014】
なお、内腔天面部14の曲率半径がノズル先端の径よりも小さいものについては、内腔天面部の中心に同曲率半径を有する半球状突起を設け(不図示)、該半球状突起とノズル先端を接触させる形状とした。従って、内腔天面部に突起を設けない、内腔天面部全体を一定の曲率半径を有する曲面形状とするには、内腔天面部の曲率半径を内腔天面の直径の半分以上とすればよい。例えば、後述するように、本発明の一例において内腔天面の直径を3.9mmとしているが、その例における最も好ましい内腔天面の曲率半径は1.95〜8.1mmの範囲となる。一方、先に挙げた特許文献1や特許文献3等にみられる、内腔天面に設けたノズル先端開口部に挿入して密封性を担保するための突起は、本発明においては不適である。上述したように、本発明のノズルキャップではこのような突起は破損して異物となる虞があるからである。このような突起は、柔軟性の高い材料でノズルキャップを製造する場合の密封性の確保に有効な手段であるが、本発明者らの検討によれば、プラスチック製ノズルキャップにおいては有効ではなく、破損して異物となるという、医薬品の用途においては絶対に避けなければならない事態を生じる虞がある。しかし、該突起の径がノズル先端開口部の径よりも十分に小さい場合には、破損の虞が少ないため本発明においても設けることができる。この場合、この突起が密封性の確保に寄与しないことはいうまでもない。
【0015】
図4は、図1に示したプラスチック製ノズルキャップを、シリンジ外筒の先端にあるルアロック部に螺合させた状態の断面図であるが、このように、内腔側面15はシリンジのノズル外周面23と必ずしも接触する必要はなく、むしろノズル外周面23に傷が付くことを防ぐ目的から、これらは接触しない形状であることが好ましい。ただし、内腔天面部14に隣接する内腔側面端部16に、ノズル外周面23の先端部付近と接触してノズルキャップ1とシリンジノズル21との位置を調整するためのガイド17を設けることが好ましい。また、このガイド17は、図2に示したようにノズル外周面23の先端部付近の全周を一定の幅で取り囲むリング状に形成されていてもよいし、図3に示したように全周を3〜5等分する位置に突起状に形成されていてもよい。これらのガイド17は内腔側面15からの高さを0.3〜1.0mm程度、内腔天面からの幅を0.5〜3.0mm程度とすることが好ましい。このガイド17の高さは、多くの場合、内腔側面15とノズル外周面23との間の隙間の距離と一致する。なお、ガイド17が突起状である場合の突起の太さは0.3〜1.0mm程度であることが好ましい。
【0016】
ガイド17部分の内径を均一径とすることも好ましい実施形態である。シリンジのノズル外周面23には国際規格形状(ISO594/1またはISO594/2)に定められているように、ノズル21の先端方向に向かって縮径するようテーパーがつけられている。このテーパーのついたノズル外周面23とテーパーのない均一径のガイド17とを密着させることにより、内腔天面とノズル先端22との位置をより正確に規定することができる。
【0017】
図3は全周を4等分する位置に、高さ約0.4mm、幅約1.5mm、太さ約0.4mmの半円柱状の突起を形成した例である。この例では、内腔側面15がシリンジノズル21の形状に合わせて、内腔天面方向に縮径する約6度のテーパーをつけて形成されており、その内腔側面の突起状ガイド17が形成されている部分の内接円は約3.9mmの均一径となるように形成されている。突起の形状は半円柱状に限らず、三角柱状、四角柱状等であってもよい。また高さや幅および太さも均一である必要はなく、ノズル先端22を内腔天面部14の中央へガイドし、固定できるよう適宜設計することができる。
【0018】
内腔13の寸法は脚部11の係合機構にもよるが、国際規格形状(ISO594/1またはISO594/2)のシリンジノズル21を挿入できる寸法であり、深さ5〜8mm、径は3.5〜5mm程度に設計されることが好ましい。また、内腔13全体にシリンジのノズル21に設けられているテーパー(約6度)と同じか、それに近い角度のテーパーを設けることも好ましい。ガイド17部分の内径はシリンジノズルの先端外径と同じかやや大きい3.0〜4.5mm程度が好ましく、均一径であっても、ノズル21に設けられている約6度かそれに近い角度のテーパー状に形成されていてもよい。
【0019】
脚部11の側面に形成されるシリンジのルアロック24との係合手段は、ルアロック24に形成されている雌ねじ25と強固に接合可能であればどのような形状であっても構わない。例えば、図2、図3に示した例のようにルアロック24の雌ねじ25に螺合する雄ねじ18や突起が挙げられる。これらの係合機構は、ノズルキャップ1と一体に成形されていても、別に成形されたものが組み合わされていても構わないが、プレフィルドシリンジが使用されるまで荷重を受け続ける部分であるため、十分な強度と耐変形性を有している必要がある。なお、図2や図4に示した例のように、雄ねじ18の上面及び雌ねじ25の下面、すなわちノズルキャップ1とシリンジ外筒2とが螺合した状態で接する雄ねじと雌ねじの面をそれぞれシリンジの軸方向と垂直な面とすると、ねじの緩みが生じづらくなるので、好ましい。
【0020】
着脱操作部12は、通常、脚部11の上側に一体に成形されたノズルキャップ1の着脱操作を行うための突出部分をいう。この部分の形状は、ノズルキャップ1の着脱操作が容易に行うことができれば、どのような形状であっても構わない。例えば、図2に例示したように、その外周に指の滑り止めとなるローレット19が形成されている円筒形状であることが好ましい。
【0021】
本発明に用いるプラスチック製ノズルキャップ1の材質は、可視光透過率が70%以上である、例えば、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンなどが好適に使用される。
特に、材料からの溶出や応力緩和への影響から、軟化剤やゴム、エラストマーといったポリマー以外の成分は、10%以下、より好ましくは5%以下、最も好ましいのは3%以下であることが好ましい。また、こういった第三成分を含むと、材料自体の透明性も損なわれる傾向がある。
【0022】
図5に本発明のプラスチック製ノズルキャップ1とシリンジとの組み合わせ例の概略図を示した。本発明に係るノズルキャップ1は、シリンジノズル21の外周にルアロック24が形成されているシリンジに使用されるものであり、ノズルキャップ1以外に、シリンジ外筒2、プランジャーロッド3と組み合わされて使用されるものである。
【0023】
本発明に用いられるシリンジの材質は、ノズル先端22の寸法精度が高い、プラスチック製である必要がある。一部、寸法企画を厳しく管理したガラス製シリンジも使用可能ではあるが、歩留まりが悪く、製品保証も難しいうえ、ガラスはプラスチック部品との摩擦抵抗が低いため、接合部分での緩みが発生しやすいという問題がある。シリンジの材質としては、一般にシリンジの材料として使用されている材料が使用できるが、寸法精度、耐熱性、化学的安定性、透明性等の面から、環状オレフィン系材料が特に好ましい。
【0024】
[実施例1、2]
ポリメチルペンテン(三井化学株式会社製DX845)を用いて、インジェクション成形により、着脱操作部の外径約10mm、同長さ約10mm、脚部外周直径約7mm、同長さ5mm、内腔の開口側の直径約4.8mm、同天面側直径4.3mm、同深さ約7mm、ガイド部(リング状ガイド)の内径3.9mm(均一径)、長さ1.5mm、内腔天面部の曲率半径5.0mmである、図2に示した形状のノズルキャップを作製し実施例1とした。また、ガイド部を形成しない以外、実施例1と同様に作製したノズルキャップを実施例2とした。該ノズルキャップをシリンジ外筒(株式会社大協精工製CZシリンジBarrel 1LL−S)、およびピストン(同社製1mL Piston NF−2)と組み合わせ、以下の各評価を行った。各評価については、即時試験とともに6ヶ月間静置したものについて試験を行った。
【0025】
[実施例3]
実施例1のノズルキャップのリング状ガイドを、図3に示した突起状とした以外は実施例1と同様としたノズルキャップを作製した。なお、ガイドの寸法等も図3と同様に作製した。
【0026】
[実施例4〜7]
実施例2のノズルキャップの内腔天面部の曲率半径をそれぞれ、0.6、1.3、8.1、12.0mmとした以外は実施例2と同様としたノズルキャップを作製した。そして、これらをそれぞれ実施例4〜7のノズルキャップとした。
【0027】
[比較例1〜3]
実施例1のノズルキャップの内腔天面の曲率半径を、それぞれ0(平坦)、0.5、12.5mmとした以外は実施例1と同様としたノズルキャップを作製した。そして、これらをそれぞれ実施例1〜3のノズルキャップとした。
[参考例4、5]
実施例1及び実施例3のノズルキャップの作製に用いたポリメチルペンテンに、SEBSエラストマー(旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221)を20重量部混合した材料を用いた以外は、実施例1及び実施例3と同様としたノズルキャップを作製した。そして、これらをそれぞれ参考例4、参考例5のノズルキャップとした。
【0028】
<評価>
上記で得た実施例と比較例の各ノズルキャップを、プラスチックシリンジのノズルにそれぞれ装着し、その気密性について下記のようにして評価を行った。
【0029】
[気密性試験]
滅菌済み注射筒基準の漏れ試験を参考に、それぞれ10個の各ノズルキャップを用い、以下の手順にて、密封性の確認試験を行った。
シリンジの内容積が1mLの位置までピストンをシリンジ外筒内に挿入し、各ノズルキャップをシリンジに手締めにて、ノズルキャップが回転しなくなるまで螺合した。
所定の期間の経過後、上記シリンジを、ノズルを下に向けた状態で水を張った容器にシリンジの胴部の半分程度までを水没させた状態で固定し、プランジャーロッド(株式会社大協精工製Plunger 1−2)を螺合して、オートグラフ(島津製作所製AG−5kNIS MS形(装着ロードセル定格荷重100N))を用いてプランジャーロッドを内容エアーの容積が0.4mLの位置まで押し込んだ。押し込み速度は100mm/minとした。
その状態で、15秒間保持し、シリンジとノズルの螺合部からエアー漏れの有無を目視にて確認した。試験数は10とし、各ノズルキャップについて、エアーの漏れが認められた数を表1、2に示した。
【0030】
[加熱式気密性試験]
それぞれ10個の各ノズルキャップを用い、以下の手順にて、加熱式気密性の確認試験を行った。本試験では、エアーの漏れが認められたノズルキャップの個数で評価したが、その合格基準を2/10以上の漏れを認めないこととした。
シリンジの内容積が1mLの位置までピストンをシリンジ外筒内に挿入した。その後、ノズル先端の開口部からシリンジ外筒内へ0.1%メチレンブルー溶液を1mL注入し、各ノズルキャップをシリンジに手締めにて、ノズルキャップが回転しなくなるまで螺合した。
所定の期間の経過後、上記シリンジをノズルを下に向けた状態で胴部を軽くはじいてノズル内部のエアーを除去し、水を張った容器にノズルを下に向けた状態でシリンジの胴部の半分程度までを水没させた状態で固定した。
上記シリンジを、容器ごとレトルト殺菌器(平山製作所製LM−42MII)に入れ、121℃で30分間加熱した。加熱終了後、レトルト殺菌機より容器を取り出し、容器の水の着色を目視にて確認し漏れの判定を行った。試験数は10とし、各ノズルキャップについて、エアーの漏れが認められた数を表1、2に示した。
【0031】

【0032】

【0033】
上記したように、本発明の実施例のプラスチック製ノズルキャップでは、初期においてはもちろんのこと、長期間、加熱して行った過酷な条件下においても高い気密性を示すことが確認され、プラスチックシリンジに装着した場合に高い密封性が長期間保たれるプラスチック製ノズルキャップとなることがわかった。また、比較例のプラスチック製ノズルキャップの試験結果から、内腔天面部の形状が気密性に影響を与えていることが確認された。さらに、エラストマーを含有させた材質に変えた参考例のプラスチック製ノズルキャップにおいても、短期間の使用であれば、気密性に関して何らの問題もないことを確認した。しかし、過酷な条件下、長期間にわたっての気密性試験の結果は、実施例のプラスチック製ノズルキャップの場合よりも劣っており、このような場合にも気密性を維持できるものにするためには、ノズルキャップの材質を考慮する必要があることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップにおいて、プラスチック製でありながら、シリンジのルアロック部に強固に接合することができるうえ、長期間にわたって使用し続けた場合にも高い密封性を保持することができるプラスチック製ノズルキャップが提供される。
【符号の説明】
【0035】
1:ノズルキャップ
2:シリンジ外筒
3:プランジャーロッド
11:脚部
12:着脱操作部
13:内腔
14:内腔天面部
15:内腔側面
16:内腔側面端部
17:ガイド
18:雄ねじ
19:ローレット
21:ノズル
22:ノズル先端
23:ノズル外周面
24:ルアロック
25:雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品に使用されるプラスチックシリンジ用のプラスチック製ノズルキャップであって、該シリンジのノズルの外周面に対峙して形成されたルアロックと係合する構造を有する脚部、該シリンジのノズルの先端部と接触し密封性を保持する、0.6〜12.0の曲率半径を有する曲面を備えてなる内腔天面部、および、前記脚部の上側に設けられた、プラスチックシリンジと該ノズルキャップが係合した状態で該ルアロックの上側に突出する、該ノズルキャップの着脱操作部を備えてなることを特徴とするプラスチック製ノズルキャップ。
【請求項2】
上記脚部の外周に、プラスチックシリンジのルアロック部に螺合係合するための、ねじ、または、突起が設けられている請求項1に記載のプラスチック製ノズルキャップ。
【請求項3】
上記内側天面部側面に、さらにシリンジノズルのガイドが形成されている請求項1又は2に記載のプラスチック製ノズルキャップ。
【請求項4】
その形成材料が、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及び環状オレフィンからなる群から選ばれるいずれかの樹脂である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラスチック製ノズルキャップ。
【請求項5】
その形成材料が、70%以上の可視光透過率(400nm〜800nm)を有する光線透過性樹脂である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラスチック製ノズルキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34567(P2013−34567A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171674(P2011−171674)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000149000)株式会社大協精工 (31)
【Fターム(参考)】