説明

プラスチック製廃棄用品の圧縮、減容方法およびそれに用いる装置

【課題】
本発明は、アスベスト処理などに用いられたシート類、防御服などのプラスチック製廃棄用品を圧縮、減容して、ビニール袋に密封する場合にはその充填度を高くするための方法と装置に関する。
【解決手段】
シートを折畳む、あるいは巻き込んだものを圧縮するための押さえ具が、加熱されない部分と、120℃以上に加熱された部分とからなり、両方を用いて圧縮した後、まず、加熱された部分による圧縮状態をはずした後、30秒以上経過してから加熱されない方押し具の圧縮状態をはずす。また、押さえ部分が棒状、管状あるいは板状のものからなり、加熱されないものと加熱されたものとが交互に配置されている。装置は押さえ具が加熱されないもの、加熱されたものが各々のグループとして一体に動けるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト剥ぎ取りの作業場などに用いられたシート類や防御器具などのプラスチック製廃棄用品を、作業現場で圧縮、減容するための方法およびそれに用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは,耐熱性、断熱性など工業的に優れた特性を持っているために、建築関係では、吹き付け材として広く採用されてきた。しかし、最近になって、アスベストに起因すると思われる肺ガン・中皮腫患者が増加して大きな社会問題になっている。これまで使われたアスベスト含有吹き付け物には、吸音・結露防止用にはアスべスト約70%、耐火被覆用にはアスべスト約60%、それ以外のアスベスト含有吹き付け材としては、アスベスト30%以下あるいは5%以下などがある。現在はアスベスト含有量が0.1%以上のものは使用禁止になっている。しかし、すでに施工されているものについては、アスベストの飛散を完全に防止するか、あるいはアスベスト含有物を取り除き安定化することが望まれている。後者の場合、液体などで湿潤して飛散を防止しながら剥ぎ取り作業が行われるが、この作業時にアスベスト繊維の飛散を抑制するために多量のシート状用品や、作業者を守るための防御服や防御用品が用いられる。そして、その作業終了とともに、その使用ずみ用品は全て、アスベスト繊維の付着のおそれがあるため、たとえばビニール袋に押し込んで密封し、管理型最終処分場に埋め立てる方法が取られてきた。しかし、ビニール袋に押し込んでも見かけ比重を十分に上げることができず、輸送や埋め立ての費用を高くするという問題がある。また管理型処分場の余力が少なくなってきている。そこで、安全が確保されることが大前提であるが、この廃棄用品の容積を極力減らすことが望まれている。
【0003】
一般的なプラステック製廃棄用品の減容方法としては、機械的に圧縮してバンドで縛る方法(特許文献1)、シート状のものをロールなどで巻き取る方法(特許文献2)などがある。また、アスベスト処理に用いられた廃棄用品については、本発明者は、すでに、加熱プレスを用いて溶融、圧縮する方法(特許文献3)を示している。その場合、圧縮物から加熱プレスをはずした時に表面の軟化・溶融部が硬化しない時期に、内部から膨張力が働いて、圧縮物の表面が割れやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2007−84080号公報
【特許文献2】特開平8−324852号公報
【特許文献3】特願2006−317224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アスベスト処理に用いられたプラスチック製廃棄用品を、主体がシート類であることを生かして、効率的に圧縮、減容し、最終的にビニール袋に密封する場合にはその全体としての見掛け比重を大きくし、さらにビニール袋を用いないでも、付着しているおそれのあるアスベスト繊維の飛散を完全防止できるようなものにすることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための第1の手段は、圧縮のための押さえ具が、加熱されないものと、120℃以上に加熱されたものからなり、両方を用いて圧縮した後、まず、加熱された部分による圧縮をはずした後、30秒以上経過してから、加熱されない方の圧縮をはずすことである。
【0006】
第2の手段は、0005において押さえ具が棒状、管状あるいは板状のものからなり、かつ加熱されないものと加熱されたものが交互に配置されることである。
【0007】
第3の手段は、0005,0006の作業を実施するために、複数の押さえ具のうち、加熱されないもの(上の部分)、および加熱されたもの(上の部分、下の部分)の3つのグループに属するものがグループごとに一体に動けるように連結された装置を用いることである。
【発明の効果】
【0008】
これらの方法および装置を用いることによって、アスベスト含有物処理の作業などに用いられたプラスチック製廃棄用品の圧縮、減容を行い、見かけ比重を上げるとともに比較的形が揃った成型物として、ビニール袋に密封する場合も充填度(全体としての見掛け比重)を上げることができ、また、ビニール袋を用いないでも、付着しているおそれのあるアスベストの飛散を完全に防止できるものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の対象物は、アスベスト含有物の剥ぎ取りなどの作業に用いられたプラスチック製のシート用品や作業者を守るための防御服や防御用品である。また、この処理を行う場所は、アスベスト含有物の剥ぎ取りなどの作業が行われた場所である。本処理のプロセスを図1に示す。圧縮、減容を行う前に、処理対象物がシート状のものである場合は、最後に詰めるビニール袋の大きさを考慮して、シートを折畳む、あるいは巻き取る。また、対象物が使用後の防御服や防御用品がグチャグチャにされたものである場合には、たとえば、これらを廃棄シート用品で包み込むようにすることが望ましい。
【0010】
このようにして得られた、少なくとも外部は廃棄シート用品で包まれた折り畳み物あるいは巻き取り物、あるいはその他の形状のものは、処理対象物1は圧縮・軟化・溶融・硬化の処理を押さえ具を用いて行われる。そのための押さえ具は処理対象物1を挟み込むために、上の部分4、6と下の部分5,7から成り立っている。また、押さえ具は加熱されないもの4、5と、加熱されたもの6、7に分かれる。まず、加熱されない押さえ具は、上部から処理対象物に接する部分は、棒状、管状あるいは板状で、鉄などの金属で作られている。その本数は、2本あるいはそれ以上の複数本である。この複数本の棒状、管状あるいは板状のものが、図4の4に示すように、両端で一体に連結されており、処理対象物1を圧縮状態にすること、あるいは、圧縮状態からはずすことを、1つの操作で行うことができる。処理対象物1の圧縮のためには、上部の押さえ具4が、回転中心9を支点として下方に移動させる。そのための力は、たとえば取っ手10に人力を加えるか、モーター動力を用いか、または歯車の回転を利用する。なお、加熱されない押さえ具の下部のもの5は図4に示すように架台に固定されていてもよい。
【0011】
押さえ具には、0010で述べた加熱を行わないもの4,5とは別に、処理対象物の1部を軟化、溶融させるために、120℃以上に加熱されるもの6,7が用いられる。処理対象物1に接する部分は本数が、加熱を行わないものの本数より1本少なく、1本、あるいは2本以上の棒状、管状あるいは板状物からなり、ステンレス鋼などの金属で作られる。この部分の加熱は、電気などを用いて行われる。たとえば、中空にして、その中にニクロム線13などの発熱体を装入する方法や、直接、通電して発熱させる方法、発熱体16を裏面に貼り付ける方法などがある。いずれの場合にも、押さえ具表面の温度を検出して、その温度が、処理対象のプラスチック用品の軟化点より10℃以上、60℃以下、高くなるように通電量を調整する。上の部分、下の部分の各々複数のものを一体化して1つの操作で動けるようにすることは、0010で述べた加熱しない押さえ具の上の部分について述べたのと同じである。このそれぞれ一体化された上の部分と下の部分が鋏のように回転できる連結材18でつながれていてもよい。また、上の部分、下の部分が別々に、装置の架台に固定された回転中心9に取り付けてもよい。加熱されない押さえ具4,5と、加熱された押さえ具6,7は、処理対象物1に接する部分が交互になるように設置されている。
【0012】
0010で述べた、加熱されない押さえ具4,5で処理対象物1を圧縮した状態で、次に加熱された押さえ具6,7を処理対象物1に押し当て圧縮する。この加熱された押さえ具6,7を処理対象物1に押し当てて30秒以上保持して、処理対象物1の1部を軟化、溶融させる。この場合に、必要に応じて、加熱部に窒素ガスを吹きつけて、過度の加熱によってプラスチックから発生したガスによる発火を予防することもできる。ついで、加熱されない押さえ具4,5による圧縮はそのままにした状態で、加熱された押さえ具6,7を移動させて圧縮状態をはずす。この状態を30秒以上、のぞましくは70秒保つことによって、処理対象物1の軟化、溶融された部分の温度がさがって、その部分の強度が増すために膨張力による割れ発生を防止できる。この時間と、割れ発生数の関係を図2に示す。この処理によって、処理対象物の表層部に軟化、溶融、硬化を経て形成されたバンド状の部分3に割れを発生させないようにして、処理対象物を締め付ける力を持たせることができる。その後で、加熱されない押さえ具4,5による圧縮をはずす。なお、必要に応じて、加熱されない押さえ具4,5による圧縮をはず前に、処理後の成型物にバンドを掛けることを加えることもできる。
【0013】
0012まで処理を終わった処理対象物は、その段階で装置からとりはずしてもよいが、必要に応じて、位置を横にずらすか、また、縦横を変えてから、0010〜0012の処理を繰り返すことができる。0012で加熱の処理を終わると、図3(イ)に示すような成型物が得られるが、横にずらして加熱の処理を繰り返すと、図3(ロ)に示すように軟化、溶融、硬化を経て形成されたバンド状の部分3の数をふやすことができ、また、縦横を変えてから加熱の処理を繰り返すと図3(ハ)に示すようなものが得られ、いずれも、全体として処理対象物を締め付ける力を増して、見掛け比重を上げることができる。特に、処理対象物の両端部に、加熱された押さえ具6,7をあてる処理を行うと、処理対象物1をシートで密封した状態にすることができる。
【0014】
0009〜0013の処理で、最終的に封入するビニール袋の大きさを考慮した比
較的形がそろった成型物が得られる。なお、この成型物の端部が尖った状態になって
いると、ビニール袋に詰める時に袋を破損するするおそれがある。それを防止するた
めには、尖がった部分を加熱された押さえ具6などに触れさせて軟化、溶融すれば容
易に丸めることができる。そして、ビニール袋に詰め、密封し、輸送して最終処分場
に埋め立てる。
【0015】
なお、この方法によって、ビニール袋に詰めないでも、付着しているおそれのあるアスベストの繊維の飛散を完全に防止した成型物にすることも可能である。その場合には、アスベスト剥ぎ取り作業時にシートの面に印をつけておいて、0009の作業において、アスベスト繊維付着のおそれがある面を内側に折り込むこと、あるいは巻き取ること、および、0013において、成型物の両端部を加熱して圧着しておくことが必要である。これによって、そのまま輸送、埋め立てることも、技術的には可能になる。
【0016】
0010〜0013の処理を行うために用いる装置の1例を図4に示す。この装置は、処理対象物を加熱されない押さえ具4,5で圧縮し、それに加熱した押さえ具6,7を押し当てて圧縮し、ついで加熱された押さえ具6,7による圧縮をはずし、最後に加熱されない押さえ具4,5による圧縮をはずすという機能をする。架台部8は、作業者が、折り畳んだ、あるいは巻き取った、あるいはその他の形状の処理対象物1の取り付け、取り外し、あるいは横移動の作業をしやすい高さに設定する。この架台に、4種の押さえ具(加熱あり、なし、それぞれ上の部分、下の部分)が取り付けられ、加熱されない下の部分以外の押さえ具が、各々のグループとして一体に操作できるように連結されていることが特徴である。なお、加熱されない押さえ具の下の部分5は、板状で、間隔を置いて4枚、架台に固定されている。また、その上の部分は図4のように、4枚の板状のものが両端で棒20に溶接され、片方は回転中心9に取り付けられ、他方は、取っ手10に取り付けた綱12をモーター11で巻き取ることで対象物に圧縮力を加えることができ、その綱を緩めるとバネの力で上に戻るようになっている。一方、加熱された押さえ具の上部6は、ステンレス鋼管で内部にニクロム線ヒーター13が設置されている。一方、加熱された押さえ具の下の部分7は、溶融したプラスチックが垂れないように、図5に示すように、板状物の下面に板状の発熱体16を貼り付けた部分と、その両面に、断熱体18を介して取り付けたもの、複数個が両端で棒に溶接され、片方は回転中心9に取り付けられている。これを、処理対象物に押し当てる時は、取っ手10´を引き上げてフック19によって位置を固定し、はずすときは、そのフック19からはずす。なお、上、下の押さえ具の押さえの部分が加熱されないものと、加熱されたものが交互に配置されるようになっている。
【実施例1】
【0017】
処理対象物は、アスベストの剥ぎ取り作業に用いられたプラスチック廃棄用品で、全体としてシートの部分が92重量%、保護服、保護用品の部分が8重量%の構成である。これを圧縮して、最終的にビニール袋(50cm×90cm)に入れて密封する。シートは幅が90cm、180cm、270cmの3種から成り立っている。そのシート部分だけを取り出し、幅が45cm前後、長さが45cm前後になるように折り畳んで端を接着テープでとめ、1つを2〜10kgのものにした。この状態の見かけ比重は、0.1〜0.2であった。図4の装置を用いて、上下、それぞれ加熱されない部分が5本、加熱された部分が4本の押さえ具を用いて圧縮した。加熱は上の部分は内部空間にニクロム線をセット、下の部分は加熱板を裏面に貼り付けたもので、表面温度を120〜140℃に調整し、処理対象物に加熱された押し具が接している時間が70秒、加熱された押さえ具を離してから加熱されない押さえ具を離すまでの時間が、45秒とした。この処理を終わった成型物を取り出した。成型物の見かけ比重は、0.6〜0.7であった。成型されたものをビニール袋に詰めた。全体として見かけ比重は0.5〜0.6であった。なお、比較として従来法でビニール袋に詰めたときの見かけ比重は0.08〜0.2であった。
【実施例2】
【0018】
実施例1と異なる点は、1回、圧縮・加熱の操作を行った後、処理対象物を横に50mmずらせて、圧縮・加熱の操作を繰り返した。得られた成型物の見かけ比重は、0.7〜0.8であった。この成型されたものをビニール袋に詰めた。全体として見かけ比重は0.6〜0.7であった。
【実施例3】
【0019】
実施例1で述べた処理対象物のうち、保護服、保護用品とシートの重量割合を1;5にして、保護服、保護用品をシートを折り畳むときに中に入れ込んだ。これをまず、実施例1で述べた処理を行い、ついで、実施例2の処理を行った。得られた成型物の見かけ比重は、0.6〜0.7であった。成型されたものをビニール袋に詰めた。全体として見かけ比重は0.5〜0.6であった。なお、比較として従来法でビニール袋に詰めたときの見かけ比重は0.05〜0.15であった。
【実施例4】
【0020】
実施例1で述べた処理を、加熱温度を140〜160℃に調整し、押さえ具が接している時間を50秒として行った。加熱部には窒素ガスを吹きつけた。これによって発火を防止しできた。得られた成型物の見かけ比重は、0.6〜0.7であった。
【実施例5】
【0021】
アスベスト剥ぎ取り作業時、アスベスト繊維が付着するおそれがシートの面をマークしておき、それが内側になるようにし、さらに、防護服にアスベスト剥ぎ取り物を貼り付けて実施2の方法で折り畳んだ。これを実施例1、2に述べた方法で、とくに端部に加熱された押し具があたるようにして、2回の圧縮、加熱の処理を行った。得られた成型物の見かけ比重は0.6〜0.7であった。この成型物を密閉された空間で振動機にかけて、雰囲気の空気試料を採取してアスベスト繊維の検出を試みたが、検出できず、成型物は密封状態にあることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の方法は、アスベスト関連作業に用いられたプラスチック製廃棄用品だけでなく、アスベストが付着しているおそれがある他のシート状廃棄物の処理にも用いることができる。また、農業用のプラスチック製シートの廃棄物の処理にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の処理フローを示す。
【図2】加熱された押さえ具による圧縮をはずしてから、加熱されない押さえ具による圧縮を続ける時間と、軟化・溶融・硬化を経た部分の表面に発生した割れの数との関係を示す。
【図3】本発明の処理によって得られた成型物の状況の例を示す。 (イ)1回処理(ロ)2回処理(横にずらせて)(ハ)2回処理(縦横を変えて)
【図4】本発明における圧縮、減容、硬化に用いる装置を示す。
【図5】加熱された下部の押さえ具の構造の例を示す。
【符号の説明】
【0024】
1.処理対象物
2.処理後の成型物
3.軟化、溶融、硬化を経て形成されたバンド
4.加熱されない押さえ具(上の部分)
5.加熱されない押さえ具(下の部分)
6.加熱された押さえ具(上の部分)
7.加熱された押さえ具(下の部分)
8.架台部
9.回転中心
10.10´;取っ手
11.モーター
12.綱
13 ニクロム線ヒーター
14.バネ
15.断熱体
16.裏面に貼り付けられた発熱体
17.ステンレス鋼板
18.連結材
19.フック
20.棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮のための押さえ具が、加熱されないものと、120℃以上に加熱されたものからなり、両方を用いて圧縮した後、まず、加熱されたものによる圧縮をはずし、30秒以上の経過後、加熱されないものによる圧縮をはずすことを特徴とするプラスチック製廃棄用品の圧縮、減容方法。
【請求項2】
請求項1において、押さえ具の押さえの部分が棒状、管状あるいは板状のものからなり、かつ加熱されないものと加熱できるものとが交互に配置されることを特徴とするプラスチック製廃棄用品の圧縮、減容方法。
【請求項3】
請求項1および2を実施するために用いるための、複数の押さえ具のうち、加熱されないもの(上の部分)、および加熱されたもの(上の部分、下の部分)の3つのグループに属するものが、グループごとに一体に動けるように連結されていることを特徴とするプラスチック製廃棄用品の圧縮、減容に用いる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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