説明

プラスチック鏡およびその製造方法

【課題】低コスト且つ高い生産性をもって製造できると共に、軽量且つ安全で、光反射率の高い高品質なプラスチック鏡、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック樹脂基板の表面に変性シリコーン層が形成され、当該変性シリコーン層上に銀薄膜層が形成されていることを特徴とするプラスチック鏡を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック鏡およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光反射率の高い鏡としては、透明なガラス基板の片面へ、アンモニア性硝酸銀水溶液を含む銀メッキ液をブドウ糖などで還元する無電解の銀鏡反応により、銀を析出させて銀皮膜を形成させたガラス製の鏡が、一般に知られている。
【0003】
このようにして形成したガラス製の鏡は、常に破損に伴う怪我の危険があるため、取扱いに細心の注意が必要である。さらに、ガラス板はあまり薄いと製造時の取扱いが困難であるため、ある程度の厚みが必要である。このため、特に大型品では重量が著しく増大し、その運搬、設置等に特別の配慮が必要となる。
【0004】
そこで、破損による怪我の危険や取扱いの困難性等を考慮して、プラスチック樹脂を基板としたプラスチック鏡が考えられている。このプラスチック鏡の製造方法としては、通常のガラス製の鏡を製造する際に一般的に用いられる銀鏡反応を利用した方法がまず考えられる。即ち、上述したように、アンモニア性硝酸銀水溶液を含む銀メッキ液をブドウ糖などで還元する無電解の銀鏡反応により銀被膜を形成する方法である。
【0005】
しかしながら、ガラス基板の場合と違い、この銀鏡反応をプラスチック樹脂基板表面で起こさせようとしても、銀被覆が容易にプラスチック表面で析出しない。そして、プラスチック樹脂基板表面に銀被覆が析出した場合であっても、析出面が荒く、鈍く曇った光反射率の低い銀被覆しかできない。さらに、当該銀被覆は、プラスチック表面にしっかり密着しておらず、水洗い程度で容易に剥がれてしまう。さらに、銀メッキ液をプラスチック基板表面に流しても、当該メッキ液がはじかれてしまい、プラスチック基板表面上に均一に広がらないので、大面積の均一な銀被覆を形成できないという問題もある。
【0006】
ここで、本発明者は、プラスチック樹脂の表面に界面活性剤を塗布した後、銀メッキ法により銀薄膜層を形成するという極めて簡単な方法によって光反射率の高い、ガラス製鏡と同程度の高品質のプラスチック鏡を作ることができることを提案した。さらに、シランカップリング剤の他に、シリカゾル等を添加した溶液を用いて、予めハードコートしたプラスチック樹脂を使用すると、銀の析出反応がハードコート面で進行しやすく、銀被膜の密着がよいことも提案した(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平06−38860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者のさらなる研究によると、プラスチック樹脂基板の表面に界面活性剤を塗布した後、銀メッキ法により銀薄膜層を形成する方法によってプラスチック鏡を作成した場合、プラスチック樹脂基板の種類や状態により、析出した銀の付着が良好な場合と不良な場合とが有り、当該銀メッキが安定しないという問題があった。さらに、当該析出した銀の付着が安定しないという問題は、曲がり難いという好特性を有するアクリル基板を用いた場合に顕著であった。この為、プラスチック樹脂基板としてアクリル基板等を用いる場合は、当該基板表面に、予めハードコートしておく必要があった。
ところが、予め、ハードコートしたプラスチック樹脂を使用して銀の析出反応を行う場合は、当該ハードコートしたプラスチック樹脂の入手が困難で、高コスト且つ生産性が低
いという問題があった。
本発明は、これらの問題点を解決するために成されたものであり、その解決しようとする課題は、多様なプラスチック樹脂基板が使用可能で、低コスト且つ高い生産性をもって製造できると共に、軽量且つ安全で、光反射率の高い高品質なプラスチック鏡、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明者が鋭意研究を行い、プラスチック樹脂基板上に変性シリコーンを塗布した後に、銀メッキ法により銀被膜を形成することで、軽量且つ安全で、光反射率の高い高品質なプラスチック鏡が、低コスト且つ高い生産性をもって製造できるという画期的な知見を得て、本発明を完成したものである。
【0010】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
プラスチック樹脂基板の表面に変性シリコーン層が形成され、当該変性シリコーン層上に銀薄膜層が形成されていることを特徴とするプラスチック鏡である。
【0011】
第2の発明は、
上記プラスチック樹脂基板が、メタクリル(PMMA)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、および、アクリロニトリル−スチロール共重合体(AS)樹脂から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第1の発明に記載のプラスチック鏡である。
【0012】
第3の発明は、
上記プラスチック樹脂基板が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリニトロセルロース、ポリ酢酸セルロース(CA)、および、ポリビニルアルコール(PVA)から選択される1種以上の樹脂フィルムであることを特徴とする第1の発明に記載のプラスチック鏡である。
【0013】
第4の発明は、
上記変性シリコーン層が、アクリル変性シリコーン、アラルキル変成シリコーン、フェニル変成シリコーン、フェノール変成シリコーン、ポリエーテル変成シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、モノアミン変性シリコーン、ジアミン変性シリコーン、ハイドロジェン変成シリコーンから選択される1種類以上の変性シリコーン層であることを特徴とする第1の発明に記載のプラスチック鏡である。
【0014】
第5の発明は、
プラスチック樹脂基板の表面に変性シリコーン層を形成し、当該変性シリコーン層上へ銀メッキ法により銀薄膜層を形成することを特徴とするプラスチック鏡の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[プラスチック樹脂基板]
本発明に用いるプラスチック樹脂基板として、メタクリル(PMMA)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリル−スチロール共重合体(AS)樹脂が好適に使用できるが、その他各種の透明に形成可能な樹脂も使用することができる。
【0016】
当該樹脂基板として、ガラスと同程度の色調を有するガラス色のプラスチック樹脂基板を用い、本発明に係る銀鏡反応を行うことで、ガラス製鏡とまったく同一の色調を有するプラスチック鏡が簡単に製造できる。
【0017】
一方、本発明に用いるプラスチック樹脂基板は板状に限られず、フィルム状に形成したプラスチック樹脂基板でもよい。この場合も、上述した板状プラスチック樹脂基板の場合と同様に、容易に高品質なプラスチック鏡を製造することができる。
この場合、プラスチック樹脂基板のフィルムの厚さとしては、0.02mm〜0.5mmが一般的であるが、他の厚さでもよい。
【0018】
フィルム状のプラスチック樹脂基板例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系フィルム、ポリニトロセルロース、ポリ酢酸セルロース(CA)等のセルロース系、ポリビニルアルコール(PVA)等からなるフィルムを上げることが出来る。
【0019】
[プラスチック樹脂基板の表面処理]
本発明に係るプラスチック樹脂基板の表面処理剤としては、変性シリコーンや変成シリコーンポリマーを含む表面処理剤が挙げられる。
変性シリコーンや変成シリコーンポリマーとは、シリコーンの骨格構造であるポリシロキサンの側鎖、末端に有機基を導入したものである。導入する有機基によって、アクリル変性シリコーン、アラルキル変成シリコーン、フェニル変成シリコーン、フェノール変成シリコーン、ポリエーテル変成シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、モノアミン変性シリコーン、ジアミン変性シリコーン、ハイドロジェン変成シリコーンなどがあり、いずれも本発明に係るプラスチック樹脂基板の表面処理剤として使える。
【0020】
上述した変性シリコーンにおいて、アクリル変性シリコーンやアクリル変成シリコーンポリマーは、本発明に係るプラスチック樹脂基板の表面処理剤として好ましい。そこで、当該アクリル変性シリコーンやアクリル変成シリコーンポリマーについて、さらに説明する。
【0021】
上述したシリコーンの骨格構造であるポリシロキサンの末端に、メタクリル基を導入したものが、アクリル変性シリコーン(シリコーン変性アクリル、変性アクリルシリコーンともいう。)である。導入されるメタクリル基の結合位置が、ポリシロキサンの片方の末端の場合と、両方の末端の場合がある。本発明に用いる表面処理剤の好ましい具体例としては、両端末型/メタクリル変成シリコーンとして、反応性シリコーンオイルである商品名:X−22−164C(信越化学工業(株)製)が、片末端型/メタクリル変成シリコーンとして反応性シリコーンオイルである商品名:X−22−2426(信越化学工業(株)製)がある。
【0022】
また、アクリル変成シリコーンポリマーとして、商品名:AX−016工作用速乾クリア(セメダイン(株)製)がある。さらに、アクリル変性シリコーンを含む表面処理剤として、商品名:ビストレイターNRC−350A(日本遭達(株)製)が挙げられる。
【0023】
プラスチック樹脂基板表面に、表面処理剤を被覆する方法について説明する。
変性シリコーンを有機溶剤に溶解し、良く攪拌して均一な変性シリコーン含有溶液を製造する。
そして、プラスチック樹脂基板を準備し、当該プラスチック樹脂基板上へ、変性シリコ
ーン含有溶液を均一且つ平滑に塗布する。当該塗布方法としては、デップコート法、スピンコート法、等が好適に適用出来る。デップコート法を用いる場合、プラスチック樹脂基板を変性シリコーン含有溶液に浸せきした後、一定速度で引き上げることが好ましい。
当該変性シリコーン含有溶液を塗布したプラスチック樹脂基板を50℃〜70℃に加温して乾燥し、プラスチック樹脂基板表面に、表面処理剤を被覆した。
【0024】
[銀メッキ]
表面処理剤を被覆したプラスチック樹脂基板表面に、銀メッキする方法について説明する。
例えば、銀メッキ液としてはアンモニア過剰のアンモニア性硝酸銀水溶液(AgNO)17〜34g/L(A液)と水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)20〜80g/L(B液)とブドウ糖水溶液(C12)15〜75g/L(C液)とを用いる。
次いで、前記A液、B液及びC液を、15℃以上の室温で1:1:1の割合で混合し、銀メッキ液とする。
ここで使用するアンモニア過剰のアンモニア性硝酸銀水溶液は、例えば、以下のようにして調製する。
硝酸銀水溶液に濃アンモニア水を徐々に加え、一旦沈殿を生成させ、再び生成した沈殿を溶解させる。ここで、さらに濃アンモニア水(28%)を同量加えA液を得る。ただし、水酸化ナトリウム水溶液と、ブドウ糖水溶液との濃度は室温によって調整する。冬期(5〜10℃近く)の場合は、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を80g/Lに、ブドウ糖の濃度を75g/Lにと、高く設定することが好ましい。
【0025】
上記調製した銀メッキ液を直ちに、表面処理剤を被覆したプラスチック樹脂基板の上面にのせ、放置する。すると、銀メッキ液は、変性シリコーン層により表面処理された樹脂基板上面ではじかれることなく均一に広がり、銀鏡反応により、均一な銀鏡(銀薄膜層)ができる。
【0026】
[仕上げ]
当該銀薄膜層を保護するために、その上へ、硫酸銅(II)水溶液と還元剤溶液(亜鉛粉末懸濁液)とにより銅保護被膜を形成し、さらに裏打ち塗料を塗布してシールする。
以上のようにして製造したプラスチック鏡を、樹脂基板面側から見ると、光反射率が高く、像が鮮明に写る鏡になった。この結果、極めて簡単にしかも低コストで、光反射率の高いプラスチック鏡を製造することができるようになった。
【0027】
しかも、本発明に係るプラスチック鏡は、ガラスの鏡に比べて軽量、且つ衝撃による破損の心配がなく安全である。そして、軽量且つ安全なため、化粧品を充填するコンパクト容器の蓋部内側面に取付ける鏡体として最適である。また、ガラス鏡では非常に困難な大面積の壁面等に設置する鏡として極めて有用である。
【0028】
一方、プラスチック樹脂基板としてフィルム状の樹脂を用い、このフィルムを鏡として使用した場合は、当該フィルム面を平面に維持するために、裏側に支持用の当板を貼り付けるか、または建物の壁面等にそのまま貼付することが出来る。
また、本実施例のプラスチック鏡は製造後自由に曲げることができるので、建物の円形柱等の湾曲した壁面や波打った壁面等にも容易に取付けることができ、極めて有用なものである。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
(表面処理)
樹脂基板として、100mm×150mm、厚さ1mm、2mm、3mm、5mmの透明なアクリル樹脂基板(メタクリル樹脂 PMMA)を準備した。
【0030】
アクリル変性シリコーン商品名:X−22−2426(信越化学工業(株)製)10gを、有機溶剤(キシレン5質量%、2−ブタノール25質量%、酢酸エチル25質量%、エタノール45質量%)1Lにとかし、良く攪拌して均一なアクリル変性シリコーン含有溶液を製造した。
【0031】
アクリル樹脂基板を、アクリル変性シリコーン含有溶液に浸せきした後、塗布面を均一にするため、シンクロナスモーターを用いた引き上げ装置を用いて1分間に7cmの速さで引き上げた。当該引き上げたアクリル樹脂基板を、定温乾燥器にて60℃、1時間熱処理し、アクリル樹脂基板上にアクリル変性シリコーンを被覆した。
【0032】
(銀メッキ)
アンモニア過剰のアンモニア性硝酸銀水溶液であって、AgNO34g/Lの溶液を調製した(以下、A液と記載)。
水酸化ナトリウム水溶液であって、NaOH20g/Lの溶液を調製した(以下、B液と記載)。
ブドウ糖水溶液であって、C1215g/Lの溶液を調製した(以下、C液と記載)。
【0033】
ここで、A液の調製方法について説明する。
34g/Lの硝酸銀水溶液へ、濃アンモニア水(28%)を徐々に28mL/L加えると、一旦沈殿が生成した後、再び沈殿が消える。次に、当該溶液へ、さらに濃アンモニア水(28%)を28mL/L加える。結局、当初の硝酸銀水溶液へ、全量で56mL/Lの濃アンモニア水(28%)を加えA液とする。
【0034】
A液、B液およびC液を15℃以上の室温とし、各々1:1:1の割合で混合して混合液とする。当該混合した直後の混合液(銀メッキ液)を、上述したアクリル変性シリコーンが被覆されたアクリル樹脂基板の上面にのせ、放置する。当該混合液(銀メッキ液)は、アクリル変性シリコーン層の作用によりアクリル樹脂基板上面ではじかれることなく均一に広がり、アクリル樹脂基板表面に銀鏡反応による均一な銀鏡(銀薄膜層)ができる。
【0035】
アクリル樹脂基板表面に形成された銀薄膜層を保護するために、その上に硫酸銅(II)水溶液と還元剤溶液(亜鉛粉末懸濁液)により銅保護被膜を形成し、さらに裏打ち塗料を塗布してシールし、実施例1に係るプラスチック鏡を製造した。
【0036】
実施例1に係るプラスチック鏡の光の反射率を、633nmのヘリウム−ネオンレーザー光線と照度計を使って測定した。
当該プラスチック鏡は、アクリル樹脂面側から見ると、光反射率が90%と高く、像が鮮明に写る鏡になった。
【0037】
[実施例2]
アクリル変性シリコーンポリマーとして、商品名:AX−016工作用速乾クリア(セメダイン(株)製)100gを用いた。当該アクリル変性シリコーンポリマーを、有機溶剤(キシレン5質量%、2−ブタノール25質量%、酢酸エチル25質量%、エタノール45質量%)1Lに溶かし、アクリル変性シリコーン含有溶液とした。
実施例1と同様のアクリル樹脂基板を、当該アクリル変性シリコーン含有溶液に浸せきした後、シンクロナスモーターを用いた引き上げ装置を用いて1分間に7cmの速さで引き上げた。当該引き上げたアクリル樹脂基板を、定温乾燥器にて60℃、1時間熱処理し
、アクリル樹脂基板上にアクリル変性シリコーンを被覆した。
当該表面処理の操作の他は、実施例1と同様にして、実施例2に係るプラスチック鏡を製造した。
【0038】
製造した実施例2に係るプラスチック鏡は、アクリル樹脂面側から見ると、光反射率が90%と高く、像が鮮明に写る鏡になった。
【0039】
[実施例3]
アクリル変性シリコーンを含む表面処理剤として、商品名:ビストレイターNRC−350A(日本遭達(株)製)100gを用いた。当該アクリル変性シリコーンポリマーを、有機溶剤(キシレン5質量%、2−ブタノール25質量%、酢酸エチル25質量%、エタノール45質量%)1Lに溶かし、アクリル変性シリコーン含有溶液とした。
実施例1と同様のアクリル樹脂基板を、当該アクリル変性シリコーン含有溶液に浸せきした後、シンクロナスモーターを用いた引き上げ装置を用いて1分間に7cmの速さで引き上げた。当該引き上げたアクリル樹脂基板を、定温乾燥器にて60℃、1時間熱処理し、アクリル樹脂基板上にアクリル変性シリコーンを被覆した。
当該表面処理の操作の他は、実施例1と同様にして、実施例3に係るプラスチック鏡を製造した。
【0040】
製造した実施例3に係るプラスチック鏡は、アクリル樹脂面側から見ると、光反射率が90%と高く、像が鮮明に写る鏡になった。
【0041】
[比較例1]
アクリル変性シリコーンを、シリカゾルであるコロイダルシリカの商品名:スノーテックスXS(日産化学工業(株)製)と、ポリ酢酸ビニル系接着剤とに代替した以外は実施例1と同様の操作を行った。
スノーテックスXS50mLを、有機溶剤(キシレン5質量%、2−ブタノール25質量%、酢酸エチル25質量%、エタノール45質量%)1Lに混ぜ、さらに、ポリ酢酸ビニル系接着剤を40g加え、マグネックスターラーで良く攪拌して、均一なコロイダルシリカ含有溶液を製造した。
実施例1と同様のアクリル樹脂基板を、当該コロイダルシリカ含有溶液に浸せきした後、シンクロナスモーターを用いた引き上げ装置を用いて1分間に8cmの速さで引き上げた。
当該引き上げたアクリル樹脂基板を、定温乾燥器にて60℃、1時間熱処理し、アクリル樹脂基板上にコロイダルシリカを被覆した。
当該表面処理の操作の他は、実施例1と同様にして、比較例1に係るプラスチック鏡を製造した。
当該比較例1に係るプラスチック鏡において、コロイダルシリカを表面処理した後、銀メッキ法により銀被覆を形成することは出来た。しかし、当該銀被覆は、表面が凸凹になり、光反射率が10%程度と低く、姿を映す鏡にはならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック樹脂基板の表面に変性シリコーン層が形成され、当該変性シリコーン層上に銀薄膜層が形成されていることを特徴とするプラスチック鏡。
【請求項2】
上記プラスチック樹脂基板が、メタクリル(PMMA)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、および、アクリロニトリル−スチロール共重合体(AS)樹脂から選択される1種以上のプラスチック樹脂基板であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック鏡。
【請求項3】
上記プラスチック樹脂基板が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリニトロセルロース、ポリ酢酸セルロース(CA)、および、ポリビニルアルコール(PVA)から選択される1種以上の樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック鏡。
【請求項4】
上記変性シリコーン層が、アクリル変性シリコーン、アラルキル変成シリコーン、フェニル変成シリコーン、フェノール変成シリコーン、ポリエーテル変成シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、モノアミン変性シリコーン、ジアミン変性シリコーン、ハイドロジェン変成シリコーンから選択される1種類以上の変性シリコーン層であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック鏡。
【請求項5】
プラスチック樹脂基板の表面に変性シリコーン層を形成し、当該変性シリコーン層上へ銀メッキ法により銀薄膜層を形成することを特徴とするプラスチック鏡の製造方法。

【公開番号】特開2010−107854(P2010−107854A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281534(P2008−281534)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(591270682)
【Fターム(参考)】