プラズマガス放電を用いて、生物組織を治療するためのシステム及び方法
プラズマガス放電を用いた生物組織を治療する装置並びに方法が開示される。電極はガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す。前記電極は、前記装置内に配され、前記電極と前記生物組織表面が接触すると、前記電極から前記生物組織表面への電流経路が形成され、これにより、前記電極が、前記流動するガスに点火し、前記プラズマガス放電を作り出す。いくつかの実施形態において、治療された生物組織と電磁的相互作用を生ずる間隙を横切るプラズマガス放電の間の電磁的相互作用は、プラズマガス放電の輪郭形状を定める。いくつかの実施形態によれば、装置は、ガス流れ中のガスに点火する電極を備える。電極と皮膚の間の電磁的相互作用は、少なくとも部分的に、プラズマガス放電の輪郭を形作る電磁的相互作用を決定する。いくつかの実施形態において、装置は更にハウジングを備え、ハウジングは、電極に対する保持手段を提供する。電極はハウジングに配され、電極がハウジングによりシールドされない状態となる。電極は、生物組織の表面と電磁的に相互作用するように固定される。これにより、少なくとも部分的にプラズマ輪郭が形作られる。いくつかの実施形態によれば、本明細書で開示される装置は、2つの目的を有するノズル電極を備える。この電極は、ガスの搬送とガス流れへの点火を目的とする。生物組織を治療する手段として、生物組織へプラズマ流束の経皮的イオン搬送の方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る例示的なシステムは、生物組織を治療する改善されたシステム並びに方法に関する。より詳しくは、大気圧下でRFプラズマガス放電を行い皮膚層を治療するシステム並びに方法に関する。ガスノズル電極は、RFエネルギを結合するアンテナとしての役割を担い、実質的に第2の電極として働く隣接する生物組織と協働して機能を発揮する。ガス放電或いはプラズマの制御は、様々な方法で達成される。例えば、ガスノズル電極の形態、ガスの性質、ガス流れのパラメータなどである。本発明のシステム並びに方法は、皮膚治療技術、剥皮技術及び皮膚蘇生技術などの幅広い範囲に利用可能である。また、本発明のシステム並びに方法は、治療の必要性に応じて最適化可能である。特に、熱損傷を最小限にする皮膚層に対する低温アブレーション用の条件や、制御された局所的な皮膚層への加熱に対する条件を達成可能である。
【背景技術】
【0002】
剥皮或いは皮膚蘇生といった皮膚治療は、治療に応じて最外の皮膚層或いは表皮に近い皮膚層の除去及び/又は改質を含む。皮膚治療は、皺の除去、毛穴の引き締め、皮膚の平滑化、筋肉の引き上げ、コラーゲンの刺激、ほくろ(例えば、刺青、傷跡、外傷、しみ、過度の色素沈着)の除去及び体毛除去並びに成長抑制などといった必要性に応じて適用される。
皮膚治療に対して従来提案されてきた方法は、主に、局所的な治療に関するものである。局所的な治療とは、クリームや軟膏といった本質的に化学的なもの、機械的なもの(即ち、アブレーション)やこれらの両方を意味する。これらの治療は、長期間にわたって皮膚治療を施すべき問題(病変)を低減させるものでなく、問題の再現を防ぐ点において、臨床的な有効性を示すものではない。加えて、化学的及び機械的な「ピーリング」は、問題を有する皮膚領域及び/又はそれを取り巻く組織に損傷を与えるものとなり得る。
【0003】
更に、新たに提案された方法として、レーザ、RFプラズマ及びLED光エネルギを利用して、皮膚層とこれらを相互作用させる皮膚治療を挙げることができるが、これら方法それぞれが適用に際して、有利な点と不利な点を有する。
【0004】
従前の利用可能な代替的方法は、本発明の例示的なシステムにより取り除かれる不利な点により特徴付けられる。これらの問題は、技術の種類に関連するものであるが、操作条件が限定されていること、過度の皮膚加熱及び/又は火傷を引き起こすこと、不完全なしみの除去、長期間にわたる治癒期間、発疹、他の肌荒れ及び/又は合併症状などである。
【0005】
従来技術に係るシステムの一例が、米国特許第6,105,581号公報(承継人:ArthoCare Corporation)に開示される。この特許公報は、電気的に伝導性を有する溶解液(例えば、食塩水)を用いて、皮膚と電気外科用プローブとを接触状態にする技術を開示する。プローブへRFエネルギインパルスを与えると、溶解液中にプラズマが生じ、皮膚表面及び脊柱中の細胞に対するアブレーションが生ずる。溶解液は、プラズマから熱を奪い、低温を維持する。この結果、レーザ剥皮に関連する過度の皮膚への加熱の問題が緩和されることとなる。この技術は、時折、従来技術において、Coblation(登録商標)技術と称されている。
しかしながら、この特許技術は、固有の不利な点を有する。即ち、溶液が塗布された様々な領域においてプラズマにより生ずる「熱点」に起因して、皮膚治療領域の制御が不十分となるということ並びに皮膚治療領域にプローブを接触させる必要があることにより操作形態が制限されるということである。
【0006】
従来技術に係るシステムの他の実施形態が、米国特許第6,518,538号公報(承継人:Mattioli Engineering Ltd)に開示される。この特許は、RFプラズマガス放電を用いて、皮膚層を加熱し、この皮膚層に選択的にダメージを与える技術である。治療される皮膚層は、プローブにより密閉状態とされ、プローブ内は真空状態とされる。RFエネルギを与えられる電極とヘリウムガスは、プローブ内にもたらされ、これにより、プラズマが作り出される。
しかしながら、この特許技術は、固有の問題を有する。即ち、真空状態を維持した状態で操作しなければならないという操作上の制限、プローブの位置によって治療領域が制限されるということ並びに外部から不都合な結果がもたらされないように好適な真空状態を維持しなければならないということである。
【0007】
従来技術に係るシステムの他の実施形態が、米国特許第6,629,974号公報(承継人:Gyrus Medical Limited)及び米国特許第6,723,091号公報(承継人:Gyrus Medical Limited)に開示されている。このシステムは、窒素を用いたRFプラズマガス放電を利用する。このプラズマガス放電は、6mm径大のスポットのエネルギを治療領域に送る。レーザを元としたシステムの主要な有利点の1つは、RFエネルギを熱へと変換する媒介発色団の影響を受けない点である。したがって、熱の消失は制御可能となり、均一となる。更に、治療領域上の多数の火炎プラズマの経路は、レーザを基礎としたシステムにおいては、追加的な熱ダメージとなることはない。
しかしながら、このシステムは、固有の不利な点を有する。即ち、皮膚治療に対して、活性を有するプラズマ領域が小さく、この小さなプラズマ領域を以ってのみしか操作できないことである。このことは、部分的には、プラズマが、装置のハウジング内で点火するという事実に起因する。このことは、プラズマの輪郭形成を促す電極と皮膚表面間の有益な電磁的相互作用を阻害する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,105,581号公報
【特許文献2】米国特許第6,518,538号公報
【特許文献3】米国特許第6,629,974号公報
【特許文献4】米国特許第6,723,091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記制限を有さないRFプラズマガス放電を利用して生物組織を加熱する改善されたシステム並びに方法を有することは非常に有益であり、この必要性は広く理解されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の必要性は、本発明に係る例示的なシステムのいくつかの特徴により満足される。
まず、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極を備え、前記電極は、前記装置内に配され、前記電極と前記生物組織表面が接触すると、前記電極から前記生物組織表面への電流経路が形成され、これにより、前記電極が、前記ガス流れに点火し、前記プラズマガス放電を作り出すことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、ノズル電極であり、該ノズル電極が、ノズル部を備え、該ノズル部が、前記ガス流れを受け止めることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ノズル電極が、前記ガス流れに点火することにより、前記ノズル部の外側の少なくとも一領域に前記プラズマガス放電が作り出されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置が、大気圧下又は大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織をアブレートすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を切断することにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に向けて経皮的なイオン搬送をすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を加熱することにより、効果的に前記生物組織を治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に生物学的光刺激を与えることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、プラズマガス放電と前記生物組織との化学反応を生じせしめ、これにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れが、拡散性のガスの流れであることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを作り出すガス源を更に備え、
該ガス源が、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素分子(O2)、窒素分子(N2)、窒素酸化物、炭素酸化物、水蒸気、揮発性の有機ガス及び揮発性の無機ガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを供給することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、アルミニウム、銀、金、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属からなることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極表面に接続する誘電バリアを更に備え、該誘電バリアは、前記電極表面の導電率を低減させ、これにより、前記生物組織表面への導電電流の伝達を遅らせることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、トーチ型輪郭を形成するように前記電極の寸法が定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、前記電極が、前記プラズマガス放電を形成するように形成され、該プラズマガス放電が、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を略占めることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、非常に低い電流密度と高い放電断面を備える前記プラズマガス放電を形成するように形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、前記プラズマガス放電から狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の輪郭を形成するように形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織の表面が、非等電位表面となるように前記生物組織の前記表面との相互作用が得られるように前記電極が形成並びに配置され、前記生物組織の瞬時の加熱並びにプラズマガス放電の維持が可能となることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、椀状の輪郭をなすように形成されるとともに、直接的に前記生物組織に接触するように配され、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面となり、前記プラズマガス放電が、前記電極の内部容積を略満たすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備えるとともに球状輪郭をなすように形成され、前記電極は、前記生物組織に直接的に接触し、前記生物組織の前記表面が非等電位表面となり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極は、誘電性の円筒形状の導管取付具を備え、該導管取付具は、前記電極内部に延出するとともに直接的に前記生物組織に接触し、これにより、前記誘電性の円筒形状の導管取付部内部で前記プラズマガス放電が発生し、前記プラズマガス放電が前記ガスの流れによって、前記生物組織に搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源及びフラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加の部品を更に備え、これにより、生物組織に追加的な治療を施すことが可能となることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、前記プラズマガス放電用のアンテナとして機能するとともに、前記プラズマガス放電に対する前記ガスの流れのパラメータに影響を与えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、前記ガスの温度を大きく低減(断熱膨張)させることに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、層流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、乱流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、経皮的なイオン搬送を行なうのに効果的なガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、RF発電機(増幅器)により作り出され、該RF発電機は、前記プラズマガス放電を点火並びに維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を有することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、電極コントローラを更に備え、該電極コントローラが、前記電極のパワー特性を調整することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、RF電源を備え、該RF電源が、RF電力を前記電極に供給することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが移相器を備え、該移相器が、一方向に向けられた進行波の移相を変化させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含むことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、RF共振器を備え、該RF共振器が、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記誘電バリアが、前記電極上の誘電性のコーティングとしてもたらされることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、アルミニウムから主になり、前記電極バリアが、アルミナコーティングとしてもたらされることを特徴とする。
【0011】
本明細書において初めて、ガス流れから輪郭形成されたプラズマを用いて、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される方法は、(a)前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極と、(b)前記電極を保持するハウジングを備え、前記電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、前記ハウジングの外側に略位置するように前記装置が形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、電極ホルダを用いて前記ハウジングに取り付けられ、前記電極ホルダが、前記ハウジングに対する前記電極の位置決めと、前記電極へ前記ガス流れのガスの搬送を行うことの両方の役割を担うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極のうち少なくとも一部が、前記ハウジング上に露出し、前記生物組織の前記表面に直接的に接触可能であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極の配置位置が、ハウジングに対して調整可能であり、前記生物組織の治療領域を制御手段として、前記生物組織の前記表面に沿って前記電極の配置位置は移動可能であることを特徴とする。
【0012】
本明細書において初めて、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、連動したパワーが前記RF発電機から搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電に送られる前記出力RFパワーが連続モード又はパルスモードで連動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器がトロンボーン型であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器が、少なくとも部分的に同軸ケーブルから構成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器によりもたらされる位相の変化が可変であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、L型構造、T型構造及びπ型構造からなる群から選択される形状によって特徴付けられる一定の構造を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、広帯域のインピーダンス変成器であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、可変であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(f)前記装置が更に、給電ケーブルを備え、該給電ケーブルは、前記IMNを用いて、前記電極と前記RF共振器を接続することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記給電ケーブルが、n*λ/2の長さで定義される共振長さを有し、λは、前記給電ケーブルの材料中の前記出力RFパワーの波長であり、nは、全体の数であることを特徴とする。
【0013】
本明細書において初めて、ガス流れから形成されるとともに輪郭形成がなされたプラズマを用いて生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、(a)ガス搬送を行なうとともに、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出すノズル電極と、(b)前記ノズル電極を保持するハウジングを備え、前記ノズル電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記ノズル電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記ノズル電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする。
【0014】
本明細書において初めて、生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、(a)電極にガス流れを供給する段階と、(b)前記生物組織の表面と電極を互いに近接させ、前記電極と前記生物組織が、互いに略電気的にシールドされていない状態とし、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に対するアブレーションにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に対する切断処理を施すことにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に経皮的にイオンを搬送することにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に加熱を施すことにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に生物学的光刺激を与えることにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織と、前記プラズマガス放電を化学反応させることにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、電気的に接地された状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、電気的に接地されていない状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、大気圧下若しくは大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、(e)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、(f)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、(g)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、(h)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火をする段階が、電極ホルダを介して前記装置に固定された電極からのガスの流れに点火する段階を備え、前記電極ホルダは、前記電極にガスを搬送する役割を担うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からのガスの流れに点火する段階が、前記生物組織の前記表面に直接接触して配された前記電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からのガス流れに点火する段階が、前記生物組織の治療位置を変化させる手段を用いて、前記生物組織の前記表面上を移動可能な電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)前記電極と前記生物組織の前記表面の間に誘電バリアを配する段階を備え、該誘電バリアが伝導電流の移動を遅らせることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、大気に曝された電極からのガス流れに点火する段階であり、該電極が、トーチ型の輪郭をなす前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びにその形状を定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を前記プラズマガス放電が占めるように前記電極の大きさ並びにその形状が定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を有する前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに輪郭形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、狭いフレイムタン(プラズマトロン)形状のプラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織の表面と相互作用するように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面であり、これにより、前記生物組織の加熱及び前記プラズマガス放電の維持が同時になされることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織に直接的に接触する椀状の輪郭形状をなす電極からのガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、前記ノズル電極の内部容積を満たすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を有するとともに前記生物組織に部分的に直接接触する球状の輪郭形状を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の表面が、非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の導管取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、該誘電性の円筒形状の導管取付具は、前記電極の内部に延出し、該電極は、直接的に前記生物組織に接触し、前記誘電性の円筒形状の導管取付具内部でプラズマガス放電が点火され、該プラズマガス放電が、ガスの流れにより、前記生物組織に搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源、フラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な部品を用いる段階を備え、追加的に前記生物組織を治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを供給する段階が、前記ガスの温度を大きく低減させるのに好適な流れ特性(断熱膨張)を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、層流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、乱流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、経皮的なイオン搬送を容易にするのに適した流れ特性を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記段階(a)乃至(c)が順次実行されることを特徴とする。
【0015】
本明細書において、生物組織を治療する方法が初めて開示される。この開示される方法は、(a)電極にガス流れを供給する段階と、(b)前記電極から前記生物組織の表面に電流経路を形成し、これに付随して、前記ガス流れに点火してプラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより前記生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする。
【0016】
本明細書において初めて、プラズマガス放電を用いて生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、(a)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、(b)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、(c)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、(d)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、(e)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする。
【0017】
本明細書において初めて、輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法であって、(a)ガス流れを提供する段階と、(b)該ガス流れからのガスに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の表面を前記プラズマガス放電に曝す段階と、(d)前記曝された生物組織の表面と電磁的な相互作用を生ずる間隙を横切る前記プラズマガス放電の間の電磁的な相互作用を用いて、前記プラズマガス放電の輪郭形状を整え、これにより生物組織を治療することを特徴とする。
【0018】
本明細書において初めて、生物組織を治療する方法として、生物組織に向けられるプラズマ流束の経皮的なイオン搬送を行う方法が開示される。この開示される方法は、(a)生物組織表面をプラズマガス放電のプラズマ流束に曝す段階と、(b)生物組織表面下方の生物組織にプラズマ流束を経皮的に搬送する段階からなる。
いくつかの実施形態において、プラズマ流束を経皮的に搬送する段階が、原子イオン、分子イオン、原子ラジカル、分子ラジカル、励起状態のイオン、励起状態のラジカル、エネルギイオン、エネルギラジカル、冷却イオン、冷却ラジカル、エネルギ電子及び供給ガスの任意の要素からなる群から選択される少なくとも1つの種のプラズマ流束を経皮的に搬送する段階であることを特徴とする。
これらの実施形態及び更なる実施形態は、以下の詳細な説明並びに実施形態により明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、以下に、図面を参照しつつ説明されるが、この説明される実施形態は、単に例示に過ぎない。特に図面において詳細に説明されるものは、特に一例として示されるものにすぎず、本発明の例示的なシステムの好適な実施形態を表現し、説明する目的のためにのみ用いられるものである。この説明に用いられる実施形態は、最も有用であろうと考えられるものであり、本発明の原理並びに概念的特徴に対する説明を容易に理解させるものである。この点において、本発明の基本的理解に必要とされる以上に詳細に本発明の構造的詳細を明らかにする意図はなく、以下の図面を伴う説明は、当業者に対して、本発明のいくつかの形態が実用上どのように具体化されるかを明らかにするものである。
【0020】
例示されるシステムの実施形態において、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置並びに方法が提供される。
例示されるシステムのいくつかの実施形態にしたがって、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置が構築され、この装置の原理並びに操作に関して、図面並びに下記の説明を参照して、より良い理解を得られるものとなる。
【0021】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、以下の記載において説明される部品又は図面に表される部品の構造及び配置に、本発明の適用形態が限定されるものではない。本発明は、他の実施形態で実施すること、実用化すること又は様々な方法で実行することが可能である。加えて、本明細書で用いられる表現及び用語は、説明の目的のために使用するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきものでない。
【0022】
図1Aは、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置を示す図であり、この装置は、例示的に示されるシステムの例示的な実施形態にしたがって、構築されている。
この装置は、RF発電機(増幅器)(1)を備える。RF発電機(1)は、出力RFパワー(10)を作り出す能力を備え、出力RFパワー(10)は、電極、ノズル電極(6)に向かう。ノズル電極(6)は、生物組織(7)の表面に接触可能である。
ノズル電極(6)は、所望量のエネルギを、大気圧下或いは大気圧以上の圧力下で流動するガス(9)に送る能力を備える。ノズル電極(6)は、装置内に配され、生物組織表面への電流経路の形成を促すとともに、ノズル電極(6)が生物組織に接触すると流動するガス(9)に点火し、プラズマ放電を作り出す。
【0023】
本明細書で示されるように、電極又はノズル電極が「装置内」に配され、特定の機能をもたらすとき、この機能は、(a)電極に本来的に備わっている物理的又は幾何学的特性、(b)他の装置部品(例えば、装置のハウジング)に関連する電極の幾何学的構造及び(c)他の装置部品(例えば、1若しくはそれ以上の装置の電気部品)に関連する電極の機能的関係にうち少なくとも1つに関連する。
「装置内」との用語は、1若しくはそれ以上の装置部品(例えば、装置のハウジング)内に物理的に電極が存在することを必要とすることを示唆するものではない。実際には、いくつかの実施形態において、「装置内に配される電極」が装置のハウジングに取り付けられ、ハウジングの外側に存在する場合もある。
【0024】
本明細書で説明される例示的なシステムは更に、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラ(2)を備える。コントローラ(2)は、RF発電機(1)から送られる出力RFパワー(10)を調整し、出力RFパワー(10)は、矩形パルスを用いた所望の周波数となり、所定の持続期間並びに振幅を備えることとなる。例えば、動作RF周波数が40.68 MHzである場合、PWM周波数が50Hzから20kHzであり、デューティサイクルが2から100%である。プラズマガス放電(8)を生じせしめる所望の平均RFパワーの水準をもたらすことにより、大気プラズマガス放電(8)を得る場合に、この制御は重要となる。更に、高い振幅のRFパワー(瞬時出力パルス)をもたらすことを可能とする。高い振幅のRFパワーは、プラズマガス放電(8)を点火によりもたらすのに重要である。更に、プラズマガス放電(8)の電圧は、パワー入力の増大にかかわらず一定である(或いは、かすかに上昇する)ことが知られている。通常の放電モードにおけるプラズマガス放電体積を増大させることにより或いは異常放電モードにおける電流密度を増大させることにより、RFパワーを増大させることは、プラズマガス放電電流の増大につながる。プラズマガス放電との用語は、本明細書において、プラズマや、場合によっては、ガス放電を意味するものとする。
【0025】
PWMコントローラ(2)は、基本RFパワーよりはるかに低い周波数を備える変調RFパワーをもたらす(例えば、40.68 MHzが基本正弦振動波である場合、10kHzの矩形変調波となる)。PWMコントローラは、本発明のシステムにおいて非常に重要な部品である。なぜなら、所望の水準の平均RFパワーを備えるガス放電体積に作用する高い水準のRF電圧を、PWMコントローラはもたらすからである。高い水準のRF電圧(或いは、RFパワーの振幅)は、プラズマガス放電(8)を持続させるのに必要とされる。また、高い水準のRF電圧は、単純な固定IMNの用途にも必要とされる。この場合、IMNは、RFパワーの時間依存性を参照せず、同じRFパワー振幅で作動する。RFパワーの平均水準は、作動の間、低くなる。
【0026】
例示的なシステムは更に移相器(例えば、トロンボーン型移相器)(4)を備える。移相器(4)は、RF発電機(1)に接続する。移相器(4)は、一方向に向かう出力RFパワー(10)の進行波の位相を変化させる能力を備える。これにより、出力RFパワー(10)からのエネルギが、主として、プラズマガス放電(8)に集中することとなる。このことは、点火工程並びにプラズマガス放電(8)の操作工程を容易化する。
【0027】
例示的なシステムは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)(3)を備える。インピーダンス整合ネットワーク(3)は、移相器(4)とノズル電極(6)に接続する。インピーダンス整合ネットワーク(3)はプラズマガス放電(8)、ノズル電極(6)及び生物組織(7)(DNT: discharge-nozzle-tissue: 放電−ノズル−組織)を含む装置の総合インピーダンスを公称値(例えば、250-350Ω)から補正値(例えば、50Ω)に変換する能力を備える。
補正値は、RF発電機(1)と移相器(4)の特徴的なインピーダンスに整合する。これにより、出力進行波は、定常波に変換されることなしに、プラズマガス放電(8)を持続させる。
【0028】
高い水準のRF電圧(或いは、RFパワーの振幅)は、固定モードでIMN(3)を使用するために必要とされる。この場合、IMN(3)は、RFパワーの時間依存性を参照せず、それ故、同一のRFパワー振幅で応答する。このようにして、プラズマガス放電体積に作用するRFパワーの平均振幅が、RFパワー振幅よりも低くすることができることは考慮されるべき事項である。IMN(3)は、様々な種類の固定型或いは可変型IMN(例えば、L、T、π型若しくはそれ以上に複雑なユニット)であってもよい。
【0029】
例示的なシステムは更に、RF共振器(5)を備える。RF共振器(5)は、IMN(3)並びにノズル電極(6)に接続する。操作工程において、RF共振器(5)は、所望量のエネルギを周期的に蓄積並びに放出する。RF共振器(5)は、点火工程において、所望量のエネルギの集中化を図る能力を備える。このことは、異なるガス組成物をプラズマガス放電(8)に使用することを可能とするために重要である。ガス組成物の変化は、ガスの電離ポテンシャルを変化させる。
RF共振器(5)は、高いQ値(例えば、100以上)を備える。RF共振器(5)は、インデューサとコンデンサが並列に接続されてなる並列型であることが好ましい。
RF発電機(1)、PMWコントローラ(2)、IMN(3)、移相器(4)、RF共振器(5)及びノズル電極(6)間の相互接続は、給電伝送ケーブル(22)を用いて行なわれる。給電伝送ケーブル(22)の特性は、後述される。
【0030】
例示的なシステムは更に、ノズル電極(6)を備え、ノズル電極(6)は、RF発電機(1)(RF発電機(1)は、PMWコントローラ(2)からの適切なエネルギ制御を受けている)から流動するガス(9)にRFパワー(10)を送り、プラズマガス放電(8)を生じせしめるとともに安定化させる能力を備える。出力RFパワー(10)が、移相器(4)、IMN(3)及び共振器(5)により処理された後、このプラズマガス放電(8)は、生物組織(7)を治療するために用いられる。
【0031】
典型的には、本発明の装置の操作によって、出力RFパワー(10)からの2−4%の追加的なエネルギ反射を伴う出力RFパワー(10)から2−4%のエネルギ損失が生ずる。このことは、本発明の装置が、出力RFパワー(10)からプラズマガス放電(8)に向けて、90−95%のエネルギを確実に送ることができることを意味する。
出力RFパワー(10)からのエネルギ集中とこのような効率の程度いずれもが、従来利用可能な他の代替的装置・方法では達成できるものではなかった。IMN(3)は、生物組織(7)の表面からの出力RFパワー(10)の反射を低減させる。これにより、プラズマガス放電(8)へ送られるエネルギの効率が増大することとなる。
【0032】
図1Bは、本発明の装置の断面図であり、プラズマガス放電(8)が得られる部分を概略的に示す。図1Bは、従来技術に対する本発明の例示的なシステムの固有の優位点のうち1つを強調するために用いられる。重要な詳細部分に係る要素は、ノズル電極(6)、ハウジング(20)及びプラズマガス放電(8)の相対的位置関係である。
ノズル電極(6)は、電極ホルダ(11)を用いて、ハウジング(20)に固定されている。ハウジング(20)が、電極内に配されるものでなく、また、電極そのものでないことは明瞭化すべき事項である。図1Bの例示的実施形態に示されるごとく、電極ホルダ(11)は、2つの目的を有する部品であり、電極ホルダは、ガス源(図示せず)からのガスの流れを受け止めるガス流入口の役割も担う。
尚、このことは、本発明の例示的なシステムに何ら制限を加えるものではない。ある実施形態においては、ガス流入口は、別個に設けられることができる。更に、図1Bに示されるような「ガス流入口」は、本発明の装置のハウジングの外方位置からのガスを受け止めるが、このことは、本発明の例示的なシステムに何ら制限を加えるものでない。
【0033】
図1Bに示される構造において、ノズル電極は、ハウジングにより、略電気的にシールドされていない状態である。この結果、ノズル電極(6)が電磁的に生物組織(7)の表面と相互作用することが可能となる。明瞭化のため、ノズル電極(6)の入口は、電極ホルダ(11)からのガスを受け止め、プラズマガス放電(8)がノズル電極(6)の外側(例えば、流出口で)形成されることを付記する。
【0034】
更に、本発明の装置からの接地電極が設けられていないことにより、プラズマガス放電(8)の形を整えることが可能となり、この結果、様々な種類の皮膚治療が可能となる。本明細書で用いられるプラズマガス放電の「形を整える」との用語は、プラズマガス放電の輪郭形状を維持することを意味することはもちろんのこと、輪郭形状を変化或いは変形させること両方も意味するものである。
【0035】
全く対称的な例として、図1Cは、Gyrus社の従来技術の特徴を概略的に示す図である。図1Cは、明瞭に、電極(6)が完全にハウジング(20)内部に配されていることを示す。
この構造は、任意の外表面との電極(6)の電磁的相互作用を妨げる結果となる。なぜなら、ハウジングが、電気的に装置を遮蔽しているためである。このような構造にすると、達成可能なプラズマガス放電の輪郭は、1つの形態、すなわち、トーチ型に限られる結果となる。また、この構造を採用する結果、電流密度及び放電断面といったパラメータへの制御が制限されることとなる。
【0036】
対称的に、本発明の例示的システムの実施形態は、可逆的に装置のハウジングに配置可能な電極(例えば、ノズル電極)を用いることにより、多様に「設定可能な」形態に形を整えることが可能なプラズマ輪郭を提供することができる。このようにして、使用者は、所望のプラズマガス形状を簡便に選択することができる。なぜなら、使用者は、所望のプラズマガスの輪郭を狙い通りに得るのに適切な電極を選択することが可能であり、この選択された電極を装置のハウジングに固定することが可能となるからである。
【0037】
ノズル電極の様々な構造を説明する前に、ノズル電極の形状及び寸法がプラズマガス放電の特徴にどのように影響を与えるかについての一般的な説明をする。
プラズマガス放電は、2つのモード(拡散型と収縮型)で作り出される。両方のプラズマガス放電の型は、生物組織の治療に適切なものである。拡散型のプラズマガス放電は、高いパワー密度をもたらさない。このモードは、高い電圧と低い電流に特徴付けられる。帯電粒子の集中は低い(例えば、10−2〜10−3、イオンと中性物の比率が、0.1から1%)。放電は、非常に一様(或いは、均一)である。このモードは、生物組織の加熱及び生物学的光刺激を与えるのに利用可能である。
【0038】
収縮型のプラズマガス放電は、不均一であり、イオンと電子の高い集中度を備える高温領域を有する。プラズマガス放電の中性温度も高く、その一方で、放電体積は低い。このモードは、生物組織のアブレーション、消散及び切断に適用可能である。
【0039】
ノズル電極の形状及び寸法は重要である。生物組織に直接接触するとき、ノズル電極は、純粋なプラズマガス放電環境をもたらす。この環境において、ガスは、ノズル電極容積を完全に満たし、周囲空気の治療領域への相互作用の低減を図ることが可能となる。
プラズマの輪郭は、ノズル電極の形状に依存する。拡散型のプラズマガス放電に関して、放電プロセスは、異常RFグロー放電として特徴付けられる。このことは、プラズマガス放電の電流密度が、RFパワーの増大につれて増大することを意味する。このプラズマガス放電プロセス(すなわち、異常)は、通常のプラズマガス放電プロセス以上に強力である。
【0040】
ノズル電極が生物組織に接触していないとき、周囲の空気と流動ガスが能動的に混合する。純粋なガスの濃度は、ノズル電極から生物組織の距離が増大するにつれて減少する。乱れた状態の流れ形態に起因して、混合は、ガスの流れの周縁において最も活発に生ずる。したがって、プラズマの輪郭は、プラズマトロン型或いは舌状型に似た形状となる。この通常プラズマガス放電プロセスにおいて、プラズマガス放電体積は、RFパワーが増大するにつれて、増大する。この場合、プラズマガス放電密度は高くない。
【0041】
図2は、通常のノズル電極(6)を概略的に示す。
ノズル電極(6)は、電極ホルダ(11)に取り付けられている。流動ガス(9)は、ノズル電極に流入する。ノズル電極は、流動ガスにエネルギを与え、プラズマガス放電(8)を作り出す。プラズマガス放電(8)は、出口直径の3倍から5倍の距離で、生物組織(7)の表面に相互作用する。この構造において、トーチ型の先端を備えるプラズマの輪郭形状が作り出される。この場合、ガスの流れ(9)は層流的特性を示す。プラズマガス放電が、ノズル電極(6)の出口と生物組織(7)の表面の間で生ずることとなる。
【0042】
図3は、プラズマガス放電(8)が、周囲大気に対して開放状態(図2で示されるような)となっていない点で、図2と相違する。このような構成において、誘電性の空洞部付円筒形取付具(12)が、周囲大気からプラズマガス放電(8)を孤立させる。図2に示す構成においては、プラズマガス放電(8)は、空気と相互作用し、トーチ型の先端を形成したが、図3に示す構成では、空洞部付取付具(12)の空洞部全容積を略占めるプラズマガス放電(8)が作り出される。
【0043】
図4は、他の構成を概略的に示す。
ノズル電極(6)は、流出口径(14)よりもはるかに大きな(例えば、10から20倍)の流入口径を有するように形成される。更に、ノズル電極(6)は、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の間隙よりもはるかに大きな(例えば、3から6倍)の外径を備える。この構造は、ガス流れ(9)に乱流的特性をもたらすこととなる。この構造におけるガス流れ(9)とノズル電極(6)の組み合わせにより、プラズマガス放電(8)が、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面との間の体積全体を占めることとなる。この構造の特徴は、非常に低い電流密度(例えば、電流密度のピークにおいて、100−700mA/cm2及び平均値において、10−200mA/cm2)と、広い放電断面(例えば、2−4cm3)である。この構造は、高い電流密度を要求しない広い表面を治療するのに最も適している。
【0044】
図4に示す形態と反対の形態が、図5に概略的に示される。ノズル電極(6)は、非常に小さく、圧力降下は大きく、ガス流速(9)は高い。ノズル電極(6)と生物組織の表面との相互作用を生ずる領域は非常に狭い。したがって、プラズマガス放電(8)は、狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の先端のような形状をなす。この場合の電流密度は非常に高い(例えば、上記の構造の10−20倍大きい)。この構造は、生体組織に対するアブレーションや切断に最適である。
更に、この構造において、断熱膨張がノズル電極(6)に生ずるならば、断熱膨張を介して、プラズマガス放電(8)の超音波ジェットを得ることも可能である。このようにすることにより、この構造において、経皮的なイオン搬送を通じて、生物組織(7)の表面の治療が可能となる。
明瞭化のため、生物組織の表面との用語は、真皮及び皮下層といった下方に広がる層を含む外表面並びに近表面領域を意味する。
【0045】
図6及び図7は、RF加熱とプラズマガス放電治療を組み合わせたプロセスを概略的に示す。両構成において、生物組織(7)の表面は、非等電位表面である。したがって、単一の電極、ノズル電極(6)が、生物組織(7)の表面を瞬時に加熱するとともにプラズマガス放電(8)を持続させる。
【0046】
図6は、概略的に、本構成の第1の実施形態を示す。図6に示す構成において、ノズル電極(6)は、椀状に形成される。この椀状のノズル電極(6)の外縁は、直接的に生物組織(7)の表面に接触する。そして、流動ガス(9)が、椀形状のノズル電極(6)の内部領域に供給される。プラズマガス放電(8)が、この内部領域で発生する。
【0047】
図7は、上記した構成の第2の実施形態を概略的に示す。この構成において、ノズル電極(6)は、球状の表面を有し、部分的に生物組織(7)の表面に直接的に接触している。プラズマガス放電(8)は、球状のノズル電極(6)内のいくつかの小さな周辺穴(16)を介して作り出される。誘電性の円筒形状をなす空洞部付取付具(12)が、持続性のリング型プラズマガス放電(8)を形成する。
【0048】
図8に概略的に示される構造は、プラズマガス放電(8)を含む。このプラズマガス放電は、誘電性の円筒形状の導管取付具(12)内で引き起こされる。導管取付具は、ノズル電極(6)内部に延出する。誘電性の円筒形状の導管取付具(12)は、水晶やガラスからなることが好ましい。誘電性の円筒状の導管取付具(12)の端部は、生物組織(7)に接触する。プラズマガス放電(8)は、ガス流れ(9)により、生物組織(7)の表面に搬送される。ノズル電極(6)は、点火機能を発揮し、プラズマガス放電(8)を生じさせる。
【0049】
本発明の例示的なシステムは更に、2つの段階を備える方法を具体化する。この2つの段階は、プラズマガス放電点火工程と操作工程である。
プラズマガス放電点火段階は、時間が限定された遷移的段階であり、その期間は、数ミリ秒から数マイクロ秒の間である(作動ガスの静圧が高ければ、プラズマガス放電点火工程の期間が短くなる)。点火のために、放電領域において、所定の閾値電圧(積分パラメータ)に達することが必要である。或いは、放電領域のうち局所的領域において、RF電界強度(微分パラメータ)に達する必要がある。放電絶縁破壊は、この領域から開始し、RF電位(或いは、電界強度)が、十分に高く、放電が維持される領域全体にわたって拡がって行く。
【0050】
点火工程を促すための因子は多数存在する。例えば、ガス圧を低下させること(パッシェン曲線の下限値まで)、ノズル電極(6)の形状、ノズル電極(6)の寸法、ノズル電極(6)と生物組織(7)表面の間隔、ガス種或いはガスの組み合わせ、及び電位分布の不均一性などである。
【0051】
所望体積のプラズマ(イオン化ガス)を作り出すためには、閾値電場の強さより大きな電磁場強さを供給する必要がある。したがって、プラズマガス放電の点火工程は、ガス媒体の絶縁破壊である。閾値電場の強さは多様な因子(例えば、ガス圧、ガス組成物、汚染物の存在、電磁場/波パラメータ、電極形状及び電極材料など)に依存する。尚、電極を必要としない種類の放電も存在することは理解されるべきことである(例えば、光学的放電など)。
【0052】
プラズマとプラズマガス放電(8)の差異は、プラズマが擬似中性の条件に合致する必要がある点である。このことは、正の電荷で帯電した粒子の数が、負の電荷で帯電した粒子の数と等しいことを意味する。プラズマガス放電(8)は、実際には、プラズマを含む領域と含まない領域を備える。
【0053】
点火工程(プラズマガス放電の安定化前)の間、ある問題が存在する。プロセスにおけるこの段階において、プラズマガス放電(8)なしのシステムのインピーダンスが、プラズマガス放電(8)を伴うシステムのインピーダンスと大きく異なることは明らかである。したがって、点火工程に対する最適なIMN(3)のインピーダンスが、点火後(操作工程の間)においては最適なものでないこととなる。点火工程の間のIMN(3)の主な役割は、RF発電機(1)に向かう反射されたRFパワーを最小限化することと、ガスの絶縁破壊が起こる領域において必要なRF電界強さを提供することである。プラズマガス放電の点火の前における反射されたパワーは、非常に高い(例えば、放射電力の80−90%)。システムの有効電力損失及びインピーダンスは、RF発電機(1)とIMN(3)の間のケーブルの長さに依存する。
【0054】
したがて、点火工程も、電磁波の移相(移相器(4)によりもたらされる)並びにノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の電磁波伝播の大きさに依存することとなる。移相器(4)を調整することによって、生物組織(7)の表面のターゲット領域において最小(最大とすることもできることはもちろんである)の電磁波を作り出すことができる。プラズマガス放電(8)が点火されると、移相は重要なものでなくなる。なぜなら、進行波は確立され、RF電圧の必要な大きさは、実質的に、点火工程の間よりも低くなっているからである。
【0055】
点火工程及び操作工程両方を制御するための方法がいくつか存在する。異なる構造のIMN(3)を、点火工程及び操作工程に用いることができる。このことは、固定IMNモードと可変IMNモード(可変コンデンサや可変インデューサを用いて)の間で切替操作を行うことを含む。したがって、両機能を備える同一のIMNを用いるために、特別に設計されたIMNが、IMN(3)に必要とされる。同様に、IMN(3)とRF発電機(1)の間の給電伝送ケーブル(22)は、適切に選択される必要がある。この適切な選択により、両機能がもたらされることとなる。更に、同様のことが、移相器(4)についてもいうことができる。点火工程にとって最適な状態1から操作工程にとって最適な状態2に必要な位相跳躍を行なう同一の移相器を用いるために、特別に設計された移相器(4)が、移相器(4)として、必要とされる。
【0056】
生物組織(7)の表面をプラズマガス放電(8)を用いて治療するための電極の配置はいくつか存在する。従来技術として上記したGyrus社の場合において、放電(高周波型)が、2つの電極間の領域に作り出され、その後、放電は、治療対象領域にもたらされる。ガス流れは、放電領域で発生した帯電粒子を搬送する主因子である。このシステムは、プラズマトロンの設計と同様である。システムは、2又はそれ以上の電極を含む。電極は、システムを自立した状態とする。即ち、操作において、生物組織を必要としない状態とする。原則として、放電のターゲットは、重要なものではない。放電のターゲットは、プラスチック、生物組織、金属表面或いは他の表面であることができる。
【0057】
例示的なシステムにおいて、上記とは逆の場合が生ずる。生物組織(7)の表面が、第2の(事実上の)電極(例えば、接地電極)としての役割を担う。ノズル電極(6)の外表面は、熱電極としての役割を担う。生物組織(7)の表面が、ノズル電極(6)の近傍に位置するとき、生物組織(7)の表面及びノズル電極(6)は、電気力学的構造を形成する。この電気力学的構造は、特定の集合インピーダンスによって特徴付けられる。それ故、生物組織(7)の表面は、帯電した粒子に対する接地電極の役割を担い、RF電流の経路を遮断し、放電絶縁破壊工程、分配及び安定状態の間、システムの集合インピーダンスに影響を与える。したがって、図1に示す装置全体は、象徴的に電気回路として表すことができる。生物組織(7)の表面の重要な役割は、回路を閉じることである。本明細書で用いる「近傍」との用語は、短い距離(例えば、<50cm)内を意味する。本明細書の後半で用いられる「遭遇すると」との用語は、「近傍に入ると」との意味をなす。
【0058】
上記の如く、DNTシステムの集合インピーダンスは、給電伝送ケーブル(22)の特徴的なインピーダンス(例えば、50Ω)に合致する。それ故、電磁進行波の伝播(例えば、反射パワーがない場合)の最良の状態が、組織の存在を以ってのみ達成されることとなる。
【0059】
RF発電機(1)、PWMコントローラ(2)、IMN(3)、移相器(4)及びRF共振器(5)といった装置の部品は、複合装置として考えられ、適切なパワー特性をノズル電極(6)にもたらし、プラズマガス放電(8)から生物組織(7)の表面への電流経路を形成することを可能とする。
図9は、本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態における簡素化された概略的な模式図であり、電極コントローラ(26)の様々な部品とこれら部品の相互関連性を示す。これは、本明細書の後半で述べられる「電極コントローラ」の一実施形態である。電極コントローラ(26)の他の実施形態において、異なる構造を採用したり、追加的な部品を取り付けたり及び/又は部品点数を少なくすることも可能である。
【0060】
操作工程は、点火工程の電位(電圧)よりもかなり低い電圧によって特徴付けられる。本発明の場合での点火工程から操作工程への放電の進行における生物組織の重要な役割は、以下に述べられる。
生物組織は、RF電場(或いは、電磁波伝播)を歪曲させる。生物組織は、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の相互作用を生ずる間隙内に強い電場を生じさせる。これにより、放電点火を促し、或いは、ほとんどの場合、放電点火に対するトリガの役割を果たす。
【0061】
操作工程は安定した時間依存型のプロセスである。操作工程は、点火工程に必要とされた電圧よりも低いRF電圧を必要とする。IMN(3)は、プラズマガス放電(8)の点火工程及び操作工程の両方の間、作動する。プラズマガス放電(8)のインピーダンスをRF発電機のインピーダンスに合致させるために、IMN(3)がDNTシステムの集合インピーダンスを、RF発電機の作動出力インピーダンス(典型的には、50Ω)に変換することが必要となる。操作工程の間において、インピーダンスの正確な整合は、実用上、反射されるRFパワーを全く生じさせない結果となり、1に近い定在波比(SWR: standing wave ratio)となる(即ち、実用上、定在波は存在しない)。このことは、純粋な進行波を生じせしめ、この進行波は、負荷抵抗(即ち、プラズマガス放電(8)及び生物組織(7)の表面)により完全に吸収される。
【0062】
生物組織(7)の表面は、電極としてだけでなく、RFパワーの一部に対するデシペータ(消失器)として機能する。生物組織のインピーダンスは、約300Ωであり、弱い負のリアクタンスを備える。このことは、300Ωの抵抗器とこれに平行に配された1.5−2.5pFのコンデンサによりシミュレート可能である。したがって、プラズマガス放電(8)と生物組織(7)の表面は、RF発電機(1)に対する負荷抵抗として働く。
【0063】
RFパワーの消失は、プラズマガス放電(8)内で85%−95%、生物組織(7)の表面で5−15%生ずる。なぜなら、最大の電磁場密度は、ノズル電極(6)の近傍で生ずるからである。生物組織(7)の表面は、ノズル電極(6)から数センチメートル離れた位置に配されるので、RF電場を相互作用する生物組織(7)の表面の真の大きさ寸法は大きくなる(即ち、20−40cm2)。したがって、この場合における生物組織(7)の表面の「実質的な」抵抗値は、生物組織(7)の表面とノズル電極(6)を直接的に接触させた場合の抵抗と比較して非常に小さくなる。
【0064】
このシステムに対する電気力学的モデルは、リアクタンス素子(例えば、平行に配されたコンデンサなど)と直列に配される2つの抵抗器である。総抵抗値は、ノズル電極(6)の種類及び生物組織の表面(7)とノズル電極(6)の間の距離に依存する。例えば、図2に示すノズル電極(6)の第1の実施形態の場合において、ノズル電極(6)は、生物組織(7)の表面から1cmの距離の位置に配される。この構造(プラズマガス放電(8)と生物組織(7)の表面)の総抵抗値は、400Ωである。ここで、プラズマガス放電(8)の抵抗値は、350Ωであり、生物組織(7)の表面の抵抗値は、50Ωである。したがって、もし、プラズマガス放電(8)のRFパワーの振幅の二乗平均平方根が350ワットであるならば、パワーの消失は、生物組織(7)の表面において、50ワットであり、プラズマガス放電(8)において300ワットである。
【0065】
プラズマガス放電(8)中の消失したRFパワーは、プラズマガス放電粒子の運動エネルギとポテンシャルエネルギに変換され、この運動エネルギとポテンシャルエネルギがエネルギの大部分をなす。なぜなら、RF放出は、生物組織内で消失するためである。
【0066】
相互作用を生ずる間隙は、装置の最も外側にある端部と生物組織(7)の表面の間の物理的な間隙と混同されるべきでない。この物理的間隙と相互作用を生ずる間隙が同一である場合もあるが、同一でない場合もある。
図1Cに示すGyrus社の従来技術の場合、相互作用を生ずる間隙は、ハウジング(20)を越えて延出することはない。したがって、相互作用を生ずる間隙は、如何なる生物組織を含むものとならない。一方で、従来技術の物理的間隙は、明らかに、ハウジング(20)とターゲット表面の間の間隙となる。
【0067】
操作工程において、ひとたび、点火が維持されると、放電は、所望の処理に必要とされる限り、維持されることとなる。
好適な実施形態が、拡散性のプラズマガス放電を含む場合、他の種類の放電が可能である。好適な実施形態は、低い電子温度と、生物組織の治療に好適な電子濃度を結果としてもたらすこととなる。この種の放電は、生物組織の所望の領域に拡がる。この種の放電のパラメータは、制御可能であり、例えば、パワー、電流密度、幾何学形状(特に、位置)とすることができる。
【0068】
全ての構造におけるプラズマガス放電の活性種(プラズマ流束)は、原子イオン、分子イオン、原子ラジカル、分子ラジカル、励起状態のイオン、励起状態のラジカル、エネルギイオン、エネルギラジカル、冷却イオン、冷却ラジカル、エネルギ電子及びガスの任意の要素からなる群から選択される少なくとも1つの種を含む。
生物組織(7)の表面に対してノズル電極(6)を電気的にバイアスをかける能力は、イオン化ガスの流れを生物組織(7)の表面に促すこととなる。
【0069】
上述した如く、プラズマガス放電には2種類ある。1つは収縮型であり、他方は拡散型である。
拡散型のプラズマガス放電は、治療用途(例えば、加熱、生物学的光刺激或いはイオンシャワ(即ち、化学的且つ生物学的に活性を示す粒子(イオン、フリーラジカルなど)により治療すること))に多くの場合用いられる。
収縮型のプラズマガス放電は、生物組織に対して、切断、アブレーション及び/又はエバポレーションを行なうことができる。なぜなら、収縮型のプラズマガス放電は、高いエネルギ密度(即ち、低いプラズマガス放電体積)を有するからである。生物組織に対するシステムの作用因子は、RF電場、電子、正イオン、負イオン、フリーラジカル、光放出(フォトン)、中性子及びガス流れ(或いは、流量)とすることができる。
【0070】
拡散型のプラズマガス放電において、生物組織内で直接的に消失するRFパワーの推定値は、RFパワーの総入力量の5−10%である。生物組織内で消失するRFパワーは、RF電流及び回転励起された双極子モーメント(多くの場合、水分子)を引き起こすことにより、組織の温度を増加させる。
【0071】
自由電子の濃度は、正イオンの濃度に略等しい。負イオンの濃度は、ガス成分に依存し、典型的には、非常に低く、不活性ガスでは無視できる程度である。自由電子の濃度は、10−2−10−3(即ち、0.1−1%)である。非常に低い電子質量と高い平均運動エネルギ(3−8eV)を与えると、生物組織内で粒子の電子励起が可能となる。電子エネルギの大部分は、プラズマガス放電それ自体で消費される。このことは、主に、中性粒子の励起(原子及び分子の電子と回転レベル両方)に繋がる。
【0072】
低いエネルギでは、正のイオンの濃度は低い。正のイオン及び負のイオンの温度は、中性粒子の温度に等しく、室温に近い。したがって、イオン並びに中性粒子の運動エネルギは、プラズマ放電エネルギを生物組織へ運ぶ主要なチャネルとはならない。さらに、ガスの流れは、実質的なエネルギを加えることにもならない。
【0073】
RF電場は、電磁エネルギのほとんどを電子チャネルに与える。拡散型プラズマガス放電の電子エネルギの分布関数の最大値は、3−8eVの領域である。プラズマガス放電のイオン化は、電子エネルギの10−15%を占めると考えられる。残りは、上述した様々な励起チャネルとなる。それゆえ、拡散型のプラズマガス放電の効率的なプロセスは、中性粒子の励起である。励起した状態の粒子の寿命は、多くの因子に依存する。この因子としては、ガス圧、ガス成分、ガス種などを挙げることができる。励起した粒子は、1秒以下の寿命で準安定状態となる。励起した粒子は、内部衝突、フォトン放射及び生物組織との相互作用を通じて、そのポテンシャルエネルギを失う。ガスの流れの存在に起因して、最も重要なプロセスは、励起した粒子と生物組織との相互作用となる。
【0074】
生物組織は、放射される光の照射を受ける。文献において既知であるが、これにより、生物学的光刺激を作り出すことができる(例えば、6328Åの波長のHe−Neレーザの放射でミトコンドリア細胞を刺激できる)。もし、プラズマガス放電が、He−Neレーザで用いられるガス混合物に似たガス混合物を用いて作り出されるならば、励起した(準安定状態の)中性のNe原子からのエネルギは、非弾性的な衝突を介して、効果的に生物組織内にもたらされる。このプロセスの効率は、He−Neレーザの場合よりもはるかに高い。レーザの場合において、励起したNe原子は、エネルギのより低い準位への遷移の後、フォトンを生物組織に照射する。したがって、効率は非常に低い(<1%)。プラズマガス放電の場合、励起した粒子が、直接的に、生物組織と相互作用をなす。
【0075】
フリーラジカル及び化学的に活性を有する分子は、生物組織との化学反応を受ける。プラズマガス放電により励起したCO2を用いて治療することは、重要なプロセスの一例となる。
【0076】
ノズル電極(6)が導電性である場合(例えば、Au,Ag,Cu,Al)、好適な実施形態の方法は、外面にアルミナコーティングを施されたアルミニウム製のノズル電極を利用する。この結果、ノズル電極(6)からの電子放出を生ずることなく、拡散型の放電を得ることができる。
【0077】
更に、様々な治療に対する操作方法は、ノズル電極(6)とガスの流れ(9)のパラメータの選択だけでなく、ガスの選択をする必要がある。例えば、アブレーション治療に対して、本発明の方法のうち一の実施形態では、約5%のO2と約95%のヘリウムが利用される。この場合、酸素は、酸化剤としての役割を主に担うこととなる。
【0078】
本発明の特定の特徴のうち、明瞭化のため、本明細書において別個の実施形態に関連して説明されているものが、単一の実施形態に組み合わされて提供されてもよい。逆に、本発明の様々な特徴のうち、簡便化のため、単一の実施形態中で説明されているものが、別個に或いは適切な組み合わせを以って、提供されてもよい。
【0079】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、多くの代替形態、改良形態及び変更形態が、当業者にとって明らかである。したがって、本発明の技術的範囲は、請求の範囲に記載の要旨及び広範な範囲内に存在する代替形態、改良形態及び変更形態を網羅するものである。本明細書で述べられる全ての公報、特許及び特許出願は、本明細書中に参照として、その全体が組み込まれ、個々の公報、特許或いは特許出願が特定的に且つ個別に開示しているが如く、本明細書中に組み込まれるものである。加えて、この出願中の如何なる参考文献或いは参考文献の表示は、従来技術として、本発明の例示的なシステムに利用可能なものであると解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明の例示的なシステムのいくつかの実施形態に係る単純化された概略的模式図であり、RFプラズマガス放電装置の様々な部品並びにこれらの相互接続を表す。
【図1B】本発明の例示的システムのいくつかの実施形態に係る単純化された概略的模式図であり、ノズル電極と装置のハウジングの物理的な関係を表す。
【図1C】従来技術におけるGyrus社の装置の単純化された概略的模式図であり、電極と装置の物理的な関係を表す。
【図2】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、層流のガス流れ特性を生ずる通常のノズル電極構造を示し、トーチ型のプラズマ輪郭を形成する。
【図3】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、誘電性の円筒状の空洞部付取付具を備える通常のノズル電極を表す。プラズマは、空洞部全容積を占め、空洞部形状のプラズマ輪郭を形成する。
【図4】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、乱流のガス流れ特性に起因した低い電流密度且つ大きな放電断面を生ずるノズル電極構造を表す。
【図5】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、狭いフレイムタン先端形状のようなプラズマトロン型のプラズマ輪郭を形成するとともに、非常に高い電流密度と非常に小さな放電断面を生ずるノズル電極構造を表す。
【図6】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、椀状のノズル電極を表す。このノズルは、非等電位表面を有する生物組織に起因するRF加熱とプラズマ操作を同時に可能とし、内部容積をほとんど満たすプラズマを生じさせ、ノズル電極に関連するプラズマ輪郭が作り出される。
【図7】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、球状のノズル電極構造を表す。このノズル構造は、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、これにより、非等電位表面を有する生物組織に起因するRF加熱とプラズマ操作を同時に可能とする。また、全内部容積を略満たすプラズマをこのノズル構造は生じせしめる。この結果、リング型のプラズマ輪郭が得られることとなる。
【図8】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、誘電性の円筒状の導管取付具を備える通常のノズル電極構造を表す。この取付具は、ノズル電極内部に延出し、ノズル電極は、コンジット内部で点火されたプラズマガス放電を生じさせ、ガス流れを通じてプラズマガス放電を搬送する。これにより、プラズマの輪郭形成がなされることとなる。
【図9】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、電極コントローラの様々な部品並びにこれらの相互接続を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明に係る例示的なシステムは、生物組織を治療する改善されたシステム並びに方法に関する。より詳しくは、大気圧下でRFプラズマガス放電を行い皮膚層を治療するシステム並びに方法に関する。ガスノズル電極は、RFエネルギを結合するアンテナとしての役割を担い、実質的に第2の電極として働く隣接する生物組織と協働して機能を発揮する。ガス放電或いはプラズマの制御は、様々な方法で達成される。例えば、ガスノズル電極の形態、ガスの性質、ガス流れのパラメータなどである。本発明のシステム並びに方法は、皮膚治療技術、剥皮技術及び皮膚蘇生技術などの幅広い範囲に利用可能である。また、本発明のシステム並びに方法は、治療の必要性に応じて最適化可能である。特に、熱損傷を最小限にする皮膚層に対する低温アブレーション用の条件や、制御された局所的な皮膚層への加熱に対する条件を達成可能である。
【背景技術】
【0002】
剥皮或いは皮膚蘇生といった皮膚治療は、治療に応じて最外の皮膚層或いは表皮に近い皮膚層の除去及び/又は改質を含む。皮膚治療は、皺の除去、毛穴の引き締め、皮膚の平滑化、筋肉の引き上げ、コラーゲンの刺激、ほくろ(例えば、刺青、傷跡、外傷、しみ、過度の色素沈着)の除去及び体毛除去並びに成長抑制などといった必要性に応じて適用される。
皮膚治療に対して従来提案されてきた方法は、主に、局所的な治療に関するものである。局所的な治療とは、クリームや軟膏といった本質的に化学的なもの、機械的なもの(即ち、アブレーション)やこれらの両方を意味する。これらの治療は、長期間にわたって皮膚治療を施すべき問題(病変)を低減させるものでなく、問題の再現を防ぐ点において、臨床的な有効性を示すものではない。加えて、化学的及び機械的な「ピーリング」は、問題を有する皮膚領域及び/又はそれを取り巻く組織に損傷を与えるものとなり得る。
【0003】
更に、新たに提案された方法として、レーザ、RFプラズマ及びLED光エネルギを利用して、皮膚層とこれらを相互作用させる皮膚治療を挙げることができるが、これら方法それぞれが適用に際して、有利な点と不利な点を有する。
【0004】
従前の利用可能な代替的方法は、本発明の例示的なシステムにより取り除かれる不利な点により特徴付けられる。これらの問題は、技術の種類に関連するものであるが、操作条件が限定されていること、過度の皮膚加熱及び/又は火傷を引き起こすこと、不完全なしみの除去、長期間にわたる治癒期間、発疹、他の肌荒れ及び/又は合併症状などである。
【0005】
従来技術に係るシステムの一例が、米国特許第6,105,581号公報(承継人:ArthoCare Corporation)に開示される。この特許公報は、電気的に伝導性を有する溶解液(例えば、食塩水)を用いて、皮膚と電気外科用プローブとを接触状態にする技術を開示する。プローブへRFエネルギインパルスを与えると、溶解液中にプラズマが生じ、皮膚表面及び脊柱中の細胞に対するアブレーションが生ずる。溶解液は、プラズマから熱を奪い、低温を維持する。この結果、レーザ剥皮に関連する過度の皮膚への加熱の問題が緩和されることとなる。この技術は、時折、従来技術において、Coblation(登録商標)技術と称されている。
しかしながら、この特許技術は、固有の不利な点を有する。即ち、溶液が塗布された様々な領域においてプラズマにより生ずる「熱点」に起因して、皮膚治療領域の制御が不十分となるということ並びに皮膚治療領域にプローブを接触させる必要があることにより操作形態が制限されるということである。
【0006】
従来技術に係るシステムの他の実施形態が、米国特許第6,518,538号公報(承継人:Mattioli Engineering Ltd)に開示される。この特許は、RFプラズマガス放電を用いて、皮膚層を加熱し、この皮膚層に選択的にダメージを与える技術である。治療される皮膚層は、プローブにより密閉状態とされ、プローブ内は真空状態とされる。RFエネルギを与えられる電極とヘリウムガスは、プローブ内にもたらされ、これにより、プラズマが作り出される。
しかしながら、この特許技術は、固有の問題を有する。即ち、真空状態を維持した状態で操作しなければならないという操作上の制限、プローブの位置によって治療領域が制限されるということ並びに外部から不都合な結果がもたらされないように好適な真空状態を維持しなければならないということである。
【0007】
従来技術に係るシステムの他の実施形態が、米国特許第6,629,974号公報(承継人:Gyrus Medical Limited)及び米国特許第6,723,091号公報(承継人:Gyrus Medical Limited)に開示されている。このシステムは、窒素を用いたRFプラズマガス放電を利用する。このプラズマガス放電は、6mm径大のスポットのエネルギを治療領域に送る。レーザを元としたシステムの主要な有利点の1つは、RFエネルギを熱へと変換する媒介発色団の影響を受けない点である。したがって、熱の消失は制御可能となり、均一となる。更に、治療領域上の多数の火炎プラズマの経路は、レーザを基礎としたシステムにおいては、追加的な熱ダメージとなることはない。
しかしながら、このシステムは、固有の不利な点を有する。即ち、皮膚治療に対して、活性を有するプラズマ領域が小さく、この小さなプラズマ領域を以ってのみしか操作できないことである。このことは、部分的には、プラズマが、装置のハウジング内で点火するという事実に起因する。このことは、プラズマの輪郭形成を促す電極と皮膚表面間の有益な電磁的相互作用を阻害する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,105,581号公報
【特許文献2】米国特許第6,518,538号公報
【特許文献3】米国特許第6,629,974号公報
【特許文献4】米国特許第6,723,091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記制限を有さないRFプラズマガス放電を利用して生物組織を加熱する改善されたシステム並びに方法を有することは非常に有益であり、この必要性は広く理解されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の必要性は、本発明に係る例示的なシステムのいくつかの特徴により満足される。
まず、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極を備え、前記電極は、前記装置内に配され、前記電極と前記生物組織表面が接触すると、前記電極から前記生物組織表面への電流経路が形成され、これにより、前記電極が、前記ガス流れに点火し、前記プラズマガス放電を作り出すことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、ノズル電極であり、該ノズル電極が、ノズル部を備え、該ノズル部が、前記ガス流れを受け止めることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ノズル電極が、前記ガス流れに点火することにより、前記ノズル部の外側の少なくとも一領域に前記プラズマガス放電が作り出されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置が、大気圧下又は大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織をアブレートすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を切断することにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に向けて経皮的なイオン搬送をすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を加熱することにより、効果的に前記生物組織を治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に生物学的光刺激を与えることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、プラズマガス放電と前記生物組織との化学反応を生じせしめ、これにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れが、拡散性のガスの流れであることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを作り出すガス源を更に備え、
該ガス源が、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素分子(O2)、窒素分子(N2)、窒素酸化物、炭素酸化物、水蒸気、揮発性の有機ガス及び揮発性の無機ガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを供給することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、アルミニウム、銀、金、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属からなることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極表面に接続する誘電バリアを更に備え、該誘電バリアは、前記電極表面の導電率を低減させ、これにより、前記生物組織表面への導電電流の伝達を遅らせることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、トーチ型輪郭を形成するように前記電極の寸法が定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、前記電極が、前記プラズマガス放電を形成するように形成され、該プラズマガス放電が、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を略占めることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、非常に低い電流密度と高い放電断面を備える前記プラズマガス放電を形成するように形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、前記プラズマガス放電から狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の輪郭を形成するように形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織の表面が、非等電位表面となるように前記生物組織の前記表面との相互作用が得られるように前記電極が形成並びに配置され、前記生物組織の瞬時の加熱並びにプラズマガス放電の維持が可能となることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、椀状の輪郭をなすように形成されるとともに、直接的に前記生物組織に接触するように配され、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面となり、前記プラズマガス放電が、前記電極の内部容積を略満たすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備えるとともに球状輪郭をなすように形成され、前記電極は、前記生物組織に直接的に接触し、前記生物組織の前記表面が非等電位表面となり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極は、誘電性の円筒形状の導管取付具を備え、該導管取付具は、前記電極内部に延出するとともに直接的に前記生物組織に接触し、これにより、前記誘電性の円筒形状の導管取付部内部で前記プラズマガス放電が発生し、前記プラズマガス放電が前記ガスの流れによって、前記生物組織に搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源及びフラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加の部品を更に備え、これにより、生物組織に追加的な治療を施すことが可能となることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、前記プラズマガス放電用のアンテナとして機能するとともに、前記プラズマガス放電に対する前記ガスの流れのパラメータに影響を与えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、前記ガスの温度を大きく低減(断熱膨張)させることに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、層流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、乱流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、経皮的なイオン搬送を行なうのに効果的なガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、RF発電機(増幅器)により作り出され、該RF発電機は、前記プラズマガス放電を点火並びに維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を有することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、電極コントローラを更に備え、該電極コントローラが、前記電極のパワー特性を調整することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、RF電源を備え、該RF電源が、RF電力を前記電極に供給することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが移相器を備え、該移相器が、一方向に向けられた進行波の移相を変化させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含むことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、RF共振器を備え、該RF共振器が、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極コントローラが、(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記誘電バリアが、前記電極上の誘電性のコーティングとしてもたらされることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、アルミニウムから主になり、前記電極バリアが、アルミナコーティングとしてもたらされることを特徴とする。
【0011】
本明細書において初めて、ガス流れから輪郭形成されたプラズマを用いて、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される方法は、(a)前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極と、(b)前記電極を保持するハウジングを備え、前記電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、前記ハウジングの外側に略位置するように前記装置が形成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極が、電極ホルダを用いて前記ハウジングに取り付けられ、前記電極ホルダが、前記ハウジングに対する前記電極の位置決めと、前記電極へ前記ガス流れのガスの搬送を行うことの両方の役割を担うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極のうち少なくとも一部が、前記ハウジング上に露出し、前記生物組織の前記表面に直接的に接触可能であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極の配置位置が、ハウジングに対して調整可能であり、前記生物組織の治療領域を制御手段として、前記生物組織の前記表面に沿って前記電極の配置位置は移動可能であることを特徴とする。
【0012】
本明細書において初めて、生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、連動したパワーが前記RF発電機から搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電に送られる前記出力RFパワーが連続モード又はパルスモードで連動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器がトロンボーン型であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器が、少なくとも部分的に同軸ケーブルから構成されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記移相器によりもたらされる位相の変化が可変であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、L型構造、T型構造及びπ型構造からなる群から選択される形状によって特徴付けられる一定の構造を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、広帯域のインピーダンス変成器であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記IMNが、可変であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(f)前記装置が更に、給電ケーブルを備え、該給電ケーブルは、前記IMNを用いて、前記電極と前記RF共振器を接続することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記給電ケーブルが、n*λ/2の長さで定義される共振長さを有し、λは、前記給電ケーブルの材料中の前記出力RFパワーの波長であり、nは、全体の数であることを特徴とする。
【0013】
本明細書において初めて、ガス流れから形成されるとともに輪郭形成がなされたプラズマを用いて生物組織を治療する装置が開示される。この開示される装置は、(a)ガス搬送を行なうとともに、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出すノズル電極と、(b)前記ノズル電極を保持するハウジングを備え、前記ノズル電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記ノズル電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記ノズル電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする。
【0014】
本明細書において初めて、生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、(a)電極にガス流れを供給する段階と、(b)前記生物組織の表面と電極を互いに近接させ、前記電極と前記生物組織が、互いに略電気的にシールドされていない状態とし、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に対するアブレーションにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に対する切断処理を施すことにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に経皮的にイオンを搬送することにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に加熱を施すことにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織に生物学的光刺激を与えることにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、該生物組織と、前記プラズマガス放電を化学反応させることにより治療されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、電気的に接地された状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記生物組織が、電気的に接地されていない状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プラズマガス放電が、大気圧下若しくは大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、(e)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、(f)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、(g)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、(h)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火をする段階が、電極ホルダを介して前記装置に固定された電極からのガスの流れに点火する段階を備え、前記電極ホルダは、前記電極にガスを搬送する役割を担うことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からのガスの流れに点火する段階が、前記生物組織の前記表面に直接接触して配された前記電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からのガス流れに点火する段階が、前記生物組織の治療位置を変化させる手段を用いて、前記生物組織の前記表面上を移動可能な電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)前記電極と前記生物組織の前記表面の間に誘電バリアを配する段階を備え、該誘電バリアが伝導電流の移動を遅らせることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、大気に曝された電極からのガス流れに点火する段階であり、該電極が、トーチ型の輪郭をなす前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びにその形状を定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を前記プラズマガス放電が占めるように前記電極の大きさ並びにその形状が定められることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を有する前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに輪郭形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、狭いフレイムタン(プラズマトロン)形状のプラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織の表面と相互作用するように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面であり、これにより、前記生物組織の加熱及び前記プラズマガス放電の維持が同時になされることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織に直接的に接触する椀状の輪郭形状をなす電極からのガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、前記ノズル電極の内部容積を満たすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を有するとともに前記生物組織に部分的に直接接触する球状の輪郭形状を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の表面が、非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の導管取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、該誘電性の円筒形状の導管取付具は、前記電極の内部に延出し、該電極は、直接的に前記生物組織に接触し、前記誘電性の円筒形状の導管取付具内部でプラズマガス放電が点火され、該プラズマガス放電が、ガスの流れにより、前記生物組織に搬送されることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、(d)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源、フラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な部品を用いる段階を備え、追加的に前記生物組織を治療することを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを供給する段階が、前記ガスの温度を大きく低減させるのに好適な流れ特性(断熱膨張)を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、層流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、乱流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ガス流れを提供する段階が、経皮的なイオン搬送を容易にするのに適した流れ特性を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記段階(a)乃至(c)が順次実行されることを特徴とする。
【0015】
本明細書において、生物組織を治療する方法が初めて開示される。この開示される方法は、(a)電極にガス流れを供給する段階と、(b)前記電極から前記生物組織の表面に電流経路を形成し、これに付随して、前記ガス流れに点火してプラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより前記生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする。
【0016】
本明細書において初めて、プラズマガス放電を用いて生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、(a)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、(b)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、(c)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、(d)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、(e)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする。
【0017】
本明細書において初めて、輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法が開示される。この開示される方法は、輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法であって、(a)ガス流れを提供する段階と、(b)該ガス流れからのガスに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、(c)前記生物組織の表面を前記プラズマガス放電に曝す段階と、(d)前記曝された生物組織の表面と電磁的な相互作用を生ずる間隙を横切る前記プラズマガス放電の間の電磁的な相互作用を用いて、前記プラズマガス放電の輪郭形状を整え、これにより生物組織を治療することを特徴とする。
【0018】
本明細書において初めて、生物組織を治療する方法として、生物組織に向けられるプラズマ流束の経皮的なイオン搬送を行う方法が開示される。この開示される方法は、(a)生物組織表面をプラズマガス放電のプラズマ流束に曝す段階と、(b)生物組織表面下方の生物組織にプラズマ流束を経皮的に搬送する段階からなる。
いくつかの実施形態において、プラズマ流束を経皮的に搬送する段階が、原子イオン、分子イオン、原子ラジカル、分子ラジカル、励起状態のイオン、励起状態のラジカル、エネルギイオン、エネルギラジカル、冷却イオン、冷却ラジカル、エネルギ電子及び供給ガスの任意の要素からなる群から選択される少なくとも1つの種のプラズマ流束を経皮的に搬送する段階であることを特徴とする。
これらの実施形態及び更なる実施形態は、以下の詳細な説明並びに実施形態により明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、以下に、図面を参照しつつ説明されるが、この説明される実施形態は、単に例示に過ぎない。特に図面において詳細に説明されるものは、特に一例として示されるものにすぎず、本発明の例示的なシステムの好適な実施形態を表現し、説明する目的のためにのみ用いられるものである。この説明に用いられる実施形態は、最も有用であろうと考えられるものであり、本発明の原理並びに概念的特徴に対する説明を容易に理解させるものである。この点において、本発明の基本的理解に必要とされる以上に詳細に本発明の構造的詳細を明らかにする意図はなく、以下の図面を伴う説明は、当業者に対して、本発明のいくつかの形態が実用上どのように具体化されるかを明らかにするものである。
【0020】
例示されるシステムの実施形態において、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置並びに方法が提供される。
例示されるシステムのいくつかの実施形態にしたがって、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置が構築され、この装置の原理並びに操作に関して、図面並びに下記の説明を参照して、より良い理解を得られるものとなる。
【0021】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、以下の記載において説明される部品又は図面に表される部品の構造及び配置に、本発明の適用形態が限定されるものではない。本発明は、他の実施形態で実施すること、実用化すること又は様々な方法で実行することが可能である。加えて、本明細書で用いられる表現及び用語は、説明の目的のために使用するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきものでない。
【0022】
図1Aは、輪郭形状が整えられたプラズマを用いて生物組織を治療する装置を示す図であり、この装置は、例示的に示されるシステムの例示的な実施形態にしたがって、構築されている。
この装置は、RF発電機(増幅器)(1)を備える。RF発電機(1)は、出力RFパワー(10)を作り出す能力を備え、出力RFパワー(10)は、電極、ノズル電極(6)に向かう。ノズル電極(6)は、生物組織(7)の表面に接触可能である。
ノズル電極(6)は、所望量のエネルギを、大気圧下或いは大気圧以上の圧力下で流動するガス(9)に送る能力を備える。ノズル電極(6)は、装置内に配され、生物組織表面への電流経路の形成を促すとともに、ノズル電極(6)が生物組織に接触すると流動するガス(9)に点火し、プラズマ放電を作り出す。
【0023】
本明細書で示されるように、電極又はノズル電極が「装置内」に配され、特定の機能をもたらすとき、この機能は、(a)電極に本来的に備わっている物理的又は幾何学的特性、(b)他の装置部品(例えば、装置のハウジング)に関連する電極の幾何学的構造及び(c)他の装置部品(例えば、1若しくはそれ以上の装置の電気部品)に関連する電極の機能的関係にうち少なくとも1つに関連する。
「装置内」との用語は、1若しくはそれ以上の装置部品(例えば、装置のハウジング)内に物理的に電極が存在することを必要とすることを示唆するものではない。実際には、いくつかの実施形態において、「装置内に配される電極」が装置のハウジングに取り付けられ、ハウジングの外側に存在する場合もある。
【0024】
本明細書で説明される例示的なシステムは更に、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラ(2)を備える。コントローラ(2)は、RF発電機(1)から送られる出力RFパワー(10)を調整し、出力RFパワー(10)は、矩形パルスを用いた所望の周波数となり、所定の持続期間並びに振幅を備えることとなる。例えば、動作RF周波数が40.68 MHzである場合、PWM周波数が50Hzから20kHzであり、デューティサイクルが2から100%である。プラズマガス放電(8)を生じせしめる所望の平均RFパワーの水準をもたらすことにより、大気プラズマガス放電(8)を得る場合に、この制御は重要となる。更に、高い振幅のRFパワー(瞬時出力パルス)をもたらすことを可能とする。高い振幅のRFパワーは、プラズマガス放電(8)を点火によりもたらすのに重要である。更に、プラズマガス放電(8)の電圧は、パワー入力の増大にかかわらず一定である(或いは、かすかに上昇する)ことが知られている。通常の放電モードにおけるプラズマガス放電体積を増大させることにより或いは異常放電モードにおける電流密度を増大させることにより、RFパワーを増大させることは、プラズマガス放電電流の増大につながる。プラズマガス放電との用語は、本明細書において、プラズマや、場合によっては、ガス放電を意味するものとする。
【0025】
PWMコントローラ(2)は、基本RFパワーよりはるかに低い周波数を備える変調RFパワーをもたらす(例えば、40.68 MHzが基本正弦振動波である場合、10kHzの矩形変調波となる)。PWMコントローラは、本発明のシステムにおいて非常に重要な部品である。なぜなら、所望の水準の平均RFパワーを備えるガス放電体積に作用する高い水準のRF電圧を、PWMコントローラはもたらすからである。高い水準のRF電圧(或いは、RFパワーの振幅)は、プラズマガス放電(8)を持続させるのに必要とされる。また、高い水準のRF電圧は、単純な固定IMNの用途にも必要とされる。この場合、IMNは、RFパワーの時間依存性を参照せず、同じRFパワー振幅で作動する。RFパワーの平均水準は、作動の間、低くなる。
【0026】
例示的なシステムは更に移相器(例えば、トロンボーン型移相器)(4)を備える。移相器(4)は、RF発電機(1)に接続する。移相器(4)は、一方向に向かう出力RFパワー(10)の進行波の位相を変化させる能力を備える。これにより、出力RFパワー(10)からのエネルギが、主として、プラズマガス放電(8)に集中することとなる。このことは、点火工程並びにプラズマガス放電(8)の操作工程を容易化する。
【0027】
例示的なシステムは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)(3)を備える。インピーダンス整合ネットワーク(3)は、移相器(4)とノズル電極(6)に接続する。インピーダンス整合ネットワーク(3)はプラズマガス放電(8)、ノズル電極(6)及び生物組織(7)(DNT: discharge-nozzle-tissue: 放電−ノズル−組織)を含む装置の総合インピーダンスを公称値(例えば、250-350Ω)から補正値(例えば、50Ω)に変換する能力を備える。
補正値は、RF発電機(1)と移相器(4)の特徴的なインピーダンスに整合する。これにより、出力進行波は、定常波に変換されることなしに、プラズマガス放電(8)を持続させる。
【0028】
高い水準のRF電圧(或いは、RFパワーの振幅)は、固定モードでIMN(3)を使用するために必要とされる。この場合、IMN(3)は、RFパワーの時間依存性を参照せず、それ故、同一のRFパワー振幅で応答する。このようにして、プラズマガス放電体積に作用するRFパワーの平均振幅が、RFパワー振幅よりも低くすることができることは考慮されるべき事項である。IMN(3)は、様々な種類の固定型或いは可変型IMN(例えば、L、T、π型若しくはそれ以上に複雑なユニット)であってもよい。
【0029】
例示的なシステムは更に、RF共振器(5)を備える。RF共振器(5)は、IMN(3)並びにノズル電極(6)に接続する。操作工程において、RF共振器(5)は、所望量のエネルギを周期的に蓄積並びに放出する。RF共振器(5)は、点火工程において、所望量のエネルギの集中化を図る能力を備える。このことは、異なるガス組成物をプラズマガス放電(8)に使用することを可能とするために重要である。ガス組成物の変化は、ガスの電離ポテンシャルを変化させる。
RF共振器(5)は、高いQ値(例えば、100以上)を備える。RF共振器(5)は、インデューサとコンデンサが並列に接続されてなる並列型であることが好ましい。
RF発電機(1)、PMWコントローラ(2)、IMN(3)、移相器(4)、RF共振器(5)及びノズル電極(6)間の相互接続は、給電伝送ケーブル(22)を用いて行なわれる。給電伝送ケーブル(22)の特性は、後述される。
【0030】
例示的なシステムは更に、ノズル電極(6)を備え、ノズル電極(6)は、RF発電機(1)(RF発電機(1)は、PMWコントローラ(2)からの適切なエネルギ制御を受けている)から流動するガス(9)にRFパワー(10)を送り、プラズマガス放電(8)を生じせしめるとともに安定化させる能力を備える。出力RFパワー(10)が、移相器(4)、IMN(3)及び共振器(5)により処理された後、このプラズマガス放電(8)は、生物組織(7)を治療するために用いられる。
【0031】
典型的には、本発明の装置の操作によって、出力RFパワー(10)からの2−4%の追加的なエネルギ反射を伴う出力RFパワー(10)から2−4%のエネルギ損失が生ずる。このことは、本発明の装置が、出力RFパワー(10)からプラズマガス放電(8)に向けて、90−95%のエネルギを確実に送ることができることを意味する。
出力RFパワー(10)からのエネルギ集中とこのような効率の程度いずれもが、従来利用可能な他の代替的装置・方法では達成できるものではなかった。IMN(3)は、生物組織(7)の表面からの出力RFパワー(10)の反射を低減させる。これにより、プラズマガス放電(8)へ送られるエネルギの効率が増大することとなる。
【0032】
図1Bは、本発明の装置の断面図であり、プラズマガス放電(8)が得られる部分を概略的に示す。図1Bは、従来技術に対する本発明の例示的なシステムの固有の優位点のうち1つを強調するために用いられる。重要な詳細部分に係る要素は、ノズル電極(6)、ハウジング(20)及びプラズマガス放電(8)の相対的位置関係である。
ノズル電極(6)は、電極ホルダ(11)を用いて、ハウジング(20)に固定されている。ハウジング(20)が、電極内に配されるものでなく、また、電極そのものでないことは明瞭化すべき事項である。図1Bの例示的実施形態に示されるごとく、電極ホルダ(11)は、2つの目的を有する部品であり、電極ホルダは、ガス源(図示せず)からのガスの流れを受け止めるガス流入口の役割も担う。
尚、このことは、本発明の例示的なシステムに何ら制限を加えるものではない。ある実施形態においては、ガス流入口は、別個に設けられることができる。更に、図1Bに示されるような「ガス流入口」は、本発明の装置のハウジングの外方位置からのガスを受け止めるが、このことは、本発明の例示的なシステムに何ら制限を加えるものでない。
【0033】
図1Bに示される構造において、ノズル電極は、ハウジングにより、略電気的にシールドされていない状態である。この結果、ノズル電極(6)が電磁的に生物組織(7)の表面と相互作用することが可能となる。明瞭化のため、ノズル電極(6)の入口は、電極ホルダ(11)からのガスを受け止め、プラズマガス放電(8)がノズル電極(6)の外側(例えば、流出口で)形成されることを付記する。
【0034】
更に、本発明の装置からの接地電極が設けられていないことにより、プラズマガス放電(8)の形を整えることが可能となり、この結果、様々な種類の皮膚治療が可能となる。本明細書で用いられるプラズマガス放電の「形を整える」との用語は、プラズマガス放電の輪郭形状を維持することを意味することはもちろんのこと、輪郭形状を変化或いは変形させること両方も意味するものである。
【0035】
全く対称的な例として、図1Cは、Gyrus社の従来技術の特徴を概略的に示す図である。図1Cは、明瞭に、電極(6)が完全にハウジング(20)内部に配されていることを示す。
この構造は、任意の外表面との電極(6)の電磁的相互作用を妨げる結果となる。なぜなら、ハウジングが、電気的に装置を遮蔽しているためである。このような構造にすると、達成可能なプラズマガス放電の輪郭は、1つの形態、すなわち、トーチ型に限られる結果となる。また、この構造を採用する結果、電流密度及び放電断面といったパラメータへの制御が制限されることとなる。
【0036】
対称的に、本発明の例示的システムの実施形態は、可逆的に装置のハウジングに配置可能な電極(例えば、ノズル電極)を用いることにより、多様に「設定可能な」形態に形を整えることが可能なプラズマ輪郭を提供することができる。このようにして、使用者は、所望のプラズマガス形状を簡便に選択することができる。なぜなら、使用者は、所望のプラズマガスの輪郭を狙い通りに得るのに適切な電極を選択することが可能であり、この選択された電極を装置のハウジングに固定することが可能となるからである。
【0037】
ノズル電極の様々な構造を説明する前に、ノズル電極の形状及び寸法がプラズマガス放電の特徴にどのように影響を与えるかについての一般的な説明をする。
プラズマガス放電は、2つのモード(拡散型と収縮型)で作り出される。両方のプラズマガス放電の型は、生物組織の治療に適切なものである。拡散型のプラズマガス放電は、高いパワー密度をもたらさない。このモードは、高い電圧と低い電流に特徴付けられる。帯電粒子の集中は低い(例えば、10−2〜10−3、イオンと中性物の比率が、0.1から1%)。放電は、非常に一様(或いは、均一)である。このモードは、生物組織の加熱及び生物学的光刺激を与えるのに利用可能である。
【0038】
収縮型のプラズマガス放電は、不均一であり、イオンと電子の高い集中度を備える高温領域を有する。プラズマガス放電の中性温度も高く、その一方で、放電体積は低い。このモードは、生物組織のアブレーション、消散及び切断に適用可能である。
【0039】
ノズル電極の形状及び寸法は重要である。生物組織に直接接触するとき、ノズル電極は、純粋なプラズマガス放電環境をもたらす。この環境において、ガスは、ノズル電極容積を完全に満たし、周囲空気の治療領域への相互作用の低減を図ることが可能となる。
プラズマの輪郭は、ノズル電極の形状に依存する。拡散型のプラズマガス放電に関して、放電プロセスは、異常RFグロー放電として特徴付けられる。このことは、プラズマガス放電の電流密度が、RFパワーの増大につれて増大することを意味する。このプラズマガス放電プロセス(すなわち、異常)は、通常のプラズマガス放電プロセス以上に強力である。
【0040】
ノズル電極が生物組織に接触していないとき、周囲の空気と流動ガスが能動的に混合する。純粋なガスの濃度は、ノズル電極から生物組織の距離が増大するにつれて減少する。乱れた状態の流れ形態に起因して、混合は、ガスの流れの周縁において最も活発に生ずる。したがって、プラズマの輪郭は、プラズマトロン型或いは舌状型に似た形状となる。この通常プラズマガス放電プロセスにおいて、プラズマガス放電体積は、RFパワーが増大するにつれて、増大する。この場合、プラズマガス放電密度は高くない。
【0041】
図2は、通常のノズル電極(6)を概略的に示す。
ノズル電極(6)は、電極ホルダ(11)に取り付けられている。流動ガス(9)は、ノズル電極に流入する。ノズル電極は、流動ガスにエネルギを与え、プラズマガス放電(8)を作り出す。プラズマガス放電(8)は、出口直径の3倍から5倍の距離で、生物組織(7)の表面に相互作用する。この構造において、トーチ型の先端を備えるプラズマの輪郭形状が作り出される。この場合、ガスの流れ(9)は層流的特性を示す。プラズマガス放電が、ノズル電極(6)の出口と生物組織(7)の表面の間で生ずることとなる。
【0042】
図3は、プラズマガス放電(8)が、周囲大気に対して開放状態(図2で示されるような)となっていない点で、図2と相違する。このような構成において、誘電性の空洞部付円筒形取付具(12)が、周囲大気からプラズマガス放電(8)を孤立させる。図2に示す構成においては、プラズマガス放電(8)は、空気と相互作用し、トーチ型の先端を形成したが、図3に示す構成では、空洞部付取付具(12)の空洞部全容積を略占めるプラズマガス放電(8)が作り出される。
【0043】
図4は、他の構成を概略的に示す。
ノズル電極(6)は、流出口径(14)よりもはるかに大きな(例えば、10から20倍)の流入口径を有するように形成される。更に、ノズル電極(6)は、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の間隙よりもはるかに大きな(例えば、3から6倍)の外径を備える。この構造は、ガス流れ(9)に乱流的特性をもたらすこととなる。この構造におけるガス流れ(9)とノズル電極(6)の組み合わせにより、プラズマガス放電(8)が、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面との間の体積全体を占めることとなる。この構造の特徴は、非常に低い電流密度(例えば、電流密度のピークにおいて、100−700mA/cm2及び平均値において、10−200mA/cm2)と、広い放電断面(例えば、2−4cm3)である。この構造は、高い電流密度を要求しない広い表面を治療するのに最も適している。
【0044】
図4に示す形態と反対の形態が、図5に概略的に示される。ノズル電極(6)は、非常に小さく、圧力降下は大きく、ガス流速(9)は高い。ノズル電極(6)と生物組織の表面との相互作用を生ずる領域は非常に狭い。したがって、プラズマガス放電(8)は、狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の先端のような形状をなす。この場合の電流密度は非常に高い(例えば、上記の構造の10−20倍大きい)。この構造は、生体組織に対するアブレーションや切断に最適である。
更に、この構造において、断熱膨張がノズル電極(6)に生ずるならば、断熱膨張を介して、プラズマガス放電(8)の超音波ジェットを得ることも可能である。このようにすることにより、この構造において、経皮的なイオン搬送を通じて、生物組織(7)の表面の治療が可能となる。
明瞭化のため、生物組織の表面との用語は、真皮及び皮下層といった下方に広がる層を含む外表面並びに近表面領域を意味する。
【0045】
図6及び図7は、RF加熱とプラズマガス放電治療を組み合わせたプロセスを概略的に示す。両構成において、生物組織(7)の表面は、非等電位表面である。したがって、単一の電極、ノズル電極(6)が、生物組織(7)の表面を瞬時に加熱するとともにプラズマガス放電(8)を持続させる。
【0046】
図6は、概略的に、本構成の第1の実施形態を示す。図6に示す構成において、ノズル電極(6)は、椀状に形成される。この椀状のノズル電極(6)の外縁は、直接的に生物組織(7)の表面に接触する。そして、流動ガス(9)が、椀形状のノズル電極(6)の内部領域に供給される。プラズマガス放電(8)が、この内部領域で発生する。
【0047】
図7は、上記した構成の第2の実施形態を概略的に示す。この構成において、ノズル電極(6)は、球状の表面を有し、部分的に生物組織(7)の表面に直接的に接触している。プラズマガス放電(8)は、球状のノズル電極(6)内のいくつかの小さな周辺穴(16)を介して作り出される。誘電性の円筒形状をなす空洞部付取付具(12)が、持続性のリング型プラズマガス放電(8)を形成する。
【0048】
図8に概略的に示される構造は、プラズマガス放電(8)を含む。このプラズマガス放電は、誘電性の円筒形状の導管取付具(12)内で引き起こされる。導管取付具は、ノズル電極(6)内部に延出する。誘電性の円筒形状の導管取付具(12)は、水晶やガラスからなることが好ましい。誘電性の円筒状の導管取付具(12)の端部は、生物組織(7)に接触する。プラズマガス放電(8)は、ガス流れ(9)により、生物組織(7)の表面に搬送される。ノズル電極(6)は、点火機能を発揮し、プラズマガス放電(8)を生じさせる。
【0049】
本発明の例示的なシステムは更に、2つの段階を備える方法を具体化する。この2つの段階は、プラズマガス放電点火工程と操作工程である。
プラズマガス放電点火段階は、時間が限定された遷移的段階であり、その期間は、数ミリ秒から数マイクロ秒の間である(作動ガスの静圧が高ければ、プラズマガス放電点火工程の期間が短くなる)。点火のために、放電領域において、所定の閾値電圧(積分パラメータ)に達することが必要である。或いは、放電領域のうち局所的領域において、RF電界強度(微分パラメータ)に達する必要がある。放電絶縁破壊は、この領域から開始し、RF電位(或いは、電界強度)が、十分に高く、放電が維持される領域全体にわたって拡がって行く。
【0050】
点火工程を促すための因子は多数存在する。例えば、ガス圧を低下させること(パッシェン曲線の下限値まで)、ノズル電極(6)の形状、ノズル電極(6)の寸法、ノズル電極(6)と生物組織(7)表面の間隔、ガス種或いはガスの組み合わせ、及び電位分布の不均一性などである。
【0051】
所望体積のプラズマ(イオン化ガス)を作り出すためには、閾値電場の強さより大きな電磁場強さを供給する必要がある。したがって、プラズマガス放電の点火工程は、ガス媒体の絶縁破壊である。閾値電場の強さは多様な因子(例えば、ガス圧、ガス組成物、汚染物の存在、電磁場/波パラメータ、電極形状及び電極材料など)に依存する。尚、電極を必要としない種類の放電も存在することは理解されるべきことである(例えば、光学的放電など)。
【0052】
プラズマとプラズマガス放電(8)の差異は、プラズマが擬似中性の条件に合致する必要がある点である。このことは、正の電荷で帯電した粒子の数が、負の電荷で帯電した粒子の数と等しいことを意味する。プラズマガス放電(8)は、実際には、プラズマを含む領域と含まない領域を備える。
【0053】
点火工程(プラズマガス放電の安定化前)の間、ある問題が存在する。プロセスにおけるこの段階において、プラズマガス放電(8)なしのシステムのインピーダンスが、プラズマガス放電(8)を伴うシステムのインピーダンスと大きく異なることは明らかである。したがって、点火工程に対する最適なIMN(3)のインピーダンスが、点火後(操作工程の間)においては最適なものでないこととなる。点火工程の間のIMN(3)の主な役割は、RF発電機(1)に向かう反射されたRFパワーを最小限化することと、ガスの絶縁破壊が起こる領域において必要なRF電界強さを提供することである。プラズマガス放電の点火の前における反射されたパワーは、非常に高い(例えば、放射電力の80−90%)。システムの有効電力損失及びインピーダンスは、RF発電機(1)とIMN(3)の間のケーブルの長さに依存する。
【0054】
したがて、点火工程も、電磁波の移相(移相器(4)によりもたらされる)並びにノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の電磁波伝播の大きさに依存することとなる。移相器(4)を調整することによって、生物組織(7)の表面のターゲット領域において最小(最大とすることもできることはもちろんである)の電磁波を作り出すことができる。プラズマガス放電(8)が点火されると、移相は重要なものでなくなる。なぜなら、進行波は確立され、RF電圧の必要な大きさは、実質的に、点火工程の間よりも低くなっているからである。
【0055】
点火工程及び操作工程両方を制御するための方法がいくつか存在する。異なる構造のIMN(3)を、点火工程及び操作工程に用いることができる。このことは、固定IMNモードと可変IMNモード(可変コンデンサや可変インデューサを用いて)の間で切替操作を行うことを含む。したがって、両機能を備える同一のIMNを用いるために、特別に設計されたIMNが、IMN(3)に必要とされる。同様に、IMN(3)とRF発電機(1)の間の給電伝送ケーブル(22)は、適切に選択される必要がある。この適切な選択により、両機能がもたらされることとなる。更に、同様のことが、移相器(4)についてもいうことができる。点火工程にとって最適な状態1から操作工程にとって最適な状態2に必要な位相跳躍を行なう同一の移相器を用いるために、特別に設計された移相器(4)が、移相器(4)として、必要とされる。
【0056】
生物組織(7)の表面をプラズマガス放電(8)を用いて治療するための電極の配置はいくつか存在する。従来技術として上記したGyrus社の場合において、放電(高周波型)が、2つの電極間の領域に作り出され、その後、放電は、治療対象領域にもたらされる。ガス流れは、放電領域で発生した帯電粒子を搬送する主因子である。このシステムは、プラズマトロンの設計と同様である。システムは、2又はそれ以上の電極を含む。電極は、システムを自立した状態とする。即ち、操作において、生物組織を必要としない状態とする。原則として、放電のターゲットは、重要なものではない。放電のターゲットは、プラスチック、生物組織、金属表面或いは他の表面であることができる。
【0057】
例示的なシステムにおいて、上記とは逆の場合が生ずる。生物組織(7)の表面が、第2の(事実上の)電極(例えば、接地電極)としての役割を担う。ノズル電極(6)の外表面は、熱電極としての役割を担う。生物組織(7)の表面が、ノズル電極(6)の近傍に位置するとき、生物組織(7)の表面及びノズル電極(6)は、電気力学的構造を形成する。この電気力学的構造は、特定の集合インピーダンスによって特徴付けられる。それ故、生物組織(7)の表面は、帯電した粒子に対する接地電極の役割を担い、RF電流の経路を遮断し、放電絶縁破壊工程、分配及び安定状態の間、システムの集合インピーダンスに影響を与える。したがって、図1に示す装置全体は、象徴的に電気回路として表すことができる。生物組織(7)の表面の重要な役割は、回路を閉じることである。本明細書で用いる「近傍」との用語は、短い距離(例えば、<50cm)内を意味する。本明細書の後半で用いられる「遭遇すると」との用語は、「近傍に入ると」との意味をなす。
【0058】
上記の如く、DNTシステムの集合インピーダンスは、給電伝送ケーブル(22)の特徴的なインピーダンス(例えば、50Ω)に合致する。それ故、電磁進行波の伝播(例えば、反射パワーがない場合)の最良の状態が、組織の存在を以ってのみ達成されることとなる。
【0059】
RF発電機(1)、PWMコントローラ(2)、IMN(3)、移相器(4)及びRF共振器(5)といった装置の部品は、複合装置として考えられ、適切なパワー特性をノズル電極(6)にもたらし、プラズマガス放電(8)から生物組織(7)の表面への電流経路を形成することを可能とする。
図9は、本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態における簡素化された概略的な模式図であり、電極コントローラ(26)の様々な部品とこれら部品の相互関連性を示す。これは、本明細書の後半で述べられる「電極コントローラ」の一実施形態である。電極コントローラ(26)の他の実施形態において、異なる構造を採用したり、追加的な部品を取り付けたり及び/又は部品点数を少なくすることも可能である。
【0060】
操作工程は、点火工程の電位(電圧)よりもかなり低い電圧によって特徴付けられる。本発明の場合での点火工程から操作工程への放電の進行における生物組織の重要な役割は、以下に述べられる。
生物組織は、RF電場(或いは、電磁波伝播)を歪曲させる。生物組織は、ノズル電極(6)と生物組織(7)の表面の間の相互作用を生ずる間隙内に強い電場を生じさせる。これにより、放電点火を促し、或いは、ほとんどの場合、放電点火に対するトリガの役割を果たす。
【0061】
操作工程は安定した時間依存型のプロセスである。操作工程は、点火工程に必要とされた電圧よりも低いRF電圧を必要とする。IMN(3)は、プラズマガス放電(8)の点火工程及び操作工程の両方の間、作動する。プラズマガス放電(8)のインピーダンスをRF発電機のインピーダンスに合致させるために、IMN(3)がDNTシステムの集合インピーダンスを、RF発電機の作動出力インピーダンス(典型的には、50Ω)に変換することが必要となる。操作工程の間において、インピーダンスの正確な整合は、実用上、反射されるRFパワーを全く生じさせない結果となり、1に近い定在波比(SWR: standing wave ratio)となる(即ち、実用上、定在波は存在しない)。このことは、純粋な進行波を生じせしめ、この進行波は、負荷抵抗(即ち、プラズマガス放電(8)及び生物組織(7)の表面)により完全に吸収される。
【0062】
生物組織(7)の表面は、電極としてだけでなく、RFパワーの一部に対するデシペータ(消失器)として機能する。生物組織のインピーダンスは、約300Ωであり、弱い負のリアクタンスを備える。このことは、300Ωの抵抗器とこれに平行に配された1.5−2.5pFのコンデンサによりシミュレート可能である。したがって、プラズマガス放電(8)と生物組織(7)の表面は、RF発電機(1)に対する負荷抵抗として働く。
【0063】
RFパワーの消失は、プラズマガス放電(8)内で85%−95%、生物組織(7)の表面で5−15%生ずる。なぜなら、最大の電磁場密度は、ノズル電極(6)の近傍で生ずるからである。生物組織(7)の表面は、ノズル電極(6)から数センチメートル離れた位置に配されるので、RF電場を相互作用する生物組織(7)の表面の真の大きさ寸法は大きくなる(即ち、20−40cm2)。したがって、この場合における生物組織(7)の表面の「実質的な」抵抗値は、生物組織(7)の表面とノズル電極(6)を直接的に接触させた場合の抵抗と比較して非常に小さくなる。
【0064】
このシステムに対する電気力学的モデルは、リアクタンス素子(例えば、平行に配されたコンデンサなど)と直列に配される2つの抵抗器である。総抵抗値は、ノズル電極(6)の種類及び生物組織の表面(7)とノズル電極(6)の間の距離に依存する。例えば、図2に示すノズル電極(6)の第1の実施形態の場合において、ノズル電極(6)は、生物組織(7)の表面から1cmの距離の位置に配される。この構造(プラズマガス放電(8)と生物組織(7)の表面)の総抵抗値は、400Ωである。ここで、プラズマガス放電(8)の抵抗値は、350Ωであり、生物組織(7)の表面の抵抗値は、50Ωである。したがって、もし、プラズマガス放電(8)のRFパワーの振幅の二乗平均平方根が350ワットであるならば、パワーの消失は、生物組織(7)の表面において、50ワットであり、プラズマガス放電(8)において300ワットである。
【0065】
プラズマガス放電(8)中の消失したRFパワーは、プラズマガス放電粒子の運動エネルギとポテンシャルエネルギに変換され、この運動エネルギとポテンシャルエネルギがエネルギの大部分をなす。なぜなら、RF放出は、生物組織内で消失するためである。
【0066】
相互作用を生ずる間隙は、装置の最も外側にある端部と生物組織(7)の表面の間の物理的な間隙と混同されるべきでない。この物理的間隙と相互作用を生ずる間隙が同一である場合もあるが、同一でない場合もある。
図1Cに示すGyrus社の従来技術の場合、相互作用を生ずる間隙は、ハウジング(20)を越えて延出することはない。したがって、相互作用を生ずる間隙は、如何なる生物組織を含むものとならない。一方で、従来技術の物理的間隙は、明らかに、ハウジング(20)とターゲット表面の間の間隙となる。
【0067】
操作工程において、ひとたび、点火が維持されると、放電は、所望の処理に必要とされる限り、維持されることとなる。
好適な実施形態が、拡散性のプラズマガス放電を含む場合、他の種類の放電が可能である。好適な実施形態は、低い電子温度と、生物組織の治療に好適な電子濃度を結果としてもたらすこととなる。この種の放電は、生物組織の所望の領域に拡がる。この種の放電のパラメータは、制御可能であり、例えば、パワー、電流密度、幾何学形状(特に、位置)とすることができる。
【0068】
全ての構造におけるプラズマガス放電の活性種(プラズマ流束)は、原子イオン、分子イオン、原子ラジカル、分子ラジカル、励起状態のイオン、励起状態のラジカル、エネルギイオン、エネルギラジカル、冷却イオン、冷却ラジカル、エネルギ電子及びガスの任意の要素からなる群から選択される少なくとも1つの種を含む。
生物組織(7)の表面に対してノズル電極(6)を電気的にバイアスをかける能力は、イオン化ガスの流れを生物組織(7)の表面に促すこととなる。
【0069】
上述した如く、プラズマガス放電には2種類ある。1つは収縮型であり、他方は拡散型である。
拡散型のプラズマガス放電は、治療用途(例えば、加熱、生物学的光刺激或いはイオンシャワ(即ち、化学的且つ生物学的に活性を示す粒子(イオン、フリーラジカルなど)により治療すること))に多くの場合用いられる。
収縮型のプラズマガス放電は、生物組織に対して、切断、アブレーション及び/又はエバポレーションを行なうことができる。なぜなら、収縮型のプラズマガス放電は、高いエネルギ密度(即ち、低いプラズマガス放電体積)を有するからである。生物組織に対するシステムの作用因子は、RF電場、電子、正イオン、負イオン、フリーラジカル、光放出(フォトン)、中性子及びガス流れ(或いは、流量)とすることができる。
【0070】
拡散型のプラズマガス放電において、生物組織内で直接的に消失するRFパワーの推定値は、RFパワーの総入力量の5−10%である。生物組織内で消失するRFパワーは、RF電流及び回転励起された双極子モーメント(多くの場合、水分子)を引き起こすことにより、組織の温度を増加させる。
【0071】
自由電子の濃度は、正イオンの濃度に略等しい。負イオンの濃度は、ガス成分に依存し、典型的には、非常に低く、不活性ガスでは無視できる程度である。自由電子の濃度は、10−2−10−3(即ち、0.1−1%)である。非常に低い電子質量と高い平均運動エネルギ(3−8eV)を与えると、生物組織内で粒子の電子励起が可能となる。電子エネルギの大部分は、プラズマガス放電それ自体で消費される。このことは、主に、中性粒子の励起(原子及び分子の電子と回転レベル両方)に繋がる。
【0072】
低いエネルギでは、正のイオンの濃度は低い。正のイオン及び負のイオンの温度は、中性粒子の温度に等しく、室温に近い。したがって、イオン並びに中性粒子の運動エネルギは、プラズマ放電エネルギを生物組織へ運ぶ主要なチャネルとはならない。さらに、ガスの流れは、実質的なエネルギを加えることにもならない。
【0073】
RF電場は、電磁エネルギのほとんどを電子チャネルに与える。拡散型プラズマガス放電の電子エネルギの分布関数の最大値は、3−8eVの領域である。プラズマガス放電のイオン化は、電子エネルギの10−15%を占めると考えられる。残りは、上述した様々な励起チャネルとなる。それゆえ、拡散型のプラズマガス放電の効率的なプロセスは、中性粒子の励起である。励起した状態の粒子の寿命は、多くの因子に依存する。この因子としては、ガス圧、ガス成分、ガス種などを挙げることができる。励起した粒子は、1秒以下の寿命で準安定状態となる。励起した粒子は、内部衝突、フォトン放射及び生物組織との相互作用を通じて、そのポテンシャルエネルギを失う。ガスの流れの存在に起因して、最も重要なプロセスは、励起した粒子と生物組織との相互作用となる。
【0074】
生物組織は、放射される光の照射を受ける。文献において既知であるが、これにより、生物学的光刺激を作り出すことができる(例えば、6328Åの波長のHe−Neレーザの放射でミトコンドリア細胞を刺激できる)。もし、プラズマガス放電が、He−Neレーザで用いられるガス混合物に似たガス混合物を用いて作り出されるならば、励起した(準安定状態の)中性のNe原子からのエネルギは、非弾性的な衝突を介して、効果的に生物組織内にもたらされる。このプロセスの効率は、He−Neレーザの場合よりもはるかに高い。レーザの場合において、励起したNe原子は、エネルギのより低い準位への遷移の後、フォトンを生物組織に照射する。したがって、効率は非常に低い(<1%)。プラズマガス放電の場合、励起した粒子が、直接的に、生物組織と相互作用をなす。
【0075】
フリーラジカル及び化学的に活性を有する分子は、生物組織との化学反応を受ける。プラズマガス放電により励起したCO2を用いて治療することは、重要なプロセスの一例となる。
【0076】
ノズル電極(6)が導電性である場合(例えば、Au,Ag,Cu,Al)、好適な実施形態の方法は、外面にアルミナコーティングを施されたアルミニウム製のノズル電極を利用する。この結果、ノズル電極(6)からの電子放出を生ずることなく、拡散型の放電を得ることができる。
【0077】
更に、様々な治療に対する操作方法は、ノズル電極(6)とガスの流れ(9)のパラメータの選択だけでなく、ガスの選択をする必要がある。例えば、アブレーション治療に対して、本発明の方法のうち一の実施形態では、約5%のO2と約95%のヘリウムが利用される。この場合、酸素は、酸化剤としての役割を主に担うこととなる。
【0078】
本発明の特定の特徴のうち、明瞭化のため、本明細書において別個の実施形態に関連して説明されているものが、単一の実施形態に組み合わされて提供されてもよい。逆に、本発明の様々な特徴のうち、簡便化のため、単一の実施形態中で説明されているものが、別個に或いは適切な組み合わせを以って、提供されてもよい。
【0079】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、多くの代替形態、改良形態及び変更形態が、当業者にとって明らかである。したがって、本発明の技術的範囲は、請求の範囲に記載の要旨及び広範な範囲内に存在する代替形態、改良形態及び変更形態を網羅するものである。本明細書で述べられる全ての公報、特許及び特許出願は、本明細書中に参照として、その全体が組み込まれ、個々の公報、特許或いは特許出願が特定的に且つ個別に開示しているが如く、本明細書中に組み込まれるものである。加えて、この出願中の如何なる参考文献或いは参考文献の表示は、従来技術として、本発明の例示的なシステムに利用可能なものであると解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明の例示的なシステムのいくつかの実施形態に係る単純化された概略的模式図であり、RFプラズマガス放電装置の様々な部品並びにこれらの相互接続を表す。
【図1B】本発明の例示的システムのいくつかの実施形態に係る単純化された概略的模式図であり、ノズル電極と装置のハウジングの物理的な関係を表す。
【図1C】従来技術におけるGyrus社の装置の単純化された概略的模式図であり、電極と装置の物理的な関係を表す。
【図2】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、層流のガス流れ特性を生ずる通常のノズル電極構造を示し、トーチ型のプラズマ輪郭を形成する。
【図3】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、誘電性の円筒状の空洞部付取付具を備える通常のノズル電極を表す。プラズマは、空洞部全容積を占め、空洞部形状のプラズマ輪郭を形成する。
【図4】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、乱流のガス流れ特性に起因した低い電流密度且つ大きな放電断面を生ずるノズル電極構造を表す。
【図5】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、狭いフレイムタン先端形状のようなプラズマトロン型のプラズマ輪郭を形成するとともに、非常に高い電流密度と非常に小さな放電断面を生ずるノズル電極構造を表す。
【図6】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、椀状のノズル電極を表す。このノズルは、非等電位表面を有する生物組織に起因するRF加熱とプラズマ操作を同時に可能とし、内部容積をほとんど満たすプラズマを生じさせ、ノズル電極に関連するプラズマ輪郭が作り出される。
【図7】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、球状のノズル電極構造を表す。このノズル構造は、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、これにより、非等電位表面を有する生物組織に起因するRF加熱とプラズマ操作を同時に可能とする。また、全内部容積を略満たすプラズマをこのノズル構造は生じせしめる。この結果、リング型のプラズマ輪郭が得られることとなる。
【図8】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、誘電性の円筒状の導管取付具を備える通常のノズル電極構造を表す。この取付具は、ノズル電極内部に延出し、ノズル電極は、コンジット内部で点火されたプラズマガス放電を生じさせ、ガス流れを通じてプラズマガス放電を搬送する。これにより、プラズマの輪郭形成がなされることとなる。
【図9】本発明に係る例示的なシステムのいくつかの実施形態の単純化された概略的模式図であり、電極コントローラの様々な部品並びにこれらの相互接続を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物組織を治療する装置であって、
(a)ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極を備え、
前記電極は、前記装置内に配され、
前記電極と前記生物組織表面が接触すると、前記電極から前記生物組織表面への電流経路が形成され、
これにより、前記電極が、前記ガス流れに点火し、前記プラズマガス放電を作り出すことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電極が、ノズル電極であり、
該ノズル電極が、ノズル部を備え、
該ノズル部が、前記ガス流れを受け止めることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ノズル電極が、前記ガス流れに点火することにより、前記ノズル部の外側の少なくとも一領域に前記プラズマガス放電が作り出されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、大気圧下又は大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織をアブレートすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を切断することにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に向けて経皮的なイオン搬送をすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を加熱することにより、効果的に前記生物組織を治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に生物学的光刺激を与えることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、プラズマガス放電と前記生物組織との化学反応を生じせしめ、これにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記ガス流れが、拡散性のガスの流れであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記ガス流れを作り出すガス源を更に備え、
該ガス源が、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素分子(O2)、窒素分子(N2)、窒素酸化物、炭素酸化物、水蒸気、揮発性の有機ガス及び揮発性の無機ガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを供給することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記電極が、アルミニウム、銀、金、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属からなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項14】
(b)前記電極表面に接続する誘電バリアを更に備え、
該誘電バリアは、前記電極表面の導電率を低減させ、
これにより、前記生物組織表面への導電電流の伝達を遅らせることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記プラズマガス放電が、トーチ型輪郭を形成するように前記電極の寸法が定められることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項16】
前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、
前記電極が、前記プラズマガス放電を形成するように形成され、
該プラズマガス放電が、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を略占めることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項17】
前記電極が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を備える前記プラズマガス放電を形成するように形成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記電極が、前記プラズマガス放電から狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の輪郭を形成するように形成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項19】
前記生物組織の表面が、非等電位表面となるように前記生物組織の前記表面との相互作用が得られるように前記電極が形成並びに配置され、
前記生物組織の瞬時の加熱並びにプラズマガス放電の維持が可能となることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項20】
前記電極が、椀状の輪郭をなすように形成されるとともに、直接的に前記生物組織に接触するように配され、
前記生物組織の前記表面が、非等電位表面となり、
前記プラズマガス放電が、前記電極の内部容積を略満たすことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備えるとともに球状輪郭をなすように形成され、
前記電極は、前記生物組織に直接的に接触し、
前記生物組織の前記表面が非等電位表面となり、
前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記電極は、誘電性の円筒形状の導管取付具を備え、
該導管取付具は、前記電極内部に延出するとともに直接的に前記生物組織に接触し、これにより、前記誘電性の円筒形状の導管取付部内部で前記プラズマガス放電が発生し、前記プラズマガス放電が前記ガスの流れによって、前記生物組織に搬送されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項23】
(b)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源及びフラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加の部品を更に備え、これにより、生物組織に追加的な治療を施すことが可能となることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記電極が、前記プラズマガス放電用のアンテナとして機能するとともに、前記プラズマガス放電に対する前記ガスの流れのパラメータに影響を与えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項25】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、前記ガスの温度を大きく低減(断熱膨張)させることに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項26】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、層流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項27】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、乱流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項28】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、経皮的なイオン搬送を行なうのに効果的なガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項29】
前記プラズマガス放電が、RF発電機(増幅器)により作り出され、
該RF発電機は、前記プラズマガス放電を点火並びに維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項30】
電極コントローラを更に備え、
該電極コントローラが、前記電極のパワー特性を調整することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項31】
前記電極コントローラが、RF電源を備え、
該RF電源が、RF電力を前記電極に供給することを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記電極コントローラが移相器を備え、
該移相器が、一方向に向けられた進行波の移相を変化させる能力を備えることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項33】
前記電極コントローラが、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、
該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から補正値に変換する能力を備え、
前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含むことを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項34】
前記電極コントローラが、RF共振器を備え、
該RF共振器が、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項35】
前記電極コントローラが、
(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、
(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、
(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、
(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、
(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項36】
前記誘電バリアが、前記電極上の誘電性のコーティングとしてもたらされることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項37】
前記電極が、アルミニウムから主になり、前記電極バリアが、アルミナコーティングとしてもたらされることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項38】
ガス流れから形成される輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する装置であって、該装置は、
(a)前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極と、
(b)前記電極を保持するハウジングを備え、前記電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする装置。
【請求項39】
前記プラズマガス放電が、前記ハウジングの外側に略位置するように前記装置が形成されることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項40】
前記電極が、電極ホルダを用いて前記ハウジングに取り付けられ、
前記電極ホルダが、前記ハウジングに対する前記電極の位置決めと、前記電極へ前記ガス流れのガスの搬送を行うことの両方の役割を担うことを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項41】
前記電極のうち少なくとも一部が、前記ハウジング上に露出し、前記生物組織の前記表面に直接的に接触可能であることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項42】
前記電極の配置位置が、ハウジングに対して調整可能であり、前記生物組織の治療領域を制御手段として、前記生物組織の前記表面に沿って前記電極の配置位置は移動可能であることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項43】
生体組織を治療する装置であって、
(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、
(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、
(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、
(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、
(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする装置。
【請求項44】
連動したパワーが前記RF発電機から搬送されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項45】
前記プラズマガス放電に送られる前記出力RFパワーが連続モード又はパルスモードで連動することを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項46】
前記移相器がトロンボーン型であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項47】
前記移相器が、少なくとも部分的に同軸ケーブルから構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項48】
前記移相器によりもたらされる位相の変化が可変であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項49】
前記IMNが、L型構造、T型構造及びπ型構造からなる群から選択される形状によって特徴付けられる一定の構造を備えることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項50】
前記IMNが、広帯域のインピーダンス変成器であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項51】
前記IMNが、可変であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項52】
(f)前記装置が更に、給電ケーブルを備え、該給電ケーブルは、前記IMNに、前記電極と前記RF共振器を接続することを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項53】
前記給電ケーブルが、n*λ/2の長さで定義される共振長さを有し、
λは、前記給電ケーブルの材料中の前記出力RFパワーの波長であり、nは、全体の数であることを特徴とする請求項52記載の装置。
【請求項54】
ガス流れから、輪郭形成されたプラズマを用いて、生物組織を治療する装置であって、
(a)ガス搬送を行なうとともに、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出すノズル電極と、
(b)前記ノズル電極を保持するハウジングを備え、前記ノズル電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記ノズル電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記ノズル電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする装置。
【請求項55】
生体組織を治療する方法であって、
(a)電極にガス流れを供給する段階と、
(b)前記生物組織の表面と電極を互いに近接させ、前記電極と前記生物組織が、互いに略電気的にシールドされていない状態とし、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項56】
前記生物組織が、該生物組織に対するアブレーションにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記生物組織が、該生物組織に対する切断処理を施すことにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記生物組織が、該生物組織に経皮的にイオンを搬送することにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記生物組織が、該生物組織に加熱を施すことにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項60】
前記生物組織が、該生物組織に生物学的光刺激を与えることにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項61】
前記生物組織が、該生物組織と、前記プラズマガス放電を化学反応させることにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項62】
前記生物組織が、電気的に接地された状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項63】
前記生物組織が、電気的に接地されていない状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項64】
前記プラズマガス放電が、大気圧下若しくは大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項65】
前記方法が更に、
(d)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、
(e)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、
(f)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、
(g)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、
(h)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項66】
前記電極からの前記ガス流れに点火をする段階が、電極ホルダを介して前記装置に固定された電極からのガスの流れに点火する段階を備え、
前記電極ホルダは、前記電極にガスを搬送する役割を担うことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項67】
前記電極からのガスの流れに点火する段階が、前記生物組織の前記表面に直接接触して配された前記電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項68】
前記電極からのガス流れに点火する段階が、前記生物組織の治療位置を変化させる手段を用いて、前記生物組織の前記表面上を移動可能な電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項69】
前記方法が更に、
(d)前記電極と前記生物組織の前記表面の間に誘電バリアを配する段階を備え、該誘電バリアが伝導電流の移動を遅らせることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項70】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、大気に曝された電極からのガス流れに点火する段階であり、該電極が、トーチ型の輪郭をなす前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びにその形状を定められることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項71】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、
前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を前記プラズマガス放電が占めるように前記電極の大きさ並びにその形状が定められることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項72】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を有する前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに輪郭形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項73】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、狭いフレイムタン(プラズマトロン)形状のプラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項74】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織の表面と相互作用するように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面であり、これにより、前記生物組織の加熱及び前記プラズマガス放電の維持が同時になされることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項75】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織に直接的に接触する椀状の輪郭形状をなす電極からのガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、前記ノズル電極の内部容積を満たすことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項76】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を有するとともに前記生物組織に部分的に直接接触する球状の輪郭形状を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の表面が、非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項77】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の導管取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、
該誘電性の円筒形状の導管取付具は、前記電極の内部に延出し、
該電極は、直接的に前記生物組織に接触し、
前記誘電性の円筒形状の導管取付具内部でプラズマガス放電が点火され、
該プラズマガス放電が、ガスの流れにより、前記生物組織に搬送されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項78】
(d)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源、フラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な部品を用いる段階を備え、追加的に前記生物組織を治療することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項79】
前記ガス流れを供給する段階が、前記ガスの温度を大きく低減させるのに好適な流れ特性(断熱膨張)を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項80】
前記ガス流れを提供する段階が、層流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項81】
前記ガス流れを提供する段階が、乱流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項82】
前記ガス流れを提供する段階が、経皮的なイオン搬送を容易にするのに適した流れ特性を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項83】
前記段階(a)乃至(c)が順次実行されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項84】
生物組織を治療する方法であって、
(a)電極にガス流れを供給する段階と、
(b)前記電極から前記生物組織の表面に電流経路を形成し、これに付随して、前記ガス流れに点火してプラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより前記生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項85】
プラズマガス放電を用いて、生物組織を治療する方法であって、
(a)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、
(b)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、
(c)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、
(d)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、
(e)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項86】
輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法であって、
(a)ガス流れを提供する段階と、
(b)該ガス流れからのガスに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の表面を前記プラズマガス放電に曝す段階と、
(d)前記曝された生物組織の表面と電磁的な相互作用を生ずる間隙を横切る前記プラズマガス放電の間の電磁的な相互作用を用いて、前記プラズマガス放電の輪郭形状を整え、これにより生物組織を治療することを特徴とする方法。
【請求項1】
生物組織を治療する装置であって、
(a)ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極を備え、
前記電極は、前記装置内に配され、
前記電極と前記生物組織表面が接触すると、前記電極から前記生物組織表面への電流経路が形成され、
これにより、前記電極が、前記ガス流れに点火し、前記プラズマガス放電を作り出すことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電極が、ノズル電極であり、
該ノズル電極が、ノズル部を備え、
該ノズル部が、前記ガス流れを受け止めることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ノズル電極が、前記ガス流れに点火することにより、前記ノズル部の外側の少なくとも一領域に前記プラズマガス放電が作り出されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、大気圧下又は大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織をアブレートすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を切断することにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に向けて経皮的なイオン搬送をすることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織を加熱することにより、効果的に前記生物組織を治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、前記生物組織に生物学的光刺激を与えることにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記装置により作り出されたプラズマガス放電が、プラズマガス放電と前記生物組織との化学反応を生じせしめ、これにより、前記生物組織を効果的に治療することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記ガス流れが、拡散性のガスの流れであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記ガス流れを作り出すガス源を更に備え、
該ガス源が、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトン、酸素分子(O2)、窒素分子(N2)、窒素酸化物、炭素酸化物、水蒸気、揮発性の有機ガス及び揮発性の無機ガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを供給することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記電極が、アルミニウム、銀、金、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属からなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項14】
(b)前記電極表面に接続する誘電バリアを更に備え、
該誘電バリアは、前記電極表面の導電率を低減させ、
これにより、前記生物組織表面への導電電流の伝達を遅らせることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記プラズマガス放電が、トーチ型輪郭を形成するように前記電極の寸法が定められることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項16】
前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備え、
前記電極が、前記プラズマガス放電を形成するように形成され、
該プラズマガス放電が、前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を略占めることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項17】
前記電極が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を備える前記プラズマガス放電を形成するように形成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記電極が、前記プラズマガス放電から狭いフレイムタン型(プラズマトロン型)の輪郭を形成するように形成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項19】
前記生物組織の表面が、非等電位表面となるように前記生物組織の前記表面との相互作用が得られるように前記電極が形成並びに配置され、
前記生物組織の瞬時の加熱並びにプラズマガス放電の維持が可能となることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項20】
前記電極が、椀状の輪郭をなすように形成されるとともに、直接的に前記生物組織に接触するように配され、
前記生物組織の前記表面が、非等電位表面となり、
前記プラズマガス放電が、前記電極の内部容積を略満たすことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記電極が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備えるとともに球状輪郭をなすように形成され、
前記電極は、前記生物組織に直接的に接触し、
前記生物組織の前記表面が非等電位表面となり、
前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記電極は、誘電性の円筒形状の導管取付具を備え、
該導管取付具は、前記電極内部に延出するとともに直接的に前記生物組織に接触し、これにより、前記誘電性の円筒形状の導管取付部内部で前記プラズマガス放電が発生し、前記プラズマガス放電が前記ガスの流れによって、前記生物組織に搬送されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項23】
(b)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源及びフラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加の部品を更に備え、これにより、生物組織に追加的な治療を施すことが可能となることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記電極が、前記プラズマガス放電用のアンテナとして機能するとともに、前記プラズマガス放電に対する前記ガスの流れのパラメータに影響を与えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項25】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、前記ガスの温度を大きく低減(断熱膨張)させることに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項26】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、層流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項27】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、乱流のガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項28】
(b)ガス搬送用のノズルを更に備え、該ノズルが、経皮的なイオン搬送を行なうのに効果的なガス流れを作り出すことに適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項29】
前記プラズマガス放電が、RF発電機(増幅器)により作り出され、
該RF発電機は、前記プラズマガス放電を点火並びに維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項30】
電極コントローラを更に備え、
該電極コントローラが、前記電極のパワー特性を調整することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項31】
前記電極コントローラが、RF電源を備え、
該RF電源が、RF電力を前記電極に供給することを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記電極コントローラが移相器を備え、
該移相器が、一方向に向けられた進行波の移相を変化させる能力を備えることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項33】
前記電極コントローラが、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、
該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から補正値に変換する能力を備え、
前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含むことを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項34】
前記電極コントローラが、RF共振器を備え、
該RF共振器が、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項35】
前記電極コントローラが、
(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、
(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、
(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、
(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、
(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする請求項30記載の装置。
【請求項36】
前記誘電バリアが、前記電極上の誘電性のコーティングとしてもたらされることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項37】
前記電極が、アルミニウムから主になり、前記電極バリアが、アルミナコーティングとしてもたらされることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項38】
ガス流れから形成される輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する装置であって、該装置は、
(a)前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す電極と、
(b)前記電極を保持するハウジングを備え、前記電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする装置。
【請求項39】
前記プラズマガス放電が、前記ハウジングの外側に略位置するように前記装置が形成されることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項40】
前記電極が、電極ホルダを用いて前記ハウジングに取り付けられ、
前記電極ホルダが、前記ハウジングに対する前記電極の位置決めと、前記電極へ前記ガス流れのガスの搬送を行うことの両方の役割を担うことを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項41】
前記電極のうち少なくとも一部が、前記ハウジング上に露出し、前記生物組織の前記表面に直接的に接触可能であることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項42】
前記電極の配置位置が、ハウジングに対して調整可能であり、前記生物組織の治療領域を制御手段として、前記生物組織の前記表面に沿って前記電極の配置位置は移動可能であることを特徴とする請求項38記載の装置。
【請求項43】
生体組織を治療する装置であって、
(a)前記プラズマガス放電を点火し、維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す能力を備えるRF発電機(増幅器)と、
(b)所定の持続期間と振幅を有する所望周波数のパルスを以って、前記出力RFパワーを、前記RF発電機に搬送させる能力を備えるパルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラと、
(c)一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を備える移相器を備え、該移相器は、位相跳躍を通じて、前記出力パワーを有する一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させる能力を有し、これにより、前記移相器が、前記プラズマガス放電の点火工程及び操作工程を容易にし、
(d)前記電極コントローラは更に、インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)を備え、該IMNが、前記装置の集合インピーダンスを公称値から前記点火工程及び前記操作工程両方に適した補正値に変換する能力を備え、前記装置の集合インピーダンスは、前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含み、前記補正値は、前記RF発電機及び前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合し、これにより、前記出力進行波が定在波に変換されることなく、前記出力進行波が前記プラズマガス放電を維持し、
(e)前記電極コントローラは更に、RF共振器を備え、該RF共振器が、前記操作工程において、周期的に、所望量のエネルギを蓄積する能力並びに開放する能力を備えるとともに、前記点火工程において、前記所望量のエネルギを集中させる能力を備えることを特徴とする装置。
【請求項44】
連動したパワーが前記RF発電機から搬送されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項45】
前記プラズマガス放電に送られる前記出力RFパワーが連続モード又はパルスモードで連動することを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項46】
前記移相器がトロンボーン型であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項47】
前記移相器が、少なくとも部分的に同軸ケーブルから構成されることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項48】
前記移相器によりもたらされる位相の変化が可変であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項49】
前記IMNが、L型構造、T型構造及びπ型構造からなる群から選択される形状によって特徴付けられる一定の構造を備えることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項50】
前記IMNが、広帯域のインピーダンス変成器であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項51】
前記IMNが、可変であることを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項52】
(f)前記装置が更に、給電ケーブルを備え、該給電ケーブルは、前記IMNに、前記電極と前記RF共振器を接続することを特徴とする請求項43記載の装置。
【請求項53】
前記給電ケーブルが、n*λ/2の長さで定義される共振長さを有し、
λは、前記給電ケーブルの材料中の前記出力RFパワーの波長であり、nは、全体の数であることを特徴とする請求項52記載の装置。
【請求項54】
ガス流れから、輪郭形成されたプラズマを用いて、生物組織を治療する装置であって、
(a)ガス搬送を行なうとともに、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出すノズル電極と、
(b)前記ノズル電極を保持するハウジングを備え、前記ノズル電極は、前記ハウジングに取り付けられ、前記ノズル電極は、前記ハウジングにより電気的に略シールドされていない状態であり、前記ノズル電極が、前記生物組織の表面と電磁的に相互作用するように位置づけられるとともに少なくとも部分的にプラズマの輪郭形成を行うことを特徴とする装置。
【請求項55】
生体組織を治療する方法であって、
(a)電極にガス流れを供給する段階と、
(b)前記生物組織の表面と電極を互いに近接させ、前記電極と前記生物組織が、互いに略電気的にシールドされていない状態とし、前記ガス流れに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項56】
前記生物組織が、該生物組織に対するアブレーションにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記生物組織が、該生物組織に対する切断処理を施すことにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記生物組織が、該生物組織に経皮的にイオンを搬送することにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記生物組織が、該生物組織に加熱を施すことにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項60】
前記生物組織が、該生物組織に生物学的光刺激を与えることにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項61】
前記生物組織が、該生物組織と、前記プラズマガス放電を化学反応させることにより治療されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項62】
前記生物組織が、電気的に接地された状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項63】
前記生物組織が、電気的に接地されていない状態であり、これにより、前記プラズマガス放電と相互作用することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項64】
前記プラズマガス放電が、大気圧下若しくは大気圧以上の圧力下で作動することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項65】
前記方法が更に、
(d)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、
(e)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、
(f)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、
(g)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、
(h)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項66】
前記電極からの前記ガス流れに点火をする段階が、電極ホルダを介して前記装置に固定された電極からのガスの流れに点火する段階を備え、
前記電極ホルダは、前記電極にガスを搬送する役割を担うことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項67】
前記電極からのガスの流れに点火する段階が、前記生物組織の前記表面に直接接触して配された前記電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項68】
前記電極からのガス流れに点火する段階が、前記生物組織の治療位置を変化させる手段を用いて、前記生物組織の前記表面上を移動可能な電極からのガスの流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項69】
前記方法が更に、
(d)前記電極と前記生物組織の前記表面の間に誘電バリアを配する段階を備え、該誘電バリアが伝導電流の移動を遅らせることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項70】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、大気に曝された電極からのガス流れに点火する段階であり、該電極が、トーチ型の輪郭をなす前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びにその形状を定められることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項71】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、
前記誘電性の円筒形状の空洞部付取付具の全空洞部を前記プラズマガス放電が占めるように前記電極の大きさ並びにその形状が定められることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項72】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、非常に低い電流密度と大きな放電断面を有する前記プラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに輪郭形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項73】
前記電極からの前記ガスの流れに点火する段階が、狭いフレイムタン(プラズマトロン)形状のプラズマガス放電を作り出すように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項74】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織の表面と相互作用するように大きさ並びに形状を定められた電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が、非等電位表面であり、これにより、前記生物組織の加熱及び前記プラズマガス放電の維持が同時になされることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項75】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、前記生物組織に直接的に接触する椀状の輪郭形状をなす電極からのガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の前記表面が非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、前記ノズル電極の内部容積を満たすことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項76】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の空洞部付取付具を有するとともに前記生物組織に部分的に直接接触する球状の輪郭形状を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、前記生物組織の表面が、非等電位表面であり、前記プラズマガス放電が、リング型の輪郭形状をなすことを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項77】
前記電極からの前記ガス流れに点火する段階が、誘電性の円筒形状の導管取付具を備える電極からの前記ガス流れに点火する段階であり、
該誘電性の円筒形状の導管取付具は、前記電極の内部に延出し、
該電極は、直接的に前記生物組織に接触し、
前記誘電性の円筒形状の導管取付具内部でプラズマガス放電が点火され、
該プラズマガス放電が、ガスの流れにより、前記生物組織に搬送されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項78】
(d)レーザビーム、超音波トランスデューサ、紫外線光源、フラッシュランプからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な部品を用いる段階を備え、追加的に前記生物組織を治療することを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項79】
前記ガス流れを供給する段階が、前記ガスの温度を大きく低減させるのに好適な流れ特性(断熱膨張)を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項80】
前記ガス流れを提供する段階が、層流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項81】
前記ガス流れを提供する段階が、乱流のガス流れ特性を作り出すのに好適な流れ特性を備えるガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項82】
前記ガス流れを提供する段階が、経皮的なイオン搬送を容易にするのに適した流れ特性を有するガス流れを提供する段階であることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項83】
前記段階(a)乃至(c)が順次実行されることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項84】
生物組織を治療する方法であって、
(a)電極にガス流れを供給する段階と、
(b)前記電極から前記生物組織の表面に電流経路を形成し、これに付随して、前記ガス流れに点火してプラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の前記表面を前記プラズマガス放電に曝し、これにより前記生物組織を治療する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項85】
プラズマガス放電を用いて、生物組織を治療する方法であって、
(a)RF発電機(増幅器)により、プラズマガス放電を点火及び維持するのに十分な出力RFパワーを作り出す段階と、
(b)前記RF発電機が、パルス幅調整用(PWM:Pulse width modulation)コントローラを用いて、所定時間並びに所定振幅のパルスの形態で、所望の周波数を以って、前記RF出力パワーを搬送する段階と、
(c)移相器を用いて、位相跳躍を通じて、前記出力パワーの一方向に方向付けられた進行波の位相を変化させ、点火工程と操作工程の両方を容易にする段階と、
(d)前記プラズマガス放電、前記電極及び前記生物組織(DET:放電(discharge)−電極(electrode)−組織(tissue))を含む集合インピーダンスを、公称値から、前記点火工程及び前記操作工程両方に対する補正値に変換し、前記補正値を、前記RF発電機と前記移相器の特徴的なインピーダンスに整合させ、前記出力進行波が、前記インピーダンス整合ネットワーク(IMN: impedance-matching network)により定在波に変換されることなく、プラズマガス放電を維持する段階と、
(e)前記操作工程において、所望量のエネルギを、周期的に蓄積並びに開放する段階を備え、前記RF共振器が更に、前記電極に接続するRF共振器によって、点火工程において、前記所望量のエネルギを集中する能力を備えることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項86】
輪郭形成されたプラズマを用いて生物組織を治療する方法であって、
(a)ガス流れを提供する段階と、
(b)該ガス流れからのガスに点火し、プラズマガス放電を作り出す段階と、
(c)前記生物組織の表面を前記プラズマガス放電に曝す段階と、
(d)前記曝された生物組織の表面と電磁的な相互作用を生ずる間隙を横切る前記プラズマガス放電の間の電磁的な相互作用を用いて、前記プラズマガス放電の輪郭形状を整え、これにより生物組織を治療することを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−526423(P2008−526423A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550935(P2007−550935)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000069
【国際公開番号】WO2006/077582
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506031591)アルマ レーザーズ エルティディ. (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000069
【国際公開番号】WO2006/077582
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506031591)アルマ レーザーズ エルティディ. (2)
【Fターム(参考)】
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