説明

プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法

【課題】製造に必要な酸化マグネシウム結晶体の使用量が少なく、製造コストが低いプラズマディスプレイパネル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】前面基板と、画像データを書き込むための電圧パルスが印加される走査電極と維持電極からなり且つ前記前面基板の表面に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜と、前記保護膜上に配置された酸化マグネシウム単結晶からなる複数の粒子とを有する前面パネルと、背面基板と、前記背面基板の表面に形成され且つ前記画像データが入力される複数のアドレス電極とを有する背面パネルとを具備するプラズマディスプレイパネルにおいて、他の前記走査電極である電極より先に前記電圧パルスが印加される前記走査電極の上方に配置された前記粒子の密度を、前記電極の上方に配置された前記粒子の密度より低くすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、大型薄型テレビとして実用化されている。
【0003】
PDPにおける画像表示は、次のように行われる。まず、表示する画像に応じて選択した放電セルで、アドレス放電を起こす。このアドレス放電により、放電セルに所定の壁電荷が形成される。
【0004】
アドレス放電は、例えば、前面基板に形成した走査電極に負電圧パルスを印加し、同時に、背面基板に形成したアドレス電極に正電圧パルスを印加して起こす。
【0005】
次に、走査電極と維持電極の間に交互に電圧を印加する。すると、壁電荷が形成された放電セルで選択的にサステイン放電が起きて、紫外線が発生する。この紫外線が、放電セルに設けられた蛍光体を発光させる。その結果、選択された放電セルが点灯し、所望の画像がPDPに表示される。
【0006】
ところで、近年、PDPの高精細化が進んでいる。従って、PDPの画素数は増え続けている。このため、高精細化したPDPでは、アドレス放電のために印加する電圧パルスの幅が狭くなっている。
【0007】
同じ放電セルに、同じ電圧パルスを印加しても、電圧パルスを印加してから放電が始まるまでの時間(放電遅れ)は、放電のたびに異なり一定しない。このため、アドレス放電のために印加する電圧パルスの幅が狭くなり過ぎると、アドレス放電が起きない放電セルが出現する。その結果、選択された放電セルの一部が点灯しなくなり、画質の劣化が招来される。
【0008】
この問題を解決するため、前面基板を覆う保護膜の上に、酸化マグネシウム単結晶(以下、酸化マグネシウム結晶体と呼ぶ)からなる粒子の層を形成することが提案されている(特許文献1)。
【0009】
酸化マグネシウム結晶体は、一画面前の画像表示の際に行われたサステイン放電や、アドレス放電に先立って行われるリセット放電によって励起される。
【0010】
励起された酸化マグネシウム結晶体は、その後少しずつ、放電セル内に電子を放出する。この放出された電子によって、アドレス放電が起こりやすくなり、放電遅れ時間が短縮する。
【0011】
このように、保護膜上に酸化マグネシウム結晶体の層を形成しておくことによって、PDPを高精細化しても、画像の劣化が起きないようにすることができる。
【特許文献1】特開2006−114484号公報
【特許文献2】特開2007−103054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、酸化マグネシウム結晶体は、高価である。このため、酸化マグネシウム結晶体を使用すると、PDPの製造のコストが高くなる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、製造に必要な酸化マグネシウム結晶体の量が少なく、製造コストが低いプラズマディスプレイパネル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、前面基板と、画像データを書き込むための電圧パルスが印加される走査電極と維持電極からなり且つ前記前面基板の表面に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜と、前記保護膜上に配置された酸化マグネシウム単結晶からなる複数の粒子とを有する前面パネルと、背面基板と、前記背面基板の表面に形成され且つ前記画像データが入力される複数のアドレス電極とを有する背面パネルとを具備し、他の前記走査電極である電極より先に前記電圧パルスが印加される前記走査電極の上方に配置された前記粒子の密度が、前記電極の上方に配置された前記粒子の密度より低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネルである。
【0015】
第1の側面によれば、製造に必要な酸化マグネシウム結晶体の量が少なく、製造コストが低いプラズマディスプレイパネルを提供することできる。
【0016】
本発明の第2の側面は、第1の側面において、前記前面パネルの中央における前記粒子の密度が、前記前面パネルの上端及び下端における前記粒子の密度より低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネルである。
【0017】
第2の側面によれば、PDPを視る者は、従来のPDPより、表示された画像を明るく感じる。
【0018】
本発明の第3の側面は、前面基板上に、画像データを書き込むための電圧パルスが印加される走査電極と維持電極からなる複数の表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜を順次形成する第1の工程と、前記保護膜の上で、酸化マグネシウム単結晶からなる粒子を溶媒に分散したスラリーをスプレーガンから吐出して、前記保護膜の上に前記粒子を撒布する第2の工程を具備し、他の前記走査電極である電極より先に前記電圧パルスが印加される前記走査電極の第1の上方に位置する前記保護膜の上に、前記電極の第2の上方に位置する前記保護膜の上に撒布する前記粒子より少ない前記粒子を撒布することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0019】
第3の側面によれば、酸化マグネシウム結晶体の使用量が少なく、製造コストが低いPDPの製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、PDPの製造に使用する酸化マグネシウム結晶体の量が少なるので、PDPの製造コストが低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0022】
PDPに表示すべき画像を書き込むアドレス放電は、次のような手順によって起こされる。
【0023】
まず、背面パネルに垂直方向に延在するように形成された複数のアドレス電極に、例えば、表示すべき画像データに応じて、正の電圧パルスを、順次印加する。更に、前面パネルに水平方向に延在するように形成された複数の走査電極に、この電圧パルスに同期する負の電圧パルスを、上から順番に印加する。
【0024】
従って、後にアドレス放電を起こす放電セルほど、最後の放電(リセット放電)が起きてから次の放電(アドレス放電)が開始するまでの期間(以下、放電待機期間と呼ぶ)が長くなる。
【0025】
ところで、酸化マグネシウム結晶体から放出される単位時間当たりの電子の量(以下、電子放出量と呼ぶ)は、放電待機期間が長くなるに従って除々に減少する。
【0026】
従って、アドレス放電を起こす順番が遅い放電セル群ほど、酸化マグネシウム結晶体の電子放出量が少なくなる。その結果、アドレス放電を起こす順番が遅い放電セル群ほど、酸化マグネシウム結晶体による放電遅延抑制効果が小さくなる。
【0027】
そこで、従来は、最後にアドレス放電を起こす放電セル群で、所望の放電遅延抑制効果が得られるように、十分な量の酸化マグネシウム結晶体を、保護膜全面に一様に撒布していた。
【0028】
この場合、殆どの放電セルに、必要以上の酸化マグネシウム結晶体が撒布される。このような過剰な酸化マグネシウム結晶体の撒布を止めることができるならば、製造に使用する酸化マグネシウム結晶体の量を、削減することができる。
【0029】
そこで、本PDPでは、画像データを書き込むための電圧パルスが先に印加される走査電極の上方に配置された酸化マグネシウム結晶体粒子の密度を、後に上記電圧パルスが印加される走査電極の上方に配置された酸化マグネシウム結晶体粒子の密度より低くしている。
【0030】
このようにすれば、製造に使用する酸化マグネシウム結晶体の量を削減して、PDPの製造コストを低くすることができる。
【実施例1】
【0031】
(1)構 成
図1は、本実施例のPDP2の構成を説明する平面図である。
【0032】
本実施例のPDP2は、前面パネル4と背面パネル6を具備している。
【0033】
前面パネル4には、水平方向に延在する走査電極8と同じく水平方向に延在する維持電極10からなる複数の表示電極が形成されている。
【0034】
走査電極8には、画像データを書き込むための電圧パルス(以後、書き込み走査パルスと呼ぶ)が、上から順番に印加される。すなわち、走査電極8には、矢印12の指し示す方向に向かって、順番に書き込み走査パルスが印加される。尚、書き込み走査パルスが順番に印加されて行く方向を、以後、走査方向と呼ぶ。
【0035】
一方、背面パネル6には、走査電極8及び維持電極10に直交する複数のアドレス電極14が形成されている。このアドレス電極14と、走査電極8及び維持電極10が交差する位置に、放電セルが形成されている。
【0036】
図2は、図1に示したII−II線に沿った断面を、矢印の方向から見た図である。
【0037】
図2に示すように本PDP2は、ガラス製の前面基板16等からなる前面パネル4と、ガラス製の背面基板18等からなる背面パネル6を有している。前面パネル4と背面パネル6は対向して配置され、その外周部は、ガラスフリットなどの封着剤によって気密封着されている。
【0038】
封着されたPDP2の内部に形成される放電空間20には、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)からなる放電ガスが封入されている。
【0039】
前面基板16の上には、走査電極8と維持電極10からなる複数の表示電極22が、水平方向に形成されている。前面基板16の上には、表示電極22を覆うように誘電体層24が形成されている。この誘電体層24を覆うように、例えば、酸化マグネシウム(MgO)からなる保護膜26が形成されている。
【0040】
保護膜26は、誘電体層24を放電による侵食から保護するためのものである。更に、保護膜26は放電に曝されると、2次電子を放出して放電を起こりやすくする。
【0041】
この保護膜26の上には、酸化マグネシウム単結晶からなる粒子28(酸化マグネシウム結晶体)が配置されている。この酸化マグネシウム結晶体28は、放電に曝された後、暫くの間、電子を放出して放電遅れを短縮する。
【0042】
背面基板18の上には、表示電極22に直交する方向に延在する複数のアドレス電極14が形成されている。
【0043】
アドレス電極14は、誘電体層30によって覆われている。この誘電体層30の上には、隔壁32が形成されている。図2に示すように、隔壁32は、隣り合うアドレス電極14の間に形成されている。更に、隔壁32は、隣り合う表示電極22の間にも形成されている。
【0044】
この隔壁32によって放電空間20が区画され、放電セル34が形成されている。すなわち、本PDP2の放電セルは、所謂、ボックス構造を有している。
【0045】
各放電セル34内には、紫外線によって夫々、赤、緑、及び青で発光する3種類の蛍光体層36が、表示電極22の延在方向に順次、繰り返し形成されている。赤、緑、青の蛍光体層を有する一組の放電セルが、カラー表示のための一画素になる。
【0046】
図3は、走査方向12に沿った、酸化マグネシウム結晶体28の密度分布を説明する図である。横軸は、走査方向に沿った位置である。図3の右端が、PDP2の上端50に相当する。一方、図3の左端は、PDP2の下端60に相当する。縦軸は、保護膜26の上に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度である。
【0047】
図3に示すように、本PDP2では、前面パネル4の上側50に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度が、後面パネル4の下側60に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度より低くなっている。
【0048】
すなわち、先に書き込み走査パルスが印加される走査電極8の上方に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度が、後に書き込み走査パルスが印加される走査電極8の上方に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度より低くなっている。ここで、「上方」とは、前面基板16から保護膜26に向かう方向のことである。尚、走査電極8に沿った酸化マグネシウム結晶体28の密度は、一定である。
【0049】
そして、各走査線8の上方に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度は、当該走査線8が貫く放電セル群の放電遅れを、一定の値、短縮するために必要かつ十分な量である。すなわち、酸化マグネシウム結晶体28は、過不足なく、保護膜26の上に配置されている。
【0050】
故に、本PDP2では、略全面に亘って酸化マグネシウム結晶体28が過剰に配置されている従来のPDPに比べ、酸化マグネシウム結晶体28の量が少なくなっている。由って、本PDP2によれば、PDPの製造コストを抑制することができる。
【0051】
尚、放電遅延時間の均一化を図るため、保護膜26の厚さを、書き込み走査パルスが遅れて印加される走査電極8の上方で、厚くしたPDPが報告されている(特許文献2)。
【0052】
このPDPでは、保護膜が、通常のPDPより厚く形成されている。これは、製品化する際に要求される総サステイン放電時間(例えば、3万時間)に耐えられるように、保護膜を、通常のPDPの保護膜と同等又はより厚く(例えば、0.9μm以上に)する為と考えられる。従って、上記報告例に従ってPDPを製造すると、保護膜の形成に使用する原料は増加する。
【0053】
一方、本PDPの保護膜26は、従来のPDPと同じ厚さの保護膜を有している。従って、本PDP2は、サステイン放電に対して、従来のPDPと同等の耐性を有している。このため、本実施例によれば、酸化マグネシウム結晶体28の使用量を、増加させるのではなく削減することができる。
【0054】
以上の説明から明らかなように、本PDP2は、前面パネル4と背面パネル6を具備している(図2参照)。
【0055】
前面パネル4は、前面基板16を有している。
【0056】
また、前面パネル4は、画像データを書き込むための電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8と維持電極10からなり、且つ前面基板16の表面に形成された複数の表示電極22を有している。
【0057】
また、前面パネル4は、表示電極22を覆う誘電体層24と、誘電体層22を覆う保護膜26と、保護膜26の上に配置された酸化マグネシウム単結晶からなる複数の粒子(酸化マグネシウム結晶体28)を有している。
【0058】
一方、背面パネル6は、背面基板18を有している。
【0059】
また、背面パネル6は、背面基板18の表面に形成され、表示電極22と直交する方向に延在し、且つ上記画像データが入力される複数のアドレス電極14を有している。
【0060】
そして、本PDP2では、他の走査電極8である電極より先に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8の上方に配置された上記粒子(酸化マグネシウム結晶体28)の密度が、上記電極の上方に配置された粒子(酸化マグネシウム結晶体28)の密度より低くなっている。
【0061】
このため、本PDP2の製造に使用する酸化マグネシウム結晶体の量は、従来の高精細化PDPより少ない。故に、本PDP2によれば、高精細化PDPの製造コストを低くすることができる。
【0062】
(2)製造方法
以下、前面パネルの製造工程について説明する。背面パネルの製造工程及び前面パネルと背面パネルの組み立て工程は、従来のPDPと略同じである。
【0063】
(a)電極形成工程、誘電体層形成工程、保護膜形成工程
まず、ガラスからなる前面基板16の表面に、スパッタリングにより透明導電膜を形成し、フォトリソグラフィにより帯状の透明電極を形成する。透明電極の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)である。この透明電極の上に、スパッタリングより金属導電膜を形成する。
【0064】
次に、この金属導電膜を、フォトリソグラフィにより加工して、透明電極の上辺又は下辺に片寄った位置にバス電極を形成する。金属膜は、例えば、Cr−Cu−Crの三層金属である。このバス電極と上記透明電極が一体となった電極が、走査電極8及び維持電極10からなる表示電極22となる。
【0065】
次に、この走査電極8及び維持電極10からなる表示電極22の上に、誘電体層24を形成する。誘電体層24の材料は、低融点ガラスである。
【0066】
次に、PDPの放電特性を改善し且つ誘電体層24を保護するため、誘電体層24の上に保護膜26を形成する。保護膜26の材料は、2次電子放出効率が高く、且つ放電によってスパッタされにくい酸化マグネシウム(MgO)である。この保護膜26は、真空中で蒸着法によって形成する。
【0067】
このように、本製造方法では、まず、前面基板16の上に、画像データを書き込むための電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8と維持電極10からなる複数の表示電極22と、表示電極22を覆う誘電体層24と、誘電体層24を覆う保護膜26を順次形成する。
【0068】
(b)酸化マグネシウム結晶体の撒布工程
図4は、酸化マグネシウム結晶体28の撒布工程を説明する斜視図である。
【0069】
酸化マグネシウム結晶体28の撒布は、スラリー撒布装置38を用いて行う。スラリー撒布装置38は、スラリー44を霧状にして噴出すスプレーガン40と、スプレーガン38が取り付けられたガイドレール42を具備している。
【0070】
一方、酸化マグネシウム結晶体28が撒布される(製造途中の)前面パネル48は、パネルを一方向46に搬送するパネル搬送装置(図示せず)に載置され、スラリー撒布装置38の下側を移動する。
【0071】
酸化マグネシウム結晶体28の撒布は、以下の手順で行われる。
【0072】
まず、酸化マグネシウム結晶体を溶媒に分散させたスラリーを、リザーバに充填する。このリザーバは、スプレーガン40に接続され、スプレーガン40にスラリーを供給する。
【0073】
次に、表示電極22、誘電体層24、及び保護膜26が、前面基板16上に形成された製造途中の前面パネル4を、保護膜26を上にして上記搬送装置に載置する。次に、この搬送装置を動作させて、製造途中の前面パネル4を、ガイドレール42の下側を通過させる。
【0074】
この時、スプレーガン40に上記スラリー44を吐出させながら、スプレーガン40を、搬送中の前面パネル48の上を繰り返し移動せる。すると、パネル48の全面に、酸化マグネシウム結晶体を含むスラリーが撒布される。
【0075】
その際、本実施例では、スプレーガン40がパネル48の上端50に近づくほど、スラリー44の(単位時間当たりの)吐出量を少なくする。
【0076】
すなわち、本実施例では、保護膜26の上で、酸化マグネシウム単結晶28からなる粒子(酸化マグネシウム単結晶粒子)を溶媒に分散したスラリーを、スプレーガン40から吐出して、保護膜26の上に上記粒子(酸化マグネシウム単結晶粒子)を撒布する。
【0077】
更に、本実施例では、他の走査電極8(他の走査電極である電極)より先に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8の第1の上方に位置する保護膜26の上に、上記他の走査電極8(上記電極)の第の上方に位置する保護膜26の上より少ない粒子(酸化マグネシウム単結晶粒子)を撒布する。
【0078】
このように、酸化マグネシウム単結晶粒子の撒布量に分布を持たせるために、本実施例では、スプレーガン40が単位時間当たりに吐出するスラリー44の吐出量を変化させる。具体的には、先に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8の上方(すなわち、上記第1の上方)におけるスラリーの吐出量を、後に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極22の上方(すなわち、上記第2の上方)おける上記吐出量より少なくする。
【0079】
或いは、酸化マグネシウム単結晶粒子の撒布量に分布を持たせるために、スプレーガン40のスラリー44の吐出量は一定として、先に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8の上方(すなわち、上記第1の上方)におけるスプレーガン40の移動速度を、後に電圧パルス(書き込み走査パルス)が印加される走査電極8の上方(すなわち、上記第2の上方)におけるスプレーガン40の移動速度より速くしてもよい。
【0080】
(3)動 作
図5は、PDP2の駆動方法を説明する図である。横軸は、時間を表している。縦軸は、PDP2の上端50から数えた表示電極の順番を表している。
【0081】
画像信号の1フィールドは、複数のサブフィールド52に分けられる。各サブフィールド52は、夫々、リセット期間54、アドレス期間56、及び維持期間58に分けられる。
【0082】
リセット期間54には、走査電極8と維持電極10の間に初期化電圧を印加してリセット放電を起して、全ての放電セルに均一に壁電荷を形成する。
【0083】
アドレス期間56には、アドレス電極14に画像情報を担持した正の電圧パルス(書き込み信号パルス)を順次印加する。ここで、書き込み信号パルスに担持させる画像情報は、各放電セルを点灯させるか否かを定めた情報である。
【0084】
同時に、走査電極8には、負の電圧パルス(書き込み走査パルス)を前面パネル4の上端50から下端60に向かって、順次印加して行く(図1参照)。
【0085】
この際、アドレス電極14には新たな画像情報が順次入力され、その度に、書き込み走査パルスが印加される走査電極8は、下側に移動する。
【0086】
書き込み信号パルス及び書き込み走査パルスが、同時に印加された放電セルでは、アドレス放電が起き、壁電荷が形成される。その結果、各放電セルに、画像情報に応じた壁電荷が形成される。
【0087】
全放電セルに対して書き込み走査が終了すると、維持期間58が開始する。
【0088】
維持期間58中は、交互に位相が反転する周期的な維持パルスを走査電極8と維持電極10の間に印加して、サステイン放電を起こす。この時、アドレス期間56に壁電荷が形成された放電セルだけで、サステイン放電が起きる。
【0089】
サステイン放電によって発生した紫外線が放電セルの背面パネル6に設けられた蛍光体層36を励起して、可視光を生成する。その結果、各サブフィールド52に割り当てられた画像がPDP2に表示される。その結果、各サブフィールドの元となる画像が、階調表示される。
【0090】
ところで、PDP2が高精細化しても、アドレス期間56に割り当てることのできる時間は変わらない。このため、高精細化のために走査電極8の数を増やすと、各走査電極8に印加される書き込み走査パルスの幅が狭くなる。
【0091】
従って、放電遅れ現象が顕在化して、点灯すべき放電セルで放電が起きなくなることを防止するために、酸化マグネシウム結晶体28を保護膜の上に撒布して、放電遅れ時間を短縮する。
【0092】
本PDP2では、先に書き込み走査パルスが印加される放電セルほど、撒布された酸化マグネシウム結晶体28の密度の低い。一方、酸化マグネシウム結晶体28が放出する電子は、アドレス期間54中に除々に減少していく。
【0093】
従って、書き込み走査パルスが印加される時点で比較すると、酸化マグネシウム結晶体28から単位時間当たり放出される電子の数は、全放電セルにおいて略同じになる。
【0094】
このため、本PDP2では、全放電セルで一様に、放電遅れが改善される。従って、撒布する酸化マグネシウム結晶体の量を削減しても、画像品質の劣化は起きない。
【実施例2】
【0095】
図6は、本実施例のPDPにおける、走査方向に沿った酸化マグネシウム結晶体の密度分布を説明する図である。横軸は、前面パネルの上下方向に沿った位置である。図6の右端は、PDP2の上端50に相当する。一方、図6の左端は、PDP2の下端60に相当ずる。縦軸は、保護膜26の上に撒布された酸化マグネシウム結晶体28の密度である。図6の上部に示された矢印12は、書き込み走査パルスの走査方向を表している。
【0096】
本実施例のPDPは、図1及び図2を参照して説明した実施例1のPDPと略同じ構成を有している。但し、図6に示すように、前面パネル4の中央62に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度が、前面パネル4の上端50及び下端60に配置された酸化マグネシウム結晶体28の密度より低くなっている。尚、実施例1と同様に、表示電極22に沿った酸化マグネシウム結晶体の密度は、一定である。
【0097】
本PDPでは、アドレス電極14が前面パネル4の中央62で分割され、前面パネル4の中央62から上端50及び下端60の両方向に向かって、書き込み走査パルスが、走査電極8に順次印加される。すなわち、本PDPは、所謂、デュアルスキャン型のPDPである。
【0098】
本PDPでも、先に書き込み走査パルスが印加される走査電極8の上方に位置する保護膜26の上ほど、酸化マグネシウム結晶体28の密度が低くなっている。すなわち、本PDPでも、酸化マグネシウム結晶体28は過不足なく保護膜26の上に配置されている。従って、本PDPの製造コストも低い。
【0099】
ところで、保護膜26の上に配置された酸化マグネシウム結晶体28は、放電セルで生成された可視光を散乱する。このため、酸化マグネシウム結晶体28を撒布すると最大で10%程度、PDPの輝度が低下する。このような輝度の低下がPDPを視る者に与える影響は、画面の中央部ほど大きい。
【0100】
本PDPでは、酸化マグネシウム結晶体28の配置密度が、PDPの中央62で最も低くなっている。従って、本PDPを視る者は、従来の高精細化PDPより、表示された画像を明るく感じる。
【0101】
尚、走査方向を逆にして、上端50及び下端60から中央62に向かって、書き込み走査パルスを、走査電極8に順次に印加してもよい。この場合には、酸化マグネシウム結晶体28の配置密度を、前面パネル4の中央から、前面パネル4の上端50及び下端60に向かって、除々に低くなるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1のPDPの構成を説明する平面図である。
【図2】図1に示したII−II線に沿った断面を矢印の方向から見た図である。
【図3】書き込み走査パルスの走査方向に沿った、酸化マグネシウム結晶体の密度分布を説明する図である(実施例1)。
【図4】酸化マグネシウム結晶体の撒布工程を説明する斜視図である。
【図5】実施例1のPDPの駆動方向を説明する図である。
【図6】走査方向に沿った、酸化マグネシウム結晶体の密度分布を説明する図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0103】
2・・・実施例1のPDP 4・・・前面パネル
6・・・背面パネル 8・・・走査電極
10・・・維持電極 12・・・矢印(走査方向)
14・・・アドレス電極 16・・・前面基板
18・・・背面基板 20・・・放電空間
22・・・表示電極 24・・・誘電体層
26・・・保護膜 28・・・酸化マグネシウム結晶体
30・・・誘電体層 32・・・隔壁
34・・・放電セル 36・・・蛍光体層
38・・・スラリー撒布装置 40・・・スプレーガン
42・・・ガイドレール 44・・・スラリー
46・・・パネルの搬送方向 48・・・(製造途中の)前面パネル
50・・・前面パネルの上端 52・・・サブフィールド
54・・・リセット期間 56・・・アドレス期間
58・・・維持期間 60・・・前面パネルの下端
62・・・前面パネルの中央

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面基板と、画像データを書き込むための電圧パルスが印加される走査電極と維持電極からなり且つ前記前面基板の表面に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜と、前記保護膜上に配置された酸化マグネシウム単結晶からなる複数の粒子とを有する前面パネルと、
背面基板と、前記背面基板の表面に形成され且つ前記画像データが入力される複数のアドレス電極とを有する背面パネルとを具備し、
他の前記走査電極である電極より先に前記電圧パルスが印加される前記走査電極の上方に配置された前記粒子の密度が、前記電極の上方に配置された前記粒子の密度より低いことを、
特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記前面パネルの中央における前記粒子の密度が、前記前面パネルの上端及び下端における前記粒子の密度より低いことを、
特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前面基板上に、画像データを書き込むための電圧パルスが印加される走査電極と維持電極からなる複数の表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜を順次形成する第1の工程と、
前記保護膜の上で、酸化マグネシウム単結晶からなる粒子を溶媒に分散したスラリーをスプレーガンから吐出して、前記保護膜の上に前記粒子を撒布する第2の工程を具備し、
他の前記走査電極である電極より先に前記電圧パルスが印加される前記走査電極の第1の上方に位置する前記保護膜の上に、前記電極の第2の上方に位置する前記保護膜の上に撒布する前記粒子より少ない前記粒子を撒布することを、
特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記スプレーガンが単位時間当たりに吐出する前記スラリーの吐出量を変化させて、
前記第1の上方における前記吐出量を、前記第2の上方における前記吐出量より少なくすることを、
特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記第1の上方における前記スプレーガンの移動速度が、前記第2の上方における前記移動速度より速いことを、
特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−140849(P2010−140849A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318243(P2008−318243)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】