説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】保護層表面の変質層を均一性よく、簡単かつ低コストに除去できる製造方法を提供すること。
【解決手段】(i)前面板および背面板を準備する工程、(ii) 前面板または背面板にガラスフリット材料を塗布して前面板と背面板とを対向配置する工程、(iii)対向配置された前面板および背面板の側部にてガス供給ノズルを配置する工程、(iv)前面板および背面板を加熱下においた状態で、ガス供給ノズルからガスを吹き込み、対向配置された前面板と背面板との間にガスを横方向から吹き込む工程、ならびに、(v)ガラスフリット材料を溶融させて前面板と背面板とを封着させる工程を含んで成り、工程(iii)にて前面板および背面板の側部に配置されたガス供給ノズルにつき、ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっていることを特徴とするPDP製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。より詳細には、プラズマディスプレイパネルの製造に際して「前面板の保護層表面に形成された変質層」を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高品位テレビジョン画像を大画面で表示するためのディスプレイ装置として、プラズマディスプレイパネル(以下、“PDP”とも称す)を用いたディスプレイ装置への期待は高まっている。
【0003】
PDP(例えば3電極面放電型PDP)は、映像を見る人から見て表面側となる前面板とその裏側の背面板とを対向配置して、それらの周辺部を封着材で封着した構造を有している。前面板と背面板との間に形成された放電空間にはネオンおよびキセノンなどの放電ガスが封入されている。前面板は、ガラス基板上に形成された走査電極と維持電極とから成る表示電極と、これらの電極を覆う誘電体層と保護層とを備えている。背面板は、ガラス基板に上記表示電極と直交する方向にストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、これらのアドレス電極を覆う下地誘電体層と、放電空間をアドレス電極毎に区画する隔壁(リブ)と、隔壁の側面および下地誘電体層上に形成された赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の蛍光体層とを備えている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
表示電極とアドレス電極とは直交していて、その交差部が放電セルを成している。これらの放電セルはマトリクス状に配列されており、赤色・緑色・青色の蛍光体層を有する3個の放電セルがフルカラー表示のための画素となっている。このようなPDPでは、順次、走査電極とアドレス電極間、および走査電極と維持電極間に所定の電圧が印加されてガス放電を発生させている。そして、かかるガス放電で生じる紫外線により蛍光体層を励起させ可視光を発光させることによってカラー画像表示を実現している。
【0005】
このようなPDPの保護層の成分としては、酸化マグネシウム(MgO)が一般に広く用いられている。PDPの動作電圧は、この保護層の2次電子放出係数に依存している。従って、動作電圧の低電圧化を図るため、仕事関数がより小さいアルカリ土類金属の酸化物(たとえば、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなど)を保護層成分として用いることが提案されている。しかしながら、これらのアルカリ土類金属の酸化物は吸湿性が高く、保護層の形成後に周囲雰囲気中の水分を吸着し得る。これにより、保護層の表面領域が水酸化物に変質することになり、不安定な放電特性が引き起こされるといった問題があった。
【0006】
上記問題に対処すべく、保護層形成工程後から封着工程までを乾燥雰囲気中で連続して行う方法(例えば、特許文献2参照)や、保護層形成工程後から封着工程までを真空雰囲気中で連続して行う方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。このような方法は、保護層形成後において保護層に水分等の不純物を吸着させないことを意図している。しかしながら、前者の方法(「保護層形成工程後から封着工程までを乾燥雰囲気中で連続して行う方法」)では、乾燥空気中にある量の水分や二酸化炭素が含まれているので、その含有量が十分小さくない限り、数十分〜数時間の曝露によって変質層が形成されてしまう(例えば、露点−20℃の乾燥空気中には0.1%の水分、露点−40℃の乾燥空気中には0.013%の水分、露点−60℃の乾燥空気中には0.0011%[11ppm]の水分が含まれている)。PDPの製造工程では、一般に、保護層形成工程から封着工程までには数時間分以上の工程在庫があるため、仮に極めて露点の低い乾燥空気(例えば露点−60℃以下の乾燥空気)を用いたとしても、変質層の形成は避けられないといえる。また、後者の方法(「保護層形成工程後から封着工程までを真空雰囲気中で連続して行う方法」)であっても、搬送系及び封着装置の構成が極めて複雑となり、現実的ではない。また、広大な空間を常時真空に保つ必要があり、多大のコストを要してしまう。
【0007】
不純物が吸着された保護層を清浄化しながら封着する方法も提案されている。この方法は、不純物をガス状態で保護層から脱離させることで、結果的に不純物を含んだ変質層を除去することを意図している。例えば、前面板または背面板に第1ガラス管及び第2ガラス管を設け、第1ガラス管からパネル内部を排気しながら第2ガラス管から乾燥ガスをパネル内部に供給することによって、パネル内部の残留不純物を低減させる方法が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、かかる方法では、2つのガラス管が必要となるので封着装置の構成が極めて複雑となり、実現は容易ではない。仮にこれを実現したとしても、給気ガラス管に近い位置と遠い位置とでは、乾燥ガスの流速や不純物ガス濃度の点で大きな違いが生じるため、パネルの動作電圧に面内ムラを生じる(即ち、パネルの動作電圧がパネル面において均一とならない)。ガラス管を1つとし、封着前まではこのガラス管から乾燥ガスをパネル内に供給し、封着後に同一のガラス管から排気を行う場合であっても、給気ガラス管に近い位置と遠い位置とでは、乾燥ガスの流速や不純物ガス濃度に大きな違いが生じるため、パネルの動作電圧に面内ムラを生じてしまう。
【0008】
更に、加熱炉内に「対向配置させた前面板および背面板」を仕込んで加熱炉を密閉し、その後、加熱炉内ヘと雰囲気ガスを導入しつつ加熱炉からガスを排出することによって、パネル封着を行う方法も提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、かかる方法では、乾燥ガスの多くがパネルの外部を流れることになり、ガス使用量が多大となる。また、加熱炉を容器として密閉構造とする必要があるだけでなく、高温で背面板を動かす必要があり、装置としての構成が極めて複雑となってしまう。高温で背面板を動かすことは、“アライメントずれ”の危険性を引き起こし得る。
【0009】
以上のように、従来のPDP製造では、保護層表面の変質層を均一性よく、簡単かつ低コストに除去できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−216620号公報
【特許文献2】特開2002−231129号公報
【特許文献3】特開2000−156160号公報
【特許文献4】特開2002−150938号公報
【特許文献5】特開2001−35372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の課題は、保護層表面の変質層を均一性よく、簡単かつ低コストに除去できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、
(i)基板A上に電極Aと誘電体層Aと保護層とが形成された前面板、および、基板B上に電極Bと誘電体層Bと隔壁と蛍光体層とが形成された背面板を準備する工程、
(ii) 基板Aまたは基板Bの主面の周辺領域にガラスフリット材料を塗布し、塗布されたガラスフリット材料を挟むように前面板と背面板とを対向配置する工程、
(iii)対向配置された前面板および背面板の側部にてガス供給ノズルを配置する工程、
(iv)前面板および背面板を加熱下においた状態で、ガス供給ノズルからガスを吹き込み、対向配置された前面板と背面板との間にガスを横方向から吹き込む工程、ならびに
(v)ガラスフリット材料を溶融させて、前面板と背面板とを封着させる工程
を含んで成り、
工程(iii)にて前面板および背面板の側部に配置されたガス供給ノズルについて、ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっていることを特徴とするPDP製造方法を提供する。
【0013】
本発明の製造方法は、ガス吹き込み時の漏れをある程度抑えつつも、封着時の溶融ガラスフリット材料の影響をできるだけ回避できるようにガス供給ノズルを設けることを特徴の1つとしている。具体的には、前面板および背面板の側部に配置されたガス供給ノズルにつき、ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっている。これにより、ガス供給ノズルから供されたガスがパネル外部へと漏れることをある程度抑えつつも、封着時にて溶融ガラスフリット材料がガス供給ノズルに接触することを防止でき、所望のPDP製造を実現できる。
【0014】
特に、ガラスフリット材料を塗布した基板側の主面端部Aにガス供給ノズルが密着すると共に、他方の基板側の側面部Bにもガス供給ノズルが密着するように(側面部Bは主面端部Aよりも内側に存在する)、ガス供給ノズルを構成および配置することが好ましい。換言すれば、パネル側に向くように設けられるガスノズルの噴出面が実質的に斜めとなるようにガス供給ノズルが構成および配置される。尚、本明細書にいう「ガス供給ノズル」とは、その内部にマニホールド部、および、マニホールド部と流体連通した複数の噴出口を有して成るガス供給部材を実質的に意味している。このようなガス供給ノズルの材質としては金属が好ましい。特に、基板の加熱時にガス供給ノズルと基板とが擦れてダストや位置ズレが起きるのを避けるため、できるだけガラス基板と熱膨張係数が近い金属(例えばチタン)を用いることが好ましい。
【0015】
本明細書において「前面板と背面板との間にガスを横方向から流す」とは、前面板と背面板との隙間へとガスを流すことを実質的に意味しており、特に、前面板と背面板とが対向する方向に対して実質的に垂直な方向(例えば“水平方向”)に沿って側方から前面板と背面板との隙間へとガスを流すことを意味している(図1参照)。
【0016】
本明細書において「基板Aまたは基板Bの主面の周辺領域」とは、基板上に設けられた各種要素の外側に位置する周囲領域であって、一般的なPDP製造において封着材料が塗布される領域を実質的に意味している。
【0017】
また、本明細書において「外側」とは、前面板または背面板の中央部(即ち、パネル中央部)から見てより遠方となる位置・方向を実質的に意味している(図1参照)。
【0018】
ある好適な態様において、工程(iii)では、ガス供給ノズルを前面板または背面板と一体的にクリップ部材で保持する。これにより、パネルのアライメントに際してガス供給ノズルを配置することができる。換言すれば、ガスノズル着脱とPDPアライメントとを実質的に同時に行うことができるので、その後においてアライメントずれを発生するタイミングがなく製造工程を簡易、安定かつ低コストで行うことができる。尚、クリップ部材は、バネ力を有する金属製のものが好ましい。
【0019】
本発明では、ガス供給ノズルは、複数のサブ・ガス供給ノズルから構成されるものであってもよく、それらをパネルのエッジに沿うように直線状に配置してもよい。かかる場合、サブ・ガス供給ノズルの各々に対してクリップ部材を少なくとも1つ設けることになる。
【0020】
別のある好適な態様では、ガス供給ノズルが、ガス噴出口以外にも開口した形態を有しており、工程(iii)では、その開口しているノズル部分を基板Aまたは基板Bの主面端部に密着させる。この態様では、ガス供給ノズルのマニホールド部および/またはガス噴出部を中空構造にする必要がない。つまり、ガス供給ノズルは加工がより容易な開放構造のマニホールド部および/またはガス噴出部を備えているものであってよく、それを用いてガス吹き込みを行うことができる。
【0021】
更に別のある好適な態様において、ガス供給ノズルの配置箇所とは異なる「前面板および背面板の側部」に対してガス排気ノズルを設けてよい。かかる場合、工程(iv)において前面板と背面板との間に吹き込まれたガスをガス排気ノズルから排気することができる。その結果、吹き込まれたガスにつきパネル内部空間流れが向上し、より効果的に保護層表面の変質層を除去できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法によれば、保護層表面の変質層を均一性よく、簡単かつ低コストに除去でき、パネル寿命に優れたプラズマディスプレイパネルを得ることができる。ここでいう「変質層の除去」とは、不純物が吸着された保護層から不純物を取り除くこと、あるいは、保護層が水酸化物になったり炭酸化物になったりした部分を本来の酸化物に回復させることを実質的に意味している。
【0023】
上記効果も含め、本発明の効果を分けて説明すると次のようになる:
【0024】
● 本発明の製造方法では、保護層の表面近傍にてガス流れ(例えば窒素などの不活性ガス流れ)が存在した状態で加熱されるため、変質層を成す不純物が脱離してガス流れに同伴される。それゆえ、保護層表面から変質層が除去されることになり、保護層が清浄化される。特に、本発明の製造方法では、図1(b)および図2に示すように、複数の吹込み部からガスを並列的にパネル内部に吹き込むので、前面板と背面板との間隙にガスを全体的に流し込むことができる。つまり、吹き込まれたガス流れのパネル面内での均一性は良い。それゆえ、保護層の清浄度の面内均一性を向上させることができ、結果的に、駆動電圧、輝度、色度等のパネル諸特性の均一性が向上したPDPを実現できる。ここで、特許文献4に開示されているような従来技術では、給気ガラス管に近い位置と遠い位置とにおいて、吹き込むガスの流速や不純ガス濃度に大きな違いが生じるため、パネルの駆動電圧、輝度、色度等に面内ムラが生じる。「ガラス管を1つとし、封着前まではこのガラス管から乾燥ガスをパネル内に供給し、封着後にガラス管から排気を行う」といった従来技術であっても同様に、給気ガラス管に近い位置と遠い位置とでは、乾燥ガスの流速や不純ガス濃度に大きな違いが生じるため、パネルの駆動電圧、輝度、色度等に面内ムラを生じることになる。この点、本発明の製造方法では、概ね面内に均一な“ガス流れ”を形成できるので、保護層の清浄度の面内均一性が良いといえ、駆動電圧、輝度、色度等のパネル諸特性の均一性を向上させることができる。
【0025】
● 「ガラス管を1つとし、封着前まではこのガラス管から乾燥ガスをパネル内に供給し、封着後にガラス管から排気を行う」といった従来技術の場合では、乾燥ガスの供給中に2枚の基板間の内圧が上がり過ぎないよう、ガラスフリット材料の軟化点以上の温度においては、窒素ガスの吹き込み量を少なくするか、あるいは、窒素ガスの吹き込み量を実質的にゼロにする必要がある。つまり、かかる従来技術では、ガス流量の変更をタイミング良く行わなければならないといった点で煩雑である。この点、本発明の製造方法では、溶融したガラスフリット材料がガスの吹き込みを自動的に停止させる機能を有しているので、ガス流量を変更するタイミングは大雑把でよい。つまり、前面板と背面板との封着工程に際して、ガラスフリット材料は溶融することになるが、その溶融によって、各々の吹込み溝部が徐々に塞がれていき、パネル内(即ち、前面板と背面板との間の空間)に吹き込まれるガス流量が次第に低下していく。そして、吹込み溝部が“溶融したガラスフリット材料”で完全に塞がれると、パネル内へのガス吹き込みが完全に停止するので、厳密なガス流量の変更を必要としない。
【0026】
● 本発明では、工程(iii)にて前面板および背面板の側部に配置されたガス供給ノズルにつき、ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっているといった特徴を有している。かかる特徴に起因して、パネル封着時、即ち、工程(v)において溶融したガラスフリット材料とガス供給ノズルとの接触を防止できる。仮に「溶融したガラスフリット材料がガス供給ノズルに接触した場合」を想定すると、溶融ガラスフリットが冷却されて固化することによって、固化したガラスフリットに起因してガス供給ノズルが基板にくっついてしまう。これにより、最終的に製造されたPDPからガス供給ノズルを取り外すことができなくなり、目的とするPDPを最終的に得られなくなるだけでなく、大量生産に際して製造歩留りが低下してしまう可能性が高くなる。この点、本発明では、溶融したガラスフリット材料とガス供給ノズルとの接触が効果的に防止されているので、所望のPDP製造を達成することができる。
【0027】
● 本発明の製造方法では、保護層の表面のみならず、背面板の隔壁や蛍光体層の表面にも水分や二酸化炭素等がほとんど吸着していないPDPを製造できる。つまり、製造されるPDPの内部には、水分、二酸化炭素など保護層表面を変質・劣化させる要因となるガスがほとんど含まれない。その結果、PDPを長時間駆動させても、「HOやCOなどの不純ガスが放電空間に放出されることに起因して保護層や蛍光体層が変質する」といったことが防止され、放電電圧・輝度等の変化が少なく、パネル寿命に優れたPDPを実現できる。また、「保護層の表面に変質層がなく、背面板におけるガス吸着がない」ということは、エージングが実質的に不要か、あるいは必要であっても極めて短時間で済むことになる。
【0028】
● 本発明では「工程(ii)の対向配置」を実施した後に「工程(v)の封着」を行うことになるが、これは、アライメント後はガラスフリットの頂部と背面板とが接触した状態で加熱を実施できることを意味している。従って、本発明の製造方法では、“封着時のアライメントずれ”が起きにくく、信頼性の高い製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】前面板と背面板との間を流れるガス流れの態様を模式的に示した図
【図2】複数の吹込み部からガスが並列的にパネル内部に吹き込まれる態様を模式的に示した平面図
【図3】図3(a):PDPの概略構成を模式的に示した斜視図、図3(b):PDP前面板を模式的に示した断面図
【図4】図4(a):塗布されたガラスフリット材料および吹込み溝部の態様を模式的に示した斜視図、図4(b)環状ガラスフリット材料部、吹込み溝部およびガス流れの態様を模式的に示した平面図
【図5】隔壁の形態を模式的に示した斜視図
【図6】対向配置された前面板および背面板の態様を模式的に示した斜視図
【図7】前面板と背面板との間のガラフフリット材料部および隔壁の態様を模式的に示した断面図
【図8】図8(a):ガス供給ノズルの配置態様を模式的に示した断面図、図8(b):図8(a)の態様を拡大した図
【図9】本発明の製造方法で用いるガス供給部材を模式的に表した斜視図
【図10】ガス供給ノズルの保持とPDPアライメントとを実質的に同時に行う態様を模式的に示した斜視図
【図11】ガス供給ノズル保持とパネル保持とが行われた態様を模式的に示した斜視図
【図12】封着処理後の態様を模式的に示した断面図
【図13】本発明の製造方法に係るPDP製造工程の概略を示したフローチャート
【図14】本発明の製造方法で用いることができるガス供給部材を模式的に表した斜視図
【図15】図14のガス供給ノズルの配置態様を模式的に示した断面図
【図16】本発明の製造方法で用いることができるガス供給部材を模式的に表した斜視図
【図17】図16のガス供給ノズルの配置態様を模式的に示した断面図
【図18】本発明の製造方法で用いることができるガス供給部材を模式的に表した斜視図
【図19】複数のサブ部材から成るガス供給ノズルの態様を模式的に示した平面図
【図20】実施例で行った「放電開始電圧の変動幅の確認試験」の結果(図20(a)は、従来例の結果を示しており、図20(b)は本発明の結果を示している)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下にて、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法を詳細に説明する。
【0031】
プラズマディスプレイパネルの構成
まず、本発明の製造方法を経ることによって最終的に得られるプラズマディスプレイパネルを簡単に説明する。図3(a)に、PDPの構成を断面斜視図により模式的に示すと共に、図3(b)にPDPの前面板の断面図を模式的に示す。
【0032】
本発明のPDP(100)の構成は、図3(a)に示すように、「基板A(10)に電極A(11)と誘電体層A(15)と保護層(16)とが設けられた前面板(1)」および「基板B(20)上に電極B(21)と誘電体層B(22)と隔壁(23)と蛍光体層(25)とが設けられた背面板(2)」からなる。
【0033】
図示するように、前面板(1)では基板A(10)上に電極A(11)が設けられ、電極A(11)を覆うように誘電体層A(15)が基板A(10)上に設けられ、また、誘電体層A(15)上に保護層(16)が設けられている。背面板(2)では基板B(20)上に電極B(21)が設けられ、電極B(21)を覆うように誘電体層B(22)が基板B(20)上に設けられ、誘電体層B(22)上に隔壁(23)および蛍光体層(25)が設けられている。前面板(1)と背面板(2)とは、保護層(16)と蛍光体層(25)とが互いに向き合うように対向配置されている。前面板(1)および背面板(2)の周縁部は、例えば低融点フリットガラス材料などから成る封着部材によって気密封着されている(図示せず)。前面板(1)と背面板(2)との間に形成された放電空間(30)には放電ガス(ヘリウム、ネオンまたはキセノンなど)が好ましくは20kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
【0034】
更に具体的に、本発明のPDP(100)を説明していく。本発明のPDP(100)の前面板(1)は、上述したように、基板A(10)、電極A(11)、誘電体層A(15)および保護層(16)を有して成る。基板A(10)は、透明で絶縁性を有する基板(厚さは例えば約1.0mm以上かつ約3mm以下)である。基板A(10)としては、例えば、フロート法などで製造されたフロートガラス基板を挙げることができる他、ソーダライムガラス基板またはホウケイ酸塩ガラス基板などを挙げることができる。電極A(11)は、基板A(10)上にストライプ状に平行に複数配置されるものであり、例えば、走査電極(12)および維持電極(13)から成る表示電極である。この場合、走査電極(12)および維持電極(13)は、それぞれ「酸化インジウム(ITO)または酸化スズ(SnO)などから成る透明導電膜である透明電極(12a、13a)」、および、かかる透明電極上に形成された「銀を主成分としたバス電極(12b、13b)」から構成される(図3(b)参照)。透明電極(12a、13a)は、蛍光体層で発生した可視光を透過させる電極として主に機能する一方、バス電極(12b、13b)は、透明電極の長手方向に導電性を付与するための電極として主に機能する。透明電極(12a、13a)の厚さは、好ましくは約50nm〜約500nmである。また、バス電極(12b、13b)の厚さは、好ましくは約1μm以上かつ約20μm以下である。尚、図3(a)に示すように、基板A(10)上にはブラックストライプ(14)(遮光層)もパターン形成され得る。
【0035】
誘電体層A(15)は、基板A(10)の表面に形成された電極A(11)を覆うように設けられている。かかる誘電体層A(15)は、主としてガラス成分およびビヒクル成分(=バインダ樹脂および有機溶剤を含んだ成分)から成る誘電体原料ペーストを塗布および熱処理して得られるガラス組成から成る膜である。誘電体層A(15)の上には、例えば酸化マグネシウム(MgO)から成る保護層(16)が形成されている(厚さは例えば約0.5μm以上かつ約1.5μm以下)。保護層(16)は、放電の衝撃(より具体的には「プラズマによるイオン衝撃」)から誘電体層A(15)を守る機能を有している。
【0036】
本発明のPDPの背面板(2)は、上述したように、基板B(20)、電極B(21)、誘電体層B(22)、隔壁(23)および蛍光体層(25)を有して成る。基板B(20)は、透明で絶縁性を有する基板(厚さは例えば約1.0mm以上かつ約3mm以下)であることが好ましく、例えば、フロート法などで製造されたフロートガラス基板を挙げることができる他、ソーダライムガラス基板、ホウケイ酸塩ガラス基板または各種セラミック基板などを挙げることができる。電極B(21)は、基板B(20)上にストライプ状に複数形成される銀を主成分とした電極(厚さは例えば約1μm以上かつ約10μm以下)であり、例えば、アドレス電極(またはデータ電極)である。アドレス電極は、各放電セルを選択的に放電させる機能を主に有している。
【0037】
誘電体層B(22)は、下地誘電体層と一般に呼ばれるものであり、基板B(20)の表面に形成された電極B(21)を覆うように設けられている。かかる誘電体層B(22)は、主としてガラス成分およびビヒクル成分(=バインダ樹脂および有機溶剤を含んだ成分)から成る誘電体原料ペーストを塗布および熱処理して得られるガラス組成から成る膜である。誘電体層B(22)の厚さは、例えば約5μm以上かつ約50μm以下である。誘電体層B(22)の上には、蛍光体材料を主成分とした蛍光体層(25)が形成されている(厚さは例えば約5μm以上かつ約20μm以下程度)。蛍光体層(25)は、放電によって放射された紫外線を可視光線に変換する機能を主に有している。かかる蛍光体層(25)は、赤色、緑色および青色を発する蛍光体層を構成単位としており、それぞれが隔壁(23)で区切られている。隔壁(23)は、放電空間をアドレス電極(21)毎に区画する目的で、ストライプ状または井桁状に誘電体層B(22)上に形成されている。かかる隔壁(23)は、ガラス成分、ビヒクル成分およびフィラー等を含んで成るペースト原料から形成される。
【0038】
本発明のPDP(100)では、前面板(1)の表示電極(11)と背面板(2)のアドレス電極(21)とが直交するように、前面板(1)と背面板(2)とが放電空間(30)を挟んで対向して配置されている。このようなPDP(100)では、隔壁(23)によって仕切られ、アドレス電極(21)と表示電極(11)とが交差する放電空間(30)が放電セル(32)として機能することになる。換言すれば、マトリクス状に配列されている放電セルが画像表示領域を構成している。従って、外部駆動回路から表示電極(11)に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、かかる放電によって生じる紫外線によって、各色の蛍光体層を励起させて赤色、緑色および青色の可視光を発生させる結果、カラー画像表示が実現される。
【0039】
[PDPの一般的な製造方法]
次に、PDPの一般的な製造方法について簡潔に説明する。本発明に係るPDPは、原則、一般的なPDP製造法に基づいて得ることができる。本発明では、特に言及しない限り、各種構成部材の原材料(原料ペースト)/構成材料などは、一般的なPDP製造法で常套的に用いられているものであってよい。
【0040】
まず、ガラス基板である基板A(10)上に、走査電極(12)と維持電極(13)とから構成される表示電極(11)を形成すると共に遮光層(14)も形成する。走査電極(12)および維持電極(13)のそれぞれの透明電極(12a、13a)とバス電極(12b、13b)とは、露光・現像するフォトリソグラフィ法などを用いてパターニングできる。透明電極(12a、13a)は薄膜プロセスなどを用いて形成でき、バス電極(12b、13b)は銀(Ag)材料を含むペーストを乾燥(100〜200℃程度)および焼成(400〜600℃程度)に付すことによって形成できる。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含んだ原料ペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料を含んだ原料をガラス基板の全面に設けた後、露光・現像するフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することによって形成できる。次いで、走査電極(12)、維持電極(13)および遮光層(14)を覆うように基板A(10)上に、ガラス成分(SiO、Bなどから形成される材料)とビヒクル成分とを主成分とした誘電体原料ペーストをダイコート法または印刷法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。塗布した後、所定の時間放置すると塗布された誘電体ペーストの表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成すると誘電体層A(15)が形成される。誘電体層A(15)を形成した後、かかる誘電体層A(15)上に保護膜(16)を形成する。保護膜(16)は、真空蒸着法、CVD法またはスパッタリング法などを用いて形成できる。
【0041】
以上の工程により、基板A(10)上に所定の構成部材である電極A(走査電極(12)および維持電極(13))、誘電体層A(15)および保護層(16)が形成され、前面板(1)が完成する。
【0042】
一方、背面板(2)は次のようにして形成する。まず、ガラス基板である基板B(20)上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、銀を主成分とした金属膜を全面に形成した後、露光・現像するフォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによって前駆体層を形成し、それを所望の温度(例えば約400〜約600℃)で焼成することによりアドレス電極(21)を形成する。この「アドレス電極」は、クロム/銅/クロムの3層薄膜上にフォトレジストを塗布したものをフォトリソグラフィ及びウェットエッチングによりパターニングして形成してもよい。次いで、アドレス電極(21)が形成された基板B(20)上に、下地誘電体層となる誘電体層B(22)を形成する。まず、「ガラス成分(SiO、Bなどから形成される材料)およびビヒクル成分などを主成分とした誘電体原料ペースト」をダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、かかる誘電体ペースト層を焼成することによって誘電体層B(22)を形成できる。次いで、隔壁(23)を形成する。具体的には、誘電体層B(22)上に隔壁形成用原料ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成し、その後、それを焼成に付して隔壁(23)を形成する。例えば、低融点ガラス材料、ビヒクル成分およびフィラー等を主成分とした原料ペーストをダイコート法または印刷法によって塗布して約100℃〜200℃の乾燥に付した後、露光・現像するフォトリソグラフィ法でパターニングし、次いで、約400℃〜約600℃の焼成に付すことによって隔壁(23)を形成する。尚、隔壁(23)は、サンドブラスト法、エッチング法または成型法などを用いることによっても形成できる。次いで、蛍光体層(25)を形成する。隣接する隔壁(23)間の誘電体層B(22)上および隔壁(23)の側面に蛍光体材料を含む蛍光体原料ペーストを塗布し、焼成することによって蛍光体層(25)を形成する。より具体的には、蛍光体粉末およびビヒクル成分等を主成分とした原料ペーストをダイコート法、印刷法、ディスペンス法またはインクジェット法などによって塗布し、次いで、約100℃の乾燥に付すことによって蛍光体層(25)を形成する。
【0043】
以上の工程により、基板B(20)上に、所定の構成部材たる電極B(アドレス電極(21))、誘電体層B(22)、隔壁(23)および蛍光体層(25)が形成され、背面板(2)が完成する。
【0044】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板(1)と背面板(2)とは、表示電極(11)とアドレス電極(21)とが直交するように対向配置させる。次いで、前面板(1)と背面板(2)の周囲をガラスフリットで封着すると共に、形成される放電空間(30)に放電ガス(ヘリウム、ネオンまたはキセノンなど)を封入することによってPDP(100)が完成する。
【0045】
本発明の製造方法
本発明は、上述のPDP製造工程の中でも、特に前面板および背面板の形成後からパネル封着までの製造工程に特色を有している。
【0046】
本発明の製造方法では、まず、工程(i)を実施する。即ち、「基板A上に電極Aと誘電体層Aと保護層とが形成された前面板」を準備すると共に、「基板B上に電極Bと誘電体層Bと隔壁と蛍光体層とが形成された背面板」を準備する。かかる前面板および背面板の準備は、上述の[PDPの一般的な製造方法]で説明しているので、重複を避けるために説明を省略する。尚、保護層は典型的には酸化マグネシウムであるが、これに微量の元素(シリコン、アルミニウムなど)を添加したものであってもよい。更に言えば、保護層は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムから成る群から選択される少なくとも1種類以上を含むことが望ましい。これらの材質は酸化マグネシウムのみを用いた場合よりも駆動電圧の低いPDPを実現できるが、特にガス吹込みによる清浄化の効果が大きく本発明の有効性が顕著となり得る。
【0047】
工程(i)に引き続いて、工程(ii)を実施する。即ち、基板Aまたは基板Bの周辺領域にガラスフリット材料を塗布し、ガラスフリット材料を挟むように前面板と背面板とを対向配置させる。塗布されたガラスフリット材料は、後に行う「封着工程(v)」で前面基板と背面基板との周縁をシールするために機能する。ガラスフリット材料は、前面板と背面板とを貼り合せた際に重なり合う領域の周囲にて一続きの環を構成するように塗布することが好ましい。用いられるガラスフリット材料は、一般的なPDP製造において同様の目的で用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、低融点ガラス材料(酸化鉛−酸化硼素−酸化珪素系、酸化鉛−酸化硼素−酸化珪素−酸化亜鉛系など)から成るガラスフリット材料であってよい。また、塗布し易いようにビヒクル成分などを含んで成るものであってよい。前面基板または背面基板の周縁部に塗布されたガラスフリット材料の厚さは200〜600μm程度であり、その幅は3〜10mm程度であることが好ましい。
【0048】
尚、工程(iv)において吹き込まれるガスに対して通気経路が確実に確保されるように、塗布したガラススリット材料に対して複数の溝部(86a)を形成することが好ましい(図4(a)参照)。吹込み溝部は、環状ガラスフリット材料部を形成した後に、溝部に相当する部分を切り欠いて形成してよく、あるいは、ガラスフリット材料を断続的に塗布することによって形成してもよい。ここで、図4(b)に示すような吹込み溝部(86a)のサイズLaは、例えば0.1〜5mm程度であり、吹込み溝部のピッチLpは、基板サイズなどによって変わり得るものの、例えば50〜500mm程度である。かかる吹込み溝部は、前面板(1)または背面板(2)のエッジの長辺に沿って複数個設けることが好ましい。これにより、工程(iv)で吹き込まれたガスが“長辺側”から全体的に流れることになるので、“短辺側”に吹込み開口部を設ける場合と比べて、前面板と背面板との間で形成されるガス流線を短くすることができ、結果的に保護層表面の変質層をより均一性良く除去できる。また、パネルの長辺方向に沿った隔壁(23a)は短辺方向に沿った隔壁(23b)よりも低くなっているので(図5参照)、“長辺側”からガスを流し込むと、より効果的に前面板と背面板との間にガスを流すことができる。尚、「複数の吹込み溝部」にいう「複数」とは、2〜16程度の個数を実質的に意味している。
【0049】
ガラスフリット材料を塗布した後は、塗布されたガラスフリット材料(86)が基板Aと基板Bとの間に位置するように、前面板(1)と背面板(2)とを相互に対向状態で配置する(図6参照)。別の観点から言えば、前面板と背面板とは、保護層と蛍光体層とが互いに向き合うように対向して配置されると共に、表示電極とアドレス電極とが直交するように、前面板と背面板とが実質的に平行に配置される。前面板と背面板とが対向配置されると、図6ないしは図7に示すように、環状ガラスフリット材料部(86)は、前面板(1)と背面板(2)との間に挟まれた形態で存在することになる。対向配置された前面板(1)および背面板(2)は、以後に動かないようにクリップ部材(70)などによって保持する(図6参照)。
【0050】
工程(ii)では、前面板エッジと背面板エッジとは揃えるのではなく、それらのエッジをずらして配置する。具体的には、工程(iii)でガス供給ノズルを配置することになる部分につき、ガラスフリット材料を塗布した基板側の基板エッジが、他方の基板側に相当する基板エッジよりも外側になるようにする。
【0051】
対向配置された前面板と背面板との間の間隔(即ち、ギャップ幅)は、ガラスフリット材料部の厚さなどに依存するが、例えば、好ましくは0.1mm〜0.6mmであり、より好ましくは0.3〜0.6mmであり、更に好ましくは0.3mm〜0.5mmである。ちなみに、背面板(2)には隔壁(23)が設けられているが、図7に示すように、封着処理前の状態では隔壁(23)の高さよりもガラスフリット材料部(86)の高さの方が大きいため、隔壁(23)の頂部は前面板(1)とは接触していない。つまり、パネル内部には隙間があり、その隙間を通るように吹込みガスが流れることができる。
【0052】
工程(ii)に引き続いて、工程(iii)を実施する。即ち、対向配置された前面板および背面板の側部にてガス供給ノズルを配置する。具体的には、図8(a)に示すように、ガラスフリット材料(86)を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となるように、ガス供給ノズル(90)を配置する。特に図示する態様では、背面側にガラスフリット材料が塗布されたものであるので、ノズル部分aが背面側(2)に位置している一方、ノズル部分bが前面側(1)に位置している。図示する態様から分かるように、工程(iii)で配置されるガス供給ノズルは、前面側と背面側とで非対称的に形成されている。
【0053】
図8(b)に拡大して示すように、ガラスフリット材料を塗布した基板側の主面端部Aにガス供給ノズルを密着させると共に、他方の基板側の側面部Bにもガス供給ノズルを密着させる。主面端部Aが側面部Bよりも外側に位置しており、噴出部(92)が設けられているノズル面が実質的に斜めとなり得ることを理解されよう。換言すれば、ガラスフリット材料を塗布した基板側に対して密着させたノズル部分の中で最も内側の位置(“ポイントp”)が、他方の基板の側面位置(“ポイントq”)よりも外側に位置している。
【0054】
このようなガス供給ノズルの構成および配置では、塗布されたガラスフリット材料からより離れた位置にノズルが設けられている。より具体的にいえば、「噴出部(92)が設けられた面が斜めとなっていないノズル」と比べてみると、ノズル部分aがより外側に位置している。要するに、本発明ではノズル部分aの側面K(図8(b)参照)がより外側に位置していることになる。図8(b)には「噴出部(92)が設けられている面が斜めとなっていない場合」のノズル部分a’を点線により示しているので、意図する態様を理解できるであろう。
【0055】
本発明では、塗布されたガラスフリット材料からより離れた位置にノズルが設けられ、即ち、図示するように背面板に密着したノズル部分aとガラスフリット材料部(86)とは相互により離れているので、工程(v)の封着時にてガラスフリット材料が溶融して背面板表面に濡れ広がったとしても、その溶融ガラスフリット材料がノズル部分aに接触しにくくなっている。つまり、本発明では、溶融ガラスフリット材料とガス供給ノズルとの接触が効果的に防止されており、『冷却により固化したガラスフリット材料に起因してガス供給ノズルが基板にくっついてしまう現象』を回避できる。その結果、パネル排気後にガス供給ノズルを確実に取り外すことができ、PDPの大量生産時の歩留りが向上し得る。
【0056】
尚、噴出部(92)が設けられている面が斜めとなっていることは、溶融ガラスフリット材料とノズル部分bとの接触も防止されていることを意味する。ノズル部分bは側面部B(前面板の側面部)に密着させて設けられるが、図8(b)に示すように、ノズル部分bの側面Lが“斜め”ゆえにガラスフリット材料部(86)から離れる形態となっている。従って、封着時に溶融したガラスフリット材料が背面板表面だけでなく前面板表面にも大きく濡れ広がったとしても、その溶融ガラスフリット材料がノズル部分bにも接触しにくくなっている。
【0057】
図9にガス供給ノズル(90)を斜視図により示す。図示するように、ガス供給ノズル(90)のガス噴出面は斜めに形成されている。ガス供給ノズルの斜め側面(90a)の角度αは、大きいとノズル部分aおよびbがガラスフリット材料部(86)からより離れるので好ましいが、大きすぎるとガス漏れ空間が大きくなってしまう(ガス漏れ空間は図8(a)にて“Z”で示す点線包囲部分に相当する)。従って、ガス供給ノズルの斜め側面(90a)の角度αは、25°〜65°程度であることが好ましく、より好ましくは35°〜55°程度である(“α”については図9を参照のこと)。このようにガス供給ノズルの側面が斜めに形成されていることによって、溶融ガラスフリット材料との接触を回避しつつも、ガス吹き込み時の漏れをある程度抑えることができる。ガス漏れが減じられると、吹き込み時に使用されるガス量が少なくて済む点で有利である。尚、ガス供給ノズルの噴出口の数は特に制限はないが、例えば、2〜20個程度である。
【0058】
ガス供給ノズルの配置に際しては、前面板または背面板とガス供給ノズルとを一体的にクリップ部材で保持すること好ましい。例えば、図8(a)に示すように、クリップ部材(70b)でもって背面板とガス供給ノズルとを一体的に保持することが好ましい。クリップ部材で外側から保持するので、ガス供給ノズルの着脱は容易である。ガス供給ノズルの保持は、PDPアライメントと実質的に同時に行ってよい。つまり、図10および図11に示すように示すように、対向配置された前面板(1)および背面板(2)をクリップ部材(70a)で保持すると共に、ガス供給ノズル(90)をクリップ部材(70b)で保持することが好ましい。これにより、それ以降においてアライメントずれを発生させる要因がなくなり、PDP製造工程が簡易、安定かつ低コストで行える。尚、例えば図8(a)に示す態様から良く理解できることであるが、クリップ部材の2つの保持部分は前面側と背面側とで相互に対向する位置となっていることが好ましい。
【0059】
工程(iii)に引き続いて、工程(iv)を実施する。即ち、前面板および背面板を加熱下においた状態で、ガス供給ノズルからガスを吹き込む。吹き込まれたガスは、ガラスフリット材料部の複数の吹込み溝部を介してパネル内に流し込まれる。これにより、対向配置された前面板と背面板との間にガスが横方向から吹き込まれることになる。
【0060】
加熱には加熱炉または封排炉を用いてよい。即ち、加熱に際しては、「対向配置された前面板および背面板」を加熱炉または封排炉などのチャンバーに投入してよい。かかる場合、ガスの吹込みを常温にて開始しつつ、ガスを吹込みながら「対向配置された前面板および背面板」を炉内で加熱することが好ましい。加熱温度は、「保護層表面の変質層を成す不純物(例えば保護層成分に結合しているCO2−やOH)」が脱離することになる限り特に制限はなく、例えば350〜450℃程度である。
【0061】
吹き込まれるガスは、保護層に対して不活性なガスであることが好ましい。例えば、窒素ガスを挙げることができる。また、ヘリウム、アルゴン、ネオンまたはキセノン等の希ガスを用いてもよい。ちなみに、吹き込まれるガスは、少なくとも、水蒸気をほとんど含まないガスであることが望まれる。例えば、吹き込まれるガスの水分濃度は1ppm以下が好ましい。ここでいう「ガスの水分濃度(ppm)」は、ガスの全体積(0℃1気圧の標準状態)に占める水分(水蒸気)の体積割合を百万分率で示したものであり、常套の露点計で測定することによって得られる値を指している。窒素ガスは比較的高価であるので、乾燥空気を用いるとコスト的に効率の良いPDP製造法が実現できる。吹込まれるガス流量は、パネルの大きさ、吹込み溝部の個数やサイズ、ガラスフリット材料部の厚さやその頂部凹凸の大きさ等によって最適値は変わってくるものの、概ね0.1SLM〜10SLMの範囲である(SLM:気体の標準状態において1分間に供給したガスの量をリットルで示す単位)。ガス流量が少なすぎると外部の大気が混入したり、清浄化が不十分になるおそれがある一方、逆にガス流量が多すぎるとコスト的に不利になり得る。
【0062】
ガス供給ノズルから吹き込まれるガスは、並列的に配された複数の吹込み溝部を介してパネル内部に供されることになるので、結果的に、ガスを前面板と背面板との間へと全体的に流すことができる。ここでいう「前面板と背面板との間へと全体的に流れる」とは、対向配置された前面板と背面板とが相互に重なり合う領域全体を通るようにガスが流れることを実質的に意味している。
【0063】
環状ガラスフリット材料部の頂部と基板とは接触しているとはいえ、環状ガラスフリット材料部の頂部は完全な平面ではなく数十〜百μm程度の凹凸が存在している。例えば、背面板に形成された環状ガラスフリット材料部の頂部と前面板表面との接触界面には、上記凹凸に起因して僅かな隙間が形成されている。従って、「前面板と背面板との間の空間」へと吹き込まれたガスは、最終的には、環状ガラスフリット材料部と基板との間の隙間領域(例えば、図4(b)でいえば領域M)から排出され得る。尚、必要に応じて、環状ガラスフリット材料部の一部に排出溝部を設けておき、そこから「前面板と背面板との間の空間」へと流れ込んだガスを積極的に排出するようにしてもよい。また、ガス排気ノズルを別途設けて、吹き込まれたガスを強制的にパネル内から排気してもよい。より具体的に言えば、ガス供給ノズルの配置箇所とは異なる「前面板および背面板の側部」に対してガス排気ノズルを設け、前面板と背面板との間に吹き込まれたガスをガス排気ノズルから強制的に排気してよい。排気ノズルは、排気管を通じて排気ポンプに接続されているので、排気ポンプの吸気作用によって、前面板と背面板との間に吹き込まれたガスが強制的に排気される。特に、ガス排気ノズルをガス供給ノズルと対向する位置に設けると(例えば、図4(b)に示す領域Mに設けると)、前面板と背面板との間で形成されるガス流線をより直線的にすることができ、結果的に保護層表面の変質層をより均一性良く除去できる。
【0064】
工程(iv)に引き続いて、工程(v)を実施する。即ち、環状ガラスフリット材料部を溶融させることによって、前面板と背面板とを封着させる。より具体的には、加熱により環状ガラスフリット材料部を溶融させて前面板と背面板とを周辺領域で気密接合させる。工程(v)の加熱温度は、環状ガラスフリット材料部が溶融できる温度であれば特に制限はない。即ち、一般的なPDP製造に際して用いられる「封着温度」であってよく、例えば400℃〜500℃程度の温度である。工程(v)の封着の実施に際して、工程(iv)のガスの吹き込みを併せて行ってもよい。これについて以下に詳述する。
【0065】
ガスの吹込みは、常温において開始する。また、ガスを吹込みながら「対向配置された前面板および背面板」を炉内で加熱する。ガラスフリットの軟化点を越えると環状ガラスフリット材料部が軟化・溶融し、徐々に環状ガラスフリット材料部と前面板との間の隙間(即ち、上述のガラスフリット材料部の頂部に存在する凹凸部)が埋まっていく。このようなガラスフリット材料部の軟化・溶融に起因して、吹込み溝部は徐々に塞がれることになる。最終的には吹込み溝部が完全に塞がれることになるが、それによって、ガス供給ノズルから吹き込まれるガスが、前面板と背面板との間に流れることができず、パネル内部へのガス供給が自動的に停止することになる。このように封着処理時にガス吹込みが自動的に停止することは、ガスの使用量を最小限に抑制できることを意味している。軟化後では、環状ガラスフリット材料部が完全に溶融する温度域(例えばガラスフリットの溶融温度よりも10〜70℃程度高い温度)にて数分〜十数分パネルを保持した後で冷却する。これにより、ガラスフリット材料が硬化し、前面板と背面板とが確実に封着されることになる。
【0066】
封着後においては、「封着された前面板および背面板」を封着時よりも若干低温(即ち、ガラスフリット材料の固化状態が維持される温度であって、ガラスフリット材料の溶融温度よりも10〜50℃程度低い温度)に保持しながら、前面板と背面板との間を真空排気する。
【0067】
真空排気操作が完了すると、前面板と背面板との間に放電ガスを封入する。封入すべき放電ガスとしては、XeとNeの混合ガスを例示できるものの、Xeのみを封入してもよいし、Heを混入させたものであってもよい。このような排気および封入は、前面板または背面板に設けられた貫通孔を介して行うことが好ましい。図12には、背面板(2)に設けられた貫通孔(29)が示されている。かかる「貫通孔」は、対向配置された前面板と背面板との間のガスを排気し、放電ガスを供給することを可能にするものであれば、どのような形状・形態・サイズであってもかまわない(例えば、円形状の貫通孔の場合、直径サイズは1〜5mm程度である)。また、貫通孔(29)は、ガラスフリット材料部が供される領域よりも内側に位置することが必要であるものの、完成されたPDPの画像表示を妨げることがないように、PDP表示部ではない前面板または背面板の周辺部分に位置することが好ましい。貫通孔の形成は、例えば、前面板または背面板を準備した後に、ドリル加工またはレーザー加工などの適当な方法で形成することができる。貫通孔を背面板側に設ける場合、蛍光体のペースト原料を塗布して乾燥させた後に貫通孔を設けることが好ましい。
【0068】
「貫通孔(29)」およびそれに関連するパーツについて詳述しておく。貫通孔(29)には、図12に示すように、チップ管(55)がフリットリング(56)を介して設けられている。チップ管(55)の端部には、配管(58)の先端部を構成するチャックヘッド(57)が接続されている。チャックヘッド(57)には水冷配管・シール機構(図示せず)が配置されており、チップ管(55)および配管(58)が封着温度にまで昇温された場合においても一体的に密閉構造が維持されるように構成されている。配管(58)にはガス供給装置及び排気装置(図示せず)が接続されているので、貫通孔(29)を介して、前面板と背面板との間のガスを排気できたり、あるいは、かかる空間へと放電ガスを供給できるようになっている。尚、フリットリング(56)は、ガラスフリット材料を固形化させた環状の固形物である。従って、炉内を溶融温度まで昇温した後に降温すると、フリットリング(56)がガラスフリット材料と同様に溶融・固化するので、背面板(2)とチップ管(55)とが相互に接着される。
【0069】
ちなみに、ガス吹込み時(即ち、工程(iv))においては、貫通孔(29)は実質的に“閉”の状態にされていることに留意されたい。より具体的には、チップ管(55)は、フリットリング(56)を介して貫通孔(29)に合わせて背面板(2)に押し当てられるものであるが、「チップ管(55)とフリットリング(56)とが接触する面」および「フリットリング(56)と背面板(2)とが接触する面」が平滑面なので、これらの面におけるガスの漏洩はほとんど無い。そして、チップ管(55)と連通した配管(58)に設けられたバルブのうち、もっともチップ管(55)に近い側のバルブを閉じた状態でガスを吹込むことになるので、チップ管(55)を介したガスの漏洩もほとんど無いことになる。
【0070】
《製造フロー》
本発明の実施形態を経時的に説明しておく。図13は、本発明に係るPDP製造方法の概略を示すフローチャートである。図示するように、まず、前面板と背面板とを準備する。次いで、アライメント装置内にて前面板および背面板の位置合わせを行った後、前面板と背面板とをガラスフリット材料を介して対向させて保持する。次に、「前面板と背面板との間の側部」にガス供給ノズルを設ける。また、背面板に設けた貫通穴に合わせてチップ管を取り付ける。保護層の形成からこの時点までは、保護層が大気に曝露されるため、保護層表面には変質層が形成され得る。次いで、ガス供給ノズルを介して「表面板と背面板との間の空間」へとガスを吹き込む。そして、ガスの吹込みを行いながら表面板及び背面板を炉内で加熱し、ガラスフリット材料を溶融させて前面板と背面板とを封着する。引き続いて、前面板および背面板を封着時よりも若干低温に保持しながら、前面板と背面板との間の空間が真空状態になるまでチップ管を介してガス排気する。この排気処理が完了した後、前面板および背面板をほぼ常温になるまで冷却させる。冷却後、「表面板と背面板との間の空間」に放電ガスを導入し、所定の圧力にて放電ガスの導入を停止する(封入)。そして、最終的にはチップ管を切断し、ガス供給ノズルを取り外すことでPDPが完成する。
【0071】
《本発明の変更態様》
本発明で用いるガス供給ノズルには種々の形態が考えられる。特に、本発明の特徴的部分である「ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっている」態様には、種々の形態が考えられる。以下それについて詳述する。
【0072】
(段差状のノズル側面)
本発明の工程(iii)で配置されるガス供給ノズルは、図14(a)および(b)に示すような形態を有するものであってよい。つまり、噴出部(92)が設けられた面が段差状になっているものであってもよい。かかる場合であっても、図15に示すように、ガラスフリット材料(86)を塗布した基板側の主面端部Aにガス供給ノズルを密着させると共に、他方の基板側の側面部Bにもガス供給ノズルを密着させる。図示する態様から分かるように、「噴出口が設けられた面が段差状になっているガス供給ノズル」であっても、図8ないしは図9で示した「噴出口が設けられた面が斜面状になっているガス供給ノズル」と同様の効果が奏されることを理解できるであろう。また、図14の(a)と(b)との違いからも分かるように、噴出口(吐出口)の形状は、特に制限されるものでなく、例えば図14(a)のような円形状であってもよいし、図14(b)のような四角形状であってもよい。
【0073】
(開放構造を有するガス供給部材)
ガス供給ノズルは、図16(a)および(b)に示すような開放構造を有するものであってもよい。つまり、ガス供給ノズルは、ガス噴出口以外にも開口した形態を有していてよい。別の表現を用いれば、ガス供給ノズルは、マニホールド部および噴出部の少なくとも一方の頂部が開いた形態となっており、ガラスフリット材料が塗布された基板側に対して密着させるノズル部分が開放構造を有している。かかる場合、ガス供給ノズルのマニホールド部(91)および/またはガス噴出部(92)を中空構造にする必要がない。その結果、ガス供給ノズルの加工が比較的容易となり(より具体的にいえば、“加工しにくい閉じた空間形態のマニホールド部”などを形成しなくてよい)、低コストのPDP製造に資することになる。かかる場合であっても、図17に示すように、ガラスフリット材料を塗布した基板側の主面端部Aにガス供給ノズルを密着させると共に、他方の基板側の側面部Bにもガス供給ノズルを密着させる(図示する態様では、開口したノズル部分を背面側(2)の主面端部Aに密着させている)。図示する態様から分かるように、「開放構造を有するガス供給ノズル」であっても、図8ないしは図9で示した「中空構造を有するガス供給ノズル」と同様の効果が奏されることを理解できるであろう。尚、図16(a)および(b)にて部分的に示すように、噴出口(92)は天井部(92a)を備えた形態であってもよい。
【0074】
(ガス漏れ防止構造を有するガス供給ノズル)
ガス吹込み時のガス漏れを効果的に防止する観点からは、ガス供給ノズル(90)を図18に示すような形態にしてもよい。つまり、エッジ部SおよびTを残してノズル斜面(90a)を形成してもよい。かかる形態では、ガス供給ノズルを前面板および背面板の側部に配置した際、図8(a)にて“Z”で示すガス漏れ空間が実質的に閉空間を形成し得るので、ガス吹き込み時のガス漏れを効果的に防止できる。
【0075】
(サブ部材から成るガス供給ノズル)
ガス供給ノズルは、複数のサブ・ガス供給ノズルから構成してもよい。具体的には、図19に示すように、サブ・ガス供給ノズル(90,90,・・・)をパネルのエッジに沿うように直線状に配置してもよい。かかる場合、隣り合うサブ・ガス供給ノズルの間には隙間が形成されないようにすることが好ましい。また、サブ・ガス供給ノズルの各々に対してはクリップ部材を少なくとも1つ設けることが好ましい。このようなサブ構成とすることによって、各々のガスノズルの加工が容易となるだけでなく、背面板または表面板の反りに起因して生じるガスノズルと各ガラス基板との間の隙間をより小さくできる。尚、図19の(a)と(b)との違いからも分かるように、ガス供給管(95)の配置形態は、特に制限されるものでなく、ガスノズルの中央に設けてもよいし、そうでなくてもよい。但し、ガス導入の均一性を向上させる観点からは、ガス供給管をガスノズルの中央部に設けることが好ましい。
【実施例】
【0076】
《放電開始電圧の変動幅の確認試験》
本発明の効果を確かめるために、放電開始電圧の変動幅(以下、「変動幅」と略す)の面内分布を従来例と本発明とで比較した。あるパネルの所定位置の放電開始電圧をVf1として測定し、パネルを15分間連続で点灯させた後、基板温度が常温まで低下した後再び同一場所の放電開始電圧をVf2として測定し、その差の絶対値|Vf1−Vf2|を変動幅として定義した。変動幅は、PDPの残像特性に関わる指標であり、パネル面内では変動幅が均一であることが望まれる。結果を図20に示す。図20(a)は、従来例の結果であり、図20(b)は本発明の結果を示している(尚、パネル中央部の変動幅を1.00とした場合の各位置の変動幅を相対値で示している)。ここで、従来例とは、ガラス管を1つとし、封着前まではこのガラス管から乾燥ガスをパネル内に供給し、封着後にガラス管から排気を行ったものである。図20に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法を用いると、均一性の改善が顕著であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の製造方法を通じて最終的に得られるPDPは、パネル寿命に優れているので、一般家庭向けのプラズマテレビおよび商業用プラズマテレビとして好適に用いることができるだけでなく、その他の各種表示デバイスとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 前面板
2 背面板
10 前面板側の基板A
11 前面板側の電極A(表示電極)
12 走査電極
12a 透明電極
12b バス電極
13 維持電極
13a 透明電極
13b バス電極
14 ブラックストライプ(遮光層)
15 前面板側の誘電体層A
16 保護層
20 背面板側の基板B
21 背面板側の電極B(アドレス電極)
22 背面板側の誘電体層B
23 隔壁
23a 長辺方向に沿って延在する隔壁
23b 短辺方向に沿って延在する隔壁
25 蛍光体層
29 貫通孔(封入処理用)
30 放電空間
32 放電セル
55 チップ管
56 フリットリング
57 チャックヘッド
58 配管
70 クリップ部材
70a 基板保持用のクリップ部材
70b ガス供給ノズル保持用のクリップ部材
86 ガラスフリット材料部
86’ 封着処理後のガラスフリット封着部
86a 吹込み溝部
86b ガス排出溝部
90 ガス供給ノズル
90a ガス供給ノズルの斜め側面
90 サブ・ガス供給ノズル
90 サブ・ガス供給ノズル
91 ガス供給ノズルのマニホールド部
92 ガス供給ノズルの噴出口
92a 天井部
95 ガス供給管
100 PDP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
(i)基板A上に電極Aと誘電体層Aと保護層とが形成された前面板、および、基板B上に電極Bと誘電体層Bと隔壁と蛍光体層とが形成された背面板を準備する工程、
(ii) 基板Aまたは基板Bの主面の周辺領域にガラスフリット材料を塗布し、ガラスフリット材料を挟むように前面板と背面板とを対向配置する工程、
(iii)対向配置された前面板および背面板の側部にてガス供給ノズルを配置する工程、
(iv)前面板および背面板を加熱下においた状態で、ガス供給ノズルからガスを吹き込み、対向配置された前面板と背面板との間にガスを横方向から吹き込む工程、ならびに
(v)ガラスフリット材料を溶融させて、前面板と背面板とを封着させる工程
を含んで成り、
工程(iii)で配置されたガス供給ノズルにつき、ガラスフリット材料を塗布した基板側に位置するノズル部分aが、他方の基板側に位置するノズル部分bよりも外側となっていることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
工程(iii)では、前面板または背面板とガス供給ノズルとを一体的にクリップ部材で保持することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ガス供給ノズルが、ガス噴出口以外にも開口した形態を有しており、工程(iii)では、前記開口しているノズル部分を基板Aまたは基板Bの主面端部に密着させることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(iii)のガス供給ノズルの配置箇所とは異なる「前面板および背面板の側部」に対してガス排気ノズルを設け、
工程(iv)では、前面板と背面板との間に吹き込まれたガスをガス排気ノズルを介して排気することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−277775(P2010−277775A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127852(P2009−127852)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】