説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】保護層の電子放出特性を向上し、高精細で高画質な画像表示性能を備えるPDPを提供する。
【解決手段】保護層を有する前面基板と背面基板とを放電空間を介して封着する封着ステップを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、保護層を、少なくとも2つ以上の単一金属酸化物からなる複合金属酸化物で形成するとともに、X線回折分析において、複合金属酸化物の特定方位面における回折角のピークが、単一金属酸化物の特定方位面における最小回折角と最大回折角との間に存在するように形成し、かつ、封着ステップが、前面基板と背面基板とを少なくとも490℃まで加熱する加熱ステップを含むとともに、加熱ステップにおいて加熱温度を350℃から490℃まで昇温させる際の昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPにおいては、従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上の高精細テレビへの適用が進められており、エネルギー問題に対応してさらなる消費電力低減への取り組みや、環境問題に配慮した鉛成分を含まないPDPへの要求なども高まっている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面基板と背面基板とで構成されている。前面基板は、フロート法により製造された硼硅酸ナトリウム系ガラスの前面ガラス基板と、前面ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層とで構成されている。
【0004】
一方、背面基板は、背面ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0005】
前面基板と背面基板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にネオン(Ne)−キセノン(Xe)の放電ガスが40kPa〜60kPaの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0006】
また、このようなPDPの駆動方法としては、書き込みをしやすい状態に壁電荷を調整する初期化期間と、入力画像信号に応じて書き込み放電を行う書き込み期間と、書き込みが行われた放電空間で維持放電を生じさせることによって表示を行う維持期間を有する駆動方法が一般的に用いられている。これらの各期間を組み合わせた期間(サブフィールド)が、画像の1コマに相当する期間(1フィールド)内で複数回繰り返されることによってPDPの階調表示を行っている。
【0007】
このようなPDPにおいて、前面基板の誘電体層上に形成される保護層の役割としては、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することなどがあげられる。イオン衝撃から誘電体層を保護することは、放電電圧の上昇を防ぐ重要な役割であり、またアドレス放電を発生させるための初期電子を放出することは、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐ重要な役割である。
【0008】
保護層からの初期電子の放出数を増加させて画像のちらつきを低減するために、例えば、酸化マグネシウム(MgO)保護層に不純物を添加する例や、酸化マグネシウム(MgO)粒子を保護層上に形成した例が開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−260535号公報
【特許文献2】特開平11−339665号公報
【特許文献3】特開2006−59779号公報
【特許文献4】特開平8−236028号公報
【特許文献5】特開平10−334809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。高精細化された画像を表示するためには、1フィールドの時間が一定にもかかわらず書き込みを行う画素の数が増える。そのため、サブフィールド中の書き込み期間において、アドレス電極へ印加するパルスの幅を狭くする必要が生じる。
【0011】
しかしながら、電圧パルスの立ち上がりから放電空間内で放電が発生するまでには「放電遅れ」と呼ばれるタイムラグの存在があり、パルスの幅が狭くなれば書き込み期間内で放電が終了できる確率が低くなってしまう。その結果、点灯不良が生じ、ちらつきといった画質性能の低下という問題が生じている。これらの現象は保護層の電子放出特性に大きく左右される。このように高精細なPDPにおいては、保護層の電子放出特性はPDPの画質を決定するため、電子放出特性を向上させることが重要な課題になっている。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、保護層の電子放出特性を向上させ、高精細で高画質な画像表示性能を備えるPDPを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPの製造方法は、互いに平行な複数の表示電極対とこれを覆う誘電体層と保護層とを前面ガラス基板に形成する前面基板作製ステップと、表示電極対と交差する互いに平行な複数のデータ電極とこれを覆う下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とを背面ガラス基板に形成する背面基板作製ステップと、間に放電空間を形成するように隔壁を挟んで前面基板と背面基板とを対向配置して周囲を封着する封着ステップと、放電空間を排気する排気ステップと、放電空間に放電ガスを封入する放電ガス供給ステップと、を有するPDPの製造方法であって、保護層を、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、および酸化バリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の単一金属酸化物からなる複合金属酸化物で形成するとともに、保護層のX線回折分析において、複合金属酸化物の特定方位面における回折角のピークが、単一金属酸化物の特定方位面における最小回折角と最大回折角との間に存在するように形成し、かつ、封着ステップが、前面基板と背面基板とを少なくとも490℃まで加熱する加熱ステップを含み、加熱ステップにおいて加熱温度を350℃から490℃まで昇温させる際に、昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下としている。
【0014】
このような方法によれば、保護層と不純物ガスとの反応を抑制して保護層の電子放出特性を向上させ、高精細で高画質な画像表示性能を備えるPDPを実現することができる。
【0015】
さらに、加熱ステップにおいて、前面基板と背面基板とにより構成される放電空間内が陽圧となるように放電空間内に乾燥ガスを流しながら加熱を行うことが望ましい。このような方法によれば、保護層と不純物ガスとの反応や再付着を抑制し、保護層の電子放出特性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のPDPの製造方法によれば、保護層における電子放出特性を向上させ、高精細で高画質な画像表示性能を有するPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態により製造されるPDPの分解斜視図
【図2】同PDPの前面基板の構成を示す断面図
【図3】同PDPの製造ステップを示すフローチャート
【図4】同製造ステップの前面基板作製ステップの詳細を示すフローチャート
【図5】同PDPの保護層下地膜が2成分の場合についてのX線回折結果を示した図
【図6】同PDPの保護層下地膜が3成分の場合についてのX線回折結果を示す図
【図7】同PDPの保護層下地膜上に形成した酸化マグネシウムの凝集粒子の拡大図
【図8】同PDPの放電遅れと保護層下地膜中のカルシウム濃度との関係を示す図
【図9】同PDPの保護層を加熱した場合の加熱温度に対する保護層表面からの水と二酸化炭素の脱離強度とを示す図
【図10】同PDPの保護層を350℃から490℃までに加熱して昇温させる場合の昇温速度と脱離ガス量との関係を示す図
【図11】本実施の形態における封着ステップ、排気ステップ、放電ガス供給ステップの温度プロファイルの一例を示す図
【図12】本実施の形態における封着ステップ、排気ステップ、放電ガス供給ステップの製造ステップでの装置動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態におけるPDPの製造方法について、図面を用いて説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は本実施の形態により製造されるPDPの分解斜視図である。PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。
【0020】
図1に示すように、PDP1は、前面基板2と背面基板10とが対向して配置され、前面基板2と背面基板10の周辺部をガラスフリットなどからなる封着部材によって気密封着して構成している。封着されたPDP1内部の放電空間16には、キセノン(Xe)とネオン(Ne)などの放電ガスが40kPa〜60kPaの圧力で封入されている。
【0021】
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極対6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。さらに、表示電極対6と遮光層7とを覆うように電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護層9が形成されている。
【0022】
また、背面ガラス基板11上には、表示電極対6と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝毎に、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。表示電極対6とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極対6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
【0023】
図2は、本実施の形態におけるPDP1の前面基板2の詳細な構成を示す断面図であり、図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極対6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
【0024】
誘電体層8は、これらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆って設けた第1誘電体層81と、第1誘電体層81上に形成された第2誘電体層82の少なくとも2層構成としている。さらに第2誘電体層82上に保護層9が形成されている。
【0025】
保護層9は、誘電体層8上に形成した保護層下地膜91と、保護層下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを複数個凝集させた凝集粒子92とにより構成されている。また、保護層9において、保護層下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化バリウム(BaO)の群から選ばれる単一金属酸化物、もしくは少なくとも2つ以上のこれら単一金属酸化物からなる複合金属酸化物により形成されている。
【0026】
図3はPDP1の製造ステップを示すフローチャートである。図3に示すように、前面基板作製ステップ(S1)と、背面基板作製ステップ(S2)と、フリット塗布ステップ(S3)と、封着ステップ(S4)と、排気ステップ(S5)と、放電ガス供給ステップ(S6)とを経て製造される。
【0027】
図4は前面基板作製ステップ(S1)の詳細を示すフローチャートである。以下、フローチャートに従って前面基板作製ステップ(S1)について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、表示電極対6と遮光層7とを形成する(S11)。走査電極4と維持電極5とを構成する透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化している。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料を前面ガラス基板3の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
【0028】
次に、表示電極対6および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト(誘電体材料)層を形成する。誘電体ペーストを塗布し、所定の時間放置すると誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。誘電体ペーストの材料や塗布厚みを変えて、第1誘電体層81と第2誘電体層82との誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、表示電極対6および遮光層7を覆う第1誘電体層81と第2誘電体層82とよりなる誘電体層8が形成される(S12)。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0029】
次に、第2誘電体層82上に保護層9のベースとなる保護層下地膜91を形成する(S13)。保護層下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化バリウム(BaO)の群から選ばれる少なくとも2つ以上の単一金属酸化物からなる複合金属酸化物により形成される。この保護層下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化バリウム(BaO)の単独材料のペレットや、それらの材料を混合したペレットを用いて薄膜成膜方法によって形成される。薄膜成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法が適用できる。
【0030】
また、保護層下地膜91の成膜時の雰囲気としては、水分付着や不純物の吸着を防止するために外部と遮断された密閉状態で、成膜時の雰囲気を調整している。このようにして、所定の電子放出特性を有する金属酸化物よりなる保護層下地膜91を形成することができる。
【0031】
次に、保護層下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aの凝集粒子92を付着形成する(S14)。これらの結晶粒子92aは、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
【0032】
気相合成法では、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度が99.9%以上のマグネシウム金属材料を加熱し、さらに、雰囲気に酸素を少量導入することによって、マグネシウムを直接酸化させ、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを作製することができる。
【0033】
一方、前駆体焼成法では、酸化マグネシウム(MgO)の前駆体を700℃以上の高温で均一に焼成し、これを徐冷して酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得ることができる。前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、シュウ酸マグネシウム(MgC24)の内のいずれか1種以上の化合物を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるがこのような水和物を用いてもよい。これらの化合物は、焼成後に得られる酸化マグネシウム(MgO)の純度が99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整する。これらの化合物中に、各種アルカリ金属や、金属元素などの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性の酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得にくいためである。このため、不純物元素を除去するなどにより予め前駆体を調整することが必要となる。
【0034】
上記いずれかの方法で得られた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを、溶媒に分散させ、その分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法などによって保護層下地膜91の表面に分散散布させる。その後、乾燥・焼成プロセスを経て溶媒を除去し、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを保護層下地膜91の表面に定着させることができる。
【0035】
次に、背面基板作製ステップ(S2)について説明する。まず、背面ガラス基板11上にアドレス電極12を形成する。この方法としては、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などを用いる。その後、所定の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。
【0036】
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などを用い、アドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0037】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布し、所定の形状にパターニングすることにより隔壁材料層を形成する。その後、所定の温度で焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。
【0038】
そして、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面基板10が完成する。
【0039】
次に、本実施の形態における保護層9の詳細について説明する。本実施の形態におけるPDP1では、図2に示すように、保護層9は、誘電体層8に形成した保護層下地膜91と、保護層下地膜91上に付着させた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92とにより構成されている。また、保護層下地膜91を、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化バリウム(BaO)の群から選ばれる少なくとも2つ以上の単一金属酸化物からなる複合金属酸化物で形成している。また、保護層下地膜91面のX線回折分析において、その複合金属酸化物の特定方位面における回折角のピークが、単一金属酸化物の特定方位面における最小回折角と最大回折角との間に存在するように形成している。
【0040】
図5は、本実施の形態におけるPDP1の保護層下地膜91が2成分の場合についてのX線回折結果を示した図である。図5において、横軸はブラッグの回折角(2θ)であり、縦軸はX線回折光の強度である。回折角の単位は1周を360度とする度で示し、強度は任意単位(arbitrary unit)で示している。図中には特定方位面である結晶方位面を括弧付けで示している。
【0041】
図5に示すように、結晶方位面の(111)では、単一金属酸化物である、酸化カルシウム(CaO)の回折角は32.2度、酸化マグネシウム(MgO)の回折角は36.9度、酸化ストロンチウム(SrO)の回折角は30.0度、酸化バリウム(BaO)の回折角は27.9度にピークを有している。また、酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とからなる保護層下地膜91の回折角のピークはA点、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)とからなる回折角のピークをB点、さらに、酸化マグネシウム(MgO)と酸化バリウム(BaO)とからなる回折角のピークをC点で示している。
【0042】
すなわち、図5に示すように、A点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、単一金属酸化物の最大回折角となる酸化マグネシウム(MgO)の回折角36.9度と、最小回折角となる酸化カルシウム(CaO)の回折角32.2度との間である回折角36.1度にピークが存在している。同様に、B点、C点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の35.7度、35.4度にピークが存在している。
【0043】
また、図6には、図5と同様に、保護層下地膜91を構成する単一金属酸化物が3成分以上の場合のX線回折結果を示している。すなわち、図6には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)とからなる複合金属酸化物の回折角のピークをD点で示している。また、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)とからなる複合金属酸化物の回折角のピークをE点で示している。さらに、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)とからなる複合金属酸化物の回折角のピークをF点で示している。図6から分かるように、D点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、単一金属酸化物として最大回折角となる酸化マグネシウム(MgO)の回折角36.9度と、最小回折角となる酸化ストロンチウム(SrO)の回折角30.0度との間である回折角33.4度にピークが存在している。同様に、E点、F点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の32.8度、30.2度にピークが存在している。
【0044】
したがって、本実施の形態におけるPDP1の保護層下地膜91は、単体成分として2成分であれ、3成分であれ、保護層下地膜91を構成する複合金属酸化物の保護層下地膜91面のX線回折分析において、その複合金属酸化物の特定方位面における回折角のピークが、単一金属酸化物の特定方位面における最小回折角と最大回折角との間に存在する。なお、上記の説明では特定方位面としての結晶方位面として(111)を対象として説明したが、他の結晶方位面を対象とした場合も金属酸化物のピークの位置が上記と同様である。
【0045】
X線回折分析の結果が、図5および図6に示す特徴を有する金属酸化物は、そのエネルギー準位もそれらを構成する単体の酸化物の間に存在する。したがって、保護層下地膜91のエネルギー準位も単体の酸化物の間に存在し、オージェ効果により他の電子が獲得するエネルギー量が真空準位を超えて放出されるに十分な量とすることができる。その結果、保護層下地膜91では、酸化マグネシウム(MgO)単一金属酸化物と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮することができ、結果として、放電維持電圧を低減することができる。そのため、特に輝度を高めるために放電ガスとしてのキセノン(Xe)分圧を高めた場合に、放電電圧を低減し、低電圧でなおかつ高輝度のPDP1を実現することが可能となる。
【0046】
なお、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)は、単一金属酸化物では反応性が高いために不純物と反応しやすい。そのため、電子放出性能が劣化しやすいが、それらの複合金属酸化物の構成とすることにより、反応性を低減させることができる。その結果、不純物の混入や酸素欠損の少ない結晶構造が形成されて、PDP1の駆動時に電子が過剰放出されるのが抑制され、低電圧駆動と二次電子放出性能の両立効果に加えて、適度な電子保持特性の効果も発揮される。この電荷保持特性は、特に初期化期間に貯めた壁電荷を保持しておき、書込期間において書込不良を防止して確実な書込放電を行う上で有効である。
【0047】
次に、保護層下地膜91上に設けた、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92について詳細に説明する。酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92は、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する。凝集粒子92は、保護層下地膜91に比べて初期電子放出特性に優れる。そこで、放電パルス立ち上がり時に必要な初期電子供給部として凝集粒子92を配設している。
【0048】
「放電遅れ」は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が保護層下地膜91表面から放電空間16中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間16に対する初期電子の安定供給に寄与するため、酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92を保護層下地膜91の表面に分散配置している。これによって、放電パルスの立ち上がり時に放電空間16中に電子が豊富に存在し、放電遅れの解消が図られる。
【0049】
したがって、このような初期電子放出特性により、PDP1が高精細の場合などにおいても放電応答性の良い高速駆動を実現することができる。なお保護層下地膜91の表面に金属酸化物の凝集粒子92を配設する構成では、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られる。
【0050】
以上のように、本実施の形態におけるPDP1では、低電圧駆動と電荷保持の両立効果を奏する保護層下地膜91と、放電遅れの防止効果を奏する酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92とにより構成している。その結果、高精細なPDP1でも高速駆動を低電 圧で駆動でき、且つ、点灯不良を抑制した高品位な画像表示性能を実現できる。
【0051】
なお、凝集粒子92は、保護層下地膜91上に離散的に散布させ、全面に亘ってほぼ均一に分布するように複数個付着させることにより構成している。
【0052】
図7は、保護層下地膜91上に形成した酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92の拡大図である。凝集粒子92とは、図7に示すように、所定の一次粒径の結晶粒子92aが凝集またはネッキングした状態のものである。すなわち、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなし、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
【0053】
図8は、本実施の形態におけるPDP1の放電遅れと保護層下地膜91中のカルシウム(Ca)濃度との関係を示す図である。なお、この場合、保護層下地膜91として酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とからなる複合金属酸化物で構成している。また、保護層下地膜91面におけるX線回折分析において、複合金属酸化物の回折角のピークが、酸化マグネシウム(MgO)の回折角と酸化カルシウム(CaO)の回折角との間に存在するように形成している。なお、図8には、保護層9として保護層下地膜91のみの場合と、保護層下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とについて示し、放電遅れは、保護層下地膜91中にカルシウム(Ca)が含有されていない場合を基準として示している。
【0054】
図8より明らかなように、保護層下地膜91のみの場合と、保護層下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とにおいて、保護層下地膜91のみの場合はカルシウム(Ca)濃度の増加とともに放電遅れが大きくなる。一方、保護層下地膜91上に凝集粒子92を配置することによって放電遅れを大幅に小さくすることができ、カルシウム(Ca)濃度が増加しても放電遅れはほとんど増大しない。
【0055】
このように、保護層9を、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、および酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも2つ以上の金属酸化物により形成することで、放電開始電圧を低下させ、放電遅れを小さくして放電を安定させることができる。
【0056】
しかしながら、これらの金属酸化物材料は、水や二酸化炭素などの不純物ガスと反応しやすく、保護層9の特性を劣化させて放電セル毎の放電特性にばらつきを発生しやすくする。そこで、本実施の形態におけるPDP1の製造方法では、封着ステップ(S4)の条件に着目して、保護層9と水、二酸化炭素などの不純物ガスと保護層9との反応を抑制することを図ったものである。
【0057】
図9は、保護層9を加熱した場合の、加熱温度に対する保護層9表面からの水と二酸化炭素の脱離強度を示したものである。図9から、保護層9を350℃から500℃の温度領域で加熱すると、水と二酸化炭素の脱離強度が大きいことがわかる。したがって、この領域で加熱することによって、不純物ガスの脱離を促進させることができる。ただし、封着ステップ(S4)で保護層9を昇温させる場合には、封着温度である490℃を上限としている。
【0058】
一方、このような温度領域での不純物ガスの脱離が、350℃から500℃まで保護層9を昇温させる場合の昇温速度に依存する。図10は、保護層9を350℃から490℃までに加熱して昇温させる場合の、昇温速度と脱離ガス量との関係を示す図であり、昇温速度が3℃/minの場合を基準として示している。図10から、昇温速度が0.2℃/min以上2℃/min以下の領域で、脱離ガスの量が多いことが分かる。
【0059】
図9、図10の結果より、本実施の形態では、封着ステップ(S4)において、前面基板2と背面基板10とを350℃から490℃まで昇温させる際に、その昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下となるように制御しながら昇温させている。その結果、保護層9と水や二酸化炭素などの不純物ガスとの反応を最も効果的に抑制することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態では、このような昇温の際に、前面基板2と背面基板10とにより形成される放電空間16が陽圧となるように乾燥ガスを流すことが望ましい。このようにすることによって、保護層9と水や二酸化炭素などの不純物ガスとの反応を最も効果的に抑制するとともに、保護層9に再付着した不純物ガスを効果的に除去することが可能となる。
【0061】
図11は、本実施の形態における封着ステップ(S4)、排気ステップ(S5)、放電ガス供給ステップ(S6)の温度プロファイルの一例を示す図である。図11において、封着ステップ(S4)、排気ステップ(S5)、放電ガス供給ステップ(S6)を、期間1から期間6の6つに分割し、それぞれの期間について以下に説明する。
【0062】
期間1(封着ステップ)は、室温から水の脱離が始まる温度(350℃)まで上昇させる期間である。期間2(封着ステップ)は、水の脱離開始温度から軟化点(450℃)までの期間である。期間3(封着ステップ)は、軟化点(450℃)から封着温度(490℃)までの期間である。期間4(封着ステップ)は、封着温度(490℃)以上の温度で一定時間保持した後、軟化点まで低下させる期間である。期間5(排気ステップ)は、放電空間16内を排気しながら、軟化点(450℃)付近またはそれよりやや低い温度で一定時間保持した後、室温まで低下させる期間である。期間6(放電ガス供給ステップ)は、室温まで低下させた後、放電空間16内に放電ガスを供給する期間である。
【0063】
ここで、軟化点とは、封着部材のガラスフリットが軟化する温度を指し、封着温度とは、前面基板2と背面基板10とが封着部材であるガラスフリットにより密閉される状態となる温度である。本実施の形態では、期間2から期間3までの間を加熱ステップとし、その間の昇温を0.2℃/min以上2℃/min以下の昇温速度としていることを特徴としている。
【0064】
図12は、本実施の形態における封着ステップ(S4)、排気ステップ(S5)、放電ガス供給ステップ(S6)のプロセスと装置構成とを示す図である。図11の(a)〜(e)の順番にステップが進む。また、(a)〜(e)のステップは、それぞれ上述の期間1〜期間6に対応している。
【0065】
図12に示すように、周辺部にガラスフリット21が塗布された背面基板10と、前面基板2が対向配置され、ヒータが備えられた加熱炉(図示せず)内に設置されている。背面基板10には放電空間16に開口する貫通孔22a、22bが設けられている。貫通孔22a、22bにはガラス管31、32が接続されている。ガラス管31にはバルブ23を介して乾燥ガス供給装置41が接続されている。また、バルブ24を介して排気装置42が接続され、バルブ25を介して放電ガス供給装置43が接続されている。
【0066】
一方、ガラス管32には、バルブ26を介して乾燥ガス供給装置44が、バルブ27を介して排気装置45が、バルブ28を介して放電ガス供給装置46がそれぞれ接続されている。またガラス管31、32にはガス逃がし弁29、30が接続されている。以下、図12を参照しながら、各期間の順に製造プロセスを説明する。
【0067】
(期間1:封着ステップ)
この期間1では、図12の(a)に示すように操作される。前面基板2と背面基板10とを位置決めして重ね合わせた後、バルブ23とバルブ26とを開いて、乾燥ガス供給装置41、44から乾燥ガスを貫通孔22aおよび貫通孔22bを放電空間16内に流入させる。そのとき、ヒータをオンにして加熱炉内部の温度を室温から水の離脱が始まる温度(350℃)まで上昇させる。この期間ではすばやく温度を上昇させてもよい。このとき、放電空間16に流入させられた乾燥ガスは、矢印Aで示すように、前面基板2と背面基板10上に形成されたガラスフリット21との隙間から外部へ漏れ出る。なお、本実施の形態においては、乾燥ガスとして、露点が−45℃以下の乾燥窒素ガスを用いている。
【0068】
(期間2:封着ステップ)
この期間が加熱ステップである。ここでは、乾燥ガスを流入させながら加熱炉内部の温度を水の離脱が始まる温度(350℃)からガラスフリット21の軟化点温度(450℃)まで上昇させる。ここで重要なのは、乾燥ガスを流しながら、この期間の昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下の低い速度で昇温させることである。これにより、保護層9と水と、二酸化炭素との反応を効果的に抑制することができる。
【0069】
(期間3:封着ステップ)
この期間2では図12の(b)に示すように操作される。加熱炉内部の温度がガラスフリット21の軟化点温度(450℃)以上になった状態でバルブ26を閉じ、バルブ23の開度を調節して乾燥ガスの流量を期間1の半分以下に調整する。そして、ガス逃がし弁29を開いて、放電空間16内部の圧力が加熱炉内部の圧力よりも僅かに陽圧となるようにする。そして加熱炉内部の温度を封着温度(490℃)まで上昇させる。この期間も昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下の低い速度で昇温させる。
【0070】
(期間4:封着ステップ)
この期間3では図12の(c)に示すように操作される。すなわち、加熱炉内部の温度が封着温度以上の温度に到達してガラスフリット21が溶融し、前面基板2と背面基板10との封着が行われる。この期間では、排気装置45を動作させるとともに、バルブ27を調整して排気し、放電空間16内部の圧力を僅かに陰圧に保ちながら貫通孔22aから貫通孔22bに向かって乾燥窒素ガスを流す。この間、ヒータを制御して加熱炉内部の温度を封着温度以上の温度に約30分保持する。なお、貫通孔22aから貫通孔22bに向かって乾燥窒素ガスを流す時間はPDP1のサイズなどの仕様に応じて設定すればよい。
【0071】
次に、同じ期間4において、図12の(d)に示すように操作する。すなわち、バルブ23、27およびガス逃がし弁29を閉じ、排気装置42を動作させるとともに、乾燥ガス供給装置44のバルブ26を開く。さらに、ガス逃がし弁30を開くとともに、バルブ24を調節して、放電空間16内部の圧力を僅かに陰圧に保ちつつ、今度は貫通孔22bから貫通孔22aに向かって乾燥窒素ガスを流す。このようにして、乾燥窒素ガスの流れる方向を(c)と反対方向にする。
【0072】
この期間4では、溶融したガラスフリット21が僅かに流動するとともに、放電空間16内部の圧力が僅かに陰圧に保たれていることから、前面基板2と背面基板10との封着が行われる。その後、ヒータをオフにして加熱炉の温度を軟化点以下の温度まで下げる。
【0073】
(期間5:排気ステップ)
この期間5では、図12の(e)に示すように操作される。加熱炉内部の温度が軟化点温度以下になった状態でバルブ26、ガス逃がし弁30を閉じ、排気装置42、45を作動させる。バルブ24およびバルブ27を開いて、貫通孔22a、22bからガラス管31、32を介して放電空間16内を排気する。そしてヒータを制御して加熱炉内部の温度を所定の時間保持しながら、排気を継続して行う。その後、ヒータをオフにして加熱炉内部の温度を室温まで低下させる。この間も排気を継続して行う。
【0074】
(期間6:放電ガス供給ステップ)
この期間6では図12の(f)に示すように操作される。加熱炉内部の温度が室温まで低下した後に、バルブ24、27を閉じて排気装置42、45を停止する。その後、バルブ25およびバルブ28を開いて、放電ガス供給装置43、46から貫通孔22a、22bを介して放電ガスを所定の圧力となるように供給する。本実施の形態においては、放電ガスは、例えば、キセノン(Xe):10%、ネオン(Ne):90%の混合ガスであり、封入圧力は6×104Paである。しかし、放電ガスはこれに限定されるものではなく、例えば、キセノン(Xe):100%のガスであってもよい。
【0075】
所定圧力に放電ガスが封入された後、ガラス管31、32を加熱封止することで、保護層9と不純物ガスとの反応を抑制しつつ、前面基板2と背面基板10とを貼り合わせ、その間に放電ガスを充填したPDP1が完成する。
【0076】
以上のように、本実施の形態におけるPDPの製造方法によれば、封着ステップにおいて、不純物ガスが離脱しやすい温度領域での加熱ステップにおいて昇温速度を制御することで、製造プロセスにおける保護層と不純物ガスとの反応を抑制することができる。その結果、保護層における電子放出特性を向上させ、高精細で高画質な画像表示性能を有するPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によるPDPの製造方法は、高精細で高画質な画像表示性能を備えるPDPを実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0078】
1 PDP
2 前面基板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極対
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面基板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
81 第1誘電体層
82 第2誘電体層
91 保護層下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子
21 ガラスフリット
22a,22b 貫通孔
23,24,25,26,27,28 バルブ
29,30 ガス逃がし弁
31,32 ガラス管
41,44 乾燥ガス供給装置
42,45 排気装置
43,46 放電ガス供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の表示電極対とこれを覆う誘電体層と保護層とを前面ガラス基板に形成する前面基板作製ステップと、前記表示電極対と交差する互いに平行な複数のデータ電極とこれを覆う下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とを背面ガラス基板に形成する背面基板作製ステップと、間に放電空間を形成するように前記隔壁を挟んで前記前面基板と前記背面基板とを対向配置して周囲を封着する封着ステップと、前記放電空間を排気する排気ステップと、前記放電空間に放電ガスを封入する放電ガス供給ステップと、を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記保護層を、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、および酸化バリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の単一金属酸化物からなる複合金属酸化物で形成するとともに、X線回折分析において、前記複合金属酸化物の特定方位面における回折角のピークが、前記単一金属酸化物の特定方位面における最小回折角と最大回折角との間に存在するように形成し、かつ、前記封着ステップが、前記前面基板と前記背面基板とを少なくとも490℃まで加熱する加熱ステップを含むとともに、前記加熱ステップにおいて350℃から490℃まで昇温させる際の昇温速度を0.2℃/min以上2℃/min以下としたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記加熱ステップにおいて、前記前面基板と前記背面基板とにより構成される前記放電空間が陽圧となるように前記放電空間に乾燥ガスを流しながら加熱を行うことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−258403(P2011−258403A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131706(P2010−131706)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】