説明

プラズマディスプレイパネル及びその製造方法

【課題】基板の端部にテーパー部を形成することで、一種類の粒径を持つ球状スペーサを含有した封着材だけを用いて、前面側の基板と背面側の基板を封着できるようにし、複数種類の隔壁寸法を有する多品種パネルの生産時におけるコストの抑制を図る。
【解決手段】前面側の基板と背面側の基板とが間隙寸法規定部材を介して対向配置され、基板周辺が封着材で封着されて、基板間に所定の間隙を有する放電空間を形成したプラズマディスプレイパネルにおいて、前面側の基板と背面側の基板の封着材の配置位置に、基板端部に向けて基板の厚みが徐々に薄くなるようなテーパー部を設け、封着材に、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法よりも大きくかつその間隙寸法に前面側または背面側の基板の厚みを加えた寸法よりも小さい直径の球状スペーサを含有させたガラス材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以後「PDP」という)及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、前面側の基板と背面側の基板とを対向配置し、基板周辺を封着材で封着して、基板間に放電空間を形成したPDPの封止構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは、共に表示画面よりも大きい前面側の基板と背面側の基板を対向配置した構成をとっている。前面側の基板と背面側の基板は、表示領域の外側に位置する枠状の封着材によって接合され、基板間に密閉された放電空間が形成された扁平な器を構成する。前面側の基板および背面側の基板の主材料はガラスであり、封着材は低融点ガラスの焼成体である。
【0003】
このような構成を持つPDPのうち、カラー表示に用いられる面放電型のPDPは、隣接するセル間の放電干渉を防止する隔壁を有する。隔壁は、放電空間を区画するとともに、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法を規定するスペーサーとしての機能を持っている。隔壁の配置パターンには、放電空間をマトリクス表示の列(コラム)ごとに区画するストライプパターンと、列および行(ロー)ごとに区画するメッシュパターンとがある。
【0004】
隔壁を有したPDPにおいては、前面側の基板と背面側の基板とを封着材で接合したとき、または接合した後に、前面側の基板および背面側の基板の一方または両方の端部が内側方向に微視的に湾曲することがある。これは、封着材を溶融・固化させる焼成工程や、放電ガスの封入に先立ってパネル内部を清浄化する真空排気工程において、ガラス基板の昇温と内部の減圧の作用でガラス基板対が封着材を押し縮めるように撓むためである。この問題は封着材に高温粘性の低い材料を用いたパネルで多く発生する。
【0005】
そこで、封着材にスペーサとしてガラスビーズを含有させて、基板端部の湾曲を抑制できることが知られている(例えば特許文献1参照)。また、封着材にガラスビーズを含有させる場合のガラスビーズの割合などについても各種のものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−236896号公報
【特許文献2】特開2006−49265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PDPでは、ガラス基板に湾曲があると、前面側基板の内面と背面側基板上の隔壁との間に隙間が生じ、その隙間によってパネル製造後の表示放電の際に、隣接するセル間で放電干渉が発生したり、高周波駆動に伴う前面側及び背面側の基板どうしの接触による振動音が発生する等の不具合が生ずる。したがって、所望の特性を得るためには、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法を一定の範囲内に収めて、基板が湾曲しないようにする必要がある。このため、隔壁の高さに対して適切な粒径を持つビーズスペーサを封着材に含有させ、接合(封着)領域における前面側の基板と背面側の基板の間隙寸法を所望の値に保っている。
【0008】
しかしながら、PDPでは、パネルのサイズによって前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法、つまり隔壁の高さが異なることがある。このように複数の隔壁寸法のパネルが存在する場合、製造しようとする隔壁寸法のパネルごとに、隔壁寸法に対応した粒径を持つビーズスペーサを含有した封着材を用意する必要がある。しかし、複数種類の封着材を用意することは、コストの増加につながる。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、基板の端部にテーパー部を形成することで、一種類の粒径を持つビーズスペーサを含有した封着材だけを用いて、前面側の基板と背面側の基板を接合(封着)できるようにし、複数種類の隔壁寸法を有する多品種パネルの生産時におけるコストの抑制を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前面側の基板と背面側の基板とが間隙寸法規定部材を介して対向配置され、基板周辺が封着材で封着されて、基板間に所定の間隙を有する放電空間が形成されたプラズマディスプレイパネルであって、前面側の基板と背面側の基板が、封着材の配置位置に、基板端部に向けて基板の厚みが徐々に薄くなるようなテーパー(勾配)部を有し、封着材が、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法よりも大きくかつその間隙寸法に前面側または背面側の基板の厚みを加えた寸法よりも小さい直径の球状スペーサを含有したガラス材からなるプラズマディスプレイパネルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種類の隔壁寸法を有する様々なサイズのパネルに対し、それぞれの隔壁寸法に対応した粒径を持つビーズスペーサを含有した封着材を用意する必要がなく、単一の封着材で対応可能である。このため、複数種類の隔壁寸法を有する多品種パネルの生産時におけるコストを抑制することができる。
【0012】
また、基板の端部にテーパー(勾配)部を形成することによって、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法がパネル端部に向かって広くなっているため、封着時に封着材がパネル内部に流れ込むことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、前面側の基板と背面側の基板としては、ガラス、石英、セラミックス等の基板や、これらの基板上に、電極、絶縁膜、誘電体層、保護膜等の所望の構成要素を形成した基板が含まれる。
【0014】
封着材は、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、及び溶媒からなる低融点ガラスペーストを塗布し、乾燥して仮焼成することにより形成したものを適用することができる。低融点ガラスフリットは、鉛を実質的に含まないビスマス、バナジュウム及びそれらの化合物からなるグループから選択された高温粘性が高いガラス材で形成されていることが望ましい。
【0015】
封着材に含有されるビーズスペーサは、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法(間隙寸法規定部材)よりも大きくかつその間隙寸法にいずれか一方の基板の厚みを加えた寸法よりも小さい球径の球状スペーサであれば、どのようものであってもよいが、前面側の基板と背面側の基板を封着材で封着する際には、400〜500℃程度まで昇温されるため、500℃以上の耐熱性を有するガラス、セラミックス等の材料で形成することが望ましい。封着材中のビーズスペーサの含有率は0.05〜2wt%程度であることが望ましい。
【0016】
テーパー部は、機械的な研磨、あるいはエッチング等により形成することができるが、機械的な研磨により一定の勾配で形成することが望ましい。
【0017】
前面側の基板及び背面側の基板は、矩形の基板からなるとともに、その矩形の基板の少なくとも一辺に電極引き出し部を有し、テーパー部が、電極引き出し部のない辺に形成されている基板であることが望ましい。
【0018】
この場合、封着材は、前面側の基板のテーパー部と背面側の基板のテーパー部とが重なる位置では、基板の中央寄りにシフトされて塗布されていることが望ましい。
【0019】
本発明は、また、上記プラズマディスプレイパネルを製造するための製造方法であって、表示パネルとしての構成要素がそれぞれ形成された前面側の基板及び背面側の基板を作製した後、前面側の基板と背面側の基板の封着材の配置位置に、基板端部に向けて基板の厚みが徐々に薄くなるようなテーパー部を形成し、前面側または背面側の基板の周辺に、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法よりも大きくかつその間隙寸法にいずれか一方の基板の厚みを加えた寸法よりも小さい直径の球状スペーサを含有したガラスの封着材を設け、前面側の基板と背面側の基板とを間隙寸法規定部材を介して対向配置して、前面側または背面側の基板に設けた通気孔を介して両基板の間隙空間の排気を行いながら封着材を加熱して軟化させ、封着材に含有された球状スペーサの前記排気による移動が前記テーパー部で阻止されるようにして、前面側の基板と背面側の基板とを封着することからなるプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0020】
以下、図面に示す実施形態に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0021】
図1(a)および図1(b)は本発明のPDPの一実施形態の構成を示す説明図である。図1(a)はPDPの全体を示す斜視図であり、図1(b)はPDPの部分分解斜視図である。このPDPはカラー表示用のAC3電極面放電型のPDPである。
【0022】
PDP1は、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とで構成されている。前面側の基板構造体10は、前面側の基板11にPDPとして機能するための構成要素が付加されたものである。背面側の基板構造体20は、背面側の基板21にPDPとして機能するための構成要素が付加されたものである。前面側の基板11と背面側の基板21としては、透光性のガラス基板を用いているが、ガラス基板以外に、石英基板、セラミックス基板等も使用することができる。
【0023】
前面側の基板11の内側面には、繰り返し放電(維持放電)を行う維持電極Xおよび走査電極Yが平行かつ交互に配置されている。維持電極Xと走査電極Yの間が全て表示ラインLとなる。維持電極X及び走査電極Yは、ITO、SnO2などの幅の広い透明電極12と、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等からなる金属製の幅の狭いバス電極13から構成されている。
【0024】
維持電極X及び走査電極Yの上には、維持電極X及び走査電極Yを覆うように低融点ガラス等からなる誘電体層17が被着されている。誘電体層17の上にはMgO(酸化マグネシウム)からなる保護膜18が形成されている。すなわち、前面側の基板11に配置された維持電極X及び走査電極Yは誘電体層17で覆われており、さらにその表面を保護膜18が覆っている。以上の構造物を前面側の基板構造体10としている。
【0025】
なお、本PDPでは、維持電極Xと走査電極Yが交互に等間隔で配置され、隣接する維持電極Xと走査電極Yとの間が全て表示ラインLとなる、いわゆるALIS構造のPDPとなっているが、対となる維持電極X及び走査電極Yが放電の発生しない間隔(非放電ギャップ)を隔てて配置された構造のPDPであっても、本発明を適用することができる。
【0026】
背面側の基板21の内側面には、平面的にみて維持電極X及び走査電極Yと交差する方向に複数のアドレス電極Aが形成され、そのアドレス電極Aの上には、アドレス電極Aを覆うように誘電体層24が被着されている。アドレス電極Aは、走査電極Yとの交差部で発光セルを選択するためのアドレス放電を発生させるものであり、Cr/Cu/Crの3層構造で形成されている。このアドレス電極Aは、その他に、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr等で形成することもできる。
【0027】
隣接するアドレス電極Aとアドレス電極Aとの間の誘電体層24上には、放電空間の高さ寸法(基板間の間隙)を規定するとともに、放電空間を維持電極X及び走査電極Yの延伸方向にセルごとに区画する直線状の隔壁29が配置されている。隔壁29は、たとえばボックスリブやワッフルリブ、メッシュ状リブ、ラダー状リブなどと呼ばれるような、列方向の隔壁と行方向の隔壁からなる閉鎖形の隔壁であってもよい。隔壁29は、サンドブラスト法、フォトエッチング法等により形成することができる。例えば、サンドブラスト法では、ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを誘電体層上に塗布して乾燥させた後、そのガラスペースト層上にリブ(隔壁)パターンの開口を有する切削マスクを設けた状態で切削粒子を吹きつけて、マスクの開口に露出したガラスペースト層を切削し、さらに焼成することにより形成する。また、フォトエッチング法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光及び現像の後、焼成することにより形成する。
【0028】
各隔壁29で区分けされた領域(溝)の側面及び底面には、紫外線により励起されて赤(R)、緑(G)、青(B)の可視光をそれぞれ発生する蛍光体層28R,28G,28Bが順番に繰り返し形成されている。以上の構造物を背面側の基板構造体20としている。
【0029】
PDP1の製造においては、上記した前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを、平面的に見て維持電極X及び走査電極Yと、アドレス電極Aとが交差するように対向配置する。そして、前面側の保護膜18と背面側の隔壁29の頂部とが接するように重ね合わせ、基板周辺を低融点ガラスからなる封着材により封着し、隔壁29で囲まれた放電空間40を真空排気した後、その放電空間40にNe(ネオン)とXe(キセノン)とを含む放電ガスを所定の圧力で封入することでPDP1が作製される。このPDPでは、維持電極Xと走査電極Yとの間の表示ラインLとアドレス電極Aとの交差部の放電空間40が、表示の最小単位である1つのセル(単位発光領域)となる。1画素はR、G、Bの3つのセルで構成される。
【0030】
上述したPDPの構成は一例であって、図に示した維持電極Xや走査電極Yの構造、隔壁29の構造等は、本願の封着構造に関与しない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図2はPDPを平面的に見た状態を示す説明図である。PDP1は、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とで構成され、縦横に並ぶ放電セルからなる表示画面60を有する。前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20は、ともに表示画面60よりも大きい厚さ2mm程度のガラス基板に電極とその他の構成要素とを形成した構造体である。
【0032】
前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20は、重ね合わせるように対向配置され、互いに重なり合った領域の周辺部において平面視枠状の封着材30によって接合されている。前面側の基板構造体10は背面側の基板構造体20に対して図の左右に5mm程度張り出し、背面側の基板構造体20は前面側の基板構造体10に対して図の上下に5mm程度張り出している。このように張り出した前面側の基板構造体10および背面側の基板構造体20のそれぞれの端部には、電極と駆動ユニットとの導電接続のためのフレキシブル配線板(図示しない)が接合される。例えば、表示画面60のサイズが対角42インチであった場合、PDP1は980mm×580mmの大きさを持つ。なお、PDP1の上下、左右の張り出しは、駆動ユニットとの導電接続のためのものであり、必ずしも4辺に必要なものではない。
【0033】
図3は図2のIII-III断面を示す説明図である。前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とが封着材30で封着されることで形成された放電空間40には、放電ガスが充填されている。放電空間40には前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20との間隙寸法を規定する構造物(隔壁)がある。このときの間隙寸法と封着材30の寸法は、ほぼ同等の厚さを有する。
【0034】
図4(a)〜図4(e)及び図5(a)〜図5(b)はPDPの製造工程を示す説明図である。前面側の基板構造体10を作製し(図4(a)参照)、作製作業のほぼ最後に、前面側の基板構造体10の外周の4辺の内、維持電極X及び走査電極Yの延伸方向と平行な2辺の内側面の面取りを行い、テーパー部50を形成する(図4(b)参照)。前面側の基板は、長辺と短辺からなる長方形であるが、テーパー部50を形成する辺は長辺側である。テーパー部50にはテーパーの寸法規定を設ける。
【0035】
また、これと並行して、背面側の基板構造体20を作製し(図4(c)参照)、作製作業のほぼ最後に、背面側の基板構造体20の外周の4辺の内、アドレス電極Aの延伸方向と平行な2辺の内側面の面取りを行い、テーパー部50を形成する(図4(d)参照)。背面側の基板は、長辺と短辺からなる長方形であるが、テーパー部50を形成する辺は短辺側である。テーパー部50にはテーパーの寸法規定を設ける。テーパー部50は、機械的な研磨により一定の勾配で形成する。
【0036】
次に、背面側の基板構造体20の外周の4辺に、封着材30を配置する(図4(e)参照)。この封着材30としては、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなる低融点ガラスペーストに、作製するパネルの大きさに応じて、直径120〜170μm程度の球状のビーズスペーサを、0.05〜2wt%の含有率で含有させたものを用いる。この低融点ガラスペーストを背面側の基板構造体20の外周の4辺に塗布し、これを乾燥させて仮焼成し、これにより封着材30を配置する。封着材30の主なガラス材料としては、鉛を実質的に含まないビスマスやバナジウムなどを用いる。封着材30に含有されるビーズスペーサは、前面側の基板構造体と背面側の基板構造体を封着する際に、400〜500℃程度まで昇温されるため、500℃以上の耐熱性を有するガラス、セラミックス等の材料で形成する。
【0037】
封着材30の配置位置、つまり低融点ガラスペーストを塗布する位置は、背面側の基板構造体20の外周であるが、テーパー部50が形成された2辺については、そのテーパー部50上であり、テーパー部が形成されていない2辺については、両基板を対向させた時の、前面側の基板構造体10のテーパー部50に対応する位置である。
【0038】
次に、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを対向させて重ね合わせ(図5(a)参照)、周辺の数箇所をクリップで挟んだ仮固定状態で焼成炉に搬入する。次に予め背面側の基板構造体20に設けられている通気孔およびそれに連通するように取り付けられたチップ管を介して、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20との対向空間(封着材で囲まれた放電空間)の真空排気を行い、放電空間を減圧した状態で、封着材30の焼成を行う。焼成温度は封着材30に含まれる低融点ガラスフリットの軟化点(約400〜500℃程度)付近の温度である。これにより、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを封着する(図5(b)参照)。
【0039】
図6は背面側の基板構造体のテーパー部における封着部分の断面を示す説明図である。この図においては構造を判り易くするために、基板間の要素の厚みが拡大され、形状は模式的なものになっている。
【0040】
本実施形態においては、放電空間を介在させて対向する前面側の基板構造体と背面側の基板構造体の接合にビーズスペーサを含有する封着材を用いると共に、封着材を塗布する前面側の基板構造体および背面側の基板構造体の各端部にテーパー部を設け、封着材の塗布位置の調節を行うことによって、前面側の基板構造体と背面側の基板構造体の接合領域の全周にわたってPDPの厚みを一定の範囲内でコントロールする。
【0041】
また、封着材の塗布位置をテーパー部上とし、この塗布位置を前面側の基板構造体および背面側の基板構造体のテーパー開始位置よりも基板端部側に設定する。
【0042】
以下、本実施形態の構成を詳細に説明する。前面側の基板構造体10は、前面側の基板11に、透明電極12とバス電極13、誘電体層17、および保護膜18が形成されたものである。透明電極12とバス電極13は封着材30の外側に導出されている。
【0043】
背面側の基板構造体20は、背面側の基板21に、アドレス電極A、誘電体層24、隔壁29、および蛍光体層28R、28G、28Bが形成されたものである。この図に示した隔壁29の配置はストライプパターンまたはメッシュパターンである。
【0044】
隔壁29は隣接するセル間の放電干渉を防ぐとともに、スペーサとしても機能する。すなわち表示画面における放電空間40の厚さ(前後方向の寸法)は隔壁29によって規定され、実質的に隔壁29の高さHに等しい。高さHはセルサイズに応じて最適化され、一般に100μm〜150μmの範囲内の値に選定される。
【0045】
封着材30は、低融点ガラスペーストの焼成体であり、PDPにおける沈み込みの防止および周辺部の厚み均等化に十分な量のビーズスペーサ31を含んでいる。封着材30は4mm〜8mm程度の幅Wを持つ。封着材30の内端と隔壁29との距離は10mm〜15mm程度である。
【0046】
テーパー部50は、背面側の基板構造体20のアドレス電極Aの延伸方向と平行な辺の内側面、つまり短辺側の端部の内側面に形成されている。背面側の基板構造体20の長辺側の端部には、アドレス電極Aの電極引出し線が形成されているため、テーパー部は設けない。
【0047】
テーパー部50の勾配寸法は、例えば1/100の勾配(10ミリ進むと100ミクロン下がる)とし、封着材30の配置位置、つまり封着材としての低融点ガラスペーストを塗布する位置は、テーパー部50のテーパー開始位置より外側に設定する。封着材30の位置を調節し、テーパー部50の勾配に対するビーズスペーサ31の位置を調節することで、ビーズスペーサ31と隔壁29の高さ関係をコントロールする。
【0048】
一例を挙げると、ビーズスペーサ31の直径Dが150μmで、隔壁29の高さHが100μmの場合には、テーパー部50の開始点から5mm以上背面側の基板21の端部側に封着材30を位置させる。これにより、隔壁の高さHよりも径Dが大きいビーズスペーサを含有した封着材を用いることができる。
【0049】
前述したように、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを封着する際には、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを重ね合わせ、仮固定状態で焼成炉に搬入し、放電空間の真空排気を行い、放電空間を減圧した状態で封着材の焼成を行う。
【0050】
この封着材の焼成工程においては、内部の減圧によって、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とが引き寄せられる。表示画面の領域では、前面側の基板構造体10の保護膜と背面側の基板構造体20の隔壁上面とが密着し、封着材が配置された接合領域では、封着材30の軟化につれて、前面側の基板11と背面側の基板21との距離が短くなる。封着材30の幅Wは、例えば、2〜4mmであったものが基板と平行な方向に押し広げられて、4〜8mm程度になる。このとき、封着材30に含まれるビーズスペーサ31により、前面側の基板11と背面側の基板21との間隙寸法が一定の範囲から外れることが抑制される。前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とを密着させている封着材30は、テーパー部50を越えて放電空間側には入り込まない。また封着材30は量的にもテーパー部50の存在により、それを持たない従来の封着構造に比べて増加させることができるので、両基板の接合力をより強化できる。
【0051】
図7は背面側の基板構造体のテーパー部の位置を封着材で封着した状態を示す説明図である。この図に示すように、PDP1における前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とが接合された後の封着材30の形状は、外側に膨らんだ形状をしている。
【0052】
図8は前面側の基板構造体のテーパー部における封着部分の断面を示す説明図である。図6と同様に、構造を判り易くするために、基板間の要素の厚みが拡大され、形状は模式的なものになっている。
【0053】
テーパー部50は、前面側の基板構造体10の維持電極X及び走査電極Yの延伸方向と平行な辺の端部の内側面、つまり長辺側の端部の内側面に形成されている。前面側の基板構造体10の短辺側の端部には、維持電極X及び走査電極Yの電極引出し線が形成されているため、テーパー部は設けない。
【0054】
テーパー部50の勾配寸法は、背面側の基板と同様に、例えば1/100の勾配とし、封着材30の配置位置、つまり封着材としての低融点ガラスペーストを塗布する位置は、テーパー部50のテーパー開始位置より外側に設定する。封着材30の位置を調節し、テーパー部50の勾配に対するビーズスペーサ31の位置を調節することで、ビーズスペーサ31と隔壁29の高さ関係をコントロールする。
【0055】
図9は前面側の基板構造体のテーパー部の位置を封着材で封着した状態を示す説明図である。この図に示すように、PDP1における前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20とが接合された後の封着材30の形状は、外側に膨らんだ形状をしている。
【0056】
図10(a)及び図10(b)はパネルのコーナー部における封着材の配置状態を示す説明図である。図10(a)は前面側の基板構造体と背面側の基板構造体にテーパー部を設けた場合の例であり、図10(b)はテーパー部を設けていない場合の比較例である。
【0057】
上述の実施形態においては、前面側の基板構造体10の短辺側の端部には維持電極と走査電極の引出し線があるためテーパー部を設けず、長辺側の端部だけにテーパー部を設けている。また、背面側の基板構造体20の長辺側の端部にはアドレス電極の引出し線があるためテーパー部を設けず、短辺側の端部だけにテーパー部を設けている。
【0058】
この状態で、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20を接合すると、パネルのコーナー部では、テーパー部が重なることになる。この場合には、封着材としての低融点ガラスペーストの塗布位置を基板の中央寄りにシフトすることで(図10(a)参照)、前面側の基板構造体10と背面側の基板構造体20との間隙寸法をコントロールする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、基板対の対向間隙を規定する構造物を有し、構造物から離れた外側の位置で基板対を接合する構造の表示デバイスに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のPDPの一実施形態の構成を示す説明図である。
【図2】本発明のPDPを平面的に見た状態を示す説明図である。
【図3】図2のIII-III断面を示す説明図である。
【図4】本発明のPDPの製造工程を示す説明図である。
【図5】本発明のPDPの製造工程を示す説明図である。
【図6】本発明の背面側の基板構造体のテーパー部における封着部分の断面を示す説明図である。
【図7】本発明の背面側の基板構造体のテーパー部の位置を封着材で封着した状態を示す説明図である。
【図8】本発明の前面側の基板構造体のテーパー部における封着部分の断面を示す説明図である。
【図9】本発明の前面側の基板構造体のテーパー部の位置を封着材で封着した状態を示す説明図である。
【図10】パネルのコーナー部における封着材の配置状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 PDP
10 前面側の基板構造体
11 前面側の基板
12 透明電極
13 バス電極
17,24 誘電体層
18 保護膜
20 背面側の基板構造体
21 背面側の基板
28R,28G,28B 蛍光体層
29 隔壁
30 封着材
31 ビーズスペーサ
40 放電空間
50 テーパー部
51 平坦部
60 表示画面
A アドレス電極
X 維持電極
Y 走査電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側の基板と背面側の基板とが間隙寸法規定部材を介して対向配置され、基板周辺が封着材で封着されて、基板間に所定の間隙を有する放電空間が形成されたプラズマディスプレイパネルであって、
前面側の基板と背面側の基板が、封着材の配置位置に、基板端部に向けて基板の厚みが徐々に薄くなるようなテーパー部を有し、
封着材が、前面側の基板と背面側の基板との間隙寸法よりも大きくかつその間隙寸法に前面側または背面側の基板の厚みを加えた寸法よりも小さい直径の球状スペーサを含有したガラス材からなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前面側の基板及び背面側の基板が、矩形の基板からなるとともに、その矩形の基板の少なくとも一辺に電極引き出し部を有し、前記テーパー部が、前記電極引き出し部のない辺に形成されてなる請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記封着材が、前面側の基板のテーパー部と背面側の基板のテーパー部とが重なる位置では、基板の中央寄りにシフトされて塗布されてなる請求項1又は2記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記間隙寸法規定部材が放電空間を区分けする隔壁であり、前記球状スペーサの直径が前記隔壁の高さ寸法より大きい請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルを製造するための製造方法であって、
表示パネルとしての構成要素がそれぞれ形成された前面側の基板及び背面側の基板を作製した後、前面側の基板と背面側の基板の封着材の配置位置に、基板端部に向けて基板の厚みが徐々に薄くなるようなテーパー部を形成し、
前面側または背面側の基板の周辺に、前記球状スペーサを含有したガラスの封着材を設け、
前面側の基板と背面側の基板とを間隙寸法規定部材を介して対向配置して、前記前面側または背面側の基板に設けた通気孔を介して両基板の間隙空間の排気を行いながら前記封着材を加熱して軟化させ、封着材に含有された球状スペーサの前記排気による移動が前記テーパー部で阻止されるようにして、前面側の基板と背面側の基板とを封着することからなるプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−15925(P2010−15925A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176781(P2008−176781)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】