説明

プラズマディスプレイパネル用フィルタおよびそれを用いたプラズマディスプレイ装置

【課題】コストを抑制するとともに電磁波遮蔽性能を向上したPDPを提供することを目的としている。
【解決手段】表示電極24が配置された前面板20とデータ電極32が配置された背面板30とを表示電極24とデータ電極32が格子状に交差するように対向させ、表示電極24とデータ電極32との交差部分を囲むように、前面板20と背面板30との空間を仕切る隔壁34が配置されたPDP10に対して、表示電極24の投影位置24aに沿う第1金属パターン線41aと、縦隔壁の投影位置34aに沿う第2金属パターン線41bとを含む電磁波遮蔽層41を透明基板40に配置して形成したフィルタ42を取り付けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層を備えたプラズマディスプレイパネル用フィルタおよびそれを用いたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)について説明する。従来の代表的なPDPとしては交流面放電型PDPが挙げられる。図3に示すように、このPDP1には、対向配置された前面板2と背面板3との間に多数の放電セルが形成されている。
【0003】
前面板2は、ガラス製の前面ガラス板2aと、走査電極4aと維持電極4bとからなる表示電極4と、それらを覆う誘電体層2bおよび保護層2cとを有している。
【0004】
背面板3は、ガラス製の背面ガラス板3aと、データ電極5と、それを覆う誘電体層3bを有している。
【0005】
隔壁6と、蛍光体層7とを有している。
【0006】
そして、前面板2と背面板3は、表示電極4とデータ電極5とが立体交差するように対向配置されており、周囲が封着され密封されている。この表示電極4とデータ電極5とが立体交差する部分には放電セルが形成されている。この放電セルは、隔壁6で仕切られており、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。
【0007】
このように構成されたPDP1の各放電セル内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光体層7を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0008】
このようなPDP1では、蛍光体層7の励起発光時に電磁波が発生しているが、この電磁波は各種精密機器や計器やデジタル機器類に対して障害を発生させる恐れがある。そのため、電磁波の規制が厳しくなってきている。
【0009】
電磁波の規制については、例えばVCCI(Voluntary Control Council for Interference by data processing equipment electronic office machine)による規制がある。
【0010】
したがって、図3に示すような、光透過性の電磁波遮蔽層8を貼り付けたプラズマディスプレイパネル用フィルタ9(以下、フィルタという)をPDP1の前面板2に取り付けている。このフィルタは、ガラスやプラスチックなどの透明基板を含み、電磁波遮蔽層8はこの透明基板9aに貼り付けられている。また、電磁波遮蔽層8は、複数の金属パターン線8aを網目状に交差させ配置して形成したものである。なお、この電磁波遮蔽層8の金属パターン線8aは、モアレ縞の発生を防止するために、放電セル座標に対して10〜45度のバイアス角度を設けて配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、電磁波遮蔽層8の製造方法としては、以下のような方法が知られている。例えば、銀ペーストなどの金属インキを用い凹版オフセット印刷法によりパターン化された金属インキ層をブランケットに形成したのち、ブランケット上の金属インキ層を透明基板または透明シート上に転写して、電磁波遮蔽層8を製造する方法がある(例えば、特許文献2参照)。また、スクリーン印刷法により導電性材料から成るパターンを基板上に形成したのち、該パターンをメッキ加工によって所定厚の金属層にして電磁波遮蔽用層8を製造する方法がある(例えは、特許文献3参照)。また、基板に貼り付けた金属箔をフォトリソグラフィ法によりエッチングして電磁波遮蔽用層8を形成する方法がある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−304575号公報
【特許文献2】特開2009−119710号公報
【特許文献3】特開2002−38095号公報
【特許文献4】特開2000−98912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の電磁波遮蔽層8の金属パターン線8aは、モアレ縞の発生を防止するために、放電セル座標に対して2〜45度のバイアス角度を設けて配置されていた。したがって、電磁波遮蔽層8の金属パターン線8aが放電セルの開口部を横断することになるため、放電セルで発光した光の取り出し効率が低下しやすい。光透過率を上げるためには、電磁波遮蔽層8の金属パターン線8aの線幅を細くして格子の開口率を高くすればよいが、金属パターン線8aの線幅を細くした場合は、抵抗が上昇して電磁波遮蔽性能を低下させる。
【0014】
また、電磁波遮蔽層8の金属パターン線8aのバイアス角度は、PDP1の製作後に、金属パターン線8aの設計と目視確認検証とを繰り返し行って決定する必要がある。したがって、金属パターン線8aの設計とPDP1の設計とを同時に行うことができないため、コストの低減を図れない。
【0015】
ここに開示された技術は上記問題を解決し、コストを抑制するとともに電磁波遮蔽性能を向上したPDPを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、プラズマディスプレイパネルに配置され、基板に電磁波遮蔽層が形成されたプラズマディスプレイパネル用フィルタであって、前記プラズマディスプレイパネルは、表示電極が配置された前面板とデータ電極が配置された背面板とを前記表示電極と前記データ電極が格子状に交差するように対向させ、前記前面板と前記背面板との間の空間を仕切るように前記データ電極に沿った縦隔壁を有する隔壁が配置されており、前記基板には、前記表示電極の投影位置に沿って第1金属パターン線を配置し、前記縦隔壁の投影位置に沿って第2金属パターン線を配置し、前記第1金属パターン線と前記第2金属パターン線によって前記電磁波遮蔽層を形成した構成である。
【0017】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、プラズマディスプレイパネル用フィルタをプラズマディスプレイパネルの前面側に配置したプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネル用フィルタは、前記プラズマディスプレイパネルに配置され、基板に電磁波遮蔽層が形成されており、前記プラズマディスプレイパネルは、表示電極が配置された前面板とデータ電極が配置された背面板とを前記表示電極と前記データ電極が格子状に交差するように対向させ、前記前面板と前記背面板との間の空間を仕切るように前記データ電極に沿った縦隔壁を有する隔壁が配置されており、前記基板には、前記表示電極の投影位置に沿って第1金属パターン線を配置し、前記縦隔壁の投影位置に沿って第2金属パターン線を配置し、前記第1金属パターン線と前記第2金属パターン線によって前記電磁波遮蔽層を形成した構成である。
【発明の効果】
【0018】
ここに開示された技術によれば、基板には、表示電極の投影位置に沿って第1金属パターン線を配置し、縦隔壁の投影位置に第2金属パターン線を配置し、第1金属パターン線と第2金属パターン線で電磁波遮蔽層を形成している。すなわち、電磁波遮蔽層を形成する第1金属パターン線や第2金属パターン線が放電セルを横断しないので、光透過率の向上が図れる。
【0019】
また、第1金属パターン線の線幅を表示電極の幅まで太くでき、第2金属パターン線の線幅を隔壁の幅まで太くできるので、電磁波遮蔽層の低抵抗化を図ることができる。
【0020】
したがって、電磁波遮蔽性能の高いPDPを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施の形態におけるフィルタの分解斜視図
【図2】同フィルタとPDPの取り付け状態を説明するための分解斜視図
【図3】従来のフィルタとPDPとの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施の形態におけるPDPについて図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1〜図3において、PDP10は、対向配置された前面板20と背面板30との間に多数の放電セル36が形成されている。
【0024】
前面板20には、ガラス製の前面ガラス板21と、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極24と、それらを覆う誘電体層26および保護層27が配置されている。
【0025】
背面板30には、ガラス製の背面ガラス板31と、データ電極32と、それを覆う誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35が配置されている。
【0026】
そして、前面板20と背面板30は、表示電極24とデータ電極32とが格子状に立体交差するように対向配置されており、周囲が封着され密封されている。この表示電極24とデータ電極32とが立体交差する交差部分には放電セル36が形成されている。この放電セル36は、隔壁34で仕切られており、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。隔壁34は、隣接するデータ電極32の間の位置に設けられデータ電極32に平行な縦隔壁と、隣接する表示電極24の間の位置に設けられ縦隔壁に平行な横隔壁とから構成されており、誘電体層33上に形成されている。蛍光体層35は、隔壁34の側面と誘電体層33上に形成されている。なお、隔壁34が縦隔壁のみで構成されていてもよい。このとき、前面板20には図1に示すような縦隔壁の投影位置34aが投影される。
【0027】
このように構成されたPDP10の各放電セル36内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光層35を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0028】
このように形成されたPDP10には、ガラスやプラスチックフィルムなどの透明基板40に電磁波遮蔽層41が形成されたフィルタ42を取り付けている。
【0029】
また、PDP10とフィルタ42とを適切に取り付けるために、前面板20には第1アライメント用マーク28が形成されており、透明基板40には第2アライメント用マーク43が形成されている。そして、PDP10とフィルタ42との取り付けの際は、これら第1アライメント用マーク28と第2アライメント用マーク43とを重なるように、PDP10とフィルタ42とを接着層を介して貼り付けている。このアライメント用マークによって、フィルタ42をPDP10の所望の位置に正確に配置できる。
【0030】
尚、電磁波遮蔽層41は、透明基板40の表面(前面板20と対向しない側)または裏面(前面板20と対向する側)のいずれの面に配置してもよい。
【0031】
つぎに、電磁波遮蔽層41について詳細に説明する。
【0032】
電磁波遮蔽層41は、透明基板40の表面に配置されている。透明基板40には、表示電極24の投影位置24aに沿って第1金属パターン線41aを配置し、縦隔壁の投影位置34aに沿って第2金属パターン線41bを配置している。この第1金属パターン線41aと第2金属パターン線41bは、互いに直交した格子形状に形成されており、これら第1金属パターン線41aと第2金属パターン線41bによって電磁波遮蔽層41が形成される。なお、電磁波遮蔽層41は、光反射を抑制するために黒色化されている。
【0033】
つぎに、電磁波遮蔽層41の製造方法について説明する。
【0034】
まず、市販の感光性導電性ペースト100重量部に黒顔料を10重量部添加した黒の感光性導電性ペーストを用意する。つぎに、スクリーン印刷法によって黒の感光性導電性ペーストを透明基板40上に塗布して乾燥した後、第1金属線パターン41aや第2金属線パターン41bを形成するための露光マスクを介して露光する。このとき、第2アライメント用マーク43を同時に露光しておくことによって、第2アライメント用マーク43が形成されたフィルタ42が得られる。
【0035】
そして、現像後に焼結することによって、前面板20に電磁波遮蔽層41を形成する。なお、電磁波遮蔽層41の形成方法は、上述した形成方法に限らず、例えばグラビア印刷法などの周知の形成方法で形成してもよい。また、電磁波遮蔽層41は、前面板20の作製工程で形成してもよいが、前面板20に形成した電磁波遮蔽層41が搬送中に損傷する恐れがあるため、PDP本体の作製完了後に形成するのが望ましい。
【0036】
本実施形態によれば、透明基板40には、表示電極24の投影位置24aに沿って第1金属パターン線41aを配置し、縦隔壁の投影位置34aに第2金属パターン線41bを配置し、第1金属パターン線41aと第2金属パターン線41bで電磁波遮蔽層41を形成している。すなわち、電磁波遮蔽層41を形成する第1金属パターン線41aや第2金属パターン線41bが放電セル36を横断しないので、光透過率の向上が図れる。
【0037】
また、第1金属パターン線41aの線幅を表示電極24の幅まで太くでき、第2金属パターン線41bの線幅を隔壁34の幅まで太くできるので、電磁波遮蔽層41の低抵抗化を図ることができる。
【0038】
したがって、電磁波遮蔽性能の高いPDP10を実現することが可能となる。
【0039】
さらに、前面板20には、第1アライメント用マーク28が形成されており、第1アライメント用マーク28と対になる第2アライメント用マーク43が透明基板40に形成されているので、フィルタ42を前面板20に高精度かつ簡単に接着することが可能となる。したがって、フィルタ42の製造歩留まりが向上するため製造コストの低減が図れる。
【0040】
なお、本実施形態では、第1金属パターン線41aと第2金属パターン線41bを形成して電磁波遮蔽層41を形成したが、透明基板40において、隣接する表示電極24間に形成される非発光領域部の投影位置に沿って第3金属パターン線(図示せず)を配置して電磁波遮蔽層41を形成してもよい。この第3金属パターン線も光反射を抑制するために黒色化されている。この構成によれば、第3金属パターン線がブラックストライプの機能を兼ねることができる。一般に、光反射を抑制するために、前面板20には隣接する表示電極24の間にブラックストライプを形成することがあるが、上記構成によれば、第3金属パターン線がブラックストライプの機能を兼ねるので、PDP10の構成が簡素化されて製造コストの低減が図れる。
【0041】
また、第1金属線パターン41aと第2金属線パターン41bと第3金属線パターンのいずれかによって形成される電磁波遮蔽層41の格子の開口率は、放電セル36で発光した光の取り出し光量を大きくするために80%以上であることが望ましく、90%以上がより好ましい。例えば、格子の間隔を200μm、格子の線幅を10μm以下にすることによって、開口率を90%の格子にすることができる。特に、電磁波遮蔽性能を上げるためには、電磁波遮蔽層41のシート抵抗値は、0.3Ω/□以下が望ましく、0.1Ω/□以下がより好ましい。
【0042】
また、第1金属パターン線41aや第2金属パターン線41bや第3金属パターン線41cをすべての表示電極24の投影位置24aやすべての縦隔壁の投影位置34aに配置するかどうかは求められる性能に応じて決めればよい。また、第1金属パターン線41aや第2金属パターン線41bや第3金属パターン線41cの線幅も求められる性能に応じて決めればよい。
【0043】
また、上述したプラズマディスプレイ用パネルをPDP10の前面側に配置すれば、本実施形態における効果を生じるプラズマディスプレイ装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
ここに開示された技術によれば、電磁波遮蔽性能を向上できるので、PDPの製造に有用である。
【符号の説明】
【0045】
10 PDP
20 前面板
21 前面ガラス板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極
24a 投影位置
25 ブラックストライプ
28 第1アライメント用マーク
30 背面板
31 背面ガラス板
34 隔壁
34a 縦隔壁の投影位置
35 蛍光体層
36 放電セル
40 透明基板
41 電磁波遮蔽層
41a 第1金属パターン線
41b 第2金属パターン線
42 フィルタ
43 第2アライメント用マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルに配置され、基板に電磁波遮蔽層が形成されたプラズマディスプレイパネル用フィルタであって、
前記プラズマディスプレイパネルは、表示電極が配置された前面板とデータ電極が配置された背面板とを前記表示電極と前記データ電極が格子状に交差するように対向させ、前記前面板と前記背面板との間の空間を仕切るように前記データ電極に沿った縦隔壁を有する隔壁が配置されており、
前記基板には、前記表示電極の投影位置に沿って第1金属パターン線を配置し、前記縦隔壁の投影位置に沿って第2金属パターン線を配置し、
前記第1金属パターン線と前記第2金属パターン線によって前記電磁波遮蔽層を形成した
プラズマディスプレイパネル用フィルタ。
【請求項2】
前記基板には、隣接する前記表示電極間に形成される非発光領域部の投影位置に沿って第3金属パターン線を配置した
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルタ。
【請求項3】
前記前面板には、第1のアライメント用マークが形成されており、
前記第1のアライメント用マークと対になる第2のアライメント用マークを前記基板に形成した
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルタを前記プラズマディスプレイパネルの前面側に配置したプラズマディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−84772(P2012−84772A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231254(P2010−231254)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】