説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】高効率を実現することができる構造を有するプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは,互いに対向して配置された第1基板と第2基板と,第1基板と第2基板との間の空間が区画されることにより形成される少なくとも一つの放電セルと,放電セル内に蛍光体層が形成される。各放電セルに,放電電極であるアドレス電極,第1電極,および第2電極が形成される。アドレス電極は,第1基板で第1方向に沿って延びて形成され,第1電極および第2電極は,第1基板でアドレス電極と電気的に絶縁し,第1方向に交差する第2方向に沿って形成される。第1電極と第2電極は第2基板に向かって突出して,各放電セルで互いの間に空間をおいて互いに対向する。アドレス電極は,各放電セルで第1電極と第2電極との間の空間に対応して形成される第1部分,および第1方向に沿って延びて形成される第2部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマディスプレイパネルにかかり,特に,高効率を実現することができる構造を有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に,プラズマディスプレイパネル(PDP)は,気体放電により形成されたプラズマから放射される真空紫外線(VUV)が蛍光体を励起させることによって発生する可視光を利用し,映像を実現するディスプレイ素子である。このようなプラズマディスプレイパネルは,高解像度の大画面構成が可能であるので次世代薄形表示装置として脚光を浴びている。
【0003】
プラズマディスプレイパネルの一般的な構造は,3電極面放電型構造である。3電極面放電型構造は,二つの電極からなる表示電極が形成される前面基板と,前面基板から所定の距離だけ離隔し,アドレス電極が形成される背面基板とを含む。そして,全面基板と背面基板の間の空間は,隔壁によって複数の放電セルに区画され,各放電セルの背面基板側に蛍光体層が形成され,各放電セル内に放電ガスが充填される。
【0004】
放電の有無は,表示電極のうちの一つの電極とアドレス電極との間で発生するアドレス放電によって決定される。輝度を表示する維持放電は,同一面上に位置した表示電極によって行われる。つまり,従来のプラズマディスプレイパネルで,アドレス放電は,対向放電により発生し,維持放電は,面放電により発生する。一般的に,対向放電より維持放電によって放電が誘導される場合の方が,さらに高い電圧が必要となると知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,このようなプラズマディスプレイパネルは,所定の画面を表示するために多くの段階の放電を経なければならないが,各段階での効率がよくない。そのため,消費電力に対する輝度の比で定義されるプラズマディスプレイパネルの効率が低いという問題点がある。
【0006】
本発明は,従来のプラズマディスプレイパネルが有する上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,放電開始電圧を低減させることができ,不要なエネルギーの損失を低減させて効率を向上させることの可能な,新規かつ改良されたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため,本発明のある観点によれば,プラズマディスプレイパネルは,互いに対向配置され,その間の空間が少なくとも一つの放電セルに区画される第1基板及び第2基板と,放電セル内に形成される蛍光体層が形成される。そして,各放電セルに,放電を起こすための電極であるアドレス電極,第1電極,および第2電極が形成される。アドレス電極は,第1基板で第1方向に沿って延びて形成され,第1電極および第2電極は,第1基板でアドレス電極と電気的に絶縁し,第1方向に交差する第2方向に沿って形成される。第1電極と第2電極は,第2基板に向かって突出して,互いの間に空間をおいて互いに対向する。かかる構成を有することにより,本発明にかかるプラズマディスプレイでは,第1電極と第2電極との間で起こる維持放電を対向放電へ誘導することができるので,放電開始電圧を低減させることができる。
【0008】
そして,アドレス電極は,各放電セルで第1電極と第2電極との間の空間に対応して形成される第1部分,および第1方向に沿って延びて形成される第2部分を含む。この時,第2部分の厚さより,第1部分の少なくとも一部分の厚さがさらに厚く形成される。
【0009】
第1部分は,第2基板に向かって突出する突出部を備えることができる。この時,第1部分全体が突出部からなるか,または第2部分と隣接した第1部分の両側の各々に突出部が形成されることができる。
【0010】
第2部分を第2方向に測定した幅より,第1部分を第2方向に測定した幅がさらに長く形成されることができる。
【0011】
また,本発明の他の観点によれば,プラズマディスプレイパネルは,アドレス電極を覆いながら第1基板の前面に形成される誘電層を含むことができる。この時,誘電層は,各放電セルで,第1電極と第2電極との間の空間に対応する第1誘電層部と,第1電極または第2電極が形成された部分に対応する第2誘電層部とを含む。そして,第1誘電層部の厚さが第2誘電層部の厚さよりさらに薄く形成される。かかる構成を有することにより,本発明にかかるプラズマディスプレイでは,第2誘電層が放電によって形成される壁電荷が蓄積できるようにする役割と共に,各放電セルの形状に対応して放電空間を区画する役割を遂行する。
【0012】
第1誘電層部が陥没した形状に成形することができる。この時,第1誘電層部と第2誘電層部との境界に段差が形成され,第1誘電層部に隣接した部分で,第2誘電層部の厚さが第1誘電層部に近づくほど薄くなることができる。
つまり,第1誘電層部を相対的に薄く形成して,第2誘電層部を相対的に厚く形成する。かかる構成を有することにより,本発明にかかるプラズマディスプレイパネルでは,アドレス放電に寄与する程度の大きな部分に対応する第1誘電層部を相対的に薄く形成して,当該部分が大きいキャパシタンス値を有する。つまり,アドレス放電に寄与する程度の大きな部分に大きい電圧がかかることができるようにして,放電開始電圧を低減させることができる。また,アドレス放電に寄与する程度の小さな第2誘電層部の付近が小さいキャパシタンスを有し,したがって,アドレス放電時に発生し得るエネルギー損失を最小化することができ,結果的に,エネルギー回収回路の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように,本発明によれば,本発明によるプラズマディスプレイパネルは,アドレス放電に寄与する程度によってキャパシタンスを調節して,放電開始電圧を低減させながらエネルギー損失を最小化することができる。したがって,当該プラズマディスプレイパネルの効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら,本発明にかかるプラズマディスプレイパネルの好適な実施形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1実施形態)
【0015】
以下,添付した図面を参照して,本発明の実施形態および変形例について詳細に説明する。図1は,第1実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分分解斜視図であり,図2は,図1のプラズマディスプレイパネルを結合した状態でII−II線に沿って切断した部分断面図である。そして,図3は,の第1実施形態において,各放電セルに対応する第1電極または第2電極を概略的に示した部分斜視図である。
【0016】
図1を参照すれば,本実施形態によるプラズマディスプレイパネルは,第1基板10(以下,‘背面基板’とする)と第2基板20(以下,‘前面基板’とする)とが所定の間隔をおいて,互いに対向して配置され,背面基板10と前面基板20との間の空間には,複数の放電セル18を区画する隔壁26が形成される。そして,各放電セル18には,蛍光体層28が形成され,このような蛍光体層28に衝突する真空紫外線をプラズマ放電によって生成するための電極12,31,32が各放電セル18に対応して形成される。また,各放電セル18の側面に保護膜19が成形される。以下に詳細に説明する。
【0017】
背面基板10と前面基板20との間の空間で,前面基板20側に複数の放電セル18を区画する隔壁26が形成される。本実施形態で,隔壁26は,第1方向,例えば,第2基板20の長辺に沿った方向(図1のy軸方向)に長く形成され,各放電セル18の平面形状が実質的に四角形からなる。なお,本実施形態では,図1に示したような第1方向が第2基板20の長辺に沿った方向の場合を例を挙げて説明したが,本発明に係る第1方向は,必ずしも第2基板20の長辺に沿った方向には限られない。
【0018】
本実施形態では,隔壁26が一方向に沿って長く繋がる帯状形態を例に挙げて説明したが,本発明はこれに限定されるものではない。したがって,互いに交差する隔壁部材を含む多様な形状の隔壁が適用でき,したがって,放電セルが多様な形状を有することも可能である。また,第2誘電層16が実質的に放電セル18を区画する役割を果たすので,別途の隔壁が形成されないことも可能である。尚,第2誘電層16については後で詳細を述べる。
【0019】
放電セル18の内には,プラズマ放電によって真空紫外線を発生させることができるように放電ガス(例えば,キセノン(Xe)とネオン(Ne)などを含む混合ガス)が充填される。そして,各放電セル18には,プラズマ放電によって生成された真空紫外線を吸収して可視光を放出する緑色,赤色,および青色の蛍光体層28が各々別途に形成される。
【0020】
このような蛍光体層28は,隔壁26の側面と前面基板20に隣接した底面とに形成される。しかし,本発明はこれに限定されず,蛍光体層が背面基板側に形成されることも可能である。
【0021】
そして,前面基板20に対向する背面基板10の一面に,アドレス電極12が第1方向に沿って形成される。このようなアドレス電極12は,隣接しているもの同士で所定の間隔をおいて互いに離隔して位置する。このようなアドレス電極12については,図4および図5を参照して後述する。
【0022】
このようなアドレス電極12を覆いながら,前面基板20に対向する背面基板10の前面に第1誘電層14が形成される。本実施形態では,前面基板20に対向する第1誘電層14の一面141が,背面基板10および前面基板20と実質的に並行に形成される。
【0023】
このような第1誘電層14の上に,第1電極31(以下,‘維持電極’とする)と第2電極32(以下,‘走査電極’とする)が第1方向と交差する第2方向,例えば,第1基板10の短辺に沿った方向(図1のx軸方向)に長く形成される。つまり,維持電極31および走査電極32は,アドレス電極12と第1誘電層14によって電気的に絶縁する。なお,本実施形態では,図1に示したような第2方向が第1基板10の短辺に沿った方向の場合を例を挙げて説明したが,本発明に係る第2方向は,上述した第1方向と交差していればよく,必ずしも第1基板10の短辺に沿った方向には限られない。
【0024】
本実施形態で,走査電極32は,各放電セル18内に互いに独立してに形成され,維持電極31は,第1方向に隣接した放電セル18で共有されて形成される。つまり,維持電極31と走査電極32が,第1方向に沿って隣接した一対の放電セル18内で,走査電極32−維持電極31−走査電極32の配置を有することができる。しかし,本発明では,維持電極31と走査電極32が多様な電極配置を有することができ,このような配置に限定される必要はない。
【0025】
走査電極32は,アドレス電極12と共にアドレス期間でのアドレス放電に関与して,点灯される放電セル18を選択する役割を果たし,維持電極31は,走査電極32と共に維持期間での維持放電に関与して,所定の輝度を表示する役割を果たす。しかし,各電極に印加される信号電圧に応じてその役割を別にすることができるので,本発明がこれに限定される必要はない。
【0026】
図2を参照すれば,本実施形態で維持電極31と走査電極32は,各放電セル18の両側の周縁の各々で前面基板20に向かって突出して,維持電極31と走査電極32との間に空間をおいて互いに対向するように形成される。そのために,維持電極31と走査電極32との間で起こる維持放電を対向放電へ誘導することができるので,放電開始電圧を低減させることができる。
【0027】
本実施形態で,維持電極31と走査電極32が,背面基板10側の各放電セル18の両側の周縁に形成されるので,維持電極31と走査電極32は,優れた電気伝導性を有する金属電極からなることができる。電極が透明電極および金属電極からなる従来のプラズマディスプレイパネルに比べて単純な製造工程によって製造されることができ,製造原価を節減することができる。そして,前面基板20に可視光の透過を妨害する電極が形成されないので,可視光透過率が向上する長所がある。
【0028】
また,本実施形態では,蛍光体層28は,前面基板20側に形成され,放電に関与する電極12,31,32は背面基板10側に形成される。これにより,互いに異なる色の蛍光体層28での誘電率の差などにより発生する問題を防止することができる。そして,本実施形態では,アドレス放電に関与するアドレス電極12と走査電極32が同一基板側に形成されるので,アドレス放電の経路を減らすことができ,放電開始電圧を低減させることができる。
【0029】
このような維持電極31および走査電極32を囲みながら第2誘電層16が形成される。このような第2誘電層16は,第1方向に沿って形成される誘電層部16a,および第2方向に沿って形成され,維持電極31または走査電極32が内部に位置する誘電層部16bを含む。このような第2誘電層16は,放電によって形成される壁電荷が蓄積できるようにする役割と共に,各放電セル18の形状に対応して放電空間を区画する役割を果たす。
【0030】
維持電極31または走査電極32が内部に位置する誘電層部16bは,互いに異なる放電セルの放電に関与しながら,互いに隣接して位置する二つの走査電極を各々別途に囲みながら形成されて,その間に空き空間をおいて形成されることも可能であり,図2に示したように,上記の二つの走査電極32を共に囲みながら形成されることも可能である。
【0031】
このような第2誘電層16は,透明な物質からなることも可能であり,第2誘電層16の全部または前面基板20側の一部を暗色物質で形成することも可能である。第2誘電層16の全部または一部を暗色物質で形成することによって黒部の比率を増加させることができ,結果的に明室コントラストを向上させることができる。
【0032】
これら維持電極31,走査電極32,およびこれを囲む第2誘電層16は,TFCS(Thick Film Ceramic Sheet)法によって製作可能である。つまり,維持電極31,走査電極32,および第2誘電層16を含む電極部を別に製作した後,アドレス電極12および第1誘電層14が形成されている背面基板10に結合することによって製作できる。
【0033】
図3を参照すれば,本実施形態では,維持電極31および走査電極32は,帯状形態に長く形成されることができる。つまり,維持電極31および走査電極32の各々を,背面基板10面に垂直な方向(図面のz軸方向)に測定した長さ(L1)が,第2方向に沿って実質的に均一になることができる。選択的に,維持電極と走査電極は,各放電セルの放電空間に対応するように区画される構造を有することも可能である。
【0034】
第2誘電層16の表面には,プラズマ放電に露出される部分,つまり,放電セル18の側面に保護膜19が形成されることができる。このような保護膜19は,プラズマ放電によって電離されたイオンの衝突から第2誘電層16を保護する。そして,高い二次電子放出係数(secondary electron emission coefficient)値を有する物質からなるので,二次電子を放出して放電効率を向上させる役割を果たす。
【0035】
本実施形態では,保護膜19が放電セル18の側面に形成されるので,保護膜19が可視光非透過性の特性を有する物質からなることができる。一例として,保護膜19は,可視光非透過性MgOからなることができるが,このような非透過性MgOは透過性MgOに比して遥かに高い二次電子放出係数値を有するので,放電効率をさらに向上させることができる。
【0036】
本実施形態では,保護膜が第2誘電層の表面にのみ形成されることを例に挙げて説明および図示したが,本発明はこれに限定されず,第1誘電層および第2誘電層を覆いながら背面基板の前面に形成されることも可能であり,これもまた本発明の範囲に属する。
【0037】
本実施形態によるプラズマディスプレイパネルでのアドレス電極を,図1〜図3と共に図4および図5を参照して詳細に説明する。図4は,第1実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図であり,図5は,第1実施形態において,各放電セルに対応するアドレス電極を概略的に示した部分斜視図である。尚,基本的な構成は,図1〜図3と同一または類似しているので,同一または類似な部分については詳細な説明を省略し,図1〜図3と異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0038】
図4を参照すれば,アドレス電極12は,各放電セル18で維持電極31と走査電極32との間の空間に対応して形成される第1部分12aと,第1方向に延びて形成され,第1部分12aを第1方向に沿って電気的に連結する第2部分12bとを含む。
【0039】
ここで,第1部分12aは,放電セル18の中心部に対応してアドレス放電に寄与する程度の大きな部分であり,第2部分12bは,維持電極31または走査電極32の下部の放電セル18の周縁付近に形成されて,アドレス放電に寄与する程度の小さな部分である。
【0040】
本実施形態では,アドレス電極12の第1部分12aの幅および厚さと,第2部分12bの幅および厚さの各々を互いに異なるように形成することにより,第1誘電層14中の第1部分12aを覆う第1誘電層部14aのキャパシタンスと,第1誘電層14中の第2部分12bを覆う第2誘電層部14bのキャパシタンスとを互いに異なるようにする。
【0041】
一般的に,誘電層のキャパシタンスは,対応する電極の面積が大きいほど,誘電層の厚さが薄いほど大きくなる。そして,放電に寄与する部分での誘電層のキャパシタンス値の増加は,当該部分の放電空間にかかる電圧を増加させて放電を容易に行う反面,放電に寄与する程度の小さな部分での誘電層のキャパシタンス値の増加は,エネルギー損失を増加させ,エネルギー回収回路(energy recovery circuit,ERC)の効率を低下させる。本実施形態ではこのような点を考慮して,アドレス電極12の幅と厚さを調節する。
【0042】
図5に示されているように,本実施形態では,第2部分12bを第2方向に測定した幅(W2)より,第1部分12aを第2方向に測定した幅(W1)がさらに大きく形成される。
【0043】
そして,第2部分12bの厚さ(t2)より第1部分12aの厚さ(t1)がさらに厚く形成される。このために,本実施形態で,第1部分12a全体が前面基板20に向かって突出する突出部からなる。しかし,本発明はこれに限定されず,第1部分中の少なくとも一部が前面基板に向かって突出して,第1部分中の少なくとも一部が第2部分より厚ければ差し支えない。
【0044】
再び図2を参照すれば,本実施形態では,第1部分12aの厚さを相対的に厚く形成することにより,走査電極32と第1部分12aとが互いに並行に対向する面積を増加させることができる。そして,前面基板20と対向する第1誘電層14の一面141が並行に形成されて,第1部分12aを覆う第1誘電層部14aの厚さを減らすことができる。また,第1部分12aの幅を相対的に大きく形成することにより,走査電極32と第1部分12aの前面基板20の対向面とが,互いに対向する面積を増加させることができる。
【0045】
つまり,第1誘電層部14aで電極の面積が増加し,および誘電層の厚さが減少して大きいキャパシタンスを有することができる。第1誘電層部14aは第1部分12aを覆う部分であって,実質的にアドレス放電に寄与する程度の大きな部分に対応して形成されるので,結果的にアドレス放電の放電開始電圧を低減させることができる。
【0046】
また,第2部分12bの厚さおよび幅を相対的に小さく形成することにより,第2誘電層部14bでの電極の面積を低減させ,第2誘電層部14bの厚さを厚くすることができる。したがって,アドレス放電に寄与する程度の小さな第2誘電層部14bの付近が小さいキャパシタンスを有し,したがって,アドレス放電時に発生し得るエネルギー損失を最小化することができる。結果的に,エネルギー回収回路の効率を向上させることができる。
【0047】
つまり,本実施形態では,第1誘電層14中のアドレス放電に寄与する程度の大きな第1部分12aを覆う第1誘電層部14aと,第1誘電層14中のアドレス放電に寄与する程度の小さな第2部分12bを覆う第2誘電層部14bとのキャパシタンスを互いに異なるように形成することにより,放電開始電圧を低減させ,エネルギー回収回路の効率を増加させることができる。
【0048】
以下,本発明の第2実施形態〜第5実施形態と,第1実施形態〜第5実施形態の各々に適用できる第1変形例および第2変形例について説明する。このような実施形態および変形例は,基本的な構成は第1実施形態と同一または類似しているので,同一または類似な部分については詳細な説明を省略し,第1実施形態と異なる部分についてのみ詳細に説明する。そして,第1実施形態と同一または類似な構成要素は,第1実施形態と同一な参照符号を使用する。
【0049】
(第2実施形態)
図6は,本発明の第2実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。アドレス電極42は,各放電セル18で維持電極31と走査電極32との間の空間に対応して形成されて相対的に大きい幅を有する第1部分42aと,このような第1部分42aを第1方向に沿って電気的に連結しながら,第1部分42aより小さい幅を有する第2部分42bとを含む。
【0050】
図6を参照すれば,本実施形態では,第1部分42a中の第2部分42bに隣接した両側の各々に突出部42a´が形成されて,第1部分42aの突出部42a´の厚さ(t3)が第2部分42bの厚さ(t4)よりさらに厚く形成される。そのために,第1誘電層43中の第1部分42aを覆う第1誘電層部43aの突出部42a´の対応部でキャパシタンスを大きくし,第1誘電層43中の第2部分12bを覆う第2誘電層43bの対応部でキャパシタンスを小さくすることができる。結果的に,放電開始電圧を低減させながらエネルギー回収回路の効率を向上させることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図7は,本発明の第3実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【0052】
本実施形態では,前面基板20と対向する第1誘電層44の一面441が,アドレス電極12の断面形状に対応して形成される。つまり,第2部分12bを覆う第1誘電層44の第2誘電層部44bより,第1部分12aの突出部を覆う第1誘電層44の第1誘電層部44aが前面基板20にさらに近く形成される。その他にも,本発明では多様な形状の第1誘電層が形成されることができ,これもまた本発明の範囲に属する。
【0053】
(第4実施形態)
図8は,本発明の第4実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【0054】
アドレス電極46は,各放電セル18で維持電極31と走査電極32との間の空間に対応して形成されて相対的に大きい幅を有する第1部分46aと,このような第1部分46aを第1方向に沿って電気的に連結しながら,第1部分46aより小さい幅を有する第2部分46bとを含む。この時,アドレス電極46の厚さ(L2)は,第1部分46aと第2部分46bとで実質的に同一に形成される。
【0055】
本実施形態では,第1部分46aを覆う第1誘電層48の第1誘電層部48aの厚さと,第2部分46bを覆う第1誘電層48の第2誘電層部48bの厚さとを互いに異なるように形成する。つまり,第1誘電層48は,第1誘電層部48aが陥没した形状に形成されて,第2誘電層部48bの厚さ(t6)より第1誘電層部48aの厚さ(t5)がさらに薄く形成される。この時,第1誘電層部48aと第2誘電層部48bとの境界に段差(P)が形成される。
【0056】
本実施形態では,アドレス放電に寄与する程度の大きな部分に対応する第1誘電層部48aを相対的に薄く形成して,当該部分が大きいキャパシタンス値を有する。つまり,アドレス放電に寄与する程度の大きな部分に大きい電圧がかかることができるようにして,放電開始電圧を低減させることができる。
【0057】
また,アドレス放電に寄与する程度の小さな部分に対応する第2誘電層部48bを相対的に厚く形成することによって,当該部分が小さいキャパシタンス値を有する。つまり,アドレス放電に寄与する程度の小さな部分に小さい電圧がかかるようにして,エネルギー回収回路の効率を向上させることができる。
【0058】
そして,本実施形態でアドレス電極46は,第2部分46bの幅より第1部分46aの幅がさらに大きく形成されることにより,このような放電開始電圧低減およびエネルギー回収回路の効率向上の効果をさらに優れているように実現することができる。
【0059】
図9は,本発明の第5実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【0060】
本実施形態では,第4実施形態と同様に,アドレス電極46の第1部分46aの厚さとアドレス電極46の第2部分46bの厚さが実質的に同一である。
【0061】
そして,第1誘電層50の第1誘電層部50aの厚さ(t8)が第1誘電層50の第2誘電層部50bの厚さ(t7)より小さく,第2誘電層部50bの厚さは,第1誘電層部50aに隣接した部分で第1誘電層部50aに向かって漸進的に薄くなる。そのために,本実施形態では,放電開始電圧を低減させながら,エネルギー回収回路の効率を向上させることができる。
【0062】
(第1変形例)
図10は,上述した実施形態の第1変形例によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図である。
【0063】
本変形例では,パネルの前面から見れば,アドレス電極52の第1部分52aが曲線を描いて形成され,アドレス電極52の第2部分52bは,第1部分52aを連結しながら形成される。本発明でアドレス電極52の形状はこれに限定されず,多様な形状のアドレス電極が適用できる。
【0064】
(第2変形例)
図11は,上述した実施形態の第2変形例によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図である。
【0065】
本変形例では,維持電極53と走査電極54が各放電セル18で各々別途に形成される。第1方向に沿って隣接した一対の放電セルで,維持電極53−走査電極54,維持電極53−走査電極54の配列が繰り返されることができる。本発明にはその他にも多様な電極配置が適用されることができる。
【0066】
以上,添付図面を参照しながら本発明にかかるプラズマディスプレイパネルの好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のプラズマディスプレイパネルは,アドレス放電に寄与する程度によってキャパシタンスを調節して,放電開始電圧を低減させながらエネルギー損失を最小化し,プラズマディスプレイパネルの効率を向上させることができ,プラズマディスプレイの製造分野で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分分解斜視図である。
【図2】図1のプラズマディスプレイパネルを結合した状態でII−II線に沿って切断した部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態において,各放電セルに対応する第1電極または第2電極を概略的に示した部分斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態において,各放電セルに対応するアドレス電極を概略的に示した部分斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態によるプラズマディスプレイパネルを示した部分断面図である。
【図10】本発明の第1変形例によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図である。
【図11】本発明の第2変形例によるプラズマディスプレイパネルを示した部分平面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 背面基板
12 アドレス電極
12a アドレス電極の第1部分
12b アドレス電極の第2部分
14 第1誘電層
14a 第1誘電層部
14b 第2誘電層部
16 第2誘電層
16a 誘電層部
16b 誘電層部
18 放電セル
19 保護膜
20 前面基板
26 隔壁
28 蛍光体層
31 維持電極
32 走査電極
42 アドレス電極
42a´ 突出部
42a アドレス電極の第1部分
42b アドレス電極の第2部分
43 第1誘電層
43a 第1誘電層部
43b 第2誘電層部
44 第1誘電層
44a 第1誘電層部
44b 第2誘電層部
46 アドレス電極
46a アドレス電極の第1部分
46b アドレス電極の第2部分
48 第1誘電層
48a 第1誘電層部
48b 第2誘電層部
50 第1誘電層
50a 第1誘電層部
50b 第2誘電層部
52 アドレス電極
52a アドレス電極の第1部分
52b アドレス電極の第2部分
53 維持電極
54 走査電極
141 第1誘電層の一面
441 第1誘電層の一面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置され,その間の空間が少なくとも一つの放電セルに区画される第1基板及び第2基板と;
前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
前記第1基板で第1方向に沿って延びて形成されるアドレス電極と;
前記第1基板で前記アドレス電極と電気的に絶縁し,前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成され,前記第2基板に向かって突出する第1電極と;
前記各放電セルを介して,前記第1電極と空間をおいて,互いに対向するように配置された第2電極と;
を含み,
前記アドレス電極は,前記各放電セルで前記第1電極と前記第2電極との間の空間に対応して形成される第1部分,および前記第1方向に沿って延びて形成される第2部分を含み,前記第2部分の厚さより,前記第1部分の少なくとも一部分の厚さがさらに厚く形成されることを特徴とする,プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記第1部分は,前記第2基板に向かって突出する突出部を備えることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第1部分全体が突出部からなることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第2部分と隣接した前記第1部分の両側の各々に突出部が形成されることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記第2部分を前記第2方向に測定した幅より,前記第1部分を前記第2方向に測定した幅がさらに長く形成されることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記アドレス電極を覆いながら前記第1基板の前面に形成される第1誘電層と,
および前記第1電極および前記第2電極の各々を囲みながら形成され,前記放電セルを区画する第2誘電層と,
をさらに含むことを特徴とする,請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記第1誘電層の前記第2基板対向面が,前記第2基板と実質的に並行であることを特徴とする,請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第1誘電層は,
前記各放電セルで前記第1電極と前記第2電極との間の空間に対応する第1誘電層部と,
前記第1電極または前記第2電極が形成された部分に対応する第2誘電層部と,
を含み,
前記第1誘電層部の厚さと前記第2誘電層部の厚さが実質的に同一であることを特徴とする,請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくともいずれか一つの電極が前記第1方向に隣接した放電セルに共有されることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極は,前記各放電セルに別個に形成されることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
互いに対向配置され,その間の空間が少なくとも一つの放電セルに区画される第1基板及び第2基板と;
前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
前記第1基板で第1方向に沿って延びて形成されるアドレス電極と;
前記アドレス電極を覆いながら前記第1基板の前面に形成される誘電層と;
前記誘電層上で前記アドレス電極と電気的に絶縁し,前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成され,前記第2基板に向かって突出する第1電極と;
前記各放電セルを介して,前記第1電極と空間をおいて,互いに対向するように配置された第2電極と;
を含み,
前記誘電層は,前記各放電セルで前記第1電極と前記第2電極との間の空間に対応する第1誘電層部と,前記第1電極または前記第2電極が形成された部分に対応する第2誘電層部とを含み,前記第1誘電層部の厚さが前記第2誘電層部の厚さよりさらに薄いことを特徴とする,プラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記第1誘電層部が陥没した形状に形成されることを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記第1誘電層部と前記第2誘電層部との境界に段差が形成されることを特徴とする,請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記第1誘電層部に隣接した部分で,前記第2誘電層部の厚さが前記第1誘電層部に近づくほど漸進的に薄くなることを特徴とする,請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記アドレス電極は,前記各放電セルで前記第1電極と前記第2電極との間の空間に対応して形成される第1部分,および前記第1方向に沿って延びて形成される第2部分を含み,前記第2部分を前記第2方向に測定した幅より,前記第1部分を前記第2方向に測定した幅がさらに長く形成されることを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記第1電極および第2電極の各々を囲みながら形成されて,前記放電セルを区画する他の誘電層をさらに含むことを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
前記第1電極および第2電極のうちの少なくとも一つの電極が前記第1方向に隣接した放電セルに共有されることを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記第1電極および前記第2電極は,前記各放電セルに個別に形成されることを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項19】
互いに対向配置され,その間の空間が少なくとも一つの放電セルに区画される第1基板及び第2基板と;
前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
前記第1基板で第1方向に沿って形成されるアドレス電極と;
前記アドレス電極を覆いながら前記第1基板の前面に形成される誘電層と;
前記誘電層上で前記アドレス電極と電気的に絶縁し,前記第1方向に交差する第2方向に沿って形成され,前記第2基板に向かって突出する第1電極と;
前記放電セルを介して,前記第1電極と空間をおいて,互いに対向するように配置された第2電極と;
を含み,
前記アドレス電極および前記誘電層のうちの少なくとも一つが,前記第1電極と前記第2電極との間の空間の対応部でのキャパシタンスより,前記第1電極または前記第2電極の形成部でのキャパシタンスをさらに大きくする構造を有することを特徴とする,プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−269432(P2006−269432A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83417(P2006−83417)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】