説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】発光効率の改善を行うことが出来るPDPを提供する。
【解決手段】PDPの行電極対(X1,Y1)を構成する一対の行電極X1,Y1のそれぞれの放電ギャップg1を介してサステイン放電を行う透明電極X1a,Y1aの列方向の幅が150μm以下に設定され、放電空間内に封入される放電ガス中のキセノン分圧が、6.67kPa以上に設定され、誘電体層12が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマディスプレイパネルの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
面放電方式交流型プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、一般的に、放電ガスが封入されている放電空間を挟んで互いに対向する二枚のガラス基板のうち、一方のガラス基板側に、行方向に延びるとともに列方向に並設された複数の行電極対が配置されて誘電体層によって被覆され、他方のガラス基板側に、列方向に延びるとともに行方向に並設された複数の列電極が配置されており、放電空間の行電極対と列電極がそれぞれ交差する部分に、赤,緑,青の蛍光体層を備えた放電セルが形成されて、この放電セルがパネル面にマトリクス状に配置された構成を備えている。
【0003】
そして、一対のガラス基板の間の放電空間内に、体積比1〜10パーセントのキセノンを含む放電ガスが封入されている。
【0004】
このPDPは、行電極対を構成する対になっている行電極のうちの一方の行電極と列電極との間で選択的にアドレス放電が発生されて、発光セル(対向する部分の誘電体層に壁電荷が形成されている放電セル)と非発光セル(対向する部分の誘電体層の壁電荷が消去されている放電セル)の選択が行われて、この発光セルと非発光セルとが映像信号の画像データに対応してパネル面に分布される。
【0005】
この後、各行電極対の互いに対になっている行電極に交互にサステイン・パルスが印加されて、発光セル内においてサステイン放電が発生され、このサステイン放電によって放電空間内の放電ガス中のキセノンから真空紫外線が発生されて、この真空紫外線によって各発光セル内の赤,緑,青の蛍光体層が励起されて可視光が発生されることにより、パネル面にマトリクス表示による画像が形成される。
【0006】
上記のような構成のPDPにおいて、行電極の寸法は、従来は以下のように設定されている。
【0007】
すなわち、図1は、従来のPDPの行電極対のうち一個の放電セルCに対向している部分の構成を示しており、この図1において、行電極対(X,Y)を構成する行電極XとYは、それぞれ、互いに行方向に平行に延びるとともに列方向において放電ギャップgを介して対向される帯状の透明電極Xa,Yaと、この透明電極Xa,Yaに接続されて行方向に延びる帯状のバス電極Xb,Ybとによって構成されている。
【0008】
図1中、Dは列電極である。
そして、この従来のPDPの各行電極X,Yの列方向の幅wは、400〜1000μmの値に設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この従来のPDPにおいて、行電極の列方向の幅が上記のように設定されているのは、以下のような理由による。
【0010】
すなわち、PDPにおいては、サステイン放電によって放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうちその主成分である波長147nmの共鳴線によって、蛍光体層が励起されて可視光が発生されるが、この共鳴線は、放電ガス中を蛍光体層に向かって進んでゆく過程で、放電ガス中のキセノン原子と衝突し、このキセノン原子との間で吸収と放射が繰り返されることによって減衰してしまう。
【0011】
このため、含まれているキセノンの体積比が1〜10パーセントであるような低キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいては、サステイン放電時に蛍光体層に到達する共鳴線の量が少なくなり、所要の輝度を得ることが出来なくなる場合がある。
【0012】
従来のPDPでは、上記のように、各行電極X,Yの列方向の幅w(図1参照)を広く設定することによって、放電セルC内の広い領域でサステイン放電が発生されるようにし、このサステイン放電によって発生する真空紫外線の量(すなわち、共鳴線の量)を増加させて、蛍光体層に到達する共鳴線の量が所定値以上になるようにすることによって、所定値以上の輝度が確保されるようになっている。
【0013】
しかしながら、上記従来のPDPでは、高輝度の画面を形成するために必要な高い発光効率を得ることが出来ないという問題点を有している。
【0014】
【特許文献1】特開平8−22772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、上記のような従来のPDPが有している問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明(請求項1に記載の発明)によるPDPは、上記目的を達成するために、放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記行電極対を構成する一対の行電極の列方向の幅が、150μm以下に設定され、前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、前記誘電体層が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されていることを特徴としている。
【0017】
第2の発明(請求項10に記載の発明)によるPDPは、前記目的を達成するために、放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記誘電体層は、薄膜の部分と、この薄膜の部分よりも厚さが大の厚膜の部分からなり、この誘電体層の薄膜の部分は、前記対になった行電極の、放電ギャップ側の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分を被覆する誘電体層であり、前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、前記誘電体層の少なくとも薄膜の部分が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されていることを特徴としている。
【0018】
第3の発明(請求項19に記載の発明)によるPDPは、前記目的を達成するために、放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれそれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記対になった行電極のそれぞれの放電ギャップ側の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分および放電ギャップに対向する部分を含む誘電体層上に、高γ材料によって二次電子放出層が形成され、前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、前記誘電体層が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明によるPDPは、行電極対を構成する一対の行電極のそれぞれの放電ギャップを介して行われる放電に関与する部分の列方向の幅が150μm以下に設定されているとともに、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間の放電空間内に、キセノンの分圧が6.67kPa以上に設定された放電ガスが封入され、行電極対を被覆する誘電体層が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されているPDPをその最良の実施形態としている。
【0020】
この実施形態におけるPDPは、行電極対を構成する一対の行電極の構成部分のうち、この行電極間の放電ギャップを介して行われる放電に関与する部分の列方向の幅が、従来のPDPにおける400〜1000μmの幅に比べて小さい150μm以下に設定されていることにより、放電空間の単位発光領域内において行電極間で発生される放電が拡がる奥行きが従来のPDPに比べて狭くなって、この放電の成長領域が、初期グロー放電の発生領域と重なる放電ギャップの近傍の狭い領域に制限される。
【0021】
これによって、この実施形態におけるPDPは、放電ガス中のキセノンからの真空紫外線の生成が、従来のPDPと比べて非常に高い効率で行われるようになる。
【0022】
さらに、この実施形態におけるPDPは、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として波長172nmの分子線によって蛍光体層の励起が行われ、この分子線が共鳴線のように放電ガス中を進んでゆく過程でほとんど減衰することがないことによって、行電極間で発生される放電が放電ギャップの近傍の範囲に局在化される場合でも、真空紫外線が蛍光体層に十分に到達するようになるので、従来のPDPと比べて真空紫外線の生成が高い効率で行われるという特性がそのまま生かされて、高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0023】
そして、この実施形態におけるPDPは、行電極対を被覆する誘電体層が、比誘電率が9.3以下の、好ましくは8以下の、例えば、酸化亜鉛系ガラス、または、酸化亜鉛系ガラスと酸化燐系ガラスとの混合物等の低誘電材料によって形成されていることによって、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、サステイン放電時の電離量が抑制されて真空紫外線生成効率の改善によって蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大されることにより、発光効率をさらに改善することが出来る。
【0024】
上記実施形態のPDPにおいて、誘電体層を基板に対して垂直方向に35μm以上の膜厚となるように形成することが好ましい。
【0025】
これによって、単位発光領域毎の誘電体層の膜厚のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、単位発光領域毎の発光効率のばらつきを小さくして、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが出来るようになる。
【0026】
上記実施形態のPDPは、さらに、単位発光領域内における真空紫外線の発生領域が従来のPDPよりも小さいので、単位発光領域が隔壁によって区画されているような場合でも、壁損失などによる隔壁からの影響を受け難くなるとともに、真空紫外線の分子線を利用して蛍光体層の励起が行われるので、真空紫外線の発生領域と蛍光体層との距離のばらつきによる影響が小さくなり、これによって、単位発光領域に対する行電極対の列方向の位置に高い精度が要求されなくなり、製造工程における製品歩留の向上による製造コストの低下に寄与することが出来るようになる。
【0027】
行電極対を構成する一対の行電極のそれぞれの放電ギャップを介して行われる放電に関与する部分の列方向の幅を150μm以下に設定する構成としては、第1に、各行電極の列方向の幅が150μm以下に設定される構成、第2に、行電極対を被覆する誘電体層について、各行電極の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分を被覆している誘電体層の厚さが薄く、他の部分の誘電体層の厚さが厚くなっていて、行電極の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分においてのみ放電の発生が許容される構成、第3に、対になった行電極のそれぞれの放電ギャップ側の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分および放電ギャップに対向する部分の誘電体層上に、高γ材料によって二次電子放出層が形成される構成等がある。
【0028】
この第1の構成のPDPは、各行電極の列方向の幅が従来のPDPに比べて大幅に小さくなっていることによって電極間に形成される静電容量が大幅に減少し、その結果、無効電流の発生が減少して消費電力の低減を図ることが出来るようになる。
【0029】
第2の構成のPDPは、従来の行電極対の構成の変更が不要であるので製造工程の大きな変更を必要とせず、さらに、誘電体層の形成位置や厚さ寸法を任意に設定することによって構成出来るので、設計および製造上の自由度が増すことによって、製造コストの低廉化と製品歩留の向上を図ることが出来るようになる。
【0030】
第3の構成のPDPは、行電極間での放電の発生領域が二次電子放出層の形成位置や寸法によって自由に設定されるので、設計や製造上の自由度が増して、設計変更等に柔軟に対応することが可能になる。
【実施例1】
【0031】
図2および3は、この発明によるPDPの実施形態の第1の実施例を示しており、図2はこの第1実施例におけるPDPの一部を模式的に示す正面図、図3は図2のV1−V1線における断面図である。
【0032】
この図2および3において、PDP10は、表示面である前面ガラス基板11の背面に、行方向(図2の左右方向)に延びる複数の行電極対(X1,Y1)が、列方向(図2の上下方向)に所要の間隔を開けて等間隔に並設されている。
【0033】
この行電極対(X1,Y1)を構成する一方の行電極X1は、前面ガラス基板11の背面にITO等の透明導電膜によって行方向に帯状に延びるように形成された透明電極X1aと、この透明電極X1aの背面の中央位置において、金属膜によって形成されて列方向の幅が透明電極X1aの列方向の幅よりも小さい帯状の行方向に延びるバス電極X1bとによって構成されている。
【0034】
行電極対(X1,Y1)を構成する他方の行電極Y1も、行電極X1と同様に、前面ガラス基板11の背面にITO等の透明導電膜によって行方向に帯状に延びるように形成されて、行電極X1の透明電極X1aと所要の間隔を開けて平行に延びるように位置された透明電極Y1aと、この透明電極Y1aの背面の中央位置において、金属膜によって形成されて列方向の幅が透明電極Y1aの列方向の幅よりも小さい帯状の行方向に延びるバス電極Y1bとによって構成されている。
【0035】
この行電極X1とY1は、前面ガラス基板11の列方向に沿って交互に配列されており、各行電極対(X1,Y1)において、対になっている行電極X1とY1の互いに対向する透明電極X1aとY1aの間の所要の幅の間隔が、それぞれ、放電ギャップg1を構成している。
【0036】
前面ガラス基板11の背面には、さらに、誘電体層12が形成されて、この誘電体層12によって行電極対(X1,Y1)が被覆されている。
【0037】
この誘電体層12は、後で詳述するような理由によって、比誘電率が9.3以下、好ましくは8以下の低誘電材料によって、前面ガラス基板11に対して垂直な方向の膜厚d1が35μm以上になるように形成されている。
【0038】
誘電体層12を形成する比誘電率が9.3以下の低誘電材料としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)系ガラスや、この酸化亜鉛(ZnO)系ガラスと酸化燐(P25)系ガラスとの混合物等が挙げられる。
【0039】
この誘電体層12の背面側には、この背面全体を覆う様に、酸化マグネシウム(MgO)等の高γ材料からなる図示しない保護層が形成されている。
【0040】
この前面ガラス基板11に対して、背面ガラス基板13が、放電空間を介して平行に対向されている。
【0041】
そして、この背面ガラス基板13の前面ガラス基板11と対向する側の面上に、列方向に帯状に延びる複数の列電極D1が、行方向に所要の間隔を開けて等間隔に形成されている。
【0042】
背面ガラス基板13のこの面上には、さらに、列電極保護層(誘電体層)14が形成されて、この列電極保護層14によって列電極D1が被覆されている。
【0043】
この列電極保護層14上には、以下のような形状を有する隔壁15が形成されている。
【0044】
すなわち、この隔壁15は、列方向において互いに隣接する行電極対(X1,Y1)の間の中間位置に対向する位置においてそれぞれ行方向に延びる複数の横壁15Aと、列方向に延びるとともに行方向に所要の間隔を開けて等間隔に並設された複数の縦壁15Bとによって、略格子形状に成形されている。
【0045】
この隔壁15によって、前面ガラス基板11と背面ガラス基板13の間の放電空間がそれぞれ略方形形状に区画されることにより、パネル面にマトリクス状に配置された複数の放電セルC1が形成されている。
【0046】
そして、この各放電セルC1の中央部分に、それぞれ、行電極対(X1,Y1)が対向されている。
【0047】
各放電セルC1において、この放電セルC1内の放電空間に面する隔壁15の横壁15Aおよび縦壁14Bの四つの側面と列電極保護層14の表面には、これらの五つの面を全て覆うように蛍光体層16が形成されており、この蛍光体層16の色が各放電セルC1毎に三原色の赤,緑,青に色分けされて、この三原色が行方向に順に並ぶように配列されている。
【0048】
放電空間内には、キセノンを含む全圧が66.7kPa(500Torr)の放電ガスが封入されている。
【0049】
上記PDP10の行電極X1,Y1の寸法および放電ガスの構成は、以下のように設定されている。
【0050】
すなわち、各行電極X1,Y1の列方向の幅、すなわち、透明電極X1aの列方向の幅Wx1,透明電極Y1aの列方向の幅Wy1(図2参照)が、それぞれ150μm以下に設定されている。
【0051】
そして、放電空間内に封入される放電ガス中のキセノン分圧が、6.67kPa(50Torr)以上に設定されている。
【0052】
このPDP10は、各行電極対(X1,Y1)の行電極Y1に順次スキャン・パルスが印加され、これと同時に、列電極D1に選択的にデータ・パルスが印加されて、このスキャン・パルスが印加された行電極Y1とデータ・パルスが印加された列電極D1が交差している部分に形成されている放電セルC1内において、行電極Y1と列電極D1との間でアドレス放電が発生され、このアドレス放電によって形成される発光セル(対向している部分の誘電体層12に壁電荷が形成されている放電セルC1)と非発光セル(対向している部分の誘電体層12の壁電荷が消去されている放電セルC1)とが、映像信号の画像データに対応してパネル面に分布される。
【0053】
この後、各行電極対(X1,Y1)のそれぞれ対になっている行電極X1とY1に交互にサステイン・パルスが印加されて、発光セル内において、透明電極X1aとY1aの間で放電ギャップg1を介してサステイン放電が発生される。
【0054】
そして、発光セル内において、このサステイン放電によって、放電空間内に封入されている放電ガス中のキセノンから真空紫外線が発生され、この真空紫外線によって発光セル内の赤,緑,青の蛍光体層16が励起されて可視光が発生されることにより、パネル面にマトリクス表示による画像が形成される。
【0055】
このPDP10は、各行電極X1の列方向の幅Wx1,透明電極Y1の列方向の列方向の幅Wy1がそれぞれ150μm以下に設定され、放電空間内の全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されていることによって、画像形成時における上記のようなサステイン放電時に、以下のような理由によって、高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0056】
すなわち、図4は、PDPにおける行電極の列方向の幅(以下、電極幅と略称する)と発光効率との関係を示している。
【0057】
なお、この図4は、放電セルのサイズが700(μm)×310(μm)、開口部サイズが640(μm)×250(μm)の場合の測定結果を示している。
【0058】
この図4において、キセノン分圧が6.67kPa(50Torr)未満の場合(図4においては、キセノン分圧が2.67kPa(20Torr)の場合が示されている)には、電極幅が小さくなるほど発光効率が低下している。
【0059】
そして、キセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上になると、電極幅が小さくなるにしたがって、発光効率が上昇し、キセノン分圧が大きくなるほど(図4においては、キセノン分圧が13.33kPa(100Torr)の場合が示されている)、発光効率の上昇が顕著になる。
【0060】
PDPにおいて要求される発光効率としては、2.0(lm/W)以上の値が有用な値となる。
【0061】
したがって、この図4から、PDP10において、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されている状態で、行電極X1,Y1の電極幅Wx1およびWy1がそれぞれ150μm以下であれば、2.0(lm/W)以上の発光効率を得ることが出来ることが分かる。
【0062】
このように、全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上の状態において、電極幅が小さくなるにしたがって発光効率が上昇するのは、以下の理由による。
【0063】
図5は、放電の一般的な成長過程を示すグラフであり、図6は、従来の放電セル内におけるサステイン放電の成長過程を示す状態図である。
【0064】
この図5および6に示されるように、前述したような画像形成時に放電セル内において発生されるサステイン放電は、タウンゼント放電−初期グロー放電−グロー放電のそれぞれの過程を経て成長してゆく。
【0065】
PDPの画像形成時における真空紫外線の生成には、一般的に、サステイン放電の発生期間うち、初期グロー放電とグロー放電の期間が利用されている。
【0066】
そして、この真空紫外線の生成に利用される放電期間のうち、初期グロー放電期間は、空間電荷の局在化が完成する前の過程において、陰極付近に主にイオンによって形成される陰極降下部でのエネルギの損失がないため、非常に高い効率で真空紫外線が生成される。
【0067】
この初期グロー放電期間に続くグロー放電期間では、陰極降下部の生成によって放電空間内に非常に強い電界が形成され、この強電界によって多量の高エネルギ電子が生成されて、強電界部の出口となる負グロー部において多量の真空紫外線が生成されるが、陰極降下部にエネルギの損失が生じるため、初期グロー放電期間と比べて、真空紫外線の生成効率は高くない。
【0068】
PDPの放電セル内において発生されるサステイン放電は、一般的に、図6に示されるように、その成長過程において、行電極対の陽極側から陰極側へと立体的に成長してゆく。
【0069】
上記PDP10では、行電極X1,Y1の電極幅Wx1およびWy1がそれぞれ150μm以下に設定されていて、放電セルC1内においてサステイン放電が拡がる奥行きが従来のPDPに比べて狭いために、このサステイン放電の成長領域が、放電ギャップg1の近傍の狭い領域(図6においてeで示される領域)に制限される。
【0070】
なお、このPDP10において、放電ギャップg1の近傍の狭い領域において発生するサステイン放電を、以下、狭奥行き放電と呼称する。
【0071】
この狭奥行き放電の成長領域は、前述したように非常に高い効率で真空紫外線が生成される図6の初期グロー放電の発生領域と重なる。
【0072】
このため、PDP10は、行電極X1,Y1の電極幅Wx1およびWy1がそれぞれ150μm以下に設定されて、サステイン放電が狭奥行き放電となることによって、真空紫外線の生成を、従来のPDPと比べて非常に高い効率で行うことが出来るようになる。
【0073】
一方、PDP10において、従来と同様に、放電空間内に低キセノン分圧の放電ガスを封入して、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうちの主として波長147nmの共鳴線によって蛍光体層16を励起しようとすると、PDP10において発生される狭奥行き放電であるサステイン放電が、放電ギャップg1の近傍の範囲に局在化するために、この真空紫外線の共鳴線の蛍光体層16に到達するまでの間の減衰が反って大きくなってしまう。
【0074】
一般に、放電ガス中のキセノン分圧が2.67〜3.33kPa(20〜25Torr)である場合には、放電ガスから発生される真空紫外線の主成分は、波長147nmの共鳴線であることが知られており、この共鳴線は、キセノン分圧が2.67〜3.33kPa(20〜25Torr)の条件下において放電ガス中を100μm進む間に、ほぼ半分に減衰する。
【0075】
PDP10においては、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として波長172nmの分子線によって蛍光体層16の励起が行われる。
【0076】
この真空紫外線のうちの分子線は、共鳴線のように放電ガス中を進んでゆく過程でほとんど減衰することがない。
【0077】
従って、PDP10においては、サステイン放電が狭奥行き放電となって、放電ギャップg1の近傍の範囲に局在化される場合でも、真空紫外線が蛍光体層16に十分に到達するので、サステイン放電が狭奥行き放電になることによって真空紫外線の生成が従来のPDPと比べて非常に高い効率で行われるという特性がそのまま生かされるようになり、これによって、高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0078】
次に、上記のように狭奥行き放電を行うとともに高キセノン分圧の放電ガスが封入されたPDP10における誘電体層12の比誘電率と、放電電流および比誘電率との関係との関係について説明を行う。
【0079】
図7は、電極幅が50μmに設定され、全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガス中のキセノン分圧が13.33kPa(100Torr)に設定されているとともに狭奥行き放電を行うPDPにおいて、行電極対を被覆する誘電体層の比誘電率と、放電電流(電流密度)および発光効率との関係を示した表であり、図8は、この図7の表をグラフにして示したものである。
【0080】
そして、図9は、電極幅が200μmに設定され、全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガス中のキセノン分圧が2.67kPa(20Torr)に設定された従来のPDPにおける放電電流(電流密度)と発光効率との関係を示したグラフである。
【0081】
なお、図7ないし9において、測定に使用されたサステイン・パルスの周期は、何れも5μsであり、また、図中、iは放電電流(電流密度)を示し、ηは発光効率を示している。
【0082】
PDPにおけるサステイン放電時の放電電流(電流密度)と行電極対を被覆する誘電体層の比誘電率との間には、この誘電体層の比誘電率が大きくなるほど、放電電流が大きくなるという関係が有り、図9に示される従来のPDPにおいては、放電電流が大きくなるに従って発光効率が大きくなっている。
【0083】
これに対し、図8の狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいては、行電極対を被覆する誘電体層の比誘電率が小さくなって放電電流が減少するに従って、発光効率は上昇し、放電電流が1.0A/m2以下になると、発光効率は、ほぼ4lm/Wで安定する。
【0084】
このように放電電流が減少するに従って発光効率が上昇する現象は、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されたPDPにおいて発生し、上述したように、従来のPDPにおいては発生しない。
【0085】
PDPにおいては、通常、最大発光効率と実効発光効率がほぼ等しくなるようにするのが好ましいが、少なくとも、実効発光効率が最大発光効率の90パーセント以上の値になるようにすることが好ましい。
【0086】
従って、図7および8から、上記PDP10において、最大発光効率4lm/Wの90パーセント以上の値、すなわち3.6lm/W以上の実効発光効率を得るために、放電電流(電流密度)が1.16A/m2以下の値になるように設定され、このために、誘電体層12の比誘電率が9.3以下の値になるように設定されている。
【0087】
さらに、このPDP10において、実効発光効率が最大発光効率4lm/Wとほぼ等しくなるようにするためには、放電電流(電流密度)が1A/m2以下の値になるようにする必要があり、このため、誘電体層12の比誘電率が8以下の値に設定されるようにするのが好ましい。
【0088】
このように、狭奥行き放電を発生させるとともに高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、行電極対を被覆する誘電体層の比誘電率および放電電流(電流密度)が小さくなるにしたがって発光効率が大きくなるのは、以下のような理由による。
【0089】
すなわち、行電極対を被覆する比誘電率が大きくなると放電電流(電流密度)が大きくなり、行電極間で発生されるサステイン放電時の電離量が多くなるため、この電離によって生成される電子が、この電子との衝突反応によって真空紫外光放射の始状態になる励起キセノン原子を励起破壊してしまう確率が高くなる。
【0090】
特に、PDP10のような狭奥行き放電を発生し高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいては、放電電流(電流密度)が大きくなると、上記のような励起キセノン原子の励起破壊によって真空紫外光の生成効率が悪くなるため、蛍光体層に照射される真空紫外線の光量が低下することによって、発光効率が低下することになる。
【0091】
したがって、狭奥行き放電を発生し高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいては、放電電流が小さくなることによって発光効率が上昇すると考えられる。
【0092】
以上のように、PDP10は、行電極X1,Y1の電極幅Wx1およびWy1がそれぞれ150μm以下に設定され、さらに、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されており、行電極対(X1,Y1)を被覆する誘電体層12の比誘電率が9.3以下、好ましくは8以下に設定されることによって、サステイン放電時の電離量が抑制され、この電離によって生成された電子が、この電子との衝突反応によって真空紫外光放射の始状態となる励起キセノン原子を励起破壊する確率が低くなり、これによって、真空紫外線生成効率が改善されて蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大することにより、発光効率が改善される。
【0093】
さらに、上記PDP10は、誘電体層12が、比誘電率が9.3以下の低誘電材料によって形成されていることにより、これよりも大きい比誘電率を有する誘電材料によって形成された誘電体層を有する従来のPDPと比べて、行電極X1,Y1間および行電極Y1と列電極D1間の静電容量が小さくなって、無効電力の発生が低減される。
【0094】
また、高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいては、駆動電圧が上昇すると放電電流が増大することになるが、上記PDP10においては、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されている場合でも、誘電体層12が比誘電率9.3以下の低誘電材料によって形成されていることにより、放電電流が小さくなって、発光効率が低下するのが防止される。
【0095】
次に、PDP10の誘電体層12の膜厚が35μm以上に設定されている理由を、図10および11に基づいて説明する。
【0096】
図10は、規格化誘電体膜厚と規格化誘電体容量との関係を示すグラフであり、図11は、規格化誘電体膜厚に対する規格化誘電体容量の変化率(図10のグラフの傾き(微分値))を示すグラフである。
【0097】
そして、図10および11における規格化誘電体容量Crは、
Cr=εr・ε0(S /d)
εr:比誘電率
ε0 :真空の誘電率
S :電極面積
d :誘電体膜厚
の式によって求められている。
【0098】
そして、この図10および11は、PDPにおいて一般的に形成される誘電体層の数十μmの膜厚の数値範囲について、上記の式に基づいて、誘電体容量を算出して示したものである。
【0099】
上記式から、規格化誘電体容量Crは、誘電体膜厚のみに反比例しており、図10および11に示されているように、誘電体膜厚が大きくなるほで小さくなっている。
【0100】
ここで、図10および11から分かるように、誘電体膜厚が35μmよりも小さい場合には、誘電体膜厚が大きくなるのに伴う誘電体容量の減少率が大きい。
【0101】
これに対し、誘電体膜厚が35μm以上になると、誘電体膜厚が大きくなるのに伴う誘電体容量の減少率が、誘電体膜厚が35μmよりも小さい場合に比べて小さくなっている。
【0102】
前述したように、PDPにおいては放電電流と発光効率との間に相関関係が有り、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPでは、放電電流の値が小さくなると発光効率が上昇する。
【0103】
このため、放電セル毎にこの放電電流にばらつきが生じると、放電セル毎に発光効率が異なってしまうという問題が発生する。
【0104】
この放電電流は誘電体層の誘電体容量によって変化し、この誘電体容量は、前述したように、誘電体膜厚によって変化する。
【0105】
PDPの製造工程において、放電セルの全てにおいて均一な膜厚の誘電体層を形成することは困難であり、誘電体層の膜厚にある程度のばらつきが発生する。
【0106】
このとき、前述したように、誘電体層の膜厚が35μm以上の場合は、膜厚が35μmよりも小さい場合に比べて、膜厚の変化に対する誘電体容量の変化率が小さいため、誘電体層を膜厚が35μm以上になるように形成すると、放電セル毎の膜厚のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、放電セル毎の発光効率のばらつきを従来のPDPにおけるよりも小さく抑えて、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが可能になる。
【0107】
なお、上記のような各効果は、PDPの隔壁がストライプ状である場合にも得ることが出来るが、PDP10は、隔壁15が略格子形状に成形されていることによって、蛍光体層16が各放電セルC1をそれぞれ囲む横壁15Aと縦壁15Bの四つの側面にも形成されて、この蛍光体層16の表面積が増大されているので、さらに高い発光効率を得ることが出来る。
【0108】
さらに、上記PDP10は、行電極X1,Y1の列方向の幅が従来のPDPに比べて大幅に小さくなっていることによって、電極間に形成される静電容量が大幅に減少し、その結果、無効電流の発生が減少して消費電力の低減を図ることが出来るようになるとともに、放電ギャップg1に対向する部分の誘電体層12に凹部12Aが形成されていることによっても、電極間に形成される静電容量が減少されて、無効電流の発生が減少することによって消費電力を低減することが出来る。
【0109】
なお、上記においては、PDP10の行電極対(X1,Y1)が、放電セルC1に対して、列方向において放電セルC1の中央位置に配置されている例が示されているが、行電極対(X1,Y1)は、放電セルC1に対して列方向においてその中央位置から上下にずれた位置に配置されていても良い。
【0110】
その理由は、以下の通りである。
【0111】
すなわち、従来のPDPにおいては、前述したようにサステイン放電が放電セルの全体に拡がる奥行きの深い放電になるため、格子形状の隔壁によって区画された放電セルに対して行電極対が列方向において放電セルの中央位置から上下どちらかにずれた位置に位置されると、放電ギャップが放電セルを区画している隔壁の上下の横壁のどちらかに偏って位置されることによって、各放電セル毎に電圧マージンや輝度,発光効率等にばらつきが生じて、発光に悪影響が生じるという問題が発生するので、放電セルに対して行電極対の高い位置精度が要求される。
【0112】
しかしながら、上記のPDP10では、サステイン放電が前述したような放電領域が狭い狭奥行き放電になって、真空紫外線の発生領域が、従来のPDPよりも小さいいわゆる点光源になるので、壁損失などによる隔壁からの影響を受け難くなるとともに、真空紫外線の吸収が少ない波長172nmの分子線を利用して蛍光体層16の励起が行われるので、サステイン放電の放電領域(真空紫外線の発生領域)と蛍光体層16との距離のばらつきによる影響が小さくなり、これによって、放電セルC1に対する行電極対(X1,Y1)の列方向の位置が中央位置からずれている場合でも、発光効率および輝度の変動はほとんど生じないからである。
【0113】
従って、上記PDP10によれば、隔壁15が略格子形状を有していて放電セルC1の周囲が横壁15Aおよび縦壁15Bによって囲まれている場合でも、放電ギャップの位置(すなわち行電極対の位置)が、列方向において放電セルの中央位置に正確に位置決めされていなくてもよくなり、放電セルC1に対する行電極対(X1,Y1)の位置精度の許容量が大きくなって、製造工程における製品歩留の向上による製造コストの低下に寄与することが出来るようになる。
【0114】
また、上記においては、行電極を構成する透明電極が、それぞれ、バス電極に沿って隣接する放電セル間において帯状に連続した形状に成形されている例が示されているが、透明電極が放電セル毎に独立して形成されてバス電極に接続された構成であっても良い。
【0115】
さらに、上記においては、行電極が透明電極とバス電極によって構成された例を述べたが、行電極が金属製のバス電極のみで構成され、その列方向の幅をそれぞれ150μm以下に設定する構成でもよい。
【実施例2】
【0116】
図12および13は、この発明によるPDPの実施形態の第2の実施例を示しており、図12はこの第2実施例におけるPDPの一部を模式的に示す正面図、図13は図12のV2−V2線における断面図である。
【0117】
この図12および13において、前述した第1実施例のPDPと同一の構成部分には、図2および3と同一の符号が付されている。
【0118】
前述した第1実施例のPDPの行電極対を構成する各行電極のバス電極が透明電極の背面のほぼ中央部に配置されていたのに対し、この第2実施例のPDP20は、行電極対(X2,Y2)を構成する行電極X2とY2が、それぞれ、略格子形状の隔壁15によって区画された放電セルC1の列方向の中央部分に対向する位置に位置される透明電極X2a,Y2aと、放電セルC1の両側の横壁15Aに近接する位置に配置されて透明電極X2a,Y2aに接続されているバス電極X2b,Y2bとによって構成されている。
【0119】
すなわち、図12および13において、PDP20は、第1実施例の場合と同様に、放電空間が、横壁15Aと縦壁15Bによって略格子形状に成形された隔壁15によって略方形に区画されることにより、放電セルC1が形成されている。
【0120】
行電極対(X2,Y2)を構成する行電極X2,Y2は、それぞれ、帯状の透明電極X2a,Y2aが、放電セルC1の列方向の中央部分に対向する位置において互いに所要の間隔(放電ギャップg2)を開けて行方向に平行に延びている。
【0121】
この透明電極X2a,Y2aは、その列方向の幅(Wx2,Wy2)がそれぞれ150μm以下となるように設定されている。
【0122】
バス電極X2b,Y2bは、それぞれ、隔壁15の横壁15Aの内縁部に沿って行方向に帯状に延びるバス電極本体部X2b1,Y2b1と、このバス電極本体部X2b1,Y2b1と透明電極X2a,Y2aの間において隔壁15の縦壁15Bに対向する位置を列方向に延びて、バス電極本体部X2b1,Y2b1と透明電極X2a,Y2aとをそれぞれ接続するバス電極接続部X2b2,Y2b2とによって構成されている。
【0123】
そして、この行電極対(X2,Y2)を被覆する誘電体層22が、例えば酸化亜鉛(ZnO)系ガラスやこの酸化亜鉛(ZnO)系ガラスと酸化燐(P2O5)系ガラスとの混合物等の比誘電率が9.3以下、好ましくは8以下の低誘電材料によって、前面ガラス基板11に対して垂直な方向の膜厚d2が35μm以上になるように形成されている。
【0124】
他の部分の構成は第1実施例に場合と同様であり、放電空間内に封入される全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガスのキセノン分圧が、6.67kPa以上(50Torr)以上の値に設定されている。
【0125】
第1実施例の場合には、金属膜によって形成されるバス電極が放電セルの中央部分に対向する位置に配置されているため、この光透過性を有しないバス電極によって放電セルの開口部がそれぞれ列方向に二分されることになるのに対し、このPDP20の場合には、金属膜によって形成されるバス電極X2b,Y2bのバス電極本体部X2b1,Y2b1が隔壁15の横壁15Aに近接した位置に配置されていることによって、バス電極X2b,Y2bによって放電セルC1の開口部が第1実施例の場合のように二分されるようなことはない。
【0126】
本実施例の場合、放電ギャップに近づく程発光強度が高く、横壁に近づく程発光強度が弱まる特性がある。よって、この構成の場合、発光強度が高い部分がバス電極によって遮蔽されることなく、より高い発光効率を得ることができる、
さらに、このPDP20は、バス電極接続部X2b2,Y2b2が、隔壁15の縦壁15Bに対向する位置に配置されていることによって、このバス電極接続部X2b2,Y2b2の形成によって放電セルC1の開口部の一部が遮蔽されることもない。
【0127】
なお、上記においては、バス電極X2b,Y2bのバス電極本体部X2b1,Y2b1が放電セルC1に対向する部分において隔壁15の横壁15Aに近接する位置に配置されている例が示されているが、このバス電極本体部X2b1,Y2b1を隔壁15の横壁15Aに対向する位置に配置するようにしても良く、この場合には、バス電極本体部X2b1,Y2b1が放電セルC1の開口部を遮蔽することがなくなるので、バス電極X2b,Y2bの全体が蛍光体層からの発光の邪魔になる虞が無くなる。
【0128】
上記PDP20は、行電極X2,Y2の透明電極X2aの列方向の幅(電極幅)Wx2および透明電極Y2aの列方向の幅(電極幅)Wy2がそれぞれ150μm以下に設定されることによって、第1実施例に場合と同様に、この透明電極X2aとY2a間で発生されるサステイン放電が狭奥行き放電となって、真空紫外線の生成が従来のPDPと比べて非常に高い効率で行われるようになるとともに、放電空間内に封入される放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として減衰がほとんど無い波長172nmの分子線によって蛍光体層16の励起が行われるので、従来のPDPと比べて高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0129】
そして、上記PDP20は、第1実施例の場合と同様に、行電極対(X2,Y2)を被覆する誘電体層22が、比誘電率が9.3以下の低誘電材料によって形成されていることによって、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、サステイン放電時の電離量が抑制されて真空紫外線生成効率の改善によって蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大されることにより、発光効率が改善され、さらに、この誘電体層22の膜厚が35μm以上に設定されていることによって、放電セルC1毎の誘電体層22の膜厚d2のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、放電セルC1毎の発光効率のばらつきが従来のPDPよりも小さくなって、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが出来るようになる。
【0130】
なお、上記のような効果は、PDPの隔壁がストライプ状である場合にも得ることが出来るが、PDP20は、隔壁15が略格子形状に成形されていることによって、蛍光体層を各放電セルC1をそれぞれ囲む横壁15Aと縦壁15Bの四つの側面にも形成して蛍光体層の表面積を増大させることが出来るので、さらに高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0131】
さらに、上記PDP20は、行電極X2,Y2の透明電極X2a,Y2aのそれぞれの列方向の幅が従来のPDPに比べて大幅に小さくなっていることによって、電極間に形成される静電容量が大幅に減少し、その結果、無効電流の発生が減少して消費電力の低減を図ることが出来るようになる。
【0132】
さらに、上記PDP20は、第1実施例において説明したのと同様の理由により、行電極対(X2,Y2)を放電セルC1に対して列方向においてその中央位置から上下にずれた位置に配置することが可能であり、これによって、放電セルC1に対する行電極対(X2,Y2)の位置精度の許容量が大きくなって、製造工程における製品歩留の向上による製造コストの低下に寄与することが出来るようになる。
【0133】
なお、上記においては、行電極を構成する透明電極が、それぞれ、バス電極に沿って隣接する放電セル間において帯状に連続した形状に成形されている例が示されているが、透明電極が放電セル毎に独立して形成されてバス電極に接続された構成であっても良い。
【実施例3】
【0134】
図14および15は、この発明の実施形態における第3の実施例を示しており、図14はこの第3実施例のPDPの一部を模式的に示す正面図であり、図15は図14のV3−V3線における断面図である。
【0135】
この図14および15において、前述した第1実施例のPDPと同一の構成部分については、図2および3と同一の符号が付されている。
【0136】
前述した第1実施例のPDPが各行電極の透明電極の列方向の幅を変更してサステイン放電が狭奥行き放電を形成するように構成されていたのに対し、この第3実施例のPDP30は、略格子形状の隔壁15によって区画された放電セルC1に対向する位置に従来のPDP(図1参照)と同様のサイズの行電極対(X3,Y3)が形成され、この行電極対(X3,Y3)を被覆する第1誘電体層32の放電空間に面する背面側の所要の位置にさらに第2誘電体層33が積層して形成されて、行電極X3,Y3のそれぞれ実質的に放電を発生させる部分の列方向の幅が狭められることにより、サステイン放電が狭奥行き放電を形成するように構成されている。
【0137】
すなわち、PDP30は、前面ガラス基板11の背面に、図1の従来のPDPと同様の列方向の幅が例えば400〜1000μmの帯状の透明電極X3a,Y3aが、互いに所要の間隔(放電ギャップg3)を開けて行方向に平行に延びており、この透明電極X3a,Y3aの背面の基端側に、それぞれ帯状のバス電極X3b,Y3bが行方向に延びるように形成されて、透明電極X3a,Y3aに接続されている。
【0138】
この行電極対(X3,Y3)は、前面ガラス基板11の背面に形成された第1誘電体層32によって被覆されている。
【0139】
この第1誘電体層32は、例えば酸化亜鉛(ZnO)系ガラスやこの酸化亜鉛(ZnO)系ガラスと酸化燐(P2O5)系ガラスとの混合物等の比誘電率が9.3以下、好ましくは8以下の低誘電材料によって、前面ガラス基板11に対して垂直な方向の膜厚d3が35μm以上になるように形成されている。
【0140】
この第1誘電体層32の背面の下記に述べるような所要の位置に、第2誘電体層33が積層して形成されている。
【0141】
そして、これらの第1誘電体層32と第2誘電体層33の背面の全体を覆う様に図示しない二次電子放出層が形成されている。
【0142】
第2誘電体層33は、第1誘電体層32の背面の放電ギャップg3と、この放電ギャップg3を挟んで対向している行電極X3,Y3の透明電極X3a,Y3aのそれぞれ先端から列方向において150μm以下の幅Wx3およびWy3の部分とに対向する行方向に延びる帯状の部分以外の部分を被覆する位置に形成されている。
【0143】
この行電極対(X3,Y3)を被覆する第1誘電体層32は、その前面ガラス基板11と直角方向の膜厚d3が35μm以上になるように形成されており、第2誘電体層33は第1誘電体層32以上の膜厚を有していて、第1誘電体層32と第2誘電体層33が積層されている部分の膜厚が、第1誘電体層32の膜厚の2倍以上の放電による壁電荷がほとんど形成されることがない膜厚となるように設定されている。
【0144】
放電空間内には、キセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上の全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガスが封入されている。
【0145】
上記PDP30は、行電極対(X3,Y3)の各行電極X3,Y3が、その列方向の幅が従来のPDPとほぼ同じ寸法を有しているが、この行電極X3,Y3の放電ギャップg3を介して互いに対向する透明電極X3a,Y3aの先端部の列方向の幅Wx3およびWy3の部分以外の部分が、積層された第1誘電体層32と第2誘電体層33の二層の誘電体層によって被覆されて、その部分の誘電体層の膜厚が先端部の列方向の幅Wx3およびWy3の部分を被覆している誘電体層の膜厚よりも厚くなっているので、壁電荷は、第1誘電体層32に第2誘電体層33が積層されて膜厚が厚くなっている部分にはほとんど形成されず、透明電極X3aとY3aの先端部の列方向の幅Wx3およびWy3の部分を被覆している第1誘電体層32の表面に形成される。
【0146】
このため、PDP30では、行電極対(X3,Y3)にサステイン・パルスが印加されて透明電極X3aとY3a間で放電ギャップg3を介してサステイン放電が発生される際に、このサステイン放電は、ほとんど透明電極X3aとY3aの先端部の列方向の幅Wx3およびWy3の部分のみで行われるようになって、第1実施例で説明したような狭奥行き放電が形成される。
【0147】
以上のようにして、上記PDP30は、第1実施例の場合と同様に、サステイン放電が狭奥行き放電となることによって、真空紫外線の生成が従来のPDPに比べて非常に高い効率で行われるようになるとともに、放電空間内に封入される全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として減衰がほとんど無い波長172nmの分子線によって蛍光体層の励起が行われるので、従来のPDPと比べて高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0148】
そして、上記PDP30は、第1実施例の場合と同様に、行電極対(X3,Y3)を被覆する第1誘電体層32が、比誘電率が9.3以下の低誘電材料によって形成されていることによって、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、サステイン放電時の電離量が抑制されて真空紫外線生成効率の改善によって蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大されることにより、発光効率が改善され、さらに、この第1誘電体層32の膜厚d3が35μm以上に設定されていることによって、放電セルC1毎の第1誘電体層32の膜厚d3のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、放電セルC1毎の発光効率のばらつきを従来のPDPにおけるよりも小さくして、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが出来るようになる。
【0149】
さらに、このPDP30は、第1実施例において説明したのと同様の理由により、行電極対(X3,Y3)を放電セルC1に対して列方向においてその中央位置から上下にずれた位置に配置することが可能であり、これによって、放電セルC1に対する行電極対(X3,Y3)の位置精度の許容量が大きくなって、製造工程における製品歩留の向上による製造コストの低下に寄与することが出来るようになる。
【0150】
さらに、上記PDP30は、上記のような第1実施例の場合と同様の効果に加えて、透明電極X3a,Y3aの列方向の幅が従来のPDPと同様の大きさを有していてバス電極X3b,Y3bが放電ギャップg3から離れた位置に配置されるため、蛍光体層からの発光が金属膜からなるバス電極X3b,Y3bによって邪魔されるといった影響が小さくなり、発光の取出し効率が向上する。
【0151】
すなわち、本実施例の場合、放電ギャップに近づく程発光強度が高く、横壁に近づく程発光強度が弱まる特性がある。よって、この構成の場合、発光強度が高い部分がバス電極によって遮蔽されることなく、より高い発光効率を得ることができる、
そして、このPDP30の構成によれば、バス電極の蛍光体層からの発光に対する影響を小さくするための構造が、前述した第2実施例のPDPの場合と比べて簡素化することが出来る。
【0152】
また、例えば、図14および15には、バス電極X3b,Y3bが放電セルC1の開口面に対向する位置に配置されている例が示されているが、図16に示されるように行電極対(X4,Y4)を構成する各行電極X4,Y4のバス電極X4b,Y4bが放電セルC1の開口面から外れた位置に配置されるようにすれば、バス電極X4b,Y4bの蛍光体層からの発光に対する影響が無くなって、発光の取出し効率を大幅に向上させることが出来るようになる。
【0153】
上記PDP30は、さらに、行電極対(X3,Y3)の構成が従来と同様であるので、製造工程の大きな変更を必要とせず、また、第2誘電体層33の形成位置を任意に設定することが出来るので、設計および製造上の自由度が増し、これによって、製造コストの低廉化と製品歩留への貢献を図ることが出来るようになる。
【0154】
なお、上記においては、行電極を構成する透明電極が、それぞれ、バス電極に沿って隣接する放電セル間において帯状に連続した形状に成形されている例が示されているが、透明電極が放電セル毎に独立して形成されてバス電極に接続された構成であっても良い。
【0155】
また、上記においては、第2誘電体層がそれぞれ行方向に延びる帯状に形成されている例が示されているが、第1誘電体層上に積層される第2誘電体層は、図17に示される第2誘電体層34のように、放電セルC1の開口面に対向する部分に方形の開口部34aが形成された略格子形状に成形されており、この開口部34aによって、透明電極X3aとY3aのそれぞれの先端部分の列方向の幅Wx3およびWy3の部分および放電ギャップg3に対向する部分以外の部分を被覆している誘電体層の膜厚を壁電荷が形成されない厚さに設定するようにしても良い。
【実施例4】
【0156】
図18および19は、この発明の実施形態における第4の実施例を示しており、図18はこの第4実施例のPDPの一部を模式的に示す正面図であり、図19は図18のV4−V4線における断面図である。
【0157】
この図18および19において、前述した第3実施例のPDPと同一の構成部分については、図14および15と同一の符号が付されている。
【0158】
前述した第3実施例のPDPが行電極対を被覆する第1誘電体層上に形成された第2誘電体層によってサステイン放電の放電範囲が制限されることにより狭奥行き放電を形成するように構成されていたのに対し、この第4実施例のPDP40は、略格子形状の隔壁15によって区画された放電セルC1に対向する位置に従来のPDP(図1参照)と同様のサイズの行電極対(X3,Y3)が形成され、この誘電体層42の放電空間に面する背面側の所要の位置のみに、MgO等の高γ材料によって二次電子放出層43が行方向に帯状に延びるように形成されて、この二次電子放出層43によって、透明電極X3aとY3aの間で発生されるサステイン放電が狭奥行き放電を形成するようになっている。
【0159】
すなわち、PDP40は、前面ガラス基板11の背面に、図1の従来のPDPと同様の列方向の幅が例えば400〜1000μmの帯状の透明電極X3a,Y3aが、互いに所要の間隔(放電ギャップg4)を開けて行方向に平行に延びており、この透明電極X3a,Y3aの背面の基端側に、それぞれ帯状のバス電極X3b,Y3bが行方向に延びるように形成されて、透明電極X3a,Y3aに接続されている。
【0160】
この行電極対(X3,Y3)は、前面ガラス基板11の背面に形成された誘電体層42によって被覆されている。
【0161】
この行電極対(X3,Y3)を被覆する誘電体層42は、例えば酸化亜鉛(ZnO)系ガラスやこの酸化亜鉛(ZnO)系ガラスと酸化燐(P2O5)系ガラスとの混合物等の比誘電率が9.3以下、好ましくは8以下の低誘電材料によって、前面ガラス基板11に対して垂直な方向の膜厚d4が35μm以上になるように形成されている。
【0162】
そして、この誘電体層42の背面上の、放電ギャップg4およびこの放電ギャップg4を挟んで両側に位置する透明電極X3aとY3aのそれぞれの先端部分の列方向における幅Wx4およびWy4の部分を含む部分に対向する位置のみに、MgO等の高γ材料によって行方向に帯状に延びる二次電子放出層43が形成されている。
【0163】
この二次電子放出層43の形成方法としては、例えば、二次電子放出膜43の形成位置に対応する開口部を有するマスクを誘電体層42と高γ材料の材料蒸発源との間に介在させて、材料蒸発源から発生される高γ材料の蒸気を、誘電体層42のマスクの開口部に対向する部分に付着させて成膜を行う方法等がある。
【0164】
この二次電子放出層43の透明電極X3a,Y3aと対向している部分のそれぞれの列方向の幅Wx4およびWy4は、150μm以下に設定されている。
【0165】
そして、放電空間内に封入される全圧66.7kPa(500Torr)の放電ガスのキセノン分圧が、6.67kPa(50Torr)以上に設定されている。
【0166】
上記PDP40は、行電極対(X3,Y3)の各行電極X3,Y3が、その列方向の幅が従来のPDPとほぼ同じ寸法を有しているが、高γ材料によって形成された二次電子放出層43が、誘電体層42上の放電ギャップg4とこの放電ギャップg4の両側の透明電極X3aとY3aのそれぞれの先端部分の幅Wx4およびWy4の部分に対向する位置のみに配置されていることによって、透明電極X3aとY3a間において発生されるサステイン放電のほとんどがこの二次電子放出層43が形成されている領域の範囲内で発生されることになり、これによって、このサステイン放電が、第1実施例で説明したような狭奥行き放電を形成するようになる。
【0167】
以上のようにして、上記PDP40は、第1実施例の場合と同様に、サステイン放電が狭奥行き放電となることによって、真空紫外線の生成が従来のPDPに比べて非常に高い効率で行われるようになるとともに、放電空間内に封入される放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa(50Torr)以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として減衰がほとんど無い波長172nmの分子線によって蛍光体層の励起が行われるので、従来のPDPと比べて高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0168】
そして、上記PDP40は、第1実施例の場合と同様に、行電極対(X3,Y3)を被覆する誘電体層42が、比誘電率が9.3以下の低誘電材料によって形成されていることによって、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、サステイン放電時の電離量が抑制されて真空紫外線生成効率の改善によって蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大されることにより、発光効率が改善され、さらに、この誘電体層22の膜厚d4が35μm以上に設定されていることによって、放電セルC1毎の誘電体層42の膜厚のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、放電セルC1毎の発光効率のばらつきを従来のPDPにおける場合よりも小さくして、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが出来るようになる。
【0169】
さらに、このPDP40は、第1実施例において説明したのと同様の理由により、行電極対(X3,Y3)を放電セルC1に対して列方向においてその中央位置から上下にずれた位置に配置することが可能であり、これによって、放電セルC1に対する行電極対(X3,Y3)の位置精度の許容量が大きくなって、製造工程における製品歩留の向上による製造コストの低下に寄与することが出来るようになる。
【0170】
さらに、PDP40は、上記のような第1実施例の場合と同様の効果に加えて、透明電極X3a,Y3aの列方向の幅が従来のPDPと同様の大きさを有していてバス電極X3b,Y3bが放電ギャップg4から離れた位置に配置されるため、蛍光体層からの発光が金属膜からなるバス電極X3b,Y3bによって邪魔されるといった影響が小さくなり、発光の取出し効率が向上する。
【0171】
すなわち、本実施例の場合、放電ギャップに近づく程発光強度が高く、横壁に近づく程発光強度が弱まる特性がある。よって、この構成の場合、発光強度が高い部分がバス電極によって遮蔽されることなく、より高い発光効率を得ることができる、
そして、このPDP40の構成によれば、バス電極の蛍光体層からの発光に対する影響を小さくするための構造が、前述した第2実施例のPDPの場合と比べて簡素化することが出来る。
【0172】
また、このPDP40の構成によれば、狭奥行き放電の発生領域が二次電子放出層43の形成位置や寸法によって自由に設定されるので、設計や製造上の自由度が増して、設計変更等に柔軟に対応することが可能になる。
【0173】
なお、上記においては、二次電子放出層43が行方向に帯状に延びる形状に成形されている例が示されているが、この二次電子放出層は、各放電セルC1毎に独立したいわゆる島形状に成形するようにしても良い。
【0174】
また、上記においては、行電極を構成する透明電極が、それぞれ、バス電極に沿って隣接する放電セル間において帯状に連続した形状に成形されている例が示されているが、透明電極が放電セル毎に独立して形成されてバス電極に接続された構成であっても良い。
【0175】
上記各実施例のPDPは、行電極対を構成する一対の行電極のそれぞれの放電ギャップを介して行われる放電に関与する部分の列方向の幅が150μm以下に設定されているとともに、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間の放電空間内に、キセノンの分圧が6.67kPa以上に設定された放電ガスが封入されており、行電極対を被覆する誘電体層が、比誘電率が9.3以下の低誘電材料によって形成されているPDPをその上位概念の実施形態としている。
【0176】
この上位概念を構成する実施形態のPDPは、行電極対を構成する一対の行電極の構成部分のうち、この行電極間の放電ギャップを介して行われる放電に関与する部分の列方向の幅が、従来のPDPにおける400〜1000μmの幅に比べて小さい150μm以下に設定されていることにより、放電空間の単位発光領域内において行電極間で発生される放電が拡がる奥行きが従来のPDPに比べて狭くなって、この放電の成長領域が、初期グロー放電の発生領域と重なる放電ギャップの近傍の狭い領域に制限される。
【0177】
これによって、この実施形態におけるPDPは、放電ガス中のキセノンからの真空紫外線の生成が、従来のPDPと比べて非常に高い効率で行われるようになる。
【0178】
さらに、放電ガス中のキセノン分圧が6.67kPa以上に設定されていることによって、この放電ガス中のキセノンから発生する真空紫外線のうち、主として波長172nmの分子線によって蛍光体層の励起が行われ、この分子線が共鳴線のように放電ガス中を進んでゆく過程でほとんど減衰することがないことによって、行電極間で発生される放電が放電ギャップの近傍の範囲に局在化される場合でも、真空紫外線が蛍光体層に十分に到達するようになるので、従来のPDPと比べて真空紫外線の生成が高い効率で行われるという特性がそのまま生かされて、高い発光効率を得ることが出来るようになる。
【0179】
そして、行電極対を被覆する誘電体層が、比誘電率が9.3以下の、好ましくは8以下の、例えば、酸化亜鉛系ガラス、または、酸化亜鉛系ガラスと酸化燐系ガラスとの混合物等の低誘電材料によって形成されていることによって、狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されているPDPにおいて、サステイン放電時の電離量が抑制されて真空紫外線生成効率の改善によって蛍光体層に照射される真空紫外光量が増大されることにより、発光効率を改善することが出来る。
【0180】
この実施形態のPDPにおいて、誘電体層を基板に対して垂直方向に35μm以上の膜厚となるように形成することが好ましく、これによって、単位発光領域毎の誘電体層の膜厚のばらつきによって生じる放電電流のばらつきが小さくなり、これによって、単位発光領域毎の発光効率のばらつきを小さくして、パネルの全面に亘って安定した発光効率を得ることが出来るPDPを製造することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】従来のPDPの構成を示す正面図である。
【図2】この発明の実施形態の第1実施例を示す正面図である。
【図3】図2のV1−V1線における断面図である。
【図4】PDPにおける電極の幅と発光効率との関係を示すグラブである。
【図5】PDPにおける放電の一般的成長過程を示すグラブである。
【図6】PDPの放電セル内におけるサステイン放電の成長過程を示す状態図である。
【図7】狭奥行き放電を行い高キセノン分圧の放電ガスが封入されたPDPにおける放電電流と発光効率,誘電体の非誘電率との関係を示す表図である。
【図8】図7における放電電流と発光効率,誘電体の非誘電率との関係を示すグラフである。
【図9】従来のPDPにおける放電電流と発光効率,誘電体の非誘電率との関係を示すグラフである。
【図10】PDPにおける誘電体膜厚と誘電体容量との関係を示すグラフである。
【図11】PDPにおける誘電体膜厚と誘電体容量の変化率との関係を示すグラフである。
【図12】この発明の実施形態の第2実施例を示す正面図である。
【図13】図12のV2−V2線における断面図である。
【図14】この発明の実施形態の第3実施例を示す正面図である。
【図15】図14のV3−V3線における断面図である。
【図16】同実施例の変形例を示す正面図である。
【図17】同実施例の他の変形例を示す正面図である。
【図18】この発明の実施形態の第4実施例を示す正面図である。
【図19】図18のV4−V4線における断面図である。
【符号の説明】
【0182】
11 …前面ガラス基板(一方の基板)
12,22,42 …誘電体層
13 …背面ガラス基板(他方の基板)
15 …隔壁
15A …横壁(横壁部)
15B …縦壁(縦壁部)
16 …蛍光体層
32 …第1誘電体層(誘電体層)
33,34 …第2誘電体層(誘電体層)
34a …開口部
43 …二次電子放出層
C1 …放電セル(単位発光領域)
D1 …列電極
X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3,X4,Y4
…行電極
Xa1,Ya1,Xa2,Ya2,Xa3,Ya3,Xa4,Ya4
…透明電極
Xb1,Yb1,Xb2,Yb2,Xb3,Yb3,Xb4,Yb4
…バス電極
X2b1,Y2b1 …バス電極本体部
X2b2,Y2b2 …バス電極接続部
Wx1,Wy1,Wx2,Wy2,Wx3,Wy3,Wx4,Wy4
…列方向の幅
d1,d2,d3,d3 …膜厚
g1,g2,g3,g4 …放電ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記行電極対を構成する一対の行電極の列方向の幅が、150μm以下に設定され、
前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、
前記誘電体層が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されている、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記誘電体層を形成する誘電材料の比誘電率が8以下である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記誘電体層を形成する誘電材料が、酸化亜鉛系ガラス、または、酸化亜鉛系ガラスと酸化燐系ガラスとの混合物である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記誘電体層が、基板に対して垂直方向に35μm以上の膜厚を有している請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記行電極対を構成する各行電極が、それぞれ、列方向において所要の幅を有し放電ギャップを介して対になっている他方の行電極側と互いに対向する透明電極と、この透明電極よりも小さい列方向の幅を有し行方向に帯状に延びるとともに透明電極に接続された金属性のバス電極とを備え、
一対の前記透明電極の列方向の幅が、150μm以下に設定されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記行電極対を構成する各行電極が、それぞれ、列方向において所要の幅を有し放電ギャップを介して対になっている他方の行電極側と互いに対向する金属製のバス電極からなり、
一対の前記バス電極の列方向の幅が、150μm以下に設定されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記一対の基板の間に、行方向に平行に延びる複数の横壁部と列方向に平行に延びる複数の縦壁部とによって略格子形状に成形された隔壁が形成されて、この隔壁によって放電空間が単位発光領域毎に区画され、
前記行電極が隔壁によって区画された単位発光領域に対向する位置にそれぞれ配置されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記一対の基板の間に、行方向に平行に延びる複数の横壁部と列方向に平行に延びる複数の縦壁部とによって略格子形状に成形された隔壁が形成されて、この隔壁によって放電空間が単位発光領域毎に区画され、
前記行電極の透明電極が単位発光領域に対向する位置にそれぞれ配置され、バス電極が隔壁の横壁部に対向する位置にそれぞれ配置されている請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記行電極対を構成する行電極のそれぞれの透明電極とバス電極が、隔壁の縦壁部に対向する位置に形成されて列方向に延びる金属製の接続部によって接続されている請求項8に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記誘電体層は、薄膜の部分と、この薄膜の部分よりも厚さが大の厚膜の部分からなり、この誘電体層の薄膜の部分は、前記対になった行電極の、放電ギャップ側の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分を被覆する誘電体層であり、
前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、
前記誘電体層の少なくとも薄膜の部分が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されている、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記誘電体層の少なくとも薄膜の部分を形成する誘電材料の比誘電率が8以下である請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記誘電体層の少なくとも薄膜の部分を形成する誘電材料が、酸化亜鉛系ガラス、または、酸化亜鉛系ガラスと酸化燐系ガラスとの混合物である請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記誘電体層の薄膜の部分が、基板に対して垂直方向に35μm以上の膜厚を有している請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記誘電体層の厚膜の部分の厚さが、誘電体層の薄膜の部分の厚さのほぼ2倍以上に設定されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記誘電体層の薄膜の部分が、行方向に延びる帯状に形成されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記誘電体層の薄膜の部分が、各単位発光領域毎に島状に形成され、厚膜の部分が、この薄膜の部分を囲む略格子形状に成形されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
前記一対の基板の間に、行方向に平行に延びる複数の横壁部と列方向に平行に延びる複数の縦壁部とによって略格子形状に成形された隔壁が形成されて、この隔壁によって放電空間が単位発光領域毎に区画され、
前記行電極が隔壁によって区画された単位発光領域に対向する位置にそれぞれ配置されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記行電極対を構成する各行電極が、それそれ、列方向において所要の幅を有し放電ギャップを介して対になっている他方の行電極側と互いに対向する透明電極と、この透明電極よりも小さい列方向の幅を有し行方向に帯状に延びるとともに透明電極に接続された金属製のバス電極とを備え、
前記一対の基板の間に、行方向に平行に延びる複数の横壁部と列方向に平行に延びる複数の縦壁部とによって略格子形状に成形された隔壁が形成されて、この隔壁によって放電空間が単位発光領域毎に区画され、
前記各行電極のバス電極が、それぞれ隔壁の横壁部に対向する位置に配置されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項19】
放電空間を挟んで対向する一対の基板と、この一対の基板のうちの一方の基板側に配置されて行方向に延び列方向に並設されているとともに、それぞれ放電ギャップを介して互いに対向する対になった行電極によって構成される複数の行電極対と、一方の基板側に形成されて行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に配置されて列方向に延び行方向に並設された複数の列電極とを備え、この列電極と行電極対が交差する部分の放電空間にそれそれ単位発光領域が形成され、放電空間内にキセノンを含む放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記対になった行電極のそれぞれの放電ギャップ側の先端部分の列方向の幅150μm以下の部分および放電ギャップに対向する部分を含む誘電体層上に、高γ材料によって二次電子放出層が形成され、
前記放電ガス中のキセノンの分圧が、6.67kPa以上に設定され、
前記誘電体層が、比誘電率が9.3以下の誘電材料によって形成されている、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項20】
前記誘電体層を形成する誘電材料の比誘電率が8以下である請求項19に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項21】
前記誘電体層を形成する誘電材料が、酸化亜鉛系ガラス、または、酸化亜鉛系ガラスと酸化燐系ガラスとの混合物である請求項19に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項22】
前記誘電体層が、基板に対して垂直方向に35μm以上の膜厚を有している請求項19に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−311127(P2007−311127A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137969(P2006−137969)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(503411576)株式会社次世代PDP開発センター (65)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】