説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】非鉛のフリットガラスを主体とする封着部材を用いて、排気管の排気装置に接続される側の端部が下を向いた配置で封着を行っても、封着部の気密性の信頼性を確保した環境負荷の少ないPDPを実現する。
【解決手段】前面パネル2と背面パネル10とを対向配置するとともに、前面パネル2と背面パネル10の周囲を第1の封着部材21で封着して放電空間を形成し、放電空間を排気するとともに放電ガスを封入する排気管22を前面パネル2または背面パネル10の少なくとも一方に第2の封着部材31で封着接合したPDPであって、第2の封着部材31の組成は、酸化ビスマスを67重量%〜73重量%、酸化亜鉛を8重量%〜11重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%含み、残余の成分がコージライトであるフリットガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型テレビジョンや公衆表示などに用いる平板型の表示装置であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)に関し、さらに、詳しくは形成される放電空間を排気するとともに放電ガスを封入するための排気管を備えたPDPに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)は、対向配置した前面パネルと背面パネルの周縁部を封着部材によって封着した構造であって、前面パネルと背面パネルとの間に形成された放電空間には、ネオンおよびキセノンなどの放電ガスが封入されている。
【0003】
前面パネルは、ガラス基板の片面にストライプ状に形成された走査電極と維持電極とからなる複数の表示電極対と、これらの表示電極対を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層、および誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とからなる。表示電極対は、それぞれ透明電極と透明電極上に形成した金属材料からなるバス電極とによって構成されている。
【0004】
背面パネルは、もう一方のガラス基板の片面に、表示電極対と直交する方向にストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、これらのアドレス電極を覆う下地誘電体層と、放電空間をアドレス電極毎に区画するストライプ状の隔壁と、隔壁間の溝に順次塗布された赤色、緑色、青色の蛍光体層とを備えている。
【0005】
上記の構造の前面パネルと背面パネルとは、その電極形成面側を対向させ、その周縁部を封着部材で気密封着するとともに、背面パネルの一角に放電空間を排気するとともに、その後、放電ガス導入するための排気管が取り付けられている。放電空間にネオンとキセノンからなる放電ガスを50KPa〜80KPaの圧力で導入後、排気管の所定部を局部的に加熱溶融して気密封止することによりPDPが完成する。表示電極対とアドレス電極は直交していて、その交差部が放電セルになる。これらの放電セルはマトリクス状に配列され、表示電極対の方向に並ぶ赤色、緑色、青色の蛍光体層を有する3個の放電セルがカラー表示のための画素になる。完成したPDPは、アドレス電極と走査電極および表示電極対に順次、映像信号電圧を印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、可色の発光をさせてカラー画像を表示する。
【0006】
上述した前面パネルと背面パネルの封着には一般に酸化鉛を主成分とする低融点ガラスフリットにフィラーを混合して有機溶剤で混練したペースト状の封着部材を用い、印刷、インクジェットやディスペンサーなどのいずれかの方式の塗布装置を用いて、前面パネルおよび背面パネルの少なくともどちらか一方のガラス製基板の周縁部に封着部材を塗布した後、封着部材を予めガラスフリットが完全に溶融しない程度の温度で仮焼成をする。その後、前面パネルおよび背面パネルを対向配置して組立、仮焼成の温度よりも高い封着温度で封着する。
【0007】
そして、近年の環境問題への配慮からPDPにおいても鉛成分を含まない「鉛フリー」、「鉛レス」と称する非鉛系の材料を用いることが求められている。封着部材としては、鉛成分を含まない燐酸系(燐酸−酸化錫系など)の封着部材や、酸化ビスマス系の封着部材が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2など参照)。しかし、非鉛の封着部材として提案された燐酸−酸化錫系の低融点ガラスを主体とする封着部材は、従来から用いられてきた酸化鉛系の封着部材に比べて耐水性に劣るため、PDPの気密性を十分に保持することが難しいという課題が残る。
【0008】
一方、背面パネルへの排気管の封着には、前面パネルと背面パネルの封着の場合と同じように低融点ガラスフリットとフィラーを混合して溶剤で混練したペースト材料を、金型で中心部に開口部を有する形状に成形し、溶剤を蒸発させると同時に組立処理で破壊されない強度にするために加熱焼成してしたタブレットと称する封着部材を用いている。従来、このタブレット用の封着部材として、比較的軟化点が低くて封止工程の作業性に優れる鉛を含有した硼珪酸系のガラスで形成されたものを用いられているが、環境の面から非鉛系の材料を用いることが求められる。
【特許文献1】特開2004−182584号公報
【特許文献2】特開2003−095697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6はPDPにおいて排気管を封着接合する際の背面パネルと排気管との位置関係を示す断面図である。背面パネルに対して排気管の背面パネルへの封着において、排気管の背面パネルに封着される側の端部が下にあり、排気管の排気装置に接続される側の端部が上を向いた配置で封着処理を行う場合には、図6(a)の断面図に示すように封着時の加熱処理で封着接合部25は下垂することはなく背面パネル10面に広がる。その結果、封着接合部25を構成するガラスフリットとしては広い範囲で軟化点の選択が可能である。このとき、封着後の封着接合部25の断面形状として、背面パネル10の封着表面との交点を通る封着接合部25の最外形の接線と背面パネル10面との角度θが90°以上になる。このような形状の場合には封着接合部25の背面パネル10との接着面積が大きく、排気管22に加わる外力および熱歪みに対して応力集中が起こらずに封着部の信頼性は確保される。
【0010】
しかしながら、図6(a)のように排気管22の封着される側の端部が下にあり、排気装置に接続される側の端部が上にある構成の場合には、排気装置(図示せず)と排気管22を接続する配管を曲げる必要があり配管が長くなること、および排気と放電ガスの導入が自動化しにくいという欠点が生じる。
【0011】
一方、図6(b)に示すように排気管22の背面パネル10に封着される側の端部が上にあり、排気管22の排気装置(図示せず)に接続される側の端部が下に向いた構成で封着処理を行う場合は、封着時の封着接合部25が下垂して図6(b)に示す角度θが90°以下となり易い。特に、酸化ビスマス系のガラスフリットからなる封着接合部25では、交角が90°以下になり易い。封着後の封着部の断面がこのような形状の場合、ガラスフリットと背面ガラス基板の膨張係数の差によって、封着部に引っ張り応力が集中する。その結果、排気管22を局部的に加熱溶融して気密封止する際の急激な加熱によって、封着部が破壊したり、熱衝撃試験や熱サイクル試験で封着部が破壊したりする。そのため、機密性が破られてPDPの動作不良が発生するなどの信頼性を著しく低下する。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、非鉛のフリットガラスを主体とする封着部材を用いて、排気管の排気装置に接続される側の端部が下を向いた配置で封着を行っても、封着部の気密性の信頼性を確保した環境負荷の少ないPDPを実現することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、前面パネルと背面パネルとを対向配置するとともに、前面パネルと背面パネルの周囲を第1の封着部材で封着して放電空間を形成し、放電空間を排気するとともに放電ガスを封入する排気管を前面パネルまたは背面パネルの少なくとも一方に第2の封着部材で封着接合したプラズマディスプレイパネルであって、第2の封着部材の組成は、酸化ビスマスを67重量%〜73重量%、酸化亜鉛を8重量%〜11重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%含み、残余の成分がコージライトであるフリットガラスである。
【0014】
このような構成により、排気管の封着接合部の形状を下垂れのない形状とすることができるために、封着接合部への応力集中を抑制して製造歩留まりが高く、信頼性の高いPDPを実現することができる。
【0015】
さらに、第1の封着部材の組成は、酸化ビスマスを70重量%〜75重量%、酸化亜鉛を8重量%〜10重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%、酸化アルミニウムを6重量%〜8重量%、酸化珪素または酸化マグネシウムを1重量%〜3重量%含むフリットガラスとすることが望ましい。
【0016】
このような構成によれば、封着部材として鉛レスを実現して、なおかつ、製造歩留まりが高く、信頼性の高いPDPを実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のPDPの製造方法によれば、非鉛のガラスフリットからなる封着部材を用いて、環境問題に配慮し、高い製造歩留まりと高信頼性を有するPDPを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて詳しく説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す主要部の斜視図である。PDP1はガラスなどの透明な基板の一面に各種の表示部材を設けた前面パネル2と、もう一方の透明な基板の一面に各種の表示部材を設けた背面パネル10とを、表示部材側を対向させて配置し、その周縁部をガラスフリットなどからなる封着部材によって気密封着した構造である。封着されたPDP1内部の放電空間16には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスが50KPa〜80KPaの圧力で封入されている。
【0020】
そこで、前面パネル2は前面ガラス基板3上に平行に配列された走査電極4と維持電極5とからなる表示電極対6が複数形成されている。走査電極4、維持電極5はそれぞれインジウム酸化物や酸化錫などからなる透明電極と、透明電極上に形成された銀を主成分とする金属バス電極とからなる。表示電極対6の間には、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷することにより遮光層7が形成されている。そして、前面ガラス基板3上に形成された表示電極対6と遮光層7とを覆うように、ダイコート法などにより誘電体ペーストを塗布した後、焼成固化することにより誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。さらに、その表面に真空蒸着法により酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成され、前面パネル2が完成する。
【0021】
また、背面パネル10はもう一方の背面ガラス基板11上に、複数のストライプ状のアドレス電極12が銀材料を含むペーストをスクリーン印刷し、所望の温度で焼成することにより形成される。アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上に、ダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布した後、焼成することにより下地誘電体層13が形成される。
【0022】
さらに、下地誘電体層13上で、隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して、アドレス電極12を挟むストライプ状にパターニングした後、焼成することにより、放電空間を区切るための隔壁14が形成される。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布され、背面パネル10が完成する。
【0023】
走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電空間16が形成され、表示電極対6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電空間16がカラー表示のための画素になる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態におけるPDPの前面パネル2と背面パネル10とを封着接合した状態を示す図であり、図2(a)は前面パネル2と背面パネル10とを、その周縁部を封着部材21で封着して、さらに、背面パネル10に排気管22を排気用細口部24に、封着部材を成形して作製したタブレット33で封着したPDPの平面図である。また、図2(b)は図2(a)に示したPDPのA−A線断面図である。
【0025】
図3は本発明の実施の形態におけるPDPの封着手順を示す断面図である。図2、図3を参照しながら前面パネル2と背面パネル10、および背面パネル10と排気管22との封着工程について説明する。
【0026】
本発明の実施の形態では、第1の封着部材として低融点の鉛成分を含まないガラスフリットと所定のフィラーを混合して有機溶剤で混練したペースト状の封着部材を用いている。印刷やインクジェットまたはディスペンサーなどのいずれかの方式の塗布装置により、前面パネル2および背面パネル10の少なくともどちらか一方の基板の周縁部に封着部材21を配置形成し、ガラスフリットが溶融しない所定の温度で仮焼成をする。
【0027】
フィラーは耐熱性を有しており、封着部材21の熱膨張係数を調整するとともに、ガラスの流動状態をコントロールするために使用されるが、コージライト、フォルステライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化アルミニウム、石英ガラスなどが特に好ましい材料として単用または混用して使用される。
【0028】
また、封着部材21の形成に塗布装置を用いず、予めシート状のベース材に所定の厚さ、形状で粘着性を持たせた封着部材21を作製し、これを前面パネル2および背面パネル10の周縁部に接着させて加熱することにより両パネルを封着してもよい。
【0029】
一方、本発明の実施の形態では、排気管22を背面パネル10の一角に形成された排気用細口部24に封着する第2の封着部材である封着部材23として図4に示す形状のタブレット31を用いている。図4は本発明の実施の形態におけるPDPの背面パネル10と排気管22との封着に用いるタブレット33を示す斜視図である。すなわち、非鉛のガラスフリットとフィラーを混合して溶剤で混練した材料を、金型を用いて図4に示すように中心部に開口部32を有する形状のタブレット33に成形し、溶剤を蒸発させるために所定の温度で加熱焼成して焼結固化形成している。
【0030】
これら第1の封着部材である封着部材21と第2の封着部材である封着部材31の材料組成について後で詳細に説明する。
【0031】
本発明の実施の形態では、図3(a)に示すように、排気管ヘッド41と排気管22との接続が容易で直結させて配管を短くできて、処理工数の低減が期待できることから、排気管22の封着される側の端部を上方に、排気管ヘッド41に接続される側の端部を下方にした配置構成にしている。図3(b)には排気管22が背面パネル10に封着接合された後の状態を示す。
【0032】
周縁部に封着部材21を配置した前面パネル2と背面パネル10を、表示電極対6と背面パネル10のデータ電極が直交するように対向配置し、所定の位置でアラインメントして固定治具(図示せず)で押さえて仮固定する。さらに、背面パネル10に設けた排気用細口部24の中心にタブレット33の開口部32の中心、および排気管22の開口部の中心軸を合わせて載置し、それぞれの中心がずれないように別の固定治具(図示せず)で押さえて仮固定する。
【0033】
そして、排気管22の下方の端部を排気管ヘッド41に接続する。排気管ヘッド41はバネなどの弾性手段42を備えており、図3の矢印Cで示す方向に排気管22を押圧する。以上のように、組み立てて冶具で固定した前面パネル2、背面パネル10、排気管22、排気ヘッド41を焼成炉内に導入し、前面パネル2と背面パネル10の周縁部および排気管22の背面パネル10側に配置したそれぞれの封着部材21とタブレット33を480℃〜500℃の温度で溶融させてから冷却して固化させて封着する。
【0034】
前面パネル2と背面パネル10との周縁部で封着され、背面パネル10の一角に排気管22が封着接合されたPDP1の内部を、封着部材31の軟化点以下の温度に加熱しながら排気装置によって真空排気する。さらに、真空排気した後に、所定の温度に冷却して排気管22からネオンやキセノンなどを含む放電ガスを所定の圧力(例えば、Ne−Xe混合ガスの場合、50KPa〜80KPaの圧力)で封入する。その後、排気管22の所定の部分を局部的に加熱溶融して封じ切ることにより気密封止されたPDP1を完成させる。
【0035】
以上の方法では封着と排気とを個別の処理として説明したが、封着後の冷却過程で温度が封着部材の軟化点以下の所定の温度になったところで排気処理をすると封着から排気までを一貫して処理することも可能である。
【0036】
ここで、本発明の実施の形態におけるPDPの封着部材と封着方法について、さらに詳しく説明する。
【0037】
前面パネル2と背面パネル10の周縁部の封着に用いる第1の封着部材である封着部材21の組成は、酸化ビスマス(Bi)が70重量%〜75重量%、酸化亜鉛(ZnO)が8重量%〜10重量%、酸化硼素(B)が4重量%〜6重量%、酸化アルミニウム(Al)6重量%〜8重量%、酸化珪素(SiO)または酸化マグネシウム(MgO)が1重量%〜3重量%の組成としている。特に酸化ビスマス(Bi)の量は少な過ぎるとガラスの軟化点が上がり、また、逆に多過ぎると結晶化温度が低下し良好な封着が得られないため、70重量%〜75重量%に設定している。また、上記の酸化ビスマス(Bi)を含む組成では、PDPを構成する構成要素の材料の軟化点あるいは溶融点よりも低い440℃程度の軟化点であるため、他の構成要素に影響を与えずに軟化させることが可能である。
【0038】
また、この封着部材21では、熱膨張係数を調整するとともに、ガラスの流動状態をコントロールするために、コージライト、フォルステライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化アルミニウム、石英ガラスなどのフィラーを適宜が使用してもよい。
【0039】
一方、図3(b)に示すように排気管22を背面パネル10に対して下向きに配置した状態で封着接合する場合には、図6(b)に示すような排気管22の封着接合部25の形状を下垂れのない形状とすることが重要である。このような、下垂れを抑制するためには、
第2の封着部材である封着部材31が、前面パネル2と背面パネル10とを封着する封着部材21より軟化点が高く、かつ、少なくとも所定の封着温度に達した時点で収縮過程を完了する特性を有するガラスフリットとなるように厳密な材料組成規定が必要となる。
【0040】
本発明の実施の形態では、第2の封着部材である封着部材31の組成を、酸化ビスマス(Bi)を67重量%〜73重量%、酸化亜鉛(ZnO)を8重量%〜11重量%、酸化硼素(B)を4重量%〜6重量%含み、残余の成分がコージライトとなる組成としている。封着部材31の組成を封着部材21の組成と異なるのは、酸化ビスマス(Bi)の割合を低下させ、酸化珪素(SiO)または酸化マグネシウム(MgO)を含ませず、さらには、フィラーとしてコージライトに限定している点である。
【0041】
特に、ガラス成分としては酸化ビスマス(Bi)を67重量%〜73重量%、酸化亜鉛(ZnO)を8重量%〜11重量%、酸化硼素(B)を4重量%〜6重量%を含ませたのみとすることにより、封着部材31のガラス軟化点を封着部材21の軟化点より約10℃高くし、さらに、490℃〜495℃の封着温度で収縮過程が完了する材料組成としている。また、フィラーとしてはコージライトのみの一成分として、上記の軟化点と収縮温度に影響を与えず、さらには背面パネルのガラス基板と排気管の熱膨張係数と合致するようにしている。
【0042】
図5は本発明の実施の形態におけるPDPの排気管22の封着接合部23の形状を示す断面図である。また、表1には、本発明の実施の形態において封着部材31の材料組成を変えたサンプルを作成し、そのサンプルの背面パネル10と排気管22との封着接合部23の形状、および排気管22を局部的に加熱溶融して封じ切った後の封着接合部23の欠陥状況を示す。特に封着接合部23の形状としては図5の角度θを用いて示している。また、これらサンプルを作成する際の封着温度は490℃としている。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、封着部材21の組成は、ガラスフリット成分としては、酸化ビスマス(Bi)が70重量%〜75重量%、酸化亜鉛酸化マグネシウム(MgO)が8重量%〜10重量%、酸化硼素(B)が4重量%〜6重量%、酸化アルミニウム(Al)6重量%〜8重量%、酸化珪素(SiO)または酸化マグネシウム(MgO)が1重量%〜3重量%とし、フィラーとしてコージライト、ムライト、ジルコンを同量混在させている。
【0045】
表1に示すように、サンプルNo1とNo2とは角度θが90°を超え、排気管22を背面パネル10に対して下向きに配置した状態で封着しても封着接合部23が下垂れのない、強度の強い接合が可能であることを示している。一方、No11のように、酸化ビスマス(Bi)が73重量%を超えると、ガラスフリットの軟化点温度が低下して角度θが小さくなる。その結果、封着接合部23の下垂れが発生し、さらには欠陥が発生する。また、逆に酸化ビスマス(Bi)を67重量%未満としたサンプルNo10では、角度θは大きくなるが、封着工程で収縮過程が早めに終了するために欠陥を発生することになる。したがって、ガラスフリットの組成として、酸化ビスマス(Bi)は67重量%から73重量%であることが望ましい。
【0046】
一方、酸化ビスマス(Bi)を上記の範囲内として他の成分割合を変えた場合の結果がサンプルNo3〜No9である。
【0047】
サンプルNo3とNo4には酸化アルミニウム(Al)、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)を添加した場合について示すが、いずれの材料を添加した場合でも角度θが小さくなり、目視で観察できる欠陥はないが応力集中する可能性があり望ましくないことがわかる。
【0048】
また、サンプルNo5では、フィラーとしてコージライトの代わりにムライトとジルコンを用いているが、この場合には、背面ガラス基板11あるいは排気管22との膨張係数が不整合となり欠陥を発生する。したがって、フィラーとしてはコージライトを単体で利用するのが好ましい。
【0049】
また、サンプルNo6〜No9では、酸化亜鉛(ZnO)と酸化硼素(B)の割合を変えた場合の結果を示し、酸化亜鉛(ZnO)は8重量%〜11重量%、酸化硼素(B)は4重量%〜6重量%添加することが好ましい。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDPでは、排気管22を背面パネル10に封着接合する封着部材31として、酸化ビスマスを67重量%〜73重量%、酸化亜鉛を8重量%〜11重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%含み、残余の成分がコージライトであるフリットガラスをタブレットに成型して用いている。このタブレットを用いて所定の封着温度で封着することにより、封着温度領域でタブレットが前面パネルと背面パネルとを封着接合する封着部材よりもゆっくりと溶融し、なおかつ、封着温度に達した時点で収縮過程を完了する。その結果、背面パネルに対して排気管を下向きで封着接合する場合でも、排気管の封着接合部で下垂れ現象がなく、背面パネルと接合面積を大きくできる最適な角度を有して接合封着ができる。
【0051】
したがって、接合面積が拡大しているために排気管封止の際の熱歪みによる応力が分散されるとともに、熱衝撃などにも耐える信頼性の高いPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、非鉛のガラスフリットから成る封着部材を用いた信頼性の高いPDPを実現し、環境に優しく大画面のディスプレイ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す主要部の斜視図
【図2】同PDPの前面パネルと背面パネルとを封着接合した状態を示す図
【図3】同PDPの封着手順を示す断面図
【図4】同PDPの背面パネルと排気管との封着に用いるタブレットを示す斜視図
【図5】同PDPの排気管の封着接合部の形状を示す断面図
【図6】PDPにおいて排気管を封着接合する際の背面パネルと排気管との位置関係を示す断面図
【符号の説明】
【0054】
1 PDP
2 前面パネル
3 前面ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極対
7 遮光層
8 誘電体層
9 保護層
10 背面パネル
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
21 (第1の)封着部材
31 (第2の)封着部材
22 排気管
23,25 封着接合部
24 排気用細口部
33 タブレット
32 開口部
41 排気管ヘッド
42 弾性手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルと背面パネルとを対向配置するとともに、前記前面パネルと前記背面パネルの周囲を第1の封着部材で封着して放電空間を形成し、前記放電空間を排気するとともに放電ガスを封入する排気管を前記前面パネルまたは前記背面パネルの少なくとも一方に第2の封着部材で封着接合したプラズマディスプレイパネルであって、
前記第2の封着部材の組成は、酸化ビスマスを67重量%〜73重量%、酸化亜鉛を8重量%〜11重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%含み、残余の成分がコージライトであるフリットガラスであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記第1の封着部材の組成は、酸化ビスマスを70重量%〜75重量%、酸化亜鉛を8重量%〜10重量%、酸化硼素を4重量%〜6重量%、酸化アルミニウムを6重量%〜8重量%、酸化珪素または酸化マグネシウムを1重量%〜3重量%含むフリットガラスであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−170197(P2009−170197A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5361(P2008−5361)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】