説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】PDPに係わり、明室コントラストと輝度の両方の特性を良好にすることができる技術を提供する。
【解決手段】本PDP10は、前面基板構造体11におけるセルの発光領域における上半分側の第1の領域31と下半分側の第2の領域32とにおいて、配置される電極の材料の違いによって、第1の領域31の可視光透過率(T1)を第2の領域32の可視光透過率(T2)よりも低くした構造である。第1の領域31に、金属による不透明電極21が配置され、第2の領域32に、ITO等による透明電極22が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に関し、特に、セル(表示セル)の構造、コントラストなどに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPにおいて、パネル(セル)に対する外光入射が前方へ反射することで、コントラストを低下させるという一般的な問題がある。
【0003】
上記外光入射の抑制などに関わる従来技術例として以下がある。
【0004】
ITO(Indium Tin Oxide)などによる透明電極を用いずに金属電極のみで表示電極を構成し、外光入射を遮断するものがある。
【0005】
あるいは、前面基板にフィルタを設けることで外光入射を抑制するものがある。
【0006】
また、特開2003−203575号公報(特許文献1)には、前面に設けるフィルタにおいて、パネル内部からの光を回折させる格子層と、その回折された光を透過または遮断するブラックマトリクス層とを有する旨が記載されている。なお、セルの上下の領域に応じて透過率を変えるといった記載は無い。
【0007】
また、特開2000−323049号公報(特許文献2)には、前面ガラス基板の内部(溝)にブラックマトリクスを設けることで外光反射を減らす旨が記載されている。なお、セルの上下の領域に応じて物理的に差を設けるといった記載は無い。
【0008】
また、特開2003−100222号公報(特許文献3)には、パネル外部からセルに入射した外光がセル内で反射されてなる反射光を、パネル垂直方向からみたとき、その反射光の強度が高い領域に、遮光体を設ける旨が記載されている。具体的には、バス電極をセル中心へ近付ける配置により外光反射を低減する旨が記載されている。
【特許文献1】特開2003−203575号公報
【特許文献2】特開2000−323049号公報
【特許文献3】特開2003−100222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術例のPDPは、問題点として以下がある。従来のPDP(パネル)は、黒を表示する際、即ちセルの非点灯による黒輝度の表示の際、パネルからの微弱な発光以外に、外光反射光(蛍光体拡散反射光)が存在する。この外光反射光は、パネル(セル)の内部に入射した外光が、反射率の高い白色系の蛍光体で反射(拡散反射)して、パネル表示面(前面)から出射する光である。蛍光体による拡散反射光は白色系である。この出射光(外光反射光)の輝度の高さにより、黒輝度が上昇して少し白っぽく浮き上がって見えてしまい、結果、コントラストを低下させていた。
【0010】
従来技術例として、前面基板側に配置された不透明な金属電極、例えばCr(クロム),Cu(銅),Ag(銀)等の材料によるバス電極、の面積を拡大することで、パネルへ入射する外光を抑制することができる。しかしながら、この構造では、拡大された電極面積により、セル当たりの開口率、言い換えれば輝度に寄与する発光領域の面積、が低下するため、表示発光、即ち蛍光体からの可視光発光、を効率良く前方(視線方向)へ取り出すことが困難となり、実用的に十分な輝度を確保することはできなくなる。
【0011】
また、前面基板の表面に設けるフィルタ等によって外光入射を減少させる構造の場合、セル内部(放電領域)からの表示発光も当該フィルタにより減衰し表示輝度が低下してしまうので、同様に、十分な輝度を確保し難い。
【0012】
いずれにせよ、従来技術例では、単にセルの開口面(発光領域)における遮光性(低い可視光透過率)の領域の面積を大きくすると、開口率が低下し表示輝度が低下することになる。
【0013】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、PDPに係わり、明室コントラスト(外光反射光の低減)と輝度(実用的に十分な表示輝度)との両方の特性を良好にすることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記目的を達成するために、本発明の代表的な実施の形態は、基板構造体内部の放電空間の区画により蛍光体が含まれるセル群などが形成されるPDPの技術であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0015】
PDPの外光入射に関して、室内における外光の多くは天井の蛍光灯などからの照明光であり、主に、垂直に立てた状態のパネルに対し斜め上方から入射することになる。これを考慮して以下の構造とする。
【0016】
本形態のPDPのセル構造においては、明室コントラスト向上等を目的として、前面基板構造体(表示面を持つ側)におけるセルの概略的な発光領域(開口面)における概略上半分側(上側)の第1の領域と概略下半分側(下側)の第2の領域とにおいて、少なくとも、配置される電極等の材料や形状の違いによって、第1の領域の可視光透過率(T1)を第2の領域の可視光透過率(T2)よりも低くした構造である(T1<T2)。本構成により、特に上記低い透過率(T1)により、パネル(セル)の斜め上方向等から特に第1の領域を通じてパネル(セル)の内部(放電領域)へ入射する外光を相対的に減少させ(即ち外光反射光低減)、結果、明室コントラストが向上される。更に、上記外光入射の減少(T1による)に加えて、特に上記高い透過率(T2>T1)により、パネル(セル)の内部(放電領域)から特に第2の領域を通じてパネル(セル)の外部前方へ出射する内光(蛍光体からの可視光発光)を相対的に増加させ、結果、表示輝度を十分に確保しつつ明室コントラストが向上される。上記内光の出射の増加は、前面基板構造体(第2の領域)での内光の透過による取り出しの効率の上昇(確保)により、上記第1の領域(T1)による輝度の低下が抑制され、基本発光効率が向上することに対応している。
【0017】
更に、上記セル(発光領域)における部分的な第1、第2の領域ごとに可視光透過率を高低に変える手段として以下がある。
【0018】
第1の領域に、入射に関して低い可視光透過率を持つ材料による第1の電極(不透明電極)を配置する。この第1の電極は、金属電極などである。第2の領域に、出射に関して高い可視光透過率を持つ、第2の電極(透明電極)を配置する。この第2の電極は、ITOなどによる。
【0019】
また、配置される電極は、例えば表示電極対(維持電極(X)、走査電極(Y))において、直線状のバス電極や、放電ギャップを形成する張り出し部などを有する。例えば、セルの開口面(発光領域)に重なる当該電極(バス電極または張り出し部)において、第1の領域では不透明電極のみとし、第2の領域では透明電極のみとする。
【0020】
また、セルを区画する隔壁として横方向に並行する隔壁部(横リブ)を有し、横リブの上、もしくはそこからセル内側(第1の領域内、第2の領域内)へずれた位置に対し、直線状にバス電極(金属電極)が配置され、バス電極からセル内側(第1の領域内、第2の領域内)へ張り出すように、それぞれ、第1の電極、第2の電極が配置される。
【0021】
また、第1の領域内の第1の電極、第2の領域内の第2の電極のそれぞれの張り出しの形状は、矩形やT字形、あるいは横方向に隣接するセルで共通の板状などである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。即ち、本発明の代表的な実施の形態によれば、明室コントラストを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、説明のため、DX:画面の横(水平)方向、DY:画面の縦(垂直)方向)、DZ:パネル厚さ方向(画面垂直方向)とする。
【0024】
図1〜図6等を用いて、本発明の実施の形態のPDPについて説明する。本実施の形態では、特に図1に示すように、前面基板構造体11において、セル(発光領域)に対し、縦方向(DY)で上側の第1の領域31に、低い可視光透過率を持つ不透明電極21(EA)が配置され、下側の第2の領域32に、高い可視光透過性率を持つ透明電極22(EB)が配置される構造である。
【0025】
<1>
図1において、実施の形態のPDP10のセル単位の断面(DZ−DY)を示している。実施の形態では、第1構造体11におけるセルの発光領域において、上半分側の第1の領域31内のみで、金属材料による不透明電極21(EA)が配置され、同セルにおける下半分側の第2の領域32のみで、ITO等の材料による透明電極22(EB)が配置された構造である。第1構造体11内で各電極(21,22)の他は、ガラス等の透過性の材料である。上側の不透明電極21は可視光透過率が低い金属によるので、第1の領域31の可視光透過率(T1)が低い。下側の不透明電極22は、可視光透過率が高いITO等によるので、第2の領域32の可視光透過率(T2)が高い。
【0026】
第1の領域31は、第1構造体11におけるセルの約上半分の領域であり、可視光透過率(T1)が低い領域である。第1の領域31では、可視光透過率を低める不透明電極21(EA)が配置されている。不透明電極21は、例えば表示電極対の維持電極(X)のうちの金属電極部である。
【0027】
第2の領域32は、第1構造体11におけるセルの約下半分の領域であり、可視光透過率(T2)が高い領域である。第2の領域32では、可視光透過率を高める透明電極22(EB)が配置されている。透明電極22は、例えば表示電極対の走査電極(Y)のうちの透明電極部である。
【0028】
aは、外光入射の例である。θは、外光aの入射角度(例えば35度)である。bは、外光aが蛍光体9で反射(拡散反射)されて前方へ出射される成分の光(拡散反射光)である。cは、セル領域のDY方向での中心線である。cを境に第1の領域31と第2の領域32を概略的に区分している。Sは当該セルを見る際の真正面の視線方向である(DZ方向と同様)。上側の第1の領域31では不透明電極21の作用により、aで例示するような外光入射が効率よく遮蔽される。一方、下側の第2の領域32では透明電極22の作用により、蛍光体9からの可視光発光が効率よく前方へ透過により取り出される。これにより、本セルにおける明室コントラスト値は高くなる。蛍光体9で拡散反射した成分のうちの一部の光は、蛍光体9の側面部(隔壁8側面に形成されている部分)で更に散乱反射され、前方へ出射されるものを有する。
【0029】
金属電極である不透明電極21(EA)は、Cu,Cr,Ag,Au,Alなどの材料あるいはそれらの積層体から構成される。不透明電極21は、外光がセル内へ入射するのを効率よく遮蔽するために、十分に低い可視光透過率を持たせる。不透明電極21は、例えば、Cr/Cu/Crの三層構造とする。
【0030】
透明電極22(EB)は、ITOやSiOなどの材料から構成される。透明電極22(EB)は、セルの内光(蛍光体9からの可視光発光)を前方へ効率よく透過させるために、十分に高い可視光透過率を持たせる。例えば透明電極22をITOとした場合、導電性を持ちつつ、光透過率としては約90%以上を有する。
【0031】
第1構造体(前面基板構造体)11において、主にガラス基板(前面基板)1から成り、第1構造体11の内部に不透明電極21及び透明電極22などが形成されている。第2構造体(背面基板構造体)12において、主にガラス基板(背面基板)5から成り、アドレス電極6、隔壁8、蛍光体9などが形成されている。放電空間13は、第1構造体11と第2構造体12の間の放電ガスが封入された領域であり、隔壁8により区画される。
【0032】
なお、図1で、第1構造体11における隔壁8の上部の領域については、第1の領域31、第2の領域32には含めていない。隔壁8は例えば半透明性あるいは不透明性である。第1構造体11の各電極(21,22)は、隔壁8の上部に重なって配置されても構わない。
【0033】
<2>
図2において、図1の断面構造に対応して、本PDP10の基本的な構造の一例(交流駆動・面放電型、三電極型、ボックス状隔壁)を示している。Cr,Cg,Cbは、R(赤),G(緑),B(青)の各色のセルに対応付けられる領域(特に発光領域)を示す。PDP10は、前面側(表示面を持つ側)の第1構造体11と背面側の第2構造体12とを組み合わせて構成される。
【0034】
第1構造体11において、平面的な前面基板(ガラス基板)1上には、表示電極対を構成する維持電極(X)と走査電極(Y)が、横方向(DX)に並行して設けられている。この表示電極対(X,Y)としては、不透明電極21と透明電極22を有する。例えば、X側が不透明電極21、Y側が透明電極22に対応付けられる。
【0035】
前面基板1上、表示電極群を覆うように誘電体層3が設けられ、更にその表面に保護層4が設けられている。誘電体層3は、SiOなどの透過性の材料で構成される。保護層4は、MgOなどの透過性の材料で構成される。
【0036】
第2構造体11において、平面的な背面基板(ガラス基板)5上には、アドレス電極6群が、縦方向(DY)に並行して設けられている。これらは例えば誘電体層7により覆われる。誘電体層7上には、放電空間13でセル群を区画する隔壁(リブ)8が設けられている。例えばボックス状の隔壁8として、縦方向(DY)に並行する隔壁部である縦リブ8Aと、横方向(DX)に並行する隔壁部である横リブ8Bとが設けられている。縦リブ8Aと横リブ8Bにより囲まれる空間は、セル(放電領域)に対応付けられる。隔壁8間の領域、即ち縦リブ8A及び横リブ8Bの側面及び誘電体層7上面には、各色用の蛍光体9(9r,9g,9b)が表示列ごとに形成されている。蛍光体9(9r,9g,9b)は、セルの放電(表示放電)時の真空紫外線により励起されてR,G,Bの所定の色の可視光を発生する。放電空間13の放電ガスは、例えばXe−Ne等の混合ガスである。
【0037】
セルは、各電極(表示電極対(X,Y)とアドレス電極6)が交差する領域、及び隔壁8などにより区画される領域、に対応付けられる単位である。なお、セルにおける放電領域と称している領域は、放電空間13(放電ガスが封入された空間)における前後の基板構造体面及び隔壁8により囲まれ蛍光体9が形成され放電が行われる空間に対応付けられる。また、セルにおける発光領域と称している領域は、放電領域に対応して、前面基板構造体11またはその表示面における主な発光が取り出される領域に対応付けられる。放電領域は、放電を遮る隔壁8などが存在する場合にはその分小さくなる。発光領域は、光透過を遮る電極部などが存在する場合にはその分小さくなる(開口率の低下)。
【0038】
製造工程としては、不透明電極21及びアドレス電極6は、例えば、ガラス基板1上に、Cr,Cu等の材料を、フォトリソ+エッチング、またはスクリーン印刷などの技術を用いて、所定のパターンで形成される。透明電極22は、例えば、ガラス基板1上に、ITO等の材料を、蒸着法、スパッタ法、フォトリソ+エッチング、またはスクリーン印刷などの技術を用いて、所定のパターンで形成される。誘電体層3(誘電体層7)は、例えば低融点ガラス材料などからなるペーストをスクリーン印刷などによって塗布し、焼成することで形成される。あるいは、CVD法などの蒸着法で成膜される。保護層4は、誘電体層3の表面上に、蒸着法やスパッタ法などによって形成される。隔壁8は、誘電体層7上、サンドブラスト法などによって形成される。蛍光体9は、例えば、各色の蛍光体ペーストを、スクリーン印刷やディスペンサなどの方法によって、隔壁8間の領域に塗布し、焼成することで形成される。
【0039】
<3>
図3において、図1,図2のような実施の形態のPDP10の基本的構成における詳しい平面構造例(DX−DY)(構成1とする)を示している。セル50(概略的に破線の枠で示す)における電極構造例を示し、蛍光体9等は図示省略している。本構成1では、表示電極対(X,Y)として、金属材料による直線状のバス電極(金属電極)と、それに電気的に接続される張り出し部(突出部)とを有する。
【0040】
バス電極(21b,22b)は、DX方向の横リブ8Bの上(頂上面)に対し直線状に配置されており、端部は駆動回路側と接続される。バス電極(21b,22b)は、透明電極よりも配線抵抗が低い。
【0041】
張り出し部(EA,EB)は、バス電極(21b,22b)と電気的に接続され、セル中心(アドレス電極6に重なる位置)において、バス電極(21b,22b)からセル内側方向(DY)へ張り出している。張り出しの形は例えば矩形(I字型)である。第1の領域31内に、X側の不透明電極21である張り出し部EAが配置され、第2の領域32内に、Y側の透明電極22である張り出し部EBが配置されている。なお張り出し部(EA,EB)に関しバス電極(21b,22b)に重なる直線状の部分については図示省略している。張り出し部(EA,EB)は、それら隣接する対の先端同士の間隔で放電ギャップ(長さ:G)を構成する。放電ギャップの長さGは一定に設計され、セル中心付近に配置される。当該放電ギャップでは、表示放電(維持放電)などの放電が行われる。
【0042】
セル50において、縦方向(DY)の長さを概略LYとし、横方向(DX)の長さを概略LXとする。アドレス電極6の幅をLa、各バス電極(21b,22b)の幅をLb、リブ8の頂上面の幅をLr1、底面の幅をLr2とする。張り出し部(EA,EB)の張り出しの長さをL1,L2とし、幅をLA,LBとする。
【0043】
発光領域の上下の各領域(31,32)に含まれる電極部分、即ち主に張り出し部(EA,EB)の大きさ(L1,L2,LA,LB)を変えることで、当該領域の可視光透過率(T1,T2)を適切な範囲に設計することができる。
【0044】
なお、図3でセルの発光領域(開口面)とは、例えば、隔壁8(半透明性または不透明性)を除いて考え、隔壁8の頂上面により四方を囲まれる矩形である。なお、下側の第2の領域32に近接するリブ8(横リブ8B)に対しては、配線抵抗の確保などのために、金属によるバス電極22bを配置している。
【0045】
<4>
更に、図4において、図3(構成1)の断面構造例を示している。リブ8(横リブ8B)の上部に対し電極部を重ねて配置しているものである。例えばセルの上側の第1の領域31に対して維持電極(X)、下側の第2の領域32に対して走査電極(Y)が配置され、X側に不透明電極21(EA)、Y側に透明電極22(EB)が配置される場合である。横リブ8Bの頂上面の領域r1に対して、バス電極(21b,22b)と、それに重なる張り出し部(EA,EB)の一部とが配置される。不透明電極21(EA)と透明電極22(EB)が配置される領域r2は、図1と同様の領域である。
【0046】
製造工程では、例えば、ガラス基板1上、張り出し部(EA,EB)となる不透明電極21(EA)と透明電極22(EB)がそれぞれ形成される。それらの上に、上記横リブ8B上部の位置に合わせて、金属のバス電極(21b,22b)が形成される。そして、それらの電極を覆うように誘電体層3及び保護層4が形成される。
【0047】
<明室コントラスト>
一般的に、ディスプレイにおけるコントラスト(コントラスト比)は、暗い部分の輝度(黒輝度)に対する明るい部分の輝度(白輝度)の比率のことである。特に、明室コントラストは、明室(例えば照度が100〜300ルクス程度)環境下での条件を考慮したコントラストであり、即ち外光反射の考慮も含めた、黒輝度に対する白輝度の比率である。
【0048】
本PDP10に係わり、明室コントラストは、一般的な定義に従って例えば下記の式(1)で表すことができる。C:明室コントラスト、A:白輝度(PDP発光)[cd/m]、B:黒輝度(PDP背景発光)[cd/m]、R:外光反射輝度(外光輝度×反射率)[cd/m]、とする。
【0049】
C=(A+R)/(B+R) ・・・(1)
ここで、外光反射(R)の定義は、JEITAによる測定基準に従い、垂直に立てたパネル(PDP)の垂線(DZ)に対して入射角度(θ)が約35度の光の拡散反射、とする。なお、PDPの観賞環境として、多くの場合、垂直に立てたパネルの画面に対し斜め上方向から室内照明が外光として入射する。その入射角度(θ)は例えば約35度と考えることができる。また、PDP10のセルに入射した外光は、蛍光体9で拡散反射され、前方へ出射する(外光反射光)。
【0050】
<明室コントラスト計算>
実施の形態のセル構造(特に図3の構成1)において、明室コントラスト値を以下のように計算した。条件としては以下である。単位は[μm]である。セルのサイズ:横(LX)270×縦(LY)530。縦リブ8A:トップ(幅Lr1)が60。横リブ8B:トップ(幅Lr1)が50、ボトム(幅Lr2)が100、高さ(DZ)が130。各バス電極(21b,22b)の幅Lb:50。各張り出し部(EA,EB)の大きさ(上下対称):横(LA,LB)80×縦(L1,L2)190。放電ギャップ長さ(G):100。
【0051】
外光反射(R)の条件は以下である。JEITAの測定基準により、パネルの垂線(DZ方向)からθ=35°で上方からの入射光とする。なお以下の要素については省略ないし概略的に試算して考える。リブ8を透過してセル内に入射する外光を無視する(即ちリブ8の光透過率を十分低いものとする)。また、外光反射(R)(蛍光体9での拡散反射を含む)については、所定のセル構造の拡散反射率にならって概略的に試算する。前面基板構造体11での反射や透過については微細なので省略する。また、セルの下側のリブ8(横リブ8B)の斜め部分(側面部)での反射については、平面として試算する。概略的に、第1構造体11の反射は、4〜45%とする。また、第2構造体12の反射は、70%とする。
【0052】
明室コントラスト(C)は以下のように計算される。計算式は、前記式(1)を使用する。対象とするセル構造例として、前述の図3のように、表示電極対(X,Y)として、隔壁8上のバス電極(21b,22b)と、セル内側への矩形の張り出し部(EA,EB)とを有する。第1の領域31のEAが不透明電極21(Cr,Cu等)、第2の領域32のEBが透明電極22(ITO)である。
【0053】
また、本実施の形態(構成1)の明室コントラスト試算に対する比較例(従来技術)として図5(a),(b)のような構造を有する。このような従来技術では、いずれも、DY方向の上下で電極の材料や形状等は対称(同じ)である。構成1と異なる箇所のみ説明する。
【0054】
図5(a)における第1の構造は、セルの表示電極対(X,Y)の張り出し部が、上下の領域(31,32)で共にITOによる透明電極(EB)である。
【0055】
図5(b)における第2の構造は、セルの表示電極対(X,Y)の張り出し部が、上下の領域(31,32)で共に金属による不透明電極(EA)である。
【0056】
図6において、上記試算の結果のグラフ(開口面積、輝度、明室コントラスト)を示している。ひし形の点は、概略的な輝度、四角の点は、明室コントラスト値(C)である。左側の2つの点は、(1):図5(a)の第1の構造、右側の2つの点は、(2):図5(b)の第2の構造、中央の2つの点は、(3):第3の構造として本実施の形態(図3の構成1)のものである。
【0057】
セルの開口面積[μm](リブ8及び不透明電極21を除いた面積)については、順に、(1)第1の構造では100800、(2)第2の構造では70400、(3)第3の構造では85600である。当該面積は、当然ながら(1)が一番大きい。
【0058】
反射面積[μm]については、同様の順に、(1)80850、(2)58050、(3)65650である。
【0059】
概略的な輝度(白輝度A)については、順に、(1)1000、(2)698、(3)849である。なお当該輝度については、(1)第1の構造における輝度を概略的に1000として、開口面積をもとに計算した。当該輝度は、(1),(3),(2)の順で大きくなる。
【0060】
外光反射(R)については、順に、(1)9.5、(2)6.9、(3)7.8である。なお、外光反射については、概略150ルクスでパネルの拡散反射を概略20%として計算した。パネルの拡散反射は、第1構造体11側で4〜4.5%、第2構造体12側で70%とした。当該外光反射は、(1),(3),(2)の順で小さくなる。
【0061】
背景発光(黒輝度B)については、順に、(1)0.1、(2)0.07、(3)0.08である。当該背景発光は、(1),(3),(2)の順で小さくなる。
【0062】
明室コントラスト(C)は、順に、(1)104.6、(2)101.8、(3)109.3である。即ち、明室コントラスト(C)は、(2),(1),(3)の順で大きくなる。
【0063】
図6の(3)のように、本実施の形態(構成1)、即ちセルの上側の第1の領域31の電極のみで不透明電極21(EA)として可視光透過率(T1)を低くした構造により、表示輝度を確保しつつ明室コントラストが向上することがわかる。(3)の実施の形態(構成1)のPDP10では、輝度に関しては、(1)の第1の構造よりも少し低くなるが(不透明電極21による遮蔽作用による)、明室コントラスト(C)に関しては、他の構造よりも大きくなる。(1)の第1の構造では、上側の透明電極(EB)の可視光透過率が高いので蛍光体発光の取り出し効率が高く輝度が高くなるが、外光反射が大きくなるので明室コントラストは低下する。一方、(3)のPDP10では、上側の不透明電極21(EA)の可視光透過率が低い分、蛍光体9からの可視光発光の取り出し効率が少し落ち輝度が少し低くなるが、外光反射(R)が効率よく遮蔽され、かつ、下側の透明電極22(EB)の可視光透過率が高い分、蛍光体9からの可視光発光の取り出し効率が高く輝度が確保され、よって明室コントラスト(C)が向上する。
【0064】
以上のように、本実施の形態のPDP10における上記(3)のような構成とすることで、明室コントラストを高くすることができ、且つ、輝度も実用的に十分に確保することができる。本実施の形態では、それら明室コントラストと輝度の両方の特性のバランスをとることができ、配置される電極などの設計を調整することで、総合的に良好な特性、特に明室コントラストを重視した最適な特性が得られる。例えば図6の(3)のように明室コントラスト値がピークとなるような特性に選択される。また、輝度を重視して高くしたい場合には、更に第2の領域32の透過率(T2)を上げるように選択、調整すればよい。
【0065】
<第1の変形例>
実施の形態において、上記構成1の他にも以下のような各種の変形例が可能であり、同様の効果を実現できる。
【0066】
図7において、第1の変形例(構成2)を示している。これは、前記図3の平面構造に対し、バス電極(21b,22b)の位置を、リブ8(横リブ8B)上ではなく、セル内側にずらした構造である。図3に対し、放電ギャップ長さ(G)は同じであり、張り出し部(EA,EB)の長さが少し短くなっている。上側の第1の領域31では、不透明電極21(EA)だけでなく、金属のバス電極21bの存在により、可視光透過率(T1)が低くなる。下側の第2の領域32では、透明電極22(EB)の存在により、可視光透過率(T2)が高くなる。これにより、明室コントラストは高くなる。
【0067】
<第2の変形例>
図8において、第2の変形例(構成3)を示している。これは、前記図3の平面構造に対し、張り出し部(EA,EB)の形状を、矩形ではなくT字形とした構造である。図3に対し、放電ギャップ長さ(G)は同じであり、張り出し部(EA,EB)の張り出しの長さ(L1,L2)が同じで、T字の先端部の幅(LA’,LB’)が例えばセル開口面と同じ程度に広くなっている。上側の第1の領域31では、不透明電極21である張り出し部(EA)の大きさにより、可視光透過率(T1)が低くなる。下側の第2の領域32では、透明電極22である張り出し部(EB)の存在により、可視光透過率(T2)が高くなる。これにより、明室コントラストは高くなる。張り出し部(EA,EB)の面積を適宜変えることで明室コントラストなどを調整することができる。
【0068】
またその他、張り出し部(EA,EB)の先端を隣接セルで板状に共通化してなるような梯子形状(リブ上のバス電極とセル内側の板状の張り出し部とをセル毎に接続してなるような梯子形状)なども可能である。
【0069】
<第3の変形例>
図9において、第3の変形例(構成4)を示している。これは、前記図3や図7の構造に対し、セル内側への張り出し部(EA,EB)を、隣接セル(表示ライン)で共通の単純な板状(帯状)とした構造である。例えば、バス電極(21b,22b)部分を、図7同様にリブ8上よりもセル内側にずらして配置し、透明、不透明のそれぞれの張り出し部(EA,EB)を接続する構造である。上側の第1の領域31では、不透明電極21である張り出し部(EA)の大きさにより、可視光透過率(T1)が低くなる。下側の第2の領域32では、透明電極22である張り出し部(EB)の存在により、可視光透過率(T2)が高くなる。これにより、明室コントラストは高くなる。
【0070】
<第4の変形例>
図10において、第4の変形例(構成5)の断面構造を示している。これは、前記図1等の構造に対し、第1構造体11(ガラス基板1)の最表面において、第1の領域31の不透明電極21の配置領域に対応して、低い可視光透過率を持つフィルタ(不透明層)90を追加配置した構造である。第2の領域32に対しては、フィルタ90は配置されない。フィルタ90は例えばDX方向での帯状とし、本パネルの表示領域では、ストライプ状の配置となる。第1の領域31では、不透明電極21に加えてフィルタ90の存在により、可視光透過率(T1)がさらに低くなる。また、第1の領域31において、フィルタ90を設けることで、その代わりに、不透明電極21の大きさを縮小あるいは無くして、所定の可視光透過率を持つように設計してもよい。フィルタ90はガラス基板1面上に貼り付ける形や、ガラス基板1面内部に埋め込まれる形などとしてもよい。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、PDP装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態のPDPのセル単位の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のPDPの基本的な構造の一例を分解斜視で示す図である。
【図3】本発明の実施の形態のPDPのセル単位の平面構造の例(構成1)を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態のPDP(構成1)におけるセル単位の断面構造の例を示す図である。
【図5】(a),(b)は、本発明の実施の形態のPDP(構成1)に対する比較例(従来技術)の平面構造を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態のPDP(構成1)における明室コントラストなどの特性の計算の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態のPDPの変形例として、セル単位の平面構造の例(構成2)を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態のPDPの変形例として、セル単位の平面構造の例(構成3)を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態のPDPの変形例として、セル単位の平面構造の例(構成4)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態のPDPの変形例として、セル単位の断面構造の例(構成5)を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1…前面基板(ガラス基板)、3…誘電体層、4…保護層、5…背面基板(ガラス基板)、6…アドレス電極、7…誘電体層、8,8A,8B…隔壁、9(9r,9g,9b)…蛍光体、10…PDP、11…前面基板構造体(第1構造体)、12…背面基板構造体(第2構造体)、13…放電空間、21…不透明電極(第1の電極)、22…透明電極(第2の電極)、21b,22b…バス電極、31…第1の領域、32…第2の領域、50…セル、90…フィルタ(不透明層)、EA…不透明電極(張り出し部)、EB…透明電極(張り出し部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが封入された放電空間、及び蛍光体が含まれた表示セルが形成されるプラズマディスプレイパネルであって、
前記プラズマディスプレイパネルを構成する前面基板構造体における表示セルの発光領域における上半分側の第1の領域と下半分側の第2の領域とにおいて、配置される電極の材料の違いによって、前記第1の領域の可視光透過率を前記第2の領域の可視光透過率よりも低くした構造であること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第1の領域では、低い可視光透過率の材料による第1の電極が配置され、
前記第2の領域では、高い可視光透過率の材料による第2の電極が配置されていること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記表示セルの発光領域における前記第1の領域内において、電極としては前記第1の電極のみが配置され、その他は高い可視光透過性の部材であり、
前記表示セルの発光領域における前記第2の領域内において、電極としては前記第2の電極のみが配置され、その他は高い可視光透過性の部材であり、
前記第1と第2の電極の先端により放電ギャップが形成されていること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記前面基板構造体に、前記表示セルでの表示放電を発生させるための表示電極対として、横方向に並行する維持電極と走査電極の対を有し、
前記維持電極は、前記第1の電極を含んで成り、前記走査電極は、前記第2の電極を含んで成ること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電空間で前記表示セルを区画する隔壁として、縦方向に並行する隔壁部及び横方向に並行する隔壁部を有し、
前記横方向の隔壁部の頂上面の上に対し、横方向に直線状にバス電極が配置され、
前記第1の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第1の電極が配置され、
前記第2の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第2の電極が配置され、
前記第1と第2の電極の先端により放電ギャップが形成されていること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電空間で前記表示セルを区画する隔壁として、縦方向に並行する隔壁部及び横方向に並行する隔壁部を有し、
前記横方向の隔壁部の頂上面の上から前記表示セルの内側へずれた位置に対し、横方向に直線状にバス電極が配置され、
前記第1の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第1の電極が配置され、
前記第2の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第2の電極が配置され、
前記第1と第2の電極の先端により放電ギャップが形成されていること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第1の領域内の前記第1の電極の前記張り出しの形状は、当該第1の領域の一部を占める矩形もしくはT字形であり、
前記第2の領域内の前記第2の電極の前記張り出しの形状は、当該第2の領域の一部を占める矩形もしくはT字形であり、
前記第1と第2の電極の形状は対称であること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電空間で前記表示セルを区画する隔壁として、縦方向に並行する隔壁部及び横方向に並行する隔壁部を有し、
前記横方向の隔壁部の頂上面の上もしくはそこから前記表示セルの内側へずれた位置に対し、横方向に直線状にバス電極が配置され、
前記第1の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第1の電極が配置され、
前記第2の領域では、前記バス電極から、前記表示セルの内側へ張り出すように、前記第2の電極が配置され、
前記第1と第2の電極の先端により放電ギャップが形成され、
前記第1及び第2の電極は、それぞれ、横方向に隣接する表示セルで共通の板状であること、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
請求項2記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記前面基板構造体における表示面に、前記第1の電極と重なる領域に、低い可視光透過率を持つ層が配置され、前記第2の電極と重なる領域には当該層が配置されていないこと、を特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−301881(P2009−301881A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155354(P2008−155354)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】