説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】本発明は、バス電極の放電空間側の面の反射率を増加させ、発光効率の高いプラズマディスプレイパネルを提供することが可能となる。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明のプラズマディスプレイパネルは、ガラス基板上に電極および誘電体層を形成した前面板と、基板上に電極、隔壁および蛍光体層を形成した背面板とを、対向配置して形成したプラズマディスプレイパネルであって、前記前面板に形成した前記電極は、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層と、Ag成分を含む第2電極層とを含む複数層の構造を有しており、前記第1電極層のガラス成分の軟化点が、520℃以上580℃以下であり、かつ前記第2電極層にガラス成分が含まれていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、低コスト化が求められている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にNe−Xeの放電ガスが53000Pa〜80000Paの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせ、カラー画像表示を実現している。
【0005】
ここで、前面板のバス電極は、高抵抗である透明電極の電気伝導性を補助するために設けられるものであり、銀(Ag)のような電気抵抗値の低い導電性材料を用いて形成されるが、Agのような低抵抗の材料を用いて形成した導電層は略白色であり、この略白色の電極層によって外光反射が起こり、コントラストが悪化する。このため、バス電極を、黒色顔料を含む材料を用いて形成した黒色の第1電極層と低抵抗の材料を用いて形成した略白色の第2電極層とにより構成し、透明電極と略白色の第2電極層との間に略黒色の第1電極層が配置されるようにすることによって外光反射を抑制しコントラストが悪化することを防止している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−273578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように構成された一般的なPDPでは、バス電極の表示面側の面は反射率が低く黒色表面となることから、外来光の反射を防止し、コントラストを向上することができる。また、バス電極の背面板側すなわち放電空間側の面は白色表面となることから、蛍光体で発光した光の内のバス電極に向う光は、白色の表面で反射されて、開口部から放射され、表示光として用いられている。
【0008】
本発明は、バス電極の放電空間側の面の反射率を増加させ、発光効率の高いPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明のPDPは、ガラス基板上に電極および誘電体層を形成した前面板と、基板上に電極、隔壁および蛍光体層を形成した背面板とを、対向配置して形成したPDPであって、前面板に形成した電極は、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層と、Ag成分を含む第2電極層とを含む複数層の構造を有しており、第1電極層のガラス成分の軟化点が、520℃以上580℃以下であり、かつ第2電極層にガラス成分が含まれていないことを特徴とする。ここで、第1電極層のガラス成分の軟化点が、530℃以上570℃以下であることが望ましい。また、第1電極層のガラス成分および顔料成分が、75重量%以上98重量%以下であることが望ましい。
【0010】
そして、本発明のPDPの製造方法は、ガラス基板上に電極および誘電体層を形成する前面板と、基板上に電極、隔壁および蛍光体層を形成する背面板とを、対向配置して形成するPDPの製造方法であって、前面板に形成した電極は、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層と、Ag成分を含む第2電極層とを含む複数層の構造を有しており、第1電極層のガラス成分の軟化点が、520℃以上580℃以下であり、かつ第2電極層にガラス成分が含まれておらず、第1電極層と第2電極層とを同一の工程にて焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バス電極の放電空間側の面の反射率を増加させ、発光効率の高いPDPを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同PDPの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図である。本実施の形態のPDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが53000Pa〜80000Paの圧力で封入されている。
【0015】
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層とも言う)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウムなどからなる保護層9が形成されている。
【0016】
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4および維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝にアドレス電極12毎に、紫外線によって赤色、青色および緑色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、青色、緑色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態におけるPDPの構成を示す断面図である。前面板2は、前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6とブラックストライプ7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれ酸化インジウム(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成されたバス電極4b、5bとにより構成されている。バス電極4b、5bは黒色の第1電極層41b、51bと白色の第2電極層42b、52bとで構成されている。
【0018】
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aとバス電極4b、5bとブラックストライプ7を覆って設け、さらに誘電体層8上に保護層9を形成している。
【0019】
背面板10は、背面ガラス基板11上に、ストライプ状のアドレス電極12と、アドレス電極12を覆う下地誘電体層13と、下地誘電体層13上に形成された隔壁14で区切られた溝に、発光する蛍光体層15とで構成されている。前面板2と背面板10とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間16にNe−Xeの放電ガスが53000Pa〜80000Paの圧力で封入されている。
【0020】
ここで、従来技術における課題について説明する。従来技術におけるバス電極は、次のようにして形成される。まず、透明電極を形成した前面ガラス基板にガラス成分と黒色顔料等を含んだ感光性ペーストを塗布した後、乾燥して第1感光性組成物層を形成する。その後、ガラス成分とAgのような低抵抗の材料を含んだ略白色の感光性ペーストを第1感光性組成物層に塗布し乾燥して第2感光性組成物層を形成する。
【0021】
次に、露光マスクを用いて、バス電極に相当するパターンに露光する。そして、現像して未露光部を除去した後、焼成することにより固化され、第1電極層および第2電極層が形成される。
【0022】
しかし、このように形成されたバス電極は、第1電極層および第2電極層が同時に焼成されることから、第1電極層に含まれるガラスが溶けて軟化する際に、第2電極層が第1電極層に沈み込み、第1電極層のガラスと第2電極層のガラスが混ざり、さらに、第1電極層の黒色顔料が第1電極層のガラスと共に第2電極層に染み出し、第2電極層の表面に黒澄みを生じる。白色の第2電極層の表面に黒澄みを生じることで、反射率が低下し、蛍光体からの光がバス電極により遮断、吸収されてしまう割合が大きくなり発光効率が低下するという問題点が生じる。
【0023】
これに対し、本発明の実施形態におけるバス電極4b、5bは、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層41b、51bと、Ag成分を含む第2電極層42b、52bとを含む複数層の構造を有しており、第1電極層41b、51bのガラス成分の軟化点が、520℃以上580℃以下であり、かつ第2電極層42b、52bにガラス成分が含まれていないことを特徴とする。ここで、第1電極層41b、51bのガラス成分の軟化点が、530℃以上570℃以下であることが望ましい。また、第1電極層41b、51bのガラス成分および顔料成分が、75重量%以上98重量%以下であることが望ましい。
【0024】
このような構成とすることによって、次の作用効果が生じる。第2電極層42b、52bにガラス成分を含んでいないことによって、従来のPDPの場合に比べてAg粒子間にガラス成分が存在しないことから第2電極層42b、52bはAg粒子間に隙間が少ない膜となる。そして第1電極層41b、51bのガラスと第2電極層42b、52bのガラスが混じり合わないことから第1電極層41b、51bからガラスとともに顔料が染み出す現象が抑えられる。
【0025】
また、第1電極層41b、51bのガラス軟化点が520℃以上580℃以下であることから、バス電極4b、5bの焼成中に第1電極層41b、51bのガラスが溶けて軟化し流動性を持つことになる。このため第1電極層41b、51bに積層された第2電極層42b、52bのAg粒子が動きやすくなり、Ag粒子の焼結が促進される。結果、第2電極層42b、52bはAg粒子間に隙間がない緻密な膜となり、第2電極層42b、52bの表面の反射率を向上させることができる。
【0026】
ここで、第1電極層のガラス軟化点を520℃より低くすると、第1電極層のガラスの流動性が強くなりすぎ、黒色顔料がガラスとともに第2電極層の表面に染み出してしまい、第2電極層の表面を黒澄ませる結果となる。また、第1電極層のガラス軟化点を580℃より高くすると、第1電極層のガラスの流動性が弱まり、第2電極層のAg粒子の焼結を阻害し、Ag粒子間の隙間を埋めることができず緻密な膜を形成できない。よって、第1電極層41b、51bのガラス軟化点は上記の範囲とすることが好ましい。
【0027】
さらに、第1電極層41b、51bのガラス軟化点は、530℃以上570℃以下であることが望ましい。第1電極層41b、51bのガラス軟化点を530℃以上とすることで、必要以上のガラスの軟化を抑制して、ガラス生成時に取り込まれていた物質が活性化(ガス化)されることを抑制し、各層の界面に気泡が発生する可能性を低減することができる。また、第1電極層41b、51bのガラス軟化点を570℃以下とすることで、バス電極層4b、5bと透明電極4a、5aとの密着性を十分に確保することができ、焼成後にバス電極が剥がれる可能性を低減することができる。
【0028】
そして、第1電極層41b、51bのガラス成分および顔料成分が、75重量%以上98重量%以下である。これによって、透明電極4a、5aとの密着性を十分に確保することができ、第1電極層の余剰となったガラス成分および顔料成分が第2電極層の表面に染み出し第2電極層の表面を黒澄ませる現象を抑制することができる。ここで第1電極層のガラス成分および顔料成分が75重量%よりも低い場合、透明電極4a、5aとの密着を十分に確保することができずに、焼成後にバス電極が剥がれるという不具合を生じる。また、98重量%よりも大きい場合、焼成時に第2電極層が第1電極層に沈み込む量が増え、押し出されたガラス成分および顔料成分が第2電極層の表面に染み出し第2電極層の表面を黒澄ませるという不具合を生じる。
【0029】
すなわち、本発明の実施形態では、蛍光体層15で発光した光の内、バス電極に向う光(図2において矢印20で示す)は、第2電極層42b、52bの表面が黒澄みを生じることがない高反射率となるため、バス電極で吸収されることなく反射され、開口部から放射されるようになるので、蛍光体層15からの光が無駄なく表示に利用され、発光効率を向上させる効果が得られる。
【0030】
(本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法について)
次に、本発明の実施の形態におけるPDP1の製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とを形成する。透明電極4a、5aは薄膜プロセス等によって成膜され、フォトリソグラフィ法等によってパターニングし、形成される。透明電極4a、5aを形成した前面ガラス基板3上に黒色材料を含んだ感光性ペースト(以下、単に黒色ペーストと称する)を印刷法等によって塗布した後、乾燥して第1感光性組成物層を形成する。
【0031】
ここで、黒色ペーストとは、銀(Ag)粒子が5重量%〜20重量%と、黒色顔料としてコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)等の黒色金属微粒子、金属酸化物、金属複合酸化物と、少なくとも酸化ビスマス(Bi23)を含むガラス成分が30重量%〜50重量%と、有機成分として、感光性モノマー、感光性オリゴマーもしくはポリマーあるいは場合により高分子バインダおよび光重合開始剤、増感剤、溶剤などを30重量%〜65重量%よりなる感光性ペーストである。
【0032】
次に低抵抗の材料を含んだ略白色の感光性ペースト(以下、単に白色ペーストと称する)を印刷法などによって第1感光性組成物層上に塗布・乾燥し、第2感光性組成物層を形成する。ここで、白色ペーストは、銀(Ag)粒子が60重量%〜90重量%と、有機成分として、感光性モノマー、感光性オリゴマーもしくはポリマーあるいは場合により高分子バインダおよび光重合開始剤、増感剤、溶剤などを10重量%〜40重量%よりなる感光性ペーストである。
【0033】
次に、バス電極4b、5bに相当するパターンを有したマスクで露光する工程と、未露光部を除去する現像工程を経て、バス電極4b、5bに相当する現像パターンを形成する。そして、次工程である焼成工程で現像膜中の有機成分が熱分解されて除去される。焼成温度は使用する塩基性無機粉末の種類によっても異なるが、最高温度で500〜650℃の範囲が採用される。本発明の実施形態では、第1電極層41b、51bと第2電極層42b、52bとが同一の工程において焼成処理される。
【0034】
以上のような工程によって、黒色の第1電極層41b、51bおよび白色の第2電極層42b、52bが形成される。これによって、第1電極層41b、51bと第2電極層42b、52bとの間に気泡が発生する品質不具合を生じることなく、さらに、第2電極層42b、52bと透明電極層の密着が不足し剥がれる不具合を生じることなく、かつ第2電極層42b、52bが緻密な膜となることで表面に黒澄みを生じることなく高反射率となる。
【0035】
また遮光層7は、黒色の第1電極層41b、51bと同様に黒色材料を含むペーストをスクリーン印刷にて塗布した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
【0036】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体ガラス層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。
【0037】
その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層9を真空蒸着法により形成する。以上の工程により、前面ガラス基板3上に所定の構成部材が形成されて前面板2が完成する。
【0038】
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成し、それを所望の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。
【0039】
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストは粉末の誘電体ガラスとバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0040】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にフォトリソグラフィ法等によって隔壁材料層をパターニングし、その後、焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布して焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材が形成されて背面板10が完成する。
【0041】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4および維持電極5とアドレス電極12とが直交するように対向配置して、その周囲をガラスフリットで封着し、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入することによりPDP1が完成する。
【0042】
このように本発明の実施の形態におけるバス電極4b、5bを有すPDP1では、表示面側が低反射層、背面側が緻密で黒澄みを生じることなく高反射率となるため、表示面側では反射光を吸収し画面のコントラストを保持し、背面側では蛍光体からの光がバス電極4b、5bで吸収されることなく反射されて、開口部から放射されるようになる。これにより蛍光体層15からの光が無駄なく表示に利用され、発光効率を向上させる効果が得られる。
【0043】
(実施例)
本発明の実施の形態での効果を確認するため、次のような検討を行った。表1は、上記実施の形態における黒色ペーストと白色ペーストの成分比率の一例を示している。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示した組成の黒色ペーストと白色ペーストを使用して42インチのハイビジョンテレビの前面板に適合するように電極間隔を60〜70μmとして第1電極層41b、51bおよび第2電極層42b、52bのバス電極4b、5bを形成した。
【0046】
この表1の実施例では、黒色ペースト中に、銀(Ag)粉末が10重量%、ガラス成分および黒色顔料が41重量%、溶剤他の有機成分が49重量%含まれ、前記ガラス成分の軟化点が560℃になっており、白色ペースト中に、銀粉末が71.1重量%、溶剤他の有機成分が28.9重量%含まれており、ガラス成分は含まれていない。
【0047】
また、同表には比較例として、従来技術のPDPのバス電極の形成に使用されている黒色ペーストと白色ペーストの成分比率の一例を示している。この従来の黒色ペースト中には、銀粉末が10重量%、ガラス成分および黒色顔料が41重量%、溶剤他の有機成分が49重量%含まれ、前記ガラス成分の軟化点が500℃になっており、白色ペースト中には、銀粉末が68重量%、ガラス成分が3重量%、溶剤他の有機成分が29重量%含まれている。
【0048】
そして、表2は、表1の実施例の黒色ペーストと白色ペーストによって形成されて同時焼成された後のバス電極4b、5bの第1電極層41b、51bと第2電極層42b、52bのそれぞれの成分比率を示している。
【0049】
【表2】

【0050】
この表2において、焼成後の第1電極層41b、51b中に、銀成分が19.6重量%、ガラス成分および黒色顔料成分が80.4重量%含まれており、焼成後の第2電極層42b、52b中に銀成分が100重量%含まれており、ガラス成分は含まれていない。
【0051】
表2に記載された比較例は、表1の比較例の黒色ペーストと銀ペーストによって形成され同時焼成された後の第1電極層と第2電極層のそれぞれの成分比率を示している。焼成後の第1電極層中に、銀成分が19.6重量%、ガラスおよび黒色顔料が80.4重量%含まれており、焼成後の第2電極層中に、銀成分が95.8重量%,ガラス成分が4.2重量%含まれている。
【0052】
そして表2には、実施例と比較例について、同時焼成後のバス電極における第2電極層の表面の黒澄み状態と、バス電極と透明電極との密着状態、バス電極の発泡状態の評価結果を示す。
【0053】
この実施例および比較例におけるバス電極の具体的な形成方法は上述したPDPの製造方法と同様である。まず上記黒色ペーストをスクリーン印刷法によりITOの透明電極4a、5aが形成された前面ガラス基板3上に塗布し110℃で乾燥し第1感光性組成物層を形成した。
【0054】
次に白色ペーストをスクリーン印刷法により第1感光性組成物層の上に塗布し110℃で乾燥して第2感光性組成物層を形成した。
【0055】
次に黒色の第1電極層41b、51bおよび略白色の第2電極層42b、52bに相当するパターンを有した露光マスクで、積算露光量500mJ/cm2で露光した。
【0056】
その後、液温30℃の0.5%Na2CO3水溶液を用いて現像を行って未露光部を除去し、黒色の第1電極層41b、51bおよび略白色の第2電極層42b、52bに相当するパターン形状に形成する。
【0057】
最後に空気雰囲気下にて5℃/分で昇温し、600℃で30分焼成した。焼成したバス電極を観察したところ、表2に示すように、比較例においては、第2電極層の表面の黒澄みを生じ、また、第1電極層と第2電極層との間に気泡が生じた。今回の比較例では、第1電極層のガラス軟化点を500℃としたが、第1電極層のガラス軟化点を600℃と570℃より高くした場合は、第1電極層と第2電極層との間に生じる気泡は解消するが、バス電極と透明電極との密着不足が発生することになる。
【0058】
一方、実施例は、第1電極層41b、51bと第2電極層42b、52bとの間に気泡の発生はなく、また、第2電極層42b、52bと透明電極4a、5aとの界面における剥がれ現象などは見られなかった。さらに、第2電極層42b、52bが緻密な膜となることで表面に黒澄みを生じることなく高反射率であることを確認した。
【0059】
さらに、そのバス電極4b、5bを覆うように誘電体層8および保護膜9を形成したのち、適合する背面板と合わせてPDP1を作成した。その効果を実施例と比較例とで比較したところ、実施例で作成したPDP1では発光効率の向上が確認された。
【0060】
以上のように本発明によれば、バス電極の表示面側が低反射層であり、背面側が緻密で黒澄みを生じることなく高反射率となるため、蛍光体層で発光した光の内、バス電極に向う光は、バス電極で吸収されることなく反射され、開口部から放射されるようになり、蛍光体層からの光が無駄なく表示に利用され、発光効率を向上させる効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上述べてきたように本発明は、品質問題を起こすことなく発効効率の高いPDPを提供する点で有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 プラズマディスプレイパネル
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 透明電極
4b、5b バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
20 (蛍光体からの発光の内、バス電極に向う光を示す)矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に電極および誘電体層を形成した前面板と、基板上に電極、隔壁および蛍光体層を形成した背面板とを、対向配置して形成したプラズマディスプレイパネルであって、前記前面板に形成した前記電極は、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層と、Ag成分を含む第2電極層とを含む複数層の構造を有しており、前記第1電極層のガラス成分の軟化点が、520℃以上580℃以下であり、かつ前記第2電極層にガラス成分が含まれていないことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記第1電極層のガラス成分の軟化点が、530℃以上570℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第1電極層のガラス成分および顔料成分が、75重量%以上98重量%以下であることを特徴とする請求項1−2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
ガラス基板上に電極および誘電体層を形成する前面板と、基板上に電極、隔壁および蛍光体層を形成する背面板とを、対向配置して形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記前面板に形成した前記電極は、ガラス成分および黒色成分を含む材料を用いて形成した第1電極層と、Ag成分を含む第2電極層とを含む複数層の構造を有しており、前記第1電極層のガラス成分および顔料成分が、75重量%以上98重量%以下であって、かつ前記第2電極層にガラス成分が含まれておらず、前記第1電極層と前記第2電極層とを同一の工程にて焼成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−171136(P2011−171136A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34458(P2010−34458)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】