説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルにおいて、保護層9は、誘電体層8上に下地膜91を形成するとともに、下地膜91上に酸化マグネシウムの結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92を付着させて形成し、かつ下地膜91を、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、金属酸化物は下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面における金属単体の酸化物より発生する各々の回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPにおいては、従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上の高精細テレビへの適用が進められており、エネルギー問題に対応してさらなる消費電力低減への取り組みや、環境問題に配慮した鉛成分を含まないPDPへの要求なども高まっている。
【0003】
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法により製造された硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成された第1電極と第2電極とから構成される表示電極が複数並んで構成される複数の表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。
【0004】
一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色及び青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0005】
また、このようなPDPの駆動方法としては、書込みをしやすい状態に壁電荷を調整する初期化期間と、入力画像信号に応じて書込み放電を行う書込み期間と、書込みが行われた放電空間で維持放電を生じさせることによって表示を行う維持期間を有する駆動方法が一般的に用いられている。これらの各期間を組み合わせた期間(サブフィールド)が、画像の1コマに相当する期間(1フィールド)内で複数回繰り返されることによってPDPの階調表示を行っている。
【0006】
このようなPDPにおいて、前面板の誘電体層上に形成される保護層の役割としては、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することなどがあげられる。イオン衝撃から誘電体層を保護することは、放電電圧の上昇を防ぐ重要な役割であり、またアドレス放電を発生させるための初期電子を放出することは、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐ重要な役割である。
【0007】
保護層からの初期電子の放出数を増加させて画像のちらつきを低減するために、例えば、酸化マグネシウム(MgO)保護層に不純物を添加する例や、酸化マグネシウム(MgO)粒子を酸化マグネシウム(MgO)保護層上に形成した例が開示されている(例えば、特許文献2、3など参照)。
【0008】
また、画像表示の際の輝度を増加させ、かつ放電電流を抑えるために、電極を複数の部分に分割し、開口部を設けた電極構造を用いるなどの工夫がなされている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2002/017345号
【特許文献2】特開2002−260535号公報
【特許文献3】特開平11−339665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低消費電力かつ高輝度のPDPが要求されている。
【0011】
このようにPDPの高精細化や低消費電力化を進めるにあたっては、放電電圧が高くならないようにすること、および書込み電圧の上昇を抑えつつ高輝度を実現させることを、同時に実現させなければならないという課題があった。
【0012】
しかし、酸化マグネシウム(MgO)保護層上に酸化マグネシウム(MgO)結晶粒子を形成する例では、放電遅れを小さくして点灯不良を低減することは可能であるが、放電電圧を低減することができない。また、輝度をより高くするために、電極を複数の部分に分割した上で開口部をより大きくすると、書込み電圧が大幅に上昇する。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、高輝度の表示性能を備え、かつ低電圧駆動が可能なPDPを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、第1電極および第2電極は、放電ギャップを介して対向する第1部分と、この第1部分から間隔を設けて平行に配置された第2部分と、第1部分と第2部分とを接続しかつ放電空間毎に設けた第3部分とを備え、間隔の長さは放電ギャップの幅×0.95以上放電ギャップ幅×1.20以下であり、第1基板の保護層は、誘電体層上に下地膜を形成するとともに、下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を付着させて形成し、かつ下地膜は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、金属酸化物は下地膜面のX線回折分析において、特定方位面における金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成によれば、高輝度かつ低消費電力の駆動が可能なPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の構成を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の下地膜におけるX線回折結果を示す図
【図4】本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の他の構成の下地膜におけるX線回折結果を示す図
【図5】本発明の実施の形態におけるPDPの凝集粒子を説明するための拡大図
【図6】本発明の実施の形態におけるPDPの放電遅れと保護層中のカルシウム(Ca)濃度との関係を示す図
【図7】本発明の実施の形態におけるPDPに用いた結晶粒子の粒径と電子放出特性の関係を示す特性図
【図8】本発明の実施の形態におけるPDPの表示電極を詳細に表した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて図面を用いて説明する。
【0018】
1、PDPの構造
図1は本発明の実施の形態におけるPDP1の構造を示す斜視図である。PDP1の基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、キセノン(Xe)とネオン(Ne)などの放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
【0019】
前面板2の前面ガラス基板3上には、導電性の第1電極4および第2電極5を間に放電ギャップを設けて配置して一対の帯状の表示電極6を構成するとともにその表示電極6が行方向に複数本配列されている。第1電極4および第2電極5は、それぞれ放電ギャップを介して対向する第1部分4a、5aと、この第1部分から間隔をあけて平行に配置された第2部分4b、5b、さらに第1部分と第2部分とを接続しかつ放電空間毎に設けた第3部分4c、5cとで構成されている。前面ガラス基板3上には表示電極6を覆うように電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護層9が形成されている。
【0020】
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の第1電極4および第2電極5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝ごとに、紫外線によって赤色、緑色及び青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。前面板2の第1電極4および第2電極5とアドレス電極12とが交差する位置に放電空間が形成され、前面板2の第1電極4および第2電極5の長手方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電空間がカラー表示のための画素になる。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態におけるPDP1の前面板2の構成を示す断面図であり、図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3上に、第1電極4と第2電極5よりなる表示電極6がパターン形成されている。第1電極4と第2電極5はそれぞれ金属バス電極で形成されており、それぞれ第1部分4a、5aと、第2部分4b、5b、第3部分4c、5cにより構成されている。第1電極4、第2電極5はそれぞれ長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
【0022】
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの金属バス電極で形成される第1電極4、第2電極5を覆って設けられており、さらに誘電体層8上に保護層9が形成されている。
【0023】
保護層9は、誘電体層8上に形成された下地膜91と、下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを複数個凝集させた凝集粒子92とにより構成している。下地膜91は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選ばれる少なくとも2つ以上の金属からなる金属酸化物により形成され、さらに下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92を付着形成している。
【0024】
2、PDPの製造方法
次に、このようなPDP1の製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板3上に、第1電極4及び第2電極5を形成する。金属バス電極である第1電極4と第2電極5は、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。第1電極4と第2電極5は銀(Ag)材料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化している。
【0025】
次に、第1電極4、第2電極5を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト(誘電体材料)層を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、第1電極4、第2電極5を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダ及び溶剤を含む塗料である。
【0026】
次に、誘電体層8上に下地膜91を形成する。本発明の実施の形態においては、下地膜91を、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選ばれる少なくとも2つ以上の金属からなる金属酸化物により形成している。
【0027】
下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)の単独材料のペレットや、それらの材料を混合したペレットを用いて薄膜成膜方法によって形成される。薄膜成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法を適用できる。一例として、スパッタリング法では1Pa、蒸着法の一例である電子ビーム蒸着法では0.1Paが実際上取り得る圧力の上限と考えられる。
【0028】
また、下地膜91の成膜時の雰囲気としては、水分付着や不純物の吸着を防止するために外部と遮断された密閉状態で、成膜時の雰囲気を調整することにより、所定の電子放出特性を有する金属酸化物よりなる下地膜91を形成することができる。
【0029】
次に、下地膜91上に付着形成する酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aの凝集粒子92について述べる。これらの結晶粒子92aは、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
【0030】
気相合成法では、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度が99.9%以上のマグネシウム金属材料を加熱し、さらに、雰囲気に酸素を少量導入することによって、マグネシウムを直接酸化させ、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを作製することができる。
【0031】
一方、前駆体焼成法では、以下の方法によって結晶粒子92aを作製することができる。前駆体焼成法では、酸化マグネシウム(MgO)の前駆体を700℃以上の高温で均一に焼成し、これを徐冷して酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得ることができる。前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO32)、シュウ酸マグネシウム(MgC24)のうちのいずれか1種以上の化合物を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるがこのような水和物を用いてもよい。
【0032】
これらの化合物は、焼成後に得られる酸化マグネシウム(MgO)の純度が99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整する。これらの化合物中に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Alなどの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性の酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得にくいためである。このため、不純物元素を除去することなどにより予め前駆体を調整することが必要となる。
【0033】
上記いずれかの方法で得られた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを、溶媒に分散させ、その分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法などによって下地膜91の表面に分散散布させる。その後、乾燥・焼成工程を経て溶媒除去を図り、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを下地膜91の表面に定着させることができる。
【0034】
このような一連の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成物(第1電極4、第2電極5、誘電体層8、保護層9)が形成されて前面板2が完成する。
【0035】
一方、背面板10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成する。その後、所定の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などにより、アドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダ及び溶剤を含んだ塗料である。
【0036】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布し、所定の形状にパターニングすることにより隔壁材料層を形成する。その後、所定の温度で焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。そして、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上及び隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
【0037】
所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを第1電極4及び第2電極5とアドレス電極12とが直交するように対向配置し、その周囲をガラスフリットで封着して放電空間16にキセノン(Xe)とネオン(Ne)などを含む放電ガスを封入してPDP1が完成する。
【0038】
ここで、前面板2の誘電体層8について詳細に説明する。誘電体層8の誘電体材料は、次の材料組成より構成されている。すなわち、酸化ビスマス(Bi23)を11重量%〜20重量%、さらに、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種を1.6重量%〜21重量%含み、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含んでいる。
【0039】
なお、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr23)、酸化コバルト(Co23)、酸化バナジウム(V27)、酸化アンチモン(Sb23)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含ませてもよい。
【0040】
また、上記以外の成分として、酸化亜鉛(ZnO)を0重量%〜40重量%、酸化硼素(B23)を0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO2)を0重量%〜15重量%、酸化アルミニウム(Al23)を0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含まれていてもよい。
【0041】
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とを三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の誘電体層用ペーストを作製する。
【0042】
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してペーストとして印刷特性を向上させてもよい。
【0043】
次にこの誘電体層用ペーストを用いて表示電極6上にスクリーン印刷法あるいはダイコート法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の550℃〜590℃で焼成する。
【0044】
3、保護層について
次に本発明の実施の形態における保護層9の詳細について説明する。
【0045】
本発明の実施の形態におけるPDPでは、図2に示すように、保護層9は、誘電体層8上に形成した下地膜91と、下地膜91上に付着させた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92とにより構成されている。また、下地膜91は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、金属酸化物は下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面における金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態におけるPDP1の保護層9を構成する下地膜91面におけるX線回折結果を示す図である。また、図3中には、酸化マグネシウム(MgO)単体、酸化カルシウム(CaO)単体、酸化ストロンチウム(SrO)単体、及び酸化バリウム(BaO)単体のX線回折分析の結果も示す。
【0047】
図3において、横軸はブラッグの回折角(2θ)であり、縦軸はX線回折波の強度である。回折角の単位は1周を360度とする度で示し、強度は任意単位(arbitrary unit)で示している。図3中には特定方位面である結晶方位面を括弧付けで示している。図3に示すように、結晶方位面の(111)では、酸化カルシウム(CaO)単体では回折角32.2度、酸化マグネシウム(MgO)単体では回折角36.9度、酸化ストロンチウム(SrO)単体では回折角30.0度、酸化バリウム(BaO)単体では回折角27.9度にピークを有していることがわかる。
【0048】
本発明の実施の形態におけるPDP1では、保護層9の下地膜91として、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)から選ばれる少なくとも2つ以上の金属から形成される金属酸化物により形成している。
【0049】
図3には、下地膜91が形成される金属酸化物と、2つの金属単体の酸化物それぞれについてのX線回折結果を示している。すなわち、マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)の金属を含む金属酸化物で形成された下地膜91のX線回折結果をA点、マグネシウム(Mg)とストロンチウム(Sr)の金属を含む金属酸化物で形成された下地膜91のX線回折結果をB点、さらに、マグネシウム(Mg)とバリウム(Ba)の金属を含む金属酸化物で形成された下地膜91のX線回折結果をC点で示している。
【0050】
すなわち、A点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、選択した金属単体の酸化物より発生する回折角のうち、最大回折角となる酸化マグネシウム(MgO)の回折角36.9度と、最小回折角となる酸化カルシウム(CaO)の回折角32.2度との間である回折角36.1度にピークが存在している。同様に、B点、C点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の35.7度、35.4度にピークが存在している。
【0051】
また、図4には、図3と同様に、下地膜91を構成する金属酸化物が3成分以上の場合のX線回折結果を示している。すなわち、図4には、金属酸化物としてマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)を含む金属酸化物を用いた場合の結果をD点、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む金属酸化物を用いた場合の結果をE点、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含む金属酸化物を用いた場合の結果をF点で示している。
【0052】
すなわち、D点は特定方位面としての結晶方位面の(111)において、選択した複数の金属単体の酸化物より発生する回折角のうち、最大回折角となる酸化マグネシウム(MgO)単体の回折角36.9度と、最小回折角となる酸化ストロンチウム(SrO)単体の回折角30.0度との間である回折角33.4度にピークが存在している。同様に、E点、F点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の32.8度、30.2度にピークが存在している。
【0053】
したがって、本発明の実施の形態におけるPDP1の下地膜91は、複数の金属を含む金属酸化物として2つの金属を含む金属酸化物で構成される場合であれ、3つの金属を含む金属酸化物で構成される場合であれ、下地膜91を構成する複数の金属を含む金属酸化物の下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面における単体の金属酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。
【0054】
なお、上記の説明では特定方位面としての結晶方位面として(111)を対象として説明したが、他の結晶方位面を対象とした場合も複数の金属酸化物のピークの位置が上記と同様である。
【0055】
酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)では、酸化マグネシウム(MgO)と比較して、真空準位からの深さが浅い領域に電子が存在する。そのため、PDP1を駆動する場合において、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)のエネルギー準位に存在する電子がキセノン(Xe)イオンの基底状態に遷移する際に、オージェ効果により放出される電子数が、酸化マグネシウム(MgO)のエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
【0056】
また、上述のように、本発明の実施の形態における下地膜91は、複数の金属を含む金属酸化物で構成され、金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。X線回折分析の結果が、図3及び図4に示す特徴を有する複数の金属酸化物はそのエネルギー準位もそれらを構成する金属単体の酸化物の間に存在する。したがって、下地膜91のエネルギー準位も金属単体の酸化物の間に存在し、オージェ効果により放出される電子数が酸化マグネシウム(MgO)のエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
【0057】
その結果、下地膜91では、酸化マグネシウム(MgO)単体と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮することができ、結果として、放電維持電圧を低減することができる。そのため、特に輝度を高めるために放電ガスとしてのキセノン(Xe)分圧を高めた場合に、放電維持電圧を低減し、低電圧でなおかつ高輝度のPDPを実現することが可能となる。
【0058】
なお、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)は、金属単体の酸化物では反応性が高いため不純物と反応しやすく、そのために電子放出性能が低下してしまうという課題を有していた。しかしながら、本発明の実施の形態においては、それらの複数の金属を含む金属酸化物とすることにより、反応性を低減し、不純物の混入や酸素欠損の少ない結晶構造で形成されている。そのため、PDPの駆動時に電子が過剰放出されるのが抑制され、低電圧駆動と二次電子放出性能の両立効果に加えて、適度な電子保持特性の効果も発揮される。この電荷保持特性は、特に初期化期間に貯めた壁電荷を保持しておき、書込み期間において書込み不良を防止して確実な書込み放電を行う上で有効である。
【0059】
次に、本発明の実施の形態における下地膜91上に設けた、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92について詳細に説明する。酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92は、本発明者の実験により、主として書込み放電における放電遅れを抑制する効果と、放電遅れの温度依存性を改善する効果が確認されている。そこで本発明の実施の形態では、凝集粒子92が下地膜91に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、放電パルス立ち上がり時に必要な初期電子供給部として配設している。
【0060】
放電遅れは、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が下地膜91表面から放電空間16中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間16に対する初期電子の安定供給に寄与するため、酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92を下地膜91の表面に分散配置する。これによって、放電パルスの立ち上がり時に放電空間16中に電子が豊富に存在し、放電遅れの解消が図られる。したがって、このような初期電子放出特性により、PDP1が高精細の場合などにおいても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。なお下地膜91の表面に複数の金属酸化物の凝集粒子92を配設する構成では、主として書込み放電における放電遅れを抑制する効果に加え、放電遅れの温度依存性を改善する効果も得られる。
【0061】
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDP1では、低電圧駆動と電荷保持の両立効果を奏する下地膜91と、放電遅れの防止効果を奏する酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92とにより構成することによって、PDP1全体として、高精細なPDPでも高速駆動を低電圧で駆動でき、かつ、点灯不良を抑制した高品位な画像表示性能を実現できる。
【0062】
本発明の実施の形態では、下地膜91上に、結晶粒子92aが数個凝集した凝集粒子92を離散的に散布させ、全面に亘ってほぼ均一に分布するように複数個付着させることにより構成している。図5は凝集粒子92を説明するための拡大図である。
【0063】
凝集粒子92とは、図5に示すように、所定の一次粒径の結晶粒子92aが凝集またはネッキングした状態のものである。すなわち、固体として大きな結合力を持って結合しているのではなく、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなしているもので、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
【0064】
また、結晶粒子92aの一次粒子の粒径は、結晶粒子92aの生成条件によって制御できる。例えば、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどのMgO前駆体を焼成して生成する場合、焼成温度や焼成雰囲気を制御することで粒径を制御することができる。一般的に、焼成温度は700℃から1500℃の範囲で選択できるが、焼成温度を比較的高い1000℃以上にすることで、その粒径を0.3μm〜2μm程度に制御することが可能である。さらに、結晶粒子92aをMgO前駆体を加熱して得ることにより、その生成過程において、複数個の一次粒子同士が凝集またはネッキングと呼ばれる現象により結合して凝集粒子92を得ることができる。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態におけるPDP1のうち、マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)との複数の金属を含む金属酸化物で構成した下地膜91を用いた場合の放電遅れと保護層9中のカルシウム(Ca)濃度との関係を示す図である。下地膜91としてマグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)とからなる複数の金属を含む酸化物で構成し、金属酸化物は、下地膜91面におけるX線回折分析において、酸化マグネシウム(MgO)のピークが発生する回折角と酸化カルシウム(CaO)のピークが発生する回折角との間にピークが存在するようにしている。
【0066】
なお、図6には、保護層9として下地膜91のみの場合と、下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とについて示し、放電遅れは、下地膜91中にカルシウム(Ca)が含有されていない場合を基準として示している。
【0067】
図6より明らかなように、下地膜91のみの場合と、下地膜91上に凝集粒子92を配置した場合とにおいて、下地膜91のみの場合はカルシウム(Ca)濃度の増加とともに放電遅れが大きくなるのに対し、下地膜91上に凝集粒子92を配置することによって放電遅れを大幅に小さくすることができ、カルシウム(Ca)濃度が増加しても放電遅れはほとんど増大しないことがわかる。
【0068】
次に、本発明の実施の形態によるPDP1の保護層9に用いた結晶粒子の粒径について詳細に説明する。なお、以下の説明において、粒径とは平均粒径を意味し、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことを意味している。
【0069】
図7は、結晶粒子92aの粒径を変化させて電子放出性能を調べた実験結果を示す特性図である。なお、図7において、結晶粒子92aの粒径は、結晶粒子92aをSEM観察することで測長した。図7に示すように、粒径が0.3μm程度に小さくなると、電子放出性能が低くなり、ほぼ0.9μm以上であれば、高い電子放出性能が得られることがわかる。
【0070】
ところで、放電セル内での電子放出数を増加させるためには、下地膜91上の単位面積あたりの結晶粒子92aの数は多い方が望ましいが、本発明者の実験によれば、前面板2の保護層9と密接に接触する背面板10の隔壁14の頂部に相当する部分に結晶粒子92aが存在することで、隔壁14の頂部を破損させ、その材料が蛍光体層15の上に乗るなどし、それによって、該当するセルが正常に点灯消灯しなくなる現象が発生することがわかった。この隔壁破損の現象は、結晶粒子92aが隔壁14頂部に対応する部分に存在しなければ発生しにくいことから、付着させる結晶粒子92aの数が多くなれば隔壁14の破損発生確率が高くなる。このような観点からは、結晶粒子径が2.5μm程度に大きくなると、隔壁破損の確率が急激に高くなり、2.5μmより小さい結晶粒子径であれば、隔壁破損の確率は比較的小さく抑えることができる。
【0071】
以上の結果より、本発明の実施の形態におけるPDP1においては、凝集粒子92として、粒径が0.9μm〜2μmの範囲にある凝集粒子92を使用すれば、上述した本発明の効果を安定的に得られることがわかった。
【0072】
以上のように本発明によるPDPによれば、電子放出性能が高く、電荷保持能力としてはVscn点灯電圧が120V以下のものを得ることができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態では、結晶粒子として酸化マグネシウム(MgO)粒子を用いて説明したが、この他の単結晶粒子でも、酸化マグネシウム(MgO)同様に高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Alなどの金属酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができるため、粒子種としては酸化マグネシウム(MgO)に限定されるものではない。
【0074】
4、表示電極について
4−1、表示電極の構造
次に本発明の実施の形態における表示電極6の詳細について説明する。
【0075】
図8は、本発明の実施の形態におけるPDP1の前面板2の構成を示す上面図であり、図2の表示電極部分を拡大している。図8に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、第1電極4と第2電極5よりなる表示電極6がパターン形成されている。第1電極と第2電極は、それぞれ金属バス電極で形成されている。
【0076】
本発明の実施の形態におけるPDPでは、図8に示すように、表示電極6は、それぞれ放電ギャップを介して対向する第1部分4a、5aと、この第1部分から間隔をあけて平行に配置された第2部分4b、5b、さらに第1部分と第2部分とを接続しかつ放電空間毎に設けた第3部分4c、5cとで構成されている。
【0077】
第3部分4c、5cを有する表示電極は、放電により発光する蛍光体の光をより多く取り出して輝度を高めるために、第3部分4c、5cをPDPの短辺方向に長くして開口率をより大きくすることが考えられる。しかし、誘電体層8上に形成した下地膜91と、下地膜91上に付着させた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92とにより構成されている保護層を使用する場合、開口率を大きくするとともに急激に書込み電圧が上昇する。これにより、PDPの製造工程におけるバラつきを考慮すると第3部分4c、5cの線幅および長さの調整に限界があり、輝度を十分に確保できなかった。
【0078】
そこで、本発明の実施形態は、第1電極および第2電極は、放電ギャップを介して対向する第1部分4a、5aと、この第1部分4a、5aから間隔をあけて平行に配置された第2部分4b、5bと、第1部分4a、5aと第2部分4b、5bとを接続しかつ放電空間毎に設けた第3部分4c、5cとを備え、間隔の長さは放電ギャップの幅×0.95以上放電ギャップ幅×1.20以下であり、第1基板の保護層は、誘電体層上に下地膜を形成するとともに、下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を付着させて形成し、かつ下地膜は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、金属酸化物は下地膜面のX線回折分析において、特定方位面における金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在することを特徴とする。ここで、第3部分4c、5cの長さは、放電ギャップ側とは反対の上下隣接セル側に長くなる。
【0079】
4−2、実験例
以下、50インチサイズのPDPにおいて、各電極構成と実験例1〜実験例3に、各放電ギャップの幅(G1)および第3部分(S1)(以下、スペース幅という)の長さに対する書込み電圧の結果を示す。なお、間隔の長さは、第3部分の長さと同等であることから、間隔の長さを3部分の長さで表す。また、実験例で用いた保護層9は、下地膜と下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集して付着された凝集粒子とから形成され、かつ下地膜は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成されるものとする。この保護層は、保護層Aとする。また、比較例1〜比較例3についても、同様に、各放電ギャップの幅およびスペース幅に対する書込み電圧の結果を示す。比較例1〜比較例3は、保護層としては、下地膜91と、下地膜91上に付着させた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92とから構成されている。この保護層を、保護層Bとする。
【0080】
比較例1は、保護層が保護層Bであり、放電ギャップの幅が95μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧をスペース幅毎に測定し、スペース幅が80μmのときの書込み電圧を基準0としたときの書込み電圧差の結果を表1に示している。比較例2、比較例3および実験例1〜実験例3における電圧差についても、比較例1におけるスペース幅が80μmのときの書込み電圧を基準0としたときの書込み電圧差を示している。
【0081】
実験例1は、保護層Aであり、放電ギャップ幅が95μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧差の結果を表1に示している。
【0082】
比較例2は、保護層Bであり、放電ギャップ幅が90μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧差の結果を表1に示している。
【0083】
実験例2は、保護層Aであり、放電ギャップ幅が90μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧差の結果を表1に示している。
【0084】
比較例3は、保護層Bであり、放電ギャップ幅が100μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧差の結果を表1に示している。
【0085】
実験例3は、保護層Aであり、放電ギャップ幅が100μmである構成を有するPDPである。このPDPにおける書込み電圧差の結果を表1に示している。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示すように、いずれの比較例および実験例においてもスペース幅がより大きくなるにつれて書込み電圧が大きくなることがわかる。しかし、比較例および実験例とでは、スペース幅が与える書込み電圧への影響が大きく異なる。いずれの比較例も、スペース幅が大きくなると書込み電圧の上がり幅が実験例よりも大きい。しかし、実験例ではスペース幅が大きくなっても書込み電圧が多少上昇しても、書込み電圧の上がり幅は比較例よりも小さい。この理由として、二次電子放出量および放電遅れが変化していると考えられる。
【0088】
したがって、PDPの高輝度化を目的として、スペース幅を広くしても書込み電圧の上がり幅がより小さく、スペース幅のマージンを確保することができる。実際、PDPにおいて書込み電圧差が5V以下であることが望ましい。それは、電圧上昇により、PDP製造コストのアップが避けられないからである。よって、電圧差5V以下を考慮すると、第3部分の長さは放電ギャップの幅×0.95以上であり、放電ギャップの幅×1.20以下であることが望ましい。
【0089】
なお、今回は50インチサイズのPDPを用いたが、他のインチサイズにおいても同様に、第3部分の長さは放電ギャップの幅×0.95以上であり、放電ギャップの幅×1.20以下であることが望ましい。
【0090】
以上により、本発明の実施形態は、第1電極および第2電極は、放電ギャップを介して対向する第1部分と、この第1部分から間隔を設けて平行に配置された第2部分と、第1部分と第2部分とを接続しかつ放電空間毎に設けた第3部分とを備え、間隔の長さは放電ギャップの幅×0.95以上放電ギャップ幅×1.20以下であり、第1基板の保護層は、誘電体層上に下地膜を形成するとともに、下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を付着させて形成し、かつ下地膜は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、金属酸化物は下地膜面のX線回折分析において、特定方位面における金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するものであることを特徴とすることで、高輝度かつ低消費電力が可能なPDPを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように本発明は、高輝度かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0092】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 第1電極
5 第2電極
4a、5a 第1部分
4b、5b 第2部分
4c、5c 第3部分
6 表示電極
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に導電性の第1電極および第2電極を間に放電ギャップを設けて配置して表示電極を構成するとともに、その表示電極を行方向に複数本配列して設け、表示電極を覆うように誘電体層を形成するとともに前記誘電体層上に保護層を形成した第1基板と、前記第1基板に放電ガスが充填された放電空間を形成するように対向配置され、かつ前記表示電極と交差する方向に第3電極を形成するとともに前記放電空間を区画する隔壁を設けた第2基板とを有するプラズマディスプレイパネルであって、前記第1電極および第2電極は、放電ギャップを介して対向する第1部分と、この第1部分から間隔を設けて平行に配置された第2部分と、前記第1部分と第2部分とを接続しかつ前記放電空間毎に設けた第3部分とを備え、前記間隔の長さは前記放電ギャップの幅×0.95以上であり、かつ前記放電ギャップ幅×1.20以下であり、前記第1基板の前記保護層は、前記誘電体層上に下地膜を形成するとともに、前記下地膜上に酸化マグネシウムの結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を付着させて形成し、かつ前記下地膜は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選ばれる少なくとも2つ以上の金属を含む金属酸化物により形成され、前記金属酸化物は前記下地膜面のX線回折分析において、特定方位面における前記金属単体の酸化物より発生する回折角のうち最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するものであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62209(P2013−62209A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201441(P2011−201441)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】