説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】誘電体層の欠落欠陥による製品歩留まりの低下を抑制する。
【解決手段】本発明は、前面基板に複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面基板に複数のデータ電極と絶縁体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、表示電極対とデータ電極とが交叉するように前面板と背面板とを放電空間を介して対向配置して周囲を封着したプラズマディスプレイパネルであって、放電空間において放電するエージング工程より前の工程で誘電体層または絶縁体層の少なくともいずれかに超音波が与えられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を表示デバイスとして用いたプラズマディスプレイ装置(以下、PDP装置という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このPDP装置に用いられるPDPは、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、PDP装置の主流は、3電極構造の面放電型のものである。
【0003】
この面放電型のPDP構造は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、放電空間を複数に仕切るための隔壁を基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する赤色、緑色、青色に発光する蛍光体を設けて複数の放電セルSを構成したもので、放電により発生する波長の短い真空紫外光によって蛍光体を励起し、赤色、緑色、青色の放電セルSからそれぞれ赤色、緑色、青色の可視光を発することによりカラー表示を行っている。
【0004】
このようなPDP装置は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている。
【0005】
誘電体膜形成後に誘電体膜の検査を行い、気泡状の欠陥が検出された場合、レーザ光を照射して欠陥部に開口部を形成し、局所的にガラスペーストを塗布、充填することで修正し、PDPの歩留まりを向上することが開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−294141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1は、PDP装置を製造する各工程あるいは市場に出るときの運搬や使用の途中で、PDP装置にかかる圧力や振動などにより、前面板に形成されている誘電体膜に欠落欠陥が発生することがある。
【0008】
その結果、電極の断線を引き起こして不良となり、製品歩留まりが低下する。又は、将来に不良となる原因を内在させたまま信頼性の低い製品ができる問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、市場不良を未然に防いだ信頼性の高いPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明のPDPは、複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板と、複数のデータ電極と絶縁体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、表示電極対とデータ電極とが交叉するように前面板と背面板とを対向配置して周囲を封着したPDPであって、放電空間に放電するエージング工程より前の工程で誘電体層または絶縁体層の少なくともいずれかに超音波が与えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高歩留まりのより高品質なPDP装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態によるPDP装置に用いるPDPの要部を示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDP装置の電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態によるPDP装置の回路ブロック図
【図4】本発明の一実施の形態によるPDP装置の組み立て図
【図5】本発明の一実施の形態によるPDP装置が製造される各工程を示した図
【図6】(a)本発明の一実施の形態によるPDP装置の誘電体層において発生した泡を示す図、(b)本発明の一実施の形態による誘電体層において発生した泡がPDPに与える影響を示した図
【図7】本発明の一実施の形態によるPDP装置の誘電体層に存在する泡の破泡を示した図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態によるPDP装置40について、図1〜図6を用いて説明する。しかし、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0014】
1、プラズマディスプレイパネル(PDP)
まず、PDP装置40におけるPDPの構造について図1を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態によるPDP装置40に用いるパネルの要部を示す図である。図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが間に放電ギャップGを設けて互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うようにガラス材料からなる誘電体層5が形成され、その誘電体層5上にはMgOからなる保護層6が形成されている。走査電極3および維持電極4は、ITOなどの透明電極3a、4aと、この透明電極に重ねて形成したAgからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0016】
また、背面基板2上には、ガラス材料からなる絶縁体層7で覆われたストライプ状に配列したAgからなる複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には、前面基板1と背面基板2との間の放電空間を放電セルS毎に区切るための井桁状のガラス材料からなる隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に赤色10R、緑色10G、青色10Bの蛍光体層が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDP11の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁9を備えたものであってもよい。
【0017】
次に、PDP11の電極について説明する。図2はこのPDP11の電極配列図である。図2に示すように、PDP11の表示領域には、行方向にn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極)が、維持電極SU1−走査電極SC1−走査電極SC2−維持電極SU2・・・・の配列となるように形成され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極)が走査電極SC1〜SCnおよびn本の維持電極SU1〜SUnと交差する配列となるように形成されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルSが形成され、放電セルSは放電空間内にm×n個形成されている。また、PDP11の表示領域の周囲には、非表示領域が設けられ、その非表示領域には、複数本(図示のものは、片側に2本)のダミー電極が形成されている。
【0018】
次に、PDP装置40の回路ブロックについて説明する。図3はこのPDP11を用いたPDP装置40の回路ブロック図である。図3に示すように、このPDP装置40は、PDP11、画像信号処理回路12、データ電極駆動回路13、走査電極駆動回路14、維持電極駆動回路15、タイミング発生回路16および電源回路(図示せず)を備えている。また、データ電極駆動回路13は、図2に示すように、PDP11のデータ電極8の一端に接続され、かつデータ電極8に電圧を供給するための半導体素子からなる複数のデータドライバを有している。データ電極8は、数本ずつのデータ電極で1ブロックとして複数のブロックに分割し、そのブロック単位で複数のデータドライバをPDP11の下端部の電極引出部に接続して配置している。
【0019】
図3において、画像信号処理回路12は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路13はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路16は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路14はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路15はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。ここで、走査電極駆動回路14および維持電極駆動回路15は、維持パルス発生部を備えている。
【0020】
2、PDPの製造方法
まず、PDP11のSTEP1について説明する。STEP1はS1、S1’、S2の工程を備える。S1は前面板20の製造方法であり、S1’は背面板の製造方法であり、S2は前面板20と背面板30の組立工程である。
【0021】
2−1、前面板20の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面基板上に、走査電極3および維持電極4が形成される。走査電極3は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極3a、4aと、透明電極3a、4aに積層された銀(Ag)などからなるバス電極3b、4bとから構成されている。維持電極4は、ITOなどの透明電極3a、4aと、透明電極3a、4aに積層されたAgなどからなるバス電極3b、4bとから構成されている。
【0022】
バス電極3b、4bの材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面基板1に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。
【0023】
次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極3b、4bが形成される。
【0024】
ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0025】
次に、誘電体層5が形成される。誘電体層5の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極3、維持電極4を覆うように前面基板1上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層5が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層5となる膜を形成することもできる。
【0026】
次に、誘電体層5上に保護層6が形成される。
【0027】
以上の工程により前面基板1上に走査電極3、維持電極4、誘電体層5および保護層6を有する前面板20が完成する。以上の前面板20の製造ステップをSTEP1のS1とする。
【0028】
2−2、背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面基板2上に、データ電極8が形成される。データ電極8の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面基板2上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、データ電極8が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0029】
次に、絶縁体層7が形成される。絶縁体層7の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、絶縁体ペーストが所定の厚みでデータ電極8が形成された背面基板2上にデータ電極8を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融するその後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、絶縁体層7が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、絶縁体層7となる膜を形成することもできる。
【0030】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁9が形成される。隔壁9の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで絶縁体層7上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁9が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0031】
次に、蛍光体層10が形成される。蛍光体層10の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁間の絶縁体層7上および隔壁9の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層10が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0032】
以上の工程により、背面基板2上に、データ電極8、絶縁体層7、隔壁9および蛍光体層10を有する背面板30が完成する。以上の背面板30の製造ステップをSTEP1のS1’とする。
【0033】
2−3、前面板20と背面板30との組立方法
まず、ディスペンス法などによって、背面板の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極とデータ電極8とが直交するように、前面板20と背面板とが対向配置される。
【0034】
さらに、前面板20と背面板の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板20と背面板とが気密封着される。最後に、放電空間にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP11が完成する。以上のPDP組み立てステップをSTEP1のS2とする。
【0035】
2−4、パネル工程
図5に示すように、STEP1で製造されたPDP11をパネル工程(以後、STEP2とする)にてパネル化する。パネル工程は、エージング工程(以後、S3とする)と、パネル検査工程(以後、S4とする)と、圧着工程(以後、S5とする)と、張り合わせ工程(以後、S6とする)と、を備える。S3では保護層6を平滑化し、放電を安定させることを目的にPDP11のエージングを行う。S4ではPDP11としての点灯状態などの品質確認を行う。S5ではPDP11に駆動波形を印加するためのフレキシブル配線板(図示せず)の圧着を行う。S6ではPDP11とフィルターとの張り合わせを行う。以上までの製造ステップをSTEP2とする。
【0036】
2−5、セット工程
図4に示すように、上記STEP2で製造されたPDP11をセット工程で製品化する(以後、STEP3と記載する)。セット工程は、シャーシ張り合わせ工程(以後、S7とする)と、組み立て工程(以後、S8とする)と、ユニット検査工程(以後、S9とする)と、を備える。S7では、PDP11とシャーシ部材44との張り合わせを行う。S8では、シャーシに駆動回路、前面フレーム、バックカバー42、スタンドなどの組み立てを行い、製品状態にする。前面フレームはPDP11の表示面側の枠である。具体的には、バックカバー42には、PDP11や回路基板45などで発生した熱を外部に放出するための複数の通気孔42aが設けられている。回路基板45は、シャーシ部材44の背面側に取付けられてPDP11の駆動とその制御を行うための電気回路を備えている。回路基板45は、PDP11の縁部に引き出された電極引出部(図示せず)と複数のフレキシブル配線板(図示せず)とによってPDP11に電気的に接続されている。また、バックカバー42や回路基板45は、シャーシ部材44の接合部材36が接着接合された面と反対側の取付け面47に設けられた固定ピンなどの取付け具48に固定される。そして、バックカバーは、PDP11や回路基板45を背面から覆うように、前面枠41に取り付けられる。最後に、スタンドでPDP11を自立させる。S9では出荷前の点灯状態などの品質確認を行う。
【0037】
3、誘電体層中の泡による破泡
ここで、図6(a)に示すように、STEP1で製造されたPDP11の誘電体層5もしくは絶縁体層7が形成される際に、誘電体ペーストもしくは絶縁体ペーストに含まれる泡70と共にダイコートされる場合がある。その結果、泡70が存在したまま誘電体ペーストもしくは絶縁体ペーストが焼成され、誘電体層5もしくは絶縁体層7に泡70が含まれる。この誘電体層5もしくは絶縁体層7に含まれる泡70は、STEP1、STEP2、STEP3の各工程で加えられる圧力や振動などによって破泡してしまう恐れがある。具体的には、例えば、STEP1のS2で隔壁9と前面板20とが衝突することで泡70が破泡する。そして、STEP2のS6では、PDP11とフィルターの張り合わせ時の押し圧などで泡70が破泡する。また、各工程間の輸送時に加えられる振動や市場出荷後に加えられた衝撃などによっても泡70が破泡する場合がある。この泡70が破泡すると、放電空間に対して表示電極がむきだしとなり、表示電極がむきだしとなった放電セルSにおいて放電が発生することで、表示電極に過電流が流れ、前面板20及び背面板の絶縁体層7の破壊が起こりうる(図(6b)参照)。絶縁体層7の破壊が起こると、駆動回路が破壊され、絶縁体層の破壊が起こった放電セルSが不灯となり、PDP11の品質に大きな影響を及ぼす。
【0038】
したがって、S3のPDP11に放電を発生させる工程やS4やS9などの点灯状態などの品質確認を行う検査工程において、滅点が確認された場合、泡70の破泡によって放電セルSが不灯となっている恐れがあるため、製造ラインからPDP11が外される。しかし、泡70の破泡は上記に記載したように複数の工程および工程間において発生するため、S3、S4またはS9などの検査を通り抜けて市場に出てしまう可能性がある。
【0039】
4、破泡スクリーニングの方法
そこで、本発明では、放電空間において放電するエージング工程より前の工程で誘電体層5または絶縁体層7の少なくともいずれかに超音波が与えられることを特徴とする。これにより、市場不良を未然に防いだ信頼性の高い高歩留まりのPDP装置40を提供することができる。
【0040】
具体的には、本実施の形態において、S3の工程の前において前面板20の誘電体層5に含まれる泡70を破泡することで、S3で泡70が破泡したPDP11の誘電体層5の部分が破壊をし、放電セルSが不灯となる。不灯となった放電セルSを有するPDP11はS3のパネルエージング工程においてスクリーニングされ、製造ライン上から外されるため、将来的に不良セルになりうる可能性を有するPDP11が市場に出回ることを未然に防ぐことができる。
【0041】
本実施の形態では、図7に示すように、S1の保護層6形成後のステージ50に超音波装置60(日本ヒューチャア製W−2005−28)が予め設けられている。
【0042】
この超音波装置60から超音波領域における周波数の超音波を前面基板1へ向けて5秒間連続して当てる。ここで、超音波領域は、20kHz以上80kH以下と定義する。本実施の形態では、この超音波装置60から周波数25kHzの超音波を前面基板1へ向けて5秒間連続して当てる。
【0043】
その結果、前面板20全体が微小振動し、その振動によって保護層6及び誘電体層5にクラックが生じ、泡70部分にクラックが生じた場合、泡70が破泡する。
【0044】
このように、S3の工程の前において、誘電体層5の泡70を破泡させることで、S3でのエージング時に、泡70が破泡したセルが誘電体層5の破壊を起こす。この誘電体層5の破壊を起こしたPDP11をS3後の工程に流動させないことで、S4、S9の歩留まりを向上させ、更に市場品質向上にも繋がる。また、S4とS9の検査工程における検査工数が削減され、製造時間の短縮を実現することができる。
【0045】
なお、超音波を与える工程は、S3の工程より前であれば、どこに設けても構わない。例えば、前面基板に誘電体層5が形成された後であり、S3の工程より前であればいつでも構わない。また、前面板20と背面板30を張り合わせたPDP11の状態で超音波を与えてもよい。さらに、背面板30における絶縁体層7中に有する泡70を破泡させる場合は、背面基板上に絶縁体層が形成された後であり、S3の工程より前であればいずれのタイミングで超音波を与えても良い。超音波の周波数領域においては、20kHz以上80kHz以下である超音波領域であれば本実施の形態の限りではない。
【0046】
さらに、製造時間をより短縮させる場合は、10秒以下であれば望ましいので、10秒以下に設定すればよい。しかし、超音波の印加時間は本実施の形態の限りではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように本発明は、信頼性の高いプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0048】
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
3a、4a 透明電極
3b、4b バス電極
5 誘電体層
6 保護層
7 絶縁体層
8 データ電極
9 隔壁
10 蛍光体層
11 プラズマディスプレイパネル
12 画像信号処理回路
13 データ電極駆動回路
14 走査電極駆動回路
15 維持電極駆動回路
16 タイミング発生回路
S 放電セル
20 前面板
30 背面板
36 接合部材
40 PDP装置
41 前面枠
42 バックカバー
42a 通気孔
44 シャーシ部材
45 回路基板
47 取付け面
48 取付け具
50 ステージ
60 超音波装置
70 泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面基板に複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面基板に複数のデータ電極と絶縁体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、表示電極対とデータ電極とが交叉するように前記前面板と前記背面板とを放電空間を介して対向配置して周囲を封着したプラズマディスプレイパネルであって、
前記放電空間において放電するエージング工程より前の工程で前記誘電体層または前記絶縁体層の少なくともいずれかに超音波が与えられることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記放電空間に放電するエージング工程より前の工程で前記誘電体層に前記超音波が与えられることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記超音波は、20kHz以上80kHz以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記超音波は、10秒以下の期間に連続して与えられることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93267(P2013−93267A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235770(P2011−235770)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】