説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】優れた帯電防止性能及び光学特性を備えるハードコート積層体を備えたプラズマディスプレイ装置を提供すること。
【解決手段】透明基材の一方の面上に帯電防止性を有するハードコート層を積層してなるハードコート積層体を有する前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置であって、前記ハードコート層は五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含み、前記五酸化アンチモンはハードコート層中に三次元網目構造を形成して分散している、ことを特徴とするプラズマディスプレイ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート積層体を前面に配置したプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化、薄型化に伴い、プラズマディスプレイ(以下、PDPと略称する場合がある。)が注目を集めている。
PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、PDP装置に用いられるPDPパネルの前面側(観察者側)に、画像光の透過性は維持した上で、漏洩する電磁波を遮蔽(シールド)するためのフィルム状の電磁波シールド部材を設けるのが一般的である。
この様な用途に用いる電磁波遮蔽シートでは電磁波シールド性能と共に光透過性も要求される。従って、電磁波遮蔽シートとしては、樹脂フィルムからなる透明基材フィルムに接着剤で貼り合わせた銅箔等の金属箔をエッチングして導電体メッシュ層としたもの等が知られている。
なお、本発明において単に電磁波という場合は、周波数が上記範囲を中心とするKHz〜GHz帯近辺の電磁波のことをいう。赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
また、PDPでは電磁波と共に近赤外線も発生する。PDPの前面より発生する波長800〜1,200nmの近赤外線は、他のビデオレコーダなどで近赤外線を利用する機器を誤作動させる。そこで、赤外線遮断機能として近赤外線を遮断するフィルタ機能も必要がある。
【0003】
また、PDPの前面に配置する前面フィルタには、PDPから放射する不要な光(例えばPDPではネオン発光による波長590nm付近のネオン光)を遮断してネオン光による表示画像の色再現性の低下を防ぐNe光吸収機能、表示画像の色相を補正する色補正機能、などのフィルタ機能も求められることがある。
【0004】
例えば、PDP用の前面フィルタとしては、電磁波遮蔽シートと光学フィルタとの積層体からなる複合フィルタが提案されている(特許文献1)。光学フィルタは、一方の面に接着剤層が積層されてなるものであり、当該光学フィルタは、透明基材と機能発現層とが積層されてなるものである。機能発現層としては、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層等の光学フィルタ機能層を必須とし、更に必要に応じハードコート層、防汚層、防眩層等が開示されている。
【0005】
また、(1)表面保護層、少なくとも一方の面に赤外線反射性の透明導電体膜を形成した透明基材フィルム、ネオン光吸収色素、及び色補正色素の2系統の色素が添加された粘着剤層、がこの順に積層された光学積層体から成る複合フィルタ、さらに上記(1)において、上記表面保護層が光反射防止機能を有する複合フィルタが提案されている(特許文献2)。
【0006】
このような表面保護層は、ハードコート層とも呼称され、フィルタ機能を満足するための基材として、透明性や硬度性に優れるアクリル樹脂等のプラスチック基材が使用されている。
しかし、このようなプラスチック基材は、絶縁特性が高いため帯電しやすく、埃等の付着による汚れが生じ、使用する場合のみならずPDP製造工程においても、帯電してしまうことにより障害が発生するといった問題があった。
【0007】
ハードコート層の帯電を防止するために、上記光学積層体の一部に帯電防止剤を含有した帯電防止層を設けることが、従来より行われている。
しかしながら、このような帯電防止剤を使用する場合、光学積層体の導電性を高めようとすると、帯電防止剤の添加量を多くせざるを得ず、その結果、光学積層体のヘイズが増大して光透過性が低下し、充分な光学特性が得られないといった問題があった。
そして、具体的な解決の試みとして、前面フィルタの表面或いは層内に、(i)界面活性剤(例えば特許文献3)、(ii)アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体又は合金の微粒子(例えば特許文献4)、(iii) アンチモンをドープした酸化錫(ATO)又はスズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物系の導電性超微粒子(例えば特許文献5)、(iv)水溶性または水分散性導電ポリマーの含有(例えば特許文献6)、(v)イオン導電性微粒子(例えば特許文献7)等の添加が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−36107号公報
【特許文献2】特開2008−9142号公報
【特許文献3】特開平5−339306号公報
【特許文献4】特開平11−42729号公報
【特許文献5】特開2002−3751号公報
【特許文献6】特開2004−338379号公報
【特許文献7】特開2005−154749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、帯電を防止するため、界面活性剤を添加すると経時により帯電防止剤が滲出(ブリードアウト)すること、帯電防止剤の添加により光透過性が低下する等の問題があった。
また、金属単体、合金、及び金属酸化物を添加した場合は、光学フィルタの導電性を高めようとすると、帯電防止剤の添加量を多くせざるを得ず、その結果、光学フィルタのヘイズが増大したり、或いは透明度が低下して光透過性が低下し、十分な光学特性が得られないといった問題があった。
本発明の目的は、上記問題に鑑み、優れた帯電防止性能及び光学特性を備えるハードコート積層体を備えたプラズマディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)透明基材の一方の面上に帯電防止性を有するハードコート層を積層してなるハードコート積層体を有する前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置であって、前記ハードコート層は五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含み、前記五酸化アンチモンはハードコート層中に三次元網目構造を形成して分散している、ことを特徴とするプラズマディスプレイ装置、
(2)前記(1)に記載の前面フィルタのハードコート層の表面に低屈折率樹脂層を積層してなる前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置、
(3)前記(1)又は(2)に記載の前面フィルタと、その他の機能層を積層した透明基板とを複合した前面フィルタを備えてなる、プラズマディスプレイ装置、及び
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の前面フィルタとプラズマディスプレイパネルとの間に、空隙又は他の付加的機能層を有する、プラズマディスプレイ装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、いずれの前面フィルタにも少なくとも含まれるハードコート積層体は、ハードコート層が五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含み、五酸化アンチモンはハードコート層中に三次元網目構造を形成して分散しているので、十分な帯電性能を有している。したがって、(i)前面フィルタの積層工程中及びプラズマディスプレイ装置の使用時の帯電を制止して塵埃付着や汚染を防止できる。
また、当該ハードコート層における(ii)帯電防止剤のブリードアウトや、(iii)
光線透過率の低下及び白濁(曇り)がなく、ブリードアウトによるベタつきがなく、光線透過率の高いハードコート層又は前面フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1態様発明のプラズマディスプレイ装置を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の第2態様発明のプラズマディスプレイ装置を模式的に示した説明図である。
【図3】本発明の第3態様発明のプラズマディスプレイ装置を模式的に示した説明図である。
【図4】本発明の第4態様発明のプラズマディスプレイ装置を模式的に示した説明図である。
【図5】本発明において、前面フィルタを粘着剤層で直接プラズマディスプレイパネル本体の前面に貼り付けたプラズマディスプレイ装置の例を模式的に示した説明図である。
【図6】本発明において、電磁波遮蔽層、コントラスト向上層を付加した前面フィルタを、前面に機能層を付加したプラズマディスプレイパネル本体に装着した場合の一例を模式的に示した説明図である。
【図7】本発明(実施例1)のハードコート層の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、図1に示す如く、透明基材1の一方の面上に帯電防止性を有するハードコート層2を積層してなるハードコート積層体20を有する前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置であって、前記ハードコート層2を含む前面フィルタ20は、少なくとも五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含み、前記五酸化アンチモンはハードコート層中に三次元網目構造を形成して分散している。プラズマディスプレイパネル本体10の画面側には、符号5で示す空隙又は付加的機能層を介在させて、ハードコート積層体20を有する前面フィルタを装着してなるプラズマディスプレイ装置である。
前記三次元網目構造とは、図7に示す如く、五酸化アンチモンが互いに導通がとれる程度に連続して隣接して分散しており、ハードコート積層体20の断面において網目状に存在しているのが観察される状態をいう。
このような特定の状態で五酸化アンチモンがハードコート層2中に分散して存在するため、五酸化アンチモンの添加量が少なくても、優れた帯電防止性能を発揮することができる。
なお、上記三次元網目構造は、本発明に用いるハードコート積層体の断面をSEM等で観察することにより確認することができる。
【0014】
ハードコート層に使用する五酸化アンチモンは、特に限定されないが、パイロクロア型構造を有するもの、導電性が高く、少量の添加で帯電防止性能を好適に付与し得るので好ましい。
上記五酸化アンチモンの形状は特に限定されず、棒状、針状、柱状、円柱状、真球状又は不定形等のものを挙げることができる。
【0015】
上記五酸化アンチモンの平均一次粒径は、10〜100nmであることが好ましい。10nm未満であると、上記三次元網目構造を形成できないおそれがある。100nmを超えると、適度な凝集を起こさず、上記三次元網目構造を形成できなかったり、凝集塊が大きくなってヘイズが高くなるおそれがある。上記平均一次粒径は、30〜70nmであることがより好ましい。
なお、上記平均一次粒径は、ヘテロダイン法により測定して得られた値である。
【0016】
上記五酸化アンチモンは、凝集していてもよいが、その凝集塊の粒径は、光の波長より小さいことが好ましい。すなわち、五酸化アンチモンの凝集塊の平均粒径は、380nm未満であることが好ましく、より好ましくは、50〜250nmである。
上記凝集塊の平均粒径は、SEMによる断面分析の方法により測定して得られた値である。
【0017】
上記五酸化アンチモンの含有量は、ハードコート層中15〜70質量%であることが好ましい。15質量%未満であると、三次元網目構造を構成せず、帯電防止性能が不充分となるおそれがある。70質量%を超えると、ヘイズが高くなったり、基材へのハードコート層の密着性が低下するおそれがある。上記五酸化アンチモンの含有量は、ハードコート層中20〜50質量%であることがより好ましい。
【0018】
上記ウレタン樹脂としては、特に限定されず、多価アルコールと有機ポリイソシアネートとの反応によって得られる公知のものを挙げることができる。
上記多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス−[ヒドロキシメチル]−シクロヘキサン等;上記多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール;上記多価アルコールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール(例えば、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等);及び、ポリエーテルポリオールを挙げることができる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0019】
上記有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルイソシアネート等のイソシアネート化合物、これらイソシアネート化合物の付加体、或いはこれらイソシアネートの多量体等が挙げられる。
【0020】
なかでも、上記ウレタン樹脂は、上記多価アルコール及び有機ポリイソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートの硬化物が好ましい。なお、本明細書では、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを表す。
【0021】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることが硬度の面から好ましい。
【0022】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が、1000以上10000未満であることが好ましい。1000未満であると、五酸化アンチモンによる三次元網目構造が構成できず、帯電防止性能が不充分となるおそれがある。10000以上であると、五酸化アンチモンの凝集が進むために、ヘイズの悪化、光透過率低下が起こってしまうおそれがある。基材との密着性が悪化する恐れもある。上記重量平均分子量は、1000以上7000以下であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)により得られる値である。
【0023】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、6官能以上であることが好ましい。上記ウレタン(メタ)アクリレートが6官能未満であると、ハードコート層の硬度が弱くなるおそれがある。
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、6〜15官能であることがより好ましい。
【0024】
上記ウレタン樹脂として、市販品を用いてもよい。本発明において上記ウレタン樹脂として使用できる市販品としては、例えば、日本合成化学工業社製:UV1700B(重量平均分子量2000、10官能)、UV7600B(重量平均分子量1500、6官能)、日本化薬社製:DPHA40H(重量平均分子量7000、10官能)、UX5003(重量平均分子量700、6官能)、根上工業社製:UN3320HS(重量平均分子量5000、15官能)、UN904(重量平均分子量4900、15官能)、UN3320HC(重量平均分子量1500、10官能)、UN3320HA(重量平均分子量1500、6官能)、荒川化学工業社製:BS577(重量平均分子量1000、6官能)、及び、新中村化学工業社製:U15HA(重量平均分子量2000、15官能)等を挙げることができる。
なかでも、帯電防止性能、硬度、基材との密着に優れる点から、UV1700B、DPHA40H、UV7600B、BS577、BS577CP、UX5000が好ましい。
さらに、耐久試験後の基材との密着性能の面から、UV1700B、DPHA40Hがより好ましい。
【0025】
上記ウレタン樹脂の含有量は、ハードコート層の樹脂成分中30〜70質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、五酸化アンチモンの割合が高くなり、全光線透過率が下がるおそれがある。また、基材との密着性が悪化するおそれがある。特に、耐久試験後の基材との密着性が悪化してしまうことがある。また、低屈折率層を更に積層した場合、低屈折率層との密着性が悪化するおそれがある。70質量%を超えると、五酸化アンチモンが上述の三次元構造をとらず、本発明の光学積層体の帯電防止性能が不充分となるおそれがある。
上記ウレタン樹脂の含有量は、ハードコート層の樹脂成分中30〜50質量%であることがより好ましい。
【0026】
上記ハードコート層はまた、上記ウレタン樹脂以外の樹脂を更に含んでいてもよい。
上記ウレタン樹脂以外の樹脂としては、例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0027】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、及び、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等との反応生成物(例えば、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0028】
また、上記電離放射線硬化型樹脂として、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
【0029】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができ、これによってより優れた艶黒感を得ることができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0030】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性に優れるという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0031】
上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0032】
バインダー樹脂として含有し得る上記ウレタン樹脂以外の樹脂としては、耐擦傷性、耐溶剤性に優れ、かつ、強靭な硬化塗膜を形成し得るようにできる点で、具体的には、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、(エトキシ化)ビスフェノールAジアクリレート、(プロポキシ化)ビスフェノールAジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(エトキシ化)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、(プロポキシ化)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、(エトキシ化)ネオペンチルグリコールジアクリレート、(プロポキシ化)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能のポリ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
なかでも、上記ハードコート層は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種の硬化物を更に含有することがより好ましい。
【0033】
上記ウレタン樹脂以外の樹脂の含有量は、ハードコート層中20〜50質量%であることが好ましい。20質量%未満であると、膜質が弱く、傷が入りやすくなるおそれがある。
また、基材との密着性が悪化するおそれがある。
50質量%を超えると、帯電防止性能が発揮されなくなるおそれがある。また、ハードコート層の上に、別の層を積層する際、層間の密着性が悪化してしまうおそれがある。
上記ウレタン樹脂以外の樹脂の含有量は、ハードコート層中30〜40質量%であることがより好ましい。
また、上記ハードコート層中の樹脂成分の総含有量は、30〜85質量%であることが好ましい。
【0034】
上記ハードコート層は、上述した五酸化アンチモン、ウレタン樹脂及びウレタン樹脂以外の樹脂の他に、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、光重合開始剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、紫外線吸収剤、衝撃吸収剤、粘度調整剤、有機系帯電防止剤、無機系帯電防止剤、高屈折率剤等を挙げることができる。
【0035】
上記ハードコート層は、層厚みが0.5〜8μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、鉛筆硬度や耐スクラッチ性が悪くなったり、干渉縞が発生するおそれがある。また、単位面積当たりの粒子総量が少なくなるため、帯電防止性が悪化してしまうおそれがある。8μmを超えると、ヘイズが高く、全光線透過率が低くなるおそれがある。
上記層厚みは、1〜6μmであることがより好ましい。
【0036】
上記ハードコート層は、上記五酸化アンチモン、ウレタン樹脂、及び、必要に応じてウレタン樹脂以外の樹脂と他の成分とを溶剤に混合して分散して調製したハードコート層用組成物を用いて形成することができる。
【0037】
上記溶剤としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、2−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕エタノール(TGME))等を挙げることができる。
なかでも、上記溶剤としては、五酸化アンチモンの分散性が良い点で、エーテルアルコールであることが好ましい。
【0038】
上記混合分散する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0039】
上記ハードコート層は、上記ハードコート層用組成物を、後述する透明基材上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて該塗膜を乾燥させた後に、硬化させることにより形成することができる。
上記塗布の方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
上記乾燥の方法としては、50〜100℃で15〜120秒行うのが好ましい。
【0040】
上記塗膜を硬化させる方法は、上記組成物の内容等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、上記組成物が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。
【0041】
本発明に用いるハードコート積層体におけるハードコート層は、上述したように、五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含む特定の成分からなり、該ハードコート層において、五酸化アンチモンが三次元網目構造を形成するように分散した状態で存在する。その結果、帯電防止性能及び光学特性に優れたハードコート積層体とすることができる。また、このようにして得られたハードコート層は、屈折率が比較的低いものとなるため、例えば、上記ハードコート層上に低屈折率層を設けた場合、干渉縞が発生しにくいハードコート積層体とすることができる。
【0042】
<透明基材>
本発明に用いるハードコート積層体は、透明基材を有する。
上記透明基材としては、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記透明基材を構成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。
【0043】
上記透明基材の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは下限が30μmであり、上限が200μmである。
上記透明基材は、その上に形成する層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、ケン化、酸化処理等の物理的な処理の他、アンカー剤又はプライマー等の塗料の塗布を予め行ってもよい。
本発明に用いるハードコート積層体は、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましい。
【0044】
また、本発明に用いるハードコート積層体は、表面抵抗値が1014Ω/□以下であることが好ましい。1014Ω/□を超えると、目的とする帯電防止性能が発現しなくなるおそれがある。上記表面抵抗値は、1012Ω/□以下であることがより好ましく、1011Ω/□以下であることが更に好ましい。
上記表面抵抗値は、表面抵抗値測定器(三菱化学製、製品番号;Hiresta IP MCP−HT260)にて測定することができる。
【0045】
本発明に用いるハードコート積層体は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、本発明のハードコート積層体をPDPパネル本体の画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、95%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0046】
本発明に用いるハードコート積層体は、ヘイズが5%以下であることが好ましい。5%を超えると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記ヘイズは、0.5〜1.5%であることがより好ましい。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0047】
本発明の第1態様では、このようにして得られたハードコート積層体を有する前面フィルタ20は、図1に示すようにPDP本体10の画面側に空隙又は付加機能を介して装着されて本発明のPDP装置100とされる。
すなわち、ハードコート積層体を有する前面フィルタ20のPDP本体10の画面側への装着は、透明性基材1のハードコート層2が形成された面と反対側に付加機能層として粘着剤層(図示省略)を形成し、当該粘着剤層によって、PDPパネル本体10の画像表示ガラス板(図示省略)の前面に直接貼り付けてもよいし、透明性基材1に粘着剤層を形成することなく、画像表示ガラス板と所定の空隙5を設けて配置してもよい。
【0048】
本発明の第2態様は、図2に示すようにさらに、前記前面フィルタ(ハードコート積層体)20のハードコート層2の表面に低屈折率層3を積層して成る前面フィルタ30を装着したPDP装置を提供する。
上記低屈折率層3は、上記ハードコート層よりも低い屈折率を有するものが好ましい。一般に、十分な反射防止効果を発現させる為には、低屈折率層3の屈折率NLは、光学の分野において周知のとおり、該隣接する層(本発明においてはハードコート層2)の屈折率NHの平方根(NL=(NH1/2)となるように設計することが最適である。ただし、現実的には、この最適値の屈折率を有する材料の選択が困難な場合も多いが、その場合は、できるだけこの最適値に近い屈折率値の材料を選択することが好ましい。より具体的には、上記ハードコート層の屈折率が1.50である場合、上記低屈折率層の屈折率NL=(NH1/2=(1.50)1/2)=1.23であることが理想的である。但し、この様な低屈折率を有する実用的な材料を得ることは困難の為、通常は、屈折率NLが1.3〜1.4の範囲の物を、後述するような材料の中から適宜選択する。
【0049】
低屈折率層を構成する材料としては、ケイ素酸化物、フッ化物、フッ素含有樹脂等が用いられ、具体的にはSiO2(屈折率n=1.45)、MgF2(屈折率n=1.38)、LiF(屈折率n=1.36)、NaF(屈折率n=1.33)、CaF2(屈折率n=1.44)、3NaF・AlF3(屈折率n=1.4)、AlF3(屈折率n=1.37)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)などがある。本発明においては、これらの無機材料を、真空蒸着、スパッタリンッグ等の方法により薄膜積層したり、或いはこれら無機材料を微粒子化し、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化性樹等のバインダー樹脂中に分散した材料が、容易に低屈折率層を設けることができる点で好ましい。
【0050】
なお、低屈折率層の形成にあっては、上記の低屈折率層を構成する材料に必要に応じて添加剤(例えば、重合開始剤、帯電防止剤、防汚剤、防眩剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を、低屈折率層用組成物として用いることができる。なお、重合開始剤、帯電防止剤、防汚剤、防眩剤等の添加剤は、公知のものを使用することができる。また、有機帯電防止剤を添加することで帯電防止性能を付与できる。
【0051】
また、低屈折率層には、空隙を有する微粒子を用いてもよい。空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率の増大にともなって屈折率が低下する微粒子を意味する。微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部及び/又は表面の少なくとも一部に微細空隙乃至微細気泡を包含したり、随伴したりする構造(ナノポーラス構造)の形成が可能な微粒子も含まれる。空隙を有する微粒子は、無機物、有機物のいずれでもあってよく、例えば、金属、金属酸化物、樹脂からなるものが挙げられ、好ましくは、酸化珪素(シリカ)微粒子が挙げられる。
【0052】
さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用することもできる。該5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルは、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法や、ケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。これらのシリカゾルは水系及び有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。前記シリカゾルはSiO2として0.5〜50質量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。
【0053】
上記溶剤としては、上述のハードコート層の形成において使用できる溶剤と同様の溶剤を挙げることができる。なかでも、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が好ましい。
【0054】
上記低屈折率層用組成物の調製方法は、成分を均一に混合できれば良く、公知の方法に従って実施すれば良い。例えば、上記ハードコート層の形成で上述した公知の装置を使用して混合分散することができる。
【0055】
本発明の第3の態様は、図3に示すように、前記ハードコート層2、又は前記ハードコート層2及び前記低屈折率層3とからなる前面フィルタ20又は30と、さらに、その他の機能層4aを透明基板12上に積層した前面フィルタ40を、プラズマディスプレイパネル本体の画面側に備えてなるプラズマディスプレイ装置を提供する。
本発明において、その他の機能層とは、既に述べたハードコート層、ハードコート層と低屈折率層で構成される反射防止層以外の機能層を意味する。また、その他の機能層を積層するとは、各機能層間に接着剤層(粘着剤層を含む)で接着する積層、或いは1の機能層上に直接他の機能層を直接形成する積層をも含み、さらに、透明基板を介して積層する場合をも含む概念である。
【0056】
〔その他の機能層〕
本発明において、その他の機能層としては、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色層、紫外線吸収層、所謂薄膜ミクロルーバ層からなるコントラスト向上層等の光学機能層(光学フィルタ層)、耐衝撃層(衝撃吸収層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等が挙げられる。機能層は単数又は接着剤で接着された複数の層よりなる。
なお、低屈折率層は最も上側(観察者側)に位置させ、耐衝撃層は、下側(PDP側)に位置させる。他の機能層は、いずれの位置にも位置させることができる。
また、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色(着色)層、紫外線吸収層は、接着剤層のいずれか1層以上に、当該吸収剤を含有させることにより、形成することができる。
以下、各種機能層、各種吸収剤について、主なものの概要を説明する。
【0057】
(電磁波遮蔽層)
本発明のその他の機能層に用いられる電磁波遮蔽層は、透明基材にATO、ITO等の透明性導電性酸化物を薄膜状に形成したもの、或いは透明性基材に所定の導電性パターンをメッシュ状に形成したもの等、PDP本体からの電磁波を遮蔽できる導電性能を有していれば、その構成を問わない。
メッシュ状パターンを有する電磁波遮蔽層としては、本出願人の出願に係るWO2010/064630に記載の電磁波シールド材が、印刷メッシュパターンによるものなので環境汚染がなく、パターンが堅牢にして、低電気抵抗性、低コスト性等の特徴を有するので実用的であり、推奨できる。
本出願人による当該電磁波遮蔽層は、図6の符号80で示すように、透明基材81の表面に形成されたプライマー層82と、導電パターン層83、平坦化層84から構成されており、特殊な凹版印刷法によるため、導電パターン層とプライマー層の界面が高い密着強度を発現できる構造を有している。
【0058】
(コントラスト向上層)
コントラスト向上層はミクロルーバ層とも呼ばれるもので、例えば特開2007−272161号公報、特表2009−539139号公報等で開示されている公知のものを適宜採用することができる。
ミクロルーバ層は、例えば図6に符号70で示すように、透明樹脂層71の中に複数條の吸光性楔形部72を互いに平行に一定周期で埋設してなる。かかるミクロルーバ層は、日光、電燈光等の外光を吸光性楔形部で選択的に吸収し、画像光は吸光性楔形部間の透明樹脂層から透過せしめて、外光存在下での画像コントラストを向上せしめる。
なお、吸光性楔形部内には、墨(カーボンブラック)、黒色酸化鉄等から成る暗色(代表的には黒色)色素を添加する。該黒色色素は、単一粒子が各個分離独立した形でバインダー樹脂中に分散(2次凝集無しで分散)したものでも良いが、外光吸收性、安定分散性等の点で、各個の単一粒子の複数個が2次凝集、会合、融合、乃至は接着した複合粒子の形でバインダー樹脂中に分散した形態の方が好ましい。
ミクロルーバ層においては、暗色線条部の主切断面(該延在方向と直交する切断面)の形状は台形形形状であるが、三角形、四角形、五角形、六角形、円の一部(例えば、半円)、楕円の一部(例えば、半楕円)等も選択できる。
なお、暗色線条部の大きさとその配列周期は、用途により適宜設定し、台形形形状とする場合、長い方の底辺の大きさは10〜50μm、短い方の底辺の大きさは0〜50μm(但し、通常は、長い方の底辺の長さは超えない)、配列周期20〜500μmの範囲である。また、ミクロルーバ層の厚みは、20〜200μm、暗色線条部の高さは20〜150μm(但し、通常は、ミクロルーバ層の厚みは超えない)の範囲である。
【0059】
(近赤外線吸収層)
近赤外線吸収層に添加する近赤外線吸収剤は、本発明のPDP装置の前面フィルタに適用する場合、PDPがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長領域を吸収し、且つ可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長領域では吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。そして、接着剤層に添加する場合、上記近赤外線領域での近赤外線の吸収量が、透過率でいえば20%以下、更に好ましくは10%以下となるように、近赤外線吸収剤の種類、近赤外線吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このような近赤外線吸収剤としては、具体的には、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、シアニン系、アゾ系、ポリメチン系、キノン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系等の化合物、或いはジチオール金属錯体等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸収剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸収剤が挙げられ、耐久性の面から、無機系近赤外線吸収剤が好ましい。
このうち、金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどの微粒子が挙げられる。
これらの中で、光学特性、即ち、近赤外線の高吸収率と可視光線の高透過率との両立性の点からは、ジイモニウム系化合物が好ましい。また、光学特性に加えて、更に高湿高湿度条件下における分光透過率特性の変化に対する耐久性の点からは、フタロシアニン系化合物、或いは酸化タングステン系化合物が好ましく、特にセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから特に好適である。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、該吸収層中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0060】
(ネオン光吸収層)
ネオン光吸収層に添加するネオン光吸収剤は、本発明のPDP装置の複合フィルタ、又は前面フィルタに適用する場合、PDPから放射されるネオン光を吸収させる色素である。該ネオン光は、ネオン原子の発光スペクトル帯域、即ち550〜640nmの波長領域(ネオン光領域)を吸収し、且つ該波長領域を除いた可視光領域380nm〜780nmの波長領域中ではなるべく吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。また、吸収波長領域中の吸収極大波長における透過率変化の半値幅は50nm以下であることが好ましい。
そして、接着剤層に添加する場合、上記Ne光領域の中心波長を590nmとすれば、該590nmにおける光線の透過率が50%以下になるように、ネオン光吸収剤、ネオン光吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このようなネオン光吸収剤としては、具体的には、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系の有機化合物等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系化合物が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば十分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0061】
(調色層)
調色層に添加する調色光吸収剤は、表示画像を好みの色調(天然色、或いは天然色から多少偏移した色)に補正するための色素である。このような調色光吸収剤としては、有機系色素、無機系色素などを1種単独使用、又は2種以上併用することができる。具体的には、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の化合物からなる色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層中に0.01〜10質量%程度含有する。
【0062】
(紫外線吸収層)
紫外線吸収層に添加する紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系等の有機系化合物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、或いは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体等の無機系化合物からなる公知の化合物を用いることができる。
なお、紫外線吸収剤を添加する場合、他の吸収剤(色素)を外来光から保護するために、他の吸収剤(色素)を添加した層と同じ層か、或いはその層よりも観察者側に近い層に添加する。また、耐光性が堅牢な色素を使用する場合は、紫外線吸収剤の添加は不要である。
【0063】
〔接着剤層(粘着剤層)〕
接着剤層は、各種機能層同士、或いは本発明のハードコート積層体、前面フィルタをPDPパネル本体の画像表示ガラス板前面又は前面フィルタ用透明基板12に接着する役割を有する層であり、また、各種吸収剤を含有させることで各種光学機能層となり得る層である。
接着剤層に用いる接着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の接着剤の中から、接着性(粘着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。各種の天然又は合成樹脂が使用でき、硬化形態としては熱又は電離放射線硬化樹脂などが適用できる。
好適に用いられる接着剤は、粘着剤と呼称される形態のものである。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0064】
(透明基板)
この第3態様の発明において用いられる、例えば図3に示すように前面フィルタ40を担持するための透明基板12は、可視領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。
ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0065】
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、先に透明基材の樹脂として例示したものが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートは、その2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基板である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等である。
【0066】
透明基板12の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
【0067】
なお、透明基板に樹脂を用いる場合、樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加できる。
また、透明基板は、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
【0068】
本発明の第4態様のPDP装置は、第1〜第3態様の前面フィルタをPDPパネルに装着するに際し、前面フィルタとPDP装置の間に空隙を設けるか、さらに前面フィルタのPDP本体側、又はPDP本体の前面ガラス等にその他の付加的機能層を直接形成して、前面フィルタを装着(設置)するものである。
図4は、前述の前面フィルタ20,30,40と要すればさらに透明基材乃至透明基板13を積層して、その表面にその他の機能層4cを設けた前面フィルタ50を、前面に設けた機能層4dを有するPDP本体10と、空隙5を隔てて対峙させた状態で装着するか、少なくとも機能層4c又は4dの表面を粘着剤層として貼り付ける場合のPDP装置103を示している。
PDP本体103の前面ガラス等に直接形成するその他の付加的機能層4dとしては、例えば電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層等を挙げることができる。
一方、前面フィルタ側の透明基板13(12)の一方の面(視聴者側)に、前記ハードコート層、前記低屈折率層、及びその他の機能層から選ばれる少なくとも何れか一層を積層したPDP装置103とすることができる。
【0069】
図5は、透明基材1の一方の面上に形成されたハードコート層2、低屈折率層3を有するか有しない形態で、他方の面にその他の機能層4aを形成した前面フィルタ60を粘着剤層6で直接PDP本体10に貼り合わせたPDP装置104を示している。
【0070】
一方、図6は、機能層4bとしてコントラスト向上層70及び電磁波遮蔽層80を含む
前面フィルタ90を有するPDP装置105を示している。
【実施例】
【0071】
次に、本発明についてハードコート積層体の製造例、実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。
【0072】
ハードコート積層体の製造
(製造例1)
UV硬化型導電性ハードコートインキ(ペルノックス社製、製品名;C4106、固形分約32%、五酸化アンチモン分散体)に、UV硬化型ウレタンアクリレート/ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)の質量比が65/35の混合体であるウレタン樹脂(日本合成化学株式会社製、製品名;UV−7600B)、及び光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名;イルガキュア184)を、下記の混合溶剤Aにて固形分が45%になるように調整してハードコート層用組成物Aを得た。得られたハードコート層用組成物Aの配合比率を表1に示す。
混合溶剤Aは、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、及びアセチルアセトンの4成分系のものであり、これらをPGME/MEK/IPA/アセチルアセトン=65/24/5/6の質量比とした。
透明基材として、干渉縞対策と易接着対策がされた厚み100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、A1598)の干渉縞対策面に、前記ハードコート層用組成物Aを、乾燥重量6g/m2を目標の塗布量として塗布して塗膜を形成し、オーブンにて70℃で1分間加熱して該塗膜を乾燥させ、さらに、塗膜に紫外線50mJ/cm2を照射して該塗膜を硬化させて、製造例1のハードコート積層体を作製した。
【0073】
【表1】

【0074】
(製造例2)
UV−7600Bの代わりに、UN904(根上工業株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/DPHA=80/20の混合体)とPET30(日本化薬株式会社製、PETA)とを質量比7:3で混合したものを使用した点以外は実施例1と同様にして、製造例2のハードコート積層体を作製した。
【0075】
(製造例3)
UV−7600Bの代わりに、UV1700B(日本合成化学株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/DPHA=60/40の混合体)を使用した点以外は製造例1と同様にして、製造例3のハードコート積層体を作製した。
【0076】
(製造例4)
UV−7600Bの代わりに、DPHA40H(日本化薬株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/DPHA=60/40の混合体)を使用した点以外は実施例1と同様にして、製造例4のハードコート積層体を作製した。
【0077】
(製造例5)
UV−7600Bの代わりに、BS577(荒川化学工業株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/PETA=30/70の混合体)を使用した点以外は製造例1と同様にして、製造例5のハードコート積層体を作製した。
【0078】
(製造例6)
C4106の配合量を26.025部から50.5部に増大した点以外は、製造例1と同様にして、製造例6のハードコート積層体を作製した。
【0079】
(製造例7)
UV−7600Bの代わりに、UV−7600B(日本合成化学株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/PETA=65/35の混合体)とPETAとを質量比60/40で混合したものを使用した点以外は製造例1と同様にして、製造例7のハードコート積層体を作製した。
【0080】
(製造例8)
UV−7600Bの代わりに、UV−7600B(日本合成化学株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/PETA=65/35の混合体)と、 M315(東亜合成株式会社製、モノマー)とを質量比60/40で混合したものを使用した点以外は製造例1と同様にして、製造例8のハードコート積層体を作製した。
【0081】
(製造例9)
C4106の配合量を26.025部から78.0部に増大した点以外は、製造例1と同様にして、製造例9のハードコート積層体を作製した。
【0082】
(製造例10)
UV−7600Bの代わりに、UN904(根上工業株式会社製;UV硬化型ウレタンアクリレート/DPHA=80/20)の混合体)を使用した点以外は製造例1と同様にして、製造例10のハードコート積層体を作製した。
【0083】
(製造例11)
ハードコート層の表面に低屈折率層を有する前面フィルタの製造
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)の片面に、上述の製造例1のハードコート層用組成物Aを乾燥重量6g/m2で塗布し、塗膜を形成した。これを、70℃にて1分乾燥し、塗膜に紫外線50mJ/cm2を照射してハードコート層を形成した。
次に、形成したハードコート層の上に、下記組成の低屈折率層用組成物を、乾燥後(70℃×1分)の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行って該塗膜硬化させて、製造例11の前面フィルタを得た。上記膜厚は、反射率の極小値が波長550nm付近になるように調整した。
【0084】
(低屈折率層用組成物)
中空状処理シリカ微粒子(該シリカ微粒子の固形分は20質量%溶液;メチルイソブチルケトン、平均粒径50nm) 65質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 10質量部
重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名;イルガキュア127)
0.35質量部
シリコーンオイル(X22164E;信越化学社製) 1質量部
MIBK 320質量部
PGME 161質量部
【0085】
得られた製造例11の前面フィルタは、後述の測定法による評価において、表面抵抗値が「○」、ヘイズが「0.4」、密着性「○」、硬度「3H」であった。
また、五酸化アンチモンを含むハードコート層は、図7に断面のSEM写真(倍率5000倍)を示すように、三次元網目構造を呈していた。
【0086】
(比較製造例1)
UV−7600Bの代わりに、UT−4660(日本合成化学株式会社性;UV硬化型ウレタンアクリレート/PETA=20/80)を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例1のハードコート積層体を作製した。
【0087】
(比較製造例2)
UV−7600Bの代わりに、UV−7600B/PET30(日本化薬株式会社製;PETA)=10/90の混合品を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例2のハードコート積層体を作製した。
【0088】
(比較製造例3)
UV−7600Bの代わりに、PET30(日本化薬株式会社製;PETA)を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例3のハードコート積層体を作製した。
【0089】
(比較製造例4)
UV−7600Bの代わりに、DPHA(日本化薬株式会社製;6官能モノマー)を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例4のハードコート積層体を作製した。
【0090】
(比較製造例5)
UV−7600Bの代わりに、BS371(荒川化学株式会社製;エポキシアクリレート)を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例5のハードコート積層体を作製した。
【0091】
(比較製造例6)
UV−7600Bの代わりに、M8030(東亜合成株式会社製;ポリエステルアクリレート)を使用した点以外は製造例1と同様にして、比較製造例6のハードコート積層体を作製した。
【0092】
(比較製造例7)
C4106の配合量を26.025部から5.5部に変更した点以外は、製造例1と同様にして、比較製造例7のハードコート積層体を作製した。
【0093】
(比較製造例8)
帯電防止材料を、五酸化アンチモンからATOに変更した点以外は、製造例1と同様にして、比較製造例8のハードコート積層体を作製した。
【0094】
上記で得られたハードコート積層体について、下記の項目について評価した。評価結果を表2に示す。
(表面抵抗値測定)
上記で得られた光学積層体の表面抵抗値を、三菱化学社製Hiresta IP MCP−HT260にて測定し、下記の基準にて評価した。
◎:1×1010Ω/□未満
○:1×1010Ω/□以上〜1013Ω/□未満
×:1013Ω/□以上
【0095】
(ヘイズ)
PET基材面側をガラスに粘着させて、ハードコート積層体のヘイズを、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定した。
【0096】
(密着性)
得られたハードコート積層体のハードコート層のフィルムの密着性については、クロスカット基盤目試験を行い、元のカット部数(100)に対するテープを剥がした後に基材上に残存したカット部数の比について、下記の基準にて評価した。
○:90/100〜100/100
△:50/100〜89/100
×:0/100〜49/100
【0097】
(鉛筆硬度)
各ハードコート積層体を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度HB〜3H)を用いて、JISK5600−5−4(1999)が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、4.9Nの荷重にて、ハードコート層が形成された表面の鉛筆硬度を測定した。
【0098】
上記各製造例1〜11及び比較製造例1〜8のハードコート層の組成と上記の評価による性能をまとめて表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表1より、各製造例のハードコート積層体は、帯電防止性に優れ、かつ、ヘイズも良好であった。
【0101】
実施例1
製造例11で得られた前面フィルタをPDP本体(パナソニック社製、型式TH−P42G1)の画像表示ガラスに粘着剤で直貼り装着し、室内で画像を観察したところ、室内照明器具の移り込みがなく、また、照度500ルクスの明るい部屋で画像を観察しても、コントラストも良く観察でき十分に反射防止効果を備えていた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、(i)プラズマディスプレイ装置の使用時の帯電を制止して塵埃付着や汚染を防止でき、また、当該ハードコート層における(ii)帯電防止剤のブリードアウトや、(iii)光線透過率の低下及び白濁(曇り)がないプラズマディスプレイ装置として利用できる。
【符号の説明】
【0103】
1、11、81 透明基材
2 ハードコート層
3 低屈折層
4、4a、4b、4c、4d 機能層
5 空隙又は機能層(粘着剤層を含む)
6 粘着剤層
10 PDPパネル本体
12、13 透明基板
20 前面フィルタ(ハードコート積層体)
30 前面フィルタ(ハードコート層、低屈折率層)
40 前面フィルタ(前面フィルタ30+その他の機能層)
50 前面フィルタ(前面フィルタ40等+その他の機能層)
60 前面フィルタ(ハードコート層、低屈折率層有無+機能層4a)
70 コントラスト向上層(ミクロルーバ層)
71 透明樹脂層
72 吸光性楔部
80 電磁波遮蔽層
81 透明基材
82 プライマー層
83 導電パターン層
84 平坦化樹脂層
100〜105 PDP装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面上に帯電防止性を有するハードコート層を積層してなるハードコート積層体を有する前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置であって、前記ハードコート層は五酸化アンチモン及びウレタン樹脂を含み、前記五酸化アンチモンはハードコート層中に三次元網目構造を形成して分散している、ことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前面フィルタのハードコート層の表面に低屈折率樹脂層を積層してなる前面フィルタを備えるプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前面フィルタと、その他の機能層を積層した透明基板とを複合した前面フィルタを備えてなる、プラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の前面フィルタとプラズマディスプレイパネルとの間に、空隙又は他の付加的機能層を有する、プラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203356(P2012−203356A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70611(P2011−70611)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】