プラズマディスプレイ製造方法およびプラズマディスプレイ用インク
【課題】PDP保護膜上にMgO粉を分散させるため、インク化し、スリットコータにより塗布するプロセスにおいて、PDP保護膜上に分散させるMgO粉がはじかれる現状(核なしはじき)が発生する。よって、核なしはじきの発生を抑制する製造方法とインクを提供する。
【解決手段】インクはMgO粉と溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cから構成される。蒸発する順番は、溶剤Aが先に蒸発し、溶剤Bと溶剤Cがほぼ同時に蒸発する。この時の表面張力の関係は、溶剤Aが一番小さく、溶剤Bが一番大きく、溶剤Cは溶剤Aとほぼ同等であることを特徴とする製造方法およびインク。
【解決手段】インクはMgO粉と溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cから構成される。蒸発する順番は、溶剤Aが先に蒸発し、溶剤Bと溶剤Cがほぼ同時に蒸発する。この時の表面張力の関係は、溶剤Aが一番小さく、溶剤Bが一番大きく、溶剤Cは溶剤Aとほぼ同等であることを特徴とする製造方法およびインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ製造方法およびプラズマディスプレイ用インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状、高品位テレビジョン画像を大画面で表示するためのディスプレイ装置として、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとも称す)を用いたディスプレイ装置への期待は高まっている。
【0003】
PDP(例えば3電極面放電型PDP)は、映像を見る人から見て表面側となる前面板とその裏側の背面板とを対向配置して、それらの周辺部を封着部材で封着した構造を有している。前面板と背面板との間に形成された放電空間には、ネオンおよびキセノンなどの放電ガスが封入されている。前面板は、ガラス基板の一方の面に形成された走査電極と維持電極とから成る表示電極と、これらの電極を覆う誘電体層と保護層とを備えている。背面板は、ガラス基板に上記表示電極と直交する方向にストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、これらのアドレス電極を覆う下地誘電体層と、放電空間をアドレス電極毎に区画する隔壁と、隔壁の側面および下地誘電体層上に形成された赤色・緑色・青色の蛍光体層とを備えている。
【0004】
表示電極とアドレス電極とは直交していて、その交差部が放電セルを成している。これらの放電セルはマトリクス状に配列されており、赤色・緑色・青色の蛍光体層を有する3個の放電セルがカラー表示のための画素となっている。このようなPDPでは、順次、走査電極とアドレス電極間、および走査電極と維持電極間に所定の電圧が印加されてガス放電を発生させている。そして、かかるガス放電で生じる紫外線により蛍光体層を励起して可視光を発光させることによってカラー画像表示を実現している。
【0005】
このようなPDPの保護層としては、放電によるイオン衝突から誘電体層を保護すると共に、2次電子放出による蛍光体の発光を促進すべく、「壁電荷保持機能を担う薄膜層」と「初期電子放出機能を担う結晶層」との2層構造の保護層が採用される場合がある。かかる保護層の原料としては、一般的には耐スパッタ性能に優れかつ2次電子放出係数の高い酸化マグネシウム(MgO)が用いられる。
【0006】
このような背景において、特許文献1では、MgO薄膜層の形成に蒸着法などを用いる一方、MgO結晶層の形成に、スリットコータ法を用いている。特に、特許文献1の第一の実施形態では、直径0.5〜10μmのMgO単結晶粉体を3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールとα−テルピネオールとから成る混合溶媒中に分散させることよって、スリットコータ用インクを調製している。
【0007】
特許文献1の第1の実施形態にて作成したインクにてスリットコータ法を用いてMgO結晶層を形成する場合には、図11に示すように、「MgO薄膜層上にMgO結晶粉体が存在しない領域」、或いは「周囲領域に比べてMgO結晶粉体の被覆率が低い領域」が形成されてしまう現象(以下、「はじき現象」と称す)が発生することがある。図11は従来の“はじき現象”の態様を模式的に表した斜視図である。
【0008】
「はじき現象」とは、MgO薄膜層の凸部51起因により生じるものと考えられており、MgO薄膜層の凸部51は、(A)誘電体突起物、(B)MgO薄膜層の蒸着成膜中において発生するMgOスプラッシュ起因のMgO異物、(C)MgO薄膜層形成過程において混入する環境異物などによって、PDP前面板の作製過程で偶発的または不可避的に生じてしまうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−295372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の方法として、特許文献1の第1の実施形態にて作製したインクにて、スリットコータ法を用いてMgO結晶層を形成する場合には、図3に示すように、「MgO薄膜層上にMgO結晶粉体が存在しない領域」、或いは「周囲領域に比べてMgO結晶粉体の被覆率が低い領域」が形成されてしまう現象(以下、「核なしはじき現象」と称す)が発生することがある。この現象が生じると、MgO薄膜層上におけるMgO結晶粉体の被覆率の均一性が減じられ、放電遅れの抑制・放電確率の均一化が困難になるという問題があった。なお、特許文献1記載の「はじき現象」と「核なしはじき現象」とは似ているが、異なるものである。「核なしはじき現象」は、MgO薄膜層の凸部51の存在がなくても生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、スリットコータ法における“核なしはじき現象”を抑制するプラズマディスプレイ製造方法およびプラズマディスプレイ用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法およびインクであって、
保護層の形成が、
(i)基板上に形成された誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、および、
(iii)MgO原料層を乾燥に付してMgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
第2保護層の形成に用いられるMgO原料は、MgO粉体と3種類の溶剤とを含んで成り、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下である。
【0013】
そして、3種類の溶剤とは溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとから構成される。全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上であり、溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である。これら上記を特徴とする製造方法およびインクを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法では、第2保護層の形成に際して、MgO原料の「核なしはじき現象」を抑制することができる。換言すれば、面内の被覆率が均一なMgO結晶層を形成でき、放電遅れの抑制・放電確率の均一化を図れる。その結果、選択不良等のない良好な放電特性を持つプラズマディスプレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PDPの構造を模式的に示す斜視図
【図2】本発明の製造方法で得られるPDPの前面板を模式的に表した断面図
【図3】“核なしはじき現象”の態様を模式的に表した斜視図
【図4】効果確認試験(1)における基板の外観写真を示す図
【図5】効果確認試験(1)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示す図
【図6】効果確認試験(1)における表面張力と溶媒混合比との関係を示す図
【図7】“ダマ”発生メカニズムを示す図
【図8】効果確認試験(2)における基板の外観写真を示す図
【図9】効果確認試験(2)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示す図
【図10】効果確認試験(2)における表面張力と溶媒混合比との関係を示す図
【図11】“はじき現象”の態様を模式的に表した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法を詳細に説明する。
【0017】
[プラズマディスプレイパネルの構成]
まず、本発明の製造方法を経ることによって最終的に得られるプラズマディスプレイパネル(PDP)を簡単に説明する。図1はPDPの構成を断面斜視図により模式的に示した図である。
【0018】
PDP100の前面板1では、平滑で透明かつ絶縁性の前面板側の基板10(例えばガラス基板)上に、走査電極12と維持電極13とから成る表示電極11が複数形成されており、その表示電極11を覆うように、前面板側の誘電体層15が形成される。更に、その前面板側の誘電体層15上に保護層16が形成されている。なお、走査電極12および維持電極13は、それぞれ、透明電極と、この透明電極に電気的に接続されたAg等から成るバス電極とから構成されている。なお、前面板側の基板10上には、遮光層14も形成され得る。
【0019】
前面板1に対向配置される背面板2では、絶縁性の背面板側の基板20上にアドレス電極21が複数形成され、このアドレス電極21を覆うように、背面板側の誘電体層22が形成されている。そして、かかる背面板側の誘電体層22上のアドレス電極21間に対応する位置に隔壁23が設けられ、誘電体層22の表面上の隣接する隔壁23の間には、赤、緑、青の各色の蛍光体層25がそれぞれ設けられている。
【0020】
表示電極11とアドレス電極21とが直交し、かつ、放電空間30が形成されるように、前面板1と背面板2とは、隔壁23を挟んで対向して配置されている。放電空間30には、放電ガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたはキセノンなどの希ガスが封入される。このような構成を有するPDP100では、隔壁23によって仕切られ、表示電極11とアドレス電極21とが交差する放電空間30が放電セル32として機能することになる。
【0021】
[PDPの一般的な製造法]
次に、このようなPDP100の典型的な製造方法について簡単に説明する。
【0022】
PDP100の製造は、前面板1の形成工程と背面板2の形成工程とに分かれている。まず、前面板1の形成工程においては、ガラス基板10上に、例えばスパッタ法などで透明電極を形成すると共に焼成法等でバス電極を形成することによって表示電極11を形成する。次いで、表示電極11を覆うように誘電体原料をガラス基板10上に塗布して加熱処理して誘電体層15を形成する。次いで、この誘電体層15上に、前述または後述する方法でMgOなどから成る膜を形成することで保護層16を形成し、前面板1を得ている。
【0023】
背面板2の形成工程においては、ガラス基板上に、例えば焼成法等でアドレス電極21を形成し、その上に誘電体原料を塗布して誘電体層22を形成する。次いで、所定のパターンで低融点ガラスから成る隔壁23を形成し、その隔壁23の間に蛍光体材料を塗布して焼成することによって蛍光体層25を形成する。次いで、基板の周縁部に例えば低融点フリットガラス材料を塗布し、焼成を行うことで封着部材(図1には図示せず)を形成し、背面板2を得ている。
【0024】
得られた前面板1と背面板2とを対向するように位置合わせし、その状態で固定したまま加熱して封着部材を軟化させることによって、前面板1と背面板2とを気密に接合する、いわゆるパネル封着工程を行う。引き続いて、加熱しながら放電空間30内のガスを排気する、いわゆる排気ベーキング工程を行った後、放電空間30内に放電ガスを封入することによって、PDP100を完成させる。
【0025】
[本発明の製造方法]
本発明の方法は、上述のPDPの製造に際して、前面板の製造、特に前面板に形成される保護層の製造に関している。
【0026】
図1および図2を参照して、本発明の実施形態を説明する。図2は本発明の製造方法で得られるPDPの前面板を模式的に表した断面図である。
【0027】
まず、本発明の実施に際しては、電極および誘電体層が形成された基板を用意する。より具体的には、「表示電極および誘電体層が形成されたガラス基板」を用意する。従って、まず、基板10上に、走査電極12と維持電極13とから構成される表示電極11が形成されたものを用意する。基板10としては、ソーダライムガラスや高歪み点ガラス、各種セラミックスからなる絶縁基板であることが好ましく、厚さは1.0mm〜3mm程度であることが好ましい。
【0028】
表示電極11の走査電極12および維持電極13には、それぞれ、ITO等から成る透明電極12a,13a(厚さ50nm〜500nm程度)が形成されていると共に、かかる透明電極上に表示電極の抵抗値を下げるべく、銀を含んで成るバス電極12b,13b(厚さ1μm〜8μm程度)が形成されている(図2参照)。従って、透明電極を薄膜プロセスなどで形成した後に、バス電極の焼成プロセスなどを経て形成する。特に、バス電極の形成に際しては、まず、銀を主成分とした導電性ペーストをスクリーン印刷法によりストライプ状に形成する。
【0029】
また、バス電極は銀を主成分とした感光性ペーストをダイコート法や印刷法により塗布した後に、100℃〜200℃で乾燥した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法によりパターンニングすることによってストライプ状に形成しても良い。更には、ディスペンス法やインクジェット法によって形成しても良い。そして、最終的には乾燥に付した後、400℃〜600℃の焼成に付すことによって、バス電極を得る。なお、透明電極上には、Al、CuまたはCr等の金属やCr/Cu/Crのような積層体からなる金属電極を形成しても良い。
【0030】
表示電極11の形成に引き続いて、誘電体層15を形成する。誘電体層15は、PDP前面板の一般的な製造で用いられる焼成法またはゾルゲル法などによって得ることができる。例えば、SiO2、B2O3、ZnO、Bi2O3を含むガラス粉末と有機溶剤とバインダ樹脂とを混合して成る誘電体原料ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、その後、熱処理に付すことによって誘電体層を形成することができる。誘電体層15の厚さは、好ましくは5〜30μm程度であり、より好ましくは10〜20μm程度である。なお、有機溶剤としてはアルコール類(例えばイソプロピルアルコール)やケトン類(例えばメチルイソブチルケトン)を挙げることができ、バインダ樹脂としては、セルロース系樹脂またはアクリル系樹脂などを挙げることができる。
【0031】
誘電体層15の形成に引き続いて、保護層を形成する。従って、本発明の製造方法の工程(i)を実施する。換言すれば、誘電体層上にスパッタ法(スパッタリング法)または蒸着法で第1保護層を形成する。好ましくは、酸化マグネシウム(MgO)を含んで成る第1保護層(即ち、MgO薄膜層)を形成する。形成される第1保護層の厚さは、好ましくは約0.1〜2μm程度であり、より好ましくは約0.5〜1μm程度である。蒸着法としては、CVDまたはPVDを用いて良い。なお、スパッタ法または蒸着法に限定されず、所望のMgO薄膜層を形成できるのであれば、必要に応じて他の手法を用いても良い。
【0032】
次いで、本発明の製造方法の工程(ii)を実施する。つまり、第1保護層(好ましくはMgO薄膜層)の上に、MgO原料を塗布してMgO原料層を形成する。用いられるMgO原料は、MgO粉体と溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとを含んで成るものである。MgO粉体は、好ましくはMgO結晶粉体(MgO微結晶粉体)であり、より好ましくはMgO単結晶粉体である。かかるMgO結晶粉体またはMgO単結晶粉体の粒径は、好ましくは約0.2〜20μm程度、より好ましくは約0.5〜10μm程度である。なお、MgO原料に含まれるMgO粉体の量は、好ましくは0.3〜20質量%(MgO原料基準)、より好ましくは0.3〜10質量%(MgO原料基準)、更に好ましくは0.3〜5質量%(MgO原料基準)であり、例えば約1質量%(MgO原料基準)である。
【0033】
MgO原料に含まれる溶剤は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cであり、後述する“乾燥時の対流”の観点から、各々の蒸気圧がある程度離れており、かつ表面張力差はできるだけ少ない必要がある。溶剤A,溶剤B、溶剤Cの20℃における表面張力の差が10mN/m以下であり、全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上であり、溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である。
【0034】
そして、その製造方法における溶剤Cの20℃における表面張力は、前溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、また、溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以上10mN/m以下であり、溶剤BおよびCの表面張力は溶剤Aより大きい。
【0035】
また、MgO原料に含まれる全溶剤に対する溶剤Bと溶剤Cとの和の割合(即ち溶剤Bおよび溶剤Cの含有率)は、3.5質量%以上である。ここで、本明細書で言う「全溶剤」とは、溶剤が溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cから成る場合では、「溶剤Aと溶剤Bと溶剤C」のことを実質的に意味しており、溶剤がその他の溶剤(つまり、少なくとも1種類の他の溶剤)を付加的に含む場合では「溶剤A、溶剤Bおよびその他の溶剤」のことを実質的に意味している。
【0036】
なお、全溶剤に対する溶剤Bの割合は、好ましくは3.5質量%以上かつ20質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以上かつ12質量%以下である。溶剤Aとしては、例えば3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、n−ヘプチルアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、n−ヘキシルアルコールまたは2−メチル−1−プロパノール等の有機溶剤をあげることができる。
【0037】
また、溶剤Bは親水基を含んだ親水性の溶剤が好ましく、例えばプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール系有機溶剤を挙げることができる。ただし、グリコール系の溶剤は、−OH基を2つ有するため、表面張力が強い傾向がある。そのため、溶剤Cは溶剤Bの表面張力を低減する役割を担うジエチレングリコールモノエチルエーテル2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール−3−メチルー1−アセテート等の有機溶剤を挙げることができる。
【0038】
MgO原料の塗布には、スリットコータ法を用いることが好ましい。「スリットコータ法」とは、巾広のノズルからペースト状原料を圧送吐出して所定の面にペースト状原料を塗布する方法である。かかるスリットコータ法を用いる場合、MgO原料はMgO粉体の凝集防止の観点から7mPa・s以下程度の粘度を有していることが好ましい。
【0039】
ここで、MgO原料は一般に非ニュートン性流体となり得るので、本明細書で用いる粘度は「ずり速度100s−1および温度25℃における粘度」を実質的に意味していることに留意されたい。MgO原料の粘度は、好ましくは3mPa・s以上かつ7mPa・s以下であり、より好ましくは4mPa・s以上かつ7mPa・s以下である。これは、前記スリットコータから7mPa・s以下の原料粘度が求められ、また、Mgo粉の沈降を抑制する点から、3mPa・s以上が望ましく、Mgo粉の粒子径に依存するが、4mPa・s以上の方が、Mgo粉の沈降を抑制する効果が大きいためである。
【0040】
MgO原料の塗布により形成されるMgO原料層の厚さ(以下、「Wet膜厚」とも称す)は、スリットコータ法を用いる場合には約5μm〜約13μm程度が好ましい。
【0041】
MgO原料層の形成が完了すると、次に、本発明の製造方法の工程(iii)を実施する。つまり、MgO原料層を乾燥に付してMgO原料層から第2保護層(即ち、MgO結晶層)を得る。ここでいう「乾燥」とは、MgO原料層に含まれている溶剤(より具体的にいえば溶剤A、溶剤B、溶剤C)を気化させてMgO原料層から除去することを実質的に意味している。例えば、MgO原料層を7〜0.1Paの減圧下または真空下に置いても良く、或いは、大気圧下で100〜400℃程度の熱処理に付しても良い。必要に応じて「減圧下または真空下」と「熱処理」とを組み合わせても良い。乾燥後に得られる第2保護層の厚さは、溶剤が抜けることに起因して、MgO原料層の厚さよりも減じられ、0.1〜5μm程度となり得る。
【0042】
以上の工程(i)〜(iii)によって、第1保護層(好ましくは、MgO薄膜層)と第2保護層(MgO結晶層)とから成る2層構造の保護層が形成され、前面板1が完成することになる。
【0043】
前面板1の作製に対して、背面板2は次のようにして作製する。まず、ガラス基板である基板(20)上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、銀を主成分とした金属膜を全面に形成した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする方法などによって前駆体層を形成し、それを所望の温度(例えば、約400〜約700℃)で焼成することによりアドレス電極21を形成する。次いで、アドレス電極21が形成された基板20上に、下地誘電体層となる誘電体層22を形成する。
【0044】
まず、「ガラス成分(SiO2、B2O3などから形成される材料)、及び、ビヒクル成分などを主成分とした誘電体原料ペースト」をダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、かかる誘電体ペースト層を焼成することによって誘電体層22を形成できる。次いで、隔壁23を所定のピッチで形成する。
【0045】
具体的には、誘電体層22上に隔壁形成用原料ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成し、その後、それを焼成に付して隔壁23を形成する。例えば、低融点ガラス材料、ビヒクル成分およびフィラー等を主成分とした原料ペーストをダイコート法または印刷法によって塗布して約100℃〜200℃の乾燥に付した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法でパターニングし、次いで、約400℃〜約700℃の焼成に付すことによって隔壁23を形成する。
【0046】
なお、隔壁23は、スクリーン印刷で隔壁材料の膜を形成したのち乾燥して、感光性樹脂を含むドライフィルムにより露光・現像処理でパターン形成した後、サンドブラストにより掘削し、ドライフィルムを剥離し、焼成することでも形成することができる。次いで、蛍光体層25を形成する。隣接する隔壁23間の誘電体層22上および隔壁23の側面に蛍光体材料を含む蛍光体原料ペーストを塗布し、焼成することによって蛍光体層25を形成する。より具体的には、蛍光体粉末およびビヒクル成分等を主成分とした原料ペーストをノズル吐出法などで塗布し、次いで、約100℃の乾燥に付すことによって蛍光体層25を形成する。なお、赤色の蛍光体粉末としては[YBO3:Eu3+]、緑色の蛍光体粉末としては[Zn2SiO4:Mn]、青色の蛍光体粉末としては[BaMgAl10O17:Eu2+]を用いることができる。
【0047】
以上の工程により、基板20上に、所定の構成部材たるアドレス電極21、誘電体層22、隔壁23および蛍光体層25が形成され、背面板2が完成する。
【0048】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板1と背面板2とは、表示電極11とアドレス電極21とが直交するように対向配置させる。次いで、前面板1と背面板2の周囲をガラスフリットで封着する。そして、形成される放電空間30内を排気した後、放電ガス(ヘリウム、ネオンおよび/またはキセノンなど)を好ましくは55kPa〜80kPaの圧力で封入することによってPDP100を最終的に完成させる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。例えば、第1保護層と第2保護層とから構成される保護層の「2層構造」は、第1保護層と第2保護層とが明確に区別できる態様のみならず、第1保護層と第2保護層とを明確に区別できない態様(例えば、第1保護層と第2保護層との間の界面が不明確な態様)であっても良い。
【0050】
(実施例)
第2保護層の形成に用いるMgO原料の望ましい組成および物性を調べるために試験を実施した。なお、以下で説明する試験では、MgO原料のことを便宜上「インク」と呼んでいる。
[インク溶剤成分の効果確認試験(1)]
MgOインクとして、以下の材料を含んだものを用いた。
・ MgO結晶粉体:0.5〜10μmのMgO単結晶粉体
・ 溶剤A:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
・溶剤B:プロピレングリコール
・溶剤C:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル
溶剤Cによる効果を確認するために、溶剤Aと溶剤Bのみのインクも調整した。表1に試験したインクの溶媒組成を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
MgO粉体濃度は全て0.7質量%とした。
【0053】
MgOインクの調製に際しては、上記材料から成る混合物2000gをMgO結晶粉体表面にチッピング等の格子欠陥を起こさないように、振幅が20μmで30分間超音波処理し、MgO結晶粉体を溶剤中に分散させた。
【0054】
得られたMgOインクを、蒸着法で形成したMgO薄膜層(厚さ0.7μm程度)の上に塗布した。具体的には、MgOインクをスリットコータ法でWet膜厚が12μmとなるように塗布した(出願人製作のスリットコータ設備使用)。次いで、雰囲気を1Paにまで減圧することで真空乾燥に付し、それによって、溶剤を気化させMgO結晶層(厚さ1.0μm程度)を形成した。
【0055】
なお、使用した基板は第1保護膜蒸着後に基板への吸水を促すため、クリーンルーム内で約2ヶ月放置した基板を使用した。図3に“核なしはじき現象”の態様を模式的に表した斜視図を示す。スリットコータ法でMgO結晶層を形成するに際しては、図3に示すような「MgO薄膜層にMgO結晶粉体が存在しない領域53」、或いは「周囲領域52に比べて被覆率が低い領域53」が形成されるといった“核なしはじき現象”が一般に生じ得る点に留意されたい。しかし、本実験で用いたインクでは、“核なしはじき”はほとんど見られなかった。ただし、副作用として後述する“ダマ”や“偏り”などの異なる現象を確認した。
【0056】
図4は、効果確認試験(1)における基板の外観写真である。走査型の電子顕微鏡を使い、150倍で撮影した。実験1−1、実験1−2、実験1−3で作成した基板の外観を図4に示す。写真中、白色に写っているものはMgO粉体である。また、写真に対して水平方向に前面板側の電極(表示電極)11が存在している。これらをみるに、実験1−3は、MgO粉の凝集体である直径10μm程度の“ダマ”の発生が顕著である。また、溶媒Bの濃度を薄めた実験1−2においては、電極上のMgO粉が少なくなる現象が見られる。ここでは、この現象を“偏り”と呼ぶ。実験1−1においては、MgO粉が電極上にも存在しており、バランスよく分散している。
【0057】
これらの結果を導くために、以下の検証を実施した。今回、用いた溶媒の代表的な物性を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実験1−1、1−2、1−3のインクの共通した考え方は次のとおりである。真空乾燥の過程において、まず、溶媒Aのほとんどが蒸発し、その後に、溶媒B、または溶媒Cの混合体が蒸発するものと推測される。
【0060】
溶媒Bと溶媒Cの蒸発性について評価するために以下の実験を実施した。溶媒単体を直径5mmの小さいカップに30mg程度入れて、減圧乾燥を行い、チャンバー内のある到達圧力ごとに溶媒の蒸発した質量を測定した(出願人製作の減圧乾燥設備使用)。図5は、効果確認試験(1)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示すグラフである。
【0061】
横軸にチャンバー内の到達圧力、縦軸に初期溶媒質量に対する蒸発後の質量比率を示す。溶媒Bと溶媒Cは、到達圧力10〜11Paにて、初期に対する溶媒の質量比は急激に減少している。これらから、溶媒Bと溶媒Cはほぼ同時に蒸発することが推測される。
【0062】
次に、乾燥中の表面張力を推定するために、溶媒Bと溶媒Cとの混合溶液の表面張力を測定した。図6は、効果確認試験(1)における表面張力と溶媒混合比との関係である。表面張力の測定はペンダントドロップ法で、各条件に対して5回行った。縦軸に表面張力の測定値、横軸に溶媒Bと溶媒Cとの混合比率を示す。各プロットは測定平均値を示し、最大値と最小値を各プロットに対する上下のエラーバーで示す。この結果から、溶媒Bと溶媒Cとの混合比率が1:1(50質量%)の時、混合溶媒の表面張力が31.5mN/mまで低減することが可能だと予測される。
【0063】
これら混合溶媒の表面張力を下げることは、すなわち、“ダマ”の発生を抑制する効果があると考えられる。図7は、“ダマ”発生メカニズムを図示したものである。ここで、参考までに“ダマ”の推定発生メカニズムについて、実験1−3を例にとって図7に記す。
(1)塗布直後
粒子と溶媒Aと溶媒Bとの混合溶媒で構成される均質な膜を形成する。
(2)乾燥初期
減圧乾燥により、溶媒Aを主成分とした溶媒の蒸発が始まる。溶媒Aは、表面張力 が溶媒Bに比べて小さい。溶媒Aが蒸発した後に残る溶媒は溶媒Bの含有量が多くなる ため、乾燥が進んだ箇所は表面張力が大きくなる。結果として、溶媒内に表面張力のバ ラツキが生じ、表面張力が低いところから高いところへ向けて対流が起きる。
(3)乾燥中期
対流の影響が大きくなり、粒子が対流する結果、ベナードセルとよばれるセルが発 生する。
(4)乾燥終期
溶媒Aのほとんどが蒸発し、残された溶媒は溶媒Bが主成分となり、表面張力差による対流は収束する。但し、ほぼ同時に残された溶媒Bは量が少ないため、粒子は対流の影響を受けたまま蒸着法で形成したMgO薄膜層上に定着する。このとき、粒子はセルの形状が少し崩れ、その結果“ダマ”となって定着する。
【0064】
上記の表面張力差を原因とする対流は、表面張力差が大きいほど対流が強いと考えられ、“ダマ”を抑制するには、表面張力差を小さくすることが有効だと考えられる。よって、溶媒Bの表面張力を低減する手段として、溶媒Cと混合することは、極めて有効であることがわかった。
【0065】
以上の結果から、MgO粉体の集合・凝集を防止でき、輝度が均一でスキャン特性が良好なPDPを得ることができることが分かった。
[インク溶剤成分の効果確認試験(2)]
MgOインクとして、以下の材料を含んだものを用いた。
・ MgO結晶粉体:0.5〜10μmのMgO単結晶粉体
・ 溶剤A:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
・溶剤B:プロピレングリコール
・溶剤D:ジエチレングリコールモノエチルエーテル2−(2−エトキシエトキシ)エタノール
溶剤Dによる効果を確認するために、溶剤Aと溶剤Bのみのインクも調整した。表3に試験したインクの溶媒組成を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
MgO粉体濃度は全て0.7質量%とした。
【0068】
MgOインクの調製に際しては、上記材料から成る混合物2000gをMgO結晶粉体表面にチッピング等の格子欠陥を起こさないように、振幅が20μmで30分間超音波処理し、MgO結晶粉体を溶剤中に分散させた。
【0069】
得られたMgOインクを、蒸着法で形成したMgO薄膜層(厚さ0.7μm程度)の上に塗布した。具体的には、MgOインクをスリットコータ法でWet膜厚が12μmとなるように塗布した(出願人製作のスリットコータ設備使用)。次いで、雰囲気を1Paにまで減圧することで真空乾燥に付し、それによって、溶剤を気化させMgO結晶層(厚さ1.0μm程度)を形成した。
【0070】
なお、使用した基板は一部吸水していると考えられ、それゆえ、スリットコータ法でMgO結晶層を形成するに際しては、図3に示すような「MgO薄膜層にMgO結晶粉体が存在しない領域53」或いは「周囲領域52に比べて被覆率が低い領域53」が形成されるといった“核なしはじき現象”が一般に生じ得る点に留意されたい。しかし、本実験で用いたインクでは、“核なしはじき”はほとんど見られなかった。但し、副作用として後述する“ダマ”や“偏り”などの異なる現象を確認した。
【0071】
図8は、効果確認試験(2)における基板の外観写真である。走査型の電子顕微鏡を使い、150倍で撮影した。実験2−1、実験1−2、実験1−3で作成した基板の外観を図8に示す。写真中、白色に写っているものはMgO粉体である。また、写真に対して水平方向に前面板側の電極(表示電極)11が存在している。これらをみるに、実験1−3は、MgO粉の凝集体である直径10μm程度の“ダマ”の発生が顕著である。また、溶媒Bの濃度を薄めた実験1−2においては、電極上のMgO粉が少なくなる現象が見られる。ここでは、この現象を“偏り”と呼ぶ。実験2−1においては、MgO粉が電極上にも存在しており、バランスよく分散している。
【0072】
これらの結果を導くために、以下の検証を実施した。今回、用いた溶媒の代表的な物性を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
実験2−1,1−2、1−3のインクの共通した考え方は次の通りである。真空乾燥の過程において、まず、溶媒Aのほとんどが蒸発し、その後に、溶媒B、または溶媒Dの混合体が蒸発するものと推測される。
【0075】
溶媒Bと溶媒Dの蒸発性について評価するために以下の実験を実施した(出願人製作の減圧乾燥設備使用)。図9は、効果確認試験(2)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を表すグラフである。溶媒単体を直径5mmの小さいカップに30mg程度入れて、減圧乾燥を行い、チャンバー内のある到達圧力ごとに溶媒の蒸発した質量を測定した。
【0076】
横軸にチャンバー内の到達圧力、縦軸に初期溶媒質量に対する蒸発後の質量比率を示す。これらから溶媒Dがチャンバー内の到達圧力20Pa程度で先に蒸発しつつ、一緒に溶媒Bも蒸発し、予測ではあるが、混合溶媒の蒸発のしかたを見る限り、最後に溶媒Bが残って蒸発が進むと考えられる。
【0077】
次に、乾燥中の表面張力を推定するために、溶媒Bと溶媒Dとの混合溶液の表面張力を測定した。図10は、効果確認試験(2)における表面張力と溶媒混合比との関係を表すグラフである。表面張力の測定はペンダントドロップ法で、各条件に対して5回行った。縦軸に表面張力の測定値、横軸に溶媒Bと溶媒Dとの混合比率を示す。各プロットは測定平均値を示し、測定値の最大値と最小値を各プロットに対する上下のエラーバーで示す。この結果から、溶媒Bと溶媒Dとの混合比率が1:1(50質量%)の時、混合溶媒の表面張力が32.6mN/mまで低減することが可能だと予測される。
【0078】
上記の表面張力差を原因とする対流は、表面張力差が大きいほど対流が強いと考えられ、“ダマ”を抑制するには、表面張力差を小さくすることが有効だと考えられる。よって、溶媒Bの表面張力を低減する手段として、溶媒Dと混合することは、極めて有効であることがわかった。
【0079】
以上の結果から、MgO粉体の集合・凝集を防止でき、輝度が均一でスキャン特性が良好なPDPを得ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の製造方法を通じて最終的に得られるPDPは、良好な放電特性を有するので、一般家庭向けのプラズマテレビおよび商業用プラズマテレビとして好適に用いることができる他、その他の各種表示デバイスとしても好適に用いることができる。また、本発明の製造方法は、PDPに限定されず、他の製品分野でも活用することができる。例えば、電池・電子部品等の分野において、ポリマー・分散剤を含有しないインクをスリットコータ法で凹凸の存在する基板に塗布して、被覆率が極めて均一な粉体層を形成するといった用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
11 前面板側の電極(表示電極)
12 走査電極
12a 透明電極
12b バス電極
13 維持電極
14 ブラックストライプ(遮光層)
21 背面板側の電極(アドレス電極)
23 隔壁
25 蛍光体層
30 放電空間
32 放電セル
51 MgO薄膜層の凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ製造方法およびプラズマディスプレイ用インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状、高品位テレビジョン画像を大画面で表示するためのディスプレイ装置として、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとも称す)を用いたディスプレイ装置への期待は高まっている。
【0003】
PDP(例えば3電極面放電型PDP)は、映像を見る人から見て表面側となる前面板とその裏側の背面板とを対向配置して、それらの周辺部を封着部材で封着した構造を有している。前面板と背面板との間に形成された放電空間には、ネオンおよびキセノンなどの放電ガスが封入されている。前面板は、ガラス基板の一方の面に形成された走査電極と維持電極とから成る表示電極と、これらの電極を覆う誘電体層と保護層とを備えている。背面板は、ガラス基板に上記表示電極と直交する方向にストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、これらのアドレス電極を覆う下地誘電体層と、放電空間をアドレス電極毎に区画する隔壁と、隔壁の側面および下地誘電体層上に形成された赤色・緑色・青色の蛍光体層とを備えている。
【0004】
表示電極とアドレス電極とは直交していて、その交差部が放電セルを成している。これらの放電セルはマトリクス状に配列されており、赤色・緑色・青色の蛍光体層を有する3個の放電セルがカラー表示のための画素となっている。このようなPDPでは、順次、走査電極とアドレス電極間、および走査電極と維持電極間に所定の電圧が印加されてガス放電を発生させている。そして、かかるガス放電で生じる紫外線により蛍光体層を励起して可視光を発光させることによってカラー画像表示を実現している。
【0005】
このようなPDPの保護層としては、放電によるイオン衝突から誘電体層を保護すると共に、2次電子放出による蛍光体の発光を促進すべく、「壁電荷保持機能を担う薄膜層」と「初期電子放出機能を担う結晶層」との2層構造の保護層が採用される場合がある。かかる保護層の原料としては、一般的には耐スパッタ性能に優れかつ2次電子放出係数の高い酸化マグネシウム(MgO)が用いられる。
【0006】
このような背景において、特許文献1では、MgO薄膜層の形成に蒸着法などを用いる一方、MgO結晶層の形成に、スリットコータ法を用いている。特に、特許文献1の第一の実施形態では、直径0.5〜10μmのMgO単結晶粉体を3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールとα−テルピネオールとから成る混合溶媒中に分散させることよって、スリットコータ用インクを調製している。
【0007】
特許文献1の第1の実施形態にて作成したインクにてスリットコータ法を用いてMgO結晶層を形成する場合には、図11に示すように、「MgO薄膜層上にMgO結晶粉体が存在しない領域」、或いは「周囲領域に比べてMgO結晶粉体の被覆率が低い領域」が形成されてしまう現象(以下、「はじき現象」と称す)が発生することがある。図11は従来の“はじき現象”の態様を模式的に表した斜視図である。
【0008】
「はじき現象」とは、MgO薄膜層の凸部51起因により生じるものと考えられており、MgO薄膜層の凸部51は、(A)誘電体突起物、(B)MgO薄膜層の蒸着成膜中において発生するMgOスプラッシュ起因のMgO異物、(C)MgO薄膜層形成過程において混入する環境異物などによって、PDP前面板の作製過程で偶発的または不可避的に生じてしまうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−295372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の方法として、特許文献1の第1の実施形態にて作製したインクにて、スリットコータ法を用いてMgO結晶層を形成する場合には、図3に示すように、「MgO薄膜層上にMgO結晶粉体が存在しない領域」、或いは「周囲領域に比べてMgO結晶粉体の被覆率が低い領域」が形成されてしまう現象(以下、「核なしはじき現象」と称す)が発生することがある。この現象が生じると、MgO薄膜層上におけるMgO結晶粉体の被覆率の均一性が減じられ、放電遅れの抑制・放電確率の均一化が困難になるという問題があった。なお、特許文献1記載の「はじき現象」と「核なしはじき現象」とは似ているが、異なるものである。「核なしはじき現象」は、MgO薄膜層の凸部51の存在がなくても生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、スリットコータ法における“核なしはじき現象”を抑制するプラズマディスプレイ製造方法およびプラズマディスプレイ用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板の製造方法およびインクであって、
保護層の形成が、
(i)基板上に形成された誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、および、
(iii)MgO原料層を乾燥に付してMgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
第2保護層の形成に用いられるMgO原料は、MgO粉体と3種類の溶剤とを含んで成り、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下である。
【0013】
そして、3種類の溶剤とは溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとから構成される。全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上であり、溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である。これら上記を特徴とする製造方法およびインクを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法では、第2保護層の形成に際して、MgO原料の「核なしはじき現象」を抑制することができる。換言すれば、面内の被覆率が均一なMgO結晶層を形成でき、放電遅れの抑制・放電確率の均一化を図れる。その結果、選択不良等のない良好な放電特性を持つプラズマディスプレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PDPの構造を模式的に示す斜視図
【図2】本発明の製造方法で得られるPDPの前面板を模式的に表した断面図
【図3】“核なしはじき現象”の態様を模式的に表した斜視図
【図4】効果確認試験(1)における基板の外観写真を示す図
【図5】効果確認試験(1)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示す図
【図6】効果確認試験(1)における表面張力と溶媒混合比との関係を示す図
【図7】“ダマ”発生メカニズムを示す図
【図8】効果確認試験(2)における基板の外観写真を示す図
【図9】効果確認試験(2)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示す図
【図10】効果確認試験(2)における表面張力と溶媒混合比との関係を示す図
【図11】“はじき現象”の態様を模式的に表した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法を詳細に説明する。
【0017】
[プラズマディスプレイパネルの構成]
まず、本発明の製造方法を経ることによって最終的に得られるプラズマディスプレイパネル(PDP)を簡単に説明する。図1はPDPの構成を断面斜視図により模式的に示した図である。
【0018】
PDP100の前面板1では、平滑で透明かつ絶縁性の前面板側の基板10(例えばガラス基板)上に、走査電極12と維持電極13とから成る表示電極11が複数形成されており、その表示電極11を覆うように、前面板側の誘電体層15が形成される。更に、その前面板側の誘電体層15上に保護層16が形成されている。なお、走査電極12および維持電極13は、それぞれ、透明電極と、この透明電極に電気的に接続されたAg等から成るバス電極とから構成されている。なお、前面板側の基板10上には、遮光層14も形成され得る。
【0019】
前面板1に対向配置される背面板2では、絶縁性の背面板側の基板20上にアドレス電極21が複数形成され、このアドレス電極21を覆うように、背面板側の誘電体層22が形成されている。そして、かかる背面板側の誘電体層22上のアドレス電極21間に対応する位置に隔壁23が設けられ、誘電体層22の表面上の隣接する隔壁23の間には、赤、緑、青の各色の蛍光体層25がそれぞれ設けられている。
【0020】
表示電極11とアドレス電極21とが直交し、かつ、放電空間30が形成されるように、前面板1と背面板2とは、隔壁23を挟んで対向して配置されている。放電空間30には、放電ガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたはキセノンなどの希ガスが封入される。このような構成を有するPDP100では、隔壁23によって仕切られ、表示電極11とアドレス電極21とが交差する放電空間30が放電セル32として機能することになる。
【0021】
[PDPの一般的な製造法]
次に、このようなPDP100の典型的な製造方法について簡単に説明する。
【0022】
PDP100の製造は、前面板1の形成工程と背面板2の形成工程とに分かれている。まず、前面板1の形成工程においては、ガラス基板10上に、例えばスパッタ法などで透明電極を形成すると共に焼成法等でバス電極を形成することによって表示電極11を形成する。次いで、表示電極11を覆うように誘電体原料をガラス基板10上に塗布して加熱処理して誘電体層15を形成する。次いで、この誘電体層15上に、前述または後述する方法でMgOなどから成る膜を形成することで保護層16を形成し、前面板1を得ている。
【0023】
背面板2の形成工程においては、ガラス基板上に、例えば焼成法等でアドレス電極21を形成し、その上に誘電体原料を塗布して誘電体層22を形成する。次いで、所定のパターンで低融点ガラスから成る隔壁23を形成し、その隔壁23の間に蛍光体材料を塗布して焼成することによって蛍光体層25を形成する。次いで、基板の周縁部に例えば低融点フリットガラス材料を塗布し、焼成を行うことで封着部材(図1には図示せず)を形成し、背面板2を得ている。
【0024】
得られた前面板1と背面板2とを対向するように位置合わせし、その状態で固定したまま加熱して封着部材を軟化させることによって、前面板1と背面板2とを気密に接合する、いわゆるパネル封着工程を行う。引き続いて、加熱しながら放電空間30内のガスを排気する、いわゆる排気ベーキング工程を行った後、放電空間30内に放電ガスを封入することによって、PDP100を完成させる。
【0025】
[本発明の製造方法]
本発明の方法は、上述のPDPの製造に際して、前面板の製造、特に前面板に形成される保護層の製造に関している。
【0026】
図1および図2を参照して、本発明の実施形態を説明する。図2は本発明の製造方法で得られるPDPの前面板を模式的に表した断面図である。
【0027】
まず、本発明の実施に際しては、電極および誘電体層が形成された基板を用意する。より具体的には、「表示電極および誘電体層が形成されたガラス基板」を用意する。従って、まず、基板10上に、走査電極12と維持電極13とから構成される表示電極11が形成されたものを用意する。基板10としては、ソーダライムガラスや高歪み点ガラス、各種セラミックスからなる絶縁基板であることが好ましく、厚さは1.0mm〜3mm程度であることが好ましい。
【0028】
表示電極11の走査電極12および維持電極13には、それぞれ、ITO等から成る透明電極12a,13a(厚さ50nm〜500nm程度)が形成されていると共に、かかる透明電極上に表示電極の抵抗値を下げるべく、銀を含んで成るバス電極12b,13b(厚さ1μm〜8μm程度)が形成されている(図2参照)。従って、透明電極を薄膜プロセスなどで形成した後に、バス電極の焼成プロセスなどを経て形成する。特に、バス電極の形成に際しては、まず、銀を主成分とした導電性ペーストをスクリーン印刷法によりストライプ状に形成する。
【0029】
また、バス電極は銀を主成分とした感光性ペーストをダイコート法や印刷法により塗布した後に、100℃〜200℃で乾燥した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法によりパターンニングすることによってストライプ状に形成しても良い。更には、ディスペンス法やインクジェット法によって形成しても良い。そして、最終的には乾燥に付した後、400℃〜600℃の焼成に付すことによって、バス電極を得る。なお、透明電極上には、Al、CuまたはCr等の金属やCr/Cu/Crのような積層体からなる金属電極を形成しても良い。
【0030】
表示電極11の形成に引き続いて、誘電体層15を形成する。誘電体層15は、PDP前面板の一般的な製造で用いられる焼成法またはゾルゲル法などによって得ることができる。例えば、SiO2、B2O3、ZnO、Bi2O3を含むガラス粉末と有機溶剤とバインダ樹脂とを混合して成る誘電体原料ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、その後、熱処理に付すことによって誘電体層を形成することができる。誘電体層15の厚さは、好ましくは5〜30μm程度であり、より好ましくは10〜20μm程度である。なお、有機溶剤としてはアルコール類(例えばイソプロピルアルコール)やケトン類(例えばメチルイソブチルケトン)を挙げることができ、バインダ樹脂としては、セルロース系樹脂またはアクリル系樹脂などを挙げることができる。
【0031】
誘電体層15の形成に引き続いて、保護層を形成する。従って、本発明の製造方法の工程(i)を実施する。換言すれば、誘電体層上にスパッタ法(スパッタリング法)または蒸着法で第1保護層を形成する。好ましくは、酸化マグネシウム(MgO)を含んで成る第1保護層(即ち、MgO薄膜層)を形成する。形成される第1保護層の厚さは、好ましくは約0.1〜2μm程度であり、より好ましくは約0.5〜1μm程度である。蒸着法としては、CVDまたはPVDを用いて良い。なお、スパッタ法または蒸着法に限定されず、所望のMgO薄膜層を形成できるのであれば、必要に応じて他の手法を用いても良い。
【0032】
次いで、本発明の製造方法の工程(ii)を実施する。つまり、第1保護層(好ましくはMgO薄膜層)の上に、MgO原料を塗布してMgO原料層を形成する。用いられるMgO原料は、MgO粉体と溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとを含んで成るものである。MgO粉体は、好ましくはMgO結晶粉体(MgO微結晶粉体)であり、より好ましくはMgO単結晶粉体である。かかるMgO結晶粉体またはMgO単結晶粉体の粒径は、好ましくは約0.2〜20μm程度、より好ましくは約0.5〜10μm程度である。なお、MgO原料に含まれるMgO粉体の量は、好ましくは0.3〜20質量%(MgO原料基準)、より好ましくは0.3〜10質量%(MgO原料基準)、更に好ましくは0.3〜5質量%(MgO原料基準)であり、例えば約1質量%(MgO原料基準)である。
【0033】
MgO原料に含まれる溶剤は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cであり、後述する“乾燥時の対流”の観点から、各々の蒸気圧がある程度離れており、かつ表面張力差はできるだけ少ない必要がある。溶剤A,溶剤B、溶剤Cの20℃における表面張力の差が10mN/m以下であり、全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上であり、溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である。
【0034】
そして、その製造方法における溶剤Cの20℃における表面張力は、前溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、また、溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以上10mN/m以下であり、溶剤BおよびCの表面張力は溶剤Aより大きい。
【0035】
また、MgO原料に含まれる全溶剤に対する溶剤Bと溶剤Cとの和の割合(即ち溶剤Bおよび溶剤Cの含有率)は、3.5質量%以上である。ここで、本明細書で言う「全溶剤」とは、溶剤が溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cから成る場合では、「溶剤Aと溶剤Bと溶剤C」のことを実質的に意味しており、溶剤がその他の溶剤(つまり、少なくとも1種類の他の溶剤)を付加的に含む場合では「溶剤A、溶剤Bおよびその他の溶剤」のことを実質的に意味している。
【0036】
なお、全溶剤に対する溶剤Bの割合は、好ましくは3.5質量%以上かつ20質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以上かつ12質量%以下である。溶剤Aとしては、例えば3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、n−ヘプチルアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、n−ヘキシルアルコールまたは2−メチル−1−プロパノール等の有機溶剤をあげることができる。
【0037】
また、溶剤Bは親水基を含んだ親水性の溶剤が好ましく、例えばプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール系有機溶剤を挙げることができる。ただし、グリコール系の溶剤は、−OH基を2つ有するため、表面張力が強い傾向がある。そのため、溶剤Cは溶剤Bの表面張力を低減する役割を担うジエチレングリコールモノエチルエーテル2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール−3−メチルー1−アセテート等の有機溶剤を挙げることができる。
【0038】
MgO原料の塗布には、スリットコータ法を用いることが好ましい。「スリットコータ法」とは、巾広のノズルからペースト状原料を圧送吐出して所定の面にペースト状原料を塗布する方法である。かかるスリットコータ法を用いる場合、MgO原料はMgO粉体の凝集防止の観点から7mPa・s以下程度の粘度を有していることが好ましい。
【0039】
ここで、MgO原料は一般に非ニュートン性流体となり得るので、本明細書で用いる粘度は「ずり速度100s−1および温度25℃における粘度」を実質的に意味していることに留意されたい。MgO原料の粘度は、好ましくは3mPa・s以上かつ7mPa・s以下であり、より好ましくは4mPa・s以上かつ7mPa・s以下である。これは、前記スリットコータから7mPa・s以下の原料粘度が求められ、また、Mgo粉の沈降を抑制する点から、3mPa・s以上が望ましく、Mgo粉の粒子径に依存するが、4mPa・s以上の方が、Mgo粉の沈降を抑制する効果が大きいためである。
【0040】
MgO原料の塗布により形成されるMgO原料層の厚さ(以下、「Wet膜厚」とも称す)は、スリットコータ法を用いる場合には約5μm〜約13μm程度が好ましい。
【0041】
MgO原料層の形成が完了すると、次に、本発明の製造方法の工程(iii)を実施する。つまり、MgO原料層を乾燥に付してMgO原料層から第2保護層(即ち、MgO結晶層)を得る。ここでいう「乾燥」とは、MgO原料層に含まれている溶剤(より具体的にいえば溶剤A、溶剤B、溶剤C)を気化させてMgO原料層から除去することを実質的に意味している。例えば、MgO原料層を7〜0.1Paの減圧下または真空下に置いても良く、或いは、大気圧下で100〜400℃程度の熱処理に付しても良い。必要に応じて「減圧下または真空下」と「熱処理」とを組み合わせても良い。乾燥後に得られる第2保護層の厚さは、溶剤が抜けることに起因して、MgO原料層の厚さよりも減じられ、0.1〜5μm程度となり得る。
【0042】
以上の工程(i)〜(iii)によって、第1保護層(好ましくは、MgO薄膜層)と第2保護層(MgO結晶層)とから成る2層構造の保護層が形成され、前面板1が完成することになる。
【0043】
前面板1の作製に対して、背面板2は次のようにして作製する。まず、ガラス基板である基板(20)上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、銀を主成分とした金属膜を全面に形成した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする方法などによって前駆体層を形成し、それを所望の温度(例えば、約400〜約700℃)で焼成することによりアドレス電極21を形成する。次いで、アドレス電極21が形成された基板20上に、下地誘電体層となる誘電体層22を形成する。
【0044】
まず、「ガラス成分(SiO2、B2O3などから形成される材料)、及び、ビヒクル成分などを主成分とした誘電体原料ペースト」をダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、かかる誘電体ペースト層を焼成することによって誘電体層22を形成できる。次いで、隔壁23を所定のピッチで形成する。
【0045】
具体的には、誘電体層22上に隔壁形成用原料ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成し、その後、それを焼成に付して隔壁23を形成する。例えば、低融点ガラス材料、ビヒクル成分およびフィラー等を主成分とした原料ペーストをダイコート法または印刷法によって塗布して約100℃〜200℃の乾燥に付した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法でパターニングし、次いで、約400℃〜約700℃の焼成に付すことによって隔壁23を形成する。
【0046】
なお、隔壁23は、スクリーン印刷で隔壁材料の膜を形成したのち乾燥して、感光性樹脂を含むドライフィルムにより露光・現像処理でパターン形成した後、サンドブラストにより掘削し、ドライフィルムを剥離し、焼成することでも形成することができる。次いで、蛍光体層25を形成する。隣接する隔壁23間の誘電体層22上および隔壁23の側面に蛍光体材料を含む蛍光体原料ペーストを塗布し、焼成することによって蛍光体層25を形成する。より具体的には、蛍光体粉末およびビヒクル成分等を主成分とした原料ペーストをノズル吐出法などで塗布し、次いで、約100℃の乾燥に付すことによって蛍光体層25を形成する。なお、赤色の蛍光体粉末としては[YBO3:Eu3+]、緑色の蛍光体粉末としては[Zn2SiO4:Mn]、青色の蛍光体粉末としては[BaMgAl10O17:Eu2+]を用いることができる。
【0047】
以上の工程により、基板20上に、所定の構成部材たるアドレス電極21、誘電体層22、隔壁23および蛍光体層25が形成され、背面板2が完成する。
【0048】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板1と背面板2とは、表示電極11とアドレス電極21とが直交するように対向配置させる。次いで、前面板1と背面板2の周囲をガラスフリットで封着する。そして、形成される放電空間30内を排気した後、放電ガス(ヘリウム、ネオンおよび/またはキセノンなど)を好ましくは55kPa〜80kPaの圧力で封入することによってPDP100を最終的に完成させる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。例えば、第1保護層と第2保護層とから構成される保護層の「2層構造」は、第1保護層と第2保護層とが明確に区別できる態様のみならず、第1保護層と第2保護層とを明確に区別できない態様(例えば、第1保護層と第2保護層との間の界面が不明確な態様)であっても良い。
【0050】
(実施例)
第2保護層の形成に用いるMgO原料の望ましい組成および物性を調べるために試験を実施した。なお、以下で説明する試験では、MgO原料のことを便宜上「インク」と呼んでいる。
[インク溶剤成分の効果確認試験(1)]
MgOインクとして、以下の材料を含んだものを用いた。
・ MgO結晶粉体:0.5〜10μmのMgO単結晶粉体
・ 溶剤A:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
・溶剤B:プロピレングリコール
・溶剤C:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル
溶剤Cによる効果を確認するために、溶剤Aと溶剤Bのみのインクも調整した。表1に試験したインクの溶媒組成を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
MgO粉体濃度は全て0.7質量%とした。
【0053】
MgOインクの調製に際しては、上記材料から成る混合物2000gをMgO結晶粉体表面にチッピング等の格子欠陥を起こさないように、振幅が20μmで30分間超音波処理し、MgO結晶粉体を溶剤中に分散させた。
【0054】
得られたMgOインクを、蒸着法で形成したMgO薄膜層(厚さ0.7μm程度)の上に塗布した。具体的には、MgOインクをスリットコータ法でWet膜厚が12μmとなるように塗布した(出願人製作のスリットコータ設備使用)。次いで、雰囲気を1Paにまで減圧することで真空乾燥に付し、それによって、溶剤を気化させMgO結晶層(厚さ1.0μm程度)を形成した。
【0055】
なお、使用した基板は第1保護膜蒸着後に基板への吸水を促すため、クリーンルーム内で約2ヶ月放置した基板を使用した。図3に“核なしはじき現象”の態様を模式的に表した斜視図を示す。スリットコータ法でMgO結晶層を形成するに際しては、図3に示すような「MgO薄膜層にMgO結晶粉体が存在しない領域53」、或いは「周囲領域52に比べて被覆率が低い領域53」が形成されるといった“核なしはじき現象”が一般に生じ得る点に留意されたい。しかし、本実験で用いたインクでは、“核なしはじき”はほとんど見られなかった。ただし、副作用として後述する“ダマ”や“偏り”などの異なる現象を確認した。
【0056】
図4は、効果確認試験(1)における基板の外観写真である。走査型の電子顕微鏡を使い、150倍で撮影した。実験1−1、実験1−2、実験1−3で作成した基板の外観を図4に示す。写真中、白色に写っているものはMgO粉体である。また、写真に対して水平方向に前面板側の電極(表示電極)11が存在している。これらをみるに、実験1−3は、MgO粉の凝集体である直径10μm程度の“ダマ”の発生が顕著である。また、溶媒Bの濃度を薄めた実験1−2においては、電極上のMgO粉が少なくなる現象が見られる。ここでは、この現象を“偏り”と呼ぶ。実験1−1においては、MgO粉が電極上にも存在しており、バランスよく分散している。
【0057】
これらの結果を導くために、以下の検証を実施した。今回、用いた溶媒の代表的な物性を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実験1−1、1−2、1−3のインクの共通した考え方は次のとおりである。真空乾燥の過程において、まず、溶媒Aのほとんどが蒸発し、その後に、溶媒B、または溶媒Cの混合体が蒸発するものと推測される。
【0060】
溶媒Bと溶媒Cの蒸発性について評価するために以下の実験を実施した。溶媒単体を直径5mmの小さいカップに30mg程度入れて、減圧乾燥を行い、チャンバー内のある到達圧力ごとに溶媒の蒸発した質量を測定した(出願人製作の減圧乾燥設備使用)。図5は、効果確認試験(1)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を示すグラフである。
【0061】
横軸にチャンバー内の到達圧力、縦軸に初期溶媒質量に対する蒸発後の質量比率を示す。溶媒Bと溶媒Cは、到達圧力10〜11Paにて、初期に対する溶媒の質量比は急激に減少している。これらから、溶媒Bと溶媒Cはほぼ同時に蒸発することが推測される。
【0062】
次に、乾燥中の表面張力を推定するために、溶媒Bと溶媒Cとの混合溶液の表面張力を測定した。図6は、効果確認試験(1)における表面張力と溶媒混合比との関係である。表面張力の測定はペンダントドロップ法で、各条件に対して5回行った。縦軸に表面張力の測定値、横軸に溶媒Bと溶媒Cとの混合比率を示す。各プロットは測定平均値を示し、最大値と最小値を各プロットに対する上下のエラーバーで示す。この結果から、溶媒Bと溶媒Cとの混合比率が1:1(50質量%)の時、混合溶媒の表面張力が31.5mN/mまで低減することが可能だと予測される。
【0063】
これら混合溶媒の表面張力を下げることは、すなわち、“ダマ”の発生を抑制する効果があると考えられる。図7は、“ダマ”発生メカニズムを図示したものである。ここで、参考までに“ダマ”の推定発生メカニズムについて、実験1−3を例にとって図7に記す。
(1)塗布直後
粒子と溶媒Aと溶媒Bとの混合溶媒で構成される均質な膜を形成する。
(2)乾燥初期
減圧乾燥により、溶媒Aを主成分とした溶媒の蒸発が始まる。溶媒Aは、表面張力 が溶媒Bに比べて小さい。溶媒Aが蒸発した後に残る溶媒は溶媒Bの含有量が多くなる ため、乾燥が進んだ箇所は表面張力が大きくなる。結果として、溶媒内に表面張力のバ ラツキが生じ、表面張力が低いところから高いところへ向けて対流が起きる。
(3)乾燥中期
対流の影響が大きくなり、粒子が対流する結果、ベナードセルとよばれるセルが発 生する。
(4)乾燥終期
溶媒Aのほとんどが蒸発し、残された溶媒は溶媒Bが主成分となり、表面張力差による対流は収束する。但し、ほぼ同時に残された溶媒Bは量が少ないため、粒子は対流の影響を受けたまま蒸着法で形成したMgO薄膜層上に定着する。このとき、粒子はセルの形状が少し崩れ、その結果“ダマ”となって定着する。
【0064】
上記の表面張力差を原因とする対流は、表面張力差が大きいほど対流が強いと考えられ、“ダマ”を抑制するには、表面張力差を小さくすることが有効だと考えられる。よって、溶媒Bの表面張力を低減する手段として、溶媒Cと混合することは、極めて有効であることがわかった。
【0065】
以上の結果から、MgO粉体の集合・凝集を防止でき、輝度が均一でスキャン特性が良好なPDPを得ることができることが分かった。
[インク溶剤成分の効果確認試験(2)]
MgOインクとして、以下の材料を含んだものを用いた。
・ MgO結晶粉体:0.5〜10μmのMgO単結晶粉体
・ 溶剤A:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
・溶剤B:プロピレングリコール
・溶剤D:ジエチレングリコールモノエチルエーテル2−(2−エトキシエトキシ)エタノール
溶剤Dによる効果を確認するために、溶剤Aと溶剤Bのみのインクも調整した。表3に試験したインクの溶媒組成を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
MgO粉体濃度は全て0.7質量%とした。
【0068】
MgOインクの調製に際しては、上記材料から成る混合物2000gをMgO結晶粉体表面にチッピング等の格子欠陥を起こさないように、振幅が20μmで30分間超音波処理し、MgO結晶粉体を溶剤中に分散させた。
【0069】
得られたMgOインクを、蒸着法で形成したMgO薄膜層(厚さ0.7μm程度)の上に塗布した。具体的には、MgOインクをスリットコータ法でWet膜厚が12μmとなるように塗布した(出願人製作のスリットコータ設備使用)。次いで、雰囲気を1Paにまで減圧することで真空乾燥に付し、それによって、溶剤を気化させMgO結晶層(厚さ1.0μm程度)を形成した。
【0070】
なお、使用した基板は一部吸水していると考えられ、それゆえ、スリットコータ法でMgO結晶層を形成するに際しては、図3に示すような「MgO薄膜層にMgO結晶粉体が存在しない領域53」或いは「周囲領域52に比べて被覆率が低い領域53」が形成されるといった“核なしはじき現象”が一般に生じ得る点に留意されたい。しかし、本実験で用いたインクでは、“核なしはじき”はほとんど見られなかった。但し、副作用として後述する“ダマ”や“偏り”などの異なる現象を確認した。
【0071】
図8は、効果確認試験(2)における基板の外観写真である。走査型の電子顕微鏡を使い、150倍で撮影した。実験2−1、実験1−2、実験1−3で作成した基板の外観を図8に示す。写真中、白色に写っているものはMgO粉体である。また、写真に対して水平方向に前面板側の電極(表示電極)11が存在している。これらをみるに、実験1−3は、MgO粉の凝集体である直径10μm程度の“ダマ”の発生が顕著である。また、溶媒Bの濃度を薄めた実験1−2においては、電極上のMgO粉が少なくなる現象が見られる。ここでは、この現象を“偏り”と呼ぶ。実験2−1においては、MgO粉が電極上にも存在しており、バランスよく分散している。
【0072】
これらの結果を導くために、以下の検証を実施した。今回、用いた溶媒の代表的な物性を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
実験2−1,1−2、1−3のインクの共通した考え方は次の通りである。真空乾燥の過程において、まず、溶媒Aのほとんどが蒸発し、その後に、溶媒B、または溶媒Dの混合体が蒸発するものと推測される。
【0075】
溶媒Bと溶媒Dの蒸発性について評価するために以下の実験を実施した(出願人製作の減圧乾燥設備使用)。図9は、効果確認試験(2)における到達圧力と溶媒の蒸発との関係を表すグラフである。溶媒単体を直径5mmの小さいカップに30mg程度入れて、減圧乾燥を行い、チャンバー内のある到達圧力ごとに溶媒の蒸発した質量を測定した。
【0076】
横軸にチャンバー内の到達圧力、縦軸に初期溶媒質量に対する蒸発後の質量比率を示す。これらから溶媒Dがチャンバー内の到達圧力20Pa程度で先に蒸発しつつ、一緒に溶媒Bも蒸発し、予測ではあるが、混合溶媒の蒸発のしかたを見る限り、最後に溶媒Bが残って蒸発が進むと考えられる。
【0077】
次に、乾燥中の表面張力を推定するために、溶媒Bと溶媒Dとの混合溶液の表面張力を測定した。図10は、効果確認試験(2)における表面張力と溶媒混合比との関係を表すグラフである。表面張力の測定はペンダントドロップ法で、各条件に対して5回行った。縦軸に表面張力の測定値、横軸に溶媒Bと溶媒Dとの混合比率を示す。各プロットは測定平均値を示し、測定値の最大値と最小値を各プロットに対する上下のエラーバーで示す。この結果から、溶媒Bと溶媒Dとの混合比率が1:1(50質量%)の時、混合溶媒の表面張力が32.6mN/mまで低減することが可能だと予測される。
【0078】
上記の表面張力差を原因とする対流は、表面張力差が大きいほど対流が強いと考えられ、“ダマ”を抑制するには、表面張力差を小さくすることが有効だと考えられる。よって、溶媒Bの表面張力を低減する手段として、溶媒Dと混合することは、極めて有効であることがわかった。
【0079】
以上の結果から、MgO粉体の集合・凝集を防止でき、輝度が均一でスキャン特性が良好なPDPを得ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の製造方法を通じて最終的に得られるPDPは、良好な放電特性を有するので、一般家庭向けのプラズマテレビおよび商業用プラズマテレビとして好適に用いることができる他、その他の各種表示デバイスとしても好適に用いることができる。また、本発明の製造方法は、PDPに限定されず、他の製品分野でも活用することができる。例えば、電池・電子部品等の分野において、ポリマー・分散剤を含有しないインクをスリットコータ法で凹凸の存在する基板に塗布して、被覆率が極めて均一な粉体層を形成するといった用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
11 前面板側の電極(表示電極)
12 走査電極
12a 透明電極
12b バス電極
13 維持電極
14 ブラックストライプ(遮光層)
21 背面板側の電極(アドレス電極)
23 隔壁
25 蛍光体層
30 放電空間
32 放電セル
51 MgO薄膜層の凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板を製造する方法において、
前記保護層の形成が、
(i)前記基板上に形成された前記誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)前記第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、及び、
(iii)前記MgO原料層を乾燥に付して前記MgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
前記MgO原料が、MgO粉体と2種類以上の溶剤を含み、かつ、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下であること、
を特徴とするプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項2】
前記MgO原料は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとの3種類から構成され、
全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上である、請求項1に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項3】
前記溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である、請求項2に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項4】
前記溶剤Cの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項2又は3に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項5】
前記溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が10mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項2〜4の何れか一項に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項6】
基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板に用いるインクであって、
前記保護層の形成は、
(i)前記基板上に形成された前記誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)前記第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、及び、
(iii)前記MgO原料層を乾燥に付して前記MgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
前記MgO原料が、MgO粉体と2種類以上の溶剤を含んで成り、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下であること、
を特徴とするプラズマディスプレイ用インク。
【請求項7】
前記MgO原料は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとの3種類から構成され、
全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上である、請求項6に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項8】
前記溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である、請求項7記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項9】
前記溶剤Cの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項7又は8に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項10】
前記溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が10mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項7〜9の何れか一項に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項1】
基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板を製造する方法において、
前記保護層の形成が、
(i)前記基板上に形成された前記誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)前記第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、及び、
(iii)前記MgO原料層を乾燥に付して前記MgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
前記MgO原料が、MgO粉体と2種類以上の溶剤を含み、かつ、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下であること、
を特徴とするプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項2】
前記MgO原料は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとの3種類から構成され、
全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上である、請求項1に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項3】
前記溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である、請求項2に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項4】
前記溶剤Cの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項2又は3に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項5】
前記溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が10mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項2〜4の何れか一項に記載のプラズマディスプレイ製造方法。
【請求項6】
基板上に電極と誘電体層と保護層とが形成されたプラズマディスプレイパネルの前面板に用いるインクであって、
前記保護層の形成は、
(i)前記基板上に形成された前記誘電体層上にスパッタ法または蒸着法で第1保護層を形成する工程、
(ii)前記第1保護層上にMgO原料を塗布してMgO原料層を形成する工程、及び、
(iii)前記MgO原料層を乾燥に付して前記MgO原料層から第2保護層を得る工程を含んで成り、
前記MgO原料が、MgO粉体と2種類以上の溶剤を含んで成り、各々の溶剤の20℃における表面張力の差が10mN/m以下であること、
を特徴とするプラズマディスプレイ用インク。
【請求項7】
前記MgO原料は、溶剤Aと溶剤Bと溶剤Cとの3種類から構成され、
全溶剤に対して溶媒Bと溶媒Cとの和の割合が3.5質量%以上である、請求項6に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項8】
前記溶剤Aの20℃における蒸気圧が50Pa以上、溶剤Bの20℃における蒸気圧が10Pa以上20Pa以下、溶剤Cの20℃における蒸気圧が5Pa以上15Pa未満である、請求項7記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項9】
前記溶剤Cの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が5mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項7又は8に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【請求項10】
前記溶剤Bの20℃における表面張力は、前記溶剤Aの20℃における表面張力との差が10mN/m以下であり、かつ溶剤Aの表面張力より大きい、請求項7〜9の何れか一項に記載のプラズマディスプレイ用インク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−185914(P2012−185914A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46217(P2011−46217)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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