説明

プラズマ処理装置

【課題】プラスチックシートの均一なコロナ処理が可能なコロナ処理装置を提供する。
【解決手段】電極セグメント6が、プラスチックシートの走行方向において離間された個々の放電先端部7を有する。放電先端部7が電極セグメント6の下で互いにずらされて交互に並んでいる。プラスチックシートのより幅の広い範囲で縞模様が生じる。縞模様がプラスチックシート表面処理の均一化ができる。プラスチックシートの均一な表面活性化を達成できる。電極セグメント6の直角曲げまたは交差は、電極セグメント6の処理領域でのオーバーラップをもたらす。オーバーラップによってプラスチックシートの表面加工の均一化ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁材料をプラズマ処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプラズマ処理装置は、様々な実施形態が知られている。そして、この種のプラズマ処理装置は、プラスチックシートまたはプラスチック薄膜の加工および製造において、プラスチックシートまたはプラスチック薄膜の表面を、プラズマ処理、いわゆるコロナ処理にて活性化させている。この活性化は、空気をプロセスガスとして用いて処理したり、外部ガス雰囲気内でも処理したりしており、放電過程の際に生じるガスであるオゾンを吸引させている。
【0003】
さらに、この種のプラズマ処理装置は、1つの高電圧電極と、1つの対向電極とで構成されている。一般的に、この対向電極は、ロール状に形成されており、このロール状の部分にプラスチックシートが気密に接触されて案内される。一方、高電圧電極は、ロール状の対向電極に対して平行に配置されており、この高電圧電極には、約20kHz以上40kHz以下の周波数の下で、約10kVの高電圧が印加される。
【0004】
このロール状の対向電極は、アース電位と接続されている。そして、この高電圧電極と、プラスチックシートが接触された対向電極との間の間隙での電位差によってコロナ放電が発生され、このコロナ放電によってプラスチックシートの表面が活性化されて、このプラスチックシートの表面が酸化される。
【0005】
そして、このプラスチックシートの表面の活性化によって、このプラスチックシートの表面張力が増加し、印刷インキおよび接着剤に対する十分な密着性を確保できる。特に、このプラスチックシートが、袋、バッグあるいはカバンなどの原料となる出発材料である場合には、このプラスチックシートのシール継ぎ目の範囲でコロナ処理される。すなわち、このコロナ処理によって、プラスチックシートのシール継ぎ目の強度が著しく低下するためである。
【0006】
この強度の低下の問題を達成するために、コロナ放電をプラスチックシートの案内方向においてシール継ぎ目の範囲で停止させなければならない。したがって、隙間なく互いに並んで配置された複数の電極セグメントを外側に旋回させたり、回転させて離したり、押し退けたりすることによって高電圧電極のセグメント化を達成させている。これら複数の電極セグメントを外側に旋回させた範囲においては、対向電極に対する間隔でコロナ放電がなされない。すなわち、この範囲では、電位差が十分でないからである。したがって、これら複数の電極セグメントを外側に旋回させていない範囲で、プラスチックシートがコロナ放電されて処理される。すなわち、プラスチックシートは、大抵の場合に印刷されていたり、接着剤で覆われていたりするからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、上記セグメント電極でプラスチックシートの表面を活性化させた場合には、このプラスチックシートの案内方向で均一でない。すなわち、このプラスチックシートの表面に縞模様が現れ、この縞模様は、表面張力の減少を示しており、この縞模様が現れている範囲では印刷の密着性が保証されない。このような活性化の不均一性は、互いに並んで配置された電極セグメントの側面に起因している。すなわち、これら電極セグメントの突き合せ個所の鋭利な角部で、プラスチックシートの案内方向に対して横方向に比較的著しい放電がなされるからである。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、電気絶縁材料の均一なプラズマ処理が可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のプラズマ処理装置は、処理する電気絶縁材料が案内される対向電極と、前記電気絶縁材料の案内方向に沿って設けられ前記電気絶縁材料を処理する範囲から、この電気絶縁材料の案内方向に対して直角に旋回可能な複数の電極セグメントにて構成され、前記電気絶縁材料の案内方向に対して交差する方向に延びた主電極とを有し、前記電気絶縁材料をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記複数の電極セグメントは、放電部を有し、これら放電部は、前記電気絶縁材料の案内方向に離間され、かつ前記電気絶縁材料に沿って突出した複数の放電先端部に分割され、これら放電先端部は、前記電気絶縁材料の案内方向に沿って互いにずらされて交互に並設されているものである。
【0010】
請求項2記載のプラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、複数の電極セグメントは、電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に離間されているものである。
【0011】
請求項3記載のプラズマ処理装置は、請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、複数の電極セグメントの間隔は、これら電極セグメントの厚みの1倍以上3倍以下であるものである。
【0012】
請求項4記載のプラズマ処理装置は、請求項1ないし3いずれか記載のプラズマ処理装置において、複数の電極セグメントは、電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に曲げられあるいは交差しているものである。
【0013】
請求項5記載のプラズマ処理装置は、請求項1ないし4いずれか記載のプラズマ処理装置において、複数の電極セグメントは、ステンレススチールにて製造されているものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のプラズマ処理装置によれば、複数の電極セグメントの放電部のそれぞれが、電気絶縁材料の案内方向に離間され、かつ電気絶縁材料に沿って突出した複数の放電先端部に分割されており、これら放電先端部は、隣接する電極セグメント間で、電気絶縁材料の案内方向に沿って互いにずらされて交互に並設されている。これによって、電気絶縁材料のより均一な表面処理が可能になる。
【0015】
請求項2記載のプラズマ処理装置によれば、請求項1記載のプラズマ処理装置の効果に加え、複数の電極セグメントは、電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に離間されているので、例えば空気や外部ガスなどの処理ガスを、主電極を通じて均一に吸引できるから、これら電極セグメントの冷却をより効果的にできる。
【0016】
請求項3記載のプラズマ処理装置によれば、請求項1または2記載のプラズマ処理装置の効果に加え、複数の電極セグメントの間隔を、これら電極セグメントの厚みの1倍以上3倍以下とすることにより、電気絶縁材料のより均一な表面処理が可能になる。
【0017】
請求項4記載のプラズマ処理装置によれば、請求項1ないし3いずれか記載のプラズマ処理装置の効果に加え、複数の電極セグメントを電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に曲げたり交差させたりすることにより、これら電極セグメントの放電先端部が1本の直線状にならない。よって、電気絶縁材料の案内方向に対して電極セグメントの放電先端部がずらされているので、より幅の広い縞模様が生じるから、電気絶縁材料の表面処理をより均一化できる。
【0018】
請求項5記載のプラズマ処理装置によれば、請求項1ないし4いずれか記載のプラズマ処理装置の効果に加え、複数の電極セグメントがステンレススチールにて製造されているので、電気絶縁材料のより均一な表面処理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のプラズマ処理装置の一実施の形態の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
【0020】
図1ないし図3に示すプラズマ処理装置は、コロナ処理装置であって、主電極としての1つの高電圧電極1を有している。この高電圧電極1は、吸引ユニオン4を有する負圧ハウジング3内に配置されている。さらに、この高電圧電極1に対向して対向電極2が配置されている。この対向電極2は、ローラ状の電極である。そして、この対向電極2を介して処理されるべき図示しない電気絶縁材料である絶縁シートとしてのプラスチックシートが案内される。このプラスチックシートは、対向電極2の外周面に気密に密着されて、この対向電極2の回転に伴って案内されて、この対向電極2と負圧ハウジング3との間である高電圧電極1に対向した位置へと案内される。
【0021】
また、高電圧電極1は、多数の電極セグメント6にて構成されており、これら電極セグメント6はステンレススチールにて製造されている。さらに、これら電極セグメント6の先端部に設けられている放電部としての放電エッジは、連続した凹凸状である櫛歯状に形成されている。さらに、これら放電エッジは、処理されるべきプラスチックシートの走行方向である案内方向に沿って延伸、すなわちロール状の対向電極2の軸方向に対して交差する方向である垂直方向に延びている。
【0022】
そして、これら個々の電極セグメント6は、1本のシャフト8上に旋回可能あるいは回転可能に固定されている。よって、図1に示すように、これら電極セグメント6は、これら電極セグメント6を対向電極2に対向した位置である処理位置から、この対向電極2に対向せず負圧ハウジング3の内側面に対向した位置である非処理位置6aへと旋回できる。この非処理位置6aでプラスチックシートの表面の活性化がなされない結果、後の時点でシールなどが問題なく接着可能となる。
【0023】
さらに、これら個々の電極セグメント6は、負圧ハウジング3内に設置されているストッパロッド9に向けて処理位置へと旋回でき、この処理位置にて正確に固定される。これら各電極セグメント6は、取付部としてのノーズ10を有しており、このノーズ10は、処理位置でストッパロッド9に接触して旋回位置が固定される。シャフト8は、ホルダ5にて支持されており、このホルダ5は、負圧ハウジング3内の固定部を形成する。
【0024】
また、電極セグメント6の放電エッジの先端部には、側面視凸状の放電先端部7をそれぞれ有している。これら放電先端部7は、各電極セグメント6のノーズ10が設けられている側の反対側である先端側に設けられている。さらに、これら放電先端部7は、プラスチックシートの走行方向において互いに離間されており、プラスチックシートへ向かう方向に突出している。放電先端部7の間隔は、1mm以上20mm以下でよく、好ましくは5mm以上10mm以下である。2つの隣接している電極セグメント6の放電先端部7は、プラスチックシートの走行方向に沿って互いにずらされて交互に平行に並べられて並設されている。すなわち、これら放電先端部7は、図1および図2に示すように、交互に並んでそれぞれが等間隔に離間されて平行に配設されている結果、より均一な表面処理を達成できる。
【0025】
さらに、図2および図3に示すように、放電先端部7を有する放電エッジは、これら放電エッジの平面方向から、この平面方向に交差する方向である横方向に折り曲げられたり、あるいは交差させられたりして構成されている。この結果、これら放電エッジそれぞれの放電先端部7がプラスチックシートの走行方向に沿って1本の直線状とならない。この結果、プラスチックシートの処理の縞模様の幅が広くなり、オーバーラップにて、このプラスチックシートのコロナ放電処理がさらに均一化される。
【0026】
一般に、これら電極セグメント6としては、2以上20以下、好ましくは5以上7以下の放電先端部7を有している。これら電極セグメント6は、1mm以上10mm以下、好ましくは1.5mm以上2.5mm以下の厚さを有している。隣接する電極セグメント6間の間隔は、1mm以上20mm以下、好ましくは2.5mm以上5mm以下である。したがって、これら電極セグメント6の間の間隔は、これら電極セグメント6の厚みの1倍以上3倍以下である。さらに、これら電極セグメント6と対向電極2上のプラスチックシートとの間の間隔は、0.5mm以上10mm以下、好ましくは1.5mmである。
【0027】
これらプラスチックシートは、通常大気圧下で高電圧電極1と対向電極2との間の間隙での電位差によるコロナ放電よって、これらプラスチックシートの表面が活性化されて、このプラスチックシートの表面が酸化されて加工される。ところが、これらプラスチックシートを、500ミリバールの範囲の負圧を発生させたり、正圧のもとで加工したりしても、コロナ放電処理が可能である。
【0028】
さらに、高電圧電極1には、10kV以上60kV以下の高電圧が印加され、その際に5kHz以上100kHz以下の高周波でプラスチックシートの表面が加工される。
【0029】
上述したように、上記一実施の形態によれば、各電極セグメント6が、プラスチックシートの走行方向において離間された個々の放電先端部7を有し、これら放電先端部7が並べられて配置されている電極セグメント6の下で互いにずらされて交互に並べられているので、このプラスチックシートのより幅の広い範囲で縞模様が生じるから、この縞模様によってプラスチックシート表面処理のさらなる均一化ができる。
【0030】
したがって、このプラスチックシートのより均一な表面活性化を達成できる。これは、プラスチックシートのコロナ放電の点火挙動が改善されるためである。具体的には、コロナ放電を均一に点火させるのに必要な電気エネルギを低減できるにも関わらず、放電が均一のままであるので縞模様が現れにくくなるからである。
【0031】
さらに、複数の電極セグメント6は、プラスチックシートの案内方向に交差する方向に向けて離間されているので、これら電極セグメント6の長手方向よりも幅方向が狭いのが好ましい。よって、これら個々の電極セグメント6間の間隔は、冷却および吸引のためのより優れた均一な空気の流れを可能にする。したがって、これら電極セグメント6にて、高電圧電極1を通じて、例えば空気や外部ガスなどの処理ガスを均一に吸引できるので、これら電極セグメント6の冷却をより効果的にできる。
【0032】
また、各電極セグメント6をプラスチックシートの案内方向に対して直角に曲げたり、交差させたりすることによって、これら電極セグメント6の放電先端部7が1本の直線状にならない。したがって、プラスチックシートの案内方向に対して電極セグメント6の放電先端部7がすらされている結果、より幅の広い処理模様が生じ、この幅の広い処理模様によって、プラスチックシート表面処理のさらなる均一化を図ることができる。
【0033】
すなわち、これら個々の電極セグメント6の直角曲げあるいは交差は、これら電極セグメント6の処理領域でのオーバーラップをもたらすので、このオーバーラップによってプラスチックシートの表面加工のさらなる均一化を図ることができる。
【0034】
さらに、図4に示す第2の実施の形態のように、各電極セグメント6それぞれの放電エッジの平面方向からの直角曲げがないように構成することもできる。この場合、これら電極セグメント6の放電先端部7だけが互いにずらされて配設されている。すなわち、互いに並んでいる電極セグメント6の下で、これら電極セグメント6の放電先端部7は、交互に並んでいるので、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
なお、上記各実施の形態では、処理すべき材料としてプラスチックシートについて説明したが、このプラスチックシート以外の電気的な絶縁性を有する種々の形状の電気絶縁材料であっても対応して用いることができる。また、隣接した電極セグメント6の放電先端部7の個数は、同じである必要はない。
【0036】
さらに、別の方法で個々の電極セグメント6の平面から、これら電極セグメント6の放電先端部7を外側に移動させて、これら電極セグメント6の放電先端部7を1本の直線状にならなくしても、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置を示す説明断面図である。
【図2】同上プラズマ処理装置の高電圧電極を示す下面図である。
【図3】同上プラズマ処理装置の高電圧電極を示す左側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のプラズマ処理装置の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 主電源としての高電圧電極
2 対向電極
6 電極セグメント
7 放電先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理する電気絶縁材料が案内される対向電極と、
前記電気絶縁材料の案内方向に沿って設けられ前記電気絶縁材料を処理する範囲から、この電気絶縁材料の案内方向に対して直角に旋回可能な複数の電極セグメントにて構成され、前記電気絶縁材料の案内方向に対して交差する方向に延びた主電極とを有し、
前記電気絶縁材料をプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
前記複数の電極セグメントは、放電部を有し、これら放電部は、前記電気絶縁材料の案内方向に離間され、かつ前記電気絶縁材料に沿って突出した複数の放電先端部に分割され、これら放電先端部は、前記電気絶縁材料の案内方向に沿って互いにずらされて交互に並設されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
複数の電極セグメントは、電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に離間されている
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
複数の電極セグメントの間隔は、これら電極セグメントの厚みの1倍以上3倍以下である
ことを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
複数の電極セグメントは、電気絶縁材料の案内方向に交差する方向に曲げられあるいは交差している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
複数の電極セグメントは、ステンレススチールにて製造されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−120629(P2006−120629A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297155(P2005−297155)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(505381415)ソフタル エレクトロニック エリック ブルーメンフェルト ゲーエムベーハ− ウント コー カーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】SOFTAL electronic Erik Blumenfeld GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Konig−Georg−Stieg 1 21107 Hamburg Germany
【Fターム(参考)】