説明

プラズマ加工機用電極

【目的】 電極寿命を長くして切断作業による消耗品コストを大幅に低減し得るプラズマ加工機用電極を提供することにある。
【構成】 電極シース内部の水冷孔に凹凸を設ける事によって冷却水との接触面積が増え、電極シースを冷却する能力が増大する。そのため、電極シースに圧入されている電極コアの冷却が十分に行なわれるようになり、電極コアの温度上昇をおさえ、溶融飛散速度を遅くすることにより、電極コアの消耗が抑えられ、電極の寿命を格段に延ばすことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大気中、酸素雰囲気中などにおいて使用されるプラズマ加工機用電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、酸化雰囲気で用いられるプラズマ加工機用電極は銅製の電極シース3にハフニウム或はジルコニウムの電極コア9を埋め込んで用いられている。そして、その銅製の電極シース3は電極コア9の温度上昇を抑えるために水冷されている。
【0003】プラズマトーチとしては、例えば図2に示すものが知られている。
【0004】図中、ノズル1内には、絶縁体で作られたスワラー2を介して電極シース3が設けられている。この電極シース3は、電極冷却水導管8の先端部が挿入され、水冷されている。電極シース3の先端部には、ジルコニウム、ハフニウムなどからなる電極コア9が埋め込まれて、電極シース3が水冷されることによって電極コア9が冷却されることになる。なお、図2中矢印(↑)は、冷却水の流れ方向を示し、丸付き矢印(♂)は作動ガスの流れ方向を示している。
【0005】ところで、従来装置においては、電極コア9及びノズル1の冷却は、図3中矢印(↑)に示すような水路で水冷されている。すなわち、まず冷却水をノズル冷却水供給パイプ5及び電極冷却水供給パイプ12から供給し、ノズル1及び電極シース内面22を介して電極シース3と電極コア9の冷却を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来装置によれば、電極コア9を冷却するための電極シース3内部に設けた冷却水路、すなわち電極シース内面22は、凹凸の無い単純な円柱面で構成されて、電極コア9の冷却能力が十分でなく、電極コア9の温度が上昇して溶融飛散速度が速くなる。従って、電極コア9の消耗が激しくなり、電極寿命が短くなるという欠点があった。
【0007】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電極寿命を長くして切断作業による消耗品コストを大幅に低減し得るプラズマ加工機用電極を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のプラズマ切断用電極は、電極シース内部の水冷孔に凹凸を設けたことを特徴とする。
【0009】
【作用】上記の構成を有する本発明の電極シース内部の水冷孔に設けた凹凸は、水冷孔の表面積を増加させる。したがって、電極シース内部を冷却するために流される冷却水との接触面積が増え、電極シースを冷却する能力が増大する。そのため、電極シースに圧入されている電極コアの冷却が十分に行われるようになり、電極コアの温度上昇を抑え、溶融飛散速度を遅くすることにより、電極コアの消耗が抑えられ、電極の寿命を格段に延ばすことが可能となる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
【0011】尚、本実施例に係わるプラズマトーチは従来のプラズマトーチと構成が同じであるため、同部材は同符号を付して説明を省略する。
【0012】まず、本実施例の電極シース30は、その内面22に、図1に示すように凹凸22aや螺旋状に延びる凸状22bが形成されている。
【0013】次にその製造方法について説明する。図1(a)、(b)に示すように、電極シースの内部を切削加工する。このとき冷却水の流速が速くなるように、例えば螺旋状の凸状22bを加工すると尚良い。これには、通常のタップ加工等が利用できる。このようにして得られた電極シース30にハフニウム製の電極コア9を圧入し、次に示す電極の消耗実験を行った。また、比較のために従来の凹凸のない電極シース30にも電極コアを圧入し消耗試験に供した。
【0014】これら比較材を含めた3種類の電極に対して、プラズマ加工機に設置し、板厚1.6mmの冷間圧延鋼板を被切断物として、切断不能となるまで切断を行った。その間逐次電極の重量減少量を測定した。切断条件は、切断電流10A、切断ガス(酸素)圧1kgf/cm2、切断高さ0.5mmとした。
【0015】実験結果を図3に示す。図3から解るとおり、本実施例による電極は、従来の電極よりも重量減少が少なく、寿命が格段に長いことがわかる。
【0016】
【発明の効果】以上詳述したことから明らかなように、本発明の電極によれば、従来の構造をもつ電極に比べ、電極コアの冷却能力が上がるため、寿命が格段に延び、約2〜3倍の電極寿命を有する優れたものである。この電極は、プラズマ切断用として使用して十分にその特性が発揮できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した電極シースを示した図である。
【図2】プラズマ加工機のトーチ部分の拡大図である。
【図3】電極の消耗量と切断時間との関係のグラフを示す図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 スワラー
30 電極シース
4 水冷外筒
17 プラズマ電源
20 被切断材
21 プラズマアーク
22 内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラズマ加工機用の電極において、電極部の水冷孔内部に凹凸を設けることを特徴としたプラズマ加工機用電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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