説明

プラズモン結合素子

【課題】 金属細線や金属微粒子による導波路への結合効率の高い、または偏光選択性を有するプラズモン結合素子を提供する。
【解決手段】 金属微粒子を直線状に配列した金属微粒子配列1(金属細線でも良い。)よりなる金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に二次元的構造を有して配置された金属開口2を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、前記金属開口2と前記金属微粒子との電磁相互作用により、入力される表面プラズモンのエネルギーを前記金属導波路の入力端部に集中させるものである。このようにして、この金属導波路以外の伝搬モードの散乱を抑え、金属導波路内にプラズモンを結合させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の表面プラズモンおよび1次元導波路中のプラズモンを利用したナノスケールのプラズモン結合素子において、導波路構造への光または表面プラズモンのエネルギーの結合を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報の大容量化に伴い、光の回折限界を超えるナノスケールの光デバイスの実現が求められている。金属および半導体微細加工技術の発展により様々な微細構造が作製されるようになっているが、実際の機能動作を実現するためにはナノメートル領域に光のエネルギーを結合させる必要がある。
【0003】
本発明と同様に、ナノメートル領域に光を結合させる技術の代表的なものとしては、非特許文献1に示すプラズモンの伝搬モード変換器や、非特許文献2に示すプラズモン集光器がある。
【0004】
また、ナノメートル領域にプラズモンのエネルギーを伝搬させる技術としては、特許文献1に示す「近接場光発生装置および発生方法」が開示されている。
【0005】
さらに、プラズモンによる干渉効果を利用する技術としては、特許文献2に示す「光学素子およびそれを用いた光ヘッド」が開示されている。
【0006】
ここで、非特許文献1に示されるプラズモン伝搬モードの変換器は、図9に示すように、Siを三角柱状のエッヂ構造に加工し、Au膜をコートすることにより、エッジの1つの斜面F1と上端に形成される1次元金属導波路を利用して、表面プラズモンの励起と1次元導波路への結合にともなう伝搬モードの変換を行うものである。
【0007】
また、非特許文献2に示されるプラズモン集光器は、図10の電子顕微鏡像に示すように、基板上に微小な突起を円弧状に形成し、それを金属コートした構造を有している。この構造に全反射角より小さな角度で光を入射することにより金属表面上に表面プラズモンを励起し、金属微細構造からの回折・散乱によって、表面プラズモンのエネルギーを局所的に集中させ金属導波路に結合させている。
【0008】
特許文献1に示される「近接場光発生装置および発生方法」は、図11に示すように、細線形状の金属と、金属の両側に配設された誘電体と、光源となるレーザ装置と、レーザ光を両側照射するためのビームスプリッタと反射鏡を有する。そして、この装置により金属細線の両側に表面プラズモンを励起することにより、この金属細線が十分に細い場合に伝搬するモードとなるプラズモンまたはFanoモードを発生させる。
【0009】
特許文献2に示される「光学素子およびそれを用いた光ヘッド」は、図12に示すように、導電性フィルムの間に、中間層として、表面凹凸を改善する効果のある層を挿入することによって、プラズモン効果で効率よく増幅された高効率で高解像の光学素子と、これを利用した光ディスク上の波長以下のスケールでの読み出し及び書き込みを可能にする光読み出し/書き込みヘッドが得られるものである。その結果、光の回折限界により限定される線データ密度よりはるかに高い線データ密度の記録/読み出しを可能にする。
【特許文献1】特開2004−20381号公報
【特許文献2】特開2003−287656号公報
【非特許文献1】T. Yatsui, M. Kourogi, and M. Ohtsu: Appl. Phys. Lett. 79 (2001) 4583
【非特許文献2】野村、八井、興梠、大津:第64回応用物理学会学術講演会予稿集、1p−Q−4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここに、非特許文献1に示すプラズモンの伝搬モード変換器は、微小構造の端部による散乱を生じさせることによりあらゆる方向成分を有するプラズモン波への変換を行い、そのエネルギーの一部を金属導波路へ結合させることにより信号を得ており、散乱による結合損失が大きいと考えられる。
【0011】
また、非特許文献2に示すプラズモン集光器は、プラズモンを強く集中させることにより非特許文献1と同様にあらゆる方向成分を有するプラズモン波への変換を行い、そのエネルギーの一部を金属導波路へ結合させることにより信号を得ており、結合効率を改善する構成などは考慮されていない。
【0012】
また、特許文献1においては金属細線構造であることから、ナノメートル領域の光情報処理デバイスへの応用を考えた場合、伝搬光を介在することから微小化が困難であり、また、干渉を用いるスイッチングなどを考えると、偏光の制御などに問題がある。
【0013】
さらに、特許文献2においては光記憶装置における光ヘッドを目指したもので、局所的な電場強度の増強を得るために周囲に大きな周期構造をもつことから、ナノメートル領域の光情報処理への応用には向かない。
【0014】
上記事情を鑑みて、本発明の基本的な目的は、金属細線や金属微粒子による導波路への結合効率の高い、または偏光選択性を有するプラズモン結合素子を提供することである。
【0015】
ここで、非特許文献1、2および特許文献2に係る技術では、金属における表面プラズモンを局所的に集中し、あらゆる方向成分を有するプラズモン波に変換しているため、金属導波路内の伝搬モードへの結合が弱くなる。そこで、本発明の目的として、導波路内のプラズモンに結合し易い電場分布を、外部の金属微細構造により形成し、結合効率のよいプラズモン結合素子を提供することを挙げる。
【0016】
さらに、光情報処理技術として利用するためには、プラズモンの干渉効果を利用することが考えられるが、そのためにはプラズモンの偏光特性を制御できることが重要である。導波路として金属微粒子の配列を考えた場合には、その導波路はプラズモンの波動の縦波成分にも横波成分にも伝搬モードをもつことができる。そこで、本発明の目的として、金属微粒子の配列による導波路における偏向選択性をもつプラズモン結合素子を提供することを挙げる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、金属細線または金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に二次元的構造を有して配置された金属開口を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、前記金属開口と前記金属細線または前記金属微粒子との電磁相互作用により、入力される表面プラズモンのエネルギーを前記金属導波路の入力端部に集中させるものである。このようにして、この金属導波路以外の伝搬モードの散乱を抑え、金属導波路内にプラズモンを結合させている。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の第2の態様は、金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に二次元的構造を有して配置された金属開口を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、前記金属開口と前記金属微粒子との電磁相互作用により、入力される表面プラズモンの特定の偏光成分を前記金属導波路の入力端部において励振させるものである。このようにして、金属導波路内に励振されるプラズモンの偏光を選択し、金属導波路内にプラズモンを結合させている。
【0019】
ここで、第1及び第2の態様において、前記金属開口は前記金属導波路に平行な面に対して凹面となる形状を有することにより、入力される表面プラズモンのエネルギーを金属開口内に強く閉じ込める。このようにして、金属導波路への結合効率または偏光選択性を向上する。
【0020】
また、第1及び第2の態様において、前記金属開口は前記金属導波路の入力端部と所定間隔を有して配置され、前記電磁相互作用による前記表面プラズモンのエネルギーの損失を抑えることにより、金属細線または金属微粒子と金属開口との電磁相互作用を弱める。このようにして、金属導波路への結合効率または偏光選択性を向上する。
【0021】
また、第2の態様において、前記金属開口は前記金属導波路に対して略垂直な方向からなる境界面を有する先鋭化された形状を有することにより、入力される表面プラズモンの特定の偏光成分を強く励振する。このようにして、金属導波路内に励振されるプラズモンの偏光を選択している。
【0022】
また、上記目的を達成する本発明の第3の態様は、金属細線または金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に金属微粒子を直線状に配列した構造を有して配置された金属開口部を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、前記金属開口部がプラズモンの伝搬モードを有し、入力される表面プラズモンが当該伝搬モードと結合するものである。入力される表面プラズモンは金属開口部が有する周期構造により回折・散乱されることになり、金属導波路内にプラズモンを結合させている。
【0023】
ここで、第3の態様において、前記金属開口部の内部において励振されるプラズモンが前記表面プラズモンの電場成分の向きに依存した伝搬モードと結合し、前記表面プラズモンの異なる偏光成分に対して前記金属開口部の内部に異なる電場分布を形成する。このようにして、前記金属導波路における結合効率を変化させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、金属細線や金属微粒子による導波路への結合効率の高いプラズモン結合素子を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明のプラズモン結合素子を実施するための最良の形態を説明する。説明する際には、本明細書と同時に提出する図面を適宜参照することにする。
【0026】
第1の形態のプラズモン結合素子を図1に基づいて説明する。図1は金属微粒子配列1と金属開口2によるプラズモン結合素子の構成を示す斜視図である。また、第1の形態のプラズモン結合素子は、プラズモンのエネルギーを空間的に集中し、導波路内のプラズモン伝搬モードに結合させる。
【0027】
第1の形態のプラズモン結合素子の位置構成は、図1に示すように、SiO2やCaF2などの誘電体で形成された平滑な誘電体基板4の表面上に配置される。導波路を構成する部分は利用の目的に応じて金属細線でも金属微粒子の配列でもよいが、図1では金属微粒子を直線状に配列した構成を例として示している。この金属導波路の入力端部に開口として金属の矩形構造を配置した構成を有しており、入力の表面プラズモンを励振するために、金属開口2の手前の部分は金属膜3により金属コートされている。
【0028】
ここで、入力は表面プラズモンに限る必要はなく、金属細線や金属微粒子の配列による導波路の伝搬モードに共鳴する周波数を有していればよく、非特許文献1のように金属細線による導波路を用いてプラズモンのエネルギーを導入する方法や、非特許文献2のようにプラズモン集光器を利用する方法などがある。さらには、プラズモンの励振周波数と共鳴する色素分子などの発光体を金属開口の手前に配置して、遠方から光を照射してもよい。
【0029】
金属細線よる導波路と金属微粒子の配列による導波路との違いは、金属材料の占める割合の違いによる伝搬損失の差異がある。その他には、光の波長より十分に小さな構造の場合には、金属細線では細線に平行な方向に電場成分をもつ縦モードまたはTMモードしか励振できないのに対して、金属微粒子の場合にはその配列方向に平行な縦モードと垂直な横モードの2つの偏光成分を励振することができるといった差異がある。
【0030】
金属微粒子や金属細線による導波路および金属開口に用いる材料は、プラズモンを高効率に励振でき、伝搬損失の少ないAuやAgなどの金属材料が適している。
【0031】
図1に示す金属微粒子配列1による導波路は、例として円筒形状のものを示してあるが、形状に依存して金属導波路内のプラズモンの共鳴波長が変化するだけであり、本発明の原理が変わることはない。したがって、金属微粒子の形状は円筒形状のほか、半球や立方体形状などであっても構わない。
【0032】
このような金属細線、金属微粒子および金属開口の作製方法は多様に考えられる。例えば、金属微粒子配列を作製する方法としては、集束イオンビーム加工装置によりカーボンなどの突起を形成した後に金属コートを施しても良いし、電子ビーム描画装置やナノインプリント加工装置を用いても良い。また、予め微細なパターンが形成された基板を用い、スパッタリング法により金属を堆積することで金属微粒子列を作製する方法などもある。金属細線や金属開口の作製方法としては金属微粒子列と同様の作成方法のほか、AFM探針に電圧を印加し、吸着水の電気分解による陽極酸化反応を利用して加工を行う陽極酸化法により金属細線、金属開口その他の金属微細構造を作成することも可能である。
【0033】
次に、第1の形態のプラズモン結合素子の動作について、図2に基づいて説明する。図2はプラズモン結合素子における金属微粒子配列1と金属開口2の配置を上から見た図である。平行に配置された金属開口2内部の両境界面は金属微粒子のサイズ程度に近接しており、この両境界面ならびに金属導波路の入力端の金属微粒子が強く電磁相互作用する。これにより金属開口2内部では電場が空間的に強く局在し、その結果、金属導波路内のプラズモンと強く結合するようになる。
【0034】
プラズモン結合素子の第2の形態を図3および図4に基づいて説明する。第2の形態は偏光選択性のあるプラズモン結合素子に関するものである。図3は金属微粒子配列1による導波路内の縦モードのプラズモンとの結合を説明する図である。図4は金属微粒子配列1による導波路内の横モードのプラズモンとの結合を説明する図である。
【0035】
第2の形態のプラズモン結合素子の基本構成は、第1の形態で前述した通りである。ただし、導波路は金属微粒子の直線状の配列に限定する。したがって、前述したように、導波路に対して平行方向に電場成分をもつ縦モードと、垂直方向をもつ横モードの2つの偏光成分が存在することになる。また、図3または図4に示すように金属開口2の幅は金属微粒子同士の間隔の2倍程度の間隔で、その内部に金属導波路の入射端となる金属微粒子が入り込んだ構成になっている。
【0036】
ここに、第2の形態の場合、金属導波路に平行または垂直な方向に電場成分をもった表面プラズモンの何れかまたは双方が入力される。図3は金属導波路に平行な方向に電場成分をもつ表面プラズモンが入力された場合の電場の向きを、電気力線5を用いて模式的に表わしたものである。この場合、金属導波路の入射端にある金属微粒子と金属開口2との電磁相互作用により、金属開口2と金属微粒子がお互いの電気力線を反発するように電場が形成される。したがって、金属導波路内の縦モードのプラズモンを励起するように電場が形成され、その結果、偏向選択性をもったプラズモンの結合が可能となる。
【0037】
一方、図4は、金属導波路に対して垂直な向きに電場分布を有する表面プラズモンを本プラズモン結合素子に入力した場合の電気力線5の向きを示している。この場合は、金属開口2内部の2つの境界面と金属微粒子とが並ぶ方向に電場成分が集中し、金属開口2の外部に配置された金属導波路の金属微粒子の電気力線は金属開口部分から孤立したようになる。その結果、金属導波路への結合は弱くなり、第2の形態のプラズモン結合素子は、偏向選択性を有することになる。
【0038】
ここで、第1及び第2の形態においてプラズモン結合素子の結合効率ならびに偏向選択性を改善したものを図5に基づいて説明する。図5は入力される表面プラズモンを高効率で集中させる金属開口6の形状を示す図である。このプラズモン結合素子の基本構成は、第1および第2の形態で前述した通りである。
【0039】
この形態では、図1から図4で示した金属開口2の形状を金属開口6に示すように、金属導波路に平行な面に対して凹面となるように構成している。金属開口6は曲面を描いているが、代わりに凹面となる角度を持った2つの平面でも構わない。このような凹面においては、金属開口6内部の金属微粒子との距離がより一様になるため、入力された表面プラズモンのエネルギーは金属導波路に平行な平面境界の場合に比べて、金属開口6の外部に漏れ出る成分を減らすこととなり、より金属開口6の中央部に局在するようになる。この結果、金属導波路への結合効率が改善される。また、より強く金属導波路内の縦モードのプラズモンを励振しやすくなる。
【0040】
また、第1及び第2の形態においてプラズモン結合素子の結合効率ならびに偏向選択性を改善したものを図6に基づいて説明する。図6は金属微粒子配列1と金属開口2背面との結合を弱める配置を説明する図である。このプラズモン結合素子の基本構成は、第1および第2の形態で前述した通りである。
【0041】
この形態では、図1から図4の場合とは異なり、図6に示すように金属開口2の位置を、金属導波路である金属微粒子配列1から間隔Dだけ離れた位置に配置されている。この間隔Dが大きくなる程、金属導波路に対して垂直な金属開口2の背面と、金属微粒子配列1よりなる金属導波路との電磁相互作用が弱くなる。このことは逆に、金属開口2を透過したプラズモンのエネルギーが金属微粒子配列1と金属開口2背面との電磁相互作用により損失を受けること抑え、金属導波路内のプラズモンの伝搬に有利に働くことを意味する。その結果、結合または伝搬効率と偏向選択性を改善することができる。
【0042】
ここで、第2の形態に係るプラズモン結合素子において、金属導波路内の横モードのプラズモンに対する偏向選択性を有するものを図7に基づいて説明する。図7は金属微粒子配列1による導波路内の横モードのプラズモンとの結合を強める金属開口7の形状を示す図である。このプラズモン結合素子の基本構成は、第1及び第2の形態で前述した通りである。
【0043】
この形態では、図7に示すように、金属開口7はその開口部分が頂点となる三角形状を有する。この場合、金属導波路と平行な方向をもつ境界面は金属開口7上には存在しなくなる。そのため、入力される表面プラズモンが金属導波路に対して平行な方向の電場成分を有している場合は、金属導波路内の縦モードのプラズモンとの結合効率は低下する。一方、入力される表面プラズモンが金属導波路に対して垂直な電場成分を有しているならば、金属導波路内の横モードのプラズモンと強く結合する。しがたって、本素子は金属導波路の横モードを強く励振する偏向選択性を有している。ここで、金属開口7の形状において、入力される表面プラズモンが金属導波路内の横モードのプラズモンと強く結合するためには、金属導波路と平行な方向からなる境界面をできる限り無くしたほうが良い。このような境界面の存在は金属導波路内の縦モードのプラズモンを励起するような電場を形成させるからである。その意味では、金属開口7の形状として、金属導波路に対して略垂直な方向からなる境界面を有し、さらに当該境界面を金属導波路が存在する側に設けるほうが良い。このような境界面を金属導波路に対して斜めに配置したものは、金属導波路内の縦モードのプラズモンを励起する電場の形成に寄与するからである。従って、金属開口7の開口部分は図7に示したような三角形状に限定する必要は無く、例えば、金属導波路に対して略垂直な方向からなる境界面を有する先鋭化された形状であっても良い。
【0044】
プラズモン結合素子の第3の形態を図8に基づいて説明する。第3の形態のプラズモン結合素子は、前述した一連の形態とは異なるプラズモンの結合形態を有するものである。図8は金属微粒子の配列よりなる開口である金属開口部8と金属微粒子配列1による導波路の構成を示す図である。第3の形態のプラズモン結合素子の基本構成は、前述した一連の形態と同様である。ただし、金属開口は二次元的な金属微細構造ではなく、金属開口部8として示すように、金属導波路と同様の金属微粒子を直線状に配置した構造となっている。
【0045】
この場合、金属開口部8もプラズモンの伝搬モードを有し、入力される表面プラズモンが当該伝搬モードと結合する。これにより表面プラズモンは金属開口部8内部に強い電場分布を有するようになる。さらに金属開口部8の周期構造により回折・散乱を受け、金属導波路内のプラズモンを励振することにより結合効率を向上している。
【0046】
また、第3の形態のプラズモン結合素子は第2の形態とは異なる特徴の偏光選択性を有している。金属開口部8内部に励振されるプラズモンは、入力される表面プラズモンの電場成分の向きに依存した伝搬モードと結合し、入力される表面プラズモンの異なる偏光成分に対して金属開口部8内部に異なる電場分布を形成する。これにより金属微粒子配列1よりなる金属導波路への結合効率が変わる。したがって、このプラズモン結合素子は入力される表面プラズモンの偏光に依存して結合効率を変化させる偏光選択性を有している。
【0047】
なお、上述した形態は本発明を実施するための最良のものであるが、これに限定する主旨ではない。従って、本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のプラズモン結合素子を利用した光入出力デバイス、超高集積化デバイス、干渉型スイッチングデバイス、偏向制御デバイスなどの開発が望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の形態のプラズモン結合素子において、金属微粒子配列1と金属開口2によるプラズモン結合素子の構成を示す斜視図である。
【図2】第1の形態のプラズモン結合素子において、プラズモン結合素子における金属微粒子配列1と金属開口2の配置を上から見た図である。
【図3】第2の形態のプラズモン結合素子において、金属微粒子配列1による導波路内の縦モードのプラズモンとの結合を説明する図である。
【図4】第2の形態のプラズモン結合素子において、金属微粒子配列1による導波路内の横モードのプラズモンとの結合を説明する図である。
【図5】第1及び第2の形態において、入力される表面プラズモンを高効率で集中させる金属開口6の形状を示す図である。
【図6】第1及び第2の形態において、金属微粒子配列1と金属開口2背面との結合を弱める配置を説明する図である。
【図7】第2の形態において、金属微粒子配列1による導波路内の横モードのプラズモンとの結合を強める金属開口7の形状を示す図である。
【図8】第3の形態のプラズモン結合素子において、金属微粒子の配列よりなる開口である金属開口部8と金属微粒子配列1による導波路の構成を示す図である。
【図9】非特許文献1におけるプラズモンの伝搬モード変換器の構成と変換の原理を示す図である。
【図10】非特許文献2におけるAu微粒子によるプラズモン集光器の作成例を示す電子顕微鏡像(左側)と近接場光学顕微鏡による光学像(右側)である。
【図11】特許文献1における「近接場光発生装置および発生方法」の構成を示す図である。
【図12】特許文献2におけるプラズモンを利用した「光学素子およびそれを用いた光ヘッド」の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 金属微粒子配列
2 金属開口
3 金属膜
4 誘電体基板
5 電気力線
6 金属開口
7 金属開口
8 金属開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属細線または金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に二次元的構造を有して配置された金属開口を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、
前記金属開口と前記金属細線または前記金属微粒子との電磁相互作用により、入力される表面プラズモンのエネルギーを前記金属導波路の入力端部に集中させることを特徴とするプラズモン結合素子。
【請求項2】
金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に二次元的構造を有して配置された金属開口を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、
前記金属開口と前記金属微粒子との電磁相互作用により、入力される表面プラズモンの特定の偏光成分を前記金属導波路の入力端部において励振させることを特徴とするプラズモン結合素子。
【請求項3】
前記金属開口は前記金属導波路に平行な面に対して凹面となる形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のプラズモン結合素子。
【請求項4】
前記金属開口は前記金属導波路の入力端部と所定間隔を有して配置され、
前記電磁相互作用による前記表面プラズモンのエネルギーの損失を抑えることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズモン結合素子。
【請求項5】
前記金属開口は前記金属導波路に対して略垂直な方向からなる境界面を有する先鋭化された形状を有することを特徴とする請求項2に記載のプラズモン結合素子。
【請求項6】
金属細線または金属微粒子を直線状に配列した構造を有する金属導波路と、前記金属導波路の入力端部に金属微粒子を直線状に配列した構造を有して配置された金属開口部を平滑な基板上に設けたプラズモン結合素子において、
前記金属開口部がプラズモンの伝搬モードを有し、入力される表面プラズモンが当該伝搬モードと結合することを特徴とするプラズモン結合素子。
【請求項7】
前記金属開口部の内部において励振されるプラズモンが前記表面プラズモンの電場成分の向きに依存した伝搬モードと結合し、前記表面プラズモンの異なる偏光成分に対して前記金属開口部の内部に異なる電場分布を形成することを特徴とする請求項6に記載のプラズモン結合素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−163188(P2006−163188A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357176(P2004−357176)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】