説明

プラットホームドアの施錠装置

【課題】 電気的な制御を必要とせずに、また専用の駆動源を備えることなく開閉ドアを施錠及び解錠することができるようにする。
【解決手段】 右側開閉ドア2に、左側開閉ドア1の係止部30に係止される係止位置とこの係止部30による係止を解除する離脱位置との間で変位可能に構成された可動部材26を設ける。可動部材26は、右側開閉ドア2にドア開閉方向に対して直交する方向に延びる第1ピン28回りに回動可能に設けられ、係止位置にあるときに係止部30の戸尻側面30aと係合するように突出された爪部26cを備える。連動切換手段32は、右扉クランプ14が右方向に移動すると可動部材26を時計回りに回動させて解錠する一方、係止部30に係止された係止状態で少なくとも一方の開閉ドア1,2にドア開方向の外力が作用したときには可動部材26を係止位置に留めて施錠状態を保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗客の安全を目的としてプラットホームに配設されるプラットホームドアに関し、より詳しくは、そのプラットホームドアの施錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道、モノレール、新交通システム等のプラットホームには、ホーム上の乗降客が走行列車に接触したり、また、乗降客がホーム上から転落することを防止するためにプラットホームドアの設置が行われている。
【0003】
プラットホームドアには、主として天井近くまで高さのあるフルスクリーンタイプのものと腰高さ程度の可動柵タイプのものがある。
【0004】
これらのプラットホームドアは、一般的に、スライド動作する引き分け式の開閉ドアと、その開動作する開閉ドアを収納する戸袋部とを有しており、開閉ドアは停止した車両側ドアに対応する乗降位置に設けられ、車両の停止や車両側ドアの開閉動作に連動して開閉するようになっている。
【0005】
この種のプラットホームドアの開閉ドアの開閉は自動化されており、車両が停止を目的としてホームに入線する場合を除いて閉扉状態にロックされる。それにより、いたずらによってまたは停電時にむやみに開かないようになっている。
【0006】
図13は従来のプラットホームドアの施錠装置を示したものである。同図に示すように開閉ドア50の閉扉状態を保持するために電磁錠51が採用されている。この電磁錠51は制御装置52で制御することができ、開閉ドア50を自動的に施錠する上でプラットホームドアには欠かせない構成要素となっている。
【0007】
また、上記電磁錠51は戸袋53内に備えられており、磁気コイルとこの磁気コイルの励磁によって昇降するロックピン51aとを有している。開閉ドア50が閉じられると磁気コイルに通電されロックピン51aが開閉ドア50のドアハンガー54に備えられた錠受けに進入してロックされるようになっている。(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
なお、55はガイドレール、56はドアハンガー54を走行させるための駆動用ベルトである。
【特許文献1】特開2001−164833号公報(第(4)頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、プラットホームドアの施錠装置として常用されている上記電磁錠51は、開閉ドア50の開閉動作に応じた通電制御を行う必要があり、開閉ドア50の駆動源とは別の駆動源、電磁錠51の作動状態を確認するセンサ、停電時や故障時に備えて電磁錠51を強制的に解錠する機構等が必要となり構成が複雑になる。また、電気部品として開閉ドア毎に定期的に検査および部品交換が必要となるため、メンテナンスに多大な時間と労力が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は以上のような従来のプラットホームドアの施錠装置における課題を考慮してなされたものであり、電気的な制御を必要とせずに、また専用の駆動源を備えることなく開閉ドアを簡易な構成で施錠及び解錠することができ、電気部品に必要とされる定期的な検査および部品交換をなくしてメンテナンスフリーを実現することができる信頼性の高いプラットホームドアの施錠装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、プラットホームの乗降位置に配置される両引き式の開閉ドアと、この開閉ドアを開閉駆動するための駆動機構と、この駆動機構の駆動力を受けてドア開閉方向に走行して各開閉ドアを牽引する走行体とを有するプラットホームドアを施錠するための施錠装置を前提として、上記開閉ドアの一方に支持された係止部と、上記開閉ドアの他方に支持され且つ上記係止部に係止される係止位置とこの係止位置から離脱して上記係止部による係止を解除する離脱位置との間で変位可能に構成された可動部材と、上記他方の開閉ドアを牽引する上記走行体に上記可動部材を連動させて施錠及び解錠を切り換える連動切換手段とを備え、上記連動切換手段は、上記走行体のドア閉方向の移動に際して上記係止位置と離脱位置との間の変位を伴いながら上記可動部材を係止部に係止させて開閉ドアを施錠する一方、上記駆動機構による上記走行体のドア開方向の移動によって上記可動部材を上記係止位置から離脱位置に向かって変位させて解錠し、上記係止部に係止された係止状態で上記少なくとも一方の開閉ドアにドア開方向の外力が作用したときには上記可動部材が上記係止位置に留まって施錠状態を保つように構成されている。
【0012】
この構成では、ドア閉止状態で開閉ドアを開放する方向に外力が作用しても可動部材が係止部によって係止されることから可動部材が係止位置に留まって施錠状態を維持することができる。一方、駆動機構の駆動力を受けて走行体がドア開方向に移動したときには可動部材が係止位置から離脱位置に向かって変位するので施錠状態が解除され、走行体の移動に伴って連動切換手段を介して開閉ドアがドア開方向に移動し、これにより開閉ドアが開放される。また、走行体が駆動機構の駆動力を受けてドア閉方向に移動したときには、前記他方の開閉ドアに取り付けられた可動部材が係止位置と離脱位置との間の変位を伴いながら前記一方の開閉ドアに取り付けられた係止部に係止される。この結果、両開閉ドアが互いに係止されるので両開閉ドアの施錠を行うことができる。
【0013】
ここで、上記可動部材は、上記他方の開閉ドアに支持され且つ上記走行体の走行方向に対して直交する方向に延びる回動支軸回りに回動可能に設けられるとともに、上記係止位置にあるときに上記係止部の戸尻側面と係合するように突出した爪部を備え、上記連動切換手段は、上記走行体のドア閉方向移動時に上記可動部材を回動させて上記爪部を上記係止部に係止させるように案内するガイド面を備えている構成としてもよい。
【0014】
この構成では、走行体がドア閉方向へ移動すると、可動部材もドア閉方向へ移動する。そして、可動部材がガイド面に案内されて係止位置にくると爪部が係止部に係止されることによって両開閉ドアが施錠される。一方、係止位置では爪部と係止部の戸尻側面とが係合するので、開閉ドアにこの開閉ドアを開く方向に外力が作用しても爪部が係止部に係止されるために開閉ドアを開くことはできない。
【0015】
また、上記連動切換手段は、上記走行体及び可動部材の一方に形成された係合孔と、上記走行体及び可動部材の他方に設けられ且つ上記係合孔内に隙間をおいて嵌まり込む係合凸部とを備え、上記係合孔は、上記走行体のドア開方向移動時に上記係合孔と係合凸部の係合によって上記可動部材を離脱位置に向かって変位させるように構成されていてもよい。
【0016】
この構成では、走行体のドア開方向の移動時に係合凸部が係合孔の内周面と接しながら孔内を移動し、これにより可動部材が係止位置から離脱位置に向かって変位して両開閉ドアが解錠される。一方、走行体のドア閉方向の移動時に係合凸部と係合孔の係合によって可動部材もドア閉方向へ移動する。そして、可動部材が係止部に係止されることで両開閉ドアが施錠される。
【0017】
上記一方の開閉ドアを吊持するドア支持部材が設けられる場合には、上記ドア支持部材は、上記走行体のドア開方向への移動開始に対して上記一方の開閉ドアが遅れて移動開始するように遊びを有した状態で上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合しているのが好ましい。
【0018】
こうすることで、ドア閉止状態にあるときに駆動機構の作用によって走行体がドア開方向に移動しても、上記一方の開閉ドアはドア支持部材を介して走行体の移動開始に遅れて移動を開始するので、上記他方の開閉ドアに設けられた可動部材が係止位置から離脱位置へ変位する間は上記一方の開閉ドアはドア開方向に移動しない。このため、可動部材が係止部に引っ掛かることなく係止部からスムーズに離脱できる。したがって、ドア開放時に解錠しないという事態を有効に回避することができる。
【0019】
上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合されている構成としてもよい。
【0020】
この場合において、上記可動部材が上記係止位置及び離脱位置間の範囲を超えて変位するのを規制する規制部材が設けられていてもよい。
【0021】
この構成では、ベルトが撓んでも規制部材によって可動部材の変位が所定範囲内に規制されるために、施錠動作の際に、可動部材がベルトの撓みの影響を受けて所定範囲を超えて変位することがないので、係止部との係合ができないという事態が生ずるのを回避でき、可動部材による施錠及び解錠を確実に行うことができる。一方、可動部材の変位を所定範囲内に規制するので、ベルトが可動部材の変位に伴って撓み変形するのを有効に防止することができる。この結果、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0022】
上記ベルトに平行に延設され且つ上記走行体を走行させるためのガイドレールが設けられていてもよい。
【0023】
この構成では、ベルトの撓みが生ずる場合においても走行体が揺動するのを抑制することができる。この結果、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0024】
上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合される場合には、上記ドア支持部材は、ドア開閉方向に並ぶ2つの長孔を介して上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合してもよい。
【0025】
この構成では、走行体がドア開閉方向の2箇所でドア支持部材に支持されるので、ベルトの撓みを誘発するような揺動を引き起こすことなく走行体を走行させることができる。逆に走行体がベルトに駆動されて走行するときにベルトが撓んでもその影響を受けにくく、これにより走行体が揺動するのを抑制することができる。この結果、ベルトの撓みを抑制することができるので、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0026】
また、上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合される場合には、上記ドア支持部材は、1つの長孔を介して上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合し、上記ドア支持部材に結合された走行体を走行させるためのガイドレールが設けられている構成としてもよい。
【0027】
この構成では、走行体がガイドレールによって支持されるために、ドア支持部材が1つの長孔を介して走行体と結合されていてもベルトの撓みを誘発するような揺動を引き起こすことなく走行体を走行させることができる。逆にベルトが撓んだときでも走行体が揺動するのをガイドレールによって有効に防止することができる。この結果、ベルトの撓みを抑制することができるので、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0028】
また、上記他方の開閉ドアを吊持するドア支持部材が設けられる場合には、上記ドア支持部材に、上記走行体と上記可動部材との連動を許容しつつこのドア支持部材と上記走行体とを連結する連結部材が設けられている構成としてもよい。
【0029】
この構成では、ベルトに結合される走行体が、連結部材を介してドア支持部材に連結されるために、走行体の走行を安定させるガイドレールを設けなくても、走行体を安定して走行させることができる。したがって、部品点数を低減しつつ走行体の揺動を抑止することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、走行体に可動部材を連動させて施錠及び解錠を切り換える連動切換手段を設け、この連動切換手段によって可動部材を係止位置と離脱位置との間で変位させて両開閉ドアの施錠及び解錠を行うようにしたので、電気的な制御を必要とする電磁錠を必要とせずに、また専用の駆動源を必要とせず簡単な構成で且つ確実に施錠及び解錠を行うことができる。しかも、両開閉ドア同士を直接機械的に施錠する構成なので、信頼性の高い施錠装置とすることができる。そして、両開閉ドアを一括して施錠するので、各開閉ドア毎に施錠機構を設ける必要がなく部品点数がなるべく増大しないようにすることができる。さらに、電気部品に必要とされる定期的な検査が不要となるメンテナンスフリーを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
《実施形態1》
図1は、本発明に係る施錠装置が適用されるプラットホームドアの一実施形態を示したものである。
【0033】
同図に示すプラットホームドアは、天井近くまで高さのあるフルスクリーンタイプのものであり乗降位置に配置された両引き式の開閉ドア1,2と、その開閉ドア1,2の左右両側に設けられ開閉ドア1,2を開時に収納する戸袋パネル3,4とを備えている。
【0034】
この開閉ドア1,2と戸袋パネル3,4とから構成されるスクリーンドアユニット5をプラットホーム6に沿って多数連ねることによってスクリーンドアが構成される。
【0035】
開閉ドア1,2は車両の側扉の開閉に対応して開閉するようになっており、その開閉動作は開閉ドア1,2の上方に配置されたヘッダボックス7内に設けられた駆動機構によって制御されるようになっている。
【0036】
ヘッダボックス7内の固定フレームにはドア開閉方向に沿って長尺の走行レール8が取り付けられている。この走行レール8は各開閉ドア1,2を吊持するドアハンガー1b,2bを走行させるためのものである。
【0037】
詳しくは、同図左側に位置する左側開閉ドア1の上框1a左右両側には一対のドアハンガー1bが取り付けられており、各ドアハンガー1bには上記走行レール8上を転動する戸車1cが設けられている。同図右側に位置する右側開閉ドア2についても同様に、上框2aに一対のドアハンガー2bが取り付けられており、ドアハンガー2bには戸車2cが設けられている。
【0038】
走行レール8の上方には駆動スプロケット9と従動スプロケット10が配設され、両スプロケット9,10には駆動ベルト11が張架されている。
【0039】
この駆動ベルト11は駆動モータ12の正、逆回転によって両スプロケット9,10間をA方向またはB方向に周回するようになっており、駆動モータ12はコントローラ13によって制御されるようになっている。これら駆動ベルト11、駆動モータ12、両スプロケット9,10によって開閉ドア1,2を開閉駆動するための駆動機構が構成されている。
【0040】
また、駆動ベルト11の下段側には右扉クランプ14が固定されており、この右扉クランプ14は右側開閉ドア2の戸先側のドアハンガー2bと接続されている。一方、駆動ベルト11の上段側には左扉クランプ15が固定されており、この左扉クランプ15は左側開閉ドア1の戸先側のドアハンガー1bと接続されている。これらクランプ14,15はそれぞれ本発明でいう走行体を構成するものである。
【0041】
したがって、右扉クランプ14と左扉クランプ15は、駆動ベルト11を走行させることによって平行で互いに反対方向に運動し、駆動ベルト11が矢印B方向に周回する場合は開閉ドア1,2が閉動作し、また矢印A方向に周回する場合は開動作する。
【0042】
なお、開閉ドア1,2の各戸先部には検知センサ(図示しない)が備えられており、ドア閉動作時に人や物の挟み込みを検知した場合にはコントローラ13に検知信号が与えられる。コントローラ13はその検知信号を受けると駆動モータ12を逆回転させ、開閉ドア1,2を開動作させる。検知信号が無くなった時点でコントローラ13は再度閉動作を実行する。
【0043】
図2は図1のC部を拡大して示したものである。同図に基づいて本実施形態に係る施錠装置20について詳しく説明する。この施錠装置20は右扉クランプ14がドア開閉方向に移動するその動きを利用して両開閉ドア1,2の施錠及び解錠を行うものである。
【0044】
同図に示すように、右扉クランプ14は、下段側の駆動ベルト11に固定されたクランプ部材14aと、このクランプ部材14aに締結された連結ブラケット14bとからなる。連結ブラケット14bは平板状に構成されており、この連結ブラケット14bの略中央にクランプ部材14aがボルト締結されている。
【0045】
クランプ部材14aよりも下方に位置する連結ブラケット14bの下端部には、係合凸部の一例としての係合ピン22が突設されている。この係合ピン22はドア開閉方向に対して直交する方向に延びるピンからなる。
【0046】
クランプ部材14aよりも上方に位置する連結ブラケット14bの上端部にはガイド輪14cが回転自在に設けられており、このガイド輪14cは駆動ベルト11の上方に配置されたガイドレール24に沿って転動するようになっている。このガイドレール24は断面コ字状のものであり、ガイド輪14cを上下から挟み込むように配置されている。このため、ガイドレール24の内側をガイド輪14cが転動するに際し、ガイド輪14cが上下動することはほとんどなく、右扉クランプ14は走行する際に上下に振動しないようになっている。
【0047】
右扉クランプ14はドアハンガー2bと可動部材26を介して接続されている。言い換えると、右側開閉ドア2に可動部材26が設けられている。この可動部材26は、図3にも示すように細長平板からなる本体部26aを備え、この本体部26aの基端側には本体部26aから下方に延設された延設部26bが設けられる一方、本体部26aの先端側には本体部26aから下方に突設された爪部26cが設けられている。
【0048】
延設部26bには、その板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔には、図2に示すように第1ピン28が挿通されている。第1ピン28は、ドアハンガー2bの戸車2cよりも戸先寄りの戸先側端部に配置されるものであり、この第1ピン28は水平方向で且つドア開閉方向に対して直交する方向に延びるように配置されてドアハンガー2bに支持されている。そして、可動部材26は、この第1ピン28を回動支軸として鉛直面内を回動可能となっている。
【0049】
爪部26cは、両開閉ドア1,2を施錠するときに左側開閉ドア1のドアハンガー1bに設けられた係止部30と係合させるためのものである。爪部26cは、延設部26bと対向する面が係止部30と係合する係合面として形成されている。この係合面は可動部材26から離れるにつれて第1ピン28から僅かに遠ざかるように傾斜して形成されている。
【0050】
係止部30は、ブロック状のものであり、左側開閉ドア1の上框1a上面に配置されたドアハンガー1bの戸先側端部に設けられている。係止部30は、その戸尻側面30aが爪部26cと係合する係合面として形成されている。この戸尻側面30aは、第1ピン28のちょうどドア閉方向に配置されており、この戸尻側面30aは可動部材26が水平配置となったときに第1ピン28と爪部26cとの間に位置することとなる。このため、可動部材26が水平配置の状態で右側開閉ドア2に右方向の外力が作用しても爪部26cが係止部30の戸尻側面30aに係止されるために、開閉ドア1,2は開放しない。同様に左側開閉ドア1に左方向の外力が作用しても開閉ドア1,2は開放しない。つまり、可動部材26がこの姿勢にあるときには、可動部材26が係止部30に係止される係止位置となる。一方、可動部材26が第1ピン28回りにこの係止位置から上方に回動し、爪部26cが係止部30よりも上方に位置すると、可動部材26が係止部30との係止が解除された離脱位置となる。
【0051】
係止部30の戸尻側面30aは上側に向かうにつれて戸先側に向かうように僅かに傾斜した傾斜面となっている。これにより、可動部材26が回動して爪部26cが下降したときには、爪部26cの係合面と係止部30の戸尻側面30aとがちょうど重なり合うようになっている。
【0052】
係止部30の戸先側面30bは、戸先から戸尻に向かうにしたがって高くなるように傾斜した傾斜面となっている。つまり、この戸先側面30bは、開閉ドア1,2がドア閉方向に移動するときに爪部26cを持ち上げてこの爪部26cを係止位置に案内するガイド面として形成されるものである。
【0053】
本施錠装置20には、右扉クランプ14の動きに連動させて施錠及び解錠を切り換えるように可動部材26を移動させるための連動切換手段32が設けられている。この連動切換手段32は、可動部材26に形成された係合孔33と、右扉クランプ14に設けられた前述の係合ピン22と、前記係止部30の戸先側面30bとを備えている。係合ピン22は間隙を有した状態で係合孔33に挿通されている。そして、この係合ピン22は、係合孔33内をその内周面に沿って移動可能となっている。係合ピン22の頭部は係合孔33から抜けないような大きさの形状、例えば円形ないし六角形状になっていて抜け止めになっている。
【0054】
係合孔33は、可動部材26の本体部26aをその板厚方向に貫通する貫通孔からなる。係合孔33は、可動部材26が係止位置にある状態で第1ピン28と爪部26cの間の位置よりも上方になるように配置されている。言い換えると、延設部26bと爪部26cとをそれぞれ本体部26aに対して下方に延設することで、本体部26aに設けられた係合孔33は、係止位置でこれらの上方に配置されている。これにより、ドア開動作において右扉クランプ14のドア開方向への移動に伴って係合ピン22を介して係合孔33に付与されるこの方向の力を可動部材26を上方へ回動する力に変換することができる。尚、係合孔33は、貫通孔に限られるものではなく、有底穴としてもよい。
【0055】
係合孔33は、図3に示すように、およそ三角形状に構成されるものである。係合孔33は、可動部材26の長さ方向(可動部材26が係止位置にあるときのドア開閉方向)に所定の長さを有するように構成されている。つまり、駆動ベルト11の伸縮に伴って係合ピン22が係合孔33内で変位しても可動部材26が上下動するのを抑制するために、係合孔33はこの方向に所定の長さを有している。また、係合孔33は、可動部材26の回動方向に所定の長さを有するように構成されている。つまり、係合ピン22は上下動しないが、この係合ピン22に対して係合孔33が可動部材26の回動方向に相対変位することによって可動部材26が係止位置と離脱位置との間を変位できるような大きさになっている。
【0056】
図2に戻る。同図に示すように、右側開閉ドア2のドアハンガー2bには、反転ストッパ36と落下防止ストッパ38とが設けられている。これら反転ストッパ36及び落下防止ストッパ38は、それぞれ可動部材26が所定の回動範囲を超えて変位するのを規制するための規制部材を構成する。
【0057】
反転ストッパ36は、第1ピン28に対して戸尻側に配置され、可動部材26が離脱位置を越えてさらに同図における時計回り(離脱方向)に回動するのを規制する。可動部材26が離脱位置を越えてさらに時計回りに回動するのを許容すると、係合孔33が係合ピン22を押し上げてしまう。このため、駆動ベルト11がこの力を受けてねじれたり上下に振動したりしてしまう。そこで、反転ストッパ36を設けることによりこれを防止している。
【0058】
落下防止ストッパ38は、第1ピン28に対して戸先側に配置され、開閉ドア1,2が開放された状態にあるときに可動部材26が係止位置を越えて同図における反時計回りに回動するのを規制する。可動部材26が係止位置を越えてさらに反時計回りに回動するのを許容すると、係合孔33が係合ピン22を押し下げてしまう。このため、駆動ベルト11がこの力を受けてねじれたり上下に振動したりしてしまう。また、可動部材26が係止位置を越えて反時計回りに回動し爪部26cが降下すると、開閉ドア1,2を閉めるときに爪部26cが係止部30の戸先側面30bよりも下方に位置してしまい、施錠できないこととなる。そこで、落下防止ストッパ38を設けて可動部材26の回動範囲を制限するようにしている。
【0059】
一方、左扉クランプ15は上段側の駆動ベルト11に固定されており、この左扉クランプ15はドアハンガー1bに設けられたブラケット1eと結合されている。左扉クランプ15は右扉クランプ14のクランプ部材14aと同じものが用いられている。
【0060】
ブラケット1eは、ドアハンガー1bのドアハンガー本体1dにおける戸車1cよりも戸尻側の部位に設けられるものであり、矩形板状に形成されている。ブラケット1eには図4に示すように下側部に2つのボルト孔1fが形成されるとともに上側部に2つの2つの長孔1gが形成されている。
【0061】
各ボルト孔1fはブラケット1eをドアハンガー本体1dに締結するためのボルトを挿通させる貫通孔である。そして、このボルト孔1fに挿通されたボルトによってドアハンガー本体1dとブラケット1eとが締結固定されている。ブラケット1eはドアハンガー本体1dから上方に向かって延びるように配設されている。
【0062】
各長孔1gはブラケット1eを左扉クランプ15に結合するための係合ピンを挿通するためのものであり、各長孔1gは走行方向に細長くなっている。そして、この各長孔1gにそれぞれ係合ピンが挿通され、この係合ピンによりブラケット1eは左扉クランプ15に対してその走行方向に相対変位が可能な状態で左扉クランプ15に連結されている。
【0063】
長孔1gは、駆動ベルト11になるべく近いところに配置し、かつ両長孔1gを互いになるべく離して配置するのが好ましい。こうすることで、走行時に左扉クランプ14が揺動するのを効果的に抑制することができる。
【0064】
長孔1gのドア開閉方向の長さは、左扉クランプ15の移動開始に対してブラケット1e(ドアハンガー1b)の移動開始を所定時間だけ遅らせるような長さとなっている。ドアハンガー1bの移動開始を遅らせるのは以下の理由による。すなわち、開閉ドア1,2を開放する際に、駆動ベルト11が走行開始すると両クランプ14,15は互いに離れる方向に同時に移動し始める。このため、左扉クランプ15とドアハンガー1bとが同時に動き始めるとすると、可動部材26が上向きに回動して係止部30との係止状態から離脱する前に係止部30が動き始めることとなり、可動部材26の爪部26cと係止部30との係合がスムーズに解除されない可能性がある。そこで、左扉クランプ15とドアハンガー1bとは、解錠するときに可動部材26が係止位置から離脱位置まで回動する間に左側開閉ドア1が左方へ移動せずに静止状態を維持するような遊びを有する状態で結合されている。このドアハンガー1bは、本発明でいうドア支持部材を構成するものである。
【0065】
次に、上記構成を有する施錠装置20の動作について説明する。
【0066】
(a)ドア閉動作
ドア開位置から開閉ドア1,2を閉じる場合には、駆動ベルト11を図1に示す矢印B方向に走行させることにより、施錠装置20は、図5に示す状態から図8に示す状態に順次変化する。具体的に説明すると、下段側の駆動ベルト11に固定された右扉クランプ14は左方向に移動する。このときガイド輪14cがガイドレール24に沿って転動するので右扉クランプ14は揺動することは少なく、安定して走行する。そして、右扉クランプ14の移動に伴い係合ピン22が係合孔33の左側面と係合することで可動部材26も左方向に移動するので右側開閉ドア2も牽引されて同方向へ移動する。
【0067】
一方、左側開閉ドア1は左扉クランプ15の移動に伴って右方向へ移動する。そして、図5に示すように両開閉ドア1,2が近づき可動部材26が係止部30と当接すると、可動部材26の爪部26cが係止部30の戸先側面30b(ガイド面)によって案内されて持ち上げられ、回動部材は時計回りに回動する。このとき、反転ストッパ36が可動部材26が駆動ベルト11を持ち上げるほどに回動しすぎるのを抑止する。また、落下防止ストッパ38が可動部材26の回動を規制しているので、爪部26cが戸先側面30bよりも下がることはなく、可動部材26は円滑に戸先側面30bに当接する。
【0068】
その後図6に示すように爪部26cが係止部30の上面に沿うように可動部材26は回動しながら左方向へ移動する。そして、図7に示すように爪部26cが係止部30を乗り越えるとともに両開閉ドア1,2の戸先同士が当接し、駆動ベルト11が停止すると、可動部材26は反時計回りに回動して爪部26cが落下する。そして、図8に示すように爪部26cの係合面と係止部30の戸尻側面30aとが重なり合い、可動部材26が係止部30に係止された係止位置となって施錠完了となる。
【0069】
この施錠状態で駆動ベルト11の伸縮や振動が生じたときには、これに伴って右扉クランプ14が左右に変位することもあり得るが、この場合でも右扉クランプ14の係合ピン22が可動部材26の係合孔33内を左右に移動可能となっているので、右扉クランプ14の変位によって可動部材26が回動変位することはない。
【0070】
また、この施錠状態で開閉ドア1,2を無理に開けるように外力が作用したときには、第1ピン28を介して可動部材26を右方向へ移動させる力が作用するが、このとき、可動部材26は係止位置の姿勢でそのまま右方向へ移動しようとする。それ故、可動部材26の爪部26cが係止部30に係止されるために、施錠状態が維持されて開閉ドア1,2は開放されない。
【0071】
(b)ドア開動作
図8に示す施錠状態から解錠するには、駆動ベルト11を図1に示す矢印A方向に走行させる。これにより、下段側の駆動ベルト11に固定された右扉クランプ14は右方向に移動し、図9及び図10に示すように、右扉クランプ14の係合ピン22が係合孔33内をその内周面に摺接して右向きに移動し、係合孔33の右側面と係合する。この係合孔33は第1ピン28よりも上方に位置しているので、係合ピン22によって右扉クランプ14から可動部材26へ伝えられた右向きの力は、可動部材26を第1ピン28を回動軸として時計回りに回動させる力として作用する。これにより可動部材26は第1ピン28回りを時計回りに回動し、爪部26cが持ち上げられる。このとき、左扉クランプ15は左方向に移動するものの、この左扉クランプ15の係合ピンとブラケット1eの長孔1gとがすぐには係合しないためにドアハンガー1bは所定時間左方向へ移動せず、係止部30も静止している。このため、可動部材26の爪部26cは、係止部30に圧接されることはなく円滑に離脱して解錠が行われる。そして、さらに駆動ベルト11が走行すると、左扉クランプ15がブラケット1eに係合して左側開閉ドア1が移動開始する。そして、右側開閉ドア2が右方向へ移動するとともに左側開閉ドア1が左方向へ移動してドア開動作が行われる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、右扉クランプ14に可動部材26の動きに連動して施錠及び解錠を切り換える連動切換手段32を設け、この連動切換手段32によって可動部材26を係止位置と離脱位置との間で変位させて施錠及び解錠を行うようにしたので、電気的な制御を必要とする電磁錠を必要とせずに、また専用の駆動源を必要とせず簡単な構成で且つ確実に施錠及び解錠を行うことができる。しかも、両開閉ドア1,2同士を直接機械的に施錠する構成なので、信頼性の高い施錠装置20とすることができる。そして、両開閉ドア1,2を一括して施錠するので、開閉ドア1,2毎に施錠機構を設ける必要がなく部品点数を低減することができる。さらに、電気部品に必要とされる定期的な検査が不要となるメンテナンスフリーを実現できる。
【0073】
また、本実施形態1では、左扉クランプ15を長孔1gによってブラケット1eに結合することで遊びを持たせるようにしているので、ドア閉止状態にあるときに駆動ベルト11が走行して両扉クランプ14,15が移動開始しても、左側開閉ドア1は左扉クランプ15の移動開始に遅れて移動を開始する。このため、可動部材26が係止位置から離脱位置へ変位する間、左側開閉ドア1は左方向に移動せずに所定時間は静止したままとなるので、可動部材26の変位に際して係止部30が爪部26cに押し付けられることはない。この結果、可動部材26が係止部30に引っ掛かることなく係止部30からスムーズに離脱でき、ドア開放時に解錠しないという事態を効果的に回避することができる。
【0074】
また、本実施形態1では、ブラケット1eと左扉クランプ15との結合を2つの長孔1gを介して行うようにしているので、駆動ベルト11に駆動されて左扉クランプ15が走行するときに揺動するのを抑制することができる。また、左扉クランプ15が揺動するのを抑制するためのガイドレールを設ける必要がないので部品点数が増大するのを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態1では、駆動ベルト11が撓んでも反転ストッパ36及び落下防止ストッパ38によって可動部材26の回動範囲が所定範囲内に制限されるために、施錠動作の際に、駆動ベルト11の撓みの影響を受けて可動部材26が所定範囲を超えて変位することがない。これにより、係止部30との係合ができないという事態が生ずるのを回避でき、可動部材26による施錠及び解錠を確実に行うことができる。一方、可動部材26の変位を所定範囲内に規制するので、駆動ベルト11が可動部材26の変位に伴って撓み変形するのを有効に防止することができる。この結果、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0076】
また、本実施形態1では、右扉クランプ14をガイドするためのガイドレール24を設けているので、駆動ベルト11の撓みが生ずる場合においても右扉クランプ14が揺動するのを抑制することができる。この結果、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0077】
なお、本実施形態1では、可動部材26に係合孔33を設け、連結ブラケット14bに係合ピン22を設ける構成としたが、これに代え、可動部材26に係合ピン(係合凸部)を設け、連結ブラケット14bに係合孔を設ける構成としてもよい。
【0078】
また、本実施形態1では、係合孔33を略三角形状に形成したが、これに限られるものではない。要は、係合孔33は、可動部材26の長さ方向に駆動ベルト11の伸縮に応じた長さを有し、また可動部材26の回動方向にこの回動範囲に応じた長さを有していればよい。
【0079】
また、本実施形態1では、駆動ベルト11によって開閉ドア1,2を開閉駆動するようにしたが、これに限られるものではない。要は、ドア開閉方向に走行する走行体が設けられていて、開閉ドア1,2がこの走行体に牽引されて開閉動作するものであればよい。
【0080】
《実施形態2》
本発明の実施形態2は、図11に示すように、左側開閉ドア1のドアハンガー1bのブラケット1eに実施形態1と異なり長孔1gを1つ設けるとともに、左扉クランプ15を走行させるためのガイドレール44を設けるようにしたものである。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
左扉クランプ15は、上段側の駆動ベルト11に固定されたクランプ部材15aと、このクランプ部材15aに締結された連結ブラケット15bとからなる。連結ブラケット15bは平板状に構成されており、この連結ブラケット15bの略中央にクランプ部材15aがボルト締結されている。
【0082】
クランプ部材15aよりも下方に位置する連結ブラケット15bの下端部には、係合ピン15cが突設されている。この係合ピン15cは上記ブラケット1eの長孔1gに挿入されている。
【0083】
長孔1gはブラケット1eの上側部に貫通形成されている。この長孔1gは、走行方向に細長くなっている。そして、この長孔1gに係合ピン15cが挿通され、この状態でブラケット1eは左扉クランプ15に対してその走行方向に相対変位が可能に連結されている。
【0084】
クランプ部材15aよりも上方に位置する連結ブラケット14bの上端部にはガイド輪15dが回転自在に設けられており、このガイド輪15dは駆動ベルト11の上方に配置されたガイドレール44に沿って転動するようになっている。このガイドレール44は断面コ字状のものであり、ガイド輪15dを上下から挟み込むように配置されている。このため、ガイドレール44の内側をガイド輪15dが転動するに際し、ガイド輪15dが上下動することはほとんどなく、左扉クランプ15は走行する際に上下に振動しないようになっている。
【0085】
本実施形態2では、開閉ドア1,2の開閉時において左扉クランプ15が駆動ベルト11の走行によって駆動されると、ブラケット1eの長孔1gと連結ブラケット15bの係合ピン15cとが係合することで、ブラケット1eを介してドアハンガー1bが左扉クランプ15によって牽引され、左側開閉ドア1は左扉クランプ15と同方向に移動する。そして、左扉クランプ15がガイド輪15dをガイドレール44に沿って転動させながら走行し、ドアの開閉が行われる。
【0086】
したがって、本実施形態2によれば、左扉クランプ15がガイドレール44に沿って走行するようにしたので、ブラケット1eが1つだけの長孔1gを介して左扉クランプ15と結合されるとしても駆動ベルト11の撓みを誘発するような揺動を引き起こすことなく左扉クランプ15を走行させることができる。逆に駆動ベルト11が撓んだときでもガイドレール44によって左扉クランプ15を支持することができるために、左扉クランプ15が揺動するのを有効に防止することができる。この結果、駆動ベルト11の撓みを抑制することができるので、ベルト寿命への影響を低減できるとともに、解施錠動作の不確実さを解消することができる。
【0087】
また、本実施形態2では、長孔1gを1つだけにしたので、実施形態1に比べてブラケット1eの加工工程を減らすことができる。また、左扉クランプ15の調整を容易に行うことができる。また、長孔1gが1つだけなので左扉クランプ15の連結ブラケット15bと右扉クランプ14の連結ブラケット14bとを共通の部品とすることができる。また、長孔1gを複数形成する場合には加工精度によって各長孔1gにおける摺動抵抗が異なり、その抵抗の違いによって左扉クランプ15が走行中に揺動したり振動するという事態を生じ得るが、長孔1gを1つだけとすればこのような事態は生じ得ない。したがって、左扉クランプ15をよりスムーズに走行させることができて騒音の発生をも抑制できる。
【0088】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが上記実施形態1と同様である。
【0089】
《実施形態3》
本発明の実施形態3は、図12に示すように、右扉クランプ14のガイドレールを省略する一方、ドアハンガー2bに連結部材の一例としてのブラケット2eを設けてこのブラケット2eに右扉クランプ14を結合するようにしたものである。以下具体的に説明する。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
ブラケット2eは、ドアハンガー2bのドアハンガー本体2dにおける戸車2cよりも戸先側の部位に締結固定されており、矩形板状に形成されている。このブラケット2eは、ドアハンガー本体2dから上方に延出されており、このブラケット2eにおけるドアハンガー2bよりも上方に2つの長孔2gが形成されている。この長孔2gは、走行方向に細長く形成されており、その長さは可動部材26の係合孔33における可動部材26長さ方向の長さよりも長く形成されている。
【0091】
右扉クランプ14は、下段側の駆動ベルト11に固定されたクランプ部材14aと、このクランプ部材14aから側方に延設されたクランプ延長板14dとからなる。クランプ部材14aは、ブラケット2eの上端部に近接して配置されている。一方、クランプ延長板14dは、ブラケット2eに近接した基端部から戸先側に向かって可動部材26の本体部26aのところまで延びている。
【0092】
クランプ延長板14dには、その基端部に2つの第1係合ピン14eが立設されるとともに、先端部における下端部に第2係合ピン22が立設されている。両第1係合ピン14eはブラケット2eの長孔2gにそれぞれ挿通されている。この長孔2gは、ドアハンガー2bと右扉クランプ14との走行方向における相対変位を許容する一方、右扉クランプ14の揺動又は上下動を抑止する。
【0093】
第2係合ピン22は、可動部材26の係合孔33に挿通されている。ドアハンガー2bに対する右扉クランプ14の相対変位により、可動部材26は第1ピン28回りに回動するようになっている。この点は実施形態1と同様である。
【0094】
本実施形態3によれば、部品点数を低減しつつ、ブラケット2eの長孔2gにクランプ延長板14dの第1係合ピン14eを係合させることによって右扉クランプ14の揺動を抑止することができる。
【0095】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが実施形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態1に係る施錠装置が適用されたプラットホームドアの全体構成を示す正面図である。
【図2】前記プラットホームドアの要部を拡大して示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態1における可動部材の正面図である。
【図4】本発明の実施形態1におけるブラケットの正面図である。
【図5】ドア閉動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図6】ドア閉動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図7】ドア閉動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図8】ドア閉動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図9】ドア開動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図10】ドア開動作時における連動切換手段の動作を説明するための説明図である。
【図11】本発明の実施形態2における図2相当図である。
【図12】本発明の実施形態3における図2相当図である。
【図13】従来のプラットホームドアの施錠装置を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 左側開閉ドア
1b ドアハンガー(ドア支持部材の一例)
2b ドアハンガー(ドア支持部材の一例)
1g 長孔
2 右側開閉ドア
2e ブラケット(連結部材の一例)
6 プラットホーム
11 駆動ベルト
14 右扉クランプ(走行体の一例)
15 左扉クランプ(走行体の一例)
22 係合ピン(係合凸部の一例)
24 ガイドレール
26 可動部材
26c 爪部
30 係止部
30a 戸尻側面
30b 戸先側面(ガイド面の一例)
32 連動切換手段
33 係合孔
36 反転ストッパ(規制部材の一例)
38 落下防止ストッパ(規制部材の一例)
44 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの乗降位置に配置される両引き式の開閉ドアと、この開閉ドアを開閉駆動するための駆動機構と、この駆動機構の駆動力を受けてドア開閉方向に走行して各開閉ドアを牽引する走行体とを有するプラットホームドアを施錠するための施錠装置であって、
上記開閉ドアの一方に支持された係止部と、
上記開閉ドアの他方に支持され且つ上記係止部に係止される係止位置とこの係止位置から離脱して上記係止部による係止を解除する離脱位置との間で変位可能に構成された可動部材と、
上記他方の開閉ドアを牽引する上記走行体に上記可動部材を連動させて施錠及び解錠を切り換える連動切換手段とを備え、
上記連動切換手段は、上記走行体のドア閉方向の移動に際して上記係止位置と離脱位置との間の変位を伴いながら上記可動部材を係止部に係止させて開閉ドアを施錠する一方、上記駆動機構による上記走行体のドア開方向の移動によって上記可動部材を上記係止位置から離脱位置に向かって変位させて解錠し、上記係止部に係止された係止状態で上記少なくとも一方の開閉ドアにドア開方向の外力が作用したときには上記可動部材が上記係止位置に留まって施錠状態を保つように構成されていることを特徴とするプラットホームドアの施錠装置。
【請求項2】
上記可動部材は、上記他方の開閉ドアに支持され且つ上記走行体の走行方向に対して直交する方向に延びる回動支軸回りに回動可能に設けられるとともに、上記係止位置にあるときに上記係止部の戸尻側面と係合するように突出した爪部を備え、
上記連動切換手段は、上記走行体のドア閉方向移動時に上記可動部材を回動させて上記爪部を上記係止部に係止させるように案内するガイド面を備えていることを特徴とする請求項1記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項3】
上記連動切換手段は、上記走行体及び可動部材の一方に形成された係合孔と、上記走行体及び可動部材の他方に設けられ且つ上記係合孔内に隙間をおいて嵌まり込む係合凸部とを備え、
上記係合孔は、上記走行体のドア開方向移動時に上記係合孔の内周面上を係合凸部が摺接することによって上記可動部材を離脱位置に向かって変位させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項4】
上記一方の開閉ドアを吊持するドア支持部材が設けられ、
上記ドア支持部材は、上記走行体のドア開方向への移動開始に対して上記一方の開閉ドアが遅れて移動開始するように遊びを有した状態で上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項5】
上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項6】
上記可動部材が上記係止位置及び離脱位置間の範囲を超えて変位するのを規制する規制部材が設けられていることを特徴とする請求項5記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項7】
上記ベルトに平行に延設され且つ上記走行体を走行させるためのガイドレールが設けられていることを特徴とする請求項5記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項8】
上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合され、
上記ドア支持部材は、ドア開閉方向に並ぶ2つの長孔を介して上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合していることを特徴とする請求項4記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項9】
上記駆動機構はドア開閉方向に沿って走行するベルトを備え、このベルトには上記走行体が結合され、
上記ドア支持部材は、1つの長孔を介して上記一方の開閉ドアを上記走行体に結合し、
上記ドア支持部材に結合された走行体を走行させるためのガイドレールが設けられていることを特徴とする請求項4記載のプラットホームドアの施錠装置。
【請求項10】
上記他方の開閉ドアを吊持するドア支持部材が設けられ、
上記ドア支持部材には、上記走行体と上記可動部材との連動を許容しつつこのドア支持部材と上記走行体とを連結する連結部材が設けられていることを特徴とする請求項5記載のプラットホームドアの施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−45888(P2006−45888A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227797(P2004−227797)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)