説明

プラットホーム隙間調整装置

【課題】 装置を大幅に簡素化できて、プラットホームの大掛かりな改造を必要とせず、かつ車両とプラットホーム間の任意の大きさの隙間に対応できるとともに、乗降客等の負荷に対して十分な強度を保持し得る隙間調整装置を提供する。
【解決手段】 垂直方向に直線往復動する摺動子24と、同摺動子を垂直方向に案内する案内部材25と、一端が前記可動踏板の下面に回動自在に軸着され他端が摺動子24に回動自在に軸着された第1の支持腕22と、同第1の支持腕を2等分する位置に一端が回動自在に軸着され他端が空間部S上方の固定部位26に回動自在に軸着され第1の支持腕の1/2のリンク長を有する第2の支持腕23と、摺動子24を案内部材25に沿って摺動させる駆動装置27と、可動踏板21を突出位置又は退去位置で停止させる位置規制手段29a、29bとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道の駅等、軌道用車両乗降プラットホームにおいて、乗降客の軌道への転落を防止するために、車両の進入に連動してプラットホームの先端と車両の乗降口との隙間を簡単な構造で塞ぐことができる隙間調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の駅において構内に列車が到着したとき、プラットホームに沿う軌道が直線の場合は、各車両とプラットホームとの間に大きな隙間は生じないが、軌道が曲線を描いている場合、列車Tの車両が直線的であるのに対し、列車の外側に位置するプラットホームでは、図9(a)に示すように、各車両の乗降口T1のうち中央部に近い乗降口とプラットホームPとの間に大きな隙間Qが生じ、列車Tの内側に位置するプラットホームでは、図9(b)に示すように各車両の前後両端部に近い乗降口T1とプラットホームPとの間に大きな隙間Qが生じる。
【0003】
そのため従来曲線軌道に沿って設けられたプラットホームと列車の各車両との間の隙間を埋めるために、プラットホーム上面の端部から軌道側に向けて出没する可動踏板を備えた装置が提案されている。
例えば特許文献1(特開2002−53035号公報)には、前述のような可動踏板を備えたプラットホームの転落防止装置が開示されている。この装置を図10に基づいて説明する。図10において、この装置は、プラットホーム010の端縁部013の上面014を凹設した格納部015に嵌め込むようにして転落防止装置020を設置し、モータ031によって回転駆動されるピニオン032とピニオン032に噛み合うラック部材025とからなる駆動機構030により、ラック部材025と一体となったプレート024を車両側に出没させ、プレート023及び024に取り付けられた転落防止部材(可動踏板)021を水平方向に出没させるようにし、格納部015を天井部材050によって上方から覆うように構成したものである。
【特許文献1】特開2002−53035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示された装置は、転落防止部材(可動踏板)021を設置する部分のプラットホームの上面を一定の厚さ分だけ剥ぎ取り、そこに格納部015を形成し、また駆動機構030のモータ031を嵌挿するための貫通孔017を穿設する必要があるなど、プラットホームの大掛かりな改造を必要とし、また格納部015を転落防止部材021の幅全部に亘り設置するとともに、転落防止部材021を水平方向に移動させる手段として、ピニオンとラック部材とを用いているため、装置構成が大掛かりかつ複雑になるという問題がある。
【0005】
さらに格納部015の凹部にはごみ等の異物が溜まりやすく、格納部015の凹部に異物が溜まると、転落防止部材021の往復動に支障をきたしやすく、また転落防止部材021が突出したとき格納部015による片持ち支持となるため、支持強度が弱いという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、装置を大幅に簡素化できて、プラットホームに設置する場合に、プラットホームの大掛かりな改造等を必要とせず、かつ車両とプラットホーム間の任意の大きさの隙間に対応することができるとともに、乗降客等が乗ることによる負荷に対して十分な強度を保持し得る隙間調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の隙間調整装置は、車両の乗降口の開口幅以上の長さを有し水平に配置された平板状の可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没可能に設け、車両とプラットホームとの間に形成される隙間を塞ぐようにした隙間調整装置において、
前記可動踏板の下方に設けられた空間部に垂直方向に直線往復動可能に配置された摺動子と、
同摺動子を垂直方向に案内する案内部材と、
一端が前記可動踏板の下面に回動自在に軸着され他端が前記摺動子に回動自在に軸着され同可動踏板に対し斜めに装架されて同可動踏板を下方から支持する第1の支持腕と、
前記第1の支持腕を2等分する位置に一端が回動自在に軸着され他端が前記空間部上方の固定部位に回動自在に軸着され前記第1の支持腕の1/2のリンク長を有して同第1の支持腕を斜め上方から支持する第2の支持腕と、
前記可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没させる駆動装置と、
前記可動踏板が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに前記駆動装置を停止させて前記可動踏板を位置決めする位置規制手段とを備え、
前記第2の支持腕と前記固定部位との軸着部が、前記可動踏板を通る水平面と前記第1の支持腕と前記摺動子との軸着部を通る垂直線とが交差した位置にあるように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明装置においては、可動踏板の支持機構を前記第1の支持腕、前記摺動子、前記第2の支持腕及び前記案内部材から構成する。この支持機構は、前記構成を有することにより、前記可動踏板を前記駆動装置によってプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没させると、前記摺動子を前記案内部材に沿って正確に垂直方向に摺動させることができる。前記駆動装置は、前記可動踏板を直接駆動する駆動装置か、あるいは前記摺動子を前記案内部材に沿って垂直方向に摺動させる駆動装置であってもよい。この場合前記摺動子を前記案内部材に沿って垂直方向に摺動させると、前記可動踏板は正確に軌道側に向かって水平に往復動する。
【0009】
この支持機構の原理を図1の模式図を使って説明する。図1において、1は水平方向に移動可能に配置された可動踏板で、固定部位6に設けられた基部7に対し離隔又は接近する方向に移動可能であり、基部7に対し離隔する方向に一定距離まで移動可能であるが、それ以上の移動はこの支持機構により阻止される。
【0010】
2は第1の支持腕であり、一端が結合点Yにおいて可動踏板1に回動自在に軸着され、他端が摺動子4に接合点Zにおいて回動自在に軸着されている。摺動子4は、案内部材5に垂直方向に摺動自在に案内され、案内部材5は、摺動子4を案内する案内面が固定部位6に対し垂直方向に取り付けられている。
3は第2の支持腕であり、その一端が第1の支持腕2の長さYZを2等分する結合点Wで回動自在に軸着され、他端が基部7と結合点Xで回動自在に軸着され、かつ第2の支持腕3の長さXWは第1の支持腕2の1/2の長さとなっている。即ちYW=ZW=XWという関係になっている。
また接合点Xは可動踏板1を通る水平面hと結合点Zを通る垂直線vとの交点に位置している。
【0011】
前述のような関係が成り立つとき、可動踏板1が水平方向に直線状に往復動するならば、摺動子4は厳密に垂直方向に直線状に往復動する関係となる。
次に可動踏板1に乗降客が乗ることにより加わる荷重が可動踏板1の支持構造にどのように作用するかについて説明する。可動踏板1に乗降客が乗ったときに加わる力(荷重)は、図1中で点Yに垂直方向下向きに加わる力Aとして表される。力Aを水平方向の分力A及び第1の支持腕2の方向に働く分力Aに分けると、水平方向の分力Aは、結合点Wを中心としたモーメントを発生させ、YW=ZWであるため、結合点ZにおいてAと大きさが同一であって向きが反対の力Bを発生させる。
【0012】
また第2の支持腕3が第1の支持腕に作用する力はCで表され、力Cは第1の支持腕2の方向の分力Cと水平方向の分力Cにとに分けると、分力Cは分力Aと相殺され、水平方向の分力Cのみが残ることになる。
このため結局第1の支持腕2に対しては、水平方向の分力B及びCのみが残ることになる。
【0013】
このように本発明の支持機構を採用すれば、摺動子4には垂直方向の力は作用せず、水平方向の力のみが作用するため、可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没させる場合、大きな駆動力を必要としない。
可動踏板1を軌道側に出没させる手段として、可動踏板を直接駆動する手段と、摺動子4を垂直方向に上下動させることにより、可動踏板を駆動する手段があるが、摺動子4には垂直方向の力が作用しないため、上記いずれの手段によっても大きな駆動力を必要としない。
【0014】
また摺動子4には垂直方向の力が作用しないため、摺動子を任意の位置に保持する事が容易となる。
例えば摺動子4を駆動する駆動装置を設けた場合、この駆動装置の保持力のみで摺動子を一定位置に保持することが可能となる。
また摺動子4の垂直方向位置を適宜に設定するだけで、可動踏板の軌道側への突出量を自由に調整できるとともに、摺動子4を任意の位置に保持するだけで、可動踏板をも任意の突出位置に保持する事が可能となる。このように可動踏板1の突出位置は摺動子4の垂直方向位置で決まり、また可動踏板は前記支持機構で支持されているため、可動踏板1が突出許容限界位置を過ぎて脱落することはない。
【0015】
また本発明装置において、前記可動踏板が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに前記駆動装置を停止させて前記可動踏板を位置決めする位置規制手段を設ける。
位置規制手段は、例えばリミットスイッチなどの接触式スイッチあるいは磁気スイッチなどの近接スイッチを使用することができ、また可動踏板側あるいはプラットホームの固定部位のどちらに取り付けてもよい。このような位置規制手段の取り付け位置を変えることにより、可動踏板の突出位置又は退去位置は、任意に調整することができる。
なお可動踏板の長手方向の長さは、列車の乗降口の幅よりも長くすることにより、乗客の乗降時の安全を確保する必要がある。
【0016】
本発明装置において、好ましくは、装置の簡素化を図るため、前記摺動子、前記案内部材、前記第1の支持腕及び前記第2の支持腕からなる前記可動踏板の支持機構を前記可動踏板の長手方向に沿って複数分散配置し、同支持機構の少なくともひとつに前記駆動装置及び前記位置規制手段を設けてもよい。
また本発明装置において、可動踏板を直接駆動する駆動装置は、好ましくは、可動踏板に連結されたスライダと、同スライダを水平方向に案内する案内部材と、前記スライダに穿設したネジ孔と、同ネジ孔に螺合したボールネジと、同ボールネジを回転駆動する電動モータとからなる。
また前記摺動子を前記案内部材に添って摺動させる駆動装置は、好ましくは、前記摺動子が接続されたチェーン又はベルト及び同チェーン又はベルトを駆動する電動モータで構成するとよい。
【0017】
また本発明装置において、好ましくは、車両の運転台からの車両停止信号若しくは車両始動信号に連動して、又はプラットホームで車両の進入若しくは始動を検知してその検知信号に連動して前記駆動装置を駆動又は停止させるように構成する。
また本発明装置において、前記可動踏板が突出位置に到達したとき、前記可動踏板の上面に覆い板が載置されてプラットホーム上面との段差をなくするようにするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明装置によれば、可動踏板の下方に設けられた空間部に垂直方向に直線往復動可能に配置された摺動子と、同摺動子を垂直方向に案内する案内部材と、一端が前記可動踏板の下面に回動自在に軸着され他端が前記摺動子に回動自在に軸着され同可動踏板に対し斜めに装架されて同可動踏板を下方から支持する第1の支持腕と、前記第1の支持腕を2等分する位置に一端が回動自在に軸着され他端が前記空間部上方の固定部位に回動自在に軸着され前記第1の支持腕の1/2のリンク長を有して同第1の支持腕を斜め上方から支持する第2の支持腕と、前記可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没させる駆動装置と、前記可動踏板が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに前記駆動装置を停止させて前記可動踏板を位置決めする位置規制手段とを備え、前記第2の支持腕と前記固定部位との軸着部が、前記可動踏板を通る水平面と前記第1の支持腕と前記摺動子との軸着部を通る垂直線とが交差した位置にあるように構成したことにより、可動踏板を正確に水平面内で移動させることができ、可動踏板が傾いたりしないので、可動踏板に乗る乗降客が滑ったりすることがなく、乗降客の安全を確保することができる。
また前述のように摺動子に下向きの荷重が付加しないので、小さな駆動力で可動踏板をスムーズに突出位置又は退去位置に移動させることができる。
【0019】
また前記摺動子を前記案内部材に沿って垂直方向に摺動させる駆動装置を設けた場合であっても、前記前記可動踏板の水平方向の動きに対して摺動子は厳密に垂直方向に直線運動を行なうため、垂直方向に配置した案内部材に沿ってスムーズに摺動することができるとともに、また摺動子には垂直方向の力は作用せず、水平方向の力のみが作用するため、その水平方向の力に抗し得る固定部位に案内部材を固定することにより、可動踏板に加わる乗降客の荷重を支えることができる。そのため可動踏板の支持機構を極めて簡素なものとすることができる。
【0020】
また摺動子には垂直方向の力が加わらないため、摺動子を任意の位置で止めておくことが容易になり、そのため可動踏板の軌道側への突出位置を自由に調整できるとともに、摺動子を所定の位置に保持しておくだけで可動踏板に対する何等の固定手段を設けることなく、可動踏板を任意の突出位置に保持することができる。
また摺動子には垂直方向の力が加わらないため、駆動装置の保持力のみによって摺動子を任意の高さに保持することができる。
【0021】
本発明の可動踏板の前記支持機構は、場所を取らず、プラットホームに設置する際に、前記支持機構の設置部分のみコンクリートを部分的に除去すればよく、またユニット化が可能であるため、部分的な改装だけで済む。
また可動踏板は、前記第1の支持腕で先端部を支持しているので、特許文献1のように片持ち支持とならず、可動踏板が突出した場合でも可動踏板を支える十分な強度を有する。
【0022】
さらに前記可動踏板が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに前記駆動装置を停止させて前記可動踏板を位置決めする位置規制手段を設けることにより、可動踏板を所望の位置に突出又は退去させることができ、好ましくは、前記位置規制手段が接触式スイッチ又は近接スイッチであり、その取り付け位置を変えることにより、前記可動踏板の突出位置又は退去位置を任意に変更することができる。
【0023】
また好ましくは、摺動子、案内部材、第1の支持腕及び第2の支持腕からなる可動踏板の支持機構を可動踏板の長手方向に沿って複数分散配置することにより、乗降客による可動踏板への負荷に対し十分な強度を可動踏板に付与することができるとともに、前記駆動装置及び前記位置規制手段は、同支持機構の少なくともひとつに設ければよく、かかる構成によって装置のさらなる簡素化も可能となる。
【0024】
また好ましくは、車両の運転台からの車両停止信号若しくは車両始動信号に連動して、又はプラットホームで車両の進入若しくは始動を検知してその検知信号に連動して前記駆動装置を駆動又は停止させるように構成することにより、可動踏板の出没動作を車両の発停とを連動させて最適なタイミングでかつシステマティックに行なうことができる。
また好ましくは、前記可動踏板が突出位置に到達したとき、前記可動踏板の上面に覆い板が載置されてプラットホーム上面との段差をなくするようにすることにより、プラットホームから可動踏板への、また逆に可動踏板からプラットホームへの乗降客等の移動がよりスムーズにかつ安全に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図2は、本発明装置の第1実施例に係わり、(a)は突出時(動作時)、(b)は退去時(格納時)を示す平面図、図3は、図2中のA−A矢視に沿う側断面図、図4は、図2中のB−B矢視に沿う側断面図、図5は、図2中のC−C矢視に沿う側断面図、図6は、図2中のD−D矢視に沿う側断面図である。
【0026】
図2及び図2(a)中のA−A断面を示す図3において、11は、プラットホームPに設けられた空間Sに組み立てられたフレーム、12は、空間Sを覆う覆い板であり、覆い板12はフレーム11に支持されて、可動踏板の設置場所以外の他のプラットホームPの上面と同一高さを形成する。覆い板12は、例えばフレーム11に対して着脱自在に装着して交換可能とすると良い。21は、プラットホームPの上面前端部に水平に配置された平板状の可動踏板であり、使用されない時は覆い板12の下側に収納され、使用時にプラットホームPから軌道側に突出するように構成され、可動踏板21の裏面に可動踏板に剛性を付与するとともに、後述する第1の支持腕22の一端が結合される溝形鋼21aが固着されている。
【0027】
22は第1の支持腕であり、一端が結合部Yにおいて可動踏板21の溝形鋼21aに回動自在に軸着され、他端がリニアガイド24に接合部Zにおいて回動自在に軸着されている。リニアガイド24は、案内レール25に遊嵌されて垂直方向に摺動自在に案内され、案内レール25は、リニアガイド24と遊嵌して案内するレール面が空間S内に固定されたフレーム13に垂直方向に取り付けられている。
【0028】
23は第2の支持腕であり、その一端が第1の支持腕22の両結合部Y及びZ間を2等分する結合部Wで回動自在に軸着され、他端がフレーム13に取り付けられた基部26と結合部Xで回動自在に軸着されている。第2の支持腕23の長さXWは第1の支持腕22のちょうど1/2の長さとなっている。即ちYW=ZW=XWという関係になっている。
また第2の支持腕23と基部26との軸着部が、可動踏板21を通る水平面hと第1の支持腕22とリニアガイド24との軸着部を通る垂直線vとが交差した位置にあるように構成されている。
【0029】
前記の構成により可動踏板21の支持機構を構成している。かかる支持機構は、図2に示すように、可動踏板21の長手方向に複数分散して配置されるとともに、第1の支持腕22の可動踏板21との結合部Yは、各支持機構間で前側溝形鋼21aと後側溝形鋼21bとに交互に選択されている。
27は、固定フレーム13に設置された電動モータであり、その出力軸に垂直方向に配置されたチェーン28が巻回され、同出力軸を正回転又は逆回転することにより、チェーン28を垂直線に沿った上下方向に移動させ、チェーン28に取り付けられたリニアガイド24を案内レール25に沿って垂直方向上下に摺動させるようにしている。
なお駆動モータ27及びチェーン28は、図3(図1中のA−A断面)で図示される支持機構のみに設置され、その他の支持機構には設置されていない。例えば図4(図2中のB−B断面)で図示される支持機構は、案内レール25がプラットホームPの壁面に密着して立設されたフレーム11に固定されている。
【0030】
次に可動踏板21が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに駆動モータ27を停止させて前記可動踏板21を位置決めする位置規制手段の具体例について説明する。
図6(図2中のD−D断面)において、29a及び29bは、空間Sに設けられたフレーム11に水平方向に取り付けられたフレーム14に取り付けられたリミットスイッチであり、リミットスイッチ29aは、可動踏板21がプラットホームPの端部から軌道側へ突出し、設定された突出限界位置に来た時に作動して駆動モータ27の作動を止めるものであり、リミットスイッチ29bは、可動踏板21が覆い板12の下側に完全に退去した位置に来た時に作動して駆動モータ27の作動を止めるものである。
【0031】
図7は、第1実施例の制御系を示すブロック線図である。図7において、32は、車両の運転台に設置された操作盤であり、ここから車両停止信号35又は車両始動信号36が制御装置31に発信される。
33は、駅側プラットホームPに設けられた車両進入検知装置、34は同様に駅側プラットホームPに設けられた車両始動検知装置である。
【0032】
かかる第1実施例の装置において、列車がプラットホームPに進入してきたとき、列車の運転台に設置された操作盤32から発信された車両停止信号35を制御装置31で受信し、あるいは駅側プラットホームPに設けられた車両進入検知装置33で車両の進入を検知し、同検知信号を制御装置31に送信し、これらの信号に基づいて制御装置31が可動踏板駆動モータ27を作動させる。
これにより駆動モータ27が作動してリニアガイド24を上方へ摺動させると、可動踏板21がプラットホームPの前端部から軌道側に突出する。可動踏板21が突出限界位置まで来たら、リミットスイッチ29aが作動して可動踏板21が停止する。
【0033】
例えば可動踏板21踏み板のプラットホームPの前面から車両側への突出寸法は、150〜200mmであり、可動踏板21の長手方向の長さは2000mm前後に設定される。なお可動踏板21の長さは、列車の乗降口の幅よりも長くすることにより、乗客の乗降時の安全を確保する。
乗客が乗降を終え、車両の乗降口を閉じたのち、列車の運転台に設置された操作盤32から車両始動信号36が発信されると、制御装置31が同信号を受信し、あるいはプラットホームPで車両始動検知装置34が車両の始動を検知して、その検知信号が制御装置31に送られると、駆動モータ27の出力軸を逆回転させ、リニアガイド24を下方へ摺動させて、可動踏板21をプラットホームP側へ退去させる。可動踏板21が完全に覆い板12の下側に退去したら、リミットスイッチ29bが作動して駆動モータ27の作動を止める。
【0034】
かかる第1実施例の装置によれば、図2及び図2中のA−A断面を示す図3で説明したように、YW=ZW=XWという関係になっており、また第2の支持腕23と基部26との軸着部が、可動踏板21を通る水平面hと第1の支持腕22とリニアガイド24との軸着部を通る垂直線vとが交差した位置にあるように構成されているので、可動踏板21の水平方向の直線運動に対して、リニアガイド24は正確に垂直方向に直線運動を行なう。
【0035】
従って案内レール25を正確に垂直方向に配置することにより、可動踏板21を正確に水平面内で移動させることができ、またリニアガイド24には下向きの力が加わらないので、リニアガイド24を案内レール25上で別途固定する手段を必要とせず、リニアガイド24が連結されたチェーン28による支持で十分対応可能である。また逆にチェーン28及びモータ27等の駆動装置にリニアガイド24から大きな負荷が加わることがない。
【0036】
また第1及び第2の支持腕22,23、リニアガイド24及び案内レール25等からなる支持機構は、プラットホームPの横方向の容積を占めず、極めて狭い空間に設置可能であるので、特許文献1のように可動踏板の全幅に亘ってプラットホームPに空間部を設ける必要がなく、狭い設置空間で事足りるので、工事施工が簡単である。
また本実施例の装置によれば、特許文献1のような格納部015、モータ及びラック部材からなる駆動機構030等を必要とせず、極めて簡素な構成とすることができる。
【0037】
また特許文献1のように可動踏板21を片持ちで支持するのではなく、両端支持であるため、乗降客の負荷に対して十分な強度を保持することができ、さらにリニアガイド24の垂直方向の運動は、正確に垂直な直線を描くので、案内レール25による垂直方向の案内を極めてスムーズに行なうことができる。
駆動モータ27及びチェーン28からなる駆動機構は、どれか1箇所の支持機構に設ければよく、装置構成を簡素化できるとともに、リミットスイッチ29a及び29bの設置位置を適宜選択することにより、可動踏板21の最大突出位置及び退去位置を任意に選定することができる。
【0038】
さらに車両の運転台に設置された操作盤32から発信される車両停止信号35又は車両始動信号36や、プラットホームPに設置された車両進入検知装置33又は車両始動検知装置34の検知信号に基づいて可動踏板21の駆動を制御しているので、可動踏板21の駆動を自動化でき、車両の発停に合わせて最適のタイミングで誤りなくかつシステマティックに行なうことができる。
また図6に示すように、可動踏板21が突出位置に到達したとき、可動踏板21の上面にカバープレート41が載置されてプラットホーム上面との段差をなくするようにすれば、プラットホームPから可動踏板21への、また逆に可動踏板21からプラットホームPへの乗降客等の移動がよりスムーズにかつ安全に行うことが可能となる。
【0039】
次に本発明の第2実施例を図8に基づいて説明する。図8は第2実施例の可動踏板の駆動部の横断面図である。即ち図2の第1実施例においてA−A断面に相当する位置の断面図である。図8において、フレーム51及び基礎フレーム52等によってプラットホームに空間Sが形成され、プラットホームの上面と一致する高さに覆い板53が水平に設置されている。
54は、覆い板53の裏側に水平に設置された可動踏板であり、連結部55でアーム56の一端に連結され、アーム56の他端は連結部57でスライダ58に連結されている。
【0040】
スライダ58は、水平方向に設置された案内レール59上をスライドする。案内レール59は、ケーシング60の上面に形成されている。なお図8においてスライダ58の手前側の摺動面は省略されている。ケーシング60は、支持フレーム61によって水平方向に支持されており、支持フレーム61はフレーム51に取り付けられた支えバー62によって支持されている。
【0041】
ケーシング60の内部には、電動モータ63及びその出力軸に接続されたボールネジ64が収容されている。ボールネジ64は、スライダ58の下部に穿設され循環ボールを介してネジ結合するネジ孔58aと螺合しており、電動モータ63によってボールネジ64が回転すると、スライダ58がボールネジ64の軸方向に摺動するようになっている。また65は、ボールネジ64の他端を回転可能に支持するベアリング軸受であり、66は、駆動モータ63に電力を供給する入電端子である。
図8は第2実施例における可動踏板54の駆動機構を示し、第2実施例が第1実施例と異なる点は可動踏板54の駆動機構のみであり、その他の部分、即ちリミットスイッチ等の位置規制手段及び可動踏板の支持手段は、第1実施例と同様の構造を有している。
【0042】
かかる構成の第2実施例によれば、第1実施例のように、可動踏板をリニアガイド24及び第2の支持腕22を介して駆動するのではなく、スライダ58を直接可動踏板54に連結して駆動しているので、駆動機構に加わる負荷がさらに軽減され、また駆動機構も簡素化される利点があるほか、第1実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、装置を大幅に簡素化できて、プラットホームに設置する場合に、プラットホームの大掛かりな改造等を必要とせず、かつ車両とプラットホーム間の任意の大きさの隙間に対応することができるとともに、乗降客等が乗ることによる負荷に対して十分な強度を保持し得る隙間調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明装置の原理説明図である。
【図2】本発明装置の第1実施例の平面図であり、(a)は突出時、(b)は退去時を示す。
【図3】図2中A−A断面側面図である。
【図4】図2中B−B断面側面図である。
【図5】図2中C−C断面側面図である。
【図6】図2中D−D断面側面図である。
【図7】前記第1実施例の制御系を示すブロック線図である。
【図8】本発明装置の第2実施例の横断側面図である。
【図9】曲線ホームと列車との関係を示す平面図である。
【図10】従来のプラットホーム隙間調整装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1,21,54 可動踏板
2,22 第1の支持腕
3,23 第2の支持腕
4 摺動子
5 案内部材
6 固定部位
7,26 基部
11,13,14,51 フレーム
12,53 覆い板
21a,21b 溝形鋼
24 リニアガイド
25,59 案内レール
27,63 駆動モータ
28 チェーン
29a,29b リミットスイッチ
55,57 連結部
56 アーム
58 スライダ
60 ケーシング
61 支持フレーム
62 支えバー
64 ボールネジ
65 ベアリング軸受
66 入電端子
A 乗降客の荷重
Y,X,Z,W 結合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口の開口幅以上の長さを有し水平に配置された平板状の可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没可能に設け、車両とプラットホームとの間に形成される隙間を塞ぐようにした隙間調整装置において、
前記可動踏板の下方に設けられた空間部に垂直方向に直線往復動可能に配置された摺動子と、
同摺動子を垂直方向に案内する案内部材と、
一端が前記可動踏板の下面に回動自在に軸着され他端が前記摺動子に回動自在に軸着され同可動踏板に対し斜めに装架されて同可動踏板を下方から支持する第1の支持腕と、
前記第1の支持腕を2等分する位置に一端が回動自在に軸着され他端が前記空間部上方の固定部位に回動自在に軸着され前記第1の支持腕の1/2のリンク長を有して同第1の支持腕を斜め上方から支持する第2の支持腕と、
前記可動踏板をプラットホーム上端部から軌道側に向かって出没させる駆動装置と、
前記可動踏板が所定の突出位置又は退去位置に到達したときに前記駆動装置を停止させて前記可動踏板を位置決めする位置規制手段とを備え、
前記第2の支持腕と前記固定部位との軸着部が、前記可動踏板を通る水平面と前記第1の支持腕と前記摺動子との軸着部を通る垂直線とが交差した位置にあるように構成したことを特徴とするプラットホーム隙間調整装置。
【請求項2】
前記駆動装置が前記摺動子を前記案内部材に沿って垂直方向に摺動させる駆動装置であることを特徴とする請求項1記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項3】
前記摺動子、前記案内部材、前記第1の支持腕及び前記第2の支持腕からなる前記可動踏板の支持機構を前記可動踏板の長手方向に沿って複数分散配置し、
同支持機構の少なくともひとつに前記駆動装置及び前記位置規制手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項4】
前記駆動装置が、前記可動踏板に連結されたスライダと、同スライダを水平方向に案内する案内部材と、前記スライダに穿設したネジ孔と、同ネジ孔に螺合したボールネジと、同ボールネジを回転駆動する電動モータとからなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項5】
前記駆動装置が、前記摺動子が接続され前記案内部材に沿って垂直方向に配置されたチェーン又はベルト及び同チェーン又はベルトを駆動する電動モータからなることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項6】
前記位置規制手段が接触式スイッチ又は近接スイッチであり、その取り付け位置を変えることにより、前記可動踏板の突出限界位置及び退去限界位置を任意の位置に変更可能としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項7】
車両の運転台からの車両停止信号若しくは車両始動信号に連動して、又はプラットホームで車両の進入若しくは始動を検知してその検知信号に連動して前記駆動装置を駆動又は停止させるように構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。
【請求項8】
前記可動踏板が突出位置に到達したとき、前記可動踏板の上面に覆い板が載置されてプラットホーム上面との段差をなくするようにしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のプラットホーム隙間調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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