説明

プランクトン回収装置

【課題】水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収することができる比較的小型のプランクトン回収装置を提供する。
【解決手段】プランクトン回収装置1は、プランクトンを透過させず、水を透過させる機能を有する通液性容器2と、通液性容器2内に捕捉されたプランクトンを取り出すため当該通液性容器2に設けられた開口部2aと、通液性容器2を傾動可能に支える支持手段8と、通液性容器2を支軸6a中心に回転させる回転駆動手段であるモータ6と、被処理水域10の水面下領域11から吸引したプランクトンを含む水を送水管4を経由して通液性容器2内へ供給する送水手段であるポンプ3と、当該プランクトン回収装置1を水面に浮かせる略直方体状の浮体9と、を備えている。通液性容器2のほぼ全体がステンレス製の網状材で形成され、開口部2a下方には回収容器7が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水池、湖沼、ダム、河川あるいは港湾などの水域中に浮遊するプランクトンを回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼、貯水池、ダム湖などの閉鎖水域や流れの少ない河川において発生している淡水赤潮は渦鞭毛藻類や珪藻類などの増加が原因であることが知られている。淡水赤潮が発生すると、湖沼などの水質が著しく悪化するだけでなく、水面が赤褐色に変色するので景観までも悪化する。
【0003】
このような状況に対処するため、水域中に浮遊するプランクトンを回収除去する様々な技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。特許文献1には、アオコなどを含む被処理水にオゾン・過酸化水素を添加混合後、超音波照射を行うことでこれらを分解処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、アオコなどを含む水をエアレーションタンク内で曝気処理し、さらに凝集剤を添加して凝集沈殿させる方法が開示されている。さらに、特許文献3には、水中に浮遊状態で保持された濾過材が収容された回転式通液性容器によって、液体中の汚染物質を分離、回収することができる浮遊式の水質浄化装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−138029号公報
【特許文献2】特開2003−251365号公報
【特許文献3】特開平10−263316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の水質浄化装置は、オゾン供給装置や超音波発生装置などを必要とし、特許文献2記載の水質浄化装置は、エアレーションタンクや凝集沈殿装置などを必要とするため、装置を小型化することが困難であり、設置費用も高価である。このため、比較的小さな貯水池などに簡単に設置できないのが実状である。
【0006】
一方、アオコや藻類などのプランクトンは、有機物や栄養塩類を豊富に含むため、肥料などへ有効利用することができる。特許文献3記載の水質浄化装置は、濾過材が収容された回転式通液性容器によってプランクトンを回収することできるが、構造が複雑で、専用の回収船を必要とする。また、濾過材を用いてプランクトンを捕捉、分離する方式であるため、濾過材の目詰まりが発生しやすく、連続運転が困難である。また、回転式通液性容器が水中に設置されているため、回収したプランクトンは水分を多く含んでおり、運搬・保管の際には汚水の漏洩や腐敗による臭気の問題が発生しやすい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収することができる比較的小型のプランクトン回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプランクトン回収装置は、プランクトンを透過させず、水を透過させる機能を有する通液性容器と、前記通液性容器内に捕捉されたプランクトンを取り出すため当該通液性容器に設けられた開口部と、前記通液性容器を傾動可能に支える支持手段と、前記通液性容器を回転させる回転駆動手段と、被処理水域から吸引したプランクトンを含む水を前記通液性容器内へ供給する送水手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、被処理水域から送水手段で吸引したプランクトンを含む水を、回転駆動手段で回転する通液性容器内へ供給すると、遠心力により水分は通液性容器外へ排出され、脱水されたプランクトンが通液性容器内に残留するので、水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収、除去することができる。また、支持手段により、開口部が下方を向くように通液性容器を傾ければ、通液性容器内に捕捉されたプランクトンを開口部から取り出すことができる。さらに、通液性容器がプランクトンの捕捉手段及び脱水手段を兼ねるため、装置の小型化を図ることができる。
【0010】
ここで、前記通液性容器の開口部を開閉可能とすることが望ましい。このような構成とすれば、通液性容器内に捕捉したプランクトン中の水分を遠心力で脱水する際は開口部を閉止しておくことによってプランクトンの飛散を防ぐことができ、開口部を開放すれば、通液性容器内のプランクトンを速やかに排出することができる。
【0011】
また、前記通液性容器の少なくとも一部を、着脱可能な網状材あるいはメンブレンフィルタで形成することができる。このような構成とすれば、メッシュサイズの異なる網状材あるいはメンブレンフィルタに取り替えることが可能となるため、適切なメッシュサイズの網状材などを取り付けることにより、回収、除去の対象であるプランクトンを集中的かつ効率的に捕捉することができる。
【0012】
さらに、前記通液性容器に向かって流体を吹き付ける洗浄手段を設けることもできる。このような構成とすれば、通液性容器がプランクトンや浮遊物などで目詰まりを起こした場合、水や空気などの流体を通液性容器に吹き付けることによってプランクトンや浮遊物などを除去して目詰まりを解消することができるため、連続運転が可能となる。
【0013】
一方、前記プランクトン回収装置を水面に浮かせるための浮体を設けることもできる。このような構成とすれば、浮体によりプランクトン回収装置を水面に浮かせた状態で移動可能となるため、プランクトンが大量発生した領域への移動が容易となり、プランクトンの回収、除去作業を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収することができる比較的小型のプランクトン回収装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態であるプランクトン回収装置を示す側面図、図2は図1に示すプランクトン回収装置の平面図である。
【0016】
図1,2に示すように、本実施形態のプランクトン回収装置1は、プランクトンを透過させず、水を透過させる機能を有する通液性容器2と、通液性容器2内に捕捉されたプランクトンを取り出すため当該通液性容器2に設けられた開口部2aと、通液性容器2を傾動可能に支える支持手段8と、通液性容器2を支軸6a中心に回転させる回転駆動手段であるモータ6と、被処理水域10の水面下領域11から吸引したプランクトンを含む水を送水管4を経由して通液性容器2内へ供給する送水手段であるポンプ3と、当該プランクトン回収装置1を水面に浮かせる略直方体状の浮体9と、を備えている。
【0017】
ポンプ3を水面下領域11の位置に浮遊状態に保持するための一対のフロート31がポンプ3の両側に設けられている。また、外部から通液性容器2に向かって水を吹き付ける洗浄手段5が、通液性容器2の上方に設けられている。通液性容器2は支軸6aを中心とする筒状の回転対称体であり、支軸6a方向の中心よりも開口部2a寄りの最大径部2bからそれぞれ開口部2a及び支軸6aに向かって漏斗状に縮径した形状である。また、通液性容器2は、支軸6aとの連結部を除く、ほぼ全体がステンレス製の網状材で形成されている。さらに、通液性容器2の開口部2a下方には回収容器7が配置されている。
【0018】
被処理水域10の水面下領域11からからポンプ3で吸引したプランクトン(図示せず)を含む水を、送水管4を経由して通液性容器2内へ供給すると、モータ6により回転している通液性容器2内で発生する遠心力により、プランクトン中の水分は通液性容器2外へ排出され、脱水されたプランクトン(図示せず)が通液性容器2内に残留するので、水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収、除去することができる。モータ6の回転数は制御手段(図示せず)によって増減することができるので、通液性容器2内に捕捉されたプランクトンの分量や含水量に応じて回転数を調節することにより、効率的な脱水作業を行うことができる。
【0019】
回収作業の進行により通液性容器2内に捕捉されたプランクトンが所定量に達したら、支持手段8を作動させ、開口部2aが下方を向くように通液性容器2を傾ければ、通液性容器2内に捕捉されたプランクトンは開口部2aから回収容器7へ排出される。回収容器7内に収容されたプランクトンは含水量が少ないため、容易に焼却処分することができるが、肥料などとして利用することもできる。なお、開口部2aに開閉可能な蓋体(図示せず)を設けることもできる。
【0020】
通液性容器2内のプランクトンの排出が終わった後、支持手段8を作動させて通液性容器2を元の姿勢に戻せば、プランクトンの回収作業を再開することができる。プランクトン回収装置1においては、通液性容器2がプランクトンの捕捉手段及び脱水手段を兼ねているため、装置の小型化を図ることができ、小規模の被処理水域10においても容易に使用することができる。通液性容器2を形成する網状材のメッシュサイズは特に限定しないので、回収対象であるプランクトンのサイズに応じた網状材で通液性容器2を形成すれば、特定のプランクトンを集中的かつ効率的に捕捉することができる。なお、網状材の代わりにメンブレンフィルタで通液性容器2を形成することもできる。
【0021】
一方、回収作業中に通液性容器2がプランクトンや浮遊物などで目詰まりを起こした場合、洗浄手段5を作動させ、外部から通液性容器2に向かって水をシャワー状に吹き付けることにより、プランクトンや浮遊物などを除去して目詰まりを解消することができる。このため、目詰まりが発生する度に回収作業を中断することなく、連続運転が可能であるため、作業効率も優れている。
【0022】
また、プランクトン回収装置1は浮体9を備えているため、プランクトン回収装置1全体を水面に浮かせた状態で被処理水域10内を移動することができる。従って、プランクトンが大量発生した領域への移動や帰還が容易であり、プランクトンの回収、除去作業を効率的に行うことができる。
【0023】
次に、図3〜図7に基づいて、本発明の第2〜第4実施形態について説明する。なお、図3〜図7において図1,2と同じ符号を付している部分はプランクトン回収装置1の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であるため説明を省略する。
【0024】
図3は本発明の第2実施形態であるプランクトン回収装置を示す一部省略斜視図、図4は図3に示すプランクトン回収装置の断面図である。図3,図4に示すプランクトン回収装置20は、プランクトンを透過させず、水を透過させる機能を有する円筒状の通液性容器22と、通液性容器22内に捕捉されたプランクトンを取り出すため当該通液性容器22の片方の端面に設けられた開口部22aと、開口部22aに開閉可能に装着された蓋体25aと、軸支機構28aを介して通液性容器22及び円筒体23などを傾動可能に支える支持手段28と、を備えている。通液性容器22は、その両端面を除く、周面部分が網状材21で形成されている。
【0025】
通液性容器22内には、非透水性の円筒体23が同軸上に配置され、回転軸6aと同軸上に送水管4,23aが配管されている。通液性容器22内周面と円筒体23外周面との間には複数の支柱27が送水管4,23aを中心に放射状に設けられ、これらの支柱27によって通液性容器22内に円筒体23が一体的に保持されている。送水管4が円筒体23の端面閉塞板25bを貫通する部分にはベアリング26が配置され、円筒体23内に配管された送水管4の下流側と送水管23aとはスイベルジョイント29を介して互いに回転自在に連結されている。送水管23aの下流開口端23cは円筒体23の端面閉塞板23bの中心に固着された状態で、通液性容器22の端面閉塞板24内面に向かって開口している。
【0026】
被処理水域から吸い込まれたプランクトンを含む水は送水管4,23aを経由して送水管23aの下流開口端23cから通液性容器22内へ供給され、モータ6によって回転している通液性容器22内で発生する遠心力により、プランクトン中の水分は通液性容器22外へ排出され、脱水されたプランクトンが通液性容器22内に残留するので、水質汚染の原因となるプランクトンを容易に回収、除去することができる。プランクトン回収装置20の場合、送水管23aの下流開口端23cから放出される水により、通液性容器22内周と円筒体23外周との隙間に存在する水の水圧を高めることができるため、前記遠心力との相乗効果により、プランクトンの回収作業を効率化することができる。
【0027】
通液性容器22内周と円筒体23外周との隙間に捕捉されたプランクトンは、通液性容器22の片方の端面に設けられた開口部22aに装着された蓋体25aを開いて取り出すことができる。この場合、支持手段28(図3参照)を作動させて、開口部22aが下向きになるように通液性容器22などを傾斜させれば、通液性容器22内のプランクトンを速やかに排出することができる。
【0028】
次に、図5は本発明の第3実施形態であるプランクトン回収装置を示す一部省略斜視図である。本実施形態のプランクトン回収装置30を構成する通液性容器32は八角筒形状をなし、その外周部分が8枚の平板状の網状材32aによって形成され、その両端面に八角形をした非透水性の端面閉塞板34,35が配置されている。8枚の網状材32aはそれぞれ着脱可能である。
【0029】
被処理水域から吸い込まれたプランクトンを含む水は送水管4を経由して通液性容器32内へ供給され、モータ6によって回転している通液性容器32内で発生する遠心力により、プランクトン中の水分は通液性容器32外へ排出され、脱水されたプランクトンが通液性容器32内に残留する。通液性容器32内に捕捉されたプランクトンは、いずれかの網状材32aを取り外すことにより、通液性容器32外へ排出することができる。
【0030】
本実施形態のプランクトン回収装置30の場合、通液性容器32の外周部が着脱可能な複数の網状材32aで形成されているため、メッシュサイズの異なる他の網状材あるいはメンブレンフィルタに取り替えることができる。従って、回収、除去の対象であるプランクトンに応じたメッシュサイズの網状体を取り付けることにより、集中的かつ効率的にプランクトンを捕捉することができる。また、通液性容器32が目詰まりしたときは、網状材32aを取り外すことによって容易に清掃することができる。
【0031】
次に、図6は本発明の第4実施形態であるプランクトン回収装置を示す断面図、図7は図6のA−A線における断面図である。本実施形態のプランクトン回収装置40を構成する通液性容器42は、片方の端面が端面閉塞板42bで閉塞された円筒体41内に円筒体23が同軸上に配置され、通液性容器42の他方の開口端42aと端面閉塞板25bの外周との間にドーナツ状の網状材45が着脱可能に取り付けられている。その他の部分の構造、機能は図4に示すプランクトン回収装置20と同じであるため、図4と同じ符号を付して説明を省略する。
【0032】
被処理水域から吸い込まれたプランクトンを含む水は送水管4を経由して通液性容器42内へ供給され、プランクトン中の水分は網状材45を通して通液性容器32外へ排出され、脱水されたプランクトンが通液性容器42内に残留する。通液性容器42内に捕捉されたプランクトンは、網状材45を取り外して、開口端42aから通液性容器42外へ排出することができる。この場合、通液性容器42を傾動可能に支える支持手段(図示せず)を作動させて開口端42aが下向きになるように、通液性容器42を傾斜させれば、プランクトンを速やかに排出することができる。
【0033】
本実施形態のプランクトン回収装置40の場合、通液性容器42の一部(開口端42aと端面閉塞板25bの外周との間)のみにドーナツ状の網状材45を設けたことにより、送水管4を経由して通液性容器42内へ供給される水による水圧を高めることができるため、プランクトンの回収を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のプランクトン回収装置は、湖沼,貯水池,ダムあるいは港湾や海域などの各種水域における水質浄化手段として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態であるプランクトン回収装置を示す側面図である。
【図2】図1に示すプランクトン回収装置の平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態であるプランクトン回収装置を示す一部省略斜視図である。
【図4】図3に示すプランクトン回収装置の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態であるプランクトン回収装置を示す一部省略斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態であるプランクトン回収装置を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線における断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1,20,30,40 プランクトン回収装置
2,22,32,42 通液性容器
2a,22a 開口部
2b 最大径部
3 ポンプ
4,23a 送水管
5 洗浄手段
6 モータ
6a 支軸
7 回収容器
8,28 支持手段
9 浮体
10 被処理水域
11 水面下領域
21,32a,45 網状材
23,41 円筒体
23c 下流開口端
25a 蓋体
23b,24,25b,34,35,42b 端面閉塞板
26 ベアリング
27 支柱
28a 軸支機構
29 スイベルジョイント
31 フロート
42a 開口端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランクトンを透過させず、水を透過させる機能を有する通液性容器と、前記通液性容器内に捕捉されたプランクトンを取り出すため当該通液性容器に設けられた開口部と、前記通液性容器を傾動可能に支える支持手段と、前記通液性容器を回転させる回転駆動手段と、被処理水域から吸引したプランクトンを含む水を前記通液性容器内へ供給する送水手段と、を備えたことを特徴とするプランクトン回収装置。
【請求項2】
前記開口部は開閉可能であることを特徴とする請求項1記載のプランクトン回収装置。
【請求項3】
前記通液性容器の少なくとも一部を、着脱可能な網状材あるいはメンブレンフィルタで形成した請求項1または2記載のプランクトン回収装置。
【請求項4】
前記通液性容器に向かって流体を吹き付ける洗浄手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプランクトン回収装置。
【請求項5】
前記プランクトン回収装置を水面に浮かせるための浮体を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプランクトン回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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