説明

プランジャー

【課題】 プランジャーが使用される温度が高くなると金属製のシャフトとセラミック部材の熱膨張係数の差が要因となり、セラミック部材のシャフトの接合端の位置に接着剤を介して大きな引張応力が働いて亀裂が発生するという課題があった。
【解決手段】 金属からなる長尺状のシャフト部材2と第1の凸部4を有するセラミック部材3とを備え、シャフト部材2とセラミック部材3の第1の凸部4とが接合層5を介して接合されているとともに、第1の凸部4の接合面における外周端7が、シャフト部材の接合面における外周端8と同じ位置または内側に位置し、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、シャフト部材2および接合層5が、第1の凸部4の幅以上の幅を有していることにより、セラミック部材に亀裂が生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を圧送するためにシリンダ内を往復するプランジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダ内の各種流体を圧送するためのプランジャーは、シリンダ内を往復することでシリンダとの接触部が摩耗しやすいため、プランジャーとして、シリンダとの接触部を耐摩耗性に優れるセラミックス製としたものが用いられている。
【0003】
このようなプランジャーとして、特許文献1には、金属からなる長尺状のシャフトと、シャフトの先端にボルトによって固定されたセラミック部材とを有するものが提案されている。
【0004】
また、プランジャーはシャフトとセラミック部材とをボルトで固定するが、ボルトが緩んでシャフトからセラミック部材が脱落してしまう虞があるので、ボルトのかわりに接着剤を用いて接合することが行われている。
【0005】
さらには、プランジャーが温度の高い環境で用いられる場合には、シャフトとセラミック部材とを上述の接着剤を用いて接合することに加えて、特許文献1のようにボルトで固定することを併合したプランジャーを用いることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−216711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されたように金属製のシャフトとシャフトよりも径の大きいセラミック部材とを、接着剤を用いて接合する構成または接着剤とボルトを併用して接合する構成を用いた場合には、プランジャーが使用される温度が高くなると金属製のシャフトとセラミック部材との熱膨張係数の差が要因となり、セラミック部材のシャフトの接合端の位置に接着剤を介して大きな引張応力が働いて、亀裂が発生するという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために案出されたものであり、金属部材とセラミック部材とを接着剤で接合したプランジャーのセラミック部材に亀裂が生じにくく、耐久性の向上したプランジャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプランジャーは、金属からなる長尺状のシャフト部材と、該シャフト部材と対向する第1の凸部を有するセラミック部材とを備え、前記シャフト部材と前記第1の凸部とが接合層を介して接合されているとともに、前記第1の凸部の接合面における外周端が、前記シャフト部材の接合面における外周端と同じ位置または内側に位置し、前記シャフト部材の長手方向に沿った断面視で、前記シャフト部材および前記接合層が、前記第1の凸部の幅以上の幅を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプランジャーによれば、金属からなる長尺状のシャフト部材と、該シャフト部
と対向する第1の凸部を有するセラミック部材とを備え、シャフト部材と第1の凸部とが接合層を介して接合されているとともに、第1の凸部の接合面における外周端が、シャフト部材の接合面における外周端と同じ位置または内側に位置し、シャフト部材の長手方向に沿った断面視で、シャフト部材および接合層が、第1の凸部の幅以上の幅を有していることにより、セラミック部材に亀裂が生じにくいプランジャーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【図2】(a)は本実施形態の一例を示す図1のA部の拡大断面図、(b)は(a)の本実施形態の他の一例を示す拡大断面図である。
【図3】本実施形態の他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【図4】本実施形態のさらに他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【図5】本実施形態のさらに他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【0013】
本実施形態のプランジャー1aは、金属からなる長尺状のシャフト部材2と、シャフト部2と対向する第1の凸部4を有するセラミック部材3とを備え、シャフト部材2と第1の凸部4とが、接合層5を介して接合されている。シャフト部材2は円柱状で、セラミック部材3側端部2aの径がその他の部位よりも大きくなっている。また、セラミック部材3は円柱形状で、セラミック部材3と同心円状に、シャフト部材2に向かって突出する第1の凸部4が形成されている。また、シャフト部材2の端部2aと第1の凸部4の径は同じである。なお、第1の凸部4の径はシャフト部材2の端部2aより小さくてもかまわない。言い換えると、第1の凸部4の接合面における外周端8が、シャフト部材2の接合面における外周端7と同じ位置または内側に位置していればよい。また、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、接合層5の幅は、シャフト部材2の端部2aの幅および第1の凸部4の幅と同じとなるように形成されている。
【0014】
プランジャー1aは、中空状のシリンダ6内の流体を圧送するのに用いられ、セラミック部材3の径は、シリンダ6の中空部の径の大きさに対応して形成されている。
【0015】
ここで、シャフト部材2は、炭素工具鋼や合金工具鋼,ステレンス鋼など公知の金属より形成することができ、流体との接触などにより発生する錆を防止する観点からステンレス鋼を用いるのが好ましい。ステレンス鋼の種類としては、特に快削性に優れるSUS303および高い耐食性を有するSUS304を用いるのがより好ましい。
【0016】
また、セラミック部材3は、アルミナ,コージェライト,ムライト,ジルコニアなどの酸化物セラミックスや、窒化珪素,炭化珪素などの非酸化物セラミックス等の公知のセラミックスより形成することができ、特に、耐摩耗性の優れた炭化珪素より形成することが好ましい。
【0017】
また、接合層5は、例えば接着剤より形成することができ、エポキシ樹脂,アクリル樹脂およびウレタン樹脂などの公知の樹脂系接着剤,ガラスなどの公知の無機系接着剤および公知のろう材などを用いることができる。
【0018】
本実施形態のプランジャー1aは、シャフト部材2と第1の凸部4とが接合層5を介して接合されているとともに、第1の凸部4の接合面における外周端8が、シャフト部材2の接合面における外周端7と同じ位置または内側に位置し、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、シャフト部材2および接合層5が、第1の凸部4の幅以上の幅を有している。このような構成であれば、金属からなるシャフト部材2とセラミック部材3との熱膨張差で接合層5の外周端に引張り応力が生じにくくなり、セラミック部材3の接合層5の外周端付近に亀裂が生じにくい。したがって、本実施形態のプランジャー1aは、シリンダ6との接触部が耐摩耗性と耐久性を有するセラミック部材3を備えており、また、使用環境が高温、例えば、シリンダ6内で圧送する流体が100℃以上の環境下で、繰り返し
使用したとしてもセラミック部材3に亀裂が生じにくいため、長期間にわたって使用可能である。
【0019】
以下に、シャフト部材2、セラミック部材3および接合層5の構成について図2を用いて補足的に説明する。
【0020】
図2(a)は本実施形態の一例を示す図1のA部の拡大断面図、(b)は(a)の本実施形態の他の一例を示す拡大断面図である。
【0021】
本実施形態のプランジャー1aにおいては、図2(a)および(b)に示すように、第1の凸部4の外周端8が、シャフト部材2の接合面における外周端7と同じ位置または内側に位置し、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、シャフト部材2および接合層5が、第1の凸部4の幅以上の幅を有していることが重要である。ここで、第1の凸部4の接合面における外周端8が、シャフト部材2の接合面における外周端7の外側に位置し、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、接合層5が第1の凸部4の幅より狭い幅を有する場合には、金属からなるシャフト部材2の熱膨張、収縮によって接合層5を介して第1の凸部4の接合面における外周端8付近に引張り応力が発生し、亀裂が発生しやすい。これに対して、第1の凸部4の外周端8が、シャフト部材2の接合面における外周端7と同じ位置または内側に位置し、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、シャフト部材2および接合層5が、第1の凸部4の幅以上の幅を有していることにより、亀裂が生じることを抑制できる。
【0022】
また、本実施形態のプランジャー1aは、セラミック部材3の最外周端が、シャフト部材2の最外周端よりも突出していることが好ましい。このような構成であれば、金属よりも耐摩耗性に優れるセラミック部材3のみがシリンダ6の内壁と接触することとなり、シャフト部材2とシリンダ6とが接触することを抑制できる。それにより、より耐久性を向上でき、寿命を延ばすことができる。突出の程度については、セラミック部材3の最外周端から対向する最外周端までの距離をX,シャフト部材2の最外周端から対向する最外周端までの距離をYとしたとき、X/Yが1.005〜1.3の範囲とすることが好ましい。これは、セラミックスは使用初期に摩耗し易い性質を持つが、X/Yを1.005以上とすれば、使
用初期の摩耗によってシャフト部材2がシリンダ6の内壁と接触することを抑制できる。また、X/Yを1.3以下とすれば、セラミック部材3の突出の程度を抑制することができ
るため、セラミック部材3において、第1の凸部4による段差部の角に、シリンダ6との摺動によって生じる応力集中が抑制されるため耐久性を高く保持することができる。
【0023】
図3は、本実施形態の他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【0024】
図3に示すプランジャー1bは、図1に示すシャフト部材2が、シャフト部2bとシャフト側フランジ部材2cとが接合されてなる構成である。このシャフト部2bとシャフト
側フランジ部材2cとはエポキシ樹脂,アクリル樹脂およびウレタン樹脂等を用いた公知の樹脂系接着剤,ろう材およびガラス等を用いた公知の無機系接着剤などを用いて接合すればよく、必要であればネジやボルトを用いてさらに強固に接合してもよい。また、シャフト側フランジ部材2cにシャフト部材2bを挿入するための挿入部を設けて焼嵌めによって接合してもよい。このような構造とすれば、セラミック部材3が摩耗した場合に、セラミック部材3のみを交換すればよいので、交換が容易となる。
【0025】
図4は、本実施形態の他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【0026】
本実施形態のプランジャー1cは、シャフト部材2と対向して、セラミック部材3の先端側に先端側フランジ部材10が配置されている。また、セラミック部材3とフランジ部材10とが、接合層5’を介して接合されており、セラミック部材3はシャフト部材2と先端側フランジ部材10とによって挟持されている。なお、先端側フランジ部材10はネジまたはボルトを用いてセラミック部材3に接合してもよい。
【0027】
また、先端側フランジ部材10は金属製で、形状は円柱状であって、その径はシャフト部材2の端部2aより大きく、セラミック部材3の最大径より小さい。また、セラミック部材3は、先端側フランジ部材10と対向して、同心円状に突出する第2の凸部4’が形成されており、第2の凸部4’の径は、先端側フランジ部材10と径が同じである。
【0028】
なお、第2の凸部4’の径は先端側フランジ部材10より小さくてもかまわない。言い換えると、第2の凸部4’の接合面における外周端が、シャフト部材2の接合面における外周端と同じ位置または内側に位置していればよい。また、シャフト部材2の長手方向に沿った断面視で、先端側フランジ部材10および接合層5’が、第2の凸部4’の幅以上の幅を有することが好ましく、図4においては同じ幅の場合を例示している。
【0029】
ここで、先端側フランジ部材10にはシャフト部材2と同じ金属を用いればよいが、シャフト部材2と異なる金属を用いてもよく、使用用途に合わせて適宜、公知の金属から選択すればよい。
【0030】
本実施形態のプランジャー1cは、シャフト部材2と対向して、フランジ部材10が配置されているとともに、セラミック部材3が、シャフト部材2とフランジ部材10とで挟持されている。このような構成であれば、セラミック部材3に接合された部材の熱膨張差によって、セラミック部材3に生じる応力が、シャフト部材2側と先端側フランジ部材10側との両方から生じるため、生じる応力のバランスがよくなり、セラミック部材3の耐久性が向上する傾向がある。
【0031】
また、本実施形態のプランジャー1cは、セラミック部材3の最外周端が、シャフト部材2および先端側フランジ部材10の最外周端よりも突出していることが好ましい。このような構成であれば、金属よりも耐摩耗性に優れるセラミック部材3のみがシリンダ6の内壁と接触することとなり、シャフト部材2とシリンダ6とが接触することを抑制できる。それにより、より耐久性を向上でき、寿命を延ばすことができる。突出の程度については、セラミック部材3の最外周端から対向する最外周端までの距離をX,シャフト部材2の最外周端から対向する最外周端までの距離をY、先端側フランジ部材10の最外周端から対向する最外周端までの距離をY’としたとき、X/YおよびX/Y’が1.005〜1.3の範囲とすることが好ましい。これは、セラミックスは使用初期に摩耗し易い性質を持つが、X/YおよびX/Y’を1.005以上とすれば、使用初期の摩耗によってシャフト部材2がシ
リンダ6の内壁と接触することを抑制できる。また、X/YおよびX/Y’を1.3が以下
とすれば、セラミック部材3の突出の程度を抑制するこができるため、セラミックス部材
3において、第1の凸部4および第2の凸部4’による段差部の角に、シリンダ6との摺動によって生じる応力集中が抑制されるため耐久性を高く保持することができる。
【0032】
図5は、本実施形態の他の一例を示す、プランジャーをシリンダ内に配置した構成の概略断面図である。
【0033】
本実施形態のプランジャー1dは、セラミック部材3に貫通孔11が設けられており、貫通孔11にはシャフト部材2(シャフト側フランジ部材)の一部12および先端側フランジ部材10の一部13が挿入されている。また、シャフト部材2の一部12および先端側フランジ部材10の一部13は、貫通孔11の形状にあわせて突出するように設けられている。さらに、シャフト部材2の一部12と先端側フランジ部材10の一部13と接触しないように間隔14をあけて配置されている。
【0034】
本実施形態のプランジャー1dは、セラミック部材3が貫通孔11を備えており、貫通孔11にシャフト部材2の一部12と、先端側フランジ部材10の一部13とが、間隔14をあけて挿入されていることが好ましい。このような構成であれば、シャフト部材2と先端側フランジ部材10をセラミック部材3に接合する際に位置決めが非常に容易で接合しやすい。またシャフト部材2の一部12と先端側フランジ部材10の一部13とが間隔14をあけて挿入されているので、熱が加わり熱膨張しても両部材が接触して接合層4および4’に応力がかかり接合が剥がれるのを抑制できる。
【0035】
本実施形態のプランジャー1a〜1dは、100℃以上の高温環境下で用いられる場合に
特に有用である。また、100℃以上の高温環境下で用いられるプランジャーは、例えば、
樹脂モールド装置用のもので、シリンダ内で高温に熱せられた樹脂を外部に射出する際に用いる。なお、プランジャー1aは、樹脂の射出の用途のみに限定されるものではなく、高温のガスや液体を圧送する装置に幅広く用いることができる。
【0036】
次に、本実施形態のプランジャー1a〜1dの製造方法を以下に示す。
【0037】
まず、セラミック部材3の製造方法の一例として、炭化珪素を用いた場合の製造方法を以下に示す。
【0038】
平均粒径0.5〜10μm,純度99〜99.8%以上の炭化珪素1次原料に、炭素(C)および
ホウ素(B)、あるいはアルミナ(Al)およびイットリア(Y)などの焼結助剤を添加し、これをボールミル等の粉砕機に溶媒である水とともに投入し、平均粒径1μm以下となるように整粒する。これにポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキサイド等のバインダーを適量添加してスラリーとした後、このスラリーを噴霧造粒装置(スプレードライヤー)により造粒して炭化珪素2次原料を得る。そしてこの2次原料を静水圧プレス成形法(ラバープレス成形法)や粉末プレス成形法にて成形し、所定形状となるよう切削加工を施して第1の凸部4または第2の凸部4’を形成した後、これを焼成炉にて非酸化雰囲気中1800〜2200℃の温度で焼成する。焼成後、研削加工により最終仕上げして、純度99%以上の炭化珪素質焼結体からなるセラミック部材3を得る。
【0039】
また、上述した以外のセラミックスを用いる場合は、公知の製造方法および加工方法を用いればよい。
【0040】
次に、図1〜5に示すシャフト部材2の製造方法の一例としては、市販のステレンス鋼材を準備し、これに旋盤やフライス盤により機械加工を施して所定形状のシャフト部材2を作製すればよい。
【0041】
次に、セラミック部材3とシャフト部材2を予めエポキシやアクリル,ウレタンなどの樹脂系接着剤を0.5〜5mmの厚さで塗布し接合する。このとき、公知の無機系接着剤お
よびろう材を用いても構わない。
【0042】
なお、図3のプランジャー1bのように、シャフト部材2がシャフト側フランジ部材2cおよびシャフト部2bとからなるものを製造する場合は以下のようにすればよい。
【0043】
シャフト部2bの先端部に雄ねじ部を機械加工により形成し、シャフト側フランジ部材2cには雄ねじ部と結合可能な雌ねじ部を機械加工により設ける。また、上述した方法で、セラミック部材3とシャフト側フランジ部材2cとを樹脂系接着剤により接合し、その後に、シャフト部材2cの雄ねじ部とシャフト側フランジ部材2cの雌ねじ部とを結合することでプランジャー1bを製造できる。
【0044】
また、図4のプランジャー1cのように、先端側フランジ部材10がセラミック部材3に接合されたものを製造する場合は以下のようにすればよい。
【0045】
シャフト部材2と同様の材料を用いて研削加工して先端側フランジ部材10を製造する。また、上述した方法で製造したプランジャー1aまたは1bのセラミック部材3の第2の凸部4’にシャフト部材2と同様の方法を用いて、樹脂系接着剤からなる接合層5’を介して接合すればプランジャー1cを製造できる。
【0046】
また、図5のプランジャー1dのように、セラミック部材3が貫通孔11を備えており、貫通孔11にシャフト部材2の一部12と、先端側フランジ部材10の一部13が間隔14をあけて挿入されたものを製造とする場合は以下のようにすればよい。
【0047】
焼成後のセラミック部材3の中央に研削加工により貫通孔11を設け、シャフト部材2の先端および先端側フランジ部材10の片側表面それぞれに、セラミック部材3の貫通孔11に嵌合可能なシャフト部材2の一部12と先端側フランジ部材10の一部13を機械加工により設け、前記と同様にシャフト部材2および先端側フランジ部材10のセラミック部材3との接合部に樹脂系接着剤を塗布して、シャフト部材2の一部12および先端側フランジ部材10の一部13を、セラミック部材3の貫通孔10に嵌合して接合すればプランジャー1dを製造することができる。
【実施例1】
【0048】
プランジャー1a〜1dである試験体を以下のように作製した。
【0049】
以下、樹脂系接着剤を用いてそれぞれの部材を接合した試験体1〜4の製造方法を説明する。
【0050】
まず、ステンレス鋼からなるシャフト部材2を以下のように作製した。
【0051】
市販のステンレス鋼材としてSUS303を準備し、旋盤などを用いて機械加工を施し、
シャフト部材2の全長250mm,セラミック部材3側端部2以外の部位の長さ238mm,外径40mm,端部2aの長さ12mm,外径125mmとなるように先端の径が広がった円柱状
である、プランジャー1aおよび1cのシャフト部材2を作製した。さらに、このシャフト部材2と同様の外形となるように、プランジャー1bのシャフト部2bおよびシャフト側フランジ部材2cを作製してそれぞれにネジ加工を施して接合した。また、さらにシャフト部材2の一部が、長さ15mm,外径59.6mmの円柱状に突出しているプランジャー1dのシャフト部材2を作製した。
【0052】
また、SUS303を用いて、長さ12mm,外径140mmの円柱状のプランジャー1cの先端側フランジ部材10を作製した。また、先端側フランジ部材10の一部13が長さ15mm、外径59.6mmの円柱状に突出するプランジャー1dの先端側フランジ部材10を作製した。
【0053】
次に、炭化珪素質焼結体からなるセラミック部材3を以下のように作製した。
【0054】
平均粒径1μm,純度99%以上の炭化珪素1次原料粉末に、炭化珪素1次原料粉末を100質量%として、平均粒径1μm,純度95%以上の炭化ホウ素(BC)0.5質量%、フェノール(炭化率20%)15質量%をそれぞれ添加し、これをボールミル内に純水とともに投入し、平均粒径が1μm以下となるまで50〜150時間粉砕する。その後、ボールミルから
所定容器に排出し、さらにバインダーとしてポリビニールアルコールを炭化珪素1次原料粉末100質量%に対し固形分割合で10質量%添加し、容器内で混合攪拌してスラリーとし
た。また、このスラリーを噴霧造粒装置(スプレードライヤー)により造粒して球状顆粒からなる炭化珪素2次原料を得る。そして、この2次原料を静水圧プレス成形法にて成形し、得られた成形体に所定形状となるよう切削加工を施し、これを焼成炉にて非酸化雰囲気中2000℃の温度で焼成して焼結体を得た。この焼結体に研削加工を施すことにより、第1の凸部4の長さ10mm,外径125mm、第1の凸部4以外の部分の長さ80mm,外径150mmとなる円柱状に形成した、プランジャー1aのセラミック部材3を作製した。また、第1の凸部4と対向する側に、長さ5mm,外径140mmの第2の凸部4’を形成したプ
ランジャー1b〜dのセラミック部材3を作製した。なお、プランジャー1dのセラミック部材3の中央には外径60mmの円柱状である貫通孔11を設けた。
【0055】
次に、シャフト部材2とセラミック部材3とを以下のように接合した。
【0056】
シャフト部材2の、セラミック部材3との接合面の全面に、エポキシ樹脂接着剤を固化後の厚さが3mmとなるよう塗布し、シャフト部材2とセラミック部材3とを接合層5および接合層5’を介して接合して、樹脂系接着剤を用いたプランジャー1a〜1dである試験体1〜4を得た。
【0057】
次に以下、無機系接着剤を用いてそれぞれの部材を接合した試験体1’〜4’の製造方法を説明する。
【0058】
試験体1〜4と同様に、それぞれの部材を作製して、無機系接着剤であるガラスを用いて以下のようにそれぞれ接合した。
【0059】
,AlおよびSiOをそれぞれ20質量%,20質量%および60質量%と合計が100質量%となるように混合した粉末に、溶媒としてイソパラフィン,分散剤とし
てポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルをそれぞれ所定量添加して、ペースト状とした接合剤を、シャフト部材2の、セラミック部材3との接合面に固化後の厚みが3mmとなるように塗布し、セラミック部材3の第1の凸部4表面に接着した後、これを不活性雰囲気の炉内で850℃の温度で熱処理してシャフト部材2とセラミック部材3をガラス
接合により接合して、無機系接着剤を用いたプランジャー1a〜1dである試験体1’〜4’を得た。
【0060】
さらに、比較例として従来のプランジャーとして試験体5および6を以下のように作製した。
【0061】
試験体1のセラミック部材3と同様の方法で、第1の凸部4が設けられていない厚み90mm,外形150mmの円柱状で、第1の凸部4のないセラミック部材3を作製した。
【0062】
また、試験体1のシャフト部材2と同様の方法で、シャフト部材2を作製した。
【0063】
そして、試験体1と同様にエポキシ樹脂接着剤を用いて、シャフト部材2と第1の凸部4のないセラミック部材3とを接合して試験体5を作製した。
【0064】
また、試験体2と同様にガラスを用いて、シャフト部材2と第1の凸部4のないセラミック部材3とを接合して試験体6を作製した。
【0065】
そして、前記製造方法により得られた試験体1〜6および1’〜4’を、内径125mm
の金属製のシリンダ6内で高速で1万回の往復運動をさせる耐久試験を実施した。試験は120℃前後の流体が流れることを想定し、シリンダ内に120℃に加熱された空気を送りながら、ストローク200mmでプランジャーを往復運動させた。1000回毎に試験を中断し、試
験体1〜6および1’〜4’を取り出してセラミック部材3の摩耗度や外観を確認しながら実施した。
【0066】
この結果、従来のプランジャーである試験体5および6は試験試行回数が2000回終了後の外観確認でセラミック部材3のシャフト部材2との境界付近に亀裂を生じており、その段階で試験を終了した。これと比較して試験体1〜4および1’〜4’については、試験試行回数が1万回終了後もセラミック部材3に亀裂や破損は見られなかった。
【0067】
以上のことから、本発明の試験体1〜4および1’〜4’は、従来のプランジャーである試験体5および6に比べて、よりセラミック部材3に亀裂が入りにくく、耐久性がよいことがわかった。
【0068】
さらに、試験体1〜4および1’〜4’について上記試験を継続して行ったところシャフト部材2と対向して、先端側フランジ部材10を有する試験体3,4および3’,4’は、先端側フランジ部材10を有さない試験体1,2および1’,2’に比べて亀裂が発生する試行回数が多く、先端側フランジ部材10を有することでより耐久性が高まる傾向があることがわかった。
【符号の説明】
【0069】
1a〜1d:プランジャー
2:シャフト部材
2b:シャフト部
2c:シャフト側フランジ部材
3:セラミック部材
4:第1の凸部
4’:第2の凸部
5,5’:接合層
6:シリンダ
7:凸部外周端
8:シャフト部材外周端
10:先端側フランジ部材
11:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる長尺状のシャフト部材と、該シャフト部材と対向する第1の凸部を有するセラミック部材とを備え、前記シャフト部材と前記第1の凸部とが接合層を介して接合されているとともに、
前記第1の凸部の接合面における外周端が、前記シャフト部材の接合面における外周端と同じ位置または内側に位置し、
前記シャフト部材の長手方向に沿った断面視で、前記シャフト部材および前記接合層が、前記第1の凸部の幅以上の幅を有していることを特徴とするプランジャー。
【請求項2】
前記セラミック部材の最外周端が、前記シャフト部材の最外周端よりも突出していることを特徴とする請求項1に記載のプランジャー。
【請求項3】
前記シャフト部材と対向して、先端側フランジ部材が配置されているとともに、前記セラミック部材が、前記シャフト部材と前記先端側フランジ部材とで挟持されていることを特徴とする請求項1に記載のプランジャー。
【請求項4】
前記セラミック部材が、前記先端側フランジ部材と対向する第2の凸部を有しており、該第2の凸部と前記先端側フランジ部材とが接合層を介して接合されているとともに、
前記第2の凸部の接合面における外周端が、前記先端側フランジ部材の接合面における外周端と同じ位置または内側に位置し、
前記シャフト部材の長手方向に沿った断面視で、前記先端側フランジ部材および前記接合層が、前記第2の凸部の幅以上の幅を有していることを特徴とする請求項3に記載のプランジャー。
【請求項5】
前記セラミック部材の最外周端が、前記シャフト部材および前記先端側フランジ部材の最外周の端のそれぞれよりも突出していることを特徴とする請求項3または4に記載のプランジャー。
【請求項6】
前記セラミック部材が貫通孔を備えており、該貫通孔に前記シャフト部材の一部と、前記先端側フランジ部材の一部が、間隔をあけて挿入されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のプランジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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