説明

プランター

【課題】建物の屋上や壁部に設置するのに適した栽培システムを提供する。
【解決手段】栽培システム10は、防根透水シートにより形成された袋12と、袋12の接地面に対向する上面22に設けられた、開閉可能な1又は複数の栽培孔用開閉部16と、袋の接地面以外に設けられた、栽培孔用開閉部16よりも大きく開閉可能な培土充填用開閉部14と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅のベランダや道路脇にプランターを配置して、花や野菜を栽培することがある。従来からこうしたプランターにはプラスチック製のものが一般的であったが、プラスチック製のプランターは重量や土のこぼれ等の点から持ち運びに適さないため、例えば下記の特許文献1に記載されているように、フィルムにより形成した袋体からなるプランターを提案しているものがある。
【特許文献1】特開平10−23834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
都会では年々高層ビルが増加し、こうした建物の屋上や壁部を緑化する試みが注目されているが、建物の屋上や壁部は風が強く、プランター、培土、植物等が飛散したり、落下したりする危険性がある。これに対して、従来のプランターでは培土が飛散したり流出したりすることがあるため、建物の屋上や壁部の緑化という用途には適さなかった。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の一つは、建物の屋上や壁部に設置するのに適した栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る栽培システムは、防根透水シートにより形成された袋と、前記袋の接地面以外に設けられた、開閉可能な1又は複数の第1の開閉部と、前記袋の接地面以外に設けられた、前記第1の開閉部よりも大きく開閉可能な第2の開閉部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様では、両側から前記第1の開閉部を開閉する手段を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様では、前記第2の開閉部は、前記袋の上面の縁に沿って設けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記袋に充填された、吸水体を含む培土をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記袋は、伸張する形状に形成された部位を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記袋は、接地面の面積に対して側面の面積を小さく形成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記袋の側面に設けられた、開閉可能な1又は複数の第3の開閉部をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記袋に設けられた1又は複数の取手をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、栽培システムを袋状に形成しているので携帯性に優れ建物の屋上や壁部にも設置が容易である。また、第1の開閉部を植物の栽培孔として、第2の開閉部を栽培システムへの培土の充填口として用いることができ、これらを開閉可能に設けたため、栽培システムからの土壌の飛散や流出を防止できる。さらには、栽培システムを構成する袋に防根透水シートを用いたことにより、雨水等の自然給水が利用できるうえに栽培システムから作物の根が飛び出さず、屋上面の防根対策を必要としない。これによって、建物の屋上や壁部に設置するのに適した栽培システムを実現できる。
【0014】
本発明の一態様によれば、第1の開閉部を植物の栽培孔として用いる場合にも、第1の開閉部の開口部を十分に小さくすることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、上面を大きく開くことができ培土の充填が容易となる。
【0016】
本発明の一態様によれば、透水性のシートを通って栽培システム内部に入ってきた水を培土内に貯めることができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、栽培システムに植えられた植物が成長したり、吸水体が水分を吸収したりして栽培システムの袋の内容物が膨張した場合にも、植物やシートへの負荷を低減できる。
【0018】
本発明の一態様によれば、風に対する安定性を向上させることができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、栽培システム内の収穫物を容易に取り出すことができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、栽培システムの携帯性が向上する。また、複数の栽培システムを取手で連結すれば栽培システムを固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0022】
図1には、本実施形態に係る栽培システム10の斜視図を示す。栽培システム10は、防根透水シートを袋状に形成して構成されるものである。そして、栽培システム10には培土を充填して、充填した培土に栽培植物、例えばサツマイモ等の根菜を植えて栽培するのに利用する。
【0023】
防根透水シートは、ポリエステル長繊維不織布等の透水性、通気性がある素材を用いて形成されたシートである。
【0024】
図1に示されるように、栽培システム10を構成する袋12には、培土充填用開閉部14、栽培孔用開閉部16、収穫口用開閉部18、及び取手部20が設けられる。なお、栽培孔用開閉部16が第1の開閉部、培土充填用開閉部14が第2の開閉部、収穫口用開閉部18が第3の開閉部に対応している。
【0025】
袋12は、培土を収容する容器として機能する。本実施形態の栽培システム10は直方体の形状に形成され、接地面の面積を側面の面積よりも大きくして風への安定性を確保している。上述したように、袋12は防根透水シートを用いて形成されるものであるが、防根透水シートに伸縮性の小さな素材を用いた場合には、栽培物が成長してきた際に袋12が伸張する構造を設けることとしてよい。
【0026】
図2には袋12に設けられた上記伸張する構造の一例を示す。図示された例においては、袋12の各側面23のうち上面22側の一部に蛇腹部分24を設けて、袋12の内容物が膨らんできた場合にこの蛇腹部分24が伸張することで袋12が垂直方向に膨らむこととする。なお、初期状態では、栽培システム10の蛇腹部分24が伸びきらないように、蛇腹部分24が折り畳まれた状態程度まで培土を充填することとしてよい。
【0027】
培土充填用開閉部14は、袋12の接地面以外に設けられた開閉部であり、後述する栽培孔用開閉部16よりも大きく開閉する開閉部である。培土充填用開閉部14は主に培土を充填する用途に用いられ、本実施形態では培土充填用開閉部14は袋12の接地面に対向する上面22、すなわち接地面とは反対側の天井面を構成する縁に沿って設けられるものである。
【0028】
図1にも示されるように、培土充填用開閉部14は上面22の2辺に沿ってファスナーの線路を設け、当該線路をファスナーのスライダーにより開閉する機構により実現してよい。図3には培土充填用開閉部14の開状態の図を示した。上述したように上面22の2辺を開閉できる構成とした場合には、上面22が大きく開いた状態になるため、培土の充填が容易となる。そして、袋12に培土を充填した後には、培土充填用開閉部14を閉じて上面22から培土が袋12から散逸しないようにすることができる。
【0029】
栽培孔用開閉部16は、袋12の上面22に1又は複数設けられる開閉部であり、図4(A)に示すように主に栽培植物を栽培システム10から出す栽培孔として用いられるものである。本実施形態では栽培孔用開閉部16を上面22に3つ設けることとしているがこれに限られるものではなく、栽培孔用開閉部16の配置間隔は栽培目的の植物に適した間隔を用いることとしてよい。
【0030】
図4(B)及び(C)には、栽培孔用開閉部16の構造の一例を示した。図4(B)及び(C)に示されるように、栽培孔用開閉部16は培土充填用開閉部14と同様に開閉機構としてファスナーを用いることとしてよく、ファスナーの線路に対してファスナーのスライダー30を2つ設けている。こうした構成により、図4(B)に示されるように、植物を植える際にはスライダーをそれぞれ両端に寄せて栽培孔用開閉部16を全開にして作業を容易にさせるとともに、植えた後には図4(C)に示されるように植物の茎部分32まで各スライダーを寄せることにより、栽培孔用開閉部16の開口部を十分小さな状態にする。こうして栽培システム10の袋12の開口部を十分小さくしているので、強風下であっても栽培システム10から培土が散逸しない。
【0031】
収穫口用開閉部18は、袋12の側面に1又は複数設けられる開閉部であり、培土の中から物を取り出す際に用いられる開閉部である。例えば栽培システム10に根菜(例えばサツマイモ等)を植えた場合には、収穫口用開閉部18は栽培システム10から根菜の収穫物を取り出す際の収穫口として用いることとしてよい。
【0032】
図5には収穫口用開閉部18の配置の一例を示した。収穫口用開閉部18も、上記の開閉部と同様に開閉機構にファスナーを用いることとしてよい。そして、図5に示すように、収穫口用開閉部18は栽培孔用開閉部16の位置に基づいて、各栽培孔用開閉部16に近い位置の側面にそれぞれ設けることとしてもよい。こうすれば収穫物の近くに収穫口用開閉部18を設けることができるため、収穫が容易となる。
【0033】
取手部20は、袋12の上面22の各頂点に設けられ、本実施形態に係る栽培システム10を持ち運ぶ際の取っ手として機能する。図1に示されるように、取っ手は輪の形状に形成することとしてもよいし、他の形状であっても構わない。また、袋12に設けられた取手部20は、栽培システム10を複数配置した場合の各栽培システム10を相互に縛り付けるための接続部としても用いてよい。なお、後者の用途については後述する。
【0034】
次に、袋12に充填する培土について説明する。図6には、袋12に培土を充填した後の基準線xxにおける断面図を示した。
【0035】
図6に示されるように、本実施形態に係る培土40は、用土42、吸水体44、肥料46、そして緩効性肥料48を含む。本実施形態に係る栽培システム10は、建物の屋上に配置し、雨水により栽培植物に水分を供給する環境下での使用を想定し、袋12には透水性のあるシートを用いている。そして袋12を透過して培土40内にしみ込んだ雨水は、吸水体44により培土40内部に貯め込まれる。
【0036】
用土42は、栽培する植物に応じて適切な培養土を用いる。例えば、用土42は、赤玉土、バーミキュライト、ピートモス等を所定の割合で混合して生成することとしてよい。
【0037】
吸水体44には、高分子吸水ポリマー等の高い保水性と徐放性を有する吸水性樹脂を用いて、雨水等の自然給水によって植物を栽培することとしてよい。
【0038】
肥料46には、硫安、苦土重焼リン、硫酸カリ等を用いることとしてよく、また、緩効性肥料48には、マイクロロング肥料を用いることとしてよい。このように培土40に肥料46,緩効性肥料48等を予め混合しておくことにより、栽培管理の負担が軽減される。
【0039】
培土は、栽培する植物の種類に応じて各成分の配合率を予め決定しておいて、その配合率に基づいて配合した培土を袋12に予め充填しておくこととしてよい。複数種類の植物を栽培する場合にも、各種類に応じた袋を用いることで、各種類の植物に適した培土の割合を考慮しなくて済む。
【0040】
図7には、本実施形態に係る栽培システム10により根菜を栽培する場合に、根菜の成長過程に応じた栽培システム10の状態を示した。図7(A),(B),(C),(D)はそれぞれ時系列の順に並んでいる。図7(A)は根菜の苗を植えた状態を表しており、図7(B)は根菜が成長し始めた状態を表しており、図7(C)は根菜が収穫段階に達した状態を表しており、図7(D)は根菜を収穫した状態を表している。図7(A)乃至(C)に示されるように、栽培システム10の培土中にある根菜の根が肥大化するにつれて袋12の伸張部位(蛇腹部分24)が伸張して袋12が膨張する。そして、収穫の時期になれば、収穫口用開閉部18を開きそこから根菜の収穫物を掘り出す。
【0041】
また、本実施形態に係る栽培システム10は、単体で配置してもよいが、複数の栽培システム10を連結して配置してもよい。図8には、栽培システム10を連結して複数配置した場合の一例を示す。図8に示された例では、各栽培システム10の取手部20を縄や紐等の接続部50を用いて繋ぎ合わせることとしている。こうすることで、栽培システム10を相互に接続して栽培システム10の風への安定性を増加させ、屋上のような強い風が吹く環境にあっても屋上からの栽培システム10の落下を防止する。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る栽培システム10によれば、防根透水シートを袋12に使用したため、栽培システム10から作物の根が飛び出さず、屋上面の防根対策が軽減される。また、透水性を有する防根透水シートを袋12に使用したため、雨水を効率よく吸収・放出する。また、袋12に設けられた開口部は開閉可能な機構を用いたため、降雨や風等による培土の飛散が防止される。また、培土に混合された高分子吸水ポリマーにより雨水を保水して利用するため、自然給水により栽培できる。また、栽培システム10を柔軟かつ小型な袋状に形成したため、小さな空きスペースにも設置できる。また、栽培システム10内に予め必要な栄養も含めて混合された培土を充填した場合には、栽培管理の負担が軽減される。そして、風への安定性があるため、ビルなどの大規模な屋上緑化や壁面緑化に設置した場合に問題となる強風や落下の危険が低減する。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば上記の実施形態では栽培システム10を建物の屋上面に直接設置することとしていたが、図9に示すように、栽培システム10を保護する機構を更に設けてもよい。
【0044】
図9に示された栽培システム10の一例では、栽培システム10をトレー60の上に設置して、屋上面62の温度が栽培システム10に直接伝達されるのを防止している。また、トレー60上には支柱64が複数本設けられており、この支柱64に温室カバー66をかけて温室を構成している。また、栽培システム10には固定用のフック68が設けられており、このフック68を屋上面62に引っかけて固定することとしてもよい。また、栽培システム10の連結部70により他の栽培システム10と連結させることとしてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、各開閉部にはファスナーを開閉機構として用いたが、これに限らず他の開閉機構を用いてもよいし、栽培システム10の袋12の形状を直方体に限らず、多角柱、円柱形等の他の形状に形成してもよい。そのほかにも、本発明は根菜以外の多様な植物の栽培にも適用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る栽培システムの斜視図である。
【図2】袋を伸張させる構成の一例を示す図である。
【図3】培土充填用開閉部の開状態の図である。
【図4】栽培孔用開閉部の構造の一例を示した図である。
【図5】収穫口用開閉部の配置の一例を示した図である。
【図6】袋に培土を充填した後のxxにおける断面図である。
【図7】栽培植物の成長過程に応じた栽培システムの形状を示した図である。
【図8】栽培システムを複数配置した場合の配置の一例を示す。
【図9】栽培システムの構成の一例である。
【符号の説明】
【0047】
10 栽培システム、12 袋、14 培土充填用開閉部、16 栽培孔用開閉部、18 収穫口用開閉部、20 取手部、22 上面、23 側面、24 蛇腹部分、30 スライダー、32 植物の茎部分、40 培土、42 用土、44 吸水体、46 肥料、48 緩効性肥料、50 接続部、60 トレー、62 屋上面、64 支柱、66 温室カバー、68 フック、70 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防根透水シートにより形成された袋と、
前記袋の接地面以外に設けられた、開閉可能な1又は複数の第1の開閉部と、
前記袋の接地面以外に設けられた、前記第1の開閉部よりも大きく開閉可能な第2の開閉部と、
を含むことを特徴とする栽培システム。
【請求項2】
両側から前記第1の開閉部を開閉する手段を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の栽培システム。
【請求項3】
前記第2の開閉部は、前記袋の上面の縁に沿って設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培システム。
【請求項4】
前記袋に充填された、吸水体を含む培土をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項5】
前記袋は、伸張する形状に形成された部位を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項6】
前記袋は、接地面の面積に対して側面の面積を小さく形成した
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項7】
前記袋の側面に設けられた、開閉可能な1又は複数の第3の開閉部をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項8】
前記袋に設けられた1又は複数の取手をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57385(P2010−57385A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223955(P2008−223955)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(508264379)
【出願人】(508264335)
【Fターム(参考)】