プラントの診断方法及び装置。
【課題】プラントから得られるプロセス信号をもとに異常や予兆診断をする場合、診断対象となる機器の交換や補修によって、それまで蓄積された診断結果や診断モデル内に構築された診断機能を使うことができず、診断モデルを再度構築する必要があった。
【解決手段】入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じたモデルについて、該モデルのカテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築する。
【解決手段】入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じたモデルについて、該モデルのカテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの機器で構成されているプラントの異常診断において、運開後の保守にて異常診断に関係するプロセスが新たに追加、或いは、除外されても再構築することなくプラントの異常診断が継続可能なプラントの診断方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力や原子力に代表される発電プラントや、医薬品・食品・化学プラントに代表される産業プラントでは、プラントの安定的な運用のために、多くのプロセス信号を監視対象としている。
【0003】
具体的には、プラントの状態を把握するために、圧力・温度・流量・水位などを計測する計測器を各部に設置し、得られたプロセス信号値を運転員に表示する。また、ほとんどのプラントでは、異常や不具合対策、あるいは、保守の観点から、得られたプロセス信号値を専用の計算機であるプロセスコンピュータに保存する。
【0004】
運転員はプラントの状態に変化があった場合、関連するプロセス信号の値にも変化がないかどうかを確認するため、監視画面上に該当プロセス信号の値を表示する。また、必要であれば、プロセス計算機に格納された該当プロセス信号の過去の値を監視画面上に表示する。通常は、プラントの運転制御装置と監視装置が一体になっており、リアルタイムでプラント状態の監視や制御が実施できるようになっている。
【0005】
従来、プラント状態に変化があると、運転員は監視装置に関連するプロセス信号の値を監視画面上に表示する。表示されるプロセス信号は、監視装置の取り込む周期に従いオンラインで値が更新される。このプロセス値の状態をもとにプラントの運転状態を把握する。運転制御装置や監視装置(以下、監視制御装置と呼ぶ)は、プロセス値の状態に応じた警報装置と連動している。例えば、ある圧力値が設定値よりも上回ると運転員に知らせるための警報ランプを点灯させる。さらに、異常な状態から正常な状態に復帰させるための制御を作動させ、運転員の操作を促す。
【0006】
最近は、異常状態が発生するまえに、プラントの異常兆候を予測する装置やその方法が多数検討されている。また、異常が発生した後、その原因を特定し、原因を分析するための支援装置やその方法もある。
【0007】
特許文献1のシステムでは、レベルに応じた警告のランク付けを用いてプラントの診断をする。
【0008】
特許文献2には、運転制御情報、現場情報、設備情報を伝送するネットワークと、それらを表示する情報端末装置を有する装置および方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−258649号公報
【特許文献2】特開2011−70334号公報
【非特許文献1】G.A. Carpenter and S. Grossberg:”ART2 Self−Organization of stable category recognition codes for analog input patterns”, Applied Optics, Vol.26, No.23, (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プラントは多くの機器から構成されている。また、各機器の規模も大小さまざまである。プラントを診断する際、規模や機能に応じて、関連するプロセス信号をもとに統計的な処理やニューラルネットワークに代表される学習などを用いて構築する統計モデルを用いる場合が多い。統計モデルは入力されるプロセス信号の相関関係をモデル化する。
【0011】
特許文献1および特許文献2に記載されている方法は、どちらも適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory, ART)を用いたプラントの診断方法である。ARTは、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類する分類器の一種である。
【0012】
ここでは、異常を含まないプラントのプロセス信号をARTに入力し、複数のカテゴリーに分類しておく。異常発生時の診断では、プロセス信号をARTに入力することで、既存カテゴリーに属さない新たなカテゴリーが生成されると、これまでには無いプラント状態が発生しているということで、警告を発令する。
【0013】
ところで、発電プラントなどは、運用年数が長いため、途中で新たに機器を追加したり、計測器を追設あるいは撤去したりする。ARTを用いた診断では、上述のようなメンテナンスによって入力されるプロセス信号が変わるあるいは増減すると、そのまま診断をすることが出来ず、再度、ARTによるカテゴリー分類を実施する必要がある。しかし、運用年数が長くなるとそれまで蓄えたプロセス信号の時系列データ量は莫大であるため、再構築は困難である。
【0014】
本発明の目的は、上述の課題を解決するプラントの診断方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明においては、入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じたモデルについて、該モデルのカテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築する。
【0016】
また、既存のモデルに入力変数が追加された場合には、追加した入力変数だけで診断モデルを構築し、既存のモデルから得られるカテゴリー番号と追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号のモデルを生成する。
【0017】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行する。
【0018】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行するとともに、削除処理は追加処理終了後に行う。
【0019】
前述の課題を解決するため、本発明においては、監視対象から得られる入力変数の相関関係をモデル化し、モデルに入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するためのプラントの診断方法において、第1の入力変数の相関関係をモデル化して要素モデルとして保持し、第1の入力変数の相関関係に応じて入力されたデータを複数のカテゴリーに分類するとともに、追加された第2の入力変数についてもその相関関係をモデル化して、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、要素モデルとモデル化された第2の入力変数による統合モデルを形成する。
【0020】
また、統合モデルは、要素モデルのカテゴリーと、モデル化された第2の入力変数のカテゴリーの組み合わせで定まる新カテゴリーを含む。
【0021】
前述の課題を解決するため、本発明においては、監視対象を制御する監視制御装置からの制御信号や、監視対象のプロセス信号を入力するプロセス計算機から得られる計測信号をもとに監視対象の異常を検知するプラントの診断装置において、入力した信号の相関関係をモデル化して要素モデルを作成し、要素モデルに入力されたデータを入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する要素モデル部、少なくとも1つ以上の要素モデルを含む統合モデルを備え、統合モデルに入力されたデータを入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する統合モデル部とを備え、制御対象の改修に応じて入力信号の追加を生じた要素モデルについて、追加した入力信号だけで診断モデルを構築し、既存の要素モデルから得られるカテゴリー番号と追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号を生成して得たモデルを統合モデルとして統合モデル部に格納する。
【0022】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるプラントの診断方法及び装置では、診断モデルの入力信号として監視あるいは確認すべきプロセス信号が変更、あるいは追加・削除された場合でも継続して診断結果やドレンド表示を運転員あるいは保守員に提示することができ、発電プラントや産業プラントの安定的な運用に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のプラントの診断装置を発電プラントに適用した図。
【図2】診断の対象として火力発電プラントの構成を示すシステムブロック図。
【図3】火力発電プラントにおける配管部、及びエアーヒーター部の拡大図。
【図4】プロセス計算機300に記憶されるデータの格納形式を示す図。
【図5】モデル情報データベース450に記憶される情報の一例を示す図。
【図6】モデル情報データベース450に記憶される情報の一例を示す図。
【図7】診断結果データベース480に記憶される診断結果の情報の一例を示す図。
【図8】要素モデル作成部420の処理内容を示すフローチャート。
【図9】統合モデル作成部430の処理内容を示すフローチャート。
【図10】要素診断部460および統合診断部470の処理内容を示すフローチャート。
【図11】画像表示装置に表示される初期画面を示す図。
【図12】画像表示装置に表示される診断モデル設定画面を示す図。
【図13】画像表示装置に表示されるプロセス信号のトレンドグラフを示す図。
【図14】画像表示装置に表示される診断結果表示設定画面を示す図。
【図15】画像表示装置に表示される診断結果の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、最良の実施形態によるプラントの診断方法及び装置について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0026】
図1は、本実施形態に係るプラントの診断装置を、対象の一つである発電プラント100に適用した例について説明する図である。発電プラント100には、プラントの状態を把握するために多くの計測器が設置されている。各計測器で測定されたプロセス信号10の値は、専用線あるいは汎用的な送信用ラインを用いて監視制御装置200および計測値を格納するプロセス計算機300に伝送される。
【0027】
監視制御装置200では、プロセス信号10の値をもとにプラント運転を所望の状態に保つための制御信号20を出力する。出力した制御信号20は、発電プラント100に入力されるとともに、プラント診断装置400にも入力される。
【0028】
プロセス計算機300では、発電プラント100から得られるプロセス信号10の値を蓄積する。蓄積されたプロセス信号10は、その用途に応じて、異常・プラント診断装置400にプロセス信号30として出力される。格納形式については、後程図4を参照して詳しく説明する。
【0029】
プラント診断装置400では、診断に必要となる制御信号20やプロセス信号30を、外部入力インターフェイス410を介して取り込む。また一方においてプラント診断装置400は、外部出力インターフェイス490、外部入力インターフェイス410を介して支援ツール910に接続され、ユーザである例えば操作員の操作信号を入力するとともに必要な情報を表示装置950に表示する。
【0030】
プラント診断装置400の外部入力インターフェイス410では、支援ツール910からの指令に応じて、モデル構築モードと診断モードを切り替える。モデル構築モードのときには要素モデル作成部420に、診断モードのときには要素診断部460に、入力された制御信号20やプロセス信号30を出力する。
【0031】
要素モデル作成部420では、診断対象に応じたARTモデルが作成される。診断対象が複数ある場合には、同数のARTモデルを作成する。ARTモデルを作成するには、正常状態のプロセス信号30をARTモデルに入力する。ARTモデルでは、入力されたプロセス信号30の相関関係に応じて入力データを分類する。これをカテゴリーと呼ぶ。このカテゴリーの分解能は警戒パラメータの大きさに左右される。この警戒パラメータの適切な設定方法については、前述した特許文献1あるいは特許文献2で提案されている。また、ARTモデルの詳細な動作については、非特許文献1で詳細に記載されているので詳細説明を省略する。
【0032】
それぞれのARTモデルの警戒パラメータやカテゴリー数などはモデル情報データベース450に格納される。また必要に応じてモデル情報データベース450から情報を抽出する。要素モデル作成部420内の詳しい動作やモデル情報データベース450の構成については、後で詳しく説明する。モデル情報データベース450の構成例を図5、図6に示す。
【0033】
次に総合モデル作成部430では、要素モデル作成部420内で作成されたARTモデルの出力であるカテゴリー番号を入力データとする新たなARTモデルを作成する。要素モデル作成部420と同様に、ARTモデルの警戒パラメータやカテゴリー番号などをモデル情報データベース450および外部出力インターフェイス490に出力する。また必要に応じてモデル情報データベース450から情報を抽出する。統合モデル作成部430内の詳しい動作やモデル情報データベース450の構成については、後で詳しく説明する。
【0034】
外部入力インターフェイス410で診断モードの指令を受けた場合は、要素診断部460にデータが入力される。要素診断部460では、モデル情報データベース450から診断モデルの情報をロードする。ロードされた診断モデルに入力データを入力し、診断をする。診断モデルに入力されたデータに応じて、予め作成されたカテゴリーに分類されるか、新たな入力データの相関関係によって新規カテゴリーが作成される。
【0035】
新規カテゴリーが作成された場合は、正常状態とは異なる状態が検出されたことを意味し、異常の予兆であると診断する。このときの出力カテゴリー番号などを含めて診断結果データベース480に格納する。また統合診断部470にも出力する。要素診断部460内の詳しい動作や診断結果データベース480の構成については、後で詳しく説明する。診断結果データベース480の構成例を図7に示す。
【0036】
統合診断部470では、モデル情報データベース450から診断モデルの情報をロードし、要素診断部460からの出力を診断モデルに入力し、同様に診断する。診断結果は、外部出力インターフェイス490および診断結果データベース480に格納される。なお、統合診断部470内の詳しい動作については、後で詳しく説明する。
【0037】
外部出力インターフェイス490では、統合モデル作成部430あるいは統合診断部470での出力結果を、保守支援ツール910に出力する。
【0038】
発電プラント100に関わるユーザとして例えば操作員は、キーボード901とマウス902で構成される入力装置900、及び画像表示装置950に接続されている支援ツール910を用いることにより、発電プラント100に関する様々な情報を見ることが可能である。また、監視制御装置200からの制御信号20、プロセス計算機300からのプロセス信号30、プラント診断部400での診断結果、モデル情報データベース450、診断結果データベース480の情報にアクセスすることができる。
【0039】
支援ツール910は、外部入力インターフェイス920、データ送受信処理部930、外部出力インターフェイス940で構成される。
【0040】
入力装置900で生成した入力信号91は、外部入力インターフェイス920を介して支援ツール910に取り込まれる。また、支援ツール910には、監視制御装置200からの制御信号20、プロセス計算機300からのプロセス信号30、プラント診断装置400からの診断結果40、モデル情報データベース450、診断結果データベース480の情報についても、同様に外部入力インターフェイス920にて取り込まれる。データ送受信処理部930では、ユーザからの入力信号91の情報に従って、入力信号92を処理し、出力信号93として外部出力インターフェイス940に送信する。出力信号94は、画像表示装置950に表示される。
【0041】
以下の説明においては、本発明のデータ処理装置を火力発電プラントに適用した場合を例にとり、データベースに保存されている情報、及び信号の処理機能について説明する。
【0042】
図2は、診断の対象として火力発電プラントの構成を示すシステムブロック図である。この事例では、石炭焚火力発電プラントにおける発電の仕組みについて説明する。
【0043】
石炭を燃料とする場合には、石炭を貯蔵しているコールバンカー111から給炭器112を介してミル110に石炭が供給される。ミル110では、内部のローラにより石炭を細かく砕き微粉炭状にする。この微粉炭と石炭搬送用の1次空気、及び燃焼調整用の2次空気がバーナー102を介して、ボイラ101に供給される。微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141からボイラ101に導かれる。また、2段燃焼用のアフタエアを、配管142からアフタエアポート103を介してボイラ101に投入する。
【0044】
石炭の燃焼により発生した高温のガスは、ボイラ101の経路に沿って流れた後、エアーヒーター104を通過する。その後、排ガス処理した後、煙突を介して大気に放出される。
【0045】
他方、ボイラ101を循環する給水は、給水ポンプ105を介してボイラ101に導かれ、熱交換器106においてガスにより過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施形態では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数個配置してもよい。
【0046】
熱交換器106を通過した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ弁107を介して蒸気タービン108に導かれる。蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動し、発電機109で発電する。発電された電力は電力系統に供給される。
【0047】
蒸気タービン108の排気は復水器113で冷却され、再び給水ポンプ105へと送られる。途中、タービンからの抽気を利用して、給水を加熱する装置を配置し熱効率を向上させる。
【0048】
概略以上のように構成される火力発電プラントには、様々な計測器が配置されており、この計測器から取得された情報は、計測情報10(プロセス信号10)として図1の監視制御装置200などに伝送される。例えば、図2には、流量計測器150、温度計測器151、圧力計測器152、発電出力計測器153、及び濃度計測器154を図示している。
【0049】
なお、流量計測器150では、給水ポンプ105からボイラ101に供給される給水の流量を計測する。また、温度計測器151、圧力計測器152は、蒸気タービン108に供給される蒸気の温度、圧力を計測する。発電機109で発電された電力量は、発電出力計測器153で計測する。ボイラ101を通過中のガスに含まれている成分(CO、NOxなど) の濃度に関する情報は、濃度計測器154で計測することができる。尚、一般的には、図2に図示した以外にも、多数の計測器が火力発電プラントに配置されているが、図2では省略している。
【0050】
さらに図2において、バーナー102から投入される1次空気、及び2次空気、アフタエアポート103から投入されるアフタエアの経路について説明する。
【0051】
1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でエアーヒーター104を通過する配管132と通過しない配管131に分岐し、再び配管133にて合流し、ミル110に導かれる。エアーヒーター104を通過する空気は、ガスにより過熱される。この1次空気を用いて、ミル110において生成する微粉炭を配管134を経由してバーナー102に搬送する。
【0052】
2次空気、及びアフタエアは、ファン121から配管140に導かれ、エアーヒーター104で過熱された後、2次空気用の配管141と、アフタエア用の配管142とに分岐し、それぞれバーナー102とアフタエアポート103に導かれる。
【0053】
図3は、1次空気、2次空気、及びアフタエアの通過する配管部、並びにエアーヒーター104の拡大図である。図3に示すように、配管にはエアダンパ160、161、162、163が配置されている。エアダンパを操作することにより、配管133,141,142における空気が通過する面積を変更できるので、エアダンパの操作によって配管を通過する空気流量を調整できる。
【0054】
以下、プロセス計算機300に格納されているプロセス信号10の情報、モデル情報データベース500および診断結果データベースに保存されている情報、及び要素モデル作成部420、統合モデル作成部430、要素診断部460、統合診断部470での演算機能について説明する。
【0055】
まず、プロセス計算機300に保存するプロセス信号10の情報について説明する。図4は、それぞれプロセス計算機300に保存されている情報の一例を説明する図である。発電プラント100で計測した情報は、図4のように、計測器毎に各計測時刻と共に保存される。例えば、図4の縦軸項目には計測時刻が、横軸項目には計測器に固有に付与されたPID番号毎に計測値の種別、単位が関連付けて記憶される。
【0056】
例えば、PID番号がPID150は図2の給水流量の流量計測器150、PID151は主蒸気の温度計測器151、PID152は主蒸気の圧力計測器152、PID153は発電出力計測器153、PID154は燃焼ガスの濃度計測器154で計測したデータであることを意味している。また、種別として、Fは流量、Tは温度、Pは圧力、Eは発電出力、Dは排ガスに含まれるNOx濃度を意味している。これらの単位はそれぞれ、kg/s、℃、Mps,MW,ppmである。このようにして、PID番号と種別と単位で表現された計測値が、時間の情報と共に保存される。
【0057】
尚、図4では1秒周期でデータを入手し保存しているが、データ収集のサンプリング周期は任意に設定することが可能である。プロセス計算機300に格納されているデータを容易に活用できるよう各計測値に固有に設定されたPID番号をもとに、プロセス信号を特定化し、あるいは所望のプロセス信号を探索する際のキーとして用いることができる。
【0058】
次に、モデル情報データベース450に保存する情報について説明する。図5、図6は、ARTによる診断モデルで必要となる情報の様式を示した図である。図5、図6に示すように、モデル情報データベース450には要素モデル用テーブルTB420と統合モデル用テーブルTB430が準備されている。要素モデル用テーブルTB420は、要素モデル作成部420で取り扱う要素モデルに関する情報を格納しておくテーブルであり、総合モデル用テーブルTB430は、総合モデル作成部430で取り扱う総合モデルに関する情報を格納しておくテーブルである。
【0059】
図5の要素モデル用テーブルTB420には、モデル番号、モデル名称、モデルに入力する入力変数のPID番号、警戒パラメータ、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が搭載されている。この記載事例では、モデル番号がE−001、モデル名称は図2の発電プラントの主蒸気に関する主蒸気モデル、入力変数がPID150(給水流量の流量計測器150)、PID151(主蒸気の温度計測器151)、警戒パラメータが0.82、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が21とされている。このようにこの要素モデルの例では、主蒸気モデルが給水流量と主蒸気温度により表現されている。
【0060】
図5の統合モデル用テーブルTB430には、モデル番号、モデル名称、モデルに入力される要素モデルのモデル番号、警戒パラメータ、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が搭載されている。この記載事例では、モデル番号がT−001、モデル名称は図2の発電プラントの主蒸気に関する主蒸気ループモデル、入力モデルは要素モデル用テーブルTB420で使用した主蒸気モデルE−001にPID152(主蒸気の圧力計測器152)を加味、警戒パラメータが0.89、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が25とされている。このようにこの総合モデルの例では、主蒸気ループモデルとして、要素モデル用テーブルTB420で使用した主蒸気モデルE−001に主蒸気圧力を加味したモデルとして表現されている。
【0061】
以上のことから明らかなように、統合モデルとは、この事例では要素モデルに新たなプロセス量を加えて構成した複合モデルである。図示事例には無いが、統合モデルとしては、要素モデル同士を複合したものであってもよい。また、この事例で要素モデルとしては主蒸気単体を模擬したモデルであるが、統合モデルとしては主蒸気ループを模擬したモデルである。このように、統合モデルは、より広い範囲、より上位の範囲を表現したモデルということができ、要素モデルやプロセス量を統合利用することで、広範囲化、上位化を実現したものである。
【0062】
また要素モデルや統合モデルは、非特許文献1などに開示された複数の入力データを複数のカテゴリーに分類する教師付き学習型の適応共鳴理論(ART)ネットワークを用いて実現することが可能であるが、この場合に要素モデルを下位ネットワークとするのであれば、統合モデルは上位ネットワークに位置づけて考えることができる。
【0063】
また、要素モデルで使用するプロセス量の個数(次数)をN次(図5の例では2次)とすると、統合モデルは(N+M)次(図5の例では3次)のモデルであり、このことから統合モデルを作成することは、要素モデルを使用してより高次のモデルを作成したことであるといえる。
【0064】
このことから、本発明の解決課題であるプラントでの新たな機器の追加、計測器の追設時における診断装置内モデルの改変は、要素モデルをそのままに、追加されたプロセス量を加えた統合モデルを作成することで実現できることが理解されるであろう。
【0065】
なお、警戒パラメータは、適用する調整手法によって、個数が異なる。その場合は、警戒パラメータが複数設定されている場合の各テーブルを用いる。図6は、警戒パラメータが単一で設定されている場合の例であり、図7は警戒パラメータが複数設定されている場合の各テーブルの例を示している。図7が図6と異なるのは、警戒パラメータがカテゴリー番号ごとに搭載される様式となることである。
【0066】
図7は、診断結果データベース480に記憶される診断結果の情報の一例を示す図である。診断結果データベース480には要素モデル用テーブルTB460と統合モデル用テーブルTB470が準備されている。要素モデル用テーブルTB460は、要素診断部460で取り扱う要素モデルに関する診断結果情報を格納しておくテーブルであり、総合モデル用テーブルTB470は、総合診断部470で取り扱う総合モデルに関する診断結果情報を格納しておくテーブルである。
【0067】
図7の要素モデル用テーブルTB460には、モデル番号、時刻、カテゴリー番号、診断結果が搭載される。この記載事例では、モデル番号がE−001、時刻は「2010/01/0100:00:00」、カテゴリー番号1の診断結果が正常と記憶されている。また、図7の総合モデル用テーブルTB470も同様項目で構成され、この記載事例では、モデル番号がT−001、時刻は「2010/01/0400:10:11」、カテゴリー番号3の診断結果が「異常」と記憶されている。
【0068】
本発明における要素診断部460、統合診断部470を構成するに際し、特許文献1および特許文献2に記載されている方法が適用可能である。特許文献1および特許文献2に記載されている方法は、どちらも適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory, ART)を用いたプラントの診断方法である。ARTは、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類する分類器の一種である。
【0069】
ここでは、異常を含まないプラントのプロセス信号をARTに入力し、複数のカテゴリーに分類しておく。異常発生時の診断では、プロセス信号をARTに入力することで、既存カテゴリーに属さない新たなカテゴリーが生成されると、これまでには無いプラント状態が発生しているということで、警告を発令する。
【0070】
なお診断結果は、正常、異常の他に、過去のどの状態にも属さない新規カテゴリーが生成される場合がある。その場合は、未知とし、支援ツール910を介してユーザにその情報を提示する。後にこの状態が正常あるいは異常の判定が決まれば、診断結果データベース480内の診断結果が置き換わる。以後、同様のカテゴリーが発生した場合には、本結果に基づいて診断結果が出力される。
【0071】
以上、本発明装置が適用されるプラントとして発電プラントの構成について説明した。また要素モデル用テーブル、総合モデル用テーブルの具体事例について、この場合のプロセス量の例で説明した。この内容を理解した上で、次に要素モデル作成部420の処理内容について説明する。
【0072】
図8は、要素モデル作成部420での動作を示すフローチャートである。はじめにステップS421で、新規に作成するモデルなのか既存のモデルに修正を加えるのかを判断をする。新規に作成する場合はステップS422に、そうでない場合はステップS425に進む。
【0073】
なお、モデルの新規作成或いは修正は、発電プラント100に関わるユーザである例えば操作員が、入力装置900から与える指示内容により判明する。従って、モデルの改変に関する指示がユーザから与えられていないときには、図8の処理は実行されない。ユーザは、発電プラント100の改変に応じて、モデル改変の指示を与える。モデル改変指示の具体手法は図12を用いて後述する。
【0074】
モデル改変の指示が新規作成である場合、ステップS422では、図4に格納されている過去のプロセス信号を用いて、新たなARTモデルを作成する。その後、ステップS423にて、作成したARTモデルの情報をモデル情報データベース450に格納する。この結果作成され、モデル情報データベース450に格納された新規のARTモデルが、例えば図5の主蒸気モデルE−001であり、給水流量と主蒸気温度で定まる要素モデルである。
【0075】
ステップS424では、対応する監視項目全てのモデル構築が完了したかを判断する。全て完了していれば終了となり、未完であればステップS421に戻り、それ以降のステップを全ての監視項目用モデルが構築されるまで繰り返す。
【0076】
モデル改変の指示が既存モデルの修正である場合、ステップS425では、既存モデルの入力変数が追加されたのか削除されたのかを判断する。追加されていればステップS426へ、削除されていればステップS427に進む。
【0077】
入力変数が追加されたときのステップS426では、既存モデルに追加された変数のみを用いてARTによる診断モデルを作成する。ここでは、既存モデルが図5の主蒸気モデルE−001であり、追加された変数がPID152(主蒸気の圧力計測器152)であったとする。このため、ステップS426では、追加された変数PID152のみを用いてARTによる診断モデルを作成する。完了後、ステップS423(作成したARTモデルの情報をモデル情報データベース450に格納)、ステップS424(すべての監視項目に対応したか確認)と進む。
【0078】
なお、ステップS423では、既存のモデル番号E−001と追加されたモデル番号(PID152とする)を、図5のモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430の入力モデル欄に格納する。
【0079】
既存モデルの入力変数が削除されたときのステップS427では、変更のない入力変数はそのままとし、削除された変数には一定値、ここでは0.5を入力する。ただし、本実施例では、ARTモデルの入力変数は、全て規格化されているとする。つまり、最大値を「1」とし最小値を「0」とする範囲の値として把握されている。従って、0.5を入力するということは、中間値のまま変動しない値として以後取り扱うことを意味する。
【0080】
ここでは既存モデルが図5の主蒸気モデルE−001であり、削除された変数がPID151(主蒸気の温度計測器151)であったとする。この場合、PID151には0.5が入力されるので、以後の主蒸気モデルE−001は事実上入力変数PID150の給水流量でのみ定まるモデルとして取り扱われる。
【0081】
ステップS428では、削除された信号PID151を0.5の一定値としたことを受けて、既存のカテゴリーを今回のモデル用のカテゴリーに変換する。なお図5の主蒸気モデルE−001では21個のカテゴリーが存在するので、これが変換の対象となる。この変換のために、図7の診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460を参照し、主蒸気モデルE−001の欄に格納されているカテゴリー番号に対する時刻と、そのモデルに入力されている変数のPID情報を用いて、プロセス計算機300に保存されている各入力変数の時系列データを取り出す。
【0082】
この事例の場合には、カテゴリー番号「1」に対する時刻「2010/01/0100:00:00」と、主蒸気モデルE−001に入力されている変数のPID情報(PID150,PID151)を用いて、図4を参照し、プロセス計算機300に保存されている各入力変数(PID150,PID151)の時系列データを取り出す。この時系列データをARTモデルに入力する。この操作を全てのカテゴリー(21個)に対し実施する。全てのカテゴリーに対し実施後、これまで同様に、ステップS423、ステップS424に進む。
【0083】
なお、同一モデルで追加と削除があった場合は、ステップS425で先に追加側のフローチャートを実行し、ステップS424で再度ステップS421に戻り、再び、ステップS425で削除のフローチャートを実行する。
【0084】
図9は、統合モデル作成部430での動作を示すフローチャートである。はじめにステップS431で要素モデルが新規作成されたものかどうかを判断する。新規作成であればステップS436へ、そうでなければ(要素モデルの改変がある場合)ステップS432に進む。なお、新規作成の場合、統合モデル作成部430として処理すべき処理は何も無いので、ステップS436経由でステップS431に移り他の項目について判断するか、或いは処理終了とする。
【0085】
要素モデルの改変がある場合、ステップS432では、入力変数の状態を判断する。追加されていればステップS433へ、そうでなければ(入力変数削除の場合)ステップS436に進む。なお、入力変数削除の場合、統合モデル作成部430として処理すべき処理は何も無いので、ステップS436経由でステップS431に移り他の項目について判断するか、或いは処理終了とする。
【0086】
ステップS433では、要素モデル作成時に、既存モデルと新規に作成された追加モデルに入力したプロセス信号を再度入力する。例えば図8の追加事例処理(ステップS425)では、既存モデル(主蒸気モデルE−001)にPID152を追加したが、これらに関連するプロセス信号として、給水流量PID150と主蒸気温度PID151と主蒸気圧力PID152を、図4を参照して再度入力する。なお、図8のステップS423の処理では、既存のモデル番号E−001と追加されたモデル番号(PID152とする)を、図5のモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430の入力モデル欄に格納している。
【0087】
ステップS434では、前述したモデルから出力されたカテゴリー番号を入力変数とするARTモデルを構築する。例えば入力されたカテゴリー番号の組合せを新カテゴリーに分類し、これを統合モデルとする。
【0088】
具体的には、既存のモデル番号E−001について10のカテゴリー番号(A0からA9)が存在し、追加されたモデル番号PID152について5のカテゴリー番号(B0からB4)が存在したとする。この場合に、A0(正常)とB0(正常)の組み合わせが共に正常であれば新たなカテゴリー番号をC0「正常」と定義する。またA0(正常)、B1(異常)であれば新たなカテゴリー番号をC1「異常」と定義する。この操作を最終の組み合わせまで実行して新たな一群のカテゴリー番号を有するモデルを統合モデルとして統合モデル用テーブルTB430に保持する。
【0089】
なお、計測器などの新設が生じた場合に、全てのプロセス信号についての新たなモデルを再度全作成することも可能であるが、例えば過去1年分の入力データを参照するにしても膨大な量のデータを取り扱うことになる。
【0090】
この点、本発明では過去1年分の入力データを参照しモデル化し、カテゴリー番号を新たに得るのは、追加された入力変数のみである。既設の要素モデルはカテゴリー番号に着目しているので、過去1年分の入力データ量が複数のカテゴリー番号に集約されている。
【0091】
モデル作成が完了するとステップS436に進む。ステップS436では、全ての監視項目に対して対応したのかを判断する。未完であればステップS431に戻り、全ての項目が完了するまで繰り返す。完了していれば終了となる。
【0092】
次に、要素診断部460と統合診断部470のアルゴリズムのフローチャートを図10に示す。ここでは、初めにステップS461で、各要素モデルの情報をモデル情報データベース450の要素モデル用テーブルTB420からロードする。次にステップS462では、各統合モデルの情報をモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430からロードする。これにより、図5、図6のデータが要素診断部460に提供された。
【0093】
ステップS463では、要素モデルのみでの診断か統合モデルを含めての診断かを判断する。要素モデルでの診断のみの場合は、ステップS464へ、統合モデルでの診断を必要とする場合はステップS466へ進む。
【0094】
ステップS464では、各要素モデルでの診断を実施する。これは要素モデル用テーブルTB420の診断を実施することである。ステップS465では、要素モデルの診断結果を、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460に格納する。
【0095】
一方、ステップS466では、まず各要素モデルでの診断を実施する。これは統合モデル用テーブルTB430内の各要素モデルの診断を実施することである。例えば主蒸気ループモデルT−001の場合には、要素モデルE−001と追加モデルPID152のそれぞれについて診断する。要素モデルの診断結果は、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460に格納される。
【0096】
ステップS467では、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460を参照し、各要素モデルから出力されたカテゴリー番号を入力として診断をする。
【0097】
ステップS468では、診断結果を診断結果データベース480の統合モデル用テーブルTB480に格納する。
【0098】
その後、ステップS469にて、全ての監視項目に対し診断を実施したのかを判断する。未完であればステップS461に戻り、全ての監視項目が完了するまで繰り返す。完了した後、終了となる。
【0099】
このフローチャートにおいて、ステップS467とステップS468が統合診断部470での動作となり、その他のステップSは、要素診断部460で実施される。
【0100】
外部出力インターフェイス490では、それぞれの診断結果を出力結果として、支援ツール910に送る。
【0101】
次に、ユーザが支援ツール910を用いて、画像表示装置950に制御信号20、プロセス信号30、診断結果40やモデル情報データベース450および診断結果480の情報を表示させる方法について説明する。
【0102】
図11〜図15は、画像表示装置950に表示される画面例である。ユーザーは、キーボード901、マウス902を用いてこれら画面90の空欄となっている箇所にパラメータ値を入力するなどの操作を実行する。
【0103】
まず図11は、画像表示装置950に表示される初期画面である。画面90には初期画面として、診断モデル作成ボタン951と診断結果表示ボタン952とが表示され、ユーザーは、これらの中から必要なボタンを選択し、マウス902を用いてカーソル953を移動させ、マウス902をクリックすることにより所望の画面を表示させる。
【0104】
図12は、初期画面において診断モデル作成ボタン951を選択したときに表示される要素モデルおよび統合モデルの設定画面である。画面90の上部欄には当該画面が表示情報設定用の画面であることが表示される。また、画面90の各部には以下に説明する欄が形成表示されており、これらの欄にデータ入力し、あるいはボタン選定することにより、モデルの設定を行う。
【0105】
プロセス信号表示欄961では、ユーザーは、診断モデルに入力させたい計測信号、あるいは操作信号を入力欄961に、そのレンジ(上限/下限)と共に入力する。図示の例では計測信号として主蒸気流量をボタン選択し、その上限値として300(kg/s)、下限値として0(kg/s)を数値入力する。なお単位(kg/s)は、計測信号として主蒸気流量をボタン選択したことに伴いデフォルト表示される。
【0106】
また、診断モデルに主蒸気流量を追加するに際し、モデル作成に使用する表示させたい時間帯を時刻入力欄962に入力する。図示の例では、2010/01/01の1日間を開始、終了時刻として設定した。
【0107】
画面90上で、表示ボタン963をクリックすることにより、図13のようにトレンドグラフが画像表示装置950に表示される。図13の例では複数の各種プロセス量の時間的な変動の様子が表示できる。図13の戻るボタン971をクリックすることにより、図12の画面に戻る。
【0108】
図12の要素モデル作成表示欄964には、要素モデル作成に必要であるモデル番号、モデル名称、入力変数などが表示される。要素モデル作成表示欄964の右側には新規ボタン965と修正ボタン966が表示されている。
【0109】
このうち、新規ボタン965を押すと要素モデル作成表示欄964が空白表示されて入力状態になり、ユーザの手入力により新規モデルを作成することが出来る。
【0110】
図示の要素モデル作成表示欄964は、修正ボタン966を選択したときの画面の一例を表示している。図示はモデル番号E−001,モデル名称が主蒸気モデル、入力変数がPID150,PID151の例である。
【0111】
なお、新規のモデル作成は、既存モデルをベースに修正するのが早道であり、この場合は、対象となるモデルを表示し、修正ボタン966を押した後、修正するのがよい。そのため、既存モデルを検索できるように検索キー入力欄967が設定されており、検索キーを入力した後、検索ボタン968を押すと対象となるモデルの情報が要素モデル表示欄964に表示される。
【0112】
統合モデル作成表示欄974も基本的には要素モデル作成表示欄964と同様に構成されている。統合モデル表示欄974では、統合モデル作成に必要であるモデル番号、モデル名称、入力モデルなどが表示される。新規ボタン975を押すと統合モデル表示欄974が入力状態になり、新規モデルを作成することが出来る。既存モデルをベースに修正する場合は、対象となるモデルを表示し、修正ボタン976を押した後、修正する。既モデルを検索できるよう、検索キー入力欄977があり、検索キーを入力した後、検索ボタン978を押すと対象となるモデルの情報が統合モデル表示欄974に表示される。
【0113】
以上の設定後、作成ボタン992を押すことで、それぞれのモデルが作成される。
図12において、戻るボタン969をクリックすることにより、図11の画面に戻ることができる。
【0114】
図14は、診断結果を画像表示装置950に表示させるための設定画面90である。図11の初期画面において診断結果表示ボタン952をクリックすることにより、図14の画面が表示される。図14の画面90の上部欄には、当該画面が診断結果表示設定用の画面であることが表示される。また、画面90の各部には以下に説明する欄が形成表示されており、これらの欄にデータ入力し、あるいはボタン選定することにより、モデルの設定を行う。
【0115】
プロセス信号選択欄981では、ユーザーは、画像表示装置950の画面90に表示させたい計測信号、あるいは操作信号を入力欄981に、そのレンジ(上限/下限)と共に入力する。図示の例では、発電機出力と主蒸気流量をそのレンジ(上限/下限)と共に入力したときの画面を表示している。
【0116】
また、表示させたい時間を時刻入力欄982に入力する。表示させたいプロセス信号が決定したら、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。
【0117】
要素モデル選択欄983では、図12の表示情報設定画面と同様に、モデル番号、モデル名称、入力変数などが表示される。表示させたいモデルを検索するために、検索キー入力欄984がある。検索キーを入力後、検索ボタン985を押して検索する。検索結果は、要素モデル選択欄983に表示され、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。図示の例ではモデルE−001のケースを表示している。
【0118】
また、統合モデル選択欄986も基本的には要素モデル選択欄983と同様に構成されている。統合モデル選択欄986では、モデル番号、モデル名称、入力モデルなどが表示される。表示させたいモデルを検索するために、検索キー入力欄987がある。検索キーを入力後、検索ボタン988を押して検索する。検索結果は、要素モデル選択欄986に表示され、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。図示の例ではモデルT−001のケースを表示している。
【0119】
以上の入力或いは選択をした後に、表示ボタン989をクリックすることにより、図15のようにトレンドグラフが画像表示装置950の画面90に表示される。図15の例では、プロセス信号選択欄981で選択した発電機出力と主蒸気流量の時間的変動が対比的に表示される。また、選択した要素モデルE−001あるいは統合モデルT−001と新たに追加した入力変数PID152について、カテゴリー番号ごとに、時系列的に表示する。図15にあるように、新規カテゴリーが発生するとトレンド画面上の概要部分が別の色で強調されるなどしてユーザに知らせる。図15の戻るボタン991をクリックすることにより、図14の設定画面に戻る。図14の戻るボタン999を押すと図11の初期画面に戻る。
【0120】
診断結果の表示画面例として図15を示したが、その他、診断対象となるプラントの系統図を示し、新規カテゴリーが発生した場合、その箇所がハイライトされ、該当箇所をクリックすると、図15に示したトレンド表示がされるという表示手法も考えられる。
【0121】
なお、プラント診断装置400にモデル情報データベース450と診断結果データベース480を含めた実施例を示したが、それぞれ、プラント診断装置400に含めず、別のハードウェアとする実施例も可能である。
【0122】
以下では、発電プラント100に、本発明のプロセス診断方法及び装置の結果をもとにプラントの異常・予兆診断へ適用することの効果について説明する。
【0123】
本発明のプラントの診断方法を発電プラントの異常・予兆診断に適用すると、運用中設備の一部交換や補修で、診断モデルを修正する場合、これまで蓄積した診断データをそのまま活用しながら、診断をすることができる。その結果、診断モデルの再構築が容易に実施でき、これまでの実績を活用することで、より異常や予兆の傾向を検出することが可能である。
【0124】
また運転員に対しても要素モデルと統合モデルの両結果をトレンド表示するため、目視による監視がより一層容易になる。さらに、複数診断モデルを統合モデルでまとめる階層型にすることにより、発電プラントの対象をより広範囲に診断できるモデルが容易に構成できる。
【符号の説明】
【0125】
100:発電プラント
200:監視制御装置
300:プロセス計算機
400:プラント診断装置
410:外部入力インターファイル
420:要素モデル作成部
430:統合モデル作成部
450:モデル情報データベース
460:要素診断部
470:統合診断部
480:診断結果データベース
490:外部出力インターフェイス
900:入力装置
901:キーボード
902:マウス
910:支援ツール
920:外部入力インターフェイス
930:データ送受信処理部
940:外部出力インターフェイス
950:画像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの機器で構成されているプラントの異常診断において、運開後の保守にて異常診断に関係するプロセスが新たに追加、或いは、除外されても再構築することなくプラントの異常診断が継続可能なプラントの診断方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力や原子力に代表される発電プラントや、医薬品・食品・化学プラントに代表される産業プラントでは、プラントの安定的な運用のために、多くのプロセス信号を監視対象としている。
【0003】
具体的には、プラントの状態を把握するために、圧力・温度・流量・水位などを計測する計測器を各部に設置し、得られたプロセス信号値を運転員に表示する。また、ほとんどのプラントでは、異常や不具合対策、あるいは、保守の観点から、得られたプロセス信号値を専用の計算機であるプロセスコンピュータに保存する。
【0004】
運転員はプラントの状態に変化があった場合、関連するプロセス信号の値にも変化がないかどうかを確認するため、監視画面上に該当プロセス信号の値を表示する。また、必要であれば、プロセス計算機に格納された該当プロセス信号の過去の値を監視画面上に表示する。通常は、プラントの運転制御装置と監視装置が一体になっており、リアルタイムでプラント状態の監視や制御が実施できるようになっている。
【0005】
従来、プラント状態に変化があると、運転員は監視装置に関連するプロセス信号の値を監視画面上に表示する。表示されるプロセス信号は、監視装置の取り込む周期に従いオンラインで値が更新される。このプロセス値の状態をもとにプラントの運転状態を把握する。運転制御装置や監視装置(以下、監視制御装置と呼ぶ)は、プロセス値の状態に応じた警報装置と連動している。例えば、ある圧力値が設定値よりも上回ると運転員に知らせるための警報ランプを点灯させる。さらに、異常な状態から正常な状態に復帰させるための制御を作動させ、運転員の操作を促す。
【0006】
最近は、異常状態が発生するまえに、プラントの異常兆候を予測する装置やその方法が多数検討されている。また、異常が発生した後、その原因を特定し、原因を分析するための支援装置やその方法もある。
【0007】
特許文献1のシステムでは、レベルに応じた警告のランク付けを用いてプラントの診断をする。
【0008】
特許文献2には、運転制御情報、現場情報、設備情報を伝送するネットワークと、それらを表示する情報端末装置を有する装置および方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−258649号公報
【特許文献2】特開2011−70334号公報
【非特許文献1】G.A. Carpenter and S. Grossberg:”ART2 Self−Organization of stable category recognition codes for analog input patterns”, Applied Optics, Vol.26, No.23, (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プラントは多くの機器から構成されている。また、各機器の規模も大小さまざまである。プラントを診断する際、規模や機能に応じて、関連するプロセス信号をもとに統計的な処理やニューラルネットワークに代表される学習などを用いて構築する統計モデルを用いる場合が多い。統計モデルは入力されるプロセス信号の相関関係をモデル化する。
【0011】
特許文献1および特許文献2に記載されている方法は、どちらも適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory, ART)を用いたプラントの診断方法である。ARTは、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類する分類器の一種である。
【0012】
ここでは、異常を含まないプラントのプロセス信号をARTに入力し、複数のカテゴリーに分類しておく。異常発生時の診断では、プロセス信号をARTに入力することで、既存カテゴリーに属さない新たなカテゴリーが生成されると、これまでには無いプラント状態が発生しているということで、警告を発令する。
【0013】
ところで、発電プラントなどは、運用年数が長いため、途中で新たに機器を追加したり、計測器を追設あるいは撤去したりする。ARTを用いた診断では、上述のようなメンテナンスによって入力されるプロセス信号が変わるあるいは増減すると、そのまま診断をすることが出来ず、再度、ARTによるカテゴリー分類を実施する必要がある。しかし、運用年数が長くなるとそれまで蓄えたプロセス信号の時系列データ量は莫大であるため、再構築は困難である。
【0014】
本発明の目的は、上述の課題を解決するプラントの診断方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明においては、入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じたモデルについて、該モデルのカテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築する。
【0016】
また、既存のモデルに入力変数が追加された場合には、追加した入力変数だけで診断モデルを構築し、既存のモデルから得られるカテゴリー番号と追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号のモデルを生成する。
【0017】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行する。
【0018】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行するとともに、削除処理は追加処理終了後に行う。
【0019】
前述の課題を解決するため、本発明においては、監視対象から得られる入力変数の相関関係をモデル化し、モデルに入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するためのプラントの診断方法において、第1の入力変数の相関関係をモデル化して要素モデルとして保持し、第1の入力変数の相関関係に応じて入力されたデータを複数のカテゴリーに分類するとともに、追加された第2の入力変数についてもその相関関係をモデル化して、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、要素モデルとモデル化された第2の入力変数による統合モデルを形成する。
【0020】
また、統合モデルは、要素モデルのカテゴリーと、モデル化された第2の入力変数のカテゴリーの組み合わせで定まる新カテゴリーを含む。
【0021】
前述の課題を解決するため、本発明においては、監視対象を制御する監視制御装置からの制御信号や、監視対象のプロセス信号を入力するプロセス計算機から得られる計測信号をもとに監視対象の異常を検知するプラントの診断装置において、入力した信号の相関関係をモデル化して要素モデルを作成し、要素モデルに入力されたデータを入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する要素モデル部、少なくとも1つ以上の要素モデルを含む統合モデルを備え、統合モデルに入力されたデータを入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する統合モデル部とを備え、制御対象の改修に応じて入力信号の追加を生じた要素モデルについて、追加した入力信号だけで診断モデルを構築し、既存の要素モデルから得られるカテゴリー番号と追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号を生成して得たモデルを統合モデルとして統合モデル部に格納する。
【0022】
また、既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるプラントの診断方法及び装置では、診断モデルの入力信号として監視あるいは確認すべきプロセス信号が変更、あるいは追加・削除された場合でも継続して診断結果やドレンド表示を運転員あるいは保守員に提示することができ、発電プラントや産業プラントの安定的な運用に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のプラントの診断装置を発電プラントに適用した図。
【図2】診断の対象として火力発電プラントの構成を示すシステムブロック図。
【図3】火力発電プラントにおける配管部、及びエアーヒーター部の拡大図。
【図4】プロセス計算機300に記憶されるデータの格納形式を示す図。
【図5】モデル情報データベース450に記憶される情報の一例を示す図。
【図6】モデル情報データベース450に記憶される情報の一例を示す図。
【図7】診断結果データベース480に記憶される診断結果の情報の一例を示す図。
【図8】要素モデル作成部420の処理内容を示すフローチャート。
【図9】統合モデル作成部430の処理内容を示すフローチャート。
【図10】要素診断部460および統合診断部470の処理内容を示すフローチャート。
【図11】画像表示装置に表示される初期画面を示す図。
【図12】画像表示装置に表示される診断モデル設定画面を示す図。
【図13】画像表示装置に表示されるプロセス信号のトレンドグラフを示す図。
【図14】画像表示装置に表示される診断結果表示設定画面を示す図。
【図15】画像表示装置に表示される診断結果の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、最良の実施形態によるプラントの診断方法及び装置について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0026】
図1は、本実施形態に係るプラントの診断装置を、対象の一つである発電プラント100に適用した例について説明する図である。発電プラント100には、プラントの状態を把握するために多くの計測器が設置されている。各計測器で測定されたプロセス信号10の値は、専用線あるいは汎用的な送信用ラインを用いて監視制御装置200および計測値を格納するプロセス計算機300に伝送される。
【0027】
監視制御装置200では、プロセス信号10の値をもとにプラント運転を所望の状態に保つための制御信号20を出力する。出力した制御信号20は、発電プラント100に入力されるとともに、プラント診断装置400にも入力される。
【0028】
プロセス計算機300では、発電プラント100から得られるプロセス信号10の値を蓄積する。蓄積されたプロセス信号10は、その用途に応じて、異常・プラント診断装置400にプロセス信号30として出力される。格納形式については、後程図4を参照して詳しく説明する。
【0029】
プラント診断装置400では、診断に必要となる制御信号20やプロセス信号30を、外部入力インターフェイス410を介して取り込む。また一方においてプラント診断装置400は、外部出力インターフェイス490、外部入力インターフェイス410を介して支援ツール910に接続され、ユーザである例えば操作員の操作信号を入力するとともに必要な情報を表示装置950に表示する。
【0030】
プラント診断装置400の外部入力インターフェイス410では、支援ツール910からの指令に応じて、モデル構築モードと診断モードを切り替える。モデル構築モードのときには要素モデル作成部420に、診断モードのときには要素診断部460に、入力された制御信号20やプロセス信号30を出力する。
【0031】
要素モデル作成部420では、診断対象に応じたARTモデルが作成される。診断対象が複数ある場合には、同数のARTモデルを作成する。ARTモデルを作成するには、正常状態のプロセス信号30をARTモデルに入力する。ARTモデルでは、入力されたプロセス信号30の相関関係に応じて入力データを分類する。これをカテゴリーと呼ぶ。このカテゴリーの分解能は警戒パラメータの大きさに左右される。この警戒パラメータの適切な設定方法については、前述した特許文献1あるいは特許文献2で提案されている。また、ARTモデルの詳細な動作については、非特許文献1で詳細に記載されているので詳細説明を省略する。
【0032】
それぞれのARTモデルの警戒パラメータやカテゴリー数などはモデル情報データベース450に格納される。また必要に応じてモデル情報データベース450から情報を抽出する。要素モデル作成部420内の詳しい動作やモデル情報データベース450の構成については、後で詳しく説明する。モデル情報データベース450の構成例を図5、図6に示す。
【0033】
次に総合モデル作成部430では、要素モデル作成部420内で作成されたARTモデルの出力であるカテゴリー番号を入力データとする新たなARTモデルを作成する。要素モデル作成部420と同様に、ARTモデルの警戒パラメータやカテゴリー番号などをモデル情報データベース450および外部出力インターフェイス490に出力する。また必要に応じてモデル情報データベース450から情報を抽出する。統合モデル作成部430内の詳しい動作やモデル情報データベース450の構成については、後で詳しく説明する。
【0034】
外部入力インターフェイス410で診断モードの指令を受けた場合は、要素診断部460にデータが入力される。要素診断部460では、モデル情報データベース450から診断モデルの情報をロードする。ロードされた診断モデルに入力データを入力し、診断をする。診断モデルに入力されたデータに応じて、予め作成されたカテゴリーに分類されるか、新たな入力データの相関関係によって新規カテゴリーが作成される。
【0035】
新規カテゴリーが作成された場合は、正常状態とは異なる状態が検出されたことを意味し、異常の予兆であると診断する。このときの出力カテゴリー番号などを含めて診断結果データベース480に格納する。また統合診断部470にも出力する。要素診断部460内の詳しい動作や診断結果データベース480の構成については、後で詳しく説明する。診断結果データベース480の構成例を図7に示す。
【0036】
統合診断部470では、モデル情報データベース450から診断モデルの情報をロードし、要素診断部460からの出力を診断モデルに入力し、同様に診断する。診断結果は、外部出力インターフェイス490および診断結果データベース480に格納される。なお、統合診断部470内の詳しい動作については、後で詳しく説明する。
【0037】
外部出力インターフェイス490では、統合モデル作成部430あるいは統合診断部470での出力結果を、保守支援ツール910に出力する。
【0038】
発電プラント100に関わるユーザとして例えば操作員は、キーボード901とマウス902で構成される入力装置900、及び画像表示装置950に接続されている支援ツール910を用いることにより、発電プラント100に関する様々な情報を見ることが可能である。また、監視制御装置200からの制御信号20、プロセス計算機300からのプロセス信号30、プラント診断部400での診断結果、モデル情報データベース450、診断結果データベース480の情報にアクセスすることができる。
【0039】
支援ツール910は、外部入力インターフェイス920、データ送受信処理部930、外部出力インターフェイス940で構成される。
【0040】
入力装置900で生成した入力信号91は、外部入力インターフェイス920を介して支援ツール910に取り込まれる。また、支援ツール910には、監視制御装置200からの制御信号20、プロセス計算機300からのプロセス信号30、プラント診断装置400からの診断結果40、モデル情報データベース450、診断結果データベース480の情報についても、同様に外部入力インターフェイス920にて取り込まれる。データ送受信処理部930では、ユーザからの入力信号91の情報に従って、入力信号92を処理し、出力信号93として外部出力インターフェイス940に送信する。出力信号94は、画像表示装置950に表示される。
【0041】
以下の説明においては、本発明のデータ処理装置を火力発電プラントに適用した場合を例にとり、データベースに保存されている情報、及び信号の処理機能について説明する。
【0042】
図2は、診断の対象として火力発電プラントの構成を示すシステムブロック図である。この事例では、石炭焚火力発電プラントにおける発電の仕組みについて説明する。
【0043】
石炭を燃料とする場合には、石炭を貯蔵しているコールバンカー111から給炭器112を介してミル110に石炭が供給される。ミル110では、内部のローラにより石炭を細かく砕き微粉炭状にする。この微粉炭と石炭搬送用の1次空気、及び燃焼調整用の2次空気がバーナー102を介して、ボイラ101に供給される。微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141からボイラ101に導かれる。また、2段燃焼用のアフタエアを、配管142からアフタエアポート103を介してボイラ101に投入する。
【0044】
石炭の燃焼により発生した高温のガスは、ボイラ101の経路に沿って流れた後、エアーヒーター104を通過する。その後、排ガス処理した後、煙突を介して大気に放出される。
【0045】
他方、ボイラ101を循環する給水は、給水ポンプ105を介してボイラ101に導かれ、熱交換器106においてガスにより過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施形態では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数個配置してもよい。
【0046】
熱交換器106を通過した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ弁107を介して蒸気タービン108に導かれる。蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動し、発電機109で発電する。発電された電力は電力系統に供給される。
【0047】
蒸気タービン108の排気は復水器113で冷却され、再び給水ポンプ105へと送られる。途中、タービンからの抽気を利用して、給水を加熱する装置を配置し熱効率を向上させる。
【0048】
概略以上のように構成される火力発電プラントには、様々な計測器が配置されており、この計測器から取得された情報は、計測情報10(プロセス信号10)として図1の監視制御装置200などに伝送される。例えば、図2には、流量計測器150、温度計測器151、圧力計測器152、発電出力計測器153、及び濃度計測器154を図示している。
【0049】
なお、流量計測器150では、給水ポンプ105からボイラ101に供給される給水の流量を計測する。また、温度計測器151、圧力計測器152は、蒸気タービン108に供給される蒸気の温度、圧力を計測する。発電機109で発電された電力量は、発電出力計測器153で計測する。ボイラ101を通過中のガスに含まれている成分(CO、NOxなど) の濃度に関する情報は、濃度計測器154で計測することができる。尚、一般的には、図2に図示した以外にも、多数の計測器が火力発電プラントに配置されているが、図2では省略している。
【0050】
さらに図2において、バーナー102から投入される1次空気、及び2次空気、アフタエアポート103から投入されるアフタエアの経路について説明する。
【0051】
1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でエアーヒーター104を通過する配管132と通過しない配管131に分岐し、再び配管133にて合流し、ミル110に導かれる。エアーヒーター104を通過する空気は、ガスにより過熱される。この1次空気を用いて、ミル110において生成する微粉炭を配管134を経由してバーナー102に搬送する。
【0052】
2次空気、及びアフタエアは、ファン121から配管140に導かれ、エアーヒーター104で過熱された後、2次空気用の配管141と、アフタエア用の配管142とに分岐し、それぞれバーナー102とアフタエアポート103に導かれる。
【0053】
図3は、1次空気、2次空気、及びアフタエアの通過する配管部、並びにエアーヒーター104の拡大図である。図3に示すように、配管にはエアダンパ160、161、162、163が配置されている。エアダンパを操作することにより、配管133,141,142における空気が通過する面積を変更できるので、エアダンパの操作によって配管を通過する空気流量を調整できる。
【0054】
以下、プロセス計算機300に格納されているプロセス信号10の情報、モデル情報データベース500および診断結果データベースに保存されている情報、及び要素モデル作成部420、統合モデル作成部430、要素診断部460、統合診断部470での演算機能について説明する。
【0055】
まず、プロセス計算機300に保存するプロセス信号10の情報について説明する。図4は、それぞれプロセス計算機300に保存されている情報の一例を説明する図である。発電プラント100で計測した情報は、図4のように、計測器毎に各計測時刻と共に保存される。例えば、図4の縦軸項目には計測時刻が、横軸項目には計測器に固有に付与されたPID番号毎に計測値の種別、単位が関連付けて記憶される。
【0056】
例えば、PID番号がPID150は図2の給水流量の流量計測器150、PID151は主蒸気の温度計測器151、PID152は主蒸気の圧力計測器152、PID153は発電出力計測器153、PID154は燃焼ガスの濃度計測器154で計測したデータであることを意味している。また、種別として、Fは流量、Tは温度、Pは圧力、Eは発電出力、Dは排ガスに含まれるNOx濃度を意味している。これらの単位はそれぞれ、kg/s、℃、Mps,MW,ppmである。このようにして、PID番号と種別と単位で表現された計測値が、時間の情報と共に保存される。
【0057】
尚、図4では1秒周期でデータを入手し保存しているが、データ収集のサンプリング周期は任意に設定することが可能である。プロセス計算機300に格納されているデータを容易に活用できるよう各計測値に固有に設定されたPID番号をもとに、プロセス信号を特定化し、あるいは所望のプロセス信号を探索する際のキーとして用いることができる。
【0058】
次に、モデル情報データベース450に保存する情報について説明する。図5、図6は、ARTによる診断モデルで必要となる情報の様式を示した図である。図5、図6に示すように、モデル情報データベース450には要素モデル用テーブルTB420と統合モデル用テーブルTB430が準備されている。要素モデル用テーブルTB420は、要素モデル作成部420で取り扱う要素モデルに関する情報を格納しておくテーブルであり、総合モデル用テーブルTB430は、総合モデル作成部430で取り扱う総合モデルに関する情報を格納しておくテーブルである。
【0059】
図5の要素モデル用テーブルTB420には、モデル番号、モデル名称、モデルに入力する入力変数のPID番号、警戒パラメータ、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が搭載されている。この記載事例では、モデル番号がE−001、モデル名称は図2の発電プラントの主蒸気に関する主蒸気モデル、入力変数がPID150(給水流量の流量計測器150)、PID151(主蒸気の温度計測器151)、警戒パラメータが0.82、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が21とされている。このようにこの要素モデルの例では、主蒸気モデルが給水流量と主蒸気温度により表現されている。
【0060】
図5の統合モデル用テーブルTB430には、モデル番号、モデル名称、モデルに入力される要素モデルのモデル番号、警戒パラメータ、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が搭載されている。この記載事例では、モデル番号がT−001、モデル名称は図2の発電プラントの主蒸気に関する主蒸気ループモデル、入力モデルは要素モデル用テーブルTB420で使用した主蒸気モデルE−001にPID152(主蒸気の圧力計測器152)を加味、警戒パラメータが0.89、モデル作成時に生成したカテゴリーの最大番号が25とされている。このようにこの総合モデルの例では、主蒸気ループモデルとして、要素モデル用テーブルTB420で使用した主蒸気モデルE−001に主蒸気圧力を加味したモデルとして表現されている。
【0061】
以上のことから明らかなように、統合モデルとは、この事例では要素モデルに新たなプロセス量を加えて構成した複合モデルである。図示事例には無いが、統合モデルとしては、要素モデル同士を複合したものであってもよい。また、この事例で要素モデルとしては主蒸気単体を模擬したモデルであるが、統合モデルとしては主蒸気ループを模擬したモデルである。このように、統合モデルは、より広い範囲、より上位の範囲を表現したモデルということができ、要素モデルやプロセス量を統合利用することで、広範囲化、上位化を実現したものである。
【0062】
また要素モデルや統合モデルは、非特許文献1などに開示された複数の入力データを複数のカテゴリーに分類する教師付き学習型の適応共鳴理論(ART)ネットワークを用いて実現することが可能であるが、この場合に要素モデルを下位ネットワークとするのであれば、統合モデルは上位ネットワークに位置づけて考えることができる。
【0063】
また、要素モデルで使用するプロセス量の個数(次数)をN次(図5の例では2次)とすると、統合モデルは(N+M)次(図5の例では3次)のモデルであり、このことから統合モデルを作成することは、要素モデルを使用してより高次のモデルを作成したことであるといえる。
【0064】
このことから、本発明の解決課題であるプラントでの新たな機器の追加、計測器の追設時における診断装置内モデルの改変は、要素モデルをそのままに、追加されたプロセス量を加えた統合モデルを作成することで実現できることが理解されるであろう。
【0065】
なお、警戒パラメータは、適用する調整手法によって、個数が異なる。その場合は、警戒パラメータが複数設定されている場合の各テーブルを用いる。図6は、警戒パラメータが単一で設定されている場合の例であり、図7は警戒パラメータが複数設定されている場合の各テーブルの例を示している。図7が図6と異なるのは、警戒パラメータがカテゴリー番号ごとに搭載される様式となることである。
【0066】
図7は、診断結果データベース480に記憶される診断結果の情報の一例を示す図である。診断結果データベース480には要素モデル用テーブルTB460と統合モデル用テーブルTB470が準備されている。要素モデル用テーブルTB460は、要素診断部460で取り扱う要素モデルに関する診断結果情報を格納しておくテーブルであり、総合モデル用テーブルTB470は、総合診断部470で取り扱う総合モデルに関する診断結果情報を格納しておくテーブルである。
【0067】
図7の要素モデル用テーブルTB460には、モデル番号、時刻、カテゴリー番号、診断結果が搭載される。この記載事例では、モデル番号がE−001、時刻は「2010/01/0100:00:00」、カテゴリー番号1の診断結果が正常と記憶されている。また、図7の総合モデル用テーブルTB470も同様項目で構成され、この記載事例では、モデル番号がT−001、時刻は「2010/01/0400:10:11」、カテゴリー番号3の診断結果が「異常」と記憶されている。
【0068】
本発明における要素診断部460、統合診断部470を構成するに際し、特許文献1および特許文献2に記載されている方法が適用可能である。特許文献1および特許文献2に記載されている方法は、どちらも適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory, ART)を用いたプラントの診断方法である。ARTは、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類する分類器の一種である。
【0069】
ここでは、異常を含まないプラントのプロセス信号をARTに入力し、複数のカテゴリーに分類しておく。異常発生時の診断では、プロセス信号をARTに入力することで、既存カテゴリーに属さない新たなカテゴリーが生成されると、これまでには無いプラント状態が発生しているということで、警告を発令する。
【0070】
なお診断結果は、正常、異常の他に、過去のどの状態にも属さない新規カテゴリーが生成される場合がある。その場合は、未知とし、支援ツール910を介してユーザにその情報を提示する。後にこの状態が正常あるいは異常の判定が決まれば、診断結果データベース480内の診断結果が置き換わる。以後、同様のカテゴリーが発生した場合には、本結果に基づいて診断結果が出力される。
【0071】
以上、本発明装置が適用されるプラントとして発電プラントの構成について説明した。また要素モデル用テーブル、総合モデル用テーブルの具体事例について、この場合のプロセス量の例で説明した。この内容を理解した上で、次に要素モデル作成部420の処理内容について説明する。
【0072】
図8は、要素モデル作成部420での動作を示すフローチャートである。はじめにステップS421で、新規に作成するモデルなのか既存のモデルに修正を加えるのかを判断をする。新規に作成する場合はステップS422に、そうでない場合はステップS425に進む。
【0073】
なお、モデルの新規作成或いは修正は、発電プラント100に関わるユーザである例えば操作員が、入力装置900から与える指示内容により判明する。従って、モデルの改変に関する指示がユーザから与えられていないときには、図8の処理は実行されない。ユーザは、発電プラント100の改変に応じて、モデル改変の指示を与える。モデル改変指示の具体手法は図12を用いて後述する。
【0074】
モデル改変の指示が新規作成である場合、ステップS422では、図4に格納されている過去のプロセス信号を用いて、新たなARTモデルを作成する。その後、ステップS423にて、作成したARTモデルの情報をモデル情報データベース450に格納する。この結果作成され、モデル情報データベース450に格納された新規のARTモデルが、例えば図5の主蒸気モデルE−001であり、給水流量と主蒸気温度で定まる要素モデルである。
【0075】
ステップS424では、対応する監視項目全てのモデル構築が完了したかを判断する。全て完了していれば終了となり、未完であればステップS421に戻り、それ以降のステップを全ての監視項目用モデルが構築されるまで繰り返す。
【0076】
モデル改変の指示が既存モデルの修正である場合、ステップS425では、既存モデルの入力変数が追加されたのか削除されたのかを判断する。追加されていればステップS426へ、削除されていればステップS427に進む。
【0077】
入力変数が追加されたときのステップS426では、既存モデルに追加された変数のみを用いてARTによる診断モデルを作成する。ここでは、既存モデルが図5の主蒸気モデルE−001であり、追加された変数がPID152(主蒸気の圧力計測器152)であったとする。このため、ステップS426では、追加された変数PID152のみを用いてARTによる診断モデルを作成する。完了後、ステップS423(作成したARTモデルの情報をモデル情報データベース450に格納)、ステップS424(すべての監視項目に対応したか確認)と進む。
【0078】
なお、ステップS423では、既存のモデル番号E−001と追加されたモデル番号(PID152とする)を、図5のモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430の入力モデル欄に格納する。
【0079】
既存モデルの入力変数が削除されたときのステップS427では、変更のない入力変数はそのままとし、削除された変数には一定値、ここでは0.5を入力する。ただし、本実施例では、ARTモデルの入力変数は、全て規格化されているとする。つまり、最大値を「1」とし最小値を「0」とする範囲の値として把握されている。従って、0.5を入力するということは、中間値のまま変動しない値として以後取り扱うことを意味する。
【0080】
ここでは既存モデルが図5の主蒸気モデルE−001であり、削除された変数がPID151(主蒸気の温度計測器151)であったとする。この場合、PID151には0.5が入力されるので、以後の主蒸気モデルE−001は事実上入力変数PID150の給水流量でのみ定まるモデルとして取り扱われる。
【0081】
ステップS428では、削除された信号PID151を0.5の一定値としたことを受けて、既存のカテゴリーを今回のモデル用のカテゴリーに変換する。なお図5の主蒸気モデルE−001では21個のカテゴリーが存在するので、これが変換の対象となる。この変換のために、図7の診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460を参照し、主蒸気モデルE−001の欄に格納されているカテゴリー番号に対する時刻と、そのモデルに入力されている変数のPID情報を用いて、プロセス計算機300に保存されている各入力変数の時系列データを取り出す。
【0082】
この事例の場合には、カテゴリー番号「1」に対する時刻「2010/01/0100:00:00」と、主蒸気モデルE−001に入力されている変数のPID情報(PID150,PID151)を用いて、図4を参照し、プロセス計算機300に保存されている各入力変数(PID150,PID151)の時系列データを取り出す。この時系列データをARTモデルに入力する。この操作を全てのカテゴリー(21個)に対し実施する。全てのカテゴリーに対し実施後、これまで同様に、ステップS423、ステップS424に進む。
【0083】
なお、同一モデルで追加と削除があった場合は、ステップS425で先に追加側のフローチャートを実行し、ステップS424で再度ステップS421に戻り、再び、ステップS425で削除のフローチャートを実行する。
【0084】
図9は、統合モデル作成部430での動作を示すフローチャートである。はじめにステップS431で要素モデルが新規作成されたものかどうかを判断する。新規作成であればステップS436へ、そうでなければ(要素モデルの改変がある場合)ステップS432に進む。なお、新規作成の場合、統合モデル作成部430として処理すべき処理は何も無いので、ステップS436経由でステップS431に移り他の項目について判断するか、或いは処理終了とする。
【0085】
要素モデルの改変がある場合、ステップS432では、入力変数の状態を判断する。追加されていればステップS433へ、そうでなければ(入力変数削除の場合)ステップS436に進む。なお、入力変数削除の場合、統合モデル作成部430として処理すべき処理は何も無いので、ステップS436経由でステップS431に移り他の項目について判断するか、或いは処理終了とする。
【0086】
ステップS433では、要素モデル作成時に、既存モデルと新規に作成された追加モデルに入力したプロセス信号を再度入力する。例えば図8の追加事例処理(ステップS425)では、既存モデル(主蒸気モデルE−001)にPID152を追加したが、これらに関連するプロセス信号として、給水流量PID150と主蒸気温度PID151と主蒸気圧力PID152を、図4を参照して再度入力する。なお、図8のステップS423の処理では、既存のモデル番号E−001と追加されたモデル番号(PID152とする)を、図5のモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430の入力モデル欄に格納している。
【0087】
ステップS434では、前述したモデルから出力されたカテゴリー番号を入力変数とするARTモデルを構築する。例えば入力されたカテゴリー番号の組合せを新カテゴリーに分類し、これを統合モデルとする。
【0088】
具体的には、既存のモデル番号E−001について10のカテゴリー番号(A0からA9)が存在し、追加されたモデル番号PID152について5のカテゴリー番号(B0からB4)が存在したとする。この場合に、A0(正常)とB0(正常)の組み合わせが共に正常であれば新たなカテゴリー番号をC0「正常」と定義する。またA0(正常)、B1(異常)であれば新たなカテゴリー番号をC1「異常」と定義する。この操作を最終の組み合わせまで実行して新たな一群のカテゴリー番号を有するモデルを統合モデルとして統合モデル用テーブルTB430に保持する。
【0089】
なお、計測器などの新設が生じた場合に、全てのプロセス信号についての新たなモデルを再度全作成することも可能であるが、例えば過去1年分の入力データを参照するにしても膨大な量のデータを取り扱うことになる。
【0090】
この点、本発明では過去1年分の入力データを参照しモデル化し、カテゴリー番号を新たに得るのは、追加された入力変数のみである。既設の要素モデルはカテゴリー番号に着目しているので、過去1年分の入力データ量が複数のカテゴリー番号に集約されている。
【0091】
モデル作成が完了するとステップS436に進む。ステップS436では、全ての監視項目に対して対応したのかを判断する。未完であればステップS431に戻り、全ての項目が完了するまで繰り返す。完了していれば終了となる。
【0092】
次に、要素診断部460と統合診断部470のアルゴリズムのフローチャートを図10に示す。ここでは、初めにステップS461で、各要素モデルの情報をモデル情報データベース450の要素モデル用テーブルTB420からロードする。次にステップS462では、各統合モデルの情報をモデル情報データベース450の統合モデル用テーブルTB430からロードする。これにより、図5、図6のデータが要素診断部460に提供された。
【0093】
ステップS463では、要素モデルのみでの診断か統合モデルを含めての診断かを判断する。要素モデルでの診断のみの場合は、ステップS464へ、統合モデルでの診断を必要とする場合はステップS466へ進む。
【0094】
ステップS464では、各要素モデルでの診断を実施する。これは要素モデル用テーブルTB420の診断を実施することである。ステップS465では、要素モデルの診断結果を、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460に格納する。
【0095】
一方、ステップS466では、まず各要素モデルでの診断を実施する。これは統合モデル用テーブルTB430内の各要素モデルの診断を実施することである。例えば主蒸気ループモデルT−001の場合には、要素モデルE−001と追加モデルPID152のそれぞれについて診断する。要素モデルの診断結果は、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460に格納される。
【0096】
ステップS467では、診断結果データベース480の要素モデル用テーブルTB460を参照し、各要素モデルから出力されたカテゴリー番号を入力として診断をする。
【0097】
ステップS468では、診断結果を診断結果データベース480の統合モデル用テーブルTB480に格納する。
【0098】
その後、ステップS469にて、全ての監視項目に対し診断を実施したのかを判断する。未完であればステップS461に戻り、全ての監視項目が完了するまで繰り返す。完了した後、終了となる。
【0099】
このフローチャートにおいて、ステップS467とステップS468が統合診断部470での動作となり、その他のステップSは、要素診断部460で実施される。
【0100】
外部出力インターフェイス490では、それぞれの診断結果を出力結果として、支援ツール910に送る。
【0101】
次に、ユーザが支援ツール910を用いて、画像表示装置950に制御信号20、プロセス信号30、診断結果40やモデル情報データベース450および診断結果480の情報を表示させる方法について説明する。
【0102】
図11〜図15は、画像表示装置950に表示される画面例である。ユーザーは、キーボード901、マウス902を用いてこれら画面90の空欄となっている箇所にパラメータ値を入力するなどの操作を実行する。
【0103】
まず図11は、画像表示装置950に表示される初期画面である。画面90には初期画面として、診断モデル作成ボタン951と診断結果表示ボタン952とが表示され、ユーザーは、これらの中から必要なボタンを選択し、マウス902を用いてカーソル953を移動させ、マウス902をクリックすることにより所望の画面を表示させる。
【0104】
図12は、初期画面において診断モデル作成ボタン951を選択したときに表示される要素モデルおよび統合モデルの設定画面である。画面90の上部欄には当該画面が表示情報設定用の画面であることが表示される。また、画面90の各部には以下に説明する欄が形成表示されており、これらの欄にデータ入力し、あるいはボタン選定することにより、モデルの設定を行う。
【0105】
プロセス信号表示欄961では、ユーザーは、診断モデルに入力させたい計測信号、あるいは操作信号を入力欄961に、そのレンジ(上限/下限)と共に入力する。図示の例では計測信号として主蒸気流量をボタン選択し、その上限値として300(kg/s)、下限値として0(kg/s)を数値入力する。なお単位(kg/s)は、計測信号として主蒸気流量をボタン選択したことに伴いデフォルト表示される。
【0106】
また、診断モデルに主蒸気流量を追加するに際し、モデル作成に使用する表示させたい時間帯を時刻入力欄962に入力する。図示の例では、2010/01/01の1日間を開始、終了時刻として設定した。
【0107】
画面90上で、表示ボタン963をクリックすることにより、図13のようにトレンドグラフが画像表示装置950に表示される。図13の例では複数の各種プロセス量の時間的な変動の様子が表示できる。図13の戻るボタン971をクリックすることにより、図12の画面に戻る。
【0108】
図12の要素モデル作成表示欄964には、要素モデル作成に必要であるモデル番号、モデル名称、入力変数などが表示される。要素モデル作成表示欄964の右側には新規ボタン965と修正ボタン966が表示されている。
【0109】
このうち、新規ボタン965を押すと要素モデル作成表示欄964が空白表示されて入力状態になり、ユーザの手入力により新規モデルを作成することが出来る。
【0110】
図示の要素モデル作成表示欄964は、修正ボタン966を選択したときの画面の一例を表示している。図示はモデル番号E−001,モデル名称が主蒸気モデル、入力変数がPID150,PID151の例である。
【0111】
なお、新規のモデル作成は、既存モデルをベースに修正するのが早道であり、この場合は、対象となるモデルを表示し、修正ボタン966を押した後、修正するのがよい。そのため、既存モデルを検索できるように検索キー入力欄967が設定されており、検索キーを入力した後、検索ボタン968を押すと対象となるモデルの情報が要素モデル表示欄964に表示される。
【0112】
統合モデル作成表示欄974も基本的には要素モデル作成表示欄964と同様に構成されている。統合モデル表示欄974では、統合モデル作成に必要であるモデル番号、モデル名称、入力モデルなどが表示される。新規ボタン975を押すと統合モデル表示欄974が入力状態になり、新規モデルを作成することが出来る。既存モデルをベースに修正する場合は、対象となるモデルを表示し、修正ボタン976を押した後、修正する。既モデルを検索できるよう、検索キー入力欄977があり、検索キーを入力した後、検索ボタン978を押すと対象となるモデルの情報が統合モデル表示欄974に表示される。
【0113】
以上の設定後、作成ボタン992を押すことで、それぞれのモデルが作成される。
図12において、戻るボタン969をクリックすることにより、図11の画面に戻ることができる。
【0114】
図14は、診断結果を画像表示装置950に表示させるための設定画面90である。図11の初期画面において診断結果表示ボタン952をクリックすることにより、図14の画面が表示される。図14の画面90の上部欄には、当該画面が診断結果表示設定用の画面であることが表示される。また、画面90の各部には以下に説明する欄が形成表示されており、これらの欄にデータ入力し、あるいはボタン選定することにより、モデルの設定を行う。
【0115】
プロセス信号選択欄981では、ユーザーは、画像表示装置950の画面90に表示させたい計測信号、あるいは操作信号を入力欄981に、そのレンジ(上限/下限)と共に入力する。図示の例では、発電機出力と主蒸気流量をそのレンジ(上限/下限)と共に入力したときの画面を表示している。
【0116】
また、表示させたい時間を時刻入力欄982に入力する。表示させたいプロセス信号が決定したら、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。
【0117】
要素モデル選択欄983では、図12の表示情報設定画面と同様に、モデル番号、モデル名称、入力変数などが表示される。表示させたいモデルを検索するために、検索キー入力欄984がある。検索キーを入力後、検索ボタン985を押して検索する。検索結果は、要素モデル選択欄983に表示され、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。図示の例ではモデルE−001のケースを表示している。
【0118】
また、統合モデル選択欄986も基本的には要素モデル選択欄983と同様に構成されている。統合モデル選択欄986では、モデル番号、モデル名称、入力モデルなどが表示される。表示させたいモデルを検索するために、検索キー入力欄987がある。検索キーを入力後、検索ボタン988を押して検索する。検索結果は、要素モデル選択欄986に表示され、選択欄をクリックすることでチェックされ選択が決定される。図示の例ではモデルT−001のケースを表示している。
【0119】
以上の入力或いは選択をした後に、表示ボタン989をクリックすることにより、図15のようにトレンドグラフが画像表示装置950の画面90に表示される。図15の例では、プロセス信号選択欄981で選択した発電機出力と主蒸気流量の時間的変動が対比的に表示される。また、選択した要素モデルE−001あるいは統合モデルT−001と新たに追加した入力変数PID152について、カテゴリー番号ごとに、時系列的に表示する。図15にあるように、新規カテゴリーが発生するとトレンド画面上の概要部分が別の色で強調されるなどしてユーザに知らせる。図15の戻るボタン991をクリックすることにより、図14の設定画面に戻る。図14の戻るボタン999を押すと図11の初期画面に戻る。
【0120】
診断結果の表示画面例として図15を示したが、その他、診断対象となるプラントの系統図を示し、新規カテゴリーが発生した場合、その箇所がハイライトされ、該当箇所をクリックすると、図15に示したトレンド表示がされるという表示手法も考えられる。
【0121】
なお、プラント診断装置400にモデル情報データベース450と診断結果データベース480を含めた実施例を示したが、それぞれ、プラント診断装置400に含めず、別のハードウェアとする実施例も可能である。
【0122】
以下では、発電プラント100に、本発明のプロセス診断方法及び装置の結果をもとにプラントの異常・予兆診断へ適用することの効果について説明する。
【0123】
本発明のプラントの診断方法を発電プラントの異常・予兆診断に適用すると、運用中設備の一部交換や補修で、診断モデルを修正する場合、これまで蓄積した診断データをそのまま活用しながら、診断をすることができる。その結果、診断モデルの再構築が容易に実施でき、これまでの実績を活用することで、より異常や予兆の傾向を検出することが可能である。
【0124】
また運転員に対しても要素モデルと統合モデルの両結果をトレンド表示するため、目視による監視がより一層容易になる。さらに、複数診断モデルを統合モデルでまとめる階層型にすることにより、発電プラントの対象をより広範囲に診断できるモデルが容易に構成できる。
【符号の説明】
【0125】
100:発電プラント
200:監視制御装置
300:プロセス計算機
400:プラント診断装置
410:外部入力インターファイル
420:要素モデル作成部
430:統合モデル作成部
450:モデル情報データベース
460:要素診断部
470:統合診断部
480:診断結果データベース
490:外部出力インターフェイス
900:入力装置
901:キーボード
902:マウス
910:支援ツール
920:外部入力インターフェイス
930:データ送受信処理部
940:外部出力インターフェイス
950:画像表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを前記入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、
前記プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じた前記のモデルについて、該モデルの前記カテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルに入力変数が追加された場合には、追加した入力変数だけで診断モデルを構築し、既存のモデルから得られるカテゴリー番号と前記追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号のモデルを生成することを特徴としたプラントの診断方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行するとともに、削除処理は前記の追加処理終了後に行うことを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項5】
監視対象から得られる入力変数の相関関係をモデル化し、モデルに入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常や予兆の兆候を検知するためのプラントの診断方法において、
第1の入力変数の相関関係をモデル化して要素モデルとして保持し、前記第1の入力変数の相関関係に応じて入力されたデータを複数のカテゴリーに分類するとともに、追加された第2の入力変数についてもその相関関係をモデル化して、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、前記要素モデルと前記モデル化された第2の入力変数による統合モデルを形成することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラントの診断方法において、
前記統合モデルは、前記要素モデルのカテゴリーと、前記モデル化された第2の入力変数のカテゴリーの組み合わせで定まる新カテゴリーを含むことを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項7】
監視対象を制御する監視制御装置からの制御信号や、前記監視対象のプロセス信号を入力するプロセス計算機から得られる計測信号をもとに前記監視対象の異常を検知するプラントの診断装置において、
入力した信号の相関関係をモデル化して要素モデルを作成し、要素モデルに入力されたデータを前記入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する要素モデル部、少なくとも1つ以上の要素モデルを含む統合モデルを備え、統合モデルに入力されたデータを前記入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する統合モデル部とを備え、前記制御対象の改修に応じて前記入力信号の追加を生じた前記の要素モデルについて、追加した入力信号だけで診断モデルを構築し、既存の要素モデルから得られるカテゴリー番号と前記追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号を生成して得たモデルを統合モデルとして前記統合モデル部に格納することを特徴とするプラントの診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラントの診断装置において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行することを特徴とするプラントの診断装置。
【請求項1】
入力変数の相関関係をモデル化したモデルを保持し、入力されたデータを前記入力変数の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知するプラントの診断方法において、
前記プラントの改修に応じて入力変数の追加または削除の見直しを生じた前記のモデルについて、該モデルの前記カテゴリー番号を利用した見直しにより新モデルを構築することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルに入力変数が追加された場合には、追加した入力変数だけで診断モデルを構築し、既存のモデルから得られるカテゴリー番号と前記追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号のモデルを生成することを特徴としたプラントの診断方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプラントの診断方法において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行するとともに、削除処理は前記の追加処理終了後に行うことを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項5】
監視対象から得られる入力変数の相関関係をモデル化し、モデルに入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常や予兆の兆候を検知するためのプラントの診断方法において、
第1の入力変数の相関関係をモデル化して要素モデルとして保持し、前記第1の入力変数の相関関係に応じて入力されたデータを複数のカテゴリーに分類するとともに、追加された第2の入力変数についてもその相関関係をモデル化して、入力されたデータを複数のカテゴリーに分類し、前記要素モデルと前記モデル化された第2の入力変数による統合モデルを形成することを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラントの診断方法において、
前記統合モデルは、前記要素モデルのカテゴリーと、前記モデル化された第2の入力変数のカテゴリーの組み合わせで定まる新カテゴリーを含むことを特徴とするプラントの診断方法。
【請求項7】
監視対象を制御する監視制御装置からの制御信号や、前記監視対象のプロセス信号を入力するプロセス計算機から得られる計測信号をもとに前記監視対象の異常を検知するプラントの診断装置において、
入力した信号の相関関係をモデル化して要素モデルを作成し、要素モデルに入力されたデータを前記入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する要素モデル部、少なくとも1つ以上の要素モデルを含む統合モデルを備え、統合モデルに入力されたデータを前記入力信号の相関関係に応じて複数のカテゴリーに分類するとともに、分類された正常カテゴリーに属さないカテゴリーの生成に応じてプラントの異常を検知する統合モデル部とを備え、前記制御対象の改修に応じて前記入力信号の追加を生じた前記の要素モデルについて、追加した入力信号だけで診断モデルを構築し、既存の要素モデルから得られるカテゴリー番号と前記追加した診断モデルから得られるカテゴリー番号から新たなカテゴリー番号を生成して得たモデルを統合モデルとして前記統合モデル部に格納することを特徴とするプラントの診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラントの診断装置において、
既存のモデルから入力変数が削除された場合には、規格化されて入力された入力変数のうち削除する入力変数の値を一定値とし、当該モデルのカテゴリー番号における各入力変数の時系列データを用いてモデルの見直しを実行することを特徴とするプラントの診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−25461(P2013−25461A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157924(P2011−157924)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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