説明

プラントシミュレーションシステムおよびシミュレーション監視方法

【課題】トラッキングシミュレータの状態を適切に管理することができるプラントシミュレーションシステム等を提供する。
【解決手段】第2の取得手段により取得されるパラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示し、第1の取得手段により取得されるシミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、パラメータ調整手段によるパラメータの更新を行わずにシミュレータはトラッキングモデルによるシミュレーションを継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、を備えるプラントシミュレーションシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントから逐次、データをオンラインで取得し、リアルタイムにダイナミックシミュレータでプラントの状態を忠実に再現するトラッキングシミュレータと呼ばれるシステムが開発されている。このシステムでは、実プラントから主要な運転操作量や計測値を取り込んで、トラッキングモデルを用いた計算を行うことでプラントの状態をリアルタイムに算出する。また、トラッキングモデルに基づく演算結果と、実プラントにおける実際の状態とを比較することで、トラッキングモデルのパラメータや変数を逐次、調整する。このような演算処理を実プラントの運転と同時並行して行うことで、実プラントの動きに追随するシミュレーションを可能としている。シミュレーションに用いられるトラッキングモデルは化学工学に基づく厳密モデルを組み合わせて構成されているため、シミュレーションにより単に表面的な動きだけでなくプロセス内部の細かな状態を含めた実プラントの状況を推定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】石建信、他3名,「トラッキング・シミュレータによるプラントの運転革新」,横河技報,横河電機株式会社,2008年1月21日,Vol.52,No.1,p.35−38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にシミュレータは不適切な入力値や想定外の入力状態によって計算異常を起こすことがあり、異常が軽微なものであれば一時的な計算値の乱れを生ずるだけで正常な状態に復帰するが、計算が発散してシミュレータが停止してしまうこともありうる。実プラントをシミュレーションするトラッキングシミュレータも例外ではなく、実プラントから取り込まれるデータになんらかの異常があれば、計算異常を起こして計算が停止するおそれがある。トラッキングシミュレータは、プラント操業を支援するためのシステムとして、通常、操作室や計器室でプラントを操業するユーザが利用するものであり、ユーザ自身がトラブルの原因解析を行ってトラッキングシミュレータを復旧させることは困難である。
【0005】
本発明の目的は、トラッキングシミュレータの状態を適切に管理することができるプラントシミュレーションシステム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラントシミュレーションシステムは、実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、を備えるプラントシミュレーションシステムにおいて、前記シミュレータにおけるシミュレーションの計算結果ステータスを取得する第1の取得手段と、前記パラメータ調整手段におけるパラメータ調整の実行結果ステータスを取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示す場合には、その旨を通知する通知手段と、を備え、前記第2の取得手段により取得される前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示し、前記第1の取得手段により取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、前記パラメータ調整手段による前記パラメータの更新を行わずに前記シミュレータは前記トラッキングモデルによるシミュレーションを継続することを特徴とする。
このプラントシミュレーションシステムによれば、シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、パラメータ調整手段によるパラメータの更新を行わずにシミュレータはトラッキングモデルによるシミュレーションを継続するので、いたずらにシミュレーションが中断される事態を効果的に防止できる。
【0007】
前記第2の取得手段による前記パラメータ調整の実行結果ステータスの取得頻度は、前記第1の取得手段による前記シミュレーションの計算結果ステータスを取得する頻度よりも低くてもよい。
【0008】
前記通知手段は、前記第2の取得手段により取得された前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示す回数が所定の複数回数に到達した場合にその旨を示す通知を行ってもよい。
【0009】
前記第1の取得手段は前記シミュレーションの計算結果ステータスを公衆回線を介して取得し、前記第2の取得手段は前記パラメータ調整の実行結果ステータスを公衆回線を介して取得してもよい。
【0010】
本発明のシミュレーション監視方法は、実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、を備えるプラントシミュレーションシステムを監視するシミュレーション監視方法において、前記シミュレータにおけるシミュレーションの計算結果ステータスを取得する第1の取得ステップと、前記パラメータ調整手段におけるパラメータ調整の実行結果ステータスを取得する第2の取得ステップと、前記第1の取得ステップにより取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示す場合には、その旨を通知する通知ステップと、を備え、前記第2の取得ステップにより取得される前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示し、前記第1の取得ステップにより取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、前記パラメータ調整手段による前記パラメータの更新を行わずに前記シミュレータは前記トラッキングモデルによるシミュレーションを継続することを特徴とする。
このシミュレーション監視方法によれば、シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、パラメータ調整手段によるパラメータの更新を行わずにシミュレータはトラッキングモデルによるシミュレーションを継続するので、いたずらにシミュレーションが中断される事態を効果的に防止できる。
【0011】
前記第2の取得ステップによる前記パラメータ調整の実行結果ステータスの取得頻度は、前記第1の取得ステップによる前記シミュレーションの計算結果ステータスを取得する頻度よりも低くてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプラントシミュレーションシステムによれば、シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、パラメータ調整手段によるパラメータの更新を行わずにシミュレータはトラッキングモデルによるシミュレーションを継続するので、いたずらにシミュレーションが中断される事態を効果的に防止できる。
【0013】
本発明のシミュレーション監視方法によれば、シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、パラメータ調整手段によるパラメータの更新を行わずにシミュレータはトラッキングモデルによるシミュレーションを継続するので、いたずらにシミュレーションが中断される事態を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のプラントシミュレーションシステムの構成を示すブロック図。
【図2】トラッキングシミュレータの監視機能の動作を示すフローチャート。
【図3】監視側端末装置の情報処理部における動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるプラントシミュレーションシステムの実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のプラントシミュレーションシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のプラントシミュレーションシステムは、稼働中のプラント10から取得されるデータに基づいてリアルタイムにプラント10の状態をシミュレーションするトラッキングシミュレータ1と、ネットワーク3を介して遠隔地からトラッキングシミュレータ1の状態を監視するための監視側端末装置2、とを備える。ネットワーク3は、公衆回線あるいは専用回線により構成することができる。
【0018】
監視側端末装置2は、例えば、プラント10ないしトラッキングシミュレータ1の開発者、提供者などにより管理される。また、複数のトラッキングシミュレータあるいは複数プラントに設けられたトラッキングシミュレータ群を、ネットワーク3を介して共通の監視側端末装置2に接続することができる。この場合、1つの監視側端末装置2により複数のトラッキングシミュレータが監視可能となる。
【0019】
図1に示すようにトラッキングシミュレータ1には、プラント10から取得される運転操作量や状態測定値などのデータに基づいてプラントの状態をリアルタイムに算出するトラッキングモデル11と、同定モデルおよび解析モデルを含んで構成されるアプリケーションモデル12と、トラッキングモデル11およびアプリケーションモデル12による計算結果を監視する監視機能13と、が実装されている。
【0020】
トラッキングモデル11は、化学工学に基づく厳密モデルを組み合わせて構成されているため、シミュレーションによりプラント10でのプロセスにおける計測可能なプロセス値だけでなく、計測不可能なプロセス内部の細かな状態を含めて計算することができる。
【0021】
アプリケーションモデル12の同定モデルは、トラッキングモデル11の各種パラメータや各種変数を調整するためのモデルである。同定モデルによりトラッキングモデル11による計算結果とプラント10における実際の状態とが一致するようにトラッキングモデル11のパラメータ等が適時調整されることで、トラッキングモデル11による正確なトラッキングシミュレーションが可能となる。
【0022】
また、解析モデルは、トラッキングモデル11による計算結果の解析等を行うためのモデルであり、このモデルによりプロセス状態の予測やプロセスの最適化のための計算を行うことができる。
【0023】
一方、図1に示すように、監視側端末装置2には、ネットワーク3を介する通信処理を実行する通信部21と、通信部21を介して取得されたデータに基づいてトラッキングシミュレータ1の監視処理を実行する情報処理部22と、情報処理部22における情報処理に基づいてトラッキングシミュレータ1の異常を通知する通知部23と、オフライン解析等を行う操作者の操作を受け付ける受付部24と、を具備する。
【0024】
次に、図2〜図3を参照して、本実施形態のプラントシミュレーションシステムの動作について説明する。
【0025】
図2は、トラッキングシミュレータ1の監視機能13の動作を示すフローチャートである。図2のステップS1〜ステップS8は、監視機能13によるトラッキングモデル11に対する監視手順を示している。
【0026】
図2のステップS1では、トラッキングモデル11から監視に必要なデータ群を取得する。このデータ群には、トラッキングモデル11によりプラント1から取得された運転操作量や計測値などのデータ、トラッキングモデル11により計算される各種の計算値、その他トラッキングモデル11において実行されている計算の状況が含まれる。
【0027】
次に、ステップS2では、トラッキングモデル11によりプラント1から取得された運転操作量や計測値などのデータに異常があるか否か判断し、判断が肯定されればステップS5へ進み、判断が否定されればステップS3へ進む。ステップS2の判断が肯定される場合として、例えば、プラント1から取得された運転操作量や状態測定値が、想定外の値となっている場合が挙げられる。なお、このような場合には、アプリケーションモデル12の同定モデルによるトラッキングモデル11の各種パラメータの調整が中止され、パラメータの更新が停止される。
【0028】
ステップS3では、トラッキングモデル11による計算結果(計算値)がプラント1から取得された計測値から大きく(例えば、一定値以上)乖離しているか否か判断し、判断が肯定されればステップS5へ進み、判断が否定されればステップS4へ進む。
【0029】
ステップS4では、トラッキングモデル11による計算結果(計算値)に急激な変動(例えば、想定を越える急激な変動)があるか否か判断し、判断が肯定されればステップS5へ進み、判断が否定されればステップS6へ進む。
【0030】
ステップS5では、監視機能13からネットワーク3を介してトラッキングモデル11のステータスが「警告」ステータスにある旨の発報を行い、ステップS6へ進む。なお、この発報はネットワーク3を介して監視側端末装置2において受信される。
【0031】
ステップS6では、トラッキングモデル11における計算において、ゼロ割(ゼロでの割り算が必要となる状態)の発生があるか否か判断し、判断が肯定されればステップS8へ進み、判断が否定されればステップS7へ進む。
【0032】
ステップS7では、トラッキングモデル11における計算において、計算が発散したか否か判断し、判断が肯定されればステップS8へ進み、判断が否定されればステップS1へ戻る。
【0033】
ステップS8では、監視機能13からネットワーク3を介してトラッキングモデル11のステータスが「異常」ステータスにある旨の発報を行い、ステップS1へ戻る。この「異常」ステータスは、トラッキングモデル11が「警告」ステータスよりも重篤な状態であることを示している。なお、この発報はネットワーク3を介して監視側端末装置2において受信される。
【0034】
このように、ステップS1〜ステップS8では、ゼロ割の発生(ステップS6)および計算の発散(ステップS7)という、計算の継続が不可能となる重篤な事象の発生時に「異常」ステータスを発報(ステップS8)する。また、「異常」ステータスほど重大ではないが、「異常」ステータスに至る可能性がある場合として、プラント1から取得された運転操作量や計測値などのデータに異常(ステップS2)がある場合、トラッキングモデル11による計算値がプラント1から取得された計測値から乖離(ステップS3)した場合、およびトラッキングモデル11による計算結果(計算値)に急激な変動(ステップS4)がある場合には、それぞれ「警告」ステータスを発報(ステップS5)する。
【0035】
次に、図2のステップS11〜ステップS14は、監視機能13によるアプリケーションモデル12に対する監視手順を示している。
【0036】
図2のステップS11では、アプリケーションモデル12から監視に必要な各種データを取得する。
【0037】
次に、ステップS12では、アプリケーションモデル12から取得されたデータ群に基づき、アプリケーションにおける計算が発散したか否か判断し、判断が肯定されればステップS14へ進み、判断が否定されればステップS13へ進む。ここでは、例えば、同定モデルによる、トラッキングモデル11に適用されるパラメータの計算が発散した場合に、ステップS12の判断が肯定される。
【0038】
ステップS13では、アプリケーションモデル12から取得されたデータ群に基づき、アプリケーションにおける計算が所定時間収束していない状態が継続しているか否か判断し、判断が肯定されればステップS14へ進み、判断が否定されればステップS11へ戻る。ここでは、例えば、同定モデルにおける、トラッキングモデル11に適用されるパラメータの計算が所定時間にわたり収束していない場合に、ステップS13の判断が肯定される。
【0039】
ステップS14では、監視機能13からネットワーク3を介してアプリケーションモデル12のステータスが「異常」ステータスにある旨の発報を行い、ステップS11へ戻る。なお、この発報はネットワーク3を介して監視側端末装置2において受信される。また、ステップS14では、「異常」ステータスおよびその時のエラーの内容等を示すエラー情報をアプリケーションの実行時刻情報(タイムスタンプ)とともにデータベース15に格納する。
【0040】
このように、ステップS11〜ステップS14では、アプリケーションにおける計算が発散(ステップS12)し、あるいは所定時間収束していない(ステップS13)場合に、アプリケーションモデル12の「異常」ステータスを発報する(ステップS14)。
【0041】
図3は、監視側端末装置2の情報処理部22における動作を示すフローチャートである。
【0042】
図3のステップS21では、トラッキングシミュレータ1からネットワーク3を経由して送信されてきたステータスを、通信部21を介して取得する。このステータスには、図2のフローチャートにおいて示したトラッキングモデル11についての「警告」ステータス、トラッキングモデル11についての「異常」ステータス、およびアプリケーションモデル12についての「異常」ステータスを含んでいる。
【0043】
次に、ステップS22では、トラッキングモデル11についての「異常」ステータスが取得されているか否か判断し、判断が肯定されればステップS27へ進み、判断が否定されればステップS23へ進む。
【0044】
ステップS23では、トラッキングモデル11についての「警告」ステータスが所定時間継続して取得されているか判断し、判断が肯定されればステップS27へ進み、判断が否定されればステップS24へ進む。
【0045】
ステップS24では、アプリケーションモデル12についての「異常」ステータスが取得されたか否か判断し、判断が肯定されればステップS25へ進み、判断が否定されればステップS21へ戻る。
【0046】
ステップS25では、アプリケーションモデル12についての「異常」ステータスの検知回数をカウントアップする。次に、ステップS26では、アプリケーションモデル12についての「異常」ステータスの検知回数(ステップS25)が所定回数に到達したか否か判断し、判断が肯定されればアプリケーションモデル12についての「異常」ステータスの検知回数(ステップS25)をゼロにリセットしてステップS27へ進み、判断が否定されればステップS1へ戻る。
【0047】
ステップS27では、情報処理部22は通知部23を介してアラームを通知し、ステップS1へ戻る。
【0048】
このように監視側端末装置2ではトラッキングモデル11のステータスチェックを常時、行なっており、「警告」ステータスが一定時間継続するか、あるいは「異常」ステータスが取得された場合には、アラームによる通知を行なっている。この場合には、監視側の担当者が受付部24に対する操作を行うことにより、ネットワーク3を介してトラッキングシミュレータ1にアクセスし、不具合の状況を確認することができる。この場合例えば、トラッキングモデル11が「異常」ステータスとなり計算が停止している場合には、現在の状態に近い初期状態ファイルを用いてシミュレーション動作を復旧させるとともに、不具合が起きたモデルとデータを収集し、監視側端末装置2においてオフライン解析を行い、原因を特定することができる。また、原因特定の結果、モデルの修正を行う必要がある場合には、受付部24に対する操作によりモデルの修正を行い、ネットワーク3を介してトラッキングモデル11のモデルを入れ替えることができる。
【0049】
また、上記のように監視側端末装置2ではアプリケーションモデルの実行結果ステータスの監視も行なっているが、トラッキングモデル11で異常が発生した場合ほど緊急性が高くないので、「異常」ステータスの発生件数があらかじめ設定した件数を超えた場合のみアラームで通知するようにしている。このため、アプリケーションモデル12の異常に対応するアラーム通知の頻度は、トラッキングモデル11の異常に対応するアラーム通知の頻度よりも低くなる。
【0050】
アプリケーションモデル12についてアラームの通知があった場合には、監視側の担当者が受付部24に対する操作を行うことにより、ネットワーク3を介して状況を確認し、不具合の状況を確認することができる。また、ネットワーク3を介してデータベース15にアクセスしてエラー情報をオフライン解析することができる。アプリケーションモデルの計算の収束性が悪いことが分かった場合には、受付部24に対する操作により、モデルを変更し、ネットワーク3を介してアプリケーションモデル12のモデルを入れ替えることができる。
【0051】
なお、アプリケーションモデルの実行結果ステータスの監視の頻度自体をトラッキングモデル11の監視頻度よりも低く設定してもよい。例えば、アプリケーションモデルのステータスを所定時間ごと(例えば24時間ごと)にネットワーク3を介して監視側端末装置2の側に取得するようにしてもよい。この場合、アプリケーションモデルのステータスの履歴をトラッキングシミュレータ1の側で保存し、この履歴を所定時間ごとに監視側端末装置2に向けて送信してもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態のプラントシミュレーションシステムによれば、オンラインで動作しているモデルからステータスを取得し、そのステータスを常に監視することで、異常をいち早く検知することが可能となる。
【0053】
また、アプリケーションの実行結果ステータスを監視することで、アプリケーションが正常に動作していない場合の状況を把握し、対応することができる。
【0054】
また、遠隔からの監視や異常に対応するための操作が可能となるため、モデルに異常が発生した際に、システムが動いている現場に行かなくてもシステムの状況を把握し、迅速な対応を可能とすることができる。したがって、異常発生時であってもトラッキングシミュレータ1が使用できない時間を短縮することができる。
【0055】
さらに、遠隔で操作を行えるため、システムのユーザに異常データの送付を依頼するなどの必要もなく、ユーザの負担を大幅に軽減できる。
【0056】
また、本実施形態のプラントシミュレーションシステムでは、アプリケーションモデル12の同定モデルによる計算が不能となった場合(「異常」ステータスの場合)であっても、トラッキングモデル11のパラメータの調整、更新を停止した状態のままトラッキングシミュレーションが継続されるため、いたずらにシミュレーションが中断される事態を効果的に防止できる。また、ステータスの重大性に応じた優先度で通知部23においてアラームが通知されるため、監視側で早急に必要な作業を容易に把握することができる。例えば、アプリケーションモデル12の同定モデルによる計算が不能となった場合などに、頻繁にアラームが通知されることがなく、より重要な作業を優先することが可能となる。このような点は、特に複数のトラッキングシミュレータを共通の監視側端末装置2で監視する場合に重要となる。
【0057】
なお、図1の例では、監視機能13をトラッキングシミュレータ1に設けているが、監視機能13に相当する機能を、ネットワークを介して接続される監視側の装置(例えば、監視側端末装置2の内部)に実装してもよい。
【0058】
また、図1における監視側端末装置2の機能の一部をトラッキングシミュレータ1に設けてもよい。例えば、監視側端末装置2の情報処理部22および通知部23における監視機能、通知機能をトラッキングシミュレータ1に設け、通知部23からのアラーム通知に相当する情報を公衆回線等のネットワークを介して、システムの開発者側に送信するようにしてもよい。
【0059】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、を備えるプラントシミュレーションシステム等に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 トラッキングシミュレータ
11 トラッキングモデル
12 アプリケーションモデル(パラメータ調整手段)
13 監視機能(第1の取得手段、第2の取得手段)
21 通信部(第1の取得手段、第2の取得手段)
22 情報処理部(第1の取得手段、第2の取得手段、通知手段)
23 通知部(通知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、
前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、
を備えるプラントシミュレーションシステムにおいて、
前記シミュレータにおけるシミュレーションの計算結果ステータスを取得する第1の取得手段と、
前記パラメータ調整手段におけるパラメータ調整の実行結果ステータスを取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示す場合には、その旨を通知する通知手段と、
を備え、
前記第2の取得手段により取得される前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示し、前記第1の取得手段により取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、前記パラメータ調整手段による前記パラメータの更新を行わずに前記シミュレータは前記トラッキングモデルによるシミュレーションを継続することを特徴とするプラントシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記第2の取得手段による前記パラメータ調整の実行結果ステータスの取得頻度は、前記第1の取得手段による前記シミュレーションの計算結果ステータスを取得する頻度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のプラントシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記通知手段は、前記第2の取得手段により取得された前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示す回数が所定の複数回数に到達した場合にその旨を示す通知を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のプラントシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記第1の取得手段は前記シミュレーションの計算結果ステータスを公衆回線を介して取得し、前記第2の取得手段は前記パラメータ調整の実行結果ステータスを公衆回線を介して取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラントシミュレーションシステム。
【請求項5】
実プラントから逐次、取得したデータを厳密モデルに基づくトラッキングモデルに入力することで前記実プラントをシミュレーションするシミュレータと、
前記トラッキングモデルで使用されるパラメータを、前記シミュレータによる演算結果と前記実プラントの状態との比較に基づいて調整するパラメータ調整手段と、
を備えるプラントシミュレーションシステムを監視するシミュレーション監視方法において、
前記シミュレータにおけるシミュレーションの計算結果ステータスを取得する第1の取得ステップと、
前記パラメータ調整手段におけるパラメータ調整の実行結果ステータスを取得する第2の取得ステップと、
前記第1の取得ステップにより取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示す場合には、その旨を通知する通知ステップと、
を備え、
前記第2の取得ステップにより取得される前記パラメータ調整の実行結果ステータスが異常を示し、前記第1の取得ステップにより取得される前記シミュレーションの計算結果ステータスが異常を示さない場合には、前記パラメータ調整手段による前記パラメータの更新を行わずに前記シミュレータは前記トラッキングモデルによるシミュレーションを継続することを特徴とするシミュレーション監視方法。
【請求項6】
前記第2の取得ステップによる前記パラメータ調整の実行結果ステータスの取得頻度は、前記第1の取得ステップによる前記シミュレーションの計算結果ステータスを取得する頻度よりも低いことを特徴とする請求項5に記載のシミュレーション監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20351(P2013−20351A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151868(P2011−151868)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】