説明

プラント制御装置のオペレータの運転支援方法

【課題】オペレータに依存する非定常運転時の誤操作を抑止する際に操作指示(プラント制御)を操作中断させるのみに限らず続行をも可能にするプラント制御装置のオペレータの運転支援方法を提供する。
【解決手段】非定常運転時のプラント制御装置6において、制御ポイント毎の操作条件(行ってはならないプラント状況)を条件式(デシジョンテーブル)11として制御ポイント毎に記憶させておき、制御ポイントへのオペレータの設定変更操作が行われるたびに、プラントの現在の状況と該制御ポイント操作条件に基づいて、操作を支援するアシスト機能(ダイアログ画面)W1を表示装置8に表示し、表示内容に基づいたオペレータの選択操作(操作継続若しくは操作中断)を可能化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント操業に際してプロセス制御を実行するためにプラント制御装置自身が管理しているタグネームと称される制御ポイント毎に(制御ポイント識別番号毎に)、オペレータのマニュアル変更操作が禁止されるプラント状況等を条件式として記憶させておく事に依り、記述条件に一致するプラント状況の場合にのみプラント制御装置の表示装置上にリアルタイムで違反内容やガイダンス文が記載されたダイアログ画面を表示して該設定変更操作の無効化(操作中断)をも含めて実施する、プラント制御装置のオペレータの運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント制御装置が設置される規模のプラントでは、定常運転と非定常運転の2つの運転モードに大別される。定常運転とは、本来の生産品目が本来の製造設備上において本来の制御プロセスで生産される形態を指し、プラント制御装置内に予め組み込まれている該プラント制御専用にプログラムされていて、周期実行やイベントベース駆動やデマンド起動やバッチ実行等の実行形態を持つ、シーケンスプログラムも稼働状態に置かれる。
【0003】
上述の定常運転以外の、シーケンスプログラム実行が意識的に切り離された状態(通常、装置単位)は非定常運転と称される。例えば、定常運転中に生じた故障機器の修理のために該制御ループをマニュアル操作したり、生産ラインの一部をバックアップ系に切り替えたり、修理後の機器の復旧確認のための試運転するような事が含まれる。
【0004】
その他、機器毎に行われる定期検査や定期修理、タンクヤード近辺の末端設備側で行われる不定期セットアップ作業、シーケンスプログラムを意識的に切り離して行うローカルオート運転も非定常運転となる場合がある。
【0005】
このような非定常領域の操業(機器単位又は装置単位)においては、プラント制御装置の該シーケンスプログラムは実行停止されることが通念となっている。非定常運転領域の機器毎のマニュアル運転の操作手順は、生産品目や設備の稼動状況や水素量とか蒸気量とかの工場ユーテイリテイー状況や隣接する制御ポイント状況や当日生産実績や今後の生産計画にも依存して複雑かつ多様な運転パターンが存在するため、予め詳細な機能仕様書の定義が必要で決定した仕様範囲内機能しか持ち得ないコンピュータプログラムであるシーケンスプログラムは、局面を限定して作り込む以外、幅広い非定常運転領域に適用する事は極めて困難となっている。
【0006】
非定常領域運転操作でのプラントオペレータへのプラント運転支援方法に関するものとして、現在の運転データを読み込む事で、併設されている知識DB(データベース)内容から現在の制御状況を識別して必要操作項目や操作終了判定基準を表示し、未操作項目を色変え表示にて知らせるプラントの非定常状態における運転支援方法が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、プラントオペレータの操作結果について警告を出力するプラント運転支援方法に関するものとして、パーソナルコンピュータに操業手順書(SOP)内容を入力及び記憶させておき、現在の操業状況をプラントオペレータが入力する事により該運転操作に関する必要操作手順と監視先情報を表示し、実際の操作と記憶されている操業手順書(SOP)データの間に不一致が見出された場合に警告メッセージを出力するプラント監視・操作システム(特許文献2参照)が知られている。
【0008】
また、プラントオペレータ個々人々の操作習熟度までを分析して判定するために、操業状況毎の操作ルールを知識DBとして記憶しておき、実際のオペレータ操作実績から、誤操作内容や傾向や習熟度を判定する訓練用シミュレータ用支援装置であり、又、実プラントにて使用する際にはオペレータ操作設備に併設して操作ガイドを表示するようなスタイルのオペレータへの運転ガイド装置(特許文献3参照)も知られている。
【0009】
【特許文献1】特許3926012公報、プラントの非定常状態における運転支援方法、その装置及び記録媒体。
【特許文献2】特開2007−193406号公報、プラント監視・操作システム。
【特許文献3】特公平06−005454公報、プラント運転ガイド装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プラント操業に際して非定常領域でのプラントオペレータの作業範囲は広大で複雑であるにも関わらず、結果として、機器制御に加えて設備間協調チェックや工程入り条件の確認などのソフトウエアインターロック機能をも有するプラント制御装置のシーケンスプログラムは、定常運転領域でのみ動作する事が出来るものであって、非定常領域操業には適用困難であった。
【0011】
例え、操業自動化の為に非定常域運転をシーケンスプログラム化出来ても極めて限定的な操業範囲とならざるを得なかった。
【0012】
主に、単体機器の起動や解除等の制御条件自動化及び装置単位でのシャットダウン自動化等に適用される、所謂、“インターロック(プラント制御装置とは別の専用設備として構築されているハードウエアインターロック設備とか、プラント制御装置のAND回路やOR回路からなるロジックブロック機能により、構築される)”と異なり、“ソフトウエアインターロック”はプラント制御装置内のアプリケーションプログラム(シーケンスプログラム)が扱うプラント内全域の操業や制御や統合的管理に関する“相互依存関係の正当性の検証若しくは監視(インターロック)機能”であり、シーケンスプログラムが起動しないことは、即ち、非定常運転に際しては、高度な相互監視機能を実装できるソフトウエアインターロック機能がプラント制御装置上で図れないことを示している。
【0013】
知識DBを用いて推論等に依るオペレータ支援を行う高度化システム等の設備を持たない一般の工場プラントでの“非定常領域の操業”は、操作者や監視者から成るプラントオペレータ及び場合により工場フィールドマンを含む人間系で日々の操業が行われており、操業安全への責務の殆どを人間系が負う形になっている。定常運転中はシーケンスプログラムが“実行”していた前述“ソフトウエアインターロック機能”範疇の監視や操作もプラントオペレータが実行する。
【0014】
プラント制御装置を運転するプラントオペレータの機器修理や定期検査やローカルモード運転や上述ソフトウエアインターロック関連処置を含めた非定常領域での運転操作手順は、他オペレータからの引き継ぎ事項や業務標準規定書としての操業手順書(SOP)やプロセスループ図などに基づいて、個々オペレータの判断を経て、該制御ポイントのモード変更や目標値変更やバルブ開度操作やポンプ停止などの操作指示がプラント制御装置のマウス(画面上での選択行為)や押し釦(キーボードの釦選択行為)を介して手入力される。
【0015】
オペレータによって一度手入力されてしまった指示内容は、プラント制御装置自身がデータとして管理している設定値上下限リミットやAUTOモード中のマニュアル操作禁止などの該制御ポイント属性への違反が無い限り(即ち、プロセスループ間の制御バランスや設備機器間協調条件や配管経路選択状況等のプラントアプリケーション現在状況(制御仕様や操業条件)に対する今回手入力操作内容の適否や妥当性等の検証が、一切行われずに)、入力内容そのものは無加工でプラント制御装置から場合に依っては制御用LAN回線等を通じてプラント制御装置の一部を構成するフィールドコントローラに届けられ、フィールドコントローラからの4〜20mAアナログ出力等により、瞬時に、コントロールバルブ等のフィールド機器が駆動される構造になっている。
【0016】
このため、プロセス制御異常への対応中にその周辺の制御ポイントで生じ易い、プラントオペレータの、“制御状況の見逃しや誤認識や連絡不徹底”に起因する対応操作の誤りや、新人オペレータの“状況の看過”や操作順の“錯覚”や“数値の投入ミス”などの単純原因での誤り等に依りオペレータの手入力内容そのものが誤ってしまった場合は(ヒューマンエラー起因の操作不良)、爆発事故を頂点とする様々なプラント操業トラブルが直接間接を問わず常に引き起こされる可能性が有るという問題が有った。
【0017】
これらへの対応として、プラント制御はシーケンスプログラム(該プラント制御に特化されたアプリケーションプログラム)が担うようになり手入力操作に関するヒューマンエラー機会は最少限化されたが、前述の如く非定常領域への同プログラムの適用は困難で、例え、実現しても極めて限定的な操業範囲とならざるを得ず、特にプラントオペレータ操作支援システム等の高度化設備を持ち得ない、プラント制御装置のみが存在している、一般の工場プラントでの非定常領域の操業に於いては、デジタル化等の支援が受けられない状況下で、前述のソフトウエアインターロック処理に関する判断や操作までもがプラントオペレータ等の人間系でのみ判断され指示が手入力されるという状況が継続しており、誤判断や誤操作が即“プラント操業トラブルに直結する可能性が有る”という危険な状況の解決が重要な課題になっている。
【0018】
具体的には、例えば、同一パイプ配管上に位置するポンプとポンプよりも上流側(原料タンク側)に置かれるポンプ用元弁との関係に於いて、ポンプ元弁が閉まっている状況であっても、オペレータのプラント制御装置へのポンプ起動マニュアル操作(ポンプの制御ポイントの制御モードがオペレータマニュアルモード中若しくはローカルモード中)が出来てしまうという問題になる(例え、誤った操作指示で有ってもプラント制御装置は、操作を受け付けて起動信号がフィールドのポンプ設備に届く)。
【0019】
この場合、プラント制御装置はポンプ起動操作機能を提供しているが、制御アプリケーション上の制約事項としての“元弁が開いている事”の確認はプラントオペレータ責務となる。そして結果として、このプラントオペレータ責務の業務領域で様々なヒューマンエラーが生じる。
【0020】
前述の“ポンプと元弁の関係”は説明のための象徴例記述にすぎないが、現実には、“プラントは全てが繋がっている”と見なされ、上述の“ポンプと元弁の関係”の数は多く、又、多様な“相互依存関係((広義の)ソフトウエアインターロック条件)”が、制御機器間若しくは制御ループ間や生産設備とユーテイリテイー設備間や生産実績と設備を含めた今後の生産計画間などで存在している。
【0021】
以上を、プラント制御装置のオペレータ支援機能として見た場合、プラント内の制御要素間の現実のソフトウエアインターロック関係(操業手順書(SOP)やオペレータ経験則等の操業条件)に対してプラント制御装置の操作が“極めて、独立的”であるので、シーケンスプログラムを組まない若しくは組めない非定常領域運転の場合には、“今回手入力操作のプラントアプリケーション全域(操業面及び制御面)への影響の検証”を行う汎用的な手段が提供されていない、という技術上のテーマとなる。
【0022】
具体的には、前述の“ポンプと元弁の関係”の例えに基づいて言えば、オペレータがポンプ起動マニュアル操作を行った時に、操作を受け付けたプラント制御装置自身が“元弁が閉まっているがどうしますか”の意味の問いかけを行う問題解決方法が提供されていないことが問題の本質となる。
【0023】
プラント制御装置の出現する以前は、パネル計装の時代であり、そこではパネルに取り付けられた個々計器のノブを廻せば瞬時にフィールド機器が駆動できるという極度に独立的な操作が可能な、言い換えれば操作自由度最大の世界が有った。プラント制御装置のマニュアル操作原理はパネル計装時代同等で以後進化していない放置されてきたという装置進化上の“問題”ともなる。
【0024】
以上の、非定常領域運転上の課題に加えて、定常領域運転中に主に行われる“設定変更作業やチューニング作業”に関しても、同じような問題が存在している。“設定変更作業やチューニング作業”とは該制御ループをシーケンスプログラム制御対象から外してローカルモードで行う目標値変更や制御アルゴリズム制御定数の変更や制御ループ上の異常原因調査等を指し、操業手順書(SOP)等に作業要領が要点規定されている。設備の工程や生産中製品種や原料切り替えなどのプラント操業状態に応じて“行ってはならないこと”や“操作内容が限定される”局面が存在している。例えば、制御ループのマニアルモード移行禁止期間が有ったり、制御目標値の設定変更が必要であったり、アラーム中の扱いが異なったり等の様々な運転上の制約(操業手順若しくは経験則若しくは制御理論)が存在していて、それら状況の判断と対応処理が人間系に負わされており、ここでも前述同様、プラント制御状況に関しての見逃し、誤認識、看過、錯覚、不案内、単純ミスなどのヒューマンエラー原因による該制御ポイントへの対応操作の誤りが生じることとなり大きな課題になっている。この課題は技術的には、プラント操業に際しての“人間”と“コンピュータ”との“インタラクション(相互関係若しくは対話型操作)”機能が不足していることをも示しており解決が望まれている。
【0025】
非定常域でのプラントオペレータへの支援技術として、特許文献1、特許文献2、特許文献3等の従来技術が知られているが、何れも、日々のプラント側変更内容のDBへの更新メンテナンスや拡張が困難となったり、DBメンテナンス作業そのものに対価が必要であったり、何よりも高度化設備を持ち得ない一般の工場プラントへの適用は困難であるという問題が有った。
【0026】
又、DBや検索エンジンを有し特有の操作が必要となる支援システムの存在自体がブラックボックス要素(根拠等についてオペレータ理解が得られない)となり、プラント操業手順上での複雑性が増し逆に操作が混乱するという問題や平常状態でしか使えないという問題やプラントオペレータへのわかり易い理解のし易い支援機能の提供という面で不十分であるという問題等も並存している。
【0027】
本発明は、上記に鑑み成されたものであり、制御ポイントへのオペレータの個々マニュアル操作に対する、プラント操業上の関係ソフトウエアインターロック条件をプラント制御装置が受け付ける前にデジタル的に検証することと、柔軟で更新自在な実現手段(構造)から成る、プラント制御装置のオペレータの運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、プラントの非定常運転領域及び一部の定常運転領域に於いて、オペレータの誤操作防止やガイダンス表示を行うプラント制御装置のプラントオペレータ運転支援方法であって、プラント制御装置が対象プラントから入力したプロセス変数や制御モード等の制御ポイント現在値情報と、同じくプラント制御装置自身が管理情報として維持管理しているプラント全域の現在生産中の品種名や詳細仕様や制御中の工程情報やシーケンスプログラム稼動状況を示すシーケンスプログラムステータス情報や製造品種毎のレシピ情報や生産実績情報や将来生産計画情報や製造品種組成を示す製品マスター情報や個々制御ポイント毎に設定されているPID等のアルゴリズム定数情報(比例、積分、微分やアラーム種や目標値やマニュアル出力値の上下限値等)や制御ポイント毎に管理されているアラーム履歴情報やプラント制御装置構成機器の故障情報等と、共に、プラントの操業状態を識別するための条件式(制御ポイント名と演算式)と、同条件式が一致した場合に表示するダイアログ画面の番号が予め記載されているテーブル(デシジョンテーブル等)を、タグと称される制御ポイント識別番号管理用のポイントレコード毎に有していて、プラントオペレータが該制御ポイント(タグネーム)へのマニュアル変更操作を行う度に同テーブルの条件式を実行する。同実行のため、制御ポイント変数やその他の現在値(プラント制御装置が既に収集若しくは維持管理している)へのメモリー参照手段と、条件式の翻訳及び大小比較等の演算のための演算手段と、プラント状況が条件式と一致した場合に(発火)指定された番号を持つダイアログ画面をプラント制御装置の表示装置にリアルタイム表示する出力手段を備える。
【0029】
上述条件式では、ダイアログ画面を表示させたいプラントの状況を特定しておく。OKやキャンセルや強制(Force、ダイアログ内容を無視して、強制的に続行する)等の操作釦を自由に配置できるダイアログ画面を個々制御ポイント(パラメータ)毎に作成しておき、該制御ポイントへのマニュアル操作(今回設定値や操作タミング)が条件式の示すプラント状況と一致した場合に、指定されているダイアログ画面を表示して発火理由を知らせ、以降の操作をプラントオペレータ判断に一任する形でのオペレータ支援を行う。継続の場合は“OK釦”若しくは“Force釦”をクリックしてダイアログ画面内容を無視することで今回設定内容は即時にプラント制御装置に渡される。
【0030】
操作中断の場合は“キャンセル釦”を押して該マニュアル操作をオペレータ自身判断により中断する)。操作を一切禁止させたい場合はキャンセル釦のみのダイアログ画面を表示させる。又、条件式に不一致の場合若しくはデシジョンテーブルに該パラメータ名が登録(コンフィグレーション)されていない場合は、ダイアログ画面は表示しないで、プラント制御装置は即時に操作入力を受け付ける等の機能を持つ。
【0031】
制御ポイント毎に条件式を記憶させておき、条件式には、該ダイアログ画面(オペレータへのガイダンス)を表示させたいプラントの状況のみを、プラント内の制御ポイント変数名と等式や不等式をはじめとする演算子やその他専用ライブラリーを用いて指定しておき、該制御ポイントへのオペレータのマニュアル変更操作が生じるたびに上述条件式を実行して、該ダイアログ画面の表示要否をデジタル的に確認することを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項2に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、制御ポイント毎に条件式を記憶させておき、条件式には、該ダイアログ画面(オペレータへのガイダンス)を表示させたいプラントの状況のみを、プラント内の制御ポイント変数名と等式や不等式をはじめとする演算子やその他専用ライブラリーを用いて指定しておき、該制御ポイントへのオペレータのマニュアル変更操作が生じるたびに上述条件式を実行して、該ダイアログ画面の表示要否をデジタル的に確認することを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項3に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1または2のいずれかに記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、オペレータアシスト機能として表示するダイアログ画面上にOK釦やForce釦やCancel釦を備え、オペレータ判断が選択できる構造を有することで、前記条件式でのプラント状況の任意指定の自由度と、及び、ダイアログ画面表示内容を見たオペレータが、プラント状況を見渡して再検討した結果に基づいて、操作の継続又は操作中断をダイアログ画面上でも選択できる自由度との、2段階の自由度を構造的に有することを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項4に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、判明したプラント操業上の事実に基づき、経験則としてのソフトウエアインターロック内容を、条件式として反映して、条件式の数を、順次、追加登録してゆくことで最大効果を発揮できる構造を持つことで、所謂、“ナレッジ(過去のノウハウの蓄積踏襲)”として誤操作防止のプラント操業条件を扱えることが可能な構造を持つことを特徴とする。
【0035】
本発明の請求項5に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、現在プラント状況に対する該制御ポイントへのマニュアル変更操作に関して、“行ってはならない状況”を条件式として特定することで、関連制御ポイント(パラメーター)の誤操作を防止することを特徴とする。
【0036】
本発明の請求項6に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、現在プラント状況に対する該制御ポイントのSP値(制御目標値)等へのマニュアル変更操作が生じた際に、特定の“プラントの状況”を条件式に指定することで、昇温中とか隣接制御ループの制御モード設定内容等のプラントの詳細な状況に応じたチューニングガイダンス(PID制御ポイント等への制御定数のチューニングに関するガイダンス及び操作禁止通知)を表示できることを特徴とする。
【0037】
本発明の請求項7に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法に係り、前記デシジョンテーブルを、マトリックステーブルや状態遷移図等に容易に置き換えることが可能な構造を持つことを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項8に記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法において、前記デシジョンテーブルを、プラント制御装置内のプラントモニター画面(グラフィック画面)の画面切り替え操作部分(画面切り替え操作部分)や、検出したアラームのオペレータ確認操作釦部分等に容易に移入することが可能な構造を持つことを特徴とする。
【0039】
これにより、従来マニュアル操作の自由度と誤操作防止機能を両立する汎用的なプラント制御装置オペレータへの操作支援方法を提供することが可能となる。
【0040】
又、重大事故や甚大事故に繋がる既知の危険運転パターン(プラント状況)を関係制御ポイントの条件式に登録しておけば、危険操作そのものを操作面からも恒久的に防止することが可能となる。
【0041】
又、定常領域運転でも“設定変更作業やチューニング作業”に関して、例えば、目標値マニュアル操作に関しても品種や工程や他アラーム等の詳細タイミングに基づいたガイダンスを表示することが可能となり、操業手順書(SOP)内容を反映しやすくなることで、チューニング関連の誤操作機会を減らす。
【0042】
又、実現手段(必要設備)としても、専用DB等の高度化システムを用いる事なく“プラント制御装置”での提供が可能となる。
【0043】
又、運用メンテナンス面でも、一個の条件式を順次該当制御ポイントに設定できる自在性を持ち(徐々に数を増やして“囲い込み”を行い防止精度を強化してゆく)、オペレータ理解も得られやすく、蓄積踏襲が可能な所謂“ナレッジ(ノウハウ)”ともなる。
【0044】
以上の如く、操作の根元(手入力操作)に着目して、“次に行うべき操作手順”ではなくて、回避したいプラント状況のみを公知のデシジョンテーブルを用いて指定してダイアログ表示する等で、非定常運転領域でも汎用性を備えた“操作系インターロック”機構を図ることが可能な、プラント制御装置のオペレータ操作支援方法を本発明は提供する。
【0045】
本発明のデシジョンテーブル部分を、ツリー状(デシジョンテーブルを復層化)に配する事でプラント状況識別の高度化が可能となる。又、同じく、本発明のデシジョンテーブル部分を、生産品や操業種についての前後関係や切り替え条件を表したマトリックス図に置き換えることや操業手順を状態遷移図に置き換えることで、操業条件判定の更なる自動化や操業手順書の電子化(SOP電子化)に繋げることがプラント制御装置の提供機能として可能となる。
【0046】
又、デシジョンテーブル条件式に書き込み処理を加えることにより、統計データを作ったりプラント関係者への同報処理を加えたりすることも容易に可能となる。更に、プラント制御装置のアラームのオペレータ確認処理部分や制御用LAN回線等の診断結果へのオペレータ確認操作部分やプラント監視の際のオペレータが決定する次グラフィック画面の選定部分(画面送り部分)に、本発明のデシジョンテーブルを置く事でも、プラント制御装置自身の更なるインテリジェント化が見込める。
【0047】
本発明は、以上の手段及び機能を設けたことを特徴とするプラント制御装置のオペレータの運転支援方法である。
【発明の効果】
【0048】
本発明によると、プラント制御装置のオペレータの非定常領域に於ける、制御ポイントへのマニュアル操作(パラメータ変更)と、関連するソフトウエアインターロック条件(プラントワイドの制御状況及び操業状況)とを、公知のデシジョンテーブルを用いて容易に結びつけることが出来(操作とプラント状況の“制御の同期化”)、適切なガイダンスや警告の表示を通して誤操作の防止が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0050】
図1は本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法の一実施形態を模式的に表したブロック図であり、プラント制御装置内で本発明の方法を実現するために必要となる、情報とプログラムについて、その構成及び機能実現手段を模式的に示している。
【0051】
本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法及び装置は、図1に示すとおり、装置としてのプラント制御装置がプラントより周期的に収集している現在値情報1と予め登録(コンフィグレーション)されて以後メインテインされている管理情報2に基づいて、タグ選択3(オペレータ操作)から始まる制御ポイントへの設定変更操作が発生するたびに、プラント制御装置自身が備えているメモリー参照手段4により関係する全ての制御ポイント変数や2の管理情報及と該制御ポイントのデシジョンテーブルとを参照しておいて、5のEnter入力にてオペレータの設定変更操作が完了した時点で、該デシジョンテーブルに記述されている条件式内容をコンパイルして、現在値と指定演算子の計算等を実行するデシジョンテーブル演算手段4−1、及び、同演算結果が条件式に一致した場合に、指定されたダイアログ画面を表示してオペレータ判断に従って、今回の設定変更操作を受け付けたり若しくは該操作内容を廃棄したりして操作を中断する機能を持つ、演算結果表示手段4−2より成っている。
【0052】
2の、管理情報とデシジョンテーブル情報とダイアログ画面情報は、コンフィグレーションと称されるプラント制御装置自身が備えている、エンジニアリング機能により、主にオフライン時に事前登録されている。
【0053】
図2は、プラントオペレータがモニターしているプラント制御装置の表示装置に表示されているグラフィック画面例であり、G2はプロセス変数現在値、G1はタグネーム、G3は該プロセス変数の表示単位である。
【0054】
制御ポイントの設定変更を行いたい場合、プラントオペレータは上述のプロセス変数表示領域G1やG2をマウス選択等を行うと入力操作手順は、図3のP1に移行する。P1は該制御ポイントのパラメータ選択操作で、目標値(SP)や制御モード(AUTO、MAN、CASC等)が在る。
【0055】
P2は妥当性のチェックで、例えばAUTOモード中にOP(出力量マニュアル操作)パラメータが選択された場合にはエラー終了する。P3はオペレータの手入力キーイン操作で例えば目標値(SP)の数値等を打ち込む。P4は設定完了キー入力で一般パソコンキーボードでのキャリッジリターン(CR)に相当し、これで、オペレータの入力操作は完了する。
【0056】
P5は上述同等の妥当性のチェックで、入力値の許容範囲や許容モード等の該制御ポイントに与えられている制御アルゴリズム(PIDアルゴリズム等)の属性に対する違反の有無や変更操作プロテクト中か否か等のチェックが行われる。
【0057】
従来は、以上の処理を終えれば、今回のオペレータ手入力内容が前述フィールドコントローラやフィールドコントローラを経由してフィールド機器に伝えられた。
【0058】
以上のオペレータ操作手順のあとに引き続いて実行される本発明の支援方法の実施形態に於ける動作についての詳細を図3及び図6に基づいて説明する。
【0059】
上述の、設定完了キー入力P4の終了及び妥当性のチェックP5が正常終了した段階で、メモリー参照手段4(図1)による必要データの準備が完了していて、デシジョンテーブルの演算手段4−1(図1)と演算結果表示手段4−2(図1)を実施することで本発明の支援方法を実現する。
【0060】
図3におけるD1は該制御ポイントのデシジョンテーブルで、該制御ポイント管理用ポイントレコードに固定的に置かれており、検索等の必要な無く、無条件に取り出す。図3で表記しているデシジョンテーブルの場合、本発明での使い方は、左辺のcondition項にプロセス変数名(タグネームとパラメータ名)を置いて横列には特定したいパラメータ名を置く。例えば、不用意に出力量マニュアル操作(OP)すると装置が破損する可能性が2ケース在るが、目標値などのその他のパラメータ変更への制約は一切無いような場合は、横列にはOPパラメータのみを2個(2列)置く。OP操作時に装置破損する場合のプラント状況をマトリックス記載して条件式とする。Action Stubs項には条件成立時に実施するダイアログ画面番号のみを置く。
【0061】
デシジョンテーブルの演算手段4−1(図1)では、オペレータが今回操作を完了したパラメータ種について、同じパラメータ名が該デシジョンテーブルに記載されていれば、同条件式を演算する。
【0062】
図3に示すD2のパラメータ列記載例は“ANY(Anything、パラメータ種不問)”であり、タグネームTIC502へのパラメータ設定変更操作が有った場合は、オペレータの設定変更対象がどのようなパラメータで有っても実行される。
【0063】
D2の条件式は次の意味を持つ。このデシジョンテーブルTIC502の制御ポイント自体はアミド化工工程に存在している。アミド化工処理の前工程にはタンクと送液ポンプが有りアミド化工工程に原料を圧送している。タンクLI012.PV(図3に示すD4)は自己分解性を持つジオメチル系原料のタンクの液位を示し、図3に示すD5のFIC2022.OPは同原料を送液するポンプの稼動状況を見ている。そしてタンク液位が一定以上有り送液ポンプが停止している状況は、即ち、暴走反応の可能性のある高温のジオメチル系原料が“タンク内に滞留”していることを示している。D6のSeq100.SEQEXE≠Runは、送液関係の制御を行うシーケンスプログラムSeq100が稼動していないことを示しており(非定常領域運転中)、結果として、D2のパラメータ列記載の条件式は、プロセス異常や機器故障への対応にオペレータが追われている最中に、ジオメチル系原料の“滞留”が長時間“忘れ去られ”てしまうことで生じる“暴走反応に依るタンク破損事故”を防いでいることとなる。
【0064】
プラント制御装置の監視画面やアラーム通知だけでなく、周辺制御ポイントに本発明の図3に示すD2の条件式を置く事で、オペレータへの注意通知機会を増やして忘却(ヒューマンエラー)を防いでいる。
【0065】
図3に示すD2に於いて、条件式が一致すると、図1の演算結果表示手段4−2により、デシジョンテーブルのAction Stubs項に指定されている、ダイアログ画面#100(図4に示すW2)を表示する。
【0066】
図3に示すD3は、制御ポイントTIC502の目標値(SP)変更時期を制限するための、チューニング作業向けのガイダンスで、オペレータがSP操作を行った時には常にD3の条件式が実行され、プラントが条件式に一致する場合は、ダイアログ画面#110(図4に示すW3)を表示する。
【0067】
図3に示すD20は上述(図3D2)で発火した際に表示されるダイアログ画面の例を示している。
【0068】
ダイアログにはガイダンスが表示されるのみで、操作の継続又は中断は、ダイアログ画面上に配置されている操作釦に依る。オペレータ判断により操作継続の場合はForce釦(図3に示すD21)を押す。操作中断の場合はCancel釦(図3に示すD22)を押す。
【0069】
図6は、プラント制御装置に於いて、本発明を実現する動作の詳細を示すフローチャートである。
【0070】
図6の1のStartは、前述した図3に示すP5直後に相当している。プラント制御装置自身の備えている、図1のメモリー参照手段4により、図6の1時点では該制御ポイントに関わるプログラム処理に必要な情報は準備されている。12の操作中断とは、単にプログラム処理を終了するのみとなり、13のEndとは、今回のオペレータの変更操作内容を受け付けて、変更内容を例えばフィールドコントローラに書き込んだり、プラント制御装置で表示中の、例えば、図2で示すグラフィック画面の該制御ポイント変数を更新表示したりすることを示している。
【0071】
図6の20は、プラント制御装置が常時収集しているプラントの個々制御ポイントの現在値情報である。図6の21は、プラント制御装置自身がメインテインしている管理情報群であり、図4に示すT1のCondition項で変数として指定できる。22は生産中の製品名や製造量とか幅とか長さなどの製造上の詳細仕様情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。23は、攪拌中とか昇温中などの個々装置毎の制御中の製造工程情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。24は、個々シーケンスプログラムの実行状態を“実行中”“停止中”“テスト中”などで表す管理情報である。25は、レシピと称される製品の製法上の情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。26は、当日の製品別の生産実績情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。27は、今後の生産品目や製造量やラインへの流し順の情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。28は、個々製品毎に、配合する成分や使用する設備種を示すマスター情報で、詳細はプラント毎にプラント制御装置のアプリケーション仕様として決定される。29は、制御ポイント毎の制御用定数で、例えばPIDアルゴリズムの場合は、目標値やアラーム範囲や出力上下限値や比例定数、微分定数、積分定数等がある。30は、プラント制御中に発生した制御ポイント毎のアラーム履歴情報。31は、プラント制御装置自身を構成する機器の診断結果を示す情報で、制御用LAN回線の異常状態やフィールドコントローラの異常状態を示している。
【0072】
図6の32は、本発明に関わるダイアログ画面で、画面番号及びガイダンスとして画面表示するオペレータへのメッセージ内容は、プラント制御装置のDB上に存在する他の情報と同様に、プラント制御装置のエンジニアリング画面で予め登録する。
【0073】
図4は、プラント状況を、条件式を用いて識別するためのデシジョンテーブルのフォームを示す図である。Condition項(図4のT1)に示す変数は、プラント制御装置が持つ、履歴データや統計結果を含めた、変数を指定する。ひとつの列(図4のT2)でひとつの条件式を特定する。条件式欄(図4のT3)には、等式や不等式の単純演算子から変数間相関係数や推定等を扱う専用の演算ライブラリーを用いて該制御ポイント変数の状況を特定する。
【0074】
Action Stubs項(図4に示すT4)は条件式判定に関してYes判定やNo判定等の判断基準を置く。
【0075】
図5に示すW1は、アシスト機能として、プラント制御装置表示装置8に表示するダイアログ画面の基本のフォームを示す図である。
【0076】
OK釦W10は、操作継続の意味を持つ。Force釦W11は、ダイアログ画面に記載されているガイダンス内容を無視して設定操作を続行する意味を持つ。Cancel釦W12は、今回設定変更入力内容をキャンセルして該操作を中断する。Supervisor釦W13はスーパバイザー権限を持つオペレータのみが操作を継続できる意味を持つ。
【0077】
図5に示すW2は、前述した図3に示すD2の条件式で指定した、自己分解作用のある液体の滞留アラートを知らせる、ダイアログ画面例(ダイアログ画面#100)である。図5に示すW3は、前述した図3に示すD3の条件式で指定した、チューニング禁止区間中へのSP変更操作の発生を知らせる、ダイアログ画面例(ダイアログ画面#110)である。
【0078】
以上説明したように、本発明は、上述の手段及び機能を設けたプラント制御装置のプラントオペレータ運転支援方法であり、具体的にはプラントの非定常運転領域及び一部の定常運転領域に於いて、オペレータの誤操作防止やガイダンス表示を行うプラント制御装置のプラントオペレータ運転支援方法であって、プラント制御装置が対象プラントから入力したプロセス変数や制御モード等の制御ポイント現在値情報と、同じくプラント制御装置自身が管理情報として維持管理しているプラント全域の現在生産中の品種名や詳細仕様や制御中の工程情報やシーケンスプログラム稼動状況を示すシーケンスプログラムステータス情報や製造品種毎のレシピ情報や生産実績情報や将来生産計画情報や製造品種組成を示す製品マスター情報や個々制御ポイント毎に設定されているPID等のアルゴリズム定数情報(比例、積分、微分やアラーム種や目標値やマニュアル出力値の上下限値等)や制御ポイント毎に管理されているアラーム履歴情報やプラント制御装置構成機器の故障情報等と、共に、プラントの操業状態を識別するための条件式(制御ポイント名と演算式)と、同条件式が一致した場合に表示するダイアログ画面の番号が予め記載されているテーブル(デシジョンテーブル等)を、タグと称される制御ポイント識別番号管理用のポイントレコード毎に有していて、プラントオペレータが該制御ポイント(タグネーム)へのマニュアル変更操作を行う度に同テーブルの条件式を実行する。同実行のため、制御ポイント変数やその他の現在値(プラント制御装置が既に収集若しくは維持管理している)へのメモリー参照手段と、条件式の翻訳及び大小比較等の演算のための演算手段と、プラント状況が条件式と一致した場合に(発火)指定された番号を持つダイアログ画面をプラント制御装置の表示装置にリアルタイム表示する出力手段を備えている。
【0079】
上述した条件式では、ダイアログ画面を表示させたいプラントの状況を特定しておく。OKやキャンセルや強制(Force、ダイアログ内容を無視して、強制的に続行する)等の操作釦を自由に配置できるダイアログ画面を個々制御ポイント(パラメータ)毎に作成しておき、該制御ポイントへのマニュアル操作(今回設定値や操作タミング)が条件式の示すプラント状況と一致した場合に、指定されているダイアログ画面を表示して発火理由を知らせ、以降の操作をプラントオペレータ判断に一任する形でのオペレータ支援を行う。継続の場合は“OK釦”若しくは“Force釦”をクリックしてダイアログ画面内容を無視することで今回設定内容は即時にプラント制御装置に渡される。
【0080】
操作中断の場合は“キャンセル釦”を押して該マニュアル操作をオペレータ自身判断により中断する)。操作を一切禁止させたい場合はキャンセル釦のみのダイアログ画面を表示させる。又、条件式に不一致の場合若しくはデシジョンテーブルに該パラメータ名が登録(コンフィグレーション)されていない場合は、ダイアログ画面は表示しないで、プラント制御装置は即時に操作入力を受け付ける等の機能を持つ。
【0081】
制御ポイント毎に条件式を記憶させておき、条件式には、該ダイアログ画面(オペレータへのガイダンス)を表示させたいプラントの状況のみを、プラント内の制御ポイント変数名と等式や不等式をはじめとする演算子やその他専用ライブラリーを用いて指定しておき、該制御ポイントへのオペレータのマニュアル変更操作が生じるたびに上述条件式を実行して、該ダイアログ画面の表示要否をデジタル的に確認するようになっている。
【0082】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、制御ポイント毎に条件式を記憶させておき、条件式には、該ダイアログ画面(オペレータへのガイダンス)を表示させたいプラントの状況のみを、プラント内の制御ポイント変数名と等式や不等式をはじめとする演算子やその他専用ライブラリーを用いて指定しておき、該制御ポイントへのオペレータのマニュアル変更操作が生じるたびに上述条件式を実行して、該ダイアログ画面の表示要否をデジタル的に確認するようになっている。
【0083】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、オペレータアシスト機能として表示するダイアログ画面上にOK釦やForce釦やCancel釦を備え、オペレータ判断が選択できる構造を有することで、前記条件式でのプラント状況の任意指定の自由度と、及び、ダイアログ画面表示内容を見たオペレータが、プラント状況を見渡して再検討した結果に基づいて、操作の継続又は操作中断をダイアログ画面上でも選択できる自由度との、2段階の自由度を構造的に有している。
【0084】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、判明したプラント操業上の事実に基づき、経験則としてのソフトウエアインターロック内容を、条件式として反映して、条件式の数を、順次、追加登録してゆくことで最大効果を発揮できる構造を持つことで、所謂、“ナレッジ(過去のノウハウの蓄積踏襲)”として誤操作防止のプラント操業条件を扱えることが可能な構造を持つようになっている。
【0085】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、現在プラント状況に対する該制御ポイントへのマニュアル変更操作に関して、“行ってはならない状況”を条件式として特定することで、関連制御ポイント(パラメーター)の誤操作を防止するようになっている。
【0086】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、現在プラント状況に対する該制御ポイントのSP値(制御目標値)等へのマニュアル変更操作が生じた際に、特定の“プラントの状況”を条件式に指定することで、昇温中とか隣接制御ループの制御モード設定内容等のプラントの詳細な状況に応じたチューニングガイダンス(PID制御ポイント等への制御定数のチューニングに関するガイダンス及び操作禁止通知)を表示できるようになっている。
【0087】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、デシジョンテーブルを、マトリックステーブルや状態遷移図等に容易に置き換えることが可能な構造を持つようになっている。
【0088】
又、本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法は、デシジョンテーブルを、プラント制御装置内のプラントモニター画面(グラフィック画面)の画面切り替え操作部分(画面切り替え操作部分)や、検出したアラームのオペレータ確認操作釦部分等に容易に移入することが可能な構造を持つようになっている。
【0089】
これにより、従来マニュアル操作の自由度と誤操作防止機能を両立する汎用的なプラント制御装置オペレータへの操作支援方法を提供することが可能となる。
【0090】
又、重大事故や甚大事故に繋がる既知の危険運転パターン(プラント状況)を関係制御ポイントの条件式に登録しておけば、危険操作そのものを操作面からも恒久的に防止することが可能となる。
【0091】
又、定常領域運転でも“設定変更作業やチューニング作業”に関して、例えば、目標値マニュアル操作に関しても品種や工程や他アラーム等の詳細タイミングに基づいたガイダンスを表示することが可能となり、操業手順書(SOP)内容を反映しやすくなることで、チューニング関連の誤操作機会を減らす。
【0092】
又、実現手段(必要設備)としても、専用DB等の高度化システムを用いる事なく“プラント制御装置”での提供が可能となる。
【0093】
又、運用メンテナンス面でも、一個の条件式を順次該当制御ポイントに設定できる自在性を持ち(徐々に数を増やして“囲い込み”を行い防止精度を強化してゆく)、オペレータ理解も得られやすく、蓄積踏襲が可能な所謂“ナレッジ(ノウハウ)”ともなる。
【0094】
以上の如く、操作の根元(手入力操作)に着目して、“次に行うべき操作手順”ではなくて、回避したいプラント状況のみを公知のデシジョンテーブルを用いて指定してダイアログ表示する等で、非定常運転領域でも汎用性を備えた“操作系インターロック”機構を図ることが可能な、プラント制御装置のオペレータ操作支援方法を本発明は提供する。
【0095】
又、本発明のデシジョンテーブル部分を、ツリー状(デシジョンテーブルを復層化)に配する事でプラント状況識別の高度化が可能となる。又、同じく、本発明のデシジョンテーブル部分を、生産品や操業種についての前後関係や切り替え条件を表したマトリックス図に置き換えることや操業手順を状態遷移図に置き換えることで、操業条件判定の更なる自動化や操業手順書の電子化(SOP電子化)に繋げることがプラント制御装置の提供機能として可能となる。
【0096】
又、デシジョンテーブル条件式に書き込み処理を加えることにより、統計データを作ったりプラント関係者への同報処理を加えたりすることも容易に可能となる。更に、プラント制御装置のアラームのオペレータ確認処理部分や制御用LAN回線等の診断結果へのオペレータ確認操作部分やプラント監視の際のオペレータが決定する次グラフィック画面の選定部分(画面送り部分)に、本発明のデシジョンテーブルを置く事でも、プラント制御装置自身の更なるインテリジェント化が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法の一実施形態を模式的に表したブロック図である。
【図2】本発明に関わるプラント制御装置の表示するグラフィック画面である。
【図3】本発明に係るプラント制御装置のオペレータの運転支援方法の実施形態に於ける処理手順についての詳細説明図である。
【図4】本発明に関わるデシジョンテーブルの説明図である。
【図5】本発明に関わるダイアログ画面の説明図である。
【図6】本発明の支援方法の実施形態に於ける動作についての詳細説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1〜5 プラント制御装置DBの構成と手段
1 プラント現在値情報
2 管理情報(デシジョンテーブル、ダイアログ画面を含む)
3 タグ選択
4 メモリー参照手段
4−1 デシジョンテーブル演算手段
4−2 演算結果表示手段
5 Enter
6 プラント制御装置
7 プラント制御装置DB
8 プラント制御装置表示装置
10〜13 フローチャート
20〜32 DB
G1〜G3 グラフィック画面
P1〜P5 操作手順
D1〜D22 デシジョンテーブル記載例
T1〜T4 デシジョンテーブル フォーム
W1〜W13 アシスト機能(ダイアログ画面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する個々装置からデータを入力してリアルタイムにコンピュータ処理を行い、処理結果を画面に表示してプラントの制御状況を知らせて、制御状況に応じて若しくは今から開始するプラント操業内容に応じてオペレータが個々制御ポイントに対して実施する設定変更操作をするプラント制御装置のオペレータの運転支援方法に於いて、
プラント制御装置が対象プラントから入力した制御ポイント現在値情報と、並びに、プラント制御装置自身が維持管理しているプラント全域の現在生産中の品種名や詳細仕様や制御中の工程情報と、シーケンスプログラム稼動状況を示すシーケンスプログラムステータス情報と製造品種毎のレシピ情報と生産実績情報と将来生産計画情報と製造品種組成を示す製品マスター情報と個々制御ポイント毎に設定されている制御アルゴリズム定数情報と制御ポイント毎に管理されているアラーム履歴情報とプラント制御装置構成機器の故障情報等とを有するプラント管理情報と、を取得し記憶するステップと、
前記制御ポイント現在値情報及び前記プラント管理情報を用いた条件式と、同条件式が成立した場合に表示するダイアログ画面の番号が予め記載されているデシジョンテーブルを、プラント制御装置がプラント制御のために管理する制御ポイント毎に記憶するステップと、
オペレータが該制御ポイントへのマニュアル変更操作を行うたびに前記デシジョンテーブルの条件式を取り出すステップと、
該条件式に記載されている前記制御ポイント現在値情報及び前記プラント管理情報を参照するステップと、
前記条件式の演算を行うステップと、
前記条件式が成立した場合に、当該指定された番号を持つダイアログ画面をプラント制御装置の表示装置に表示するステップと、
を備えることを特徴とするプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項2】
前記デシジョンテーブルの条件式には、前記制御ポイントの変数名と等式や不等式による演算子及び専用ライブラリーを用いて指定しておき、該制御ポイントへのオペレータのマニュアル変更操作が生じるたびに上述条件式を実行して、該ダイアログ画面の表示要否を確認することを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項3】
前記ダイアログ画面上にOK釦、Force釦、及びCancel釦を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項4】
前記デシジョンテーブルの条件式の数を、順次、追加登録してゆくことができる構造を持つことで、過去のノウハウの蓄積踏襲を行い、誤操作防止のためのプラント操業条件を扱えることが可能な構造を持つことを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項5】
前記制御ポイントへのマニュアル変更操作に関して、“行ってはならない状況”を前記デシジョンテーブルに条件式として特定することで、関連制御ポイントの誤操作を防止することを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項6】
前記制御ポイントの制御目標値へのマニュアル変更操作が生じた際に、特定の“プラントの状況”を条件式に指定することで、隣接制御ループの制御モード設定内容等のプラントの詳細な状況に応じた、該制御ポイントへのチューニングガイダンスを表示できることを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項7】
前記デシジョンテーブルを、マトリックステーブルや状態遷移図に容易に置き換えることが可能な構造を持つことを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。
【請求項8】
前記デシジョンテーブルを、プラント制御装置でプラント監視するために行われる“次グラフィック画面のオペレータ選択操作”部分や、プラント制御装置が検出してオペレータに通知した制御ポイント単位のアラーム情報に関する“オペレータ確認操作”部分にも容易に移入することが可能な構造を持つことを特徴とする請求項1記載のプラント制御装置のオペレータの運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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