説明

プラント監視装置およびプラント監視方法

【課題】
プラントの性能や健全性の長期の変化傾向を監視し、将来のメンテナンスに利用可能な情報を与える。
【解決手段】
プラントの各部に設けられた複数のセンサによる計測データを時系列に格納し、センサごとに所定データ数の計測データを用いて工程能力指数を算出し、時系列の工程能力指数から回帰式を求め、プラントの正常および異常を判定する前記センサごとの工程能力指数のしきい値と前記回帰式とから、前記センサごとの工程能力指数が前記プラントの異常を示す時期を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラントに設けられた計測信号に基づいてプラントの運転状態をモニタし、モニタ結果からプラントの長期傾向を把握し、プラントの異常を監視するプラント監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガスタービンや蒸気タービンを用いる発電プラント等の大規模なプラントでは、回転機や弁あるいは配管等のプラントを構成するプラント設備の故障や効率低下を早期に発見するために、プラント監視装置が設けられている。
【0003】
このプラント監視装置は、各種検出器からの検出信号を入力し、その検出信号を処理して自動的に監視対象の異常を検知するものである。プラント監視装置に入力される検出信号としては、圧力や流量あるいは温度といったプラントの監視制御運転に使用されるプロセス量のみならず、振動センサ等で検出される異常監視専用の現場センサからの検出信号も入力されるものもある。
【0004】
一方、大規模なプラントにおいては、膨大かつ多種の機器設備が連動して運用されているので、各々の検出信号は経時的に常に連動している。
そこで、例えば特許文献1に記載のプラント監視装置では、監視対象であるプラント設備に関連の大きいプロセス状態量を履歴データとして蓄積しておき、その履歴データに基づいて監視対象であるプラント設備に関連するプロセス状態量の主成分を算出し、その寄与率を考慮に入れて異常判定のための直交座標系を作成する。そして、異常判定にあっては、一定周期で入力したプロセス状態量につき、算出した直交座標系上で履歴データとの距離に基づいて、その異常判定を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−241121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大規模なプラントにおいては、通常、予め計画されたメンテナンス以外はプラントを止めないことを前提に運用されている。つまり、異常の発生を検知することも重要だが、予防保全の観点からは、異常が発生する時期を予測して適切なメンテナンス時期を把握し、適切なメンテナンスによりプラントに異常を発生させないことが重要となる。
【0007】
しかしながら特許文献1に記載された従来技術では、プロセス状態量を測定した時点で異常が発生したかどうかを何らかの指標値の大きさにより検知するものであり、長期の変化傾向をとらえるものではないため、異常となるまでの時間がどのくらい残されているかは分からない。
【0008】
また、通常、プラントの監視に際して利用されるプロセス状態量やセンサ計測値はバラツキを有しており、予測に際してこれらのバラツキを考慮する必要がある。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、プラントの性能や健全性の長期の変化傾向を監視し、将来のメンテナンスに利用可能な情報を与えるプラント監視装置およびプラント監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明に係るプラント監視装置よれば、プラントの各部に設けられた複数のセンサによる計測データを時系列に格納する計測データデータベースと、前記センサごとに所定データ数の計測データを用いて工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、前記工程能力指数を時系列に格納する工程能力指数データベースと、前記時系列の工程能力指数から工程能力指数の長期傾向を示す回帰式を求める長期傾向算出部と、前記回帰式と異常判定しきい値とから、前記センサごとの工程能力指数が前記プラントの異常を示す時期を予測する異常予測部と、から構成されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係るプラント監視装置によれば、前記工程能力指数算出部において、前記センサごとに前記計測データの下限界値、上限界値または両限界値が予め定められ、前記センサの計測データに下限界値のみ定められている場合には、下限界値のみを用いた工程能力指数を求め、前記センサの計測データに上限界値のみ規定されている場合には、上限界値のみを用いた工程能力指数を求め、前記センサの計測データに両限界値が規定されている場合には、上限界値および下限界値を用いた工程能力指数から小さい値を工程能力指数として求めること、を特徴とする。
【0011】
またさらに、本発明に係るプラント監視装置によれば、プラントの正常および異常を判定する前記センサごとの計測データの許容されるバラツキと、センサによる時系列の計測データにおける偏差が変動する予想範囲とから、前記の異常判定しきい値を計算する判定基準作成部を、備えたことを特徴とする。
【0012】
またさらに、本発明に係るプラント監視装置によれば、前記プラントは、タービンを備えた発電プラントであって、前記センサは、前記タービンに設けられたことを特徴とする。
【0013】
なおさらに、本発明に係るプラント監視装置によれば、前記工程能力指数算出部において、工程能力指数が負の値となった場合には、直ちにプラントの異常を出力することを特徴とする。
また、本発明に係るプラント監視方法によれば、プラントの各部に設けられた複数のセンサによる計測データを時系列に格納する計測データ格納手順と、前記センサごとに所定データ数の計測データを用いて工程能力指数を算出する工程能力指数算出手順と、前記工程能力指数を時系列に格納する工程能力指数格納手順と、前記時系列の工程能力指数から回帰式を求める長期化傾向算出手順と、プラントの正常および異常を判定する前記センサごとの工程能力指数の異常判定しきい値と前記回帰式とから、前記センサごとの工程能力指数が前記プラントの異常を示す時期を予測する異常予測手順と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラント監視装置等によれば、プロセス状態量やセンサ計測値のバラツキを考慮したプラントの性能や健全性の長期の変化傾向を監視でき、将来のメンテナンスに利用可能な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置のフローチャートである。
【図3】出力するグラフの具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置の構成図である。
【0017】
100は発電プラント、200はデータ収集装置、300は異常予測装置、400はプラント監視装置である。なお、本発明の第1の実施形態においては、プラントを発電プラント100として説明するが、これに限定されるものではない。例えば、原子力プラント、化学プラント、鉄鋼プラント等の各種プラントに適用できる。
【0018】
発電プラント100は、タービン110、補器類120、センサ130、から構成されている。タービン110は、蒸気タービン、ガスタービン、水車等が含まれる。補器類120は、発電所などのタービンを除くその付属設備を意味し、発電機、ボイラー、水圧管路、原子炉等が含まれる。
【0019】
なお、発電プラントは、ライフラインを支えるプラントの一種であり、不意の発電プラントの停止は極力避けることが社会的に求められる。夏季の電気需要が非常に多い時期の発電プラントの停止は、電力供給の一部停止等による工場の稼動停止など社会的に大きな影響を与える可能性もある。よって、電気需要が多い時期に発電プラントが停止しないように、予防保全の観点からメンテナンスを適切に行うことが望まれる。
【0020】
特に発電プラントのタービンのメンテナンスは、通常の運用において発電プラントを止めない為に非常に重要である。さらに、タービンのメンテナンスはプラントの停止を伴うため、適切な時期にメンテナンスが行われることが望まれる。また、タービンの故障は長期間の発電プラントの停止を余儀なくされるため、予防保全の観点から適切なメンテナンスが望まれる。
【0021】
よって、発電プラント、特に発電プラントのタービンに適用することにより、不意な発電プラントの停止を予防することができる。さらに、適切な時期にメンテナンスを行うことで、発電プラントのライフサイクルコストを少なくすることができる。
【0022】
センサ130は、タービン110および補器類120に取り付けられた発電プラント100のプロセス状態量を把握するための各種センサや、異常監視のために取り付けられたセンサである。具体的には、振動計、温度計、流量計、圧力計等のセンシング装置である。
【0023】
プラント監視装置400は、データ収集装置200、異常予測装置300、入力装置410、出力装置420によって構成されている。データ収集装置200および異常予測装置300は、図示しないが、中央演算処理装置(CPU)、メモリやハードディスク等の記憶装置、他の装置とデータ授受を行う入出力装置等を備えたコンピュータであって、後述する各部はプログラムがコンピュータで実行されることにより実現されている。なお、必要に応じて各部を専用の処理基板(ボード)としても良い。また、本発明の第1の実施形態においては、データ収集装置200と異常予測装置300とは別装置として説明するが、1つの装置に集約することもできる。
【0024】
入力装置410は、キーボードやマウス等のマンマシンインターフェースとして利用される各種入力装置全般を意味している。ユーザーが異常予測装置300に初期設定を行う場合や、ユーザーが異常予測装置300からの出力結果に対して異常予測装置300に何らかの指示を入力する場合等に用いられる。
【0025】
出力装置420は、ディスプレイやプリンタ等のマンマシンインターフェースとして利用される各種出力装置全般を意味している。ユーザーに異常予測装置300からの出力結果を示す場合等に用いられる。
【0026】
なお、図示しないが、データ収集装置200も入力装置410および出力装置420を接続可能であり、初期設定等を行う際に用いることがある。勿論、入力装置410および出力装置420を接続したままでも良い。
【0027】
計測データ収集装置200は、計測データ入力部210、計測データデータベース(以下、計測データDB)220から構成されている。計測データ収集装置200は、発電プラント100に設けられた複数のセンサ130からの出力データを計測データ入力部210にて取得し、センサごとに時系列で計測データDB220に格納する。
【0028】
計測データ入力部210について詳細に説明する。計測データ入力部210では、まず、ユーザーが予め定めた周期ごとに、複数のセンサ130から入力される計測データを取得し、取得した計測データごとに、センサ識別情報と取得日時とを関連付ける。ここで、センサ識別情報は、センサごとに定められたセンサ固有の識別コード等である。例えば、アルファベットや数字等からなるコードを用いても良いし、ユーザーが把握しやすいように命名した名称等を用いても良い。なお、計測データを取得する周期は、計測データ入力部210に入力される計測データ全てを一括で取得するように設定しても良いし、計測データの特性に合わせてセンサ130ごとに取得する周期を設定するようにしても良い。いずれにしても、周期はユーザーが予め計測データ入力部210に設定する。
【0029】
次に、計測データとセンサ識別情報と取得日時とが関連付けられたデータが、センサ識別情報ごとの計測データが時系列となるように、計測データDB220に格納する。計測データDBでは、センサ識別情報ごとの計測データが時系列に行列の形で蓄積されることとなる。具体的には、取得日時と取得日時における計測データとを一行とした表データとする。また、計測データの取得周期が共通であるセンサが複数ある場合にも、取得日時とセンサ識別情報ごとの複数の計測データを一行とした表データとする。例えば、2009年5月1日から2009年5月21まで、毎日10時00分に、センサ識別情報「軸振動A」と「軸振動B」の計測データを取得した際に、計測データDB220に格納された状態のデータは、下表のようになる。
【0030】
【表1】

異常予測装置300は、工程能力指数算出部310、長期傾向算出320、判定基準作成部330、異常予測部340、出力部350、工程能力指数データベース(以下、工程能力指数DB)360、判定基準データベース(以下、判定基準DB)370とから構成されている。異常予測装置300は、データ収集装置200からセンサ識別情報ごとの時系列の計測データを取得し、センサ識別情報ごとの計測データからプラントの異常発生時期を予測し、その結果を出力装置420に出力する。以下、各部について詳細に説明する。
【0031】
工程能力指数算出部310は、データ収集装置200からセンサ識別情報ごとの時系列の計測データから、センサ識別情報ごとの工程能力指数を算出する。ある時間tにおける工程能力指数PCI(t)は、ユーザーが予め設定した計測データ値の限界値によって、以下の式(1),式(2),式(3)のいずれかを選択し、計算する。なお、以下の式(1),式(2),式(3)において、ULは上限界値、LLは下限界値、Δtはセンサの計測データの収集周期、kは工程能力指数PCI(t)を算出するのに用いるサンプル数、min{A,B}は値A,Bのいずれか大きい値を出力すること、μ(t)は時間(t−k・Δt)から時間(t)の間の計測データの平均値、σ(t)は時間(t−k・Δt)から時間(t)の間の計測データの標準偏差、を意味する。
【0032】
センサが出力する計測データ値の限界値が、上限界値および下限界値のいずれも存在する場合には、以下の式(1)を用いて工程能力指数PCI(t)を算出する。
PCI(t)=min[(UL−μ(t))/3σ(t) ,
(μ(t)−LL)/3σ(t)] ・・・・・・(1)
センサが出力する計測データ値の限界値が、上限界値のみの場合には、以下の式(2)を用いて工程能力指数PCI(t)を算出する。
【0033】
PCI(t)=(UL−μ(t))/3σ(t) ・・・・・・(2)
センサが出力する計測データ値の限界値が、下限界値のみの場合には、以下の式(3)を用いて工程能力指数PCI(t)を算出する。
【0034】
PCI(t)=(μ(t)−LL)/3σ(t) ・・・・・・(3)
上記の式(1)、式(2)、式(3)で計算した工程能力指数PCI(t)は、平均値と限界値との差が大きくなるほど大きな値となる。つまり、工程能力指数PCI(t)が大きいほど限界値までの余裕が大きいことを示す。また、工程能力指数PCI(t)は、標準偏差が小さくなるほど大きな値となる。つまり、工程能力指数PCI(t)が大きいほど、計測データのバラツキが小さいことを示す。つまり、工程能力指数PCI(t)は限界値までの余裕度とバラツキを総合的に考慮した指標となっている。
【0035】
なお、上記の式(1)、式(2)、式(3)中のサンプル数kは、計測データの平均と標準偏差を算出するために必要十分なサンプルの個数とする。
具体例を用いて工程能力指数PCI(t)の算出を詳細に説明する。なお、説明を簡単にするために、表1の時系列の計測データを用いてサンプル数kを6、上限界値ULを120、下限界値LLを10とする。
【0036】
5月6日の10時00分の軸振動Aの工程能力指数は、表1の軸振動Aの5月1日の10時00分から5月6日の10時00分までの6個の計測データを使用して、式(1)に従って算出する。さらに、5月7日の10時00分の軸振動Aの工程能力指数は、表1の軸振動Aの5月2日の10時00分から5月7日の10時00分までの6個の計測データを使用して、式(1)に従って算出する。このように、軸振動Aについての5月6日の10時00から5月21日の10時00分の工程能力指数を順次求める。同様に軸振動Bについても、5月6日の10時00から5月21日の10時00分の工程能力指数を順次求める。ここで、求めた工程能力指数を表2に示す。
【0037】
【表2】

工程能力指数DB360は、工程能力指数算出部310にて算出したある時間tでの工程能力指数を時系列で蓄積する。工程能力指数DB360に格納された状態のデータの具体例は、前記の表2のようになる。
【0038】
長期傾向算出部320は、工程能力指数DB360に蓄積された工程能力指数の時系列データを用いて、回帰分析により、工程能力指数の長期傾向を示す回帰式を算出する。
式(4)は工程能力指数の長期傾向を示す回帰式である。式(4)において、xは日時、yは工程能力指数の値である。ここで、aおよびbは式(5)で定義される係数である。式(5)において、「xの平均値」は回帰式の算出に使用する工程能力指数の日時xの平均値、「yの平均値」は回帰式の算出に使用する工程能力指数yの平均値、nは回帰式の算出に使用する工程能力指数のデータの個数である。なお、回帰分析において日時xは日時データそのものを用いる必要はなく、日時xが時系列に並ぶように適切な変換をおこなった値を用いればよい。例えば、過去のデータほど小さな値となるようにすれば良い。
【0039】
y=ax+b ・・・・・・(4)
【0040】
【数1】

長期傾向算出部320にて算出した回帰式の具体例として、前記表2の軸振動Bの5月6日の10時00分から5月21日の10時00分の16個の工程能力指数をプロットし、さらに、これらの16個のデータを使用して前記式(4)と式(5)とを用いて算出した回帰式のグラフ(破線)をつなげて表示したグラフを図3に示す。
【0041】
判定基準作成部330は、工程能力指数の正常・異常を判別する判定基準を作成する。正常である場合には工程能力指数が大きくなり、異常である場合には工程能力指数が小さくなるとの性質から、判定基準はセンサ識別情報ごとに工程能力指数の閾値として設定する。判定基準はユーザーがあらかじめセンサ識別情報ごとに設定した固定の閾値を用いることができる。また、センサによる計測データの許容されるバラツキと、時系列の計測データにおける偏差が変動する予想範囲とから、判定基準作成部330にて計算させてもよい。例えば、センサによる計測データの許容されるバラツキを標準偏差の3倍とし、時系列の計測データにおける偏差が変動する予想範囲を標準偏差とすると、閾値は1.33と計算できる。勿論、計測データの許容されるバラツキ、および時系列の計測データにおける偏差が変動する予想範囲は、計測データの特性に合わせて他の値とする事ができるのは言うまでもない。また、ユーザーが予め設定する場合には、例えば、計測データの偏差にも変動があることを考慮し、通常の部位に設置されたセンサによる工程能力指数の判定基準となる閾値は1.3とし、故障した場合に大きな問題となる部位に設置されたセンサによる工程能力指数の判定基準となる閾値は1.5と設定する。
【0042】
判定基準作成部330にて作成されたセンサ識別情報ごとの工程能力指数の閾値は、判定基準DB370に格納する。具体的には、センサ識別情報と工程能力指数の閾値を関連付けて判定基準DB370に格納する。
【0043】
異常予測部340は、判定基準DB370に格納された工程能力指数の閾値と、長期傾向算出部320で算出された回帰式とを用いて、回帰式から算出される工程能力指数の値が判定基準である工程能力指数の閾値以下となる時期を予測する。具体的には、前記式(4)の回帰式の工程能力指数yに判定基準DB370から得られた工程能力指数の閾値を代入し、日時xを算出することにより求める。例えば、軸振動Bの閾値が1.3であった場合に、図3のグラフに示した例では、破線で示した回帰式のグラフが判定基準である1.3を下回るのは6月25日であることがわかる。
【0044】
出力部350は、出力装置420を用いて工程能力指数DB360に蓄積されている時系列デの計測データをグラフ表示するとともに、異常予測部340で求めた工程能力指数が判定基準の閾値以下となる時期を表示する。例えば、軸振動Bの閾値が1.3であった場合には、図3のグラフを出力装置420に表示する。
【0045】
次に、プラント監視装置における処理を、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、図2のフローチャートによるプラント監視装置における処理を開始する前に、判定基準作成部330にて判定基準はセンサ識別情報ごとに工程能力指数の閾値として設定されており、センサ識別情報ごとの工程能力指数の閾値は、判定基準DB370に格納されている。
【0046】
ステップ1(S1)では、計測データ収集装置200にて、発電プラント100に設けられた複数のセンサ130からの出力データを計測データ入力部210にて取得する。ここでは、ユーザーが予め定めた周期ごとに、複数のセンサ130から入力される計測データを取得し、取得した計測データごとに、センサ識別情報と取得日時とを関連付ける。
【0047】
ステップ2(S2)では、計測データ入力部210に取得した計測データをセンサ識別情報ごとに時系列で計測データDB220に格納する。
ステップ3(S3)では、工程能力指数算出部310にて、まず、計測データDB220に蓄積されているデータのうち、処理対象とする時系列の計測データを抽出して取得する。さらに、取得した時系列の計測データを使用して、式(1),式(2),式(3)のいずれかを選択して、ある時間tでの工程能力指数PCI(t)を算出する。なお、センサが出力する計測データ値の限界値が上限界値および下限界値のいずれも存在する場合には式(1)を、センサが出力する計測データ値の限界値が上限界値のみの場合には式(2)を、センサが出力する計測データ値の限界値が下限界値のみの場合には式(3)を、用いてある時間tでの工程能力指数PCI(t)を算出する。
【0048】
ステップ4(S4)では、工程能力指数算出部310にて算出したある時間tでの工程能力指数を時系列で工程能力指数DB360に格納する。
ステップ5(S5)では、長期傾向算出部320にて、工程能力指数DB360に蓄積されているデータから、処理対象とするセンサの工程能力指数データを、処理対象期間分のデータだけ抽出して取得する。勿論、工程能力指数データは時系列で取得する。
【0049】
ステップ6(S6)では、長期傾向算出部320にて、取得した時系列の工程能力指数データを使用して、回帰分析により上記式(4)および式(5)を用いて工程能力指数の長期傾向を示す回帰式を算出する。
【0050】
ステップ7(S7)では、異常予測部340にて、判定基準DB370に格納された工程能力指数の閾値と、算出した回帰式に基づき、回帰式から算出される工程能力指数の値が判定基準である工程能力指数の閾値以下となる時期を予測する。
【0051】
ステップ8(S8)では、出力部350にて、出力装置420を用いて工程能力指数DB360に蓄積されている時系列デの計測データをグラフ表示するとともに、異常予測部340で求めた工程能力指数が判定基準の閾値以下となる時期を表示する。
【0052】
なお、工程能力指数算出部310にて計算したある時間tの工程能力指数PCI(t)が負の値となった場合には、直ちにプラントが異常であることを出力部350から出力装置420を用いてユーザーに表示することもできる。工程能力指数の特徴として、平均値が限界値を超えた場合には、負の値となるからである。
【0053】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、発電プラントに設置された複数のセンサの計測データに基づいて、発電プラントの性能や健全性の長期傾向を工程能力指数という形式で監視し、工程能力指数が所定の判定基準を下回る時期を予測して表示することを可能として、ユーザーがあらかじめ将来の対策を立案し、メンテナンスの費用対効果を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0054】
100 発電プラント
200 データ収集装置
300 異常予測装置
400 プラント監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの各部に設けられた複数のセンサによる計測データを時系列に格納する計測データデータベースと、
前記センサごとに所定データ数の計測データを用いて工程能力指数を算出する工程能力指数算出部と、
前記工程能力指数を時系列に格納する工程能力指数データベースと、
前記時系列の工程能力指数から工程能力指数の長期傾向を示す回帰式を求める長期傾向算出部と、
前記回帰式と異常判定しきい値とから、前記センサごとの工程能力指数が前記プラントの異常を示す時期を予測する異常予測部と、
から構成されたことを特徴とするプラント監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント監視装置であって、
前記工程能力指数算出部において、
前記センサごとに前記計測データの下限界値、上限界値または両限界値が予め定められ、
前記センサの計測データに下限界値のみ定められている場合には、下限界値のみを用いた工程能力指数を求め、
前記センサの計測データに上限界値のみ規定されている場合には、上限界値のみを用いた工程能力指数を求め、
前記センサの計測データに両限界値が規定されている場合には、上限界値および下限界値を用いた工程能力指数から小さい値を工程能力指数として求めること、
を特徴とするプラント監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラント監視装置において、
プラントの正常および異常を判定する前記センサごとの計測データの許容されるバラツキと、センサによる時系列の計測データにおける偏差が変動する予想範囲とから、前記の異常判定しきい値を計算する判定基準作成部を、備えたことを特徴とするプラント監視装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラント監視装置において、
前記プラントは、タービンを備えた発電プラントであって、
前記センサは、前記タービンに設けられたことを特徴とするプラント監視装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラント監視装置において、
前記工程能力指数算出部において、工程能力指数が負の値となった場合には、直ちにプラントの異常を出力することを特徴とするプラント監視装置。
【請求項6】
プラントの各部に設けられた複数のセンサによる計測データを時系列に格納する計測データ格納手順と、
前記センサごとに所定データ数の計測データを用いて工程能力指数を算出する工程能力指数算出手順と、
前記工程能力指数を時系列に格納する工程能力指数格納手順と、
前記時系列の工程能力指数から回帰式を求める長期化傾向算出手順と、
プラントの正常および異常を判定する前記センサごとの工程能力指数の異常判定しきい値と前記回帰式とから、前記センサごとの工程能力指数が前記プラントの異常を示す時期を予測する異常予測手順と、
を備えたことを特徴とするプラント監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−60012(P2011−60012A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209321(P2009−209321)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】