説明

プリオン病の予防及び/又は治療用薬、並びに異常プリオン蛋白質の発現抑制方法

【課題】 プリオン病の予防、又はプリオン病の発症抑制を含む治療用に有効な薬剤を提供し、また、異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法を提供する。
【解決手段】 プリオン病の予防及び/又は治療用薬は、GABAタイプA(GABA)受容体サブユニットβ1(Gabrb1)を標的とし、Gabrb1の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質を有効成分として含有する。異常プリオン蛋白質発現抑制方法は、プリオン感染哺乳動物細胞における異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法であって、Gabrb1の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリオン病の予防、或は発症抑制を含む治療用に有効な薬剤、並びに異常プリオン蛋白質の発現抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリオン病は感染因子となる異常型プリオン蛋白質(PrPres)の蓄積により中枢神経が侵される疾患であり、ヒトをはじめウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、オオジカ、ミンク、ブタ、サル、マウス、ラット、ハムスター、ネコなど多くの哺乳動物においてその発症が認められている。代表的なプリオン病としては、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)や致死性家族性不眠症(FFI:Fatal Familial Insomnia)、ヒト以外では、例えば、牛海綿状脳症(BSE)、スクレイピー、鹿慢性消耗性疾患(CWD)、伝達性ミンク脳症(TME)などが挙げられる。PrPresは正常型プリオン蛋白質(PrPc)と一次構造が同一であるが高次構造が異なり、一般的な高圧蒸気滅菌、乾熱滅菌によってもその感染性がなくなることがなく、ホルマリンやアルコールなどによって変性不活化されない。また、PrPc前駆体のアミノ酸配列は哺乳動物種間での相同性が高く、例えば、ヒトとマウス、ハムスターのようなげっ歯類動物とでは95%以上のホモロジーを有している。これが、動物種を超えてプリオンが感染、伝達される理由であると考えられている。
【0003】
このようなプリオン病の予防や治療用の薬剤、或はPrPresの増殖を抑制する方法として、ペントサンポリサルフェート、キニーネ類、ライソゾーム親和性薬剤、リアクティブ・ダイ〔例えば、特許文献1参照〕、ロイシン、イソロイシン、バリンなどのアミノ酸、またはトレハロース〔例えば、特許文献2参照〕、キノリン誘導体、またはナフチリジン誘導体〔例えば、特許文献3参照〕、可溶性ラミニン受容体前駆体(LRP)の発現を減少させ又は阻害するアンチセンスRNA又はリボザイムからなる薬剤組成物〔例えば、特許文献4参照〕、37kDa/67kDaのラミニン受容体(LRP/LR)に特異的な抗体〔例えば、非特許文献1〕、プリオン蛋白質遺伝子を標的とするsiRNAを用い正常型プリオン蛋白質の発現を抑制することによる異常型プリオン蛋白質抑制方法〔例えば、特許文献5参照〕などの提案がある。しかしながら、有効なプリオン病の予防用薬や治療用薬は未だ見出されていないという現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−40778号公報
【特許文献2】特開2004−292437号公報
【特許文献3】特開2004−99553号公報
【特許文献4】特表2002−501385号公報
【特許文献5】特開2005−73573号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ロイト C.ら(Leucht C.,et al)、イーエムビーオー レポート(EMBO reports)2003年、4巻、3号、290−295頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる現状に鑑みてなされた本発明の目的は、プリオン病の予防、又はプリオン病の発症抑制を含む治療用に有効な薬剤を提供することにある。また、プリオン感染哺乳動物細胞における異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるプリオン病の予防及び/又は治療用薬は、GABAタイプA(GABA)受容体サブユニットβ1(Gabrb1)を標的とし、Gabrb1の作用又は発現、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質を有効成分として含有することを特徴とする。このようなプリオン病の予防及び/又は治療用薬において、Gabrb1調節物質が、Gabrb1に結合するGABA受容体アロステリックモジュレーター(allosteric modulator)であることが好ましく、また、GABA受容体アロステリックモジュレーターが、サリチリデンサリチルヒドラジド(Salicylidene salicylhydrazide:SCS)及びその薬学的に許容される塩から1以上選ばれたものであることが好適である。そして、Gabrb1調節物質が、細胞内に導入されてRNA干渉を誘導しGabrb1のmRNA発現量を低下させる二本鎖RNA又は発現ベクターであることが好ましい。ここで、二本鎖RNAが、配列番号(3)の塩基配列を有する(化学合成オリゴヌクレオチド)Gb1−c−Fと配列番号(4)の塩基配列を有する(化学合成オリゴヌクレオチド)Gb1−c−Rとを用いて二本鎖としたものであることが好ましく、また、発現ベクターが、配列番号(23)の塩基配列を有するGb1−v−1Fと配列番号(24)の塩基配列を有するGb1−v−1Rとを含んで成ること、或は、発現ベクターが、配列番号(25)の塩基配列を有するGb1−v−2Fと配列番号(26)の塩基配列を有するGb1−v−2Rとを含んで成ることが好適である。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明による異常プリオン蛋白質発現抑制方法は、プリオン感染哺乳動物細胞における異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法であって、GABA 受容体サブユニットβ1(Gabrb1)の作用又は発現を阻害的に調節するGabrb1調節物質を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプリオン病の予防及び/又は治療用薬、並びにプリオン感染哺乳動物細胞における異常プリオン蛋白質発現抑制方法によれば、正常型プリオン蛋白質(PrPc)の発現には殆んど影響を及ぼすことなく、異常型プリオン蛋白質(PrPres)の産生を抑制することができる。また、GABA受容体におけるβ1サブユニット以外のサブユニットの発現や作用、機能にも影響を与えることがなく、しかも、β1サブユニットについてもその発現量を低下させるものの、完全に発現を抑えるものではないことから、ほぼ正常な脳機能を維持したまま、異常型プリオン蛋白質の発現量を抑えることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る二本鎖RNAを用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。
【図2】同、実施例1の二本鎖RNAを用いた場合におけるGabrb1及びPrPのmRNA発現量について試験を行なった結果の一例を示すグラフである。
【図3】同、比較例1、2の二本鎖RNAを用いた場合における異常型プリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:比較例1、レーン2:比較例2)。
【図4】同、比較例3、4の二本鎖RNAを用いた場合における異常型プリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:比較例3、レーン2:比較例4)。
【図5】同、比較例5、6の二本鎖RNAを用いた場合における異常型プリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:比較例5、レーン2:比較例6)。
【図6】同、実施例2、3の発現ベクターを用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:実施例2、レーン2:実施例3)。
【図7】同、実施例2、3の発現ベクターを用いた場合におけるGabrb1及びPrPのmRNA発現量について試験を行なった結果の一例を示すグラフである。
【図8】同、比較例の発現ベクターを用いた場合における異常型プリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:比較例7、レーン2:比較例8)。
【図9】同、比較例の発現ベクターを用いた場合における異常型プリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である(レーン1:比較例9、レーン2:比較例10)。
【図10】同、実施例4の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。
【図11】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例11:ピクロトキシン)
【図12】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例12:イソグバシン)
【図13】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例13:ムシモール)
【図14】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例14:無水エタノール)
【図15】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例15:ペントバルビタール)
【図16】同、比較例の薬剤を用いた場合におけるプリオン蛋白質産生量について試験を行なった結果の一例としてウェスタンブロットによる泳動像を示す図面代用写真である。(比較例16:γーアミノ酪酸)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態例について、詳細に説明する。
この実施形態におけるプリオン病の予防及び/又は治療用薬は、GABAタイプA(GABA)受容体サブユニットβ1(Gabrb1)を標的とし、Gabrb1の発現又は作用(機能)、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用(機能)を阻害的に調節するGabrb1調節物質を有効成分として含有するものである。また、異常プリオン蛋白質発現抑制方法は、プリオン感染哺乳動物細胞において異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法であって、Gabrb1の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用(機能)を阻害的に調節すること、即ち、Gabrb1調節物質を用いて異常プリオン蛋白質の発現又は作用を抑制するものである。本実施形態で対象とするプリオン病は、発症が確認されているヤギ、ヒツジ、シカ、オオジカ、ミンク、ブタ、サル、マウス、ラット、ハムスター、ネコなどヒトを含む全ての哺乳動物に係る全てのプリオン病であり、例えば、CJD、GSS、FFI、BSE、スクレイピー、CWD、TMEを挙げることができる。プリオン感染哺乳動物細胞についても上記のようなプリオン病の感染細胞を対象とすることができる。
【0012】
GABA受容体(γ−アミノ酪酸受容体タイプA)は、塩化物イオンのチャネルであり、活性化により塩化物イオンを細胞内に流入させ過分極を起こすことにより神経伝達において抑制性に働いている。殆んどのGABA 受容体は5量体で構成され、構成サブユニットはα、β、γ、δ、ε、π、σに分類され少なくとも16種類が存在する。αサブユニットはα1〜α6(Gabra1〜Gabra6)、βサブユニットではβ1〜β3(Gabrb1〜Gabrb3)、γサブユニットではγ1〜γ3(Gabrg1〜Gabrg3)のサブタイプ(アイソフォーム)がある〔オルセンR.W.ら(OLSEN R.W.,et al)、ファーマコロジカル レビュー(PHARMACOLOGICAL REVIEWS)2008年、60巻、243〜260頁〕。本実施形態では、このようなGABA 受容体サブユニットの内でGabrb1を標的とするGabrb1調節物質を用いるものである。Gabrb1は、哺乳動物において種差による差異は殆んど認められず、蛋白質アミノ酸レベルで、例えばヒト、マウス、ウシにおける相同性は97%以上である。Gabrb1のmRNAを相補するDNAの塩基配列は、マウス(NM_008069)では配列番号(1)、ヒト(NM_000812)では配列番号(2)で表される。配列番号(1)における残基番号1〜1425の塩基配列に相当するマウスGabrb1mRNAのコード領域配列の99.8%(1423/1425)は、配列番号(2)におけるヒトGabrb1mRNAのコード領域のうちの残基番号91〜1513の塩基配列と91%の相同性を有している。本実施形態におけるGabrb1調節物質は、Gabrb1の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節する物質であれば特に限定されず、例えば、RNA、天然抽出或は合成の有機化合物、ペプチドや蛋白質、発現ベクターを挙げることができる。これらのGabrb1調節物質を複数併せて用いることもできる。
【0013】
本実施形態におけるGabrb1調節物質としてのRNAは、Gabrb1遺伝子を標的とし、細胞内でRNA干渉(RNAi:RNAinterference)を誘導しGabrb1の発現を阻害的に調節(抑制)するRNA分子であれば特に限定されないが、二本鎖RNAが好ましい。ここで、哺乳動物細胞におけるRNAiは〔エルバッシュ S.M.ら(Elbashir S.M.,et al)、ネイチャー(Nature)2001年、411巻、428−429頁〕、細胞内に導入或は細胞内に産生させた二本鎖RNAによって、その配列特異的に標的RNAが分解され、標的遺伝子の発現が抑制されるものである。細胞内に導入或は細胞内に産生させた二本鎖RNAはsiRNA(small interferingRNA)とも呼ばれる。RNAiの機構についても多くの研究がなされ解明が進んでおり、その概要は、細胞内に導入された二本鎖RNAがDicerと呼ばれるRNaseIIIファミリー酵素によって21塩基前後のsiRNAとされた後、RNAヘリカーゼで一本鎖化され、一本鎖RNAがRISC(RNA−induced silencing complex)に取り込まれ、取り込まれたsiRNAをガイド鎖としてガイド鎖に相補的な標的mRNAを認識し、RISCを構成するAGO2によって標的mRNAをが切断されてメッセージ量が減り、これにより翻訳が十分行なわれず、結果的に標的遺伝子の発現を抑制するものである。したがって、ガイド鎖としてアンチセンス鎖が選択されるように二本鎖RNAを設計することが好ましく、また、標的遺伝子以外の遺伝子との相同性が高い(例えば15塩基長以上一致するような)配列を選択することを避ける事が好ましい。これにより標的遺伝子以外の発現を抑制してしまうオフターゲット効果を引き起こす可能性を減じることができる。
【0014】
この実施形態における二本鎖RNAの塩基長は、インターフェロン反応を誘導する可能性が低い点では30塩基長以下とすることが好ましく、17塩基以上、29塩基以下がより好ましく、19塩基以上、27塩基以下がさらに好ましい。即ち、対象とする哺乳動物におけるGabrb1のmRNAの塩基配列、例えばマウスを対象とする場合は、配列番号(1)で表される配列から30塩基長以下の部分配列(対応するRNA鎖)を標的塩基配列(センス鎖)として選定すれば良く、ヒトの場合は配列番号(2)で表される配列から30塩基長以下の部分配列を選定すれば良い。また、哺乳動物におけるGabrb1は動物種間の相同性が高く、例えば、ヒトを対象とする標的配列(センスRNA鎖)として、マウスで選定した標的配列を適用できる場合がある。さらに、センスRNA鎖には、例えば3〜4箇所にC⇒U、又はA⇒Gへの変異を加えることもでき、これによりオフターゲット効果を抑えたり、安定なRNAiを誘導できる場合がある点で好ましい。また、二本鎖RNAには、コレステロール修飾、ホスホロチオエート化修飾、2−O−メチル化修飾のような化学修飾を加えることもでき、これによりヌクレアーゼによる分解を抑えたり、安定的に効率よく細胞に導入できる場合がある点で好ましい。そして、さらに効率の高いRNAiを誘導することができる二本鎖RNAの設計についても多くの研究がなされ、二本鎖RNAの設計プログラムが公知であり、このような公知の設計プログラムを利用して二本鎖RNAを選定することもできる。
【0015】
設計した二本鎖RNAは、公知の化学合成法、市販の合成装置を用いて合成することができる。また、cDNAフラグメントなどを鋳型にIn vitro 転写でRNA鎖を調製し、二本鎖RNAを得ることもできるが、多くの煩雑な工程を要し操作の自動化が図り難い点で化学合成法に劣ることがあり、化学合成法が好ましい。得られたRNA鎖は、公知のアニーリング条件で二本鎖化することができる。アニーリング条件は、例えば、2〜10nMの等量のセンス鎖、アンチセンス鎖を混合、85℃〜95℃で数分間加熱した後、徐冷することによって二本鎖化することができる。本実施形態における好ましい二本鎖RNAの具体例は、例えば、配列番号(3)の塩基配列を有するGb1−c−Fと配列番号(4)の塩基配列を有するGb1−c−Rとを用いて二本鎖としたものを挙げることができる。二本鎖RNAの細胞への導入法は、各種トランスフェクション試薬による化学的方法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションのような物理的方法など公知の核酸導入方法を利用することができ、導入する細胞の種類に応じて選択すれば良い。簡便であり、またトランスフェクションの効率、再現性が高い場合がある点ではリポソーム系のトランスフェクション試薬が好ましい。
【0016】
本実施形態におけるGabrb1調節物質としての発現ベクターは、Gabrb1遺伝子を標的とし、細胞内でRNAiを誘導しGabrb1の発現を阻害的に調節する発現ベクターであれば特に限定されない。ベクターとしては、プラスミドベクター、アデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターなどいずれのベクターであっても利用できる。RNAポリメラーゼII、又はIII系のプロモーターを有するベクターが好ましく、転写効率が高く発現量が多い場合がある点ではH1プロモーターやU6プロモーターなどのRNAポリメラーゼIII系のプロモーターを備えるプラスミドベクターがより好ましい。このようなベクターのプロモーター下流に、標的遺伝子を分解することのできるsiRNAを発現させるDNA鎖を挿入し、ライゲーションすることにより発現ベクターを構築することができる。目的のsiRNAを発現させるDNA鎖は、ヘアピン型RNAを発現させるように設計することが望ましく、設計したDNA鎖は公知の化学合成法、市販の合成装置を用いて合成することができる。ヘアピン型RNAを発現させるDNA鎖の設計は、例えば、Gabrb1 mRNAの塩基配列における19塩基以上、30塩基以下の塩基長で選定した標的配列でなるセンスDNA鎖と、このセンスDNA鎖に相補的な標的配列でなるアンチセンスDNA鎖との間にヘアピンループ配列を挟み、5′末端にライゲーション用のクローニングサイトと、3′末端にターミネーター配列とを配置するようにトップ鎖を設計することができる。
【0017】
ここで、センスDNA鎖の設計は前述した二本鎖RNAの設計法と同様の方法により行なうことができる。ヘアピンループ配列は、ループ構造を構成する公知の配列とすることができ、その塩基長は3塩基以上、30塩基以下とすることが好ましく、10塩基以上、30塩基以下がより好ましい。ターミネーター配列は、転写を中止させる配列を含む塩基配列であれば良く、例えば、4以上のT又はAが連続する塩基配列で構成することができる。センスDNA鎖の5′端側の転写開始部位がG又はAでない場合には、G又はAを付加することが好ましい。また、ヘアピンループ配列とセンスDNA鎖又はアンチセンスDNA鎖とに跨る配列において、Tが4以上連続することがない様に設計することが望ましく、これにより転写がストップされることを防ぐことができる場合がある。なお、二本鎖RNAの設計と同様、センス鎖に変異や化学修飾を加えることもできる。また、このようなトップ鎖に相補的な塩基配列を有するボトム鎖を合成する。ボトム鎖の合成に際して、ボトム鎖の5′末端にはライゲーション用のクローニングサイトを配置することが好ましい。合成したトップ鎖とボトム鎖を混合、アニーリングすることによって二本鎖化することが好ましい。アニーリングの条件は、上述の二本鎖RNAの場合と同様の条件とすることができる。ベクターのクローニングサイトを制限酵素で切断した部位に二本鎖化済DNAを挿入し、T4DNAリガーゼを用いてライゲーションすることで発現ベクターを構築できる。サブクローニングした発現ベクターは大腸菌(コンピテントセル)などに導入増幅し使用することができる。このような発現ベクターは、上述の二本鎖RNAの場合と同様にして細胞に導入することができる。本実施形態における好ましい発現ベクターの具体例としては、配列番号(23)の塩基配列を有するGb1−v−1Fと配列番号(24)の塩基配列を有するGb1−v−1Rとを含んで成るプラスミドベクター、或は、配列番号(25)の塩基配列を有するGb1−v−2Fと配列番号(26)の塩基配列を有するGb1−v−2Rとを含んで成るプラスミドベクターを挙げることができる。
【0018】
本実施形態におけるGabrb1調節物質としての有機化合物は、Gabrb1を標的とし、Gabrb1の作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節する天然抽出或は合成の有機化合物であれば、特に限定されない。Gabrb1は動物組織において単独での存在は確認はされておらず、哺乳動物における単独の作用は特定することができないものの、アフリカツメガエルの卵での強制発現でGabrb1単独発現による塩化物イオンチャネルの形成が確認されている〔サンナ E.ら、(Sanna E, et al)モレキュラー ファーマコロジー(Molecular Pharmacology) 1995年、47巻、2号、213−217頁〕。また、サリチリデンサリチルヒドラジド(SCS)は、選択的にGabrb1を含むGABA受容体に対して作用調節し、SCSが阻害的に作用するためにはGabrb1のThr(255)、Ile(308)のアミノ酸残基部位が重要であることが示唆されている〔トンプソン S.A.ら(Thompson S.A.,et al)ブリティッシュ ジャーナル オブ ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)2004年、142巻、97−106頁〕。そして、後述する実験3.において、Gabrb1に結合するGABA受容体アロステリックモジュレーターである薬剤、サリチリデンサリチルヒドラジドをプリオン感染哺乳動物細胞の培養液に添加して培養することによりPrPresの産生を抑制することが確認され、他のGABA受容体に対するアンタゴニストやアゴニストはPrPresの産生に影響を及ぼさないことが確認されている。したがって、サリチリデンサリチルヒドラジド及びその薬学的に許容される塩から1以上選ばれた薬剤はプリオン病の予防及び/又は治療薬の有効成分として有用である。
サリチリデンサリチルヒドラジドは以下の式(1)で示されるものである。
【0019】
【化1】

【0020】
本実施形態におけるGabrb1調節物質としてのペプチドや蛋白質は、Gabrb1を標的とし、Gabrb1の作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するオリゴペプチド、ポリペプチドなどのペプチドや蛋白質であれば特に限定されない。ペプチドや蛋白質としては、例えば、Gabrb1蛋白質に対しての抗体、Gabrb1に親和性を有しGabrb1の機能を阻害するペプチドや蛋白質などを挙げることができる。抗体は、モノクローナル抗体が好ましく、また、パパインやペプシンなどのプロテアーゼで消化分解させて得られるFabやF(ab’)2、F(ab’)2の半分子型還元体Fab’など、フラグメント化した抗体であっても良い。
【実施例】
【0021】
以下、本発明によるプリオン病の予防及び/又は治療用薬、並びに異常プリオン蛋白質発現抑制方法ついて、実施例、比較例を示して具体的に説明するが、これによって本発明を限定するものではない。
【0022】
[実験1:二本鎖RNAを用いたRNAiによる検討]
〔1−1.標的配列及び二本鎖RNA〕
(実施例1)
Gabrb1遺伝子を標的とし、Gabrb1の発現を阻害的に調節するGabrb1調節物質として、マウスGabrb1(NM_008069:配列番号(1))の塩基配列における第820番(G)〜844番(A)配列に相当する25塩基長センスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb1−c−F:5′−GCCAGAGUCGCACUAGGAAUCACUA:配列番号(3))とアンチセンスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb1−c−R:5′−UAGUGAUUCCUAGUGCGACUCUGGC:配列番号(4))から成る二本鎖RNA(Gb1−c)を用いた。Gabrb1標的化学合成オリゴヌクレオチドGb1−c−F、及びGabrb1標的化学合成オリゴヌクレオチドGb1−c−Rは、その標的配列の設計から化学合成、精製までが成され、アニーリングにより二本鎖化されており、Gabrb1遺伝子の発現抑制が保証された市販品(Stealth Select RNAi(商品名)、Invitrogen社製)を用いた。この二本鎖RNAは、センス鎖がsiRNAとして働かないように化学修飾が施されており、RNAaseを含まない水、ここではDEPC(ジエチルピロカーボネイト)処理水に溶解させて使用した。
【0023】
(比較例1)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabra5(GABA受容体α5サブユニット)遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGa5−c−1F:5′−AACAUAGACAACUUCAGAAUUAGGG:配列番号(5))とアンチセンスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGa5−c−1R:5′−CCCUAAUUCUGAAGUUGUCUAUGUU:配列番号(6))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は実施例1の場合と同様の市販品(Stealth Select RNAi(商品名)、Invitrogen社製)を用いた。
【0024】
(比較例2)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabra5遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(Gabra5化学合成オリゴヌクレオチドGa5−c−2F:5′−UUAAACCGCAGCCUUUCAUCUUUCC:配列番号(7))とアンチセンスRNA鎖(Gabra5化学合成オリゴヌクレオチドGa5−c−2R:5′−GGAAAGAUGAAAGGCUGCGGUUUAA:配列番号(8))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は比較例1の場合と同様とした。
【0025】
(比較例3)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrb2遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb2−c−1F:5′−GGAGAGACAAGAGGCUGUCUUACAA:配列番号(9))とアンチセンスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb2−c−1R:5′−UUGUAAGACAGCCUCUUGUCUCUCC:配列番号(10))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は比較例1の場合と同様である。
【0026】
(比較例4)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrb2遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(Gabrb2化学合成オリゴヌクレオチドGb2−c−2F:5′−CCGUAUGAUUCGAUUGCAUCCCGAU:配列番号(11))とアンチセンスRNA鎖(Gabrb2化学合成オリゴヌクレオチドGb2−c−2R:5′−AUCGGGAUGCAAUCGAAUCAUACGG:配列番号(12))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は比較例1の場合と同様である。
【0027】
(比較例5)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrb3遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb3−c−1F:5′−UCACCUUCGGGAGACUCUACCCAAA:配列番号(13))とアンチセンスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb3−c−1R:5′−UUUGGGUAGAGUCUCCCGAAGGUGA:配列番号(14))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は比較例1の場合と同様である。
【0028】
(比較例6)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrb3遺伝子を標的とする25塩基長センスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb3−c−2F:5′−UGGUUUGCUGCGCUCAGAGCGUAAA:配列番号(15))とアンチセンスRNA鎖(化学合成オリゴヌクレオチドGb3−c−2R:5′−UUUACGCUCUGAGCGCAGCAAACCA:配列番号(16))から成る二本鎖RNAを用いた。他の点は比較例1の場合と同様である。
【0029】
〔1−2.プリオン感染哺乳動物細胞及び二本鎖RNAの導入、細胞培養系〕
プリオン感染哺乳動物細胞として、スクレイピープリオンであるRML株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro2a)に持続感染したScN2a細胞を用い、実験1−1で得た実施例1、比較例1乃至6の各二本鎖RNA(siRNA)の導入を行った。培養液には10%牛胎児血清を加えたOptiMEM I(Invitrogen社製)を用い、細胞培養は、5%CO雰囲気、37℃に調整した炭酸ガスインキュベータ内に培養フラスコ又はプレートを静置することにより行なった(以降、細胞培養条件共通)。細胞培養フラスコ(底面積25cm)でコンフルエントに達したScN2a細胞を15%に希釈して細胞培養6穴プレート(底面積9.7cm)に2mLずつ注入し、翌日にリポソーム系トランスフェクション試薬(Lipofectamine RNAiMAX Reagent(商品名)、Invitrogen社製)を2.0μL/穴(ウェル)、実施例1、比較例1乃至6の各siRNAを20nMの濃度となるように添加混合した混合液を各穴に添加、培養することによって細胞に二本鎖RNAを導入した。なお、二本鎖RNAを添加することなく、リポソーム系トランスフェクション試薬のみを加えて、実施例、比較例の場合と同様に培養し対照とした。二本鎖RNAの導入翌日に培地(培養液)を交換し、導入後三日目に培養上清を除き、リン酸バッファー生理食塩水[PBS、pH7.4]を洗浄液として細胞を洗浄した後、洗浄液を十分に除いて各ウェル毎に細胞を回収した。
【0030】
〔1−3.異常型プリオン蛋白質、総プリオン蛋白質産生量(発現量)確認試験〕
実験1−2.で得た回収細胞(各ウェル毎)につき、リシス液[lysis液:0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.5% NP−40(商品名、和光純薬工業(株) オクチルフェニルエーテル)、残部PBS]0.5mLを用いて細胞を溶解し、軽く遠心分離して高分子核酸を除いた。
【0031】
プロテアーゼ抵抗性の異常型プリオン蛋白質(PrPres)産生量確認用サンプルの調製は、高分子核酸除去細胞溶解液にトリチラキウム アルブム(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼK(PK:Proteinase K)を終濃度10μg/mLとなるように加えて37℃で30分反応(蛋白質分解)させた後、フェニルメタンスルホニルフルオリド(phenylmethan sulfonylfluoride:PMSF)を終濃度1mMとなるように加えて蛋白質分解反応を停止させた。蛋白質分解処理した細胞溶解液に核酸分離用シリカとして市販されているFOG((商品名)、Qbiogene社製)を滅菌水(オートクレーブ滅菌蒸留水)で250倍希釈したシリカ懸濁液10μLを加え遠心分離(20,000×g、20分間)してシリカを沈殿させ上清を除いた。この沈殿全量に対し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)用バッファー20μLを加えて懸濁し、95℃10分間の熱変性後にイシカワ、ドウウラ(Ishikawa,Doh−ura)らの方法[イシカワ K.、ドウウラ K.ら、ジャーナル オブ ジェネラル ヴァイロロジー(Journal of General Virology)2004年、85巻、1785−1790頁]に準じて15% トリス・グリシンSDS−PAGEゲルで電気泳動し、ウエスタンブロット法でプロテアーゼ抵抗性の異常型プリオン蛋白質を検出した。ウエスタンブロット法においては、電気泳動した蛋白質をポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(ミリポア社製、PVDFメンブレン)にブロッティングし、プリオン蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体(SPI−BIO社製、SAF83(5000倍希釈))、及び、アルカリフォスファターゼ・コンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(プロメガ社製、(20000倍希釈))、化学発光検出試薬(アマシャム社製、CDP−Star detection reagent(商品名))を使用してプリオン蛋白質の検出を行った。
【0032】
総プリオン蛋白質(Total PrP)産生量確認用サンプルの調製は、PrPresと同様に高分子核酸を除いた細胞溶解液に5倍濃度のサンプルバッファーを4分の1容加えて95℃5分間の熱変性後15%トリス・グリシンSDS−PAGEゲルで電気泳動し、ウエスタンブロット法で各蛋白を検出した。細胞培養乃至電気泳動における蛋白質量の指標となる(正常)コントロールとしてのβ−アクチン(Actin)、及びグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)についても、総プリオン蛋白質産生量確認用サンプルの調製と同様に各サンプル調製を行なった後、10%又は15%トリス・グリシンSDS−PAGEゲルで電気泳動し、ウエスタンブロット法で各蛋白を検出した。ウエスタンブロット法においては、電気泳動した蛋白質をポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(ミリポア社製、PVDFメンブレン)にブロッティングし、プリオン蛋白質に対するマウスモノクローナル抗体(SPI−BIO社製、SAF83(5000倍希釈))、β−Actinに対するモノクローナル抗体(sigma社製)、GAPDHに対するモノクローナル抗体(abcam社製)、及び、アルカリフォスファターゼ・コンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(プロメガ社製、(20000倍希釈))、化学発光検出試薬(アマシャム社製、CDP−Star detection reagent(商品名))を使用して各蛋白質の検出を行った。
【0033】
〔1−4.Gabrb1 mRNA、PrP mRNA発現量確認試験〕
実験1−2.において、実施例1の二本鎖RNAを導入して得られた回収細胞及び対照回収細胞(各ウェル毎)につき、Gabrb1 mRNAの発現量及びPrP mRNAの発現量をリアルタイムRT−PCR法により確認した。各回収細胞についてRNA抽出試薬(Isogen(商品名)、株式会社ニッポンジーン社製)を使用して総RNA(Total−RNA)の抽出を行い、抽出した総RNAの2μgを鋳型に、ランダムヘキサマーをプライマーとして逆転写酵素RTaseを含むcDNA合成試薬キット(PrimeScript 1st strand cDNA Synthesis Kit(商品名)、タカラバイオ社製)を用いて逆転写反応を行うことによりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にして、Gabrb1遺伝子特異的プライマー、又はプリオン(PrP)遺伝子特異的プライマーを用い、DNAポリメラーゼ、検出用色素を含むリアルタイム定量PCR用試薬キット(Platinum SYBR Green qPCR SuperMix−UDG(商品名)、Invitrogen社製)、リアルタイムPCRシステム(ABI7300型、Applied Biosystems 社製)を使用してリアルタイムPCRを行った。Gabrb1遺伝子特異的プライマーとしては、Gabrb1プライマrGb1−1F:5′−AGATGGTGTCCAAGAAGGTG:配列番号(17)、及びGabrb1プライマrGb1−1R:5′−GGCATGTAGGTCTGCAAAAT:配列番号(18)を用いた。PrP遺伝子特異的プライマーとしては、PrPプライマrPrP−1F:5′−AGGACCGCTACTACCGTGA:配列番号(19)、及びPrPプライマrPrP−1R:5′−GCTGCTTGATGGTGATATTG:配列番号(20)を用いた。内部標準としてβ−アクチンを用いた。β−アクチン遺伝子特異的プライマーとして、actin−F:5′−AGGTCATCACTATTGGCAACGA:配列番号(21)、及びactin−R:5′−CACTTCATGATGGAATTGAATGTAGTT:配列番号(22)を用いた。
【0034】
〔実験1の結果〕
実施例1の二本鎖RNAをScN2a細胞に導入した場合における実験1−3.の結果を図1に、また、実験1−4による結果を図2に示した。比較例1乃至6の二本鎖RNAをScN2a細胞に導入した場合における実験1−3.の結果を夫々図3乃至5に示した。図1、2から、Gabrb1遺伝子を標的とする二本鎖RNA20nMのプリオン感染哺乳動物細胞への導入によってRNAiが誘導され、Gabrb1 mRNA発現量が減少すること、また、PrP mRNA発現量が増加し、総PrP蛋白質産生量も増加するが、PrPres産生量は顕著に減少することが確認された。一方、図3乃至5から、比較例1、2のGabra5遺伝子(図3)、比較例3、4のGabrb2遺伝子(図4)、比較例5、6のGabrb3遺伝子(図5)を夫々標的とする二本鎖RNA20nMのプリオン感染哺乳動物細胞への導入によっては、いずれもPrPres産生量が減少することはなく、GABA受容体α5サブユニット、β2サブユニット、β3サブユニットは、PrPres産生に関与しないことが確認された。
【0035】
[実験2:発現ベクターを用いたRNAiによる検討]
〔2−1.標的配列及び発現ベクター〕
(実施例2)
Gabrb1遺伝子を標的とし、Gabrb1の発現を阻害的に調節するGabrb1調節物質として、RNAポリメラーゼIII(pol III)系のヒトH1プロモーターを有するsiRNA発現用プラスミドベクター(pBAsi−hH1(商品名)、タカラバイオ社製)におけるプロモーター下流に、ヘアピン型RNAを発現させる合成DNAを挿入し得られた(siRNA)発現ベクターGb1−v−1を用いた。発現ベクターGb1−v−1に挿入する合成DNAは、マウスGabrb1(NM_008069:配列番号(1))の塩基配列における第663番(G)〜683番(G)に一部変異を加えた21塩基長の標的配列(センスDNA鎖)、このセンスDNA鎖に相補的な標的配列(アンチセンスDNA鎖)、5′末端にライゲーション用のクローニングサイト、センスDNA鎖とアンチセンスDNA鎖との間にヘアピンループ配列、3′端にターミネーター配列を配置した(Top鎖)Gb1−v−1F(5′−GATCCGAGGGTGGAGTTCATAATAGGCTTCCTGTCACCTGTTGTGAACTCCACCTTCTTTTTTA:配列番号(23))と、このGb1−v−1Fに相補的な(Bottom鎖)Gb1−v−1R(5′−AGCTTAAAAAAGAAGGTGGAGTTCACAACAGGTGACAGGAAGCCTATTATGAACTCCACCCTCG:配列番号(24))とした。標的配列の設計は、タカラバイオ株式会社Webサイト内にある設計プログラムを利用して、他の遺伝子と重複せず、安定したヘアピンループを形成する配列を選定した。Gb1−v−1F、Gb1−v−1Rの化学合成は、シグマ社に製造委託した。得られた合成DNA Gb1−v−1FとGb1−v−1Rを混合し95度に加熱してから徐冷してアニーリングさせた後、BamHIおよびHindIIIで切断したsiRNA発現用プラスミドベクターにアニーリング済合成DNAを挿入、ライゲーションし、発現ベクターGb1−v−1を得た。合成DNAを挿入したプラスミド(発現ベクターGb1−v−1)を大腸菌で増幅後、精製キット(QIAprep Spin Miniprep Kit(商品名)、Qiagen社製)によりプラスミド(発現ベクターGb1−v−1)を回収した。
【0036】
(実施例3)
Gabrb1遺伝子を標的とし、Gabrb1の発現を阻害的に調節するGabrb1調節物質として、標的配列(センスDNA鎖)が異なる他は実施例2の場合と同様にして得た発現ベクターGb1−v−2を用いた。発現ベクターGb1−v−2に挿入する合成DNAは、(Top鎖)Gb1−v−2F(5′−GATCCACCGGATGGTCAGGCTGTATCCTTCCTGTCAGATGCAGCCTGATCATTCGGTTTTTTTA:配列番号(25))と、このGb1−v−2Fに相補的な(Bottom鎖)Gb1−v−2R(5′−AGCTTAAAAAAACCGAATGATCAGGCTGCATCTGACAGGAAGGATACAGCCTGACCATCCGGTG:配列番号(26))とした。
【0037】
(比較例7)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrd(GABA受容体δサブユニット)遺伝子を標的とし、細胞内に導入されてRNAiを誘導する(siRNA)発現ベクターGabrd−1を用いた。この発現ベクターGabrd−1は、実施例2の場合と同様のsiRNA発現用プラスミドベクターにおけるプロモーター下流に、ヘアピン型RNAを発現させる合成DNAを挿入し得られる。発現ベクターGabrd−1に挿入する合成DNAは、(Top鎖)Gabrd−1F(5′−GATCCATTTGCTTGGTTCTGTGATGTCTTCCTGTCAACATCATGGAACCAGGCAGATTTTTTTA:配列番号(27))と、このGabrd−1Fに相補的な(Bottom鎖)Gabrd−1R(5′−AGCTTAAAAAAATCTGCCTGGTTCCATGATGTTGACAGGAAGACATCACAGAACCAAGCAAATG:配列番号(28))とした。他の事項は実施例2の場合と同様とした。
【0038】
(比較例8)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrd遺伝子を標的とし、細胞内に導入されてRNAiを誘導する発現ベクターGabrd−2を用いた。実施例2の場合と同様のsiRNA発現用プラスミドベクターにおけるプロモーター下流に挿入され、ヘアピン型RNAを発現させる合成DNAが比較例7と異なる以外は比較例7と同様とした。発現ベクターGabrd−2に挿入する合成DNAは、(Top鎖)Gabrd−2F(5′−GATCCACATGGAGTACACTATGATTGCTTCCTGTCACAGTCATGGTGTATTCCATGTTTTTTTA:配列番号(29))と、このGabrd−2Fに相補的な(Bottom鎖)Gabrd−2R(5′−AGCTTAAAAAAACATGGAATACACCATGACTGTGACAGGAAGCAATCATAGTGTACTCCATGTG:配列番号(30))とした。
【0039】
(比較例9)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrg2(GABA受容体γ2サブユニット)遺伝子を標的とし、細胞内に導入されてRNAiを誘導する(siRNA)発現ベクターGabrg2−1を用いた。この発現ベクターGabrg2−1は、実施例2の場合と同様のsiRNA発現用プラスミドベクターにおけるプロモーター下流に、ヘアピン型RNAを発現させる合成DNAを挿入し得られる。発現ベクターGabrg2−1に挿入する合成DNAは、(Top鎖)Gabrg2−1F(5′−GATCCACCTGGTGTGATAGATGTTTGCTTCCTGTCACAAACGTCTGTCATACCAGGTTTTTTTA:配列番号(31))と、このGabrg2−1Fに相補的な(Bottom鎖)Gabrg2−1R(5′−AGCTTAAAAAAACCTGGTATGACAGACGTTTGTGACAGGAAGCAAACATCTATCACACCAGGTG:配列番号(32))とした。他の事項は実施例2の場合と同様とした。
【0040】
(比較例10)
GABA受容体のβ1以外のサブユニットの発現を阻害的に調節する物質として、Gabrg2遺伝子を標的とし、細胞内に導入されてRNAiを誘導する発現ベクターGabrg2−2を用いた。実施例2の場合と同様のsiRNA発現用プラスミドベクターにおけるプロモーター下流に挿入され、ヘアピン型RNAを発現させる合成DNAが比較例9と異なる以外は比較例9と同様とした。発現ベクターGabrg2−2に挿入する合成DNAは、(Top鎖)Gabrg2−2F(5′−GATCCGAATGGGCTGCTTTACTATCCCTTCCTGTCAGGATGGTGAAGTAGCCCATTCTTTTTTA:配列番号(33))と、このGabrg2−2Fに相補的な(Bottom鎖)Gabrg2−2R(5′−AGCTTAAAAAAGAATGGGCTACTTCACCATCCTGACAGGAAGGGATAGTAAAGCAGCCCATTCG:配列番号(34))とした。
【0041】
〔2−2.プリオン感染哺乳動物細胞及び発現ベクターの導入、細胞培養系〕
プリオン感染哺乳動物細胞として、スクレイピープリオンであるRML株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro2a)に持続感染したScN2a細胞を用い、実験2−1.で得た実施例2、3、比較例7乃至10の各(siRNA)発現ベクターの導入を行った。培養液には10%牛胎児血清を加えたOptiMEM I(Invitrogen社製)を用い、細胞培養は、5%CO雰囲気、37℃に調整した炭酸ガスインキュベータ内に培養フラスコ又はプレートを静置することにより行なった(以降、細胞培養条件共通)。細胞培養フラスコ(底面積25cm)でコンフルエントに達したScN2a細胞を15%に希釈して細胞培養6穴プレート(底面積9.7cm)に2mLずつ注入し、翌日にリポソーム系トランスフェクション試薬(TransFectin Lipid Reagent(商品名)、Bio−Rad社製)を1.5μL/穴(ウェル)、実施例2、3、比較例7乃至10の各発現ベクター(ベクター型siRNA)を0.4μg/穴となるよう添加混合した混合液を各穴に添加、培養することによって細胞に各発現ベクターを導入した。なお、空のプラスミドベクターを0.4μg/穴加えて、実施例、比較例の場合と同様に培養し対照(Mock)とした。発現ベクターの導入翌日に培地(培養液)を交換し、導入後三日目に培養上清を除き、リン酸バッファー生理食塩水[PBS、pH7.4]を洗浄液として細胞を洗浄した後、洗浄液を十分に除いて各ウェル毎に細胞を回収した。
【0042】
〔2−3.異常型プリオン蛋白質、総プリオン蛋白質産生量確認試験〕
実験2−2.で得た回収細胞(各ウェル毎)につき、実験1−3.の場合と同様にして、異常型プリオン蛋白質産生量、総プリオン蛋白質産生量を確認する試験を行なった。
【0043】
〔2−4.Gabrb1 mRNA、PrP mRNA発現量確認試験〕
実験2−2.において、実施例2、3の発現ベクターを導入して得られた回収細胞及び対照回収細胞(各ウェル毎)につき、実験1−4.の場合と同様にしてGabrb1 mRNAの発現量及びPrP mRNAの発現量をリアルタイムRT−PCR法により確認した。
【0044】
〔実験2の結果〕
実施例2、3の発現ベクターをScN2a細胞に導入した場合における実験2−3.の結果を図6に、また、実験2−4による結果を図7に示した。比較例7乃至10の発現ベクターをScN2a細胞に導入した場合における実験2−3.の結果を、夫々、図8、9に示した。図6、7に示した結果から、Gabrb1遺伝子を標的とするベクター型siRNAのプリオン感染哺乳動物細胞への導入によってRNAiが誘導され、Gabrb1 mRNA発現量が減少すること、また、PrP mRNA発現量は大きな変動はなく(2〜3割増加)、総PrP蛋白質産生量も殆んど変動を認めないが、PrPres産生量はGabrb1メッセージ量に応じて減少することが確認された。また、図8、9に示した結果から、比較例7、8のGabrd遺伝子を標的とするベクター型siRNA、並びに比較例9、10のGabrg2遺伝子を標的とするベクター型siRNAのプリオン感染哺乳動物細胞への導入によっては、PrPres産生量が減少することはなく、GABA受容体δサブユニット、並びにγ2サブユニットは、PrPres産生に関与しないことが確認された。
【0045】
〔実験3:有機化合物を用いた検討〕
〔3−1.GABA受容体関連有機化合物の添加培養試験〕
(実施例4)
Gabrb1の作用又はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質として、Gabrb1に選択的に結合するGABA受容体アロステリックモジュレーター(allosteric modulator)の一つであるサリチリデンサリチルヒドラジド(Salicylidene salicylhydrazide:SCS、Tocris社製)を用いた。また、プリオン感染哺乳動物細胞としては、スクレイピープリオンであるRML株がマウス神経芽細胞腫細胞(Neuro2a)に持続感染したScN2a細胞を使用した。10%牛胎児血清を加えたOptiMEM I(Invitrogen社製)を細胞培養6穴プレート(底面積9.7cm)に1mLずつ注入して、薬剤(SCS)を0、100nM、250nM、500nM、750nM、1000nMの各濃度になるように添加した。細胞培養フラスコ(底面積25cm)でコンフルエントに達したScN2a細胞を15%に希釈し2mLずつ注入して3日間培養した。培養上清を除き、リン酸バッファー生理食塩水[PBS、pH7.4]で細胞を洗浄して洗浄液を十分に除いて各ウェル毎に細胞を回収した。
【0046】
(比較例11)
添加薬剤としてGABA受容体のアンタゴニストであるピクロトキシン(Picrotoxin、シグマ社製)を用い、添加濃度を0、0.1μM、1μM、10μM、50μMとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0047】
(比較例12)
添加薬剤としてGABA受容体のアゴニストであるイソグバシン塩酸塩(Isoguvacine hydrochloride、シグマ社製)を用い、添加濃度を0、0.1μM、1μM、10μM、100μM、1000μMとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0048】
(比較例13)
添加薬剤としてGABA受容体のアゴニストであるムシモール(Muscimol、シグマ社製)を用い、添加濃度を0、0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0049】
(比較例14)
添加薬剤としてGABA受容体のアゴニストである無水エタノール(Ethanol(99.5%)、ナカライテスク社製)を用い、添加濃度を0、0.1ppm、1ppm、3ppm、10ppmとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0050】
(比較例15)
添加薬剤としてGABA受容体のアゴニストであるペントバルビタール(Pentobarbital、大日本製薬社製、(商品名:ネンブタール))を用い、添加濃度を0、0.001μM、0.01μM、0.1μM、1μM、10μMとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0051】
(比較例16)
添加薬剤としてGABA受容体のアゴニストであるγーアミノ酪酸(GABA、シグマ社製)を用い、添加濃度を0、5μM、50μM、500μM、5000μMとした以外は実施例4と同様にして添加培養試験を行なった。
【0052】
〔3−2.異常型プリオン蛋白質、総プリオン蛋白質産生量確認試験〕
実験3−1.で得た回収細胞(各ウェル毎)につき、実験1−3.の場合と同様にして、異常型プリオン蛋白質産生量、総プリオン蛋白質産生量を確認する試験を行なった。
【0053】
〔実験3の結果〕
実施例4の薬剤を用いた場合における実験3−2.の結果を図10に示した。また、比較例11乃至比較例16の薬剤を用いた場合における実験3−2.(異常型プリオン蛋白質の産生量)の結果を夫々、図11乃至図16に示した。図10に示した結果から、Gabrb1を標的とし、Gabrb1の作用又はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質として実施例4の薬剤を用いることにより、PrPres産生量が減少することが確認された。また、図11乃至16に示した結果から、Gabrb1に選択的に作用するものではないGABA受容体のアンタゴニスト、アゴニストである比較例11乃至16のような薬剤を用いてもPrPres産生量は減少しないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GABAタイプA(GABA)受容体サブユニットβ1(Gabrb1)を標的とし、Gabrb1の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質を有効成分として含有することを特徴とするプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項2】
前記Gabrb1調節物質が、Gabrb1に結合するGABA受容体アロステリックモジュレーター(allosteric modulator)であることを特徴とする請求項1に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項3】
前記GABA受容体アロステリックモジュレーターが、サリチリデンサリチルヒドラジド及びその薬学的に許容される塩から1以上選ばれたものであることを特徴とする請求項2に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項4】
前記Gabrb1調節物質が、細胞内に導入されてRNA干渉を誘導しGabrb1のmRNA発現量を低下させる二本鎖RNA又は発現ベクターであることを特徴とする請求項1に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項5】
前記二本鎖RNAが、配列番号(3)の塩基配列を有するGb1−c−Fと配列番号(4)の塩基配列を有するGb1−c−Rとを用いて二本鎖としたものであることを特徴とする請求項4に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項6】
前記発現ベクターが、配列番号(23)の塩基配列を有するGb1−v−1Fと配列番号(24)の塩基配列を有するGb1−v−1Rとを含んで成ることを特徴とする請求項4に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項7】
前記発現ベクターが、配列番号(25)の塩基配列を有するGb1−v−2Fと配列番号(26)の塩基配列を有するGb1−v−2Rとを含んで成ることを特徴とする請求項4に記載のプリオン病の予防及び/又は治療用薬。
【請求項8】
プリオン感染哺乳動物細胞における異常プリオン蛋白質の発現を抑制する方法であって、GABA 受容体サブユニットβ1(Gabrb1)の発現又は作用、或はGabrb1を含むGABA受容体の作用を阻害的に調節するGabrb1調節物質を用いることを特徴とする異常プリオン蛋白質発現抑制方法。

【図2】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−209040(P2010−209040A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59468(P2009−59468)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】