説明

プリザーブド植物加工品及びその製造方法

【課題】消臭機能と抗菌機能に優れ、切り花、葉物や茎を対象としたプリザーブド植物の加工品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】植物を加工して製造したプリザーブド植物(プリザーブドフラワーやプリザーブドグリーン)と、前記プリザーブド植物の表面に、紫外線の下で光触媒溶液を付着させ膜を形成させた光触媒材とからなり、前記光触媒材によって、プリザーブド植物に消臭機能と抗菌機能を持たせたプリザーブド植物加工品とすることによって課題解決できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒材を付着させたプリザーブド植物、及びプリザーブド植物に光触媒材を付着させる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリザーブドフラワーが、美しい状態のまま長期間保存することができる等の理由から大きな注目を集めている。このプリザーブドフラワーは、咲いたままの切り花を、有機溶剤を用いて脱水および脱色し、保存液である不揮発性溶液で切り花の水分と置換した後、無色無臭になるという特徴を活かし、好みの色の染料を用いて着色し、乾燥させたものである。
【0003】
こうして製造されたプリザーブドフラワーは、保存状態によっては5年以上楽しむことができると共に、実際の切り花にはない色合いを現出することができ、さらには水を与える必要がないので取り扱いが容易であるなどの優れた特長を有する。また、造花は生花特有の造形には遠く及ばないが、プリザーブドフラワーの造形は生花そのものであり、かつプリザーブドフラワーは生花と比較しても遜色ない柔らかさとみずみずしさを備えている。
【0004】
これに対し、プリザーブドフラワーとともに花器などに組み込まれている葉物は、市場においては、人工の葉物である造葉がほとんどであり、プリザーブド葉物を見かけることはほとんどない。
【0005】
また、光触媒は、太陽光または蛍光灯に照射され光を吸収すると、空気中の有機物を酸化分解するので、消臭、脱臭、空気中の有害物質の分解、抗菌、殺菌、防汚などに使用されている。
【0006】
最近では、こうしたプリザーブドフラワーや光触媒の特長を活かした技術が開示されている。例えば、生花に準ずる華やかさと優しさを有するプリザーブドフラワーと造形した水引との双方又はいずれか一方に光触媒を担持させた装飾体の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、多孔質無機物でコーティングされた酸化チタン光触媒と、脱臭剤とを使用した、消臭機能を有する造花等室内装飾品の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、光触媒が担持された人工植物と、その人工植物の近傍に設けられた光触媒を励起し得る波長の光を放出する光源部を備えた空気洗浄機能を有する人工植物の技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。そして人工植物とは、造花や造葉であるとの記載とともに、ドライフラワー、プリザーブドフラワーなども該当する旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−101623号公報
【特許文献2】特開平9−209208号公報
【特許文献3】特開2007−63721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光触媒には、消臭、脱臭、空気中の有害物質の分解、抗菌、殺菌、防汚などの効果があり、光触媒のコーティング方法には、大きく分けて光触媒材を含む溶液に浸漬する方法、光触媒材を含む溶液を噴霧する方法、光触媒材を含む溶液を水滴状態で滴下させる方法等がある。ここで、光触媒材を含んだ溶液である光触媒溶液の付着方法によって光触媒の効果が大きく左右されることから、プリザーブド植物に光触媒材を付着させる方法をいかに設定するかは非常に重要である。
【0011】
特許文献1の技術は、段落[0022]にプリザーブドフラワーの表面に光触媒を担持させ、消臭効果と長期保存性に寄与する防汚性を付加するとの記載はあるが、光触媒効果の大きさに影響を与える光触媒担持方法についての記載はなく、光触媒担持方法によっては、光触媒溶液付着時のプリザーブドフラワーの色落ちや、光触媒を付着させたが光触媒効果がほとんど生じないという問題があった。
【0012】
特許文献2の技術は、実施例4において、熱プレスで作った花弁や葉物に消臭性バインダー液を筆で塗工する方法や、実施例5において造花に消臭剤をスプレー噴霧する方法が記載されている。これらはいずれも造花や造葉であり、プリザーブドフラワーやプリザーブドグリーンではない。特許文献2に開示された、光触媒溶液を筆で塗布したり、むやみにスプレー噴霧するという方法を行うと、プリザーブドフラワーは水気に弱いので、プリザーブドフラワーの色が色落ちしてしまい、しかも弱い消臭効果しか得られないという問題があった。
【0013】
特許文献3は装飾物には、段落[0020]などにプリザーブドフラワーも含まれるとの記載があるが、実施例は段落[0030]に記載されているように造花や造葉ばかりであり、プリザーブドフラワーについての実施例の記載はない。
【0014】
また、段落[0021]に、スプレ−また刷毛等を用いて酸化チタン溶液を塗布し(塗布工程)、その後、ドライヤ、送風機、あるいは自然乾燥によって酸化チタン溶液を乾燥させ(乾燥工程)、これらの塗布工程と乾燥工程を複数回繰り返す方法が開示されている。
【0015】
しかし、刷毛塗りの場合はプリザーブドフラワーまたはプリザーブドグリーンの色が色落ちしてしまうという問題があり、刷毛塗りやスプレ−噴霧の場合においても塗布工程と乾燥工程を単に複数回繰り返すという要件だけでは、特に紫外線強度が弱い蛍光灯の光のもとでは微少な光触媒効果しか得られないという問題があった。
【0016】
また、特許文献1乃至3のいずれにおいても、プリザーブドグリーンに対する光触媒の付着方法について具体的に記載されたものはなかった。
【0017】
さらに、一つの花器に、造葉とプリザーブドフラワーとを並置すると、造葉はその感触から生花の葉物とかなり異なった感触のため生花の感触を有するプリザーブドフラワーとの違和感が生じ、また見た目に不自然さが感じられるという問題があった。
【0018】
本発明は、こうした問題に鑑み創案されたもので、消臭機能と抗菌機能に優れた、美しい鮮やかな色合いをしたフラワー(花弁)及び/またはグリーン(葉物や茎)からなるプリザーブド植物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明において、「プリザーブド植物」とはプリザーブドフラワー及び/またはプリザーブドグリーンを意味し、プリザーブドフラワーはプリザーブされた花弁を、プリザーブドグリーンはプリザーブされた葉物や茎を意味する。また、「プリザーブド植物加工品」とは、プリザーブド植物へ光触媒材を付着させるなどのプリザーブド植物へ何らかの加工を行ったものを意味する。
【0020】
発明者は光触媒による効果をいかにしたら高められるかを研究し、光触媒材を被付着物に付着させるときに、光触媒を励起させる紫外線を含む太陽やブラックライトなどの光を照射させながら付着させると、従来の製造時に光触媒を励起させる紫外線を照射しないで付着させる場合に比較して光触媒効果が極めて高まることを見いだした。
【0021】
請求項1に記載のプリザーブド植物加工品1は、プリザーブド植物2と、前記プリザーブド植物2の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら膜を形成させた光触媒材3とからなり、前記光触媒材3によって、前記プリザーブド植物2に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたことを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載のプリザーブド植物加工品1は、プリザーブド植物2と、前記プリザーブド植物2の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら膜を形成させた光触媒材3とからなり、前記光触媒材3によって、前記プリザーブド植物2に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせてなるもので、前記プリザーブド植物2が、切り花であるプリザーブドフラワー2a及び/または葉物や茎であるプリザーブドグリーン2bであることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載のプリザーブド植物加工品1の製造方法は、プリザーブド植物2に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたプリザーブド植物加工品1を製造する方法であって、前記プリザーブド植物2の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら光触媒溶液を噴霧する噴霧工程Sと、前記噴霧工程S完了後に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら前記プリザーブド植物2を乾燥させる乾燥工程Dとを、交互に複数回、好ましくは3回繰り返すことによって、前記プリザーブド植物2の表面に前記光触媒材3の膜を形成させることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載のプリザーブド植物加工品1の製造方法は、プリザーブド植物2に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたプリザーブド植物加工品1を製造する方法であって、前記プリザーブド植物2の表面に光触媒溶液を噴霧する噴霧工程Sと、前記噴霧工程S完了後に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら前記プリザーブド植物2を乾燥させる乾燥工程Dとを、交互に複数回、好ましくは3回繰り返すことによって、前記プリザーブド植物2の表面に前記光触媒材3の膜を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
一般的には、太陽光の紫外線強度ならば光触媒効果は大であるが、室内の蛍光灯の光の紫外線強度は太陽光の約1/1000であるので光触媒効果は小であると考えられている。そのような一般的な考えに対し、請求項1に記載のプリザーブド植物加工品1は、プリザーブド植物2の表面に、紫外線Uの下で光触媒材3の膜を形成させたことによって、紫外線Uなしの状態で光触媒材3の膜を形成させた場合に比べて、太陽光より弱い紫外線強度の蛍光灯の光に対して、強い触媒反応をさせて、高い消臭機能及び抗菌機能を生じさせられるという効果を奏する。
【0026】
従って、本発明にかかるプリザーブド植物加工品1を、例えば太陽光が照射しにくく蛍光灯の点灯している理髪店などの店内に置くと、紫外線Uなしの状態で光触媒材3の膜を形成させた場合に比べて、光触媒材3が有する消臭機能によって、より広い空間における臭いを消すことができ、抗菌機能によって店内の、より広い空間の空気を清浄化することができる。これにより、理髪店特有の臭いがまったくしないで、より清潔で健康によい店内環境を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
請求項2に記載のプリザーブド植物加工品1は、請求項1に記載の発明と同様に、従来の製造時に紫外線を照射しないプリザーブド植物加工品に比べて、より高い消臭機能や抗菌機能などの光触媒効果を持たせることができる。
【0028】
また、プリザーブド植物2を、切り花であるプリザーブドフラワー2a、および葉物や茎であるプリザーブドグリーン2bの双方または一方で構成したので、これらに光触媒材3を付着させてプリザーブドフラワー加工品1aおよびプリザーブドグリーン加工品1bとし、例えば、双方を並べた場合に、このプリザーブドグリーン加工品1bは、従来のような造葉や造茎ではないため、プリザーブドフラワー加工品1aと同一の見た目と感触を与えることができるという効果を奏する。これにより、プリザーブドフラワー加工品1aとプリザーブドグリーン加工品1bを複数配置してフラワーアレンジメントFとした場合、このフラワーアレンジメントFの商品価値を高めることができる。
【0029】
請求項3に記載のプリザーブド植物加工品1の製造方法は、光触媒溶液をスプレーGなどの噴霧器で噴霧する噴霧工程Sと、この噴霧工程S完了後にプリザーブド植物2を乾燥させる乾燥工程Dとを、交互に複数回、好ましくは3回繰り返すことによって、プリザーブド植物2に光触媒材3の膜を形成させるので、プリザーブド植物2の表面に本発明にかかる3回分の光触媒溶液量を1回で噴霧完了する場合、プリザーブド植物2を光触媒溶液に浸漬する場合またはプリザーブド植物2上に光触媒溶液を水滴状態で垂らす場合に発生するプリザーブド植物2の色落ちやベタツキという問題を発生させないという効果を奏する。
【0030】
また、一般的に、光触媒材3の膜厚が厚いほど光触媒効果が高まる。そこで、着色されたプリザーブド植物2の色落ちやベタツキを発生させない光触媒溶液量を1回分の噴霧量とし、複数回好ましくは3回繰り返して噴霧するので、プリザーブド植物2の表面に形成させる光触媒材3の膜厚を厚くすることができる。これにより、製造時に色落ちしないのでプリザーブド植物2が持つ美しさを加工後においても維持できると共に、光触媒材3の厚い膜を形成するのでプリザーブド植物加工品1に高い消臭機能や抗菌機能などの光触媒機能を与えることができるという効果を奏する。
【0031】
また、紫外線Uを照射しながら噴霧工程Sと乾燥工程Dとを行うことによって、紫外線強度の弱い微小な紫外線Uによっても光触媒材3が高い光触媒反応を起こすことができるので、直接に太陽の光が照射しにくい室内においても優れた消臭機能や抗菌機能などの光触媒機能を与えることができるという効果を奏する。なお、紫外線Uを照射しないで両工程を行った場合、直接に太陽の光が照射しにくい室内においては消臭効果が著しく劣ることを確認した。
【0032】
噴霧工程Sと乾燥工程Dは、交互に2回以下の実施では消臭効果が劣り、交互に4回以上の実施では、光触媒溶液の色がやや乳白色であるため、プリザーブド植物加工品1の表面に付着した光触媒材3の膜厚が厚くなってプリザーブド植物2に着色された色の鮮やかさが劣ってくることから、交互に3回実施した場合がプリザーブド植物の鮮やかな色の確保と高い消臭効果や抗菌効果を有することを両立させられるという効果を奏する。
【0033】
請求項4に記載のプリザーブド植物加工品1の製造方法は、請求項3の発明とプリザーブド植物2の色合いについての効果は同一であり、消臭機能や抗菌機能などの光触媒機能は請求項3の発明にやや劣るが、従来の紫外線を照射しない方法よりも高い光触媒機能を生じさせるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るプリザーブド植物加工品の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るプリザーブド植物加工品の製造方法を示す説明図である(噴霧工程を示す)。
【図3】本発明に係るプリザーブド植物加工品の製造方法を示す説明図である(乾燥工程を示す)。
【図4】本発明に係るプリザーブド植物加工品の製造方法によって製造され、aが片面に、bが両面に光触媒膜を形成させた加工品の部分断面模式図である。
【図5】本発明に係るプリザーブド植物加工品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係るプリザーブド植物加工品1の実施形態を、図1および図4に示す。本実施形態では、多数のプリザーブド植物加工品1を花器Pに配置してフラワーアレンジメントFとしている。このフラワーアレンジメントFを構成する各プリザーブド植物加工品1は、切り取った植物を加工して製造したプリザーブド植物2と、そのプリザーブド植物2の表面に紫外線Uの下で付着させて形成した光触媒材3の膜とで構成され、この光触媒材3によって、プリザーブド植物加工品1に消臭機能と抗菌機能などの光触媒機能を与えている。なお、このフラワーアレンジメントFは、切り花(花弁)を対象としたプリザーブドフラワー加工品1aと、葉物や茎を対象としたプリザーブドグリーン加工品1bとで構成している。
【0036】
本実施形態に係るプリザーブド植物加工品1によるフラワーアレンジメントFは、プリザーブドフラワー加工品1aとプリザーブドグリーン加工品1bとの双方で構成しているが、これに限定されるものではなく、プリザーブドフラワー加工品1aのみ、あるいはプリザーブドグリーン加工品1bのみで構成することもできる。
【0037】
また、本実施形態に係るプリザーブド植物加工品1は、プリザーブド植物2の持つ美しさによって高い装飾性を発揮するとともに、光触媒材3によって消臭機能と抗菌機能を備えるので、室内の空気中のあらゆる臭いを消すと共に空気を清浄することができる。
【0038】
そして、光触媒は半永久的に使用できる長所を有しているので、プリザーブド植物加工品1を、1ヶ月に少なくとも1回、少なくとも5分程度、太陽光にあてることで長期間にわたって消臭機能と抗菌機能などの光触媒機能を維持することができる。
【0039】
次に、上記実施形態に係るプリザーブド植物加工品1の製造方法を説明する。プリザーブド植物2への光触媒材3を付着させ光触媒材3の膜を形成する方法によって光触媒効果が大きく影響を受ける。
【0040】
この製造方法は、まず、プリザーブド植物2を製造する。プリザーブド植物2は、咲いたままの切り花、葉物や茎を、有機溶剤を用いて脱水および脱色する。次に、保存液である不揮発性溶液で切り花の水分と置換した後、着色したい色の染料で着色し、乾燥させる。
【0041】
次に、図2に示すように、噴霧工程Sにおいて、前記プリザーブド植物2の表面に、太陽光やブラックライトなどからの紫外線Uを照射しながら、光触媒材3を含んだ光触媒溶液をスプレーGなどの噴霧器で噴霧する。ここで、プリザーブド植物2の表面とは、噴霧によって光触媒材3を含んだ光触媒溶液が付着する面を意味し、図4aに示すように花弁や葉物などの片面の場合、または図4bに示すように花弁や葉物などの両面の場合がある。
【0042】
光触媒材3は、二酸化チタンを主成分とする光触媒材3であればよく、紫外光型の光触媒材3、可視光応答型の光触媒材3、または活性炭やシリカゲルなどの多孔性吸着剤と光触媒を併用した光触媒材3のうち、二酸化チタンを主成分とする光触媒材3であればいずれの光触媒材3であってもよい。
【0043】
紫外線U源としては、紫外線Uを照射するものであればよく、太陽光、ブラックライト、紫外線ランプまたは発光ダイオードなどの中からいずれかを使用する。特に室内において、前記紫外線Uをプリザーブド植物2に噴霧するときに照射させておいた場合には高い光触媒効果が生じるが、前記紫外線Uの照射がない状態で光触媒溶液を噴霧した場合には光触媒効果が劣る。
【0044】
噴霧器としては、光触媒溶液を噴霧できればよいので、スプレー、またはエヤーコンプレッサー使用のエヤーガンなどのうちいずれでもよい。
【0045】
続いて、噴霧工程S完了後に、図3に示すように乾燥工程Dの作業を実施する。紫外線Uの下で、光触媒溶液が噴霧されて湿った状態にあるプリザーブド植物2を少なくとも5分間以上自然乾燥させる。
【0046】
プリザーブド植物2を乾燥させるときに、前記プリザーブド植物2に対し紫外線Uを照射させておくことが必要であり、前記紫外線Uの照射がない状態でプリザーブド植物2を乾燥させた場合の光触媒効果に比べ、前記紫外線Uの照射をした状態でプリザーブド植物2を乾燥させた場合の方が極めて高い光触媒効果が得られる。
【0047】
また、前記乾燥工程Dにおける乾燥方法は、自然乾燥あるいは送風機などによる強制乾燥のいずれか、あるいは両方を採用してもよい。ここで、送風機などで強制乾燥させる場合は自然乾燥の場合より乾燥時間を短縮して設定する。
【0048】
そして、図5に示すように、紫外線を照射させながら、この噴霧工程Sと乾燥工程Dを交互に3回繰り返すことによって、プリザーブド植物2に光触媒材3を付着させて、プリザーブド植物加工品1としている。このようにして製造された加工品1のプリザーブド植物2の表面には、光触媒材3の膜が、図4aに示すように片面に、または図4bに示すように両面に形成されており、前記光触媒材3によって優れた消臭機能と抗菌機能などの光触媒機能を発揮することができる。
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものでない。
【実施例】
【0050】
まず、プリザーブド植物2の製造である。バラの切り花、及びバラの葉や茎を準備し、有機溶剤を用いて前記切り花、葉や茎を脱水および脱色する。次に、保存液である不揮発性溶液で切り花、葉や茎が含有していた水分と置換した後、着色したい色の染料で着色し、乾燥させてプリザーブド植物2を完成させる。
【0051】
次に、噴霧工程Sにおいて、前記プリザーブド植物2にブラックライトを使用して紫外線Uを照射しながら、光触媒材3として二酸化チタンを主成分とする光触媒溶液をスプレーGで噴霧する。
【0052】
続いて、噴霧工程S完了後に乾燥工程Dにおいて、ブラックライトを使用して紫外線Uを照射させながら、光触媒溶液が噴霧されて湿った状態にあるプリザーブド植物2を自然乾燥で5分間乾燥させる。
【0053】
そして、図5に示すように、紫外線を照射しながら、噴霧工程Sと乾燥工程Dを交互に3回繰り返す。これによって、プリザーブド植物2の着色した色の色落ちをさせずに鮮やかな色合いを維持し、かつ高い光触媒効果を有する光触媒材3の膜を形成させることができ、本発明にかかるプリザーブド植物加工品1が完成する。
【0054】
プリザーブド植物加工品1の消臭効果を確認するために検知管法で消臭性能試験をした。前記消臭性能試験は、プリザーブドフラワー加工品1aを一輪、アセトアルデヒド(ガス初期濃度14ppm)と共に、容量1リットルのテドラーバッグに収納して、24時間後のガス測定を検知管で測定した。このときの前記テドラーバッグ内のガス量は600ミリリットルで、紫外線強度は1mW/cmであった。
【0055】
前記消臭性能試験結果より、プリザーブドフラワー加工品1aは、98.5%以上の消臭率を備えており、優れた消臭機能を有することを確認した。
【0056】
次に、プリザーブド植物加工品1の抗菌効果を確認するためにフィルム密着法で抗菌性能試験をした。前記抗菌性能試験は、20μW/cmの紫外線を24時間照射しながら実施し、供試菌(MRSA・Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus IID 1677)接種直後と24時間後とで生菌数を比較した。
【0057】
その結果、生菌数は接種直後2.5×10が24時間後には1.0×10となり1/25に生菌数が減少し、優れた抗菌機能を有することを確認した。
【0058】
また、比較するために、噴霧工程及び乾燥工程とも紫外線を照射させる本発明の請求項3に記載の製造方法によるサンプル(イ)、噴霧工程には紫外線を照射させずに乾燥工程のみ紫外線を照射させる本発明の請求項4に記載の製造方法によるサンプル(ロ)、乾燥工程には紫外線を照射させずに噴霧工程のみ紫外線を照射させる製造方法によるサンプル(ハ)、そして、従来例として噴霧工程及び乾燥工程とも紫外線を照射させない製造方法によるサンプル(ニ)を製造した。
【0059】
そして、プリザーブド植物加工品1のサンプル(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)を、図1に示すようなフラワーアレンジメントFにして実際に理髪店に日を替えて置いて、その消臭効果を店主や顧客からの声としてまとめた。その結果を表1に示す。表1において周囲とはプリザーブド植物加工品1を中心に置いた周囲を意味し、評価はプリザーブド植物加工品1を中心に置いたときの距離が2Mの箇所での消臭効果を評価し、○は無臭、△はわずかに臭う、×はほとんど消臭効果がないとして評価した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1より、理髪店の店主および客の双方の声から、本発明の製造方法によるサンプル(イ)及びサンプル(ロ)のプリザーブド植物加工品1が高い消臭効果を示したことがわかる。
【符号の説明】
【0062】
1 プリザーブド植物加工品
1a プリザーブドフラワー加工品
1b プリザーブドグリーン加工品
2 プリザーブド植物
2a プリザーブドフラワー
2b プリザーブドグリーン
3 光触媒材
D 乾燥工程
F フラワーアレンジメント
G スプレー
P 花器
S 噴霧工程
U 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリザーブド植物と、前記プリザーブド植物の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら膜を形成させた光触媒材とからなり、前記光触媒材によって、前記プリザーブド植物に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたことを特徴とするプリザーブド植物加工品。
【請求項2】
プリザーブド植物と、前記プリザーブド植物の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら膜を形成させた光触媒材とからなり、前記光触媒材によって、前記プリザーブド植物に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせてなるもので、前記プリザーブド植物が、切り花であるプリザーブドフラワー及び/または葉物や茎であるプリザーブドグリーンであることを特徴とするプリザーブド植物加工品。
【請求項3】
プリザーブド植物に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたプリザーブド植物加工品を製造する方法であって、前記プリザーブド植物の表面に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら光触媒溶液を噴霧する噴霧工程と、前記噴霧工程完了後に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら前記プリザーブド植物を乾燥させる乾燥工程とを、交互に複数回、好ましくは3回繰り返すことによって、前記プリザーブド植物の表面に前記光触媒材の膜を形成させることを特徴とするプリザーブド植物加工品の製造方法。
【請求項4】
プリザーブド植物に消臭機能と抗菌機能などの光触媒効果を持たせたプリザーブド植物加工品を製造する方法であって、前記プリザーブド植物の表面に光触媒溶液を噴霧する噴霧工程と、前記噴霧工程完了後に太陽光やブラックライトなどの紫外線を照射させながら前記プリザーブド植物を乾燥させる乾燥工程とを、交互に複数回、好ましくは3回繰り返すことによって、前記プリザーブド植物の表面に前記光触媒材の膜を形成させることを特徴とするプリザーブド植物加工品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126234(P2011−126234A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288958(P2009−288958)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(509350734)有限会社ぐりーんはーと (1)
【Fターム(参考)】