説明

プリテンショナ機構

【課題】筒部材内にガスが供給された後に分解する際において筒部材と移動部材とが分離可能になる前に筒部材内のガスを排出する。
【解決手段】プリテンショナ機構36では、キャップ82がシリンダ66に取付けられることで、キャップ82の周壁がシリンダ66の排出孔74を閉塞している。このため、キャップ82をシリンダ66から取外すことで、キャップ82の周壁が排出孔74を開放させて、シリンダ66内が排出孔74を介して開放される。これにより、シリンダ66とピストン88とが分離可能になる前に、キャップ82をシリンダ66から取外すことで、シリンダ66内を排出孔74を介して開放できて、シリンダ66内の高圧のガスを排出孔74を介して排出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒部材内に供給されたガスの圧力により移動部材が移動されることでウェビングによる乗員の拘束力が増加されるプリテンショナ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び特許文献2に記載のプリテンショナ機構では、パイプ(パイプシリンダ)内にガスが供給されることで、ガスの圧力によりピストン(ピストンボール)が移動されて、ウェビング(シートベルト)による乗員の拘束力が増加される。
【0003】
ここで、これらのプリテンショナ機構では、パイプ内にガスが供給された後に分解する際において、パイプとピストンとが分離可能になる前に、パイプ内のガスを排出できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18071公報
【特許文献2】特開2008−24102公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、筒部材内にガスが供給された後に分解する際において筒部材と移動部材とが分離可能になる前に筒部材内のガスを排出できるプリテンショナ機構を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプリテンショナ機構は、車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、排出孔が形成された筒部材と、前記筒部材に取付けられて前記排出孔を閉鎖し、前記筒部材から取外されることで前記筒部材内が前記排出孔を介して開放される取付部材と、前記筒部材に前記取付部材が取付けられて前記筒部材に取付けられると共に、前記筒部材の前記排出孔より一側に配置され、所定の機会に前記筒部材内にガスを供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段が前記筒部材内に供給したガスの圧力により前記筒部材の他側へ移動されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される移動部材と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のプリテンショナ機構は、請求項1に記載のプリテンショナ機構において、前記筒部材に前記取付部材を螺合して取付けると共に、前記筒部材の前記取付部材との螺合位置に前記排出孔を形成している。
【0008】
請求項3に記載のプリテンショナ機構は、請求項1又は請求項2に記載のプリテンショナ機構において、前記ガス供給手段が前記筒部材内にガスを供給した際に前記ガス供給手段が前記排出孔を閉鎖しない。
【0009】
請求項4に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記筒部材と前記取付部材との間を封止する封止手段を備えている。
【0010】
請求項5に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記取付部材に設けられ、前記筒部材から前記取付部材を取外す際に前記筒部材内から前記排出孔を介して排出されたガスが衝突する衝突部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のプリテンショナ機構では、筒部材に取付部材が取付けられて、取付部材が筒部材の排出孔を閉鎖すると共に、筒部材にガス供給手段が取付けられており、ガス供給手段は、筒部材の排出孔より一側に配置されている。
【0012】
所定の機会に、ガス供給手段が筒部材内にガスを供給して、ガスの圧力により移動部材が筒部材の他側へ移動されることで、ウェビングによる乗員の拘束力が増加される。
【0013】
ここで、筒部材から取付部材が取外されることで、筒部材内が排出孔を介して開放される。このため、筒部材内にガスが供給された後にプリテンショナ機構を分解する際において、筒部材と移動部材とが分離可能になる前に、筒部材から取付部材を取外すことで、筒部材内のガスを排出孔を介して排出できる。
【0014】
請求項2に記載のプリテンショナ機構では、筒部材に取付部材が螺合されて取付けられる。
【0015】
ここで、筒部材の取付部材との螺合位置に排出孔が形成されている。このため、取付部材が排出孔を効果的に閉鎖できる。
【0016】
請求項3に記載のプリテンショナ機構では、ガス供給手段が筒部材内にガスを供給した際に、ガス供給手段が筒部材の排出孔を閉鎖しない。このため、筒部材から取付部材を取外した際に、筒部材内のガスの排出孔を介しての排出をガス供給手段が制限することを抑制できる。
【0017】
請求項4に記載のプリテンショナ機構では、封止手段が筒部材と取付部材との間を封止する。このため、筒部材の排出孔を効果的に閉鎖できる。
【0018】
請求項5に記載のプリテンショナ機構では、取付部材に衝突部が設けられており、筒部材から取付部材を取外す際に、筒部材内から排出孔を介して排出されたガスが衝突部に衝突する。このため、筒部材内から排出孔を介して排出されたガスの圧力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す車両前後方向一側から見た断面図であり、(A)は、プリテンショナ機構の作動前を示す図であり、(B)は、プリテンショナ機構の作動後を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるウェビング巻取装置を示す車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるウェビング巻取装置を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるウェビング巻取装置のプリテンショナ機構の作動後を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2には、本発明の実施の形態に係るプリテンショナ機構36が適用されたウェビング巻取装置10が車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図にて示されており、図3には、ウェビング巻取装置10が車両前後方向一側から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両前後方向一側を矢印LOで示し、上方を矢印UPで示す。
【0021】
図2及び図3に示す如く、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10には、本体部材としての断面U字形板状のフレーム12が設けられており、フレーム12には、車幅方向内側の背板12Aと、車両前後方向一側の脚板12Bと、車両前後方向他側の脚板12Cと、が設けられている。フレーム12は、背板12Aにおいて、車両に固定されており、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されている。
【0022】
脚板12B及び脚板12Cには、それぞれ円状の配置孔14及び配置孔16が貫通形成されており、配置孔14と配置孔16とは、互いに対向されている。脚板12Bには、配置孔14の上側かつ背板12A側において、長尺矩形状の第1係止孔18が貫通形成されており、第1係止孔18は、略水平に配置されている。脚板12Bには、第1係止孔18の直下において、長尺矩形状の第2係止孔20が貫通形成されており、第2係止孔20は、第1係止孔18に平行に配置されて、第1係止孔18に連通されている。
【0023】
フレーム12の脚板12B(配置孔14)と脚板12C(配置孔16)との間には、巻取軸22が回転可能に支持されている。
【0024】
巻取軸22には、巻取部材としての略円筒状のスプール24が設けられており、スプール24には、長尺帯状のウェビング26(ベルト)が基端側から巻取られている。ウェビング26は、フレーム12から上側へ延出されており、ウェビング26は、車両のシート(図示省略)に着座した乗員に装着可能にされている。また、スプール24が巻取方向(図2及び図3の矢印Aの方向)へ回転されることで、ウェビング26がスプール24に巻取られると共に、ウェビング26がスプール24から引出されることで、スプール24が引出方向(図2及び図3の矢印Bの方向)へ回転される。
【0025】
スプール24内には、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部材としてのトーションシャフト28が同軸上に挿入されており、トーションシャフト28の脚板12B側の一端28Aは、スプール24の脚板12B側の一端面から突出されている。トーションシャフト28の脚板12C側の他端28Bは、スプール24の脚板12C側の他端内に相対回転不能に固定されており、トーションシャフト28は、スプール24と一体に回転可能にされている。
【0026】
スプール24の一端には、回転部材としての略円柱状のロックギヤ30が設けられており、ロックギヤ30には、トーションシャフト28が同軸上に貫通されている。ロックギヤ30には、トーションシャフト28が相対回転不能に固定されており、ロックギヤ30は、トーションシャフト28と一体に回転可能にされている。また、ロックギヤ30の外周全体には、ラチェット歯30A(外歯)が形成されている。
【0027】
ロックギヤ30のスプール24とは反対側の面には、クラッチ機構を構成する円柱状のクラッチ凹部32が形成されており、クラッチ凹部32の外周面は、摩擦係数が高くされている。
【0028】
フレーム12の脚板12C外側には、付勢手段としての付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、スプール24に連結されて、スプール24に巻取方向への付勢力を作用させている。
【0029】
フレーム12の脚板12Bには、配置孔14の近傍において、規制部材(ロック部材)としての板状のロックプレート34が回動可能に支持されており、ロックプレート34には、ロック歯34Aが形成されている。ロックプレート34は、規制手段(ロック手段)としてのロック機構(図示省略)に連絡されており、ウェビング26のスプール24からの急激な引出し時や車両の急減速時には、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34が回動されて、ロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合(係合)される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制(ロック)されて、スプール24の引出方向への回転が規制される(スプール24の巻取方向への回転は許容される)。
【0030】
フレーム12の脚板12B外側には、ラック&ピニオン方式によるプリテンショナ機構36が設けられている。
【0031】
プリテンショナ機構36には、保持部材としての樹脂製で略円環状のギヤケース38が設けられており、ギヤケース38は、脚板12Bに固定されている。ギヤケース38の外周部は、ロックギヤ30の外周部分を被覆しており、ギヤケース38内には、ロックギヤ30のクラッチ凹部32が配置されると共に、トーションシャフト28の一端28Aが貫通されている。
【0032】
ギヤケース38の外周部には、所定数の円柱状の保持ピン40(シェアピン)が一体に形成されており、保持ピン40は、ギヤケース38からロックギヤ30とは反対側へ突出されている。ギヤケース38の上部には、円柱状の係止ピン42(シェアピン)が一体に形成されており、係止ピン42は、ギヤケース38から脚板12Bとは反対側へ突出されている。
【0033】
ギヤケース38のロックギヤ30とは反対側には、クラッチ機構を構成するクラッチ部材としての略円環板状のクラッチプレート44が配置されている。クラッチプレート44の外周縁には、半円状の装着孔46が所定数形成されており、所定数の装着孔46は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。装着孔46には、ギヤケース38の保持ピン40が嵌入されており、これにより、クラッチプレート44がギヤケース38に保持されている。
【0034】
クラッチプレート44の内周には、L字形板状の延出部48が所定数(本実施の形態では6つ)一体に形成されており、所定数の延出部48は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。延出部48の先端には、柱状の噛込部48Aが一体に形成されており、噛込部48Aは、延出部48からギヤケース38側へ突出されて、ギヤケース38内側を介してロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。噛込部48Aは、クラッチ凹部32の外周面から離間されており、クラッチプレート44は、ロックギヤ30の回転を許容している。
【0035】
クラッチプレート44の内周側には、駆動部材としてのピニオン50が設けられており、ピニオン50には、トーションシャフト28の一端28Aが同軸上かつ相対回転可能に貫通されている。ピニオン50の軸方向中間部分には、歯車52が設けられており、歯車52の外周全体には、ピニオン歯52Aが形成されている。さらに、ピニオン50のロックギヤ30とは反対側部分には、円筒状の支持筒54が同軸上に形成されている。
【0036】
ピニオン50のロックギヤ30側部分には、クラッチ機構を構成するクラッチ部56が形成されており、クラッチ部56は、ロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。クラッチ部56の外周面には、所定数(本実施の形態では6つ)の凸部56Aが形成されており、所定数の凸部56Aは、クラッチ部56の周方向に沿って等間隔に配置されると共に、それぞれ突出高さが引出方向へ向かうに従い徐々に高くされている。クラッチ部56には、各凸部56Aの巻取方向側部分において、クラッチプレート44の噛込部48Aが装着(圧接)されており、これにより、ピニオン50がクラッチプレート44に保持されている。
【0037】
フレーム12の脚板12B外側には、組付部材としての金属製板状のカバープレート58が設けられており、カバープレート58は、上部の背板12A側部分において2個の固定手段としての固定スクリュー60によって脚板12Bに固定(締結)されると共に、下部の背板12A側部分及び背板12Aとは反対側部分においてそれぞれ1個の固定スクリュー60によって脚板12Bに固定(締結)されて、脚板12Bに固定されている。カバープレート58は、ギヤケース38、クラッチプレート44及びピニオン50をロックギヤ30とは反対側から被覆している。
【0038】
カバープレート58には、ピニオン50の支持筒54が貫通されており、カバープレート58は、ピニオン50を回転自在に支持している。ピニオン50の支持筒54には、カバープレート58より脚板12Bとは反対側において、係止部材としての正面視略C字状のKリング62が嵌合固定されており、Kリング62がカバープレート58に係止されることで、ピニオン50のカバープレート58からの離脱が規制されている。
【0039】
カバープレート58の上部には、長尺矩形状の第3係止孔64が貫通形成されており、第3係止孔64は、略水平に配置されて、脚板12Bの第1係止孔18及び第2係止孔20に対向されている。
【0040】
フレーム12の脚板12Bの上部とカバープレート58の上部との間には、筒部材としての金属製で円筒状のシリンダ66が設けられており、シリンダ66は、脚板12B及びカバープレート58から上側に延出されている。
【0041】
シリンダ66は、カバープレート58の上側において、断面略U字形板状のシリンダホルダ68内に嵌合されており、シリンダホルダ68は、長手方向両端部において脚板12Bの上部に係合されて、脚板12Bに固定されている。これにより、シリンダホルダ68が、シリンダ66の径方向への移動を制限して、シリンダ66を保持している。
【0042】
シリンダ66の下端には、周縁部66Aが一体に形成されており、周縁部66Aは、シリンダ66の外周全体に突出されている。周縁部66Aは、脚板12Bの第1係止孔18及びカバープレート58の第3係止孔64上側部分に嵌合されている。
【0043】
シリンダ66の直下には、ストッパ部材としての略矩形板状のピストンストッパ70が配置されており、ピストンストッパ70は、シリンダ66の下端(周縁部66Aを含む)に当接(面接触)されると共に、脚板12Bの第2係止孔20及びカバープレート58の第3係止孔64下側部分に嵌合されている。これにより、ピストンストッパ70の移動及びシリンダ66の軸方向への移動が係止されて、ピストンストッパ70及びシリンダ66が脚板12Bとピストンストッパ70との間に固定されている。
【0044】
ピストンストッパ70には、矩形状の挿通孔72が貫通形成されており、シリンダ66内は、挿通孔72を介して、ピニオン50の上側に開口されている。
【0045】
図1(A)及び図2に示す如く、シリンダ66の上端外周には、第1螺合部としての雄ネジ66Bが形成されており、雄ネジ66Bは、シリンダ66の上端縁まで配置されている。シリンダ66には、雄ネジ66B形成範囲内において、円状の排出孔74(ガス抜き孔)が貫通形成されている。
【0046】
シリンダ66の上側には、ガス供給手段としての略円柱状のガスジェネレータ76が設けられている。
【0047】
ガスジェネレータ76の上下方向中間部には、円柱状の閉塞部78が設けられており、閉塞部78は、ガスジェネレータ76の他の部分に比し径が大きくされて、全周においてガスジェネレータ76の他の部分に対し径方向外側へ突出されている。
【0048】
ガスジェネレータ76には、閉塞部78より下側において、樹脂製で円柱形容器状の供給部80(筐体)が設けられており、ガスジェネレータ76は、供給部80がシリンダ66内に上側から挿入されて、閉塞部78がシリンダ66の上端面に全周において係止されている。
【0049】
シリンダ66の上側には、取付部材としての金属製で有底円筒状のキャップ82が設けられており、キャップ82の上壁(底壁)には、円状の挿入孔84が同軸上に貫通形成されている。
【0050】
キャップ82の内周面には、第2螺合部としての雌ネジ82Aが形成されており、雌ネジ82Aがシリンダ66の雄ネジ66Bに螺合(締結)されることで、キャップ82がシリンダ66に取付けられている。このため、ガスジェネレータ76の上部(閉塞部78より上側部分)がキャップ82の挿入孔84に挿入されて、シリンダ66の上端面とキャップ82の上壁との間にガスジェネレータ76の閉塞部78が全周において挟持されている。これにより、シリンダ66にガスジェネレータ76が固定されており、シリンダ66の上端開口が閉塞部78によって閉塞されると共に、キャップ82の周壁がシリンダ66の排出孔74を被覆して閉塞(閉鎖)している。また、ガスジェネレータ76の供給部80は、シリンダ66の排出孔74よりも上側(一側)に配置されており、供給部80は、排出孔74を被覆せずに閉塞(閉鎖)していない。
【0051】
シリンダ66の雄ネジ66Bにキャップ82の雌ネジ82Aが螺合される前には、雄ネジ66B及び雌ネジ82Aの少なくとも一方に封止手段(シール手段)としてのシール剤98(接着剤)が塗布されており、雄ネジ66Bに雌ネジ82Aが螺合された後には、シール剤98が固化される。これにより、シール剤98がシリンダ66(雄ネジ66B)とキャップ82(雌ネジ82A)との間を封止(シール)すると共に、シール剤98が雄ネジ66Bに雌ネジ82Aを固定(接着)して雄ネジ66Bへの雌ネジ82Aの螺合が緩むことが抑制されている。
【0052】
キャップ82の内周面の下端には、全周において、案内手段としての断面矩形状の排出溝86が形成されており、排出溝86は、キャップ82の下側に開放されている。キャップ82の周壁の下端には、排出溝86の径方向外側において、円筒状の衝突部82Bが設けられている。
【0053】
ガスジェネレータ76は、上面から車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されている。車両の衝突時(車両の衝突が検出された際、車両の緊急時である所定の機会)には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ76が高圧のガスを瞬時に発生して、高圧のガスによってガスジェネレータ76の供給部80が破断される。これにより、ガスジェネレータ76が高圧のガスをシリンダ66内の上端に供給する。
【0054】
図1(B)に示す如く、供給部80が高圧のガスによって破断される際には、供給部80が特に底壁(下壁)において複数の略三角形板状の破断片80Aに分割されて、複数の破断片80Aが下側へ延出(展開)される。複数の破断片80Aは、下側へ延出された状態で、シリンダ66の排出孔74よりも上側に配置されており、複数の破断片80Aは、排出孔74を被覆せずに閉塞しない。
【0055】
図2及び図3に示す如く、シリンダ66内には、移動部材としてのピストン88が設けられている。
【0056】
ピストン88の上端には、円柱状の基部90が設けられており、基部90は、シリンダ66と同軸上に配置されている。ピストン88には、基部90の直下において、円板状のフランジ92が設けられており、フランジ92は、シリンダ66と同軸上に配置されると共に、基部90の外周全体に突出されて、シリンダ66の内周面に略嵌合されている。
【0057】
基部90の外周には、シール部材としての円環状かつ断面X字状のXリング94が配置されており、Xリング94は、ゴム製等にされて、弾性及びシール性を有している。Xリング94は、弾性変形された状態で、基部90の外周面、フランジ92の上面及びシリンダ66の内周面における全周に接触されており、Xリング94は、シリンダ66とピストン88との間をシールしている。
【0058】
ピストン88には、フランジ92より下側において、略矩形柱状のラック96が設けられており、ラック96の背板12Aとは反対側の部分には、ラック歯96Aが形成されている。ラック96は、シリンダ66の下端から突出されると共に、ピストンストッパ70の挿通孔72に挿通されており、ラック歯96Aがギヤケース38の係止ピン42に係止されることで、ラック96の下端がピニオン50の歯車52の上側近傍に配置されている。
【0059】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0060】
以上の構成のウェビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員にウェビング26が装着された際に、付勢機構がスプール24に巻取方向への付勢力を作用させることで、ウェビング26の緩みが除去される。
【0061】
車両の衝突時には、ウェビング26がスプール24から急激に引出され又は車両が急減速されて、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34のロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制されて、スプール24の引出方向への回転が規制されることで、ウェビング26のスプール24からの引出しが規制されて、ウェビング26が乗員を拘束する。
【0062】
さらに、車両の衝突時には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ76が高圧のガスを瞬時に発生して、ガスジェネレータ76の供給部80が破断され、これにより、ガスジェネレータ76が高圧のガスをシリンダ66内の上端に供給する。このため、シリンダ66とピストン88との間がXリング94によってシールされた状態が維持されつつ、ピストン88(基部90及びフランジ92)及びXリング94が当該ガスの圧力を上側から受けることで、ピストン88のラック96(ラック歯96A)を係止するギヤケース38の係止ピン42がラック歯96Aによって破断されて、ピストン88及びXリング94が下側(他側)へ移動される。これにより、ピストン88のラック96(ラック歯96A)がピニオン50の歯車52(ピニオン歯52A)に噛合されて、ピニオン50が巻取方向へ回転される。
【0063】
ピニオン50が巻取方向へ回転された際には、クラッチプレート44の噛込部48Aがピニオン50のクラッチ部56における凸部56Aの巻取方向側部分から引出方向側部分に移動されることで、クラッチプレート44の延出部48がクラッチプレート44の外周側へ変形移動されつつ、噛込部48Aがロックギヤ30のクラッチ凹部32外周面側へ移動される。このため、噛込部48Aがクラッチ部56(凸部56Aの周面)とロックギヤ30(クラッチ凹部32の外周面)との間に噛み込まれる(係合される)ことで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体回転可能にされる。これにより、クラッチプレート44の装着孔46に嵌入されたギヤケース38の保持ピン40が装着孔46の周縁によって破断されて、クラッチプレート44のギヤケース38への保持が解除されることで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体に巻取方向へ回転される。このため、スプール24にウェビング26が巻取られて、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される。
【0064】
図4に示す如く、ピストン88のフランジ92がピストンストッパ70に当接した際には、ピストン88及びXリング94の下側への移動が停止されて、プリテンショナ機構36の作動が終了される。この際には、シリンダ66とピストン88との間がXリング94によってシールされた状態が維持されているため、シリンダ66内に高圧のガスが残留している。
【0065】
ところで、プリテンショナ機構36が作動された後(プリテンショナ機構36の作動が終了された後)に、ウェビング巻取装置10を廃却やリサイクル等のために分解する際には、先ず、フレーム12(背板12A)の車両への固定を解除して、ウェビング巻取装置10を車両から取外す。
【0066】
次に、プリテンショナ機構36を分解するために、シリンダホルダ68の長手方向両端部のフレーム12(脚板12B)への係合を解除して、シリンダホルダ68を脚板12Bから取外す。さらに、カバープレート58の4個の固定スクリュー60を取外して、脚板12Bからカバープレート58を取外すことで、カバープレート58の第3係止孔64へのシリンダ66の周縁部66A及びピストンストッパ70の嵌合、脚板12Bの第1係止孔18へのシリンダ66の周縁部66Aの嵌合及び脚板12Bの第2係止孔20へのピストンストッパ70の嵌合を解除する。その後、シリンダ66とピストンストッパ70とを分離すると共に、シリンダ66内からピストン88を抜出して(離脱させて)、シリンダ66とピストン88とを分離する。
【0067】
ここで、キャップ82がシリンダ66に取付けられる(キャップ82の雌ネジ82Aがシリンダ66の雄ネジ66Bに螺合される)ことで、キャップ82の周壁がシリンダ66の排出孔74を閉塞している。
【0068】
このため、図1(B)に示す如く、キャップ82をシリンダ66から取外す(雌ネジ82Aの雄ネジ66Bへの螺合を解除する)ことで、キャップ82の周壁が排出孔74を開放させて、シリンダ66内が排出孔74を介して開放される。
【0069】
これにより、シリンダ66とピストン88とが分離可能になる前であるフレーム12の脚板12Bからカバープレート58を取外す前に、キャップ82をシリンダ66から取外すことで、シリンダ66内を排出孔74を介して開放できて、シリンダ66内の高圧のガスを排出孔74を介して排出できる。
【0070】
また、ガスジェネレータ76の供給部80が、シリンダ66の排出孔74よりも上側に配置されている。このため、プリテンショナ機構36が作動された後には、仮にシリンダ66内のガスの圧力により供給部80の周壁がシリンダ66の内周面に密着されても、供給部80の周壁が排出孔74を閉塞することを抑制又は防止できる。これにより、キャップ82をシリンダ66から取外す際には、供給部80の周壁が排出孔74を閉塞することを抑制又は防止でき、シリンダ66内の高圧のガスの排出孔74を介しての排出を供給部80の周壁が制限することを抑制又は防止できる。
【0071】
さらに、プリテンショナ機構36が作動された後には、ガスジェネレータ76の供給部80の破断により下側へ延出された複数の破断片80Aが、シリンダ66の排出孔74よりも上側に配置される。このため、仮にシリンダ66内のガスの圧力により破断片80Aがシリンダ66の内周面に密着されても、破断片80Aが排出孔74を閉塞することを抑制又は防止できる。これにより、キャップ82をシリンダ66から取外す際には、破断片80Aが排出孔74を閉塞することを抑制又は防止でき、シリンダ66内の高圧のガスの排出孔74を介しての排出を破断片80Aが制限することを抑制又は防止できる。
【0072】
また、キャップ82をシリンダ66から取外す際に、シリンダ66内から排出孔74を介して排出されたガスが、キャップ82の衝突部82Bに衝突すると共に、キャップ82の排出溝86に沿って下側及びキャップ82の周方向に案内されて、分散される。このため、シリンダ66内から排出孔74を介して排出されたガスの圧力を低減でき、シリンダ66内から排出孔74を介して排出された高圧のガスがキャップ82のシリンダ66からの取外作業を制限することを抑制できる。
【0073】
さらに、キャップ82をシリンダ66から取外す際には、キャップ82の周壁がシリンダ66の排出孔74を徐々に開放する。このため、シリンダ66内の高圧のガスを排出孔74を介して徐々に排出でき、シリンダ66内の高圧のガスが排出孔74を介して急激に排出されてキャップ82のシリンダ66からの取外作業を制限することを一層抑制できる。
【0074】
しかも、シリンダ66内の高圧のガスが排出孔74を介して排出される際には、キャップ82(雌ネジ82A)のシリンダ66(雄ネジ66B)への螺合が部分的に維持される。このため、シリンダ66内の高圧のガスが排出孔74を介して排出される際に、シリンダ66に対してキャップ82が移動して分離することを防止できる。
【0075】
また、シリンダ66の雄ネジ66B形成範囲内(キャップ82の雌ネジ82Aとの螺合位置)に排出孔74が形成されている。このため、キャップ82の周壁が排出孔74を効果的に閉鎖できる。これにより、プリテンショナ機構36が作動された際に、シリンダ66内の高圧のガスが排出孔74を介して排出されることを効果的に抑制でき、当該ガスの圧力によるピストン88及びXリング94の下側への移動力が低下することを効果的に抑制できて、スプール24へのウェビング26の巻取力が低下することを効果的に抑制できる。
【0076】
さらに、シリンダ66(雄ネジ66B)とキャップ82(雌ネジ82A)との間がシール剤98によって封止されている。このため、キャップ82の周壁が排出孔74を一層効果的に閉鎖でき、プリテンショナ機構36が作動された際に、シリンダ66内の高圧のガスが排出孔74を介して排出されることを一層効果的に抑制できて、スプール24へのウェビング26の巻取力が低下することを一層効果的に抑制できる。
【0077】
また、シリンダ66にガスジェネレータ76を固定するキャップ82が、シリンダ66の排出孔74を閉塞する。このため、シリンダ66の排出孔74を閉塞するための特別な部品が必要なく、部品点数を低減できると共に、プリテンショナ機構36の組付作業及び分解作業を容易にできる。
【0078】
さらに、キャップ82がシリンダ66の外周側において排出孔74を閉塞している。このため、キャップ82がシリンダ66内に突出することを防止できる。
【0079】
なお、本実施の形態では、シリンダ66(筒部材)内をピストン88(移動部材)が移動されることで、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される構成にしたが、上記特許文献2の如く、パイプ(筒部材)内をボール等の移動体(移動部材)が移動されることで、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される構成にしてもよい。
【0080】
また、本発明は、シートベルト装置におけるセレクタブルフォースリミッタの切替機構や、ラッププリテンショナ機構や、バックルプリテンショナ機構のようなガスにより作動するガス機構に適用すればよい。
【符号の説明】
【0081】
26 ウェビング
36 プリテンショナ機構
66 シリンダ(筒部材)
74 排出孔
76 ガスジェネレータ(ガス供給手段)
82 キャップ(取付部材)
82B 衝突部
88 ピストン(移動部材)
98 シール剤(封止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、
排出孔が形成された筒部材と、
前記筒部材に取付けられて前記排出孔を閉鎖し、前記筒部材から取外されることで前記筒部材内が前記排出孔を介して開放される取付部材と、
前記筒部材に前記取付部材が取付けられて前記筒部材に取付けられると共に、前記筒部材の前記排出孔より一側に配置され、所定の機会に前記筒部材内にガスを供給するガス供給手段と、
前記ガス供給手段が前記筒部材内に供給したガスの圧力により前記筒部材の他側へ移動されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される移動部材と、
を備えたプリテンショナ機構。
【請求項2】
前記筒部材に前記取付部材を螺合して取付けると共に、前記筒部材の前記取付部材との螺合位置に前記排出孔を形成した請求項1記載のプリテンショナ機構。
【請求項3】
前記ガス供給手段が前記筒部材内にガスを供給した際に前記ガス供給手段が前記排出孔を閉鎖しない請求項1又は請求項2記載のプリテンショナ機構。
【請求項4】
前記筒部材と前記取付部材との間を封止する封止手段を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項記載のプリテンショナ機構。
【請求項5】
前記取付部材に設けられ、前記筒部材から前記取付部材を取外す際に前記筒部材内から前記排出孔を介して排出されたガスが衝突する衝突部を備えた請求項1〜請求項4の何れか1項記載のプリテンショナ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192792(P2012−192792A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57028(P2011−57028)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】