説明

プリテンショナ機構

【課題】筒部材内にガスが供給された後に分解する際において筒部材と移動部材とが分離可能になる前に筒部材内のガスを排出する。
【解決手段】プリテンショナ機構36では、破断具の尖った先端をシリンダ66の凹部78内に挿入した状態で、ハンマーによって破断具に打撃力を付与することで、破断具がシリンダ66の凹部78位置を破断して、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放可能にされている。このため、シリンダ66とピストン88とが分離可能になる前に、シリンダ66の凹部78位置を破断することで、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放できて、シリンダ66内のガスを凹部78位置を介して排出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒部材内に供給されたガスの圧力により移動部材が移動されることでウェビングによる乗員の拘束力が増加されるプリテンショナ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び特許文献2に記載のプリテンショナ機構では、パイプ(パイプシリンダ)内にガスが供給されることで、ガスの圧力によりピストン(ピストンボール)が移動されて、ウェビング(シートベルト)による乗員の拘束力が増加される。
【0003】
ここで、これらのプリテンショナ機構では、パイプ内にガスが供給された後に分解する際において、パイプとピストンとが分離可能になる前に、パイプ内のガスを排出できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18071公報
【特許文献2】特開2008−24102公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、筒部材内にガスが供給された後に分解する際において筒部材と移動部材とが分離可能になる前に筒部材内のガスを排出できるプリテンショナ機構を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプリテンショナ機構は、車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、凹部が形成されて外力により前記凹部位置を破断可能にされ、所定の機会に内部にガスが供給されると共に、内部に供給されたガスの圧力により前記凹部位置を破断不能にされた筒部材と、前記筒部材内に供給されたガスの圧力により移動されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される移動部材と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のプリテンショナ機構は、請求項1に記載のプリテンショナ機構において、前記凹部内を前記筒部材の径方向外側へ開放すると共に、前記凹部の前記筒部材径方向に垂直な寸法を前記凹部の底部側へ向かうに従い小さくしている。
【0008】
請求項3に記載のプリテンショナ機構は、請求項1又は請求項2に記載のプリテンショナ機構において、前記凹部の底部の径寸法を1.0mm以上2.0mm以下にすると共に、前記凹部の底部位置における前記筒部材の肉厚寸法を0.3mm以上0.8mm以下にしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載のプリテンショナ機構では、所定の機会に、筒部材内にガスが供給されて、ガスの圧力により移動部材が移動されることで、ウェビングによる乗員の拘束力が増加される。
【0010】
ここで、筒部材に凹部が形成されて、外力により筒部材の凹部位置を破断可能にされている。このため、筒部材内にガスが供給された後にプリテンショナ機構を分解する際において、筒部材と移動部材とが分離可能になる前に、筒部材の凹部位置を破断することで、筒部材内のガスを凹部位置を介して排出できる。
【0011】
さらに、筒部材内に供給されたガスの圧力により筒部材の凹部位置を破断不能にされている。このため、筒部材内にガスが供給された際に、筒部材内のガスが凹部位置を介して排出されることを防止でき、ガスの圧力による移動部材の移動力が低下することを抑制できる。
【0012】
請求項2に記載のプリテンショナ機構では、凹部内が筒部材の径方向外側へ開放されている。このため、破断具を凹部内に容易に挿入でき、破断具により筒部材の凹部位置を容易に破断できる。
【0013】
また、凹部の筒部材径方向に垂直な寸法が凹部の底部側へ向かうに従い小さくされている。
【0014】
このため、破断具を凹部内に容易に位置決めでき、破断具により筒部材の凹部位置を容易に破断できる。
【0015】
さらに、筒部材の凹部位置における強度が低下することを抑制でき、筒部材内に供給されたガスの圧力によっては筒部材の凹部位置を破断不能にする構成に適切にできる。
【0016】
請求項3に記載のプリテンショナ機構では、凹部の底部の径寸法が1.0mm以上にされている。このため、破断具を凹部内の底部位置に容易に挿入できる。さらに、凹部の底部の径寸法が2.0mm以下にされている。このため、筒部材内に供給されたガスの圧力に対する筒部材の耐圧強度を凹部の底部位置において高くでき、当該ガスの圧力によっては筒部材の凹部位置を適切に破断不能にできる。
【0017】
また、凹部の底部位置における筒部材の肉厚寸法が0.3mm以上にされている。このため、筒部材内に供給されたガスの圧力に対する筒部材の耐圧強度を凹部の底部位置において高くでき、筒部材内に供給されたガスの圧力によっては筒部材の凹部位置を適切に破断不能にできる。さらに、凹部の底部位置における筒部材の肉厚寸法が0.8mm以下にされている。このため、外力により筒部材の凹部位置を容易に破断できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ機構におけるシリンダの主要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置を示す車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置のプリテンショナ機構の作動後を示す車両前後方向一側から見た側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ機構におけるシリンダへの凹部形成状況を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ機構におけるシリンダの凹部位置の破断状況を示す斜視図である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施の形態に係るプリテンショナ機構におけるシリンダの主要部を示す図であり、(A)は、斜視図であり、(B)は、断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るプリテンショナ機構におけるシリンダの主要部を示す断面図である。
【図9】(A)は、シリンダの凹部の第1変形例を示す断面図であり、(B)は、シリンダの凹部の第2変形例を示す断面図であり、(C)は、シリンダの凹部の第3変形例を示す断面図であり、(D)は、シリンダの凹部の第4変形例を示す断面図であり、(E)は、シリンダの凹部の第5変形例を示す断面図であり、(F)は、シリンダの凹部の第6変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図2には、本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ機構36が適用されたウェビング巻取装置10が車幅方向外側かつ車両前後方向一側から見た分解斜視図にて示されており、図3には、ウェビング巻取装置10が車両前後方向一側から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両前後方向一側を矢印LOで示し、上方を矢印UPで示す。
【0020】
図2及び図3に示す如く、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10には、安定手段(本体部材)としての断面U字形板状のフレーム12が設けられており、フレーム12には、車幅方向内側の背板12Aと、車両前後方向一側の脚板12Bと、車両前後方向他側の脚板12Cと、が設けられている。ウェビング巻取装置10は、車両の設置部材としての矩形筒状のピラー(図示省略)内に挿入されて、フレーム12の背板12Aにおいてピラーの車幅方向内側壁に取付けられており(固定されており)、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されている。また、ピラーの車幅方向内側壁には、挿入孔(図示省略)が貫通形成されており、ウェビング巻取装置10は、挿入孔を介して、ピラー内に挿入されている。
【0021】
脚板12B及び脚板12Cには、それぞれ円状の配置孔14及び配置孔16が貫通形成されており、配置孔14と配置孔16とは、互いに対向されている。脚板12Bには、配置孔14の上側かつ背板12A側において、長尺矩形状の第1係止孔18が貫通形成されており、第1係止孔18は、略水平に配置されている。脚板12Bには、第1係止孔18の直下において、長尺矩形状の第2係止孔20が貫通形成されており、第2係止孔20は、第1係止孔18に平行に配置されて、第1係止孔18に連通されている。
【0022】
フレーム12の脚板12B(配置孔14)と脚板12C(配置孔16)との間には、巻取軸22が回転可能に支持されている。
【0023】
巻取軸22には、巻取部材としての略円筒状のスプール24が設けられており、スプール24には、長尺帯状のウェビング26(ベルト)が基端側から巻取られている。ウェビング26は、フレーム12から上側へ延出されており、ウェビング26は、車両のシート(図示省略)に着座した乗員に装着可能にされている。また、スプール24が巻取方向(図2及び図3の矢印Aの方向)へ回転されることで、ウェビング26がスプール24に巻取られると共に、ウェビング26がスプール24から引出されることで、スプール24が引出方向(図2及び図3の矢印Bの方向)へ回転される。
【0024】
スプール24内には、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部材としてのトーションシャフト28が同軸上に挿入されており、トーションシャフト28の脚板12B側の一端28Aは、スプール24の脚板12B側の一端面から突出されている。トーションシャフト28の脚板12C側の他端28Bは、スプール24の脚板12C側の他端内に相対回転不能に固定されており、トーションシャフト28は、スプール24と一体に回転可能にされている。
【0025】
スプール24の一端には、回転部材としての略円柱状のロックギヤ30が設けられており、ロックギヤ30には、トーションシャフト28が同軸上に貫通されている。ロックギヤ30には、トーションシャフト28が相対回転不能に固定されており、ロックギヤ30は、トーションシャフト28と一体に回転可能にされている。また、ロックギヤ30の外周全体には、ラチェット歯30A(外歯)が形成されている。
【0026】
ロックギヤ30のスプール24とは反対側の面には、クラッチ機構を構成する円柱状のクラッチ凹部32が形成されており、クラッチ凹部32の外周面は、摩擦係数が高くされている。
【0027】
フレーム12の脚板12C外側には、付勢手段としての付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、スプール24に連結されて、スプール24に巻取方向への付勢力を作用させている。
【0028】
フレーム12の脚板12Bには、配置孔14の近傍において、規制部材(ロック部材)としての板状のロックプレート34が回動可能に支持されており、ロックプレート34には、ロック歯34Aが形成されている。ロックプレート34は、規制手段(ロック手段)としてのロック機構(図示省略)に連絡されており、ウェビング26のスプール24からの急激な引出し時や車両の急減速時には、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34が回動されて、ロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合(係合)される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制(ロック)されて、スプール24の引出方向への回転が規制される(スプール24の巻取方向への回転は許容される)。
【0029】
フレーム12の脚板12B外側には、ラック&ピニオン方式によるプリテンショナ機構36が設けられている。
【0030】
プリテンショナ機構36には、保持部材としての樹脂製で略円環状のギヤケース38が設けられており、ギヤケース38は、脚板12Bに固定されている。ギヤケース38の外周部は、ロックギヤ30の外周部分を被覆しており、ギヤケース38内には、ロックギヤ30のクラッチ凹部32が配置されると共に、トーションシャフト28の一端28Aが貫通されている。
【0031】
ギヤケース38の外周部には、所定数の円柱状の保持ピン40(シェアピン)が一体に形成されており、保持ピン40は、ギヤケース38からロックギヤ30とは反対側へ突出されている。ギヤケース38の上部には、円柱状の係止ピン42(シェアピン)が一体に形成されており、係止ピン42は、ギヤケース38から脚板12Bとは反対側へ突出されている。
【0032】
ギヤケース38のロックギヤ30とは反対側には、クラッチ機構を構成するクラッチ部材としての略円環板状のクラッチプレート44が配置されている。クラッチプレート44の外周縁には、半円状の装着孔46が所定数形成されており、所定数の装着孔46は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。装着孔46には、ギヤケース38の保持ピン40が嵌入されており、これにより、クラッチプレート44がギヤケース38に保持されている。
【0033】
クラッチプレート44の内周には、L字形板状の延出部48が所定数(本実施の形態では6つ)一体に形成されており、所定数の延出部48は、クラッチプレート44の周方向に沿って等間隔に配置されている。延出部48の先端には、柱状の噛込部48Aが一体に形成されており、噛込部48Aは、延出部48からギヤケース38側へ突出されて、ギヤケース38内側を介してロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。噛込部48Aは、クラッチ凹部32の外周面から離間されており、クラッチプレート44は、ロックギヤ30の回転を許容している。
【0034】
クラッチプレート44の内周側には、駆動部材としてのピニオン50が設けられており、ピニオン50には、トーションシャフト28の一端28Aが同軸上かつ相対回転可能に貫通されている。ピニオン50の軸方向中間部分には、歯車52が設けられており、歯車52の外周全体には、ピニオン歯52Aが形成されている。さらに、ピニオン50のロックギヤ30とは反対側部分には、円筒状の支持筒54が同軸上に形成されている。
【0035】
ピニオン50のロックギヤ30側部分には、クラッチ機構を構成するクラッチ部56が形成されており、クラッチ部56は、ロックギヤ30のクラッチ凹部32内に挿入されている。クラッチ部56の外周面には、所定数(本実施の形態では6つ)の凸部56Aが形成されており、所定数の凸部56Aは、クラッチ部56の周方向に沿って等間隔に配置されると共に、それぞれ突出高さが引出方向へ向かうに従い徐々に高くされている。クラッチ部56には、各凸部56Aの巻取方向側部分において、クラッチプレート44の噛込部48Aが装着(圧接)されており、これにより、ピニオン50がクラッチプレート44に保持されている。
【0036】
フレーム12の脚板12B外側には、組付部材としての金属製板状のカバープレート58が設けられており、カバープレート58は、上部の背板12A側部分において2個の固定手段としての固定スクリュー60によって脚板12Bに固定(締結)されると共に、下部の背板12A側部分及び背板12Aとは反対側部分においてそれぞれ1個の固定スクリュー60によって脚板12Bに固定(締結)されて、脚板12Bに固定されている。カバープレート58は、ギヤケース38、クラッチプレート44及びピニオン50をロックギヤ30とは反対側から被覆している。
【0037】
カバープレート58には、ピニオン50の支持筒54が貫通されており、カバープレート58は、ピニオン50を回転自在に支持している。ピニオン50の支持筒54には、カバープレート58より脚板12Bとは反対側において、係止部材としての正面視略C字状のKリング62が嵌合固定されており、Kリング62がカバープレート58に係止されることで、ピニオン50のカバープレート58からの離脱が規制されている。
【0038】
カバープレート58の上部には、長尺矩形状の第3係止孔64が貫通形成されており、第3係止孔64は、略水平に配置されて、脚板12Bの第1係止孔18及び第2係止孔20に対向されている。
【0039】
フレーム12の脚板12Bの上部とカバープレート58の上部との間には、筒部材としての金属製(本実施の形態では鉄製)で円筒状のシリンダ66が設けられており、シリンダ66は、脚板12B及びカバープレート58から上側に延出されている。
【0040】
シリンダ66は、カバープレート58の上側において、断面略U字形板状のシリンダホルダ68内に嵌合されており、シリンダホルダ68は、長手方向両端部において脚板12Bの上部に係合されて、脚板12Bに固定されている。これにより、シリンダホルダ68が、シリンダ66の径方向への移動を制限して、シリンダ66を保持している。
【0041】
シリンダ66の下端には、周縁部66Aが一体に形成されており、周縁部66Aは、シリンダ66の外周全体に突出されている。周縁部66Aは、脚板12Bの第1係止孔18及びカバープレート58の第3係止孔64上側部分に嵌合されている。
【0042】
シリンダ66の直下には、ストッパ部材としての略矩形板状のピストンストッパ70が配置されており、ピストンストッパ70は、シリンダ66の下端(周縁部66Aを含む)に当接(面接触)されると共に、脚板12Bの第2係止孔20及びカバープレート58の第3係止孔64下側部分に嵌合されている。これにより、ピストンストッパ70の移動及びシリンダ66の軸方向への移動が係止されて、ピストンストッパ70及びシリンダ66が脚板12Bとピストンストッパ70との間に固定されている。
【0043】
ピストンストッパ70には、矩形状の挿通孔72が貫通形成されており、シリンダ66内は、挿通孔72を介して、ピニオン50の上側に開口されている。
【0044】
シリンダ66内の上端には、ガス供給手段としての略円柱状のガスジェネレータ74が挿入されており、ガスジェネレータ74は、シリンダ66の上端を閉塞している。シリンダ66の上端には、固定手段としての有底円筒状のキャップ76が固定されており、キャップ76の上壁(底壁)がガスジェネレータ74の上面に係止されることで、ガスジェネレータ74がシリンダ66内の上端に固定されている。
【0045】
ガスジェネレータ74は、車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されており、車両の衝突時(車両の衝突が検出された際、車両の緊急時である所定の機会)には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ74が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ66内の上端に供給する。
【0046】
シリンダ66の外周面には、シリンダホルダ68とキャップ76との間の部分において、凹部78(図1参照)が形成されており、凹部78内は、シリンダ66の径方向外側(外周外側)に開放されている。凹部78は、軸方向がシリンダ66の径方向にされた円錐台状(断面台形状)にされており、凹部78は、底面78Aが円形平面状にされると共に、周方向全体(開放周方向全体)において側面78Bが設けられて閉じられている。凹部78は、底面78A(底部)側(シリンダ66の径方向内側)へ向かうに従い径寸法が小さくされており、凹部78のシリンダ66径方向に垂直な断面積は、凹部78の底面78A側へ向かうに従い小さくされている。
【0047】
凹部78の底面78Aの径寸法D(直径寸法)は、1.0mm以上2.0mm以下にされている。さらに、シリンダ66の底面78A位置における肉厚寸法Tは、0.3mm以上0.8mm以下にされている。
【0048】
凹部78は、例えば図5に示す如くドリル刃80の軸周り回転によるシリンダ66の掘削、又は、シリンダ66のプレス成形時や鍛造成形時における成形によって、シリンダ66に形成されている。凹部78のシリンダ66への形成時には、例えばシリンダ66の凹部78形成位置内に円柱状の芯材(図示省略)が嵌入されることで、シリンダ66の凹部78位置における内周面が、凸部を形成されずに、滑らかな円周面(円滑面)にされている。
【0049】
凹部78は、隠蔽手段として、シリンダ66の背板12Aとは反対側の周方向位置に配置されており、シリンダ66の凹部78位置は、ピラーの挿入孔とは反対側に配置されて、挿入孔の車幅方向内側からは隠蔽されている。
【0050】
シリンダ66の凹部78位置(薄肉部である低強度部分)は、所定荷重以上の破断力(外力)によって破断されてシリンダ66内を開放可能にされており、例えば図6に示す如く、破断具82(例えばドライバー又は錐等の工具)の尖った先端82A(破断部)を凹部78内に挿入した状態で、打撃手段としてのハンマー84によって破断具82に基端側から先端側への打撃力を付与することで、シリンダ66の凹部78位置を破断可能にされている。
【0051】
シリンダ66の凹部78位置は、ガスジェネレータ74が発生してシリンダ66内に供給されたガスの圧力によっては破断不能にされており、仮に、シリンダ66内のガスの圧力がプリテンショナ機構36の通常作動時によりも異常に高くなった異常圧力に到達しても、シリンダ66の凹部78位置は、当該ガスの圧力によっては破断不能にされている。
【0052】
シリンダ66内には、移動部材としてのピストン88が設けられている。
【0053】
ピストン88の上端には、円柱状の基部90が設けられており、基部90は、シリンダ66と同軸上に配置されている。ピストン88には、基部90の直下において、円板状のフランジ92が設けられており、フランジ92は、シリンダ66と同軸上に配置されると共に、基部90の外周全体に突出されて、シリンダ66の内周面に略嵌合されている。
【0054】
基部90の外周には、シール部材としての円環状かつ断面X字状のXリング94が配置されており、Xリング94は、ゴム製等にされて、弾性及びシール性を有している。Xリング94は、弾性変形された状態で、基部90の外周面、フランジ92の上面及びシリンダ66の内周面における全周に接触されており、Xリング94は、シリンダ66とピストン88との間をシールしている。
【0055】
ピストン88には、フランジ92より下側において、略矩形柱状のラック96が設けられており、ラック96の背板12Aとは反対側の部分には、ラック歯96Aが形成されている。ラック96は、シリンダ66の下端から突出されると共に、ピストンストッパ70の挿通孔72に挿通されており、ラック歯96Aがギヤケース38の係止ピン42に係止されることで、ラック96の下端がピニオン50の歯車52の上側近傍に配置されると共に、ピストン88のフランジ92及びXリング94がシリンダ66の凹部78位置より上側(一側)に配置されている。
【0056】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0057】
以上の構成のウェビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員にウェビング26が装着された際に、付勢機構がスプール24に巻取方向への付勢力を作用させることで、ウェビング26の緩みが除去される。
【0058】
車両の衝突時には、ウェビング26がスプール24から急激に引出され又は車両が急減速されて、ロック機構が作動されることで、ロックプレート34のロック歯34Aがロックギヤ30のラチェット歯30Aに噛合される。これにより、ロックギヤ30の引出方向への回転が規制されて、スプール24の引出方向への回転が規制されることで、ウェビング26のスプール24からの引出しが規制されて、ウェビング26が乗員を拘束する。
【0059】
さらに、車両の衝突時には、制御装置の制御によって、プリテンショナ機構36が作動されることで、ガスジェネレータ74が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ66内の上端に供給する。このため、シリンダ66とピストン88との間がXリング94によってシールされた状態が維持されつつ、ピストン88(基部90及びフランジ92)及びXリング94が当該ガスの圧力を上側から受けることで、ピストン88のラック96(ラック歯96A)を係止するギヤケース38の係止ピン42がラック歯96Aによって破断されて、ピストン88及びXリング94が下側(他側)へ移動される。これにより、ピストン88のラック96(ラック歯96A)がピニオン50の歯車52(ピニオン歯52A)に噛合されて、ピニオン50が巻取方向へ回転される。
【0060】
ピニオン50が巻取方向へ回転された際には、クラッチプレート44の噛込部48Aがピニオン50のクラッチ部56における凸部56Aの巻取方向側部分から引出方向側部分に移動されることで、クラッチプレート44の延出部48がクラッチプレート44の外周側へ変形移動されつつ、噛込部48Aがロックギヤ30のクラッチ凹部32外周面側へ移動される。このため、噛込部48Aがクラッチ部56(凸部56Aの周面)とロックギヤ30(クラッチ凹部32の外周面)との間に噛込まれる(係合される)ことで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体回転可能にされる。これにより、クラッチプレート44の装着孔46に嵌入されたギヤケース38の保持ピン40が装着孔46の周縁によって破断されて、クラッチプレート44のギヤケース38への保持が解除されることで、ピニオン50、クラッチプレート44、ロックギヤ30、トーションシャフト28及びスプール24が一体に巻取方向へ回転される。このため、スプール24にウェビング26が巻取られて、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される。
【0061】
ここで、ガスジェネレータ74によってシリンダ66内に供給されたガスの圧力によりシリンダ66が凹部78位置において破断不能にされている。このため、ガスジェネレータ74によってシリンダ66内にガスが供給された際に、シリンダ66内のガスが凹部78位置を介して排出されることを防止でき、ガスの圧力によるピストン88の移動力が低下することを防止できて、スプール24へのウェビング26の巻取力が低下することを防止できる。
【0062】
また、プリテンショナ機構36が作動された際には、少なくとも、クラッチプレート44の噛込部48Aがピニオン50のクラッチ部56(凸部56Aの周面)とロックギヤ30(クラッチ凹部32の外周面)との間に噛込まれるまで、ピストン88及びXリング94が下側へ移動される。これにより、ピストン88及びXリング94の下側への移動が停止されて、プリテンショナ機構36の作動が終了された後には、ピストン88のフランジ92及びXリング94がシリンダ66の凹部78位置より下側に配置される。
【0063】
図4に示す如く、仮に、ピストン88のフランジ92がピストンストッパ70に当接した際には、常に、ピストン88及びXリング94の下側への移動が停止されて、プリテンショナ機構36の作動が終了される。
【0064】
このように、プリテンショナ機構36の作動前には、ピストン88のフランジ92及びXリング94がシリンダ66の凹部78位置より上側に配置される一方、プリテンショナ機構36の作動が終了された後には、ピストン88のフランジ92及びXリング94がシリンダ66の凹部78位置より下側に配置されるため、凹部78は、シリンダ66におけるピストン88(フランジ92)及びXリング94の移動範囲に形成されている。
【0065】
ここで、シリンダ66の凹部78位置における内周面が、凸部を形成されずに、滑らかな円周面にされている。このため、上述の如くシリンダ66におけるピストン88(フランジ92)及びXリング94の移動範囲に凹部78を形成しても、シリンダ66の凹部78位置における内周面がピストン88(フランジ92)及びXリング94の下側への移動を制限することを防止できる。
【0066】
さらにこのため、シリンダ66におけるピストン88(フランジ92)及びXリング94の移動範囲に凹部78を形成できるため、シリンダ66のピストン88(フランジ92)及びXリング94より上側(ガスジェネレータ74側)に凹部78を形成するための部分を設ける必要がない。これにより、シリンダ66の軸方向長さを短くできて、シリンダ66を小型化できる。
【0067】
また、プリテンショナ機構36の作動が終了された後には、シリンダ66とピストン88との間がXリング94によってシールされた状態が維持されているため、シリンダ66内に高圧のガスが残留している。
【0068】
プリテンショナ機構36が作動された後(プリテンショナ機構36の作動が終了された後)に、ウェビング巻取装置10を廃却やリサイクル等のために分解する際には、先ず、ピラーの車幅方向内側壁へのフレーム12(背板12A)の取付けを解除して、ウェビング巻取装置10をピラーの内部から外部へ挿入孔を介して取出すことで、ウェビング巻取装置10を車両から取外す。
【0069】
次に、プリテンショナ機構36を分解するために、シリンダホルダ68の長手方向両端部のフレーム12(脚板12B)への係合を解除して、シリンダホルダ68を脚板12Bから取外す。さらに、カバープレート58の4個の固定スクリュー60を取外して、脚板12Bからカバープレート58を取外すことで、カバープレート58の第3係止孔64へのシリンダ66の周縁部66A及びピストンストッパ70の嵌合、脚板12Bの第1係止孔18へのシリンダ66の周縁部66Aの嵌合及び脚板12Bの第2係止孔20へのピストンストッパ70の嵌合を解除する。その後、シリンダ66とピストンストッパ70とを分離すると共に、シリンダ66内からピストン88を抜出して(離脱させて)、シリンダ66とピストン88とを分離する。
【0070】
ここで、例えば図6に示す如く、破断具82の尖った先端82Aをシリンダ66の凹部78内に挿入した状態で、ハンマー84によって破断具82に基端側から先端側への打撃力を付与することで、破断具82がシリンダ66の凹部78位置を破断して、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放可能にされている。
【0071】
このため、シリンダ66とピストン88とが分離可能になる前であるフレーム12の脚板12Bからカバープレート58を取外す前に、シリンダ66の凹部78位置を破断することで、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放できて、シリンダ66内の高圧のガスを凹部78位置を介して排出できる。
【0072】
また、凹部78内がシリンダ66の径方向外側へ開放されている。このため、破断具82の尖った先端82Aを凹部78内に容易に挿入でき、破断具82によりシリンダ66の凹部78位置を容易に破断できる。
【0073】
さらに、凹部78が周方向全体において側面78Bが設けられて閉じられている。このため、破断具82の尖った先端82Aを凹部78内(底面78A)に容易に位置決めでき、破断具82によりシリンダ66の凹部78位置を一層容易に破断できる。
【0074】
また、凹部78の径寸法(シリンダ66径方向に垂直な寸法)が凹部78の底面78A側へ向かうに従い小さくされている。
【0075】
このため、破断具82の尖った先端82Aを凹部78内(底面78A)に一層容易に位置決めでき、破断具82によりシリンダ66の凹部78位置を一層容易に破断できる。
【0076】
さらに、先端が尖っていない工具の先端が不用意に凹部78内に挿入されて底面78Aに到達することを抑制でき、シリンダ66の凹部78位置が当該工具によって不用意に破断されることを抑制できる。
【0077】
しかも、凹部78の底面78Aの面積を小さくできて、シリンダ66における強度が低い凹部78の底壁部分を小さくでき、シリンダ66の凹部78位置における強度が低下することを抑制できる。このため、上述の如くガスジェネレータ74によってシリンダ66内に供給されたガスの圧力をシリンダ66における凹部78の側面78B構成部分に分散させて緩和させることができて、当該ガスの圧力によってはシリンダ66の凹部78位置を破断不能にする構成に適切にできる。
【0078】
また、ウェビング巻取装置10を、車両から取外した後に、フレーム12の背板12Aを下側にして水平面に載置することで、シリンダ66の周方向における姿勢が凹部78を上側へ開放させた位置に安定される(図6参照)。このため、破断具82によりシリンダ66の凹部78位置を一層容易に破断できる。
【0079】
さらに、シリンダ66の背板12Aとは反対側の周方向位置に凹部78が配置されているため、ウェビング巻取装置10が車両に設置された状態(フレーム12の背板12Aがピラーの車幅方向内側壁に取付けられた状態)では、シリンダ66の凹部78位置が、ピラーの挿入孔とは反対側に配置されて、挿入孔の車幅方向内側からは隠蔽される。このため、ウェビング巻取装置10を車両から取外すまでは、シリンダ66の凹部78位置が隠蔽される。これにより、ウェビング巻取装置10を車両から取外す前にシリンダ66の凹部78位置が破断されることを抑制できる。
【0080】
また、凹部78の底面78Aの径寸法Dが1.0mm以上にされている。このため、破断具82の先端82Aを凹部78内の底面78A位置に容易に挿入できる。
【0081】
さらに、凹部78の底面78Aの径寸法Dが2.0mm以下にされている。このため、ガスジェネレータ74によりシリンダ66内に供給されたガスの圧力に対するシリンダ66の耐圧強度を底面78A位置において高くでき(当該ガスの圧力によってシリンダ66の底面78A位置が曲げ力よりもせん断力を作用され易くなり)、当該ガスの圧力によってはシリンダ66の凹部78位置を適切に破断不能にできる。しかも、工具の細い先端が不用意に凹部78内の底面78A位置に挿入されることを抑制できる。
【0082】
また、シリンダ66の底面78A位置における肉厚寸法Tが0.3mm以上にされている。このため、ガスジェネレータ74によりシリンダ66内に供給されたガスの圧力に対するシリンダ66の耐圧強度を底面78A位置において高くでき(当該ガスの圧力によってシリンダ66の底面78A位置が曲げ力よりもせん断力を作用され易くなり)、当該ガスの圧力によってはシリンダ66の凹部78位置を適切に破断不能にできる。しかも、シリンダ66の凹部78形成加工(シリンダ66を底面78A位置において狙いの薄さにする加工)を容易にできる。
【0083】
さらに、シリンダ66の底面78A位置における肉厚寸法Tが0.8mm以下にされている。このため、破断具82及びハンマー84による破断力によってシリンダ66の凹部78位置(底面78A位置)を容易に破断できる。
【0084】
[第2の実施の形態]
図7(A)には、本発明の第2の実施の形態に係るプリテンショナ機構100におけるシリンダ66の主要部が斜視図にて示されており、図7(B)には、プリテンショナ機構100におけるシリンダ66の主要部が断面図にて示されている。
【0085】
本実施の形態に係るプリテンショナ機構100は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0086】
図7の(A)及び(B)に示す如く、本実施の形態に係るプリテンショナ機構100では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の弦方向(径方向及び軸方向に垂直な方向)にされた台形柱状(断面台形状)にされている。凹部78の底面78Aは、長尺矩形平面状にされて、シリンダ66の弦方向に延伸されると共に、シリンダ66の径方向に垂直に配置されている。凹部78の側面78Bは、凹部78のシリンダ66軸方向両側のみに平面状に形成されており、凹部78内は、シリンダ66の周方向両側に開放されている。凹部78は、底面78A(底部)側(シリンダ66の径方向内側)へ向かうに従いシリンダ66軸方向における寸法が小さくされている。
【0087】
凹部78の底面78Aの径寸法D(シリンダ66軸方向寸法)は、1.0mm以上2.0mm以下にされている。さらに、シリンダ66の底面78A位置における最小肉厚寸法Tは、0.3mm以上0.8mm以下にされている。
【0088】
ここで、本実施の形態でも、凹部78が周方向全体において閉じられたことによる作用及び効果を除き、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0089】
[第3の実施の形態]
図8には、本発明の第3の実施の形態に係るプリテンショナ機構110におけるシリンダ66の主要部が断面図にて示されている。
【0090】
本実施の形態に係るプリテンショナ機構110は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0091】
図8に示す如く、本実施の形態に係るプリテンショナ機構110では、シリンダ66の凹部78位置に、補助手段としての補助具112(破断具)が設けられている。
【0092】
補助具112の中央部分には、金属製で柱状(例えば円柱状又は矩形柱状)の補助柱114が設けられており、補助柱114の先端114Aは、三角錐状又は三角柱状にされて、尖っている。補助具112の外周部分には、樹脂製で板状(例えば円板状又は矩形板状)の補助板116が設けられており、補助板116は、補助柱114の全周と一体に連結されている。補助板116の補助柱114との連結部分は、低強度部116Aにされており、低強度部116Aは、補助板116の他の部分に比し、肉厚を薄くされて強度が低くされている。
【0093】
補助具112は、シリンダ66の凹部78位置に、取付手段としての樹脂製でシート状のテープ118によって取付けられており、テープ118は、可撓性を有して、補助具112をシリンダ66とは反対側から被覆した状態で、裏面がシリンダ66及び補助具112に接着されている。これにより、補助具112の補助柱114先端114Aがシリンダ66の凹部78内に挿入されると共に、補助具112の補助板116がシリンダ66の外周面に当接されている。
【0094】
テープ118の表面には、報知手段としての例えば「ここをたたいて下さい」等の打撃位置表示(図示省略)が設けられており、この打撃位置表示は、シリンダ66の凹部78位置を報知して、ハンマー84による打撃位置である補助具112の補助柱114の位置を報知している。
【0095】
ここで、ハンマー84によってテープ118を介して補助具112の補助柱114に基端側から先端側への打撃力を付与することで、補助具112の補助板116が低強度部116A(補助柱114との連結部分)において破断又は変形されて、補助具112の補助柱114がシリンダ66の凹部78位置を破断可能にされている。このため、補助具112に補助されつつ、シリンダ66の凹部78位置を破断できて、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放可能にされている。
【0096】
これにより、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0097】
さらに、テープ118によって補助具112がシリンダ66の凹部78位置に取付けられて、補助具112の補助柱114先端114Aがシリンダ66の凹部78内に挿入された状態が維持されている。このため、シリンダ66の凹部78位置を破断する際に、補助柱114の先端114Aをシリンダ66の凹部78内に位置決めする作業を不要にでき、シリンダ66の凹部78位置を一層容易に破断できる。
【0098】
しかも、テープ118の打撃位置表示が、シリンダ66の凹部78位置を報知して、ハンマー84による打撃位置である補助具112の補助柱114の位置を報知している。このため、シリンダ66とピストン88とが分離可能になる前であるフレーム12の脚板12Bからカバープレート58を取外す前に、ハンマー84によって補助柱114に打撃力を付与し易くなって、シリンダ66の凹部78位置を破断し易くできる。
【0099】
なお、本実施の形態では、補助具112の補助板116を樹脂製にしたが、補助具112の補助板116を金属製にしてもよい。
【0100】
さらに、本実施の形態では、補助具112の補助板116に低強度部116Aを設けたが、補助具112の補助板116に低強度部116Aを設けなくてもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、テープ118に打撃位置表示を設けたが、シリンダ66の外周面や補助具112に刻印等により打撃位置表示を設けてもよい。
【0102】
さらに、本実施の形態では、上記第1の実施の形態に補助具112、テープ118及び打撃位置表示を適用したが、上記第2の実施の形態に補助具112、テープ118及び打撃位置表示を適用してもよい。
【0103】
[第1変形例]
図9(A)には、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第1変形例が断面図にて示されている。
【0104】
図9(A)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の径方向にされた円錐状(断面三角形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた三角柱状(断面三角形状)にされている。このため、凹部78には、平面状の底面78Aが設けられていない。
【0105】
[第2変形例]
図9(B)には、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第2変形例が断面図にて示されている。
【0106】
図9(B)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の径方向にされた略円錐台状(断面略台形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた略台形柱状(断面略台形状)にされている。さらに、凹部78の側面78Bは、凹部78の径方向外側又はシリンダ66軸方向外側へ凸状に湾曲されている。
【0107】
[第3変形例]
図9(C)には、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第3変形例が断面図にて示されている。
【0108】
図9(C)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の径方向にされた略円錐台状(断面略台形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた略台形柱状(断面略台形状)にされている。さらに、凹部78の側面78Bは、凹部78の径方向内側又はシリンダ66軸方向内側へ凹状に湾曲されている。
【0109】
[第4変形例]
図9(D)には、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第4変形例が断面図にて示されている。
【0110】
図9(D)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の径方向にされた略円錐状(断面略三角形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた略三角柱状(断面略三角形状)にされている。このため、凹部78には、平面状の底面78Aが設けられていない。さらに、凹部78の側面78Bは、凹部78の径方向外側又はシリンダ66軸方向外側へ凸状に湾曲されている。
【0111】
[第5変形例]
図9(E)には、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第5変形例が断面図にて示されている。
【0112】
図9(E)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78が、軸方向をシリンダ66の径方向にされた略円錐状(断面略三角形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた略三角柱状(断面略三角形状)にされている。このため、凹部78には、平面状の底面78Aが設けられていない。さらに、凹部78の側面78Bは、凹部78の径方向内側又はシリンダ66軸方向内側へ凹状に湾曲されている。
【0113】
[第6変形例]
図9(F)には、上記第1の実施の形態又は第2の実施の形態におけるシリンダ66の凹部78の第6変形例が断面図にて示されている。
【0114】
図9(F)に示す如く、本変形例では、シリンダ66の凹部78内に、補助手段としての補助部86が設けられており、補助部86は、軸方向をシリンダ66の径方向にされた円錐台状(断面台形状)にされ、又は、軸方向をシリンダ66の弦方向にされた台形柱状(断面台形状)にされて、凹部78の底面78Aと一体にされている。
【0115】
ここで、ハンマー84によってシリンダ66の補助部86にシリンダ66の径方向内側への打撃力を付与することで、シリンダ66の凹部78側面78Bと補助部86との境界部分からシリンダ66の凹部78位置を破断可能にされている。このため、補助部86に補助されつつ、シリンダ66の凹部78位置を破断できて、シリンダ66内を凹部78位置を介して開放可能にされている。
【0116】
なお、本変形例において、上記第3の実施の形態と同様の打撃位置表示をシリンダ66の外周面(補助部86でもよい)に刻印等により設けてもよい。この場合、打撃位置表示は、ハンマー84による打撃位置である補助部86の位置(シリンダ66の凹部78位置)を報知する。
【0117】
また、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態(第1変形例〜第6変形例を含む)では、凹部78内をシリンダ66の径方向外側へ開放したが、凹部78内をシリンダ66の径方向内側へ開放してもよい。この場合、上記第3の実施の形態と同様の打撃位置表示をシリンダ66の外周面に刻印等により設けて、この打撃位置表示がハンマー84による打撃位置であるシリンダ66の凹部78位置を報知してもよい。
【0118】
さらに、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態(第1変形例〜第6変形例を含む)では、シリンダ66のピストン88(フランジ92)及びXリング94より下側(ガスジェネレータ74とは反対側)に凹部78を形成したが、シリンダ66のピストン88(フランジ92)及びXリング94より上側(ガスジェネレータ74側)に凹部78を形成してもよい。
【0119】
また、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態(第1変形例〜第6変形例を含む)では、シリンダ66の背板12Aとは反対側の周方向位置に凹部78を形成したが、シリンダ66の何れの周方向位置に凹部78を形成してもよい。
【0120】
さらに、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態(第1変形例〜第6変形例を含む)では、シリンダ66(筒部材)を円筒状にしたが、シリンダ66(筒部材)を円筒状以外の筒状(例えば矩形筒状等の多角形筒状)にしてもよい。
【0121】
また、上記第1の実施の形態〜第3の実施の形態(第1変形例〜第6変形例を含む)では、シリンダ66(筒部材)内をピストン88(移動部材)が移動されることで、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される構成にしたが、上記特許文献2の如く、パイプ(筒部材)内をボール等の移動体(移動部材)が移動されることで、ウェビング26による乗員の拘束力が増加される構成にしてもよい。
【0122】
さらに、本発明は、シートベルト装置におけるセレクタブルフォースリミッタの切替機構や、ラッププリテンショナ機構や、バックルプリテンショナ機構のようなガスにより作動するガス機構に適用してもよい。
【符号の説明】
【0123】
12 フレーム(安定手段)
26 ウェビング
36 プリテンショナ機構
66 シリンダ(筒部材)
78 凹部
86 補助部(補助手段)
88 ピストン(移動部材)
100 プリテンショナ機構
110 プリテンショナ機構
112 補助具(補助手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、
凹部が形成されて外力により前記凹部位置を破断可能にされ、所定の機会に内部にガスが供給されると共に、内部に供給されたガスの圧力により前記凹部位置を破断不能にされた筒部材と、
前記筒部材内に供給されたガスの圧力により移動されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される移動部材と、
を備えたプリテンショナ機構。
【請求項2】
前記凹部内を前記筒部材の径方向外側へ開放すると共に、前記凹部の前記筒部材径方向に垂直な寸法を前記凹部の底部側へ向かうに従い小さくした請求項1記載のプリテンショナ機構。
【請求項3】
前記凹部の底部の径寸法を1.0mm以上2.0mm以下にすると共に、前記凹部の底部位置における前記筒部材の肉厚寸法を0.3mm以上0.8mm以下にした請求項1又は請求項2記載のプリテンショナ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218547(P2012−218547A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85347(P2011−85347)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】