説明

プリンタおよび媒体

【課題】媒体上に感温インクの像および非感温インクの像を形成するにあたって、像をより効率良く視認させられるプリンタおよび媒体を得る。
【解決手段】本発明の実施形態にかかるプリンタにあっては、媒体を搬送する搬送機構と、前記媒体上に温度によって変色しない非感温インクの像を形成する像形成部と、前記非感温インクの像が形成された媒体上に温度によって変色する感温インクの像を形成する第二の像形成部と、を備えたことを特徴の一つとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタおよび媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体上に像を形成する像形成部として複数の印字ヘッドを備えたプリンタが知られている。この種のプリンタでは、複数の像形成部が、それぞれのインクの像を、媒体上に形成することができる。また、インクとしては、温度によって変色する感温インクが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のプリンタでは、媒体上に感温インクの像および非感温インクの像を形成するにあたって、像をより効率良く視認させられることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態にかかるプリンタにあっては、媒体を搬送する搬送機構と、前記媒体上に温度によって変色しない非感温インクの像を形成する像形成部と、前記非感温インクの像が形成された媒体上に温度によって変色する感温インクの像を形成する第二の像形成部と、を備えたことを特徴の一つとする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図2は、感温インクの感温特性の一例を示す説明図であって、(a)は、一つの閾値温度を有した感温インクの変色特性、(b)は、二つの閾値温度を有した感温インクの変色特性を示す図である。
【図3】図3は、実施形態にかかるプリンタに含まれる冷却機構を示す正面図である。
【図4】図4は、図3の冷却機構に含まれる噴出部の断面図であって、(a)は、媒体に対してガスが直角に噴射される状態を示す図、(b)は、媒体に対してガスが斜めに噴射される状態を示す図である。
【図5】図5は、図3の冷却機構に含まれる噴出部の一部を台紙側から見た平面図である。
【図6】図6は、実施形態にかかるプリンタに含まれる制御回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施形態にかかるプリンタに含まれるCPUの一例を示すブロック図である。
【図8】図8は、実施形態にかかるプリンタで得られた媒体としての商品ラベルの一例を示す図であって、(a)は、感温インクの像が見えにくい(見えない)状態を示す図、(b)は、感温インクの像が見えやすい(見える)状態を示す図である。
【図9】図9は、実施形態にかかるプリンタに含まれるインクリボンカートリッジの一部を模式的に示す側面図であって、(a)は、インクリボンと媒体との密着区間が長いものを示す図、(b)は、インクリボンと媒体との密着区間が短いものを示す図である。
【図10】図10は、実施形態の変形例にかかるプリンタに含まれる可動プレートを示す平面図である。
【図11】図11は、実施形態の変形例にかかるプリンタで得られた媒体としての商品ラベルの一例を示す図である。
【図12】図12は、第2実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図13】図13は、第3実施形態にかかるプリントシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与され、重複する説明が省略される。
【0007】
<第1実施形態>
本実施形態では、プリンタ1は、一例として、インクリボンを加熱してインクを紙等の媒体Mに転写するサーマルプリンタとして構成されている。媒体Mは、一例としては、図8に示すようなラベルであることができる。複数の媒体Mは、帯状の台紙2の表面上に、所定の間隔(ピッチ)で貼り付けられる。なお、台紙2上に切込みが設けられ、媒体Mを台紙2から切り取れるように構成することもできる。
【0008】
プリンタ1の本体部1aには、複数(本実施形態では四つ)のインクリボンカートリッジ3(3A〜3D)を着脱可能に装着することができる。複数のインクリボンカートリッジ3は、プリンタ1内に形成された帯状の台紙2の搬送路Pに沿って並べて配置されている。これら複数のインクリボンカートリッジ3は、それぞれ、ヘッド(サーマルヘッド)3aおよびインクリボン3d(図9参照)を有し、ヘッド3aによってインクリボン3dのインクを加熱することで、搬送路P上を搬送された媒体Mに、それぞれのインクの像(図1には図示せず)を形成する。すなわち、インクリボンカートリッジ3のヘッド(サーマルヘッド)3aが、像形成部に相当する。なお、インクリボンカートリッジ3の数は、四つには限定されず、種々に設定することができる。
【0009】
本体部1aの、搬送路Pの最上流側となる位置には、台紙2のロール2aが、着脱可能かつ回転可能に装着されている。搬送ローラ4の回動によってロール2aから台紙2が引き出され、搬送路P内で搬送される。
【0010】
搬送路Pは、インクリボンカートリッジ3の他、搬送ローラ4や補助ローラ5等の配置によって定められる。プリンタ1は、モータ6によって回転駆動される複数の搬送ローラ4を備えている。モータ6の回転は、回転伝達機構(減速機構)7を介して、各搬送ローラ4に伝達される。補助ローラ5は、搬送ローラ4とともに台紙2を挟持する位置や、複数の搬送ローラ4や補助ローラ5間で台紙2が架け渡される位置等に、配置される。なお、プリンタ1は、媒体Mを検出するセンサ8や、台紙2の張りを検出する張り検出機構9等も備えている。本実施形態では、これらモータ6や、回転伝達機構7、搬送ローラ4、補助ローラ5等によって、台紙2(媒体M)の搬送機構が構成されている。
【0011】
このプリンタ1には、温度によって変色しない非感温インクのインクリボンを有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。また、このプリンタ1には、温度によって変色する感温インクのインクリボンを有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。さらに、このプリンタ1には、色違いのインクリボン(非感温インク、感温インク)を有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。インクリボンカートリッジ3は、本体部1aに設けられた複数のインクリボンカートリッジ3(3A〜3D)の装着位置のいずれかに、着脱可能に装着することができる。
【0012】
感温インクには、例えば、図2の(a)に示すように、閾値温度Thを境界として発色状態が変化するものがある。一例として、図2の(a)の感温インクは、温度Tが閾値温度Thを超えた場合には白色であり(S2)、温度Tが閾値温度Th以下の場合には有色となる(S1)。媒体Mが白色である場合、感温インクが白色の状態(S2)では、媒体M上に形成されたその感温インクの像は見えにくくあるいは見えなくなる。なお、感温インクにおける温度による発色状態の変化は可逆変化である。
【0013】
また、感温インクには、例えば、図2の(b)に示すように、温度Tが下降する際と上昇する際とで相異なる閾値温度Th1,Th2を境界として発色状態が変化するものがある。一例として、図2の(b)の感温インクは、温度Tが下降する際には、温度Tが第一の閾値温度Th1より高い状態では白色であり(S2)、温度Tが第一の閾値温度Th1以下になったときに有色に変化する(S1)。媒体Mが白色である場合、感温インクが白色の状態(S2)では、媒体M上に形成されたその感温インクの像は見えにくくあるいは見えなくなる。また、温度Tが上昇する際には、温度Tが第二の閾値温度Th2以下の状態では有色であり(S1)、温度Tが第二の閾値温度Th2より高くなったときに白色に変化する(S2)。ここで、図2の(b)に示すように、第二の閾値温度Th2は第一の閾値温度Th1より高い。したがって、この場合は、温度Tが第一の閾値温度Th1と第二の閾値温度Th2との間にある状態では、温度Tが下降する場合と上昇する場合とで、感温インクの発色状態が異なる。なお、感温インクとしては、種々のものが開発されており、閾値温度Th,Th1,Th2や、各状態での色は、適宜に変更することが可能である。
【0014】
また、サーマルプリンタでは、像形成時(熱転写時)に温度Tが上昇する。したがって、プリンタ1で、媒体M上に、上述した例のような閾値温度Th,Th1,Th2より高い状態で媒体Mと同色に変化する感温インクの像が形成された場合、媒体M上に、その感温インクの像が形成されたのか否かが判別できなかったり、判別しにくかったりする場合がある。また、感温インクの種類によっては、媒体M上に形成された感温インクの像が、常温では視認しにくい場合もある。そこで、本実施形態では、プリンタ1は、媒体M上に形成された感温インクの像の発色状態を変更する発色変更機構として、冷却機構10を備えている。本実施形態では、一例として、冷却機構10によって感温インクの像を冷却することで、温度Tが下がり、その感温インクの像が顕在化してより視認しやすくなり、感温インクの像の媒体M上での形成状況を確認しやすくなる。すなわち、冷却機構10は、感温インクの像の発色変更機構や、可視化機構と言うこともできる。
【0015】
そして、本実施形態では、冷却機構10は、一例として、ガス(気体)を噴出させ、例えば、その際の断熱膨張や潜熱等によって、媒体Mひいては感温インクの像の温度を低下させる。具体的に、冷却機構10は、ガスシリンダのガスカートリッジ11の装着部10aや、噴出部10b、チューブ10c、バルブ10d、冷却フィン10e等を有している。
【0016】
装着部10aには、ガスカートリッジ11が着脱可能に装着される。装着部10aは、ガスカートリッジ11のコネクタ11aを受容するコネクタとして機能する。また、装着部10aは、ガスカートリッジ11を取り外す際に用いる可動レバー(図示せず)や、装着位置でガスカートリッジ11を固定するロック機構(図示せず)等を、有することができる。
【0017】
ガスカートリッジ11は、例えば、液化されたガスが封入されたガスシリンダ(ガスボンベ)として構成することができる。ガス(冷媒)としては、例えば、テトラフルオロエタン等を用いることができる。
【0018】
噴出部10bは、図1,3に示すように、台紙2の裏面に沿って当該台紙2の幅方向に沿って延びた姿勢で設けられている。噴出部10bは、内部にガスの通路が形成されたガスの管として設けられており、図5に示すように、その上壁10fには、一定の間隔(ピッチ)で複数のノズル孔10gが並べて設けられている。ノズル孔10gからは、台紙2の裏面に向けてガスが噴出される。なお、ノズル孔10gは、複数列設けることができる。
【0019】
また、噴出部10bは、台紙2の幅方向に沿った回動軸Ax回りに回動可能にブラケット10hに支持されており、図4の(a)や(b)に示すように、ガスGの噴出角度(噴出方向)を変化させることができる。具体的には、図3に示すように、噴出部10bが所定の噴出角度に配置された状態で、ブラケット10hの貫通孔(図示せず)に挿通された噴出部10bの雄ねじ部10iにナット10jを締め付けることで、噴出部10bを任意の角度で固定することができる。噴出角度を可変設定することで、ガスGによる台紙2の冷却度合いを可変設定することができる。例えば、図4の(a)の場合は、(b)の場合に比べてより強く冷却されるため、媒体M上の感温インクの像は、より低温の状態となる。このように、本実施形態では、噴出部10bは、噴出状態可変機構を有している。
【0020】
チューブ10cは、噴出部10bの角度が変わっても装着部10aと噴出部10bとの間のガスの管路として機能するため、所要の耐圧性かつ柔軟性を有している。
【0021】
バルブ10dは、ガスカートリッジ11から噴出部10bに至るガスの通路を開閉することで、噴出部10bからのガスの噴出および停止を切り替えることができる。バルブ10dは、一例としては、CPU20a(図6参照)からの電気信号によって開くソレノイドバルブとして構成することができ、装着部10aに取り付けることができる。なお、バルブ10dの開閉(開期間の長さ、開閉の反復回数、反復周期等)を制御することで、ガスの噴出状態を可変設定することができる。
【0022】
冷却フィン10eは、ガスカートリッジ11の外周面11bに密接あるいは近接したベース部10kと、搬送方向に沿った姿勢でベース部10kから台紙2の裏面に近接する位置に向けて突出した複数の板状部10mと、を有している。ガスの噴出によってガスカートリッジ11の温度が低下する場合、冷却フィン10eを設けることで、媒体Mの冷却性能をより高めることができる。なお、冷却機構10は、本体部1aに着脱可能に装着することができる。
【0023】
また、図6に示すように、プリンタ1の制御回路20は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)20aや、ROM(Read Only Memory)20b、RAM(Random Access Memory)20c、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)20d、通信インタフェース(I/F)20e、搬送モータコントローラ20f、ヘッドコントローラ20g、リボンモータコントローラ20h、バルブコントローラ20i、入力部コントローラ20j、出力部コントローラ20k、センサコントローラ20m等を有し、これらが、アドレスバスやデータバス等のバス20nを介して接続されている。
【0024】
CPU20aは、ROM20b等に記憶されたコンピュータ読み取り可能な各種プログラムを実行することにより、プリンタ1の各部を制御する。ROM20bは、例えば、CPU20aが実行する各種データや各種プログラム(BIOS(Basic Input Output System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等)等を記憶する。RAM20cは、CPU20aが各種プログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。また、NVRAM20dは、例えば、OS(Operating System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等の他、電源がOFFされても保持しておきたい各種のデータを記憶する。
【0025】
また、通信インタフェース(I/F)20eは、電気通信回線等を通じて接続される他の装置とのデータ通信を制御する。
【0026】
搬送モータコントローラ20fは、CPU20aからの指示に基づいてモータ6を制御する。ヘッドコントローラ20gは、CPU20aからの指示に基づいてヘッド3a(図9参照)等を制御する。リボンモータコントローラ20hは、CPU20aからの指示に基づいてインクリボンカートリッジ3に内蔵されるリボンモータ3bを制御する。また、バルブコントローラ20iは、CPU20aからの指示に基づいて冷却機構10のバルブ10d(のソレノイド)を制御する。
【0027】
また、入力部コントローラ20jは、ユーザ等の手動操作や音声等の入力部(例えば、押しボタンや、タッチパネル、キーボード、マイク、つまみ、ディップスイッチ等)12で入力された信号を、CPU20aに送る。出力部コントローラ20kは、CPU20aからの指示に基づいて画像や音声等の出力部(例えば、ディスプレイや、発光部、スピーカ、ブザー等)13を制御する。また、センサコントローラ20mは、センサ8の検出結果を示す信号を、CPU20aに送る。
【0028】
制御部としてのCPU20aは、図7に示すように、プログラムにしたがって、プリント制御部21aや、発色変更設定部21b、カウント部21c、判断部21d、発色変更制御部21e等として動作する。プログラムには、少なくとも、プリント制御部21aや、発色変更設定部21b、カウント部21c、判断部21d、発色変更制御部21eに対応するモジュールが含まれる。
【0029】
プリント制御部21aは、搬送モータコントローラ20fや、ヘッドコントローラ20g、リボンモータコントローラ20h等を介して、モータ6や、ヘッド3a、リボンモータ3b等を制御する。プリント制御部21aの動作によって、媒体M上に、文字や画像等の像が形成される。
【0030】
発色変更設定部21bは、媒体M上の感温インクの像の発色変更(本実施形態では冷却機構10による冷却)に関する各種設定を行う。具体的には、入力部12で入力された、複数の媒体Mに対して発色変更(冷却)を実行するピッチ(頻度)や、バルブ10dの開閉状態(開閉タイミング、開閉期間、開閉回数、開閉周期等)を設定するパラメータ等を、NVRAM20d等の記憶部に保持したりすることができる。
【0031】
カウント部21cは、センサ8で検出された媒体Mの数(または像形成領域の数)をカウントする。また、判断部21dは、カウント部21cでカウントされたカウント値と、記憶部に記憶されたピッチ(頻度)とを比較して、発色変更(本実施形態では冷却)を実行するか否かを判断する。そして、発色変更制御部21eは、判断部21dで発色変更を実行すると決定された媒体M(上に形成された感温インクの像)に対して発色変更(本実施形態では冷却)を実行するために、各部(本実施形態では冷却機構10の各部)を制御する。本実施形態では、発色変更制御部21eは、バルブ10dの開閉状態を制御することでガスの噴出状態を制御して、媒体Mの発色変更を実行する。なお、発色変更制御部21eは、噴出状態可変機構にも相当する。このように、本実施形態では、ピッチ(頻度)の設定に応じて、全ての媒体M上に形成された感温インクの像に対して発色変更を実行することができるし、あるいは、いくつかの媒体Mに形成された感温インクの像に対して発色変更を実行することもできる。
【0032】
以上のような構成のプリンタ1によって、例えば、図8に示すような媒体Mを得ることができる。図8の(a)は、冷却機構10による冷却が実行されることなくプリンタ1から出力された媒体Mとしての商品ラベルを示す。図8(b)は、冷却機構10による冷却が実行されてプリンタ1から出力された媒体Mとしての商品ラベルを示す。このように、冷却機構10によって冷却を実行することで、感温インクの像Im1,Im2が顕在化するため、プリンタ1の使用者や作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が媒体M上に形成されたことを、視認しやすくなる。また、図8には、媒体M上に、閾値温度Thが異なる2種類の感温インクの像Im1,Im2を形成した場合が例示されている。さらに、媒体M上には、温度によって発色状態が変化しない通常のインクによって形成された像Im3(例えばバーコード等)も形成されている。
【0033】
また、図8に示す感温インクの像Im1,Im2は、非感温インクの像Imbの上に形成されている。したがって、非感温インクの像Imbの像を背景として、感温インクIm1,Im2の色を、媒体Mを背景とする場合に比べて、より顕在化させることが可能となる。非感温インクImbの像の色と、感温インクIm1,Im2の像の色との組み合わせは、種々に設定することが可能であり、例えば、相互に補色となる組み合わせや、明度や彩度を相違させた組み合わせ等を、設定することができる。
【0034】
また、感温インクの像Im1,Im2が可視光を透過する特性を有する場合、感温インクの像Im1,Im2の色と、非感温インクの像Imbの色とが混合された色で、感温インクの像Im1,Im2を視認させることが可能となる。
【0035】
また、上述したように、二つの感温インクの像Im1,Im2を、閾値温度Th1,Th2が異なる2種類の感温インクで形成する場合、使用されるインクが異なるため、感温インクの像Im1,Im2を形成するインクリボンカートリッジ3は、それぞれ別個に、本体部1aに装着される。
【0036】
さらに、非感温インクの像Imbが形成された媒体M上に、感温インクの像Im1,Im2を形成するため、プリンタ1では、非感温インクの像Imbを形成するインクリボンカートリッジ3(例えば、インクリボンカートリッジ3D)が、搬送路Pの上流側に配置され、感温インクの像Im1,Im2を形成するインクリボンカートリッジ3(例えば、インクリボンカートリッジ3A,3B)が、搬送路Pの下流側に配置される。なお、非感温インクの像Im3を形成するインクリボンカートリッジ3(例えば、インクリボンカートリッジ3C)は、非感温インクの像Imbを形成するインクリボンカートリッジ3と、感温インクの像Im1,Im2を形成するインクリボンカートリッジ3との間に配置される。その例では、インクリボンカートリッジ3A,3Bのヘッド3a(図9参照)が、第二の像形成部に相当する。
【0037】
図8に例示される媒体Mは、一例としては、商品の冷蔵あるいは冷凍における温度管理に利用することができる。すなわち、プリンタ1によって図2の(a)に示した感温特性を有した感温インクの像Im1,Im2を形成した媒体Mが、商品のラベルとして用いられる。プリンタ1では、閾値温度Thが商品の冷蔵あるいは冷凍でそれ以上の温度上昇が許容されない管理温度(例えば5℃)である感温インクを、用いる。こうすることで、商品の温度が閾値温度Thを超えた場合には、媒体Mは図8の(a)の状態となって、感温インクの像Im1,Im2は、見えにくく、あるいは見えなくなる(図2の(b)のS2)。一方、商品の温度が管理温度としての閾値温度Th以下である場合、媒体Mは図8の(b)の状態(図2の(a)のS1)となる。すなわち、作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が見えやすい(見える)かあるいは見えにくい(見えない)かによって、商品の温度が管理温度より高いか低いかを判断することができる。さらに、図8の例では、媒体M上に、閾値温度Thの異なる二種類の感温インクの像Im1,Im2が形成されることで、二種類の管理温度(第一管理温度、第二管理温度)に対する商品の管理結果が表示される。さらに、この例では、冷却機構10によって媒体Mを冷却することで、媒体Mでの感温インクの像Im1,Im2の形成状態を視認することができる。
【0038】
また、別の一例では、プリンタ1によって、図8の媒体Mとしての商品ラベル上に、図2の(b)に示したような降温時と昇温時とでヒステリシスとなる感温特性を有する感温インクの像Im1,Im2を形成することができる。その場合、プリンタ1は、媒体M上に、商品の冷蔵あるいは冷凍でそれ以上の温度上昇が許容されない管理温度(例えば−5℃)が閾値温度Th2であり、かつ、所定の冷蔵あるいは冷凍では実現されない温度(例えば−30℃)が閾値温度Th1である感温インクによって、像Im1,Im2を形成する。そして、プリンタ1では、冷却機構10が像Im1,Im2を閾値温度Th1以下(例えば−40℃)となるまで冷却することで、媒体M上に、プリンタ1によって形成された像Im1,Im2が顕在化される。なお、この例の場合は、全ての媒体Mについて、冷却機構10による冷却が実行され、一旦、閾値温度Th1以下に下げられる。こうすることで、商品の温度が、一度でも管理温度としての閾値温度Th2を超えた場合には、媒体Mは図8の(a)の状態となって、感温インクの像Im1,Im2が見えにくく、あるいは見えなくなり(図2の(b)のS2)、その状態(S2)が維持される。一方、商品の温度が管理温度としての閾値温度Th2以下に維持された場合、媒体Mは図8の(b)の状態(図2の(b)のS1)で維持される。すなわち、作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が見えやすい(見えない)かあるいは見えにくい(見える)かによって、商品の温度が管理温度を超えたことがあったか否かを判断することができる。なお、この場合も、媒体M上に、閾値温度Th2の異なる二種類の感温インクの像Im1,Im2が形成されることで、二種類の管理温度(第一管理温度、第二管理温度)に対する商品の管理結果が表示される。
【0039】
なお、本実施形態にかかるプリンタ1では、図9に示すように、ヘッド3aに対するリボンローラ3cの位置が異なるインクリボンカートリッジ3を用いることができる。図9の(a)の構成では、インクと媒体Mとの接触時間が長くなり、(b)の構成では、インクリボン3dと媒体Mとの接触時間が短くなる。どちらの構成とするかは、感温インクや非感温インクの特性に応じて選択することができる。本実施形態では、インクリボンカートリッジ3がインクリボン保持部に相当する。また、リボンモータ3bやリボンローラ3c等によって、リボン搬送部が構築されている。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態にかかるプリンタ1は、像形成部としてのインクリボンカートリッジ3のヘッド3aが、媒体M上に感温インクの像を形成し、発色変更機構としての冷却機構10が、像の発色を変更する。よって、本実施形態によれば、プリンタ1から出力された媒体M上に形成された感温インクの像について、所期の発色状態を得ることができる。また、媒体M上に所望の感温インクの像が形成されたか否かを確認しやすくなる。
【0041】
また、本実施形態では、発色変更機構としての冷却機構10は、ガス(気体)を噴出して温度を低下させる。よって、冷却機構10を、比較的簡素な構成として得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、プリンタ1は、ガスの噴出状態を変化させる噴出状態可変機構として、噴出部10bの姿勢(例えばノズル孔10gからのガスGの噴射方向)を変化させる機構や、ガスの噴出タイミングや噴出期間(例えばバルブ10dの開閉期間等)等を可変設定する機構を備えている。よって、ガスによる冷却状態をより適切に調整することが可能となる。
【0043】
なお、噴出状態可変機構としては、例えば、図10に示すように、有効となるノズル孔10gを変更する可動プレート14を設けることができる。可動プレート14は、噴出部10bの上壁10f上に、当該上壁10fに沿ってスライド可能に支持される。可動プレート14には、所定の位置で全てのノズル孔10gと重なり合うことができる貫通孔14aと、別の位置で一部のノズル孔10gと重なり合うことができる貫通孔14bとが設けられている。可動プレート14の位置をスライドさせることで、全てのノズル孔10gから貫通孔14aを介してガスが噴出される状態と、一部のノズル孔10gから貫通孔14bを介してガスが噴出される状態とを切り替えることができる。これにより、ガスの量を可変設定することで、感温インクの像の冷却度合いを可変設定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、プリンタ1は、媒体M上に相異なる感温インクの像を形成する複数の像形成部としてのインクリボンカートリッジ3のヘッド3aを備えることができる。よって、媒体M上に、感温特性が異なる複数のインクの像を形成することができ、より多段階での温度管理が可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、冷却機構10は、抽出された(選択された、あるいは指定された)感温インクの像を冷却して発色状態を変化させる。このような構成により、全ての感温インクの像を冷却する場合に比べて、エネルギ消費を抑制することができる。
【0046】
また、プリンタ1では、上記感温インクとは逆の特性、すなわち、管理温度を超えたときに顕在化する特性の感温インクを、用いることもできる。その一例として、図11に示すように、商品ラベルとしての媒体Mには、閾値温度を超えたときに、感温インクの像Im4,Im5が、管理温度を超えたことを示す「注意」や「警告」のメッセージが現れる。この例でも、媒体Mには、閾値温度が異なる感温インクの像Im4,Im5が形成されているため、異なる温度での商品の管理が可能となる。また、その場合、図11の例に対応するプリンタ1では、発色変更機構として、冷却機構10に替えて、加熱機構を設けることができる。この例でも、媒体M上に形成された非感温インクの像Imb上に、感温インクの像Im4,Im5を形成することができる。また、この例では、感温インクの像Im4,Im5は、所定の温度条件が満たされなかったときに顕在化して、注意あるいは警告等を示す像である。
【0047】
<第2実施形態>
本実施形態にかかるプリンタ1Aは、図12に示すように、冷却機構10の他に、第二の冷却機構としての冷却素子10Aを備えている。この冷却素子10Aは、例えば、ペルティエ素子を有したものとして構成することができ、図6に破線で示すように、冷却素子コントローラ20pによって制御される。かかる構成では、冷却機構10および冷却素子10Aを選択的に(いずれか一方を)使用したり、組み合わせて使用したり、それぞれの冷却性能を調整したりすることで、媒体M(感温インクの像)の冷却温度を、より緻密に設定することが可能となる。また、媒体M上に相異なる複数の感温インクの像が形成される場合には、冷却機構10および冷却素子10Aを、それぞれ別の感温インクに対応させることで、冷却による発色の変更の効率をより高めることができる。なお、プリンタは、同じ形式の複数の冷却機構を備えてもよい。本実施形態でも、媒体M上に形成された非感温インクの像上に、感温インクの像を形成することができる。
【0048】
<第3実施形態>
本実施形態にかかるプリントシステム100では、図13に示すように、プリンタ1Bと、冷却機構および加熱機構のうち少なくとも一方を有しプリンタ1Bで媒体M上に形成された感温インクの像の発色状態を変化させる発色変更機構15と、が一体化されず、それぞれ別の装置として構成されている。ただし、プリンタ1Bの制御部としてのCPU20aから、発色変更機構15の制御部15aに、電気信号が送られ、発色変更機構15は、この電気信号に基づいて発色変更の処理を実行する。この電気信号は、発色変更の実行を指示する信号であったり、発色変更を行うタイミングを指示する信号であったり、発色変更の実行パラメータを示す信号であったりすることができる。本実施形態でも、媒体M上に形成された非感温インクの像上に、感温インクの像を形成することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、プリンタは、相異なる感温インクの像を形成する像形成部を三つ以上備えることもできる。また、プリンタは、発色変更機構として、冷却機構と加熱機構との双方を備えることができる。その場合、例えば、冷却機構および加熱機構のうち一方を感温インクの像に作用させて一旦見えやすい状態(見える状態)にして、その後、他方を感温インクの像に作用させて見えにくい状態(見えない状態)にする(すなわち、元の状態に戻す)ことができる。こうすれば、見えやすい状態(見える状態)で、作業者等が感温インクの像を確認することができる。また、冷却機構の数、加熱機構の数は、種々に変更することができる。また、感温インクの像は、非感温インクの像の一部の上に形成されてもよい。
【0050】
また、プリンタは、冷却機構や加熱機構として、冷却あるいは加熱されたガスの噴出部を有し、その噴出部にコネクタや配管等を介して外部から冷却されたガスあるいは加熱されたガスを送り込むことができる。このような構成では、ガスカートリッジ等を省略できる分、プリンタをより小型化することができる。
【0051】
また、プリンタは、インクを用いる他の形式のプリンタ(例えばインクジェットプリンタ等)として構成することができる。インクジェットプリンタの場合、インクヘッドが像形成部に相当する。
【0052】
また、各構成要素(プリントシステム、プリンタ、媒体、インクリボンカートリッジ、像形成部、発色変更機構、冷却機構、加熱機構、噴出状態可変機構、発色変更装置、像、感温インク等)のスペック(方式や、構造、形状、大きさ、配置、位置、個数、成分、感温特性等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0053】
上記実施形態および変形例によれば、媒体上に感温インクの像および非感温インクの像を形成するにあたって、像をより効率良く視認させられることが可能なプリンタおよび媒体を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B…プリンタ
3a…ヘッド(像形成部、サーマルヘッド)
M…媒体
Im1,Im2,Im4,Im5…(感温インクの)像
Imb,Im3…(非感温インクの)像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開平7−256965

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送機構と、
前記媒体上に温度によって変色しない非感温インクの像を形成する像形成部と、
前記非感温インクの像が形成された媒体上に温度によって変色する感温インクの像を形成する第二の像形成部と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第二の像形成部は、前記非感温インクの像の少なくとも一部の上を覆った状態に前記感温インクの像を形成することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記感温インクの像が可視光の透過性を有したことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第二の像形成部は、前記感温インクの像として、所定の温度条件が満たされなかったときに顕在化する像を形成することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項5】
前記感温インクの像を加熱または冷却して前記感温インクの像の発色状態を変更する発色変更機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項6】
温度によって変色する非感温インクの像と、前記非感温インクの少なくとも一部を覆った温度によって変色しない感温インクの像と、が形成された媒体。
【請求項7】
温度によって変色しない非感温インクが塗布されたインクリボンを保持する第一のインクリボン保持部と、
前記第一のインクリボン保持部に保持されたインクリボンを搬送する第一のリボン搬送部と、
前記インクリボンのインクを加熱することで媒体に非感温インクの像を形成する第一のサーマルヘッドと、
温度によって変色する感温インクが塗布されたインクリボンを保持する第二のインクリボン保持部と、
前記第二のインクリボン保持部に保持されたインクリボンを搬送する第二のリボン搬送部と、
前記インクリボンのインクを加熱することで前記非感温インクの像が形成された前記媒体に感温インクの像を形成する第二のサーマルヘッドと、
を備えたことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−96398(P2012−96398A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244493(P2010−244493)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】