説明

プリンタおよび緩衝機構

【課題】プリンタの大型化を抑制しつつ、高い印字品質を確保する。
【解決手段】プリンタは、筐体と、用紙保持部と、搬送部と、緩衝機構8と、を備える。緩衝機構は、回転軸部、筒部8b、および弾性部8cを有する。回転軸部は、回転可能に筐体に対して位置決めされている。筒部には、回転軸部が挿入され、筒部は、用紙保持部の用紙搬送方向下流側且つ搬送部の用紙搬送方向上流側に位置する用紙2に外周面8qが当接する。弾性部は、回転軸部と筒部との間に弾性変形可能に介在して回転軸部と筒部とを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタおよび緩衝機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙保持部で保持したロール状の用紙を、搬送部によって引き出し搬送し、引き出した用紙に印字ヘッドによって印字を行うプリンタが知られている。このようなプリンタでは、搬送部による引き出し搬送の開始時に用紙に衝撃力が加わり、この衝撃力によって、印字ヘッドと用紙との位置関係にずれが生じて印字品質が低下することがある。
【0003】
このような印字品質の低下を抑制するため、用紙に当接するローラをプリンタの筐体に揺動可能に設け、このローラを用紙に対してばねで押し当てる緩衝機構を備えたプリンタがある。このプリンタでは、用紙に加わる衝撃力をばねで吸収することで、印字品質を維持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の緩衝機構では、ローラが揺動可能であることから、その設置領域が比較的に大きい。このため、当該緩衝機構を搭載するプリンタが大型化してしまう。つまり、上記従来の緩衝機構では、高い印字品質を確保するためにプリンタが大型化してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のプリンタは、筐体と、用紙保持部と、搬送部と、印字部と、緩衝機構と、を備える。前記用紙保持部は、前記筐体に設けられ、ロール状に巻回された用紙を回転可能に保持する。前記搬送部は、前記筐体に設けられ、前記用紙保持部に保持された前記用紙を引き出して搬送する。前記印字部は、前記筐体に設けられ、前記搬送部によって引き出された前記用紙に印字する。前記緩衝機構は、回転軸部、筒部、および弾性部を有する。前記回転軸部は、回転可能に前記筐体に対して位置決めされている。前記筒部には、前記回転軸部が挿入され、前記筒部は、前記用紙保持部の用紙搬送方向下流側且つ前記搬送部の用紙搬送方向上流側に位置する前記用紙に外周面が当接する。前記弾性部は、前記回転軸部と前記筒部との間に弾性変形可能に介在して前記回転軸部と前記筒部とを連結している。
【0006】
本実施形態の緩衝機構は、回転軸部と、筒部と、弾性部と、を備える。前記回転軸部は、プリンタの筐体に対して位置決めされて、回転可能である。前記プリンタは、ロール状に巻回された用紙を用紙保持部で回転可能に保持し、前記用紙保持部に保持された前記用紙を搬送部で引き出して搬送する。前記筒部には、前記回転軸部が挿入され、前記筒部は、前記プリンタの用紙保持部の用紙搬送方向下流側且つ前記プリンタの搬送部の用紙搬送方向上流側に位置する前記用紙に外周面が当接する。前記弾性部は、前記回転軸部と前記筒部との間に弾性変形可能に介在して前記回転軸部と前記筒部とを連結している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかるプリンタの内部の概略構成を示す側面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかる緩衝機構を示す斜視図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態にかかる緩衝機構の動作を(a)〜(c)に順を追って示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の第1の変形例にかかる緩衝機構を示す斜視図である。
【図6】図6は、第1の実施形態の第2の変形例にかかる緩衝機構を示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。
【図8】図8は、第3の実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。
【図9】図9は、第4の実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。
【図10】図10は、第5の実施形態にかかる緩衝機構を示す斜視図である。
【図11】図11は、第6の実施形態にかかるプリンタの内部の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
まずは、第1の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかるプリンタの内部の概略構成を示す側面図である。図1に示す本実施形態にかかるプリンタ1は、レシート用紙やラベル用紙などの帯状の用紙2に印字を行うサーマルプリンタである。プリンタ1は、筐体3内に、筐体3の底壁3bと垂直でありかつ筐体3の側壁(図示せず)と平行な縦壁3cを有している。そして、この縦壁3cに、用紙保持軸4や、ガイドローラ5、プラテンローラ6、印字ヘッド7、緩衝機構8、カッタ装置(図示せず)等が、当該縦壁3cとほぼ垂直な姿勢で取り付けられる。このプリンタ1には、用紙保持軸4から、緩衝機構8、ガイドローラ5、プラテンローラ6と印字ヘッド7の間、およびカッタ装置を経由して、筐体3の前壁3dに設けられた排出口3eに至る、用紙搬送経路9が設けられている。
【0011】
用紙保持軸4は、ロール状に巻回された用紙2、具体的には用紙2のロール部2bを、図1の紙面に垂直な軸回りに回転可能に保持する。すなわち、本実施形態では、用紙保持軸4が、筐体3に設けられ用紙2を回転可能に保持する用紙保持部に相当する。ここでは、用紙保持軸4を縦壁3cに回転可能に保持してもよいし、用紙保持軸4を縦壁3cに固定して用紙2のロール部2bを用紙保持軸4の回りに回転可能に保持してもよい。いずれにせよ、本実施形態では、用紙保持軸4やロール部2bは、モータ等によっては駆動されず、用紙2は、用紙搬送方向下流側のプラテンローラ6の回転によってロール部2bが回転(従動)し、ロール部2bから引き出されて展開された状態の用紙2(以後、展開部2aともいう)が引き出される。
【0012】
プラテンローラ6は、歯車等で構成される動力伝達機構(図示せず)を介して駆動源である搬送モータ(図示せず)に連結されている。プラテンローラ6は、印字ヘッド7によって用紙2が押し付けられた状態で、搬送モータより回転駆動されることにより、用紙保持軸4に保持された用紙2を引き出して用紙搬送経路9に沿って搬送する。即ち、本実施形態では、プラテンローラ6が、筐体3に設けられ用紙保持軸4に保持された用紙2を引き出して搬送する搬送部に相当する。
【0013】
印字ヘッド7は、サーマルヘッドである。印字ヘッド7は、プラテンローラ6に対向配置されている。印字ヘッド7は、プラテンローラ6に対して接離可能に筐体3に対して連結されている。印字ヘッド7は、プラテンローラ6に向けてバネ等の付勢部材(図示せず)によって付勢されており、当該印字ヘッド7とプラテンローラ6との間に介在する用紙2をプラテンローラ6に押し付ける。これにより、プラテンローラ6の搬送力が用紙2に確実に伝達される。印字ヘッド7は、一列に配置された複数の発熱素子(図示せず)を有しており、これらの複数の発熱素子に選択的に通電することで発熱素子を発熱させ、この発熱によって、発熱素子と接触している用紙2に各種の情報を印字する。即ち、本実施形態では、印字ヘッド7が、筐体3に設けられプラテンローラ6によって引き出された用紙2に印字する印字部に相当する。また、印字ヘッド7は、プラテンローラ6とによって、用紙2を引き出して、引き出した用紙2に印字する印字搬送部10を構成している。
【0014】
緩衝機構8は、用紙保持軸4の用紙搬送方向下流側且つプラテンローラ6の用紙搬送方向上流側に配置されている。この緩衝機構8は、用紙2の展開部2aを弾性支持して、プラテンローラ6の回転開始時にプラテンローラ6から用紙2を介して伝達される衝撃力を吸収するものである。
【0015】
図2は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す斜視図である。図2に示すように、緩衝機構8は、回転軸部8e、回転軸部8eが挿入された筒部8b、回転軸部8eと筒部8bとを連結した弾性部8c、および筒部8bを支持した支軸8dを有する。
【0016】
回転軸部8eは、円筒状に形成されている。即ち、回転軸部8eの外周面8および内周面は、円弧状の曲面となっている。回転軸部8eの筒内には、回転可能に筐体3に位置決めされた支軸8dが挿入され、回転軸部8eは支軸8dに固定されている。かかる構成によって、回転軸部8eは、回転可能に筐体3に対して位置決めされている。回転軸部8eは、支軸8dとともに、連結軸体8aを構成している。回転軸部8eは、例えば金属材料や樹脂材料で形成されている。なお、回転軸部8eは、支軸8dに対して回転可能に設けられていてもよい。回転軸部8eが支軸8dに回転可能に構成されている場合、支軸8dは筐体3に対して固定されていてもよい。この場合は、固定された支軸8dに回転軸部8eを挿入することにより回転可能に位置決めされる。また、回転軸部8eは、支軸8dに一体形成されていてもよい。
【0017】
筒部8bは、円筒状に形成されている。即ち、筒部8bの外周面8qおよび内周面8rは、円弧状の曲面となっている。筒部8bは、その筒内に挿入された回転軸部8eとによって2重筒構造を成している。筒部8bは、用紙保持軸4の用紙搬送方向下流側且つプラテンローラ6の用紙搬送方向上流側に位置する用紙2の展開部2aにその外周面8qが当接する(図4参照)。筒部8bは、例えば金属材料や樹脂材料で形成されている。筒部8bは、例えばモールド成形品である。
【0018】
弾性部8cは、ばねとしてのコイルばね8fを複数含んでおり、回転軸部8eと筒部8bとの間に弾性変形可能に介在して回転軸部8eと筒部8bとを連結している。弾性部8cは、回転軸部8eと筒部8bとによって、緩衝ローラ8gを構成している。
【0019】
図3は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。図3に示すように、弾性部8cは、回転軸部8eの軸心8s回りに略等角度間隔で配置された複数のコイルばね8fを含んでいる。なお、図3では、回転軸部8eの軸心8sは紙面に対して垂直に延在している。また、弾性部8cは、回転軸部8eの軸心8sに沿っても相互に間隔をあけて配置された複数のコイルばね8f(図面では、手前側のコイルばね8fのみを示している)を含んでいる。即ち、軸心8sと直交するある平面上において回転軸部8eの軸心8s回りに略等角度間隔で配置された複数のばね8e(図3の例では、6個)からなるばね組8tが、回転軸部8eの軸心8sに沿って相互に間隔をあけて複数配置されている。このばね組8tは、回転軸部8eの軸心8s方向の両端部に設けられていることが好適である。
【0020】
一つのばね組8tは、回転軸部8eの軸心8s回りを略等角度で3分割以上した角度間隔で配置された複数のコイルばね8fを含んでいる。図3の例では、一つのばね組8tは、回転軸部8eの軸心8s回りを略等角度で6分割した角度間隔で配置された、複数のコイルばね8fを含んでいる。また、本実施形態では、ある一つのコイルばね8fは、他のあるコイルばね8fと回転軸部8eを介して対向配置されている。
【0021】
各コイルばね8fは、その一端部が回転軸部8eの外周面8pに固定され、その他端部が筒部8bの内周面8rに固定されている。これらのコイルばね8fは、圧縮状態、引っ張り状態または非圧縮非引っ張り状態で回転軸部8eと筒部8bとの間に設けられている。
【0022】
以上の構成のプリンタ1では、図示しない制御部が、パーソナルコンピュータ等のホスト装置(図示せず)から印字指令を受信すると、プラテンローラ6用の搬送モータや印字ヘッド7、カッタ装置などの各部を駆動制御する。これにより、まず、搬送モータによって回転駆動されたプラテンローラ6が、用紙保持軸4に保持された用紙2を引き出して用紙搬送経路9に沿って搬送する。この搬送過程で、印字ヘッド7が、引き出された用紙2に各種の情報を印字する。そして、カッタ装置が、印字後の用紙2を切断する。切断された用紙は、例えばレシートとして排出口3eから発行される。
【0023】
次に、このようなプリンタ1の動作の際の緩衝機構8の動作を図4を参照して説明する。図4は、本実施形態にかかる緩衝機構の動作を(a)〜(c)に順を追って示す図である。
【0024】
プラテンローラ6が、停止状態から(図4の(a))、回転を開始すると(図4の(b))、プラテンローラ6の引っ張りにより用紙2に衝撃力が作用し、当該衝撃力が用紙2から緩衝機構8に伝達される。この際、緩衝機構8の筒部8bには、その衝撃力が押圧力として作用し、その押圧力が作用したコイルばね8f(図4では、コイルばね8u等)が圧縮変形して、プラテンローラ6から受けた衝撃力を吸収する。この際、圧縮したコイルばね8fと対向配置されたコイルばね8f(図4では、例えばコイルばね8uに対向配置されたコイルばね8v)が伸張変形し、この伸張変形によっても上記衝撃力を吸収する。このようにして、本実施形態では、プラテンローラ6の回転開始時に発生する衝撃力を緩衝機構8が複数のコイルばね8fの弾性変形によって吸収する。そして、緩衝機構8のローラ体8gは用紙2に連れ回りするので、圧縮したコイルばね8f(例えば、コイルばね8u)は、回転軸部8e回りに回転して(図4の(c))、徐々に元の形状に復元する。また、緩衝機構8のローラ体8gは用紙2に連れ回りするので、上記の変形による衝撃吸収は、複数のコイルばね8fによって行われ、複数のコイルばね8fが衝撃力を分散吸収する。この衝撃吸収の際、回転軸部8eは、支軸8dによって回転可能に筐体3に位置決めされているので、筐体3に対して略一定の位置に位置した状態で回転する。なお、図4中の矢印Aは、上記の押圧力のうちの少なくとも一部の力の方向を概略的に示している。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態のプリンタ1によれば、プラテンローラ6の回転開始時に発生する衝撃力を緩衝機構8が吸収するので、印字ヘッド7と用紙2との位置関係のずれを抑制して、高い印字品質を得ることができる。そして、この衝撃吸収の際、支軸8dによって回転可能に筐体3に位置決めされている回転軸部8eは、筐体3に対して略一定の位置に位置した状態で回転するので、ローラが揺動して衝撃を吸収する構造に比べて、緩衝機構8の変位量が比較的に小さい。つまり、緩衝機構8は、ローラが揺動して衝撃を吸収する構造に比べて、比較的に小さい空間に設置することができる。よって、本実施形態によれば、プリンタ1の大型化を抑制しつつ、高い印字品質を確保することができる。
【0026】
また、本実施形態の緩衝機構8によれば、回転軸部8eと筒部8bとが弾性部8cによって連結されていることにより、筒部8bが、回転軸部8eの軸心8s方向と直交するあらゆる方向に変位可能であるので、様々な方向での衝撃吸収を行うことができる。したがって、本実施形態の緩衝機構8は、回転軸部8eの軸心8s方向と直交するあらゆる方向に加わる衝撃力を吸収することができるので、用紙2の搬送開始から終了までの間、加わる衝撃力の方向に変化があっても、その衝撃力を良好に吸収することができる。よって、高い印字品質を確保することができる。また、このように、緩衝機構8によれば、筒部8bが、回転軸部8eの軸心8s方向と直交するあらゆる方向に変位可能であるので、衝撃吸収方向が前後方向、上下方向または円弧方向だけの構造に比べて、汎用性が高いという利点がある。
【0027】
また、本実施形態では、緩衝機構8のばねとして、コイルばね8fが採用されている。コイルばね8fとして、比較的に安価で量産されているものを使用することで、緩衝機構8を安価に構成することができる。
【0028】
次に、本実施形態の変形例を図5および図6を参照して説明する。図5は、第1の変形例にかかる緩衝機構を示す斜視図、図6は、第2の変形例にかかる緩衝機構を示す斜視図である。第1の変形例にかかる緩衝機構8Aおよび第2の変形例にかかる緩衝機構8Bは、緩衝機構8に対して、軸方向の幅を長くする場合についての例である。
【0029】
図5に示す第1の変形例にかかる緩衝機構8Aは、緩衝機構8の軸方向の幅を単純に長くした構成である。一方、図6に示す第2の変形例にかかる緩衝機構8Bは、支軸8dを緩衝機構8に対して長くするとともに、この支軸8dに複数(図6では3個)の緩衝ローラ8gを間隔をあけて配置した構成である。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0031】
図7は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。本実施形態は、緩衝機構8Cが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の緩衝機構8Cでは、相互に対向する回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとの少なくとも一方、具体的には、回転軸部8eの外周面8pに、コイルばね8fの端部を支持した平面状の複数の取付面8hが形成されている。これらの複数の取付面8hは、回転軸部8eの外周面8pを多角形状にすることで形成されている。なお、相互に対向する回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとのうち、筒部8bの内周面8rに取付面が設けられていても良い。
【0032】
以上の構成の本実施形態の緩衝機構8Cによれば、回転軸部8eの外周面8pの取付面8hが、平面状であるので、取付面8hにコイルばね8fの端部を比較的に容易に固定することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0034】
図8は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。本実施形態は、緩衝機構8Dが第2の実施形態に対して異なる。本実施形態の緩衝機構8Dでは、相互に対向する回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとの少なくとも一方、具体的には、回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとの両方に、コイルばね8fの端部を支持した平面状の複数の取付面8h,8iが形成されている。回転軸部8eの複数の取付面8hは、回転軸部8eの外周面8pを多角形状にすることで形成され、筒部8bの取付面8iは、筒部8bの内周面8rを多角形にすることで形成されている。回転軸部8eの各取付面8hは、対応する筒部8bの取付面8iと平行となっている。
【0035】
以上の構成の本実施形態の緩衝機構8Dによれば、回転軸部8eの外周面8pの取付面8hと筒部8bの内周面8rの取付面8iとが、平面状であるので、取付面8h,8iにコイルばね8fの端部を比較的に容易に固定することができる。
【0036】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0037】
図9は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す側面図である。本実施形態は、緩衝機構8Eが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の緩衝機構8Eでは、相互に対向する回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとの少なくとも一方、具体的には、回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとの両方に、コイルばね8fの端部が挿入された凹部8j,8kが形成されている。コイルばね8fは、その一端部が、凹部8jに挿入されて凹部8jに固定され、その他端部が凹部8kに挿入されて固定されている。各凹部8jは、対応する凹部8kと対向している。なお、相互に対向する回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとのどちらか一方だけに凹部8jまたは8kが設けられていても良い。
【0038】
以上の構成の本実施形態の緩衝機構8Eによれば、回転軸部8eの外周面8pと筒部8bの内周面8rとに、コイルばね8fの端部が挿入された凹部8j,8kが形成されているので、コイルばね8fの取り付けを比較的に容易に行うことができる。
【0039】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
【0040】
図10は、本実施形態にかかる緩衝機構を示す斜視図である。本実施形態は、緩衝機構8Fが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の緩衝機構8Fでは、筒部8bの外周面8qに複数の第2の凹部8mが周方向に間隔をあけて形成されている。これにより、筒部8bの外周面8qには凹部8m間に凸部8nが形成されている。第2の凹部8mおよび凸部8nは、それぞれ筒部8bの軸心方向に沿って延在している。
【0041】
以上の構成の緩衝機構8Fによれば、筒部8bの外周面8qに第2の凹部8mが形成されているので、第2の凹部8mが形成されていない場合に比べて、筒部8bが軽量化され、その分、緩衝機構8の動作が速くなるので、コイルばね8fがプラテンローラ6からの衝撃力に良好に反応してその衝撃力をより良好に吸収することができる。
【0042】
また、上記構成の緩衝機構8Fによれば、筒部8bの外周面8qに第2の凹部8mと凸部8nとが形成されているので、搬送される用紙2と筒部8bとの間の無駄な摩擦を軽減して、搬送力のロスが発生するのを抑制することができる。
【0043】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
【0044】
図11は、本実施形態にかかるプリンタの内部の概略構成を示す側面図である。本実施形態は、プリンタ1Aがラベルプリンタであり、プリンタ1Aに、相対向する一対のガイドローラ5が設けられている点が第1の実際形態に対して異なる。また、本実施形態では、用紙2は、ラベル用紙(以下、ラベル用紙に符号2を用いる)である。
【0045】
一対のガイドローラ5は、緩衝機構8の用紙搬送方向下流側且つプラテンローラ6の用紙搬送方向上流側に配置されている。一対のガイドローラ5は、それらの間で用紙2を挟持して、搬送される用紙2に連れ回りする。
【0046】
ここで、ラベル用紙2は、長尺状の台紙に、複数のラベルが台紙の長手方向に一列状に貼付されたものである。ロール状のラベル用紙2としては、外巻きのものと、内巻きのものとがある。外巻きのラベル用紙2は、台紙に貼付されたラベルがラベル用紙2の外側に位置して巻かれたものである。一方、内巻きのラベル用紙2は、台紙に貼付されたラベルがラベル用紙2の内側に位置して巻かれたものである。図11では、外巻きのラベル用紙2が実線で示され、内巻きのラベル用紙2が一点鎖線で示されている。このような外巻きのラベル用紙2と内巻きのラベル用紙2とでは、用紙保持軸4への装着姿勢が異なる。このため、外巻きのラベル用紙2と内巻きのラベル用紙2とでは、緩衝機構8の筒部8bへの掛け回し方向が異なるものとなり、用紙搬送経路も異なるものとなる。
【0047】
このような構成であっても、緩衝機構8は、回転軸部8eの軸心8s方向と直交するあらゆる方向に筒部8bが変位可能であるので、ラベル用紙2が内巻きであっても、外巻きであっても、弾性部8cのコイルばね8fが用紙2から伝達される衝撃力を吸収することができる。
【0048】
また、外巻きのラベル用紙2と内巻きのラベル用紙2とでは、それらの用紙搬送経路が異なるので、プラテンローラ6から緩衝機構8に伝わる衝撃力も異なる場合がある。この場合、コイルばね8fのばね定数を適宜変更することによって、衝撃力の吸収度合いを調整することができる。したがって、この場合でも、各部の大幅な形状寸法の変更をすることなく、省スペースで良好に衝撃力を吸収することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記各実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、緩衝機構の弾性部が含むばねとして、コイルばねを例に説明したが、これに限るものではない。ばねとしては、例えば、空気ばねや板ばね等であってもよい。更に、弾性部として、ゴムや発泡ウレタンなどの弾性体を筒状に形成したものを採用して、回転軸部と筒部との間に介在させてもよい。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0050】
以上説明したとおり、上記各実施形態によれば、プリンタの大型化を抑制しつつ、高い印字品質を確保することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A…プリンタ
2…用紙
3…筐体
4…用紙保持軸(用紙保持部)
6…プラテンローラ(搬送部)
7…印字ヘッド(印字部)
8…緩衝機構
8b…筒部
8c…弾性部
8e…回転軸部
8f…コイルばね(ばね)
8h,8i…取付面
8j,8k…凹部
8m…第2の凹部
8p…回転軸部の外周面
8q…筒部の外周面
8r…筒部の内周面
8s…回転軸部の軸心
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2007−126230公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられ、ロール状に巻回された用紙を回転可能に保持する用紙保持部と、
前記筐体に設けられ、前記用紙保持部に保持された前記用紙を引き出して搬送する搬送部と、
前記筐体に設けられ、前記搬送部によって引き出された前記用紙に印字する印字部と、
回転可能に前記筐体に対して位置決めされた回転軸部、前記回転軸部が挿入され、前記用紙保持部の用紙搬送方向下流側且つ前記搬送部の用紙搬送方向上流側に位置する前記用紙に外周面が当接する筒部、および前記回転軸部と前記筒部との間に弾性変形可能に介在して前記回転軸部と前記筒部とを連結した弾性部を有する緩衝機構と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記弾性部は、前記回転軸部の軸心回りに略等角度間隔で配置された複数のばねを含む請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
相互に対向する前記回転軸部の外周面と前記筒部の内周面との少なくとも一方に、前記ばねの端部を支持した平面状の取付面が形成されている請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
相互に対向する前記回転軸部の外周面と前記筒部の内周面との少なくとも一方に、前記ばねの端部が挿入された凹部が形成されている請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記筒部の外周面に第2の凹部が形成されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプリンタ。
【請求項6】
ロール状に巻回された用紙を用紙保持部で回転可能に保持し、前記用紙保持部に保持された前記用紙を搬送部で引き出して搬送するプリンタの筐体に対して位置決めされて、回転可能な回転軸部と、
前記回転軸部が挿入され、前記プリンタの用紙保持部の用紙搬送方向下流側且つ前記プリンタの搬送部の用紙搬送方向上流側に位置する前記用紙に外周面が当接する筒部と、
前記回転軸部と前記筒部との間に弾性変形可能に介在して前記回転軸部と前記筒部とを連結した弾性部と、
を備える緩衝機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171337(P2012−171337A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38729(P2011−38729)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】