説明

プリンターおよびその印刷ヘッド移動機構

【課題】印刷ヘッドを記録媒体上から退避させたときの退避スペースの幅を狭くすると共に、印刷位置と退避位置との間を移動するときの印刷ヘッドの移動領域を小さくすること。
【解決手段】インクジェットプリンター1のヘッド移動機構14は、インクジェットヘッド11を搭載するキャリッジ10におけるホームポジションB側の角部10aを円弧状経路T1bを含む移動経路T1に沿って移動させるモノレール機構18と、ホームポジションBとは逆の側に位置する角部10bを搬送方向Xに直交する直線状の移動経路T2に沿って移動させるスライド案内機構19を備える。角部10aの移動経路T1は、ホームポジションB側に向かうに従って角部10bの移動経路T2から遠ざかる経路部分を含む。このため、キャリッジ10が角部10bを中心として回転し、ホームポジションBでは90度回転した姿勢になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドを記録媒体の上から退避させ、記録媒体から外れた位置まで移動させて待機させるプリンターおよびその印刷ヘッド移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
インクノズルから記録媒体にインクを吐出して印刷するインクジェットプリンターでは、インクノズルの目詰まりなどが発生すると印刷品質が低下するため、印刷ヘッドが待機中の間、印刷ヘッドをプラテン上から外れた位置(退避位置)に移動させてメンテナンス機構と対峙させ、インクノズル面をヘッドキャップで覆ってインクの蒸発を抑制したり、ヘッドキャップ内にインクを強制的に吐出させて目詰まりを解消するなどの動作を行う。
【0003】
インクジェットプリンターとしては、印刷ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動可能に構成しておき、印刷ヘッドを記録媒体の幅方向に走査しながら印刷を行い、印刷が終了すると、印刷ヘッドをプラテンの隣に設定した退避位置まで移動させて待機させるシリアル方式のものが用いられている。この種のプリンターでは、退避位置の下側にメンテナンスユニットを配置しておくことにより、待機中の印刷ヘッドのインクノズル面にメンテナンスユニットを対峙させ、インクノズル面をキャッピングしてメンテナンスを行うことができる。
【0004】
ここで、記録媒体の印刷領域全体をカバーできる幅にインクノズルを配列し、印刷ヘッドを記録媒体の幅方向に動かすことなく印刷を行うライン方式の印刷ヘッドを用いるインクジェットプリンターでは、印刷ヘッド自体の幅寸法が大きいため、上記のように記録媒体の幅方向に印刷ヘッドを移動させてプラテン上から退避させようとすると、プラテンの隣に幅広の印刷ヘッドと同じ幅のスペースを空けておく必要がある。従って、プリンターの装置幅が大きくなってしまうという問題点がある。
【0005】
特許文献1には、ライン方式の印刷ヘッドを有するプリンター(インクジェット印刷装置)が開示されている。特許文献1のプリンターでは、記録媒体の搬送領域に対して幅方向に外れた位置に回転軸を設けており、印刷ヘッドの一端がこの回転軸に回転可能に支持されている。印刷ヘッドのメンテナンスを行うときには、回転軸を中心として印刷ヘッドを回転させることにより、印刷ヘッドを90度回転させた姿勢にして記録媒体の上から退避させる。ライン方式の印刷ヘッドは、記録媒体の搬送方向に沿った寸法が幅寸法よりも小さいため、このような印刷ヘッドの退避方法により、印刷ヘッドの退避スペースの幅を狭くすることができる。従って、このような印刷ヘッドの移動方法を用いることにより、プリンターの装置幅を小さくすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−301710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、印刷ヘッドをその一端に設けられた支軸を中心として回転させる構成では、プラテン上から退避したときの印刷ヘッドが占めるスペースの幅は小さくできるものの、支軸を中心とする扇形の移動領域を印刷ヘッドが通過することになるため、印刷ヘッドとの干渉を避けるために、この扇形の移動領域を避けて他の部品を設置しなければならない。例えば、従来のように印刷ヘッドが幅方向にのみ移動する構成では、記録媒体に対峙する位置(印刷位置)に位置決めした印刷ヘッドに対して搬送ローラーなどの部品を記録媒体の搬送方向に沿って見た場合にその上流側に接近させて配置することができたが、印刷ヘッドを特許文献1のように回転させて移動させる場合には、扇形の移動領域と重ならないように搬送ローラーなどの部品を配置しなければならない。このため、搬送機構全体の設置サイズが大きくなってしまう。上流側の搬送ローラーとの干渉を避けるためには印刷ヘッドの回転方向を逆向きにして印刷位置の下流側に扇形の移動領域を設定することも考えられるが、下流側にはカッターなどの部品が配置されており、カッターの設置場所を変更しなければならないという不都合が生じる。
【0008】
このように、特許文献1のように支軸を中心として印刷ヘッドを回転させると、従来は印刷ヘッドに接近させて配置することができた部品を印刷ヘッドから離して配置しなければならない。従って、印刷ヘッドの移動領域から退避させる部品の設置スペースを別途確保する必要があり、これによって装置が大型化してしまうという問題点がある。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、印刷ヘッドを記録媒体の上から外れた位置(退避位置)に退避させるにあたり、その退避スペースの幅を小さくできる構成でありながら、印刷位置と退避位置との間を移動するときの印刷ヘッドの移動領域を従来よりも小さくできる印刷ヘッド移動機構およびこれを備えるプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、印刷ヘッドを搭載したキャリッジを、記録媒体に対峙する印刷位置と、前記記録媒体の印刷領域の外側に退避した退避位置との間で往復移動させるための印刷ヘッド移動機構であって、
前記印刷位置は、前記記録媒体を搬送する搬送ローラーの下流側の位置であり、
前記退避位置は、前記キャリッジの少なくとも一部が、前記搬送ローラーに対して、前記記録媒体の搬送方向の上流側となる位置であり、
前記搬送ローラーと干渉させることなく、前記印刷位置と前記退避位置との間で前記キャリッジを移動させることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【0011】
本発明は、このように、キャリッジの退避位置をその少なくとも一部が搬送ローラーの上流側にはみ出すような位置に設定した場合においても、キャリッジを搬送ローラーと干渉させることなく印刷位置と退避位置との間で移動させることができる。従って、このような退避位置を設定した場合(例えば、横長のキャリッジを回転させて退避位置では縦長の姿勢にする場合等)においても搬送ローラーを上流側に退避させる必要がなく、狭いスペースに印刷機構および搬送機構を集約して配置できる。よって、装置の小型化に有利である。
【0012】
本発明において、前記キャリッジを前記印刷ヘッドのインクノズル面に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に支持するための回転軸を有し、前記印刷位置と前記退避位置の間で前記キャリッジが移動するとき、前記回転軸が移動することによって前記キャリッジの姿勢が変化する構成にすることができる。このようにすると、単純な構成でありながら、印刷位置と退避位置の間を移動する間にキャリッジの姿勢を変化させることができる。
【0013】
本発明において、前記印刷位置と前記退避位置の間の少なくとも一部の移動区間において、前記退避位置に向かうときには、前記キャリッジの移動方向後端部分を直線状移動経路に沿って移動させながら、先頭になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路から遠ざけるように前記キャリッジの姿勢を変化させ、前記印刷位置に向かうときには、先頭になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路に沿って移動させながら、後端になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路に近づけるように前記キャリッジの姿勢を変化させるように構成することができる。
【0014】
このようにすると、キャリッジを印刷位置から退避位置の側に移動させつつ姿勢変化させることができ、印刷位置では記録媒体を幅方向にカバーするように横長に配置されていた印刷ヘッドを、退避位置に向かうに従って回転させ、退避位置では縦長の姿勢にすることができる。また、印刷位置に戻るときはこの逆の動きをするようにキャリッジを移動させることができる。従って、キャリッジの退避スペースの幅を狭くすることができる。また、退避位置に向かう際に後端となる部分を中心としてキャリッジが回転するように姿勢変化させることができるため、キャリッジの移動領域を、キャリッジを扇形に回転させる場合に比べて小さくすることができる。従って、狭いスペースに印刷機構および搬送機構を集約して配置でき、装置の小型化に有利である。
【0015】
本発明において、前記キャリッジの幅方向の一端を前記直線状移動経路に沿って案内する第1案内部と、前記印刷位置から前記退避位置に向けて移動するときに前記幅方向の一端に対して移動方向前方側に位置する前記キャリッジの部分に設けられた被案内部を、前記退避位置に向かうに従って前記直線状移動経路から遠ざかる経路部分を含む移動経路に沿って案内する第2案内部とを有する構成にすることができる。このようにすると、キャリッジの一端を第1案内部によって退避位置に向けて直線状に案内し、これによってキャリッジを全体として退避位置の側に移動させながら、先頭になっている被案内部を直線状移動経路から遠ざける方向に移動させ、退避位置に移動するにつれてキャリッジの傾きが増大するように回転させて姿勢を変化させることができる。従って、退避位置ではキャリッジを縦長の姿勢にして退避スペースの幅を狭くすることができると共に、退避位置に向かうときのキャリッジの移動領域を、キャリッジを扇形に回転させる場合に比べて小さくすることができる。
【0016】
本発明において、前記幅方向の一端を前記直線状移動経路に沿って往復移動させる駆動手段を有することが望ましい。このようにすると、駆動手段による駆動方向は直線方向の往復移動のみとなり、複雑な経路に沿って動くように駆動手段を構成する必要がない。よって、駆動手段の構成を単純化することができる。
【0017】
また、本発明において、前記第2案内部による移動経路における前記直線状移動経路から遠ざかる方向に延びる経路部分は、円弧状移動経路であることが望ましい。このようにすると、キャリッジをスムーズに回転させながら移動させることができる。
【0018】
ここで、前記第2案内部は、前記被案内部の移動経路における前記印刷位置側の端部に設けられ、前記直線状移動経路と平行な第1直線経路に沿って前記被案内部を案内する第1直線案内部と、当該第1直線案内部における前記退避位置側の端部に接続され、前記円弧状移動経路に沿って前記被案内部を案内する円弧状案内部とを備えることが望ましい。このようにすると、被案内部が前記第1直線案内部によって案内されている間は、キャリッジを印刷位置のときの姿勢のままで幅方向に動かすことができる。従って、第1直線案内部の範囲内においてキャリッジの位置を微調整することができ、印刷ヘッドを記録媒体に対して幅方向に位置合わせすることができる。
【0019】
本発明において、前記第1案内部によって案内される前記キャリッジの部分を、前記印刷ヘッドのインクノズル面に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に支持するための回転軸を有し、前記第1案内部は、前記回転軸を支持しているスライダーと、当該スライダーを前記直線状移動経路と平行な方向に案内する案内部材とを備える構成にすることができる。このようにすると、単純な構成でありながら、キャリッジを回転可能な状態で直線に沿って往復移動させることができる。
【0020】
ここで、前記回転軸は上下方向に延びており、前記第1案内部は、前記回転軸の上端部分および下端部分に設けられたガイドローラーと、前記案内軸の上方および下方の各位置に配置され、各ガイドローラーを前記直線状移動経路に沿った方向に案内する上部ガイドおよび下部ガイドとを備える構成にすることができる。このようにすると、回転軸の上下端をガイドすることができるため、回転軸の傾きを防止できる。従って、キャリッジの傾きを抑制でき、印刷ヘッドのインクノズル面の傾きおよびプラテンギャップの変動を抑制して印刷精度を向上させることができる。
【0021】
この場合に、前記上部ガイドは、上側の前記ガイドローラーに対し、前記キャリッジの重心側に配置され、前記下部ガイドは、下側の前記ガイドローラーに対し、前記キャリッジの重心とは逆の側に配置されていることが望ましい。このようにすると、回転軸がキャリッジの重心側に傾くのを防止できるため、回転軸によってキャリッジが片持ち状態で支持されている場合に、効果的にキャリッジの傾き防止を図ることができる。
【0022】
また、前記第2案内部は、前記キャリッジの上方に配置されたガイドレールと、当該ガイドレールから前記被案内部を吊り下げた状態で前記ガイドレールに沿って走行する吊り下げ部とを備えることが望ましい。このように、上方に配置したガイドレールからキャリッジを吊り下げて案内するモノレール構造とすることにより、第2案内部を省スペースな構成にして装置幅の増大を抑制できる。
【0023】
次に、本発明のプリンターは、
上記の印刷ヘッド移動機構と、
前記印刷位置において前記記録媒体上の印刷領域の幅方向の一端から他端までの範囲にインクを吐出可能に構成され、前記印刷ヘッド移動機構によって前記印刷位置および前記退避位置の間を移動する印刷ヘッドと、
前記印刷位置を経由する搬送経路に沿って前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記退避位置に移動した前記印刷ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス手段とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、キャリッジの退避位置をその少なくとも一部が搬送ローラーの上流側にはみ出すような位置に設定した場合においても、キャリッジを搬送ローラーと干渉させることなく印刷位置と退避位置との間で移動させることができる。従って、このような退避位置を設定した場合においても搬送ローラーを上流側に退避させる必要がなく、狭いスペースに印刷機構および搬送機構を集約して配置できる。よって、装置の小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のプリンターの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】インクジェットヘッドおよびヘッド移動機構の説明図である。
【図3】ヘッド移動機構によるキャリッジの移動過程を示す説明図である。
【図4】ヘッド移動機構によるキャリッジの移動領域の説明図である。
【図5】ヘッド移動機構の側面図である。
【図6】ヘッド移動機構の印刷位置側の端部およびプラテンギャップ検出器の斜視図である。
【図7】ヘッド移動機構の斜め上から見た斜視図である。
【図8】モノレール機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したプリンターおよびその印刷ヘッド移動機構を説明する。
【0027】
(全体構成)
図1は本実施形態のプリンターの全体構成を示す縦断面図である。インクジェットプリンター1(以下、プリンター1という)は、複数種類のカラーインクを用いて長尺状の記録紙P(記録媒体)に印刷を行うものである。プリンター1の後側部分にはロール紙装填部2が設けられており、ここに装填されたロール紙3から引き出された記録紙Pは、ロール紙装填部2の前方に配置されたプラテン4の表面を経由する記録紙搬送経路5に沿って、プリンター前方に向かって搬送される。
【0028】
ロール紙装填部2の上方には記録紙Pのスキューを防止するための用紙ガイド6が配置され、その後方にロール紙3から記録紙Pを引き出すための繰り出しローラー7が配置されている。記録紙Pは、ロール紙3から繰り出しローラー7に向かって斜め後方に引き出された後、繰り出しローラー7に掛け回される。そして、繰り出しローラー7から前方に引き出された記録紙Pは、用紙ガイド6の後方に配置された図示しない負荷ローラーを経由した後、用紙ガイド6およびその前方に配置された搬送ローラー対8を経由して、プラテン4の表面を通過するようにセットされる。搬送ローラー対8は、記録紙Pに下側から当接する駆動ローラー8aと、駆動ローラー8aの側に上方から付勢された従動ローラー8b(搬送ローラー)とを備えている。なお、駆動ローラー8aと従動ローラー8bを上下逆に配置することもできる。搬送ローラー対8の下側には駆動ローラー8aを正逆方向に回転させるための紙送りモーター9が配置されている。繰り出しローラー7、搬送ローラー対8、紙送りモーター9等によって、記録紙Pを記録紙搬送経路5に沿って正逆方向に搬送するための搬送手段が構成されている。
【0029】
プラテン4の上方にはキャリッジ10に搭載されたインクジェットヘッド11(印刷ヘッド)が配置されている。一方、プラテン4の下方にはインクカートリッジ装着部12が設けられている。インクカートリッジ装着部12には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクカートリッジが装着される。インクカートリッジ装着部12にインクカートリッジを装着すると、インク供給管(図示省略)を介して、インク供給用のポンプ機構(図示省略)とインクカートリッジ内のインクタンクとが接続された状態となり、インクジェットヘッド11へのインクの供給が可能となる。
【0030】
図2はインクジェットヘッドおよびヘッド移動機構の説明図であり、図2(a)は平面構成を示す説明図、図2(b)はプリンター前面側から見た概略断面構成を示す説明図である。図2(a)に示すように、インクジェットヘッド11は、第1ヘッド11Aおよび第2ヘッド11Bを備える複合ヘッドであり、第1ヘッド11Aにはブラックおよびシアンのインクを吐出するインクノズル列が形成され、第2ヘッド11Bにはイエローおよびマゼンダのインクを吐出するインクノズル列が形成されている。第1および第2ヘッド11A、11Bは記録紙Pよりも幅広に形成されており、各ヘッドにおけるインクノズル列は、記録紙Pの印刷領域全体をカバーできる幅の領域に配列されている。
【0031】
図2(b)に示すように、第1および第2ヘッド11A、11Bはインクノズル面11aを下向きにしてキャリッジ10に搭載されており、キャリッジ10を水平にしたとき、インクノズル面11aが水平になるように構成されている。キャリッジ10は、各ヘッドのインクノズル面11aとプラテン4の表面を通過する記録紙Pとの間に予め設定した寸法のプラテンギャップGが形成される高さにインクジェットヘッド11を保持している。
【0032】
プラテン4の側方にはメンテナンスユニット13(メンテナンス手段)が配置されている。キャリッジ10は、プラテン4の上方の印刷位置Aから、メンテナンスユニット13の上方のホームポジションB(退避位置/図2(a)(b)において1点鎖線で示す位置)までの範囲でインクジェットヘッド11を往復移動させる。インクジェットヘッド11は、印刷位置Aでは、長手方向を記録紙Pの搬送方向Xと直交する方向に向けた横向きの姿勢になっており、第1および第2ヘッド11A、11Bに設けられた各色のインクノズル列が記録紙Pの印刷領域をカバーしている。一方、ホームポジションBでは、インクジェットヘッド11が印刷位置Aでの姿勢から90度回転した姿勢になっており、長手方向を搬送方向Xと一致させた縦向きの姿勢になっている。
【0033】
プリンター1は、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに位置決めして停止させ、この状態で記録紙Pを所定ピッチずつ搬送する毎にインクの吐出動作を行うことにより、記録紙Pへの印刷を行う。また、プリンター1は、印刷が終了すると、インクジェットヘッド11をプラテン4の上から外れたホームポジションBに退避させ、ホームポジションBで待機させる。待機中には、メンテナンスユニット13により、インクジェットヘッド11のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作を行う。すなわち、メンテナンスユニット13の上端に設けられたヘッドキャップを上昇させてインクノズル面11aをキャッピングし、必要に応じてヘッドキャップ内へのインクの吐出動作やヘッドキャップ側からのインク吸引動作を行う。あるいは、メンテナンスユニット13にワイピング機構を設けておき、インクノズル面11aをワイピングする。印刷を再開するときには、ヘッドキャップやワイピング機構を下側に退避させてから、インクジェットヘッド11を印刷位置Aに移動させる。
【0034】
(ヘッド移動機構)
プリンター1は、インクジェットヘッド11およびこれを搭載するキャリッジ10を、印刷位置AからホームポジションBまでの範囲で往復移動させるためのヘッド移動機構14(印刷ヘッド移動機構)を備えている。図3はヘッド移動機構14によるキャリッジ10の移動過程を示す説明図であり、図4はヘッド移動機構14によるキャリッジ10の移動領域の説明図である。以下に、図3、4を参照して、ヘッド移動機構14によるキャリッジ10の移動経路および移動領域について説明する。ヘッド移動機構14は、キャリッジ10の幅方向の一端側の角部10a(被案内部)と他端側の角部10bの2箇所においてキャリッジ10を支持しており、この2箇所を異なる移動経路に沿って案内するように構成されている。角部10aは、印刷位置AにおいてホームポジションBの側に位置しており、角部10bは、ホームポジションBとは逆の側に位置している。図3に示すように、角部10aの移動経路T1は、搬送方向Xと直交する方向から搬送方向Xと平行な方向に方向転換しており、方向転換部分が円弧状移動経路になっている。一方、角部10bの移動経路T2は、搬送方向Xと直交する方向に延びる直線状移動経路である。
【0035】
図3(a)に示すように、角部10aの移動経路T1は、印刷位置Aの側から順に、搬送方向Xと直交する短い第1直線経路T1aと、円弧状経路T1b(円弧状移動経路)と、搬送方向Xと平行な第2直線経路T1cを繋げた形状をしている。キャリッジ10が印刷位置Aのとき、角部10aは第1直線経路T1a上にあり、角部10bは移動経路T2の始端部分(印刷位置A側の端部)に位置している。円弧状経路T1bは、ホームポジションBの側に向かうに従って移動経路T2から遠ざかる形状に設定されている。本例では、印刷位置AおよびホームポジションBと、搬送ローラー対8との位置関係は以下のようになっている。図3(a)に示すように、印刷位置Aは、搬送ローラー対8に対し、記録紙Pの搬送方向の下流側(図3(a)の矢印X1側)に設定されている。一方、ホームポジションBは、記録紙Pの印刷領域の外側に退避した位置に設定されている。インクジェットヘッド11は、ホームポジションBでは90度回転した縦向きの姿勢になっているため、その一端は印刷位置Aのときと同様に搬送ローラー対8の下流側に位置しているものの、他端は、搬送ローラー対8に対し、搬送方向に沿って見た場合に上流側(図3(a)の矢印X2側)となる位置に配置されている。
【0036】
キャリッジ10が印刷位置AからホームポジションBへ移動するときは、まず、図3(b)に示すように、角部10aが第1直線経路T1aに沿って搬送方向Xと直交する方向に移動する。このとき、角部10bも同様に搬送方向Xと直交する方向に移動するため、キャリッジ10は、印刷位置Aと同じ姿勢のままで幅方向に移動する。次に、図3(c)に示すように、角部10aが円弧状経路T1bに沿って移動する。このとき、角部10bは移動経路T2に沿って直線状に進む一方で、角部10aは移動経路T2から搬送方向の上流側に向かって移動し、移動経路T2から離れてゆく。このため、キャリッジ10は、角部10bを中心として時計回りに回転しながら移動することになる。キャリッジ10は、このような回転による姿勢変化が可能となるように、角部10bにおいて、後述する回転軸33により、インクジェットヘッド11のインクノズル面に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能な状態で支持されている。続いて、角部10aが第2直線経路T1cに沿って移動し、角部10bは移動経路T2の終端部分(ホームポジションB側の端部)に沿って移動するときも、角部10aは移動経路T2から更に離れてゆくため、キャリッジ10は時計回りに更に回転しながら移動する。図3(d)に示すように、キャリッジ10がホームポジションBに到達したとき、印刷位置Aのときの姿勢から90度回転した姿勢になっている。ホームポジションBから印刷位置Aに戻るときは、この逆の過程で移動する。
【0037】
印刷位置AとホームポジションBとの間を移動するときのキャリッジ10およびこれに搭載されたインクジェットヘッド11の移動領域Rは、図4に示すようになっている。移動領域Rは、記録紙Pの左端部分においてわずかに印刷位置Aの後方(図4の上方)にはみ出しているものの、印刷位置Aから搬送方向の上流側に大きくはみ出すことのない領域となっている。この移動領域Rは、搬送ローラー対8と平面的に重なることのない領域となっているため、キャリッジ10は、搬送ローラー対8を構成している2つのローラーのうち、記録紙Pを上側から押さえている従動ローラー8bと干渉することなく、印刷位置AとホームポジションBとの間を移動することができる。ここで、比較のため、キャリッジ10をその一端を中心として回転させたときの移動領域R1(従来の移動方法によるヘッド移動領域)を図4に示している。移動領域R1は、印刷位置Aの後方に大きくはみ出す扇形の領域となっている。このように、従来の移動領域R1は、搬送ローラー対8と平面的に重なる領域となっており、搬送ローラー対8との干渉を避けるためには、搬送ローラー対8を上流側に大きく移動させる必要がある領域となっている。
【0038】
次に、ヘッド移動機構14の各部の構成について説明する。ヘッド移動機構14は、図2(a)に示すように、記録紙搬送経路5による搬送方向(図2(a)のX方向)と直交する方向に延びるキャリッジフレーム15と、キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部に支持されているキャリッジモーター16を備えている。キャリッジフレーム15はプリンター1の装置本体フレームに支持されている。キャリッジフレーム15のホームポジションB側の端部はホームポジションBの左端まで延びており、この部分に、ホームポジションBの左端位置に沿って搬送方向上流側(図2(a)の上方)に延びる吊り下げフレーム17が取り付けられている。キャリッジフレーム15は、上下方向に延びている垂直板部15a(図5参照)と、垂直板部15aの上端から搬送方向上流側に向かって水平に延びている水平板部15bを備えており、水平板部15bの下側に吊り下げフレーム17の基端部が固定されている。
【0039】
図5はヘッド移動機構14の側面図(図2(a)のY1方向から見た側面図)であり、図2(a)のZ−Z線よりも右側の部分は図示を省略している。また、図6はヘッド移動機構14の印刷位置A側の端部およびプラテンギャップ検出器の斜視図(図2(a)のY2方向から見た斜視図)であり、図7はヘッド移動機構14の斜め上から見た斜視図である。そして、図8はキャリッジ10を吊り下げるためのモノレール機構の説明図であり、図8(a)は平面構成を示す説明図、図8(b)は部分斜視図である。ヘッド移動機構14は、ホームポジションB側の角部10aを上から吊って円弧状経路T1bを含む移動経路T1に沿って案内するモノレール機構18(第2案内部)と、ホームポジションBとは逆の側の角部10bを直線状の移動経路T2に沿って案内するスライド案内機構19(第1案内部)とを備えている。
【0040】
モノレール機構18は、吊り下げフレーム17におけるプラテン4側の縁部に形成されたガイドレール20と、このガイドレール20からキャリッジ10の角部10aを吊り下げるために角部10aに設けられた吊り下げ部21を備えている。ガイドレール20は、図2(a)に示すように、第1直線経路T1aを規定している短い第1直線レール部20Aと、円弧状経路T1bを規定しており、第1直線レール部20Aの左端から搬送方向上流側に向かって円弧状に延びている円弧状レール部20Bと、第2直線経路T1cを規定しており、円弧状レール部20Bの後端から搬送方向Xと平行に延びている第2直線レール部20Cとを備えている。ガイドレール20の各部分は、図5、図8に示すように、下向きに延びる垂直な壁部22aと、壁部22aの下端から壁部22aの両側に水平に延びる水平部22bとを備えており、T字型を上下逆にした断面形状をしている。
【0041】
吊り下げ部21は、図8(b)に示すように、キャリッジ10の角部10aからガイドレール20に向けて上向きに突出する突出部23と、突出部23の先端に設けられた走行部24とを備えている。走行部24は、突出部23に対し、キャリッジ10を水平にしたときに垂直な方向(すなわち、インクノズル面11aに対して垂直な方向)を向く回転軸線(図示省略)を中心として回転可能となるように取り付けられている。走行部24は、軸線方向を水平にした走行ローラー25およびこれを挟んで配置された一対のガイドローラー26を備えるローラーユニット27を、壁部22aの厚さに対応する隙間を空けて対向配置した構成である。各ガイドローラー26は、軸線方向を垂直にして配置されている。走行部24は、壁部22aをローラーユニット27の隙間に挿入し、水平部22bの上に各走行ローラー25を載せた状態となるようにガイドレール20に装着される。これにより、壁部22aの表裏両面をガイドローラー26によってガイドしながら、水平部22bの上を各走行ローラー25が落下することなく走行可能になる。ガイドレール20に沿って走行部24を走行させると、角部10aは、ガイドレール20に吊り下げられた状態で、第1直線レール部20A、円弧状レール部20B、第2直線レール部20Cによって規定される移動経路T1に沿って移動する。
【0042】
スライド案内機構19は、図5、図7に示すように、キャリッジフレーム15の垂直板部15aに沿って、搬送方向Xと直交する方向に、且つ、水平に延びているキャリッジ軸30(案内部材)と、このキャリッジ軸30にスライド可能に支持されているスライダー31と、スライダー31をキャリッジ軸30に沿って往復移動させるための駆動ベルト機構32(駆動手段)を備えている。駆動ベルト機構32はキャリッジモーター16の出力回転に基づいて駆動される。図5に示すように、スライダー31には水平に延びる角型断面の溝31aが形成されており、溝31aの内部にキャリッジ軸30が装着されている。スライダー31は、キャリッジ軸30の表面に溝31aの内側面を摺動させながら、キャリッジ軸30に沿ってスライドする。スライダー31における溝31aの背面側には軸保持部31bが形成されている。軸保持部31bは、キャリッジ10の角部10bに取り付けられた垂直な回転軸33を回転可能に保持している。
【0043】
図5、図6に示すように、キャリッジ10の角部10bの上部には筒状部34が形成され、ここに回転軸33が挿通されている。また、角部10bの下端部分には筒状部34と同軸状に配置された円板状部分35が形成されており、円板状部分35の中央の軸孔に回転軸33の下端側の部分が挿通されている。回転軸33は、キャリッジ10を水平な姿勢にしたとき、その回転軸線Lがインクノズル面11aおよびこれに対峙する記録紙Pの印刷面に対して垂直になるように取り付けられている。キャリッジ10における筒状部34の下側は、スライダー31の軸保持部31bを装着可能な凹み形状となっている。ここに軸保持部31bが挿入され、軸保持部31bの軸孔に回転軸33の中央部分が挿入されている。このような構成により、回転軸33を介して、キャリッジ10がスライダー31に回転自在に保持されると共に、スライダー31を介してキャリッジ10の角部10b側の重量がキャリッジ軸30に支持された状態になっている。キャリッジ軸30に沿ってスライダー31を往復移動させると、これに伴い、キャリッジ10の角部10bおよび回転軸33がキャリッジ軸30に沿って搬送方向Xと直交する方向に往復移動する。
【0044】
回転軸33の上端は筒状部34の上に突出しており、その先端には上部ガイドローラー36が取り付けられている。キャリッジフレーム15の上端部分に設けられた水平板部15bの下側には、下向きに突出する矩形断面の上部ガイド37が取り付けられている。上部ガイド37と、キャリッジフレーム15における垂直板部15aの上端部分との間に上部ガイドローラー36が配置されており、上部ガイド37は、上部ガイドローラー36に対し、図5の右側から当接している。同様に、回転軸33の下端は円板状部分35の下側に突出しており、その先端に下部ガイドローラー38が取り付けられている。キャリッジフレーム15の垂直板部15aの下端部分には、下部ガイドローラー38と同一高さの部分に下部ガイドローラー38の側に突出する下部ガイド39が取り付けられている。下部ガイド39は、下部ガイドローラー38に対し、図5の左側から当接している。
【0045】
キャリッジ10がキャリッジ軸30に沿って往復移動するとき、上部ガイドローラー36が上部ガイド37の側面37aによってガイドされ、且つ、下部ガイドローラー38が下部ガイド39の側面39aによってガイドされながら移動する。ここで、キャリッジ10は、回転軸33の中央部分を支持しているスライダー31を介して片持ち状態で支持されており、キャリッジ10の重心Qは回転軸33からずれている。このため、回転軸33には、回転軸33の上端をキャリッジ10の重心Qの側(図5の右側)に傾ける回転力(図5の時計回りの方向への回転力)が作用している。しかしながら、上部ガイドローラー36に対してキャリッジ10の重心Qの側(図5の右側)に上部ガイド37が配置され、下部ガイドローラー38に対してキャリッジ10の重心Qとは逆の側(図5の左側)に下部ガイド39が配置されているため、キャリッジ10の重量に起因する傾き方向への回転軸33の傾きが防止され、キャリッジ10が水平な姿勢で保持されている。
【0046】
以上のように、本実施形態のプリンター1は、印刷位置Aを搬送ローラー対8の下流側に設定し、ホームポジションBをキャリッジ10の一端が搬送ローラー対8の上流側まで移動した位置に設定した場合において、印刷位置Aの上流側に配置された搬送ローラー対8と干渉させることなく、キャリッジ10を印刷位置AとホームポジションBとの間で移動させることができる。従って、搬送ローラー対8を上流側に退避させる必要がなく、狭いスペースに印刷機構および搬送機構を集約して配置できる。よって、プリンター1の小型化に有利である。
【0047】
すなわち、本実施形態では、印刷位置AからホームポジションBへ向けて移動する途中に進行方向後端の部分を中心としてキャリッジ10を回転させ、ホームポジションBでは90度回転した姿勢にすることができる。従って、プラテン4の側方に確保すべき退避スペースの幅を小さくすることができ、プリンター1の装置幅の増大を抑制できる。また、図4に示したように、このような移動経路でキャリッジ10を移動させるときは、キャリッジ10の移動領域Rが従来の扇形の移動領域R1と比べて印刷位置Aの上流側(図4の上方)に大きくはみ出すことがない。従って、搬送ローラー対8などの各種の部品を、従来の構成では配置できなかった移動領域R1の内側に配置できるようになる。よって、狭いスペースに印刷機構および搬送機構を集約して配置でき、プリンター1の小型化に有利である。
【0048】
また、本実施形態では、円弧状に移動する角部10aではなく、直線状に移動する角部10bを駆動することによってキャリッジ10を動かしているため、駆動ベルト機構32を直線状に配置することができる。従って、キャリッジ10を動かすための駆動機構の構成を単純化することができる。また、角部10aを上から吊り下げるモノレール機構18によって案内しているため、角部10aを案内するための機構を省スペースな構成にすることができ、装置幅の増大を抑制できる。
【0049】
更に、本実施形態では、角部10aを円弧状経路T1bに沿って移動させているため、スムーズにキャリッジ10を回転させることができる。また、角部10aの移動経路T1の始端部分に第1直線経路T1aを設定しているため、角部10aが第1直線経路T1aを移動する範囲内において、キャリッジ10の姿勢を変えることなく、幅方向の位置を微調整することができる。よって、印刷位置Aにおけるインクジェットヘッド11の幅方向の位置を微調整することができ、インクジェットヘッド11を記録紙Pに対して幅方向に位置合わせすることができる。
【0050】
(改変例)
(1)上記実施形態では、ホームポジションBにおいてキャリッジ10を90度回転させた姿勢にしているが、移動経路T1、T2を適宜設定することにより、ホームポジションBにおけるキャリッジ10の姿勢を任意の角度だけ傾けた姿勢にすることもできる。
【0051】
(2)上記実施形態では、移動経路T2の一端に第1直線経路T1aを設定することにより、印刷位置Aにおけるキャリッジ10の幅方向の位置決めを可能にしているが、移動経路T1、T2のホームポジションB側の端部に、ホームポジションBにおけるキャリッジ10の正確な位置決めを行うための移動経路部分を設定しておくこともできる。
【0052】
(3)上記実施形態では、ホームポジションBへの移動時に先頭になる角部10aを、もう一方の角部10bの移動経路T2から遠ざかる方向に移動させるための移動経路として、図2(a)の円弧状レール部20Bによって規定される円弧状経路T1bと、その後端に接続される第2直線経路T1cを設定しているが、角部10aの移動経路はこのような形状に限定されるものではなく、キャリッジ10を搬送ローラー対8に干渉させない範囲で適宜変更することができる。例えば、円弧状経路T1bの径寸法を小さくして、第1直線経路T1aおよび第2直線経路T1cをその分だけ長く設定してもよい。また、円弧状経路T1bを円弧以外の湾曲形状に設定しても良い。あるいは、円弧状経路T1bに代えて、第1直線経路T1aおよび第2直線経路T1cに対して45度の角度で交差する斜めの移動経路を設定してもよい。このような形状であっても、上記実施形態と同様に、キャリッジ10をホームポジションBの側に移動させながら回転させることができる。従って、図4の移動領域Rと同様に、印刷位置Aから大きくはみ出すことのない領域を通って移動させることができる。
【0053】
(4)上記実施形態では、キャリッジ10の角部10bを直線状の移動経路T2に沿って移動させるものとしていたが、角部10bの移動経路を、キャリッジ10を搬送ローラー対8に干渉させない範囲で適宜変更してもよい。例えば、角部10bの移動経路の一部を、キャリッジ10を搬送ローラー対8に干渉させない範囲で搬送方向の上流側あるいは下流側に移動させるようにしてもよい。一例として、記録紙PのホームポジションB側の端部位置に近づくに従って角部10bを一旦搬送方向下流側に移動させ、その後上流側に戻すような経路を設定できる。このようにすると、キャリッジ10の回転(姿勢変化)に伴う上流側へのはみ出し量を極力小さくすることができる。
【0054】
(5)上記実施形態では、モノレール機構18によるキャリッジ10の支持位置をキャリッジ10の端部(角部10a)に設定しているが、モノレール機構18による支持位置は、この位置からずらして設定することが可能である。例えば、より角部10bに近い部分をモノレール機構18で支持する構成にすることができる。あるいは、角部10bに対して対角線上に位置する角部をモノレール機構18で支持する構造にすることもできる。この場合は、新たに設定した支持位置が、図3、4に示すようにキャリッジ10が移動するときにどのような移動軌跡上を移動するかを予め把握しておき、把握した移動軌跡に対応する形状にモノレール機構18のガイドレール20を設置すればよい。
【0055】
(他の実施形態)
上記実施形態のヘッド移動機構14は、キャリッジ10を2点で支持して各支点をモノレール機構18とスライド案内機構19によって案内することによって回転させつつ移動させる構成であったが、他の構成の機構によって、キャリッジ10に図3、図4に示したような動きをさせることも可能である。例えば、キャリッジ10を角部10bのみにおいて支持する構造にする一方で、スライダー31に回転軸33を中心としてキャリッジ10を回転させるための回転機構を設けておき、スライダー31をキャリッジ軸30に沿って移動させながら回転機構を駆動してキャリッジ10を回転させることにより、角部10bを直線状に移動させながらキャリッジ10の姿勢を変化させる構成にすることができる。この場合に、制御によってスライダー31の位置とキャリッジ10の回転角度を連動させてもよいし、スライダー31を直線的に移動させる機構とキャリッジ10の回転機構を機械的に連動させることにより、図3、4のようなキャリッジ10の動きを実現できる構成にしてもよい。
【0056】
あるいは、角部10bとは異なる位置にキャリッジ10を回転可能に支持するための回転軸と、この回転軸を中心としてキャリッジ10を回転させるための回転機構を設ける構成であっても、図3、4のようなキャリッジ10の動きを実現できる。この場合には、図3、4のような動きをキャリッジ10がするときに回転軸が通る移動軌跡を予め把握して、この移動軌跡に沿って回転軸を案内する案内機構を設けておき、案内機構による案内位置に応じて回転機構による回転角度を変化させるように構成すればよい。このように、図3、図4に示したような動きは、キャリッジ10の任意の部分に、当該キャリッジ10をインクノズル面11aに対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に支持するための回転軸を設けておき、印刷位置AとホームポジションBとの間でキャリッジ10が移動するとき、回転軸が移動することによってキャリッジ10の姿勢を変化させるような各種の構成によって実現できる。
【符号の説明】
【0057】
1…インクジェットプリンター(プリンター)、2…ロール紙装填部、3…ロール紙、4…プラテン、5…記録紙搬送経路、6…用紙ガイド、7…繰り出しローラー(搬送手段)、8…搬送ローラー対(搬送手段)、8a…駆動ローラー、8b…従動ローラー(搬送ローラー)、9…紙送りモーター(搬送手段)、10…キャリッジ、10a…角部(被案内部)、10b…角部、10c…右側面、11…インクジェットヘッド(印刷ヘッド)、11a…インクノズル面、11A…第1ヘッド、11B…第2ヘッド、12…インクカートリッジ装着部、13…メンテナンスユニット(メンテナンス手段)、14…ヘッド移動機構(印刷ヘッド移動機構)、15…キャリッジフレーム、15a…垂直板部、15b…水平板部、16…キャリッジモーター、17…吊り下げフレーム、18…モノレール機構、19…スライド案内機構、20…ガイドレール、20A…第1直線レール部(第1直線案内部)、20B…円弧状レール部(円弧状案内部)、20C…第2直線レール部、21…吊り下げ部、22a…壁部、22b…水平部、23…突出部、24…走行部、25…走行ローラー、26…ガイドローラー、27…ローラーユニット、30…キャリッジ軸(案内部材)、31…スライダー、31a…溝、31b…軸保持部、32…駆動ベルト機構(駆動手段)、33…回転軸、34…筒状部、35…円板状部分、36…上部ガイドローラー、37…上部ガイド、37a…側面、38…下部ガイドローラー、39…下部ガイド、39a…側面、A…印刷位置、B…ホームポジション(退避位置)、G…プラテンギャップ、L…回転軸線、P…記録紙(記録媒体)、Q…重心、R…移動領域、R1…移動領域、T1…移動経路、T1a…第1直線経路、T1b…円弧状経路(円弧状移動経路)、T1c…第2直線経路、T2…移動経路(直線状移動経路)、X…搬送方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドを搭載したキャリッジを、記録媒体に対峙する印刷位置と、前記記録媒体の印刷領域の外側に退避した退避位置との間で往復移動させるための印刷ヘッド移動機構であって、
前記印刷位置は、前記記録媒体を搬送する搬送ローラーの下流側の位置であり、
前記退避位置は、前記キャリッジの少なくとも一部が、前記搬送ローラーに対して、前記記録媒体の搬送方向の上流側となる位置であり、
前記搬送ローラーと干渉させることなく、前記印刷位置と前記退避位置との間で前記キャリッジを移動させることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャリッジを前記印刷ヘッドのインクノズル面に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に支持するための回転軸を有し、
前記印刷位置と前記退避位置の間で前記キャリッジが移動するとき、前記回転軸が移動することによって前記キャリッジの姿勢が変化することを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項3】
請求項1において、
前記印刷位置と前記退避位置の間の少なくとも一部の移動区間において、
前記退避位置に向かうときには、前記キャリッジの移動方向後端部分を直線状移動経路に沿って移動させながら、先頭になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路から遠ざけるように前記キャリッジの姿勢を変化させ、
前記印刷位置に向かうときには、先頭になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路に沿って移動させながら、後端になっている前記キャリッジの部分を前記直線状移動経路に近づけるように前記キャリッジの姿勢を変化させるように構成されていることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項4】
請求項3において、
前記キャリッジの幅方向の一端を前記直線状移動経路に沿って案内する第1案内部と、
前記印刷位置から前記退避位置に向けて移動するときに前記幅方向の一端に対して移動方向前方側に位置する前記キャリッジの部分に設けられた被案内部を、前記退避位置に向かうに従って前記直線状移動経路から遠ざかる経路部分を含む移動経路に沿って案内する第2案内部とを有することを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項5】
請求項4において、
前記幅方向の一端を前記直線状移動経路に沿って往復移動させる駆動手段を有することを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記第2案内部による移動経路における前記直線状移動経路から遠ざかる方向に延びる経路部分は、円弧状移動経路であることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2案内部は、
前記被案内部の移動経路における前記印刷位置側の端部に設けられ、前記直線状移動経路と平行な第1直線経路に沿って前記被案内部を案内する第1直線案内部と、
当該第1直線案内部における前記退避位置側の端部に接続され、前記円弧状移動経路に沿って前記被案内部を案内する円弧状案内部とを備えることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかの項において、
前記第1案内部によって案内される前記キャリッジの部分を、前記印刷ヘッドのインクノズル面に対して垂直な回転軸線を中心として回転可能に支持するための回転軸を有し、
前記第1案内部は、前記回転軸を支持しているスライダーと、当該スライダーを前記直線状移動経路と平行な方向に案内する案内部材とを備えることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項9】
請求項8において、
前記回転軸は上下方向に延びており、
前記第1案内部は、
前記回転軸の上端部分および下端部分に設けられたガイドローラーと、
前記案内部材の上方および下方の各位置に配置され、各ガイドローラーを前記直線状移動経路に沿った方向に案内する上部ガイドおよび下部ガイドとを備えることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項10】
請求項9において、
前記上部ガイドは、上側の前記ガイドローラーに対し、前記キャリッジの重心側に配置され、
前記下部ガイドは、下側の前記ガイドローラーに対し、前記キャリッジの重心とは逆の側に配置されていることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項11】
請求項4ないし10のいずれかの項において、
前記第2案内部は、前記キャリッジの上方に配置されたガイドレールと、当該ガイドレールから前記被案内部を吊り下げた状態で前記ガイドレールに沿って走行する吊り下げ部とを備えることを特徴とする印刷ヘッド移動機構。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかの項に記載の印刷ヘッド移動機構と、
前記印刷位置において前記記録媒体上の印刷領域の幅方向の一端から他端までの範囲にインクを吐出可能に構成され、前記印刷ヘッド移動機構によって前記印刷位置および前記退避位置の間を移動する印刷ヘッドと、
前記印刷位置を経由する搬送経路に沿って前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記退避位置に移動した前記印刷ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス手段とを有することを特徴とするプリンター。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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