説明

プリンターおよびグラフィックスデータ登録方法

【課題】プリンターの印刷解像度を変更した場合に、印刷データ供給側の上位機器に変更を加えることなく、グラフィックスデータを変更前と同様に適切な状態で印刷可能なグラフィックスデータ登録方法を提案すること。
【解決手段】プリンターのグラフィックスデータ登録方法は、グラフィックスデータの登録コマンドを受信する受信工程(ST1)と、受信した登録コマンドに含まれているグラフィックスデータの画像解像度が、搭載されている印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かを判別する判別工程(ST3)と、判別結果に基づき、グラフィックスデータに対して、その画像解像度が印刷解像度と同一となるように画像解像度変換処理を施す解像度変換工程(ST4)と、画像解像度変換処理が施された後のグラフィックスデータをグラフィックスデータ記憶部66に記憶保持する登録工程(ST5)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POSシステムのレシートプリンター等として用いられるプリンターに関する。更に詳しくは、ロゴマークなどのグラフィックスデータの登録機能を備えたプリンターにおけるグラフィックスデータの登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等に設置されているPOSシステムにおいては、そのPOS端末に接続されたレシートプリンターによってレシートを印刷して発行するものが知られている。レシートの表面には、店舗名、取引内容などのテキストデータが印刷されると共に、店舗ロゴ、バーコード、クーポン券などのグラフィックスが印刷される。このようなプリンターにおいては、NVRAMなどの不揮発性メモリーからなるグラフィックスデータ登録用のメモリーを備え、このメモリー内に店舗名を示すロゴマーク、クーポン情報などのグラフィックスデータを登録する機能を備えたものがある。
【0003】
グラフィックスデータの登録機能を備えたプリンターでは、グラフィックスデータを印刷毎にホストコンピューターからプリンターに送信する必要が無く、単に、ホストコンピューターからプリンターに登録されているグラフィックスデータを指定するためのデータを送信するだけでよい。したがって、ホストコンピューターからプリンターへの送信データ量を減らすことができ、これらの間のデータ伝送レートが低い場合であっても、頻繁に印刷される店舗ロゴなどのグラフィックスデータの印刷を効率良く行うことができる。このようなグラフィックスデータ登録機能を備えたプリンターは本願出願人により特許文献1、2において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−301738号公報
【特許文献2】特開2007−54986号公報
【発明の概要】
【0005】
ここで、POSシステム等においては、POS端末などに接続されているプリンターが交換されて、搭載されている印刷ヘッドの印刷解像度が交換前の機種とは異なるものになることがある。例えば、印刷解像度が180dpi(dot per inch)の印刷ヘッドが搭載されているプリンターが、203dpiの印刷ヘッドが搭載されているプリンターに変更されることがある。この場合には、交換後の印刷ヘッドの解像度が高いので、交換前の180dpiに対応した画像解像度のグラフィックスデータを印刷すると、レシートなどの記録媒体上に印刷されたグラフィックスは一回り小さくなり、見え方が変わってしまう。このため、プリンターの印刷解像度を変更する場合には、ホストコンピューター側にインストールされているグラフィックスデータの作成、登録用のアプリケーションも変更する必要がある。
【0006】
したがって、従来においては、グラフィックスデータの登録機能を備えたプリンターの印刷解像度を変更した場合には、それに対応する画像解像度のグラフィックスデータを生成してプリンターに送信して登録しておくことができるようにするために、ホストコンピューター側のアプリケーションも変更する必要があり、プリンターのみの変更では対応できない。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、プリンターの印刷解像度を変更した場合に、印刷データ供給側の上位機器に変更を加えることなく、グラフィックスデータを変更前と同様な大きさの状態で印刷可能なグラフィックスデータ登録方法を提案することにある。また、本発明の課題は、かかる新たなグラフィックスデータ登録方法によりグラフィックスデータを登録可能なプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のプリンターのグラフィックスデータ登録方法は、
グラフィックスデータの登録コマンドを受信する受信工程と、
受信した前記登録コマンドに含まれているグラフィックスデータの画像解像度が、搭載されている印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かを判別する判別工程と、
判別結果に基づき、前記グラフィックスデータに対して、その画像解像度が前記印刷解像度と同一の解像度、あるいは、前記画像解像度が前記印刷解像度により近い解像度となるように、画像解像度変換処理を施す解像度変換工程と、
前記画像解像度変化処理が施された後の前記グラフィックスデータをグラフィックスデータ記憶部に記憶保持する登録工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明では、ホストコンピューターの側からグラフィックスデータの登録コマンドを受信すると、当該グラフィックスデータの画像解像度が、プリンターの印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かが判別される。相違する場合には、画像解像度を印刷解像度に一致、あるいはより近い解像度になるように、受信したグラフィックスデータに対して画像解像度変換処理が施され、処理後のグラフィックスデータがグラフィックスデータ記憶部に登録される。この場合、グラフィックスデータに対し、画像解像度と印刷解像度に基づく所定間隔で、グラフィックスデータの一部を挿入したり、又は削除したりすることが好ましい。
【0010】
本発明の方法によれば、プリンターのグラフィックスデータ記憶部には、搭載されている印刷ヘッドの印刷解像度と同一の解像度、あるいは印刷解像度により近い解像度のグラフィックスデータが登録される。よって、グラフィックスデータの画像解像度と印刷ヘッドの印刷解像度の相違に起因して、印刷用紙上に印刷されたグラフィックスのサイズが大幅に変化して見え方が大きく変わってしまうといった弊害を回避できる。また、プリンターの側において、グラフィックスデータの画像解像度を印刷ヘッドの印刷解像度に一致するようにデータ処理を行っているので、ホストコンピューターの側において、プリンター側の印刷解像度に一致する画像解像度のグラフィックスデータを生成してプリンターの側に送信して登録させるためのアプリケーションプログラムを変更する必要がない。
【0011】
ここで、ホストコンピューターの側から供給されるグラフィックスデータの画像解像度が印刷ヘッドの印刷解像度と同一であることが予め分かっている場合などにおいては、プリンターの側において受信したグラフィックスデータの画像解像度変換処理を行う必要がなく、受信したグラフィックスデータをそのままグラフィックスデータ記憶部に登録すればよい。
【0012】
このような場合に対応できるようにするためには、画像解像度変換処理の要否をディップスイッチ、ソフトスイッチなどの設定手段によって予め設定しておき、前記判別工程に先立って、画像解像度変換処理の要否が設定されている設定手段の状態に基づき、画像解像度変換処理の要否を判別する要否判別工程を実行すればよい。そして、前記設定手段が前記画像解像度変換処理が不要である旨を示す状態の場合には、前記解像度変換工程を実行することなく、前記登録工程において、受信した前記グラフィックスデータをそのまま前記グラフィックスデータ記憶部に登録すればよい。
【0013】
また、グラフィックスデータの画像解像度と印刷ヘッドの印刷解像度の差は、一般的には2倍以内である。したがって、前記解像度変換工程の前記画像解像度変換処理として、グラフィックスデータの構成画素数を等間隔で増減する方法を採用することができる。すなわち、M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とした場合に次のように行うことができる。
【0014】
まず、画像解像度よりも印刷解像度が高い場合、すなわち、M<Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータをコピーしてP画素目のデータと(P+1)画素目のデータの間に挿入することにより、前記グラフィックスデータのデータ数(画素数)を増加させればよい。逆に、画像解像度よりも印刷解像度が低い場合、すなわち、M>Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータを削除することにより、前記グラフィックスデータのデータ数を減少させればよい。M=Nの場合にはグラフィックスデータに対するデータ処理は行わず、受信したグラフィックスデータをそのまま処理後のグラフィックスデータとすればよい。
【0015】
また、同様な処理をグラフィックスデータの行単位および列単位で行う場合には、M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、M<Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データをコピーして、P行目とP+1行目の間に挿入し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データをコピーして、P列目とP+1列目の間に挿入し、M>Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データを削除し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データを削除するようにしてもよい。
【0016】
次に、本発明は、上記のグラフィックスデータ登録方法により受信したグラフィックスデータの登録を行うプリンターであって、
データの受信部と、
前記受信部で受信したグラフィックスデータを登録するためのグラフィックスデータ記憶部と、
前記グラフィックスデータ記憶部に登録されている登録グラフィックスデータを含む印刷データの印刷を行うための印刷ヘッドと、
前記受信部で受信したデータを解析するデータ解析部と、
前記データがグラフィックスデータの登録コマンドである場合に、当該登録コマンドに含まれているグラフィックスデータの画像解像度が印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かを判別する解像度判別部と、
前記解像度判別部の判別結果に基づき、前記グラフィックスデータに対して、その画像解像度が前記印刷解像度と同一の解像度、あるいは前記画像解像度が前記印刷解像度により近い解像度となるように、画像解像度変換処理を施す解像度変換部と、
前記画像解像度変換処理が施された後の前記グラフィックスデータを前記グラフィックスデータ記憶部に登録させる登録制御部とを有していることを特徴としている。
【0017】
ここで、前記画像解像度変換処理の要否を設定する設定手段を配置し、設定手段によって前記画像解像度変換処理が不要であることが設定されている場合には、前記登録制御部は受信した前記グラフィックスデータをそのまま前記グラフィックスデータ記憶部に登録するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、プリンターの側において、グラフィックスデータの画像解像度を印刷ヘッドの印刷解像度に一致する方向にデータの増減処理を行うようにしている。したがって、印刷解像度の異なるプリンターに変更した場合に、ホストコンピューターの側において、グラフィックスデータを生成してプリンターの側に送信して登録させるためのアプリケーションプログラムを変更して、グラフィックスデータの画像解像度を印刷解像度に一致させる必要がない。よって、異なる印刷解像度のプリンターへの交換作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したPOSシステムのシステム構成図である。
【図2】レシートプリンターの制御部の機能ブロック図である。
【図3】レシートプリンターのグラフィックスデータ登録動作のフローチャートである。
【図4】画像解像度変換処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明をコンビニエンス・ストア等の店舗にて利用されるPOSシステムのPOS端末に接続されたレシートプリンターに適用した場合の実施の形態を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態のPOSシステム1は、システム全体を統括するPOSサーバー2と、ここに通信接続されている各POS端末装置3と、各POS端末装置3に接続されているレシートプリンター4とを備えている。図においては1組のPOS端末装置3およびレシートプリンター4のみを示してある。
【0022】
POSサーバー2は、CPU21と、ROM22、RAM23等のメモリーとを有し、RAM23内には、商品データ(商品コード、商品名、金額、在庫)、広告データなどの各記憶領域が含まれており、CPU21は、POS端末装置3の側からの入力情報に基づいて、商品コード、商品名、金額に関する情報を抽出し、POS端末装置3の側での表示、およびレシートプリンター4での決済情報の印刷に用いる商品データを生成する。
【0023】
POSアプリケーション31およびプリンタードライバー32が搭載されているPOS端末装置3は、オペレーターによるキーボード33からの入力情報、バーコードリーダー34による商品バーコードの読み取り情報に基づき、商品等に関する情報を取得する。また、カードリーダー35によって顧客のクレジットカードや会員カードを読み取り、これらを入力情報としてPOSサーバー2に送信して、POSサーバー2から表示、印刷用の商品データを取得する。また、POSサーバー2から取得した商品データを基に生成した商品情報をディスプレイ36に表示する。
【0024】
次に、レシートプリンター4はサーマルヘッド方式のレシートプリンターであり、POS端末装置3から各種制御コマンドや印刷データを受信するデータ受信部41、搬送部42、印刷部43、切断部44、これらの各部42〜44を駆動する駆動部45、およびレシートプリンター4の全体を制御する制御部46等を備えている。レシートプリンター4は、例えばロール紙47から繰り出される連続紙である印刷用紙47aに商品決済情報などを印刷して、一定の長さのレシート48として発行する。レシートプリンター4は、サーマルヘッド方式以外の印刷ヘッドを備えているもの、例えば、インクジェットヘッドを備えたものであってもよいことは勿論である。
【0025】
レシートプリンター4はグラフィックスデータの登録機能を備えたプリンターである。登録されているグラフィックスデータは、キーコードと呼ばれる識別子がそれぞれ付与されており、各グラフィックスデータにキーコードが対応付けした形態で記憶保持されている。POS端末装置3などの上位機器から、キーコードを含む所定の印刷指示を表す印刷コマンドを受信すると、受信したキーコードに対応するグラフィックスデータを印刷用紙47a上に印刷するようになっている。
【0026】
レシートプリンター4に対するグラフィックスデータの登録は、画像登録装置5によって行うことができる。画像登録装置5はパーソナルコンピューターなどのレシートプリンター4に対するホストコンピューターである。図1においては、画像登録装置5をPOS端末装置3とは別個の装置として表示してあるが、POS端末装置3を画像登録装置5として機能させることもできる。
【0027】
画像登録装置5は、グラフィックスデータをレシートプリンター4に登録する画像登録アプリケーション51と、レシートプリンター4に登録されたグラフィックスデータに関連する各種印刷設定を行う設定値登録アプリケーション52の2つのアプリケーションがインストールされている。これら2つのアプリケーション51、52は、ユーザーの操作に応じて、レシートプリンター4へのグラフィックスデータの登録設定を行う。
【0028】
画像登録アプリケーション51は、レシートプリンター4に登録するグラフィックスデータを、ベースとなるグラフィックスファイルを基に作成し、キーコードを生成してレシートプリンター4へグラフィックスデータをキーコードと共に登録する。これにより、レシートプリンター4では、グラフィックスデータが、対応するキーコードと関連付けされて登録される。
【0029】
一方、設定値登録アプリケーション52は、レシートプリンター4に登録されたグラフィックスデータにトップロゴ、ボトムロゴ、キーワードロゴ等の印刷に関連する追加設定値を設定する。例えば、あるグラフィックスデータが設定値登録アプリケーション52によりトップロゴとして設定されると、POS端末装置3(ホストコンピューター)がキーコードを直接指定せずとも、トップロゴを印刷する条件を満たす場合には、レシートプリンター4はトップロゴに割り当てられたグラフィックスデータを連続紙47a上に印刷することができる。これにより、POS端末装置3(ホストコンピューター)側の他のアプリケーションは、キーコードを直接意識することなくレシートプリンター4にグラフィックスデータの印刷を行わせることができる。このような画像登録装置5は特許文献1、2に記載されているように公知であるので詳細な説明は省略する。
【0030】
図2はレシートプリンター4の制御部46を中心に実現される主要機能を示す機能ブロック図である。POS端末装置3のホストコンピューターの側から送信されたデータは、データ受信部41を介して、受信バッファー61に一時的に格納される。受信バッファー61に格納されたデータは、コマンド解析部62において解析される。
【0031】
受信したデータが、POS端末装置3の側から供給された印刷データD1である場合には、印刷データD1は、印刷データ展開部63において、キャラクタージェネレーター64、バーコードジェネレーター65、ロゴなどのグラフィックスデータ記憶部66、ビットマップデコーダー67に基づいてデータ展開されて、ビットマップ展開データが生成される。生成されたビットマップ展開データはプリントバッファー68に展開される。プリントバッファー68に展開されたデータが印刷部43の印刷ヘッド69によって印刷用紙47aに印刷されてレシート48が作成される。
【0032】
一方、受信したデータがグラフィックスデータの登録コマンドD2の場合、例えば、画像登録装置5からグラフィックスデータの登録コマンドを受信した場合にはグラフィックスデータがグラフィックスデータ記憶部66に登録される。登録に先立って、判別部71において、受信した登録コマンドに含まれているグラフィックスデータの画像解像度が印刷ヘッド69の印刷解像度と相違するか否かが判別される。印刷ヘッド69の印刷解像度は、製造時にレシートプリンター4のメモリーに記憶されている。画像解像度変換処理部72では、この判別結果に基づき、グラフィックスデータに対して画像解像度変換処理を施して、その画像解像度を印刷解像度に一致させる。登録制御部73は、画像解像度変換処理後のグラフィックスデータを、登録コマンドに含まれているキーコードに対応付けした形態でグラフィックスデータ記憶部66に記憶保持する登録処理を行う。
【0033】
ここで、本例のレシートプリンター4においては、グラフィックスデータの登録処理において、画像解像度を印刷解像度に一致させるための変換処理の要否を設定するための設定スイッチとして機能するディップスイッチ74が備わっている。ディップスイッチ以外の設定手段、例えばレシートプリンター4のメモリーに設定されるソフトスイッチを備えていてもよい。
【0034】
登録制御部73は、ディップスイッチ74によって変換処理が必要であることが設定されている場合には、画像解像度が印刷解像度に一致するように、受信したグラフィックスデータのデータ量の増減処理を行った後にグラフィックスデータ記憶部66に登録する処理を行う。ディップスイッチ74によって変換処理が不要であることが設定されている場合には、登録制御部73は、判別部71、画像解像度変換処理部72を不能状態に切り替え、受信したグラフィックスデータをそのままグラフィックスデータ記憶部66に登録する処理を行う。換言すると、画像解像度変換処理を行うことなく、受信したグラフィックスデータをそのままグラフィックスデータ記憶部66に登録する処理を行う。
【0035】
図3はレシートプリンター4におけるグラフィックスデータの登録処理の一例を示す概略フローチャートである。この図を参照して処理の流れを纏めて説明すると、レシートプリンター4において、ホスト側、例えば画像登録装置5の側からグラフィックスデータの登録コマンドを受信すると(ステップST1:受信工程)、ディップスイッチ74の状態に基づき画像解像度変換処理の要否を確認する(ステップST2:要否判定工程)。ディップスイッチ74が、画像解像度変換処理が不要である旨を表す状態に切り替わっている場合には、受信したグラフィックスデータをそのまま、キーコードを対応付けした形態でグラフィックスデータ記憶部66に登録する(ステップST5:登録工程)。
【0036】
ディップスイッチ74が、画像解像度変換処理が必要である旨を表す状態に切り替わっている場合には、受信した登録コマンドの画像解像度が、搭載されている印刷ヘッド69の印刷解像度と相違するか否かを判別する(ステップST3:判別工程)。判別結果に基づき受信したグラフィックスデータに画像解像度変換処理を施す(ステップST4:解像度変換処理工程)。
【0037】
画像解像度変換処理では、画像解像度が印刷解像度よりも低い場合には、グラフィックスデータに対して、画像解像度が印刷解像度に対応するデータ量となるようにデータ量を増加するデータ処理を施す(ステップST4−1)。逆に、画像解像度が印刷解像度よりも高い場合には、グラフィックスデータに対して、画像解像度が印刷解像度に対応するデータ量となるように、データ量を減らすデータ処理を施す(ステップST4−2)。双方の解像度が同一の場合には、グラフィックスデータに対するデータ量の増減処理は行わない(ステップST4−3)。この後は、画像解像度を印刷解像度に一致させたグラフィックスデータをキーコードと対応付けした形態で、グラフィックスデータ記憶部66に登録する(ステップST5:登録工程)。
【0038】
ここで、本例の画像解像度変換処理では次のようにして、受信したグラフィックスデータを行方向および列方向に増減している。まず、M、N、Pを正の整数、グラフィックスデータG1の画像解像度をM(dpi)、印刷ヘッド69の印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とする。画像解像度の方が低い場合、すなわち、M<Nの場合には(図3のステップST4−1)、グラフィックスデータG1の行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データをコピーして、P行目とP+1行目の間に挿入し、グラフィックスデータG1の列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データをコピーして、P列目とP+1列目の間に挿入して、データ量を増加させるようにしている。
【0039】
逆に、画像解像度の方が高い場合、すなわち、M>Nの場合には(図3のステップST4−2)、グラフィックスデータG1の行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データを削除し、グラフィックスデータG1の列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データを削除して、データ量を減少させるようにしている。
【0040】
図4を参照して、受信したグラフィックスデータの画像解像度が180dpiであり、印刷解像度が203dpiである場合におけるグラフィックスデータの画像解像度変換処理の一例を説明する。図4(a)は画像解像度が180dpiのグラフィックスデータG1を示す説明図であり、図4(b)は当該グラフィックスデータG1を画像解像度が203dpiのグラフィックスデータG2に変換した後の状態を示す説明図である。
【0041】
本例では、M=180、N=203であり、M/(N−M)=180/(203−180)=7.8・・・であるのでP=8である。したがって、図4(b)において網掛け部分で示すように、グラフィックスデータの行方向においては、8行目毎に、行データX8、X16、X24、X32をコピーして、8、16、24、32行目の次の行として挿入している。同様に、グラフィックスデータG1の列方向においては、8列目毎に、列データY8、Y16、Y24、Y32をコピーして、これらの次の行として挿入している。この結果、画像解像度が180dpiのグラフィックスデータが、画像解像度が203dpiに相当するデータ量のグラフィックスデータG2としてグラフィックスデータ記憶部66に登録される。
【0042】
上記の画像解像度変換処理では、グラフィックスデータの行単位および列単位で増減させるようにしているが、データの先頭から等画素毎に画素データの挿入、削除を行うようにしてもよい。すなわち、解像度変換工程の画像解像度変換処理は、M、N、Pを正の整数、グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、M<Nの場合には、グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータをコピーしてP画素目のデータと(P+1)画素目のデータの間に挿入することにより、グラフィックスデータのデータ数を増加させ、M>Nの場合には、グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータを削除することにより、グラフィックスデータのデータ数を減少させるようにしてもよい。
【0043】
上記の変換方法では、画像解像度Mが印刷解像度Nの2倍を超える場合、1/2未満の場合には、画像解像度Mを印刷解像度Nに完全に一致させることができない。しかしながら、双方の解像度が2倍以上異なることは殆どないので、本例の方法を採用すれば、複雑なデータの伸長あるいは圧縮処理を行う必要なく、印刷されたグラフィックスの大きさが大幅に変化して見え方が大きく変わってしまうという弊害を実質的に回避できる。なお、画像解像度変換処理の方法として、上記の方法以外の各種の画像解像度変換処理を用いてもよいことは勿論である。
【0044】
以上説明したように、レシートプリンター4では、グラフィックスデータ記憶部66には、受信したグラフィックスデータの画像解像度が印刷ヘッド69の印刷解像度とは異なっている場合であっても、印刷解像度と同一となるように画像解像度が変換された後のグラフィックスデータが登録される。よって、印刷ヘッド69の印刷解像度とは異なる画像解像度のグラフィックスデータが印刷されてしまうことがない。また、レシートプリンター4の印刷解像度を変更した場合に、ホストコンピューター側の変更、すなわち、画像登録アプリケーションなどを変更する必要がない。よって、POS端末装置3に接続されているレシートプリンター4を、印刷解像度の異なるレシートプリンターに交換する作業を簡単に行うことができる。
【0045】
なお、上記の例は本発明をPOSシステムのPOS端末に用いるレシートプリンターに適用した場合のものであるが、グラフィックスデータの登録機能を備えたプリンターであれば、本発明を適用可能なことは勿論である。
【0046】
また、上記の例ではグラフィックスデータの例で説明をしたが、グラフィックスデータで構成されるフォントデータや、フォントデータを含むグラフィックスデータで構成されるフォントデータなどにも適用が可能である。外字登録などをする際にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 POSシステム、2 POSサーバー、3 POS端末装置、4 レシートプリンター、5 画像登録装置、21 CPU、22 ROM、23 RAM、31 POSアプリケーション、32 プリンタードライバー、33 キーボード、34 バーコードリーダー、35 カードリーダー、36 ディスプレイ、41 データ受信部、42 搬送部、43 印刷部、44 切断部、45 駆動部、46 制御部、47 ロール紙、47a 連続紙、48 レシート、51 画像登録アプリケーション、52 設定値登録アプリケーション、61 受信バッファー、62 コマンド解析部、63 印刷データ展開部、64 キャラクタージェネレーター、65 バーコードジェネレーター、66 グラフィックスデータ記憶部、67 ビットマップデコーダー、68 プリントバッファー、69 印刷ヘッド、71 判別部、72 画像解像度変換処理部、73 登録制御部、74 ディップスイッチ、D1 印刷データ、D2 登録コマンド、G1,G2 グラフィックスデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィックスデータの登録コマンドを受信する受信工程と、
受信した前記登録コマンドに含まれているグラフィックスデータの画像解像度が、搭載されている印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かを判別する判別工程と、
前記判別工程の判別結果に基づき、前記グラフィックスデータに対して、その画像解像度が前記印刷解像度と同一の解像度、あるいは、前記画像解像度が前記印刷解像度により近い解像度となるように、画像解像度変換処理を施す解像度変換工程と、
前記画像解像度変換処理が施された後の前記グラフィックスデータをグラフィックスデータ記憶部に記憶保持する登録工程とを含むことを特徴とするプリンターのグラフィックスデータ登録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記判別工程に先立って、前記画像解像度変換処理の要否を設定可能な設定手段の状態に基づき、これらの工程の要否を判別する要否判別工程を有し、
前記設定手段が前記画像解像度変換処理が不要である旨を示す状態の場合には、前記判別工程、前記解像度変換工程を実行することなく、前記登録工程において、受信した前記グラフィックスデータをそのまま前記グラフィックスデータ記憶部に登録することを特徴とするプリンターのグラフィックスデータ登録方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記解像度変換工程の前記画像解像度変換処理は、
M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、
M<Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータをコピーしてP画素目のデータと(P+1)画素目のデータの間に挿入することにより、前記グラフィックスデータのデータ数を増加させ、
M>Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータを削除することにより、前記グラフィックスデータのデータ数を減少させることを特徴とするプリンターのグラフィックスデータ登録方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記解像度変換工程の前記画像解像度変換処理は、
M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、
M<Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データをコピーして、P行目とP+1行目の間に挿入し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データをコピーして、P列目とP+1列目の間に挿入し、
M>Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データを削除し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データを削除することを特徴とするプリンターのグラフィックスデータ登録方法。
【請求項5】
データの受信部と、
前記受信部を介して受信したグラフィックスデータを登録するためのグラフィックスデータ記憶部と、
前記グラフィックスデータ記憶部に登録されている登録グラフィックスデータを含むデータの印刷を行うための印刷ヘッドと、
前記受信部で受信したデータを解析するデータ解析部と、
前記データが前記グラフィックスデータの登録コマンドである場合に、当該登録コマンドに含まれている前記グラフィックスデータの画像解像度が前記印刷ヘッドの印刷解像度と相違するか否かを判別する解像度判別部と、
前記解像度判別部の判別結果に基づき、前記グラフィックスデータに対して、その画像解像度が前記印刷解像度と同一の解像度、あるいは、前記画像解像度が前記印刷解像度により近い解像度となるように、画像解像度変換処理を施す解像度変換部と、
前記画像解像度変換処理が施された後の前記グラフィックスデータを前記グラフィックスデータ記憶部に登録させる登録制御部とを有していることを特徴とするプリンター。
【請求項6】
請求項5において、
前記画像解像度変換処理の要否を設定する設定手段を有しており、
前記登録制御部は、前記設定手段の設定が前記画像解像度変換処理が不要である旨を表す場合には、受信した前記グラフィックスデータをそのまま前記グラフィックスデータ記憶部に登録することを特徴とするプリンター。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記解像度変換部の前記画像解像度変換処理は、
M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、
M<Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータをコピーしてP画素目のデータと(P+1)画素目のデータの間に挿入することにより、前記グラフィックスデータのデータ数を増加させ、
M>Nの場合には、前記グラフィックスデータに対して、P画素目毎に、当該P画素目のデータを削除することにより、前記グラフィックスデータのデータ数を減少させることを特徴とするプリンター。
【請求項8】
請求項5または6において、
前記解像度変換部の前記画像解像度変換処理は、
M、N、Pを正の整数、前記グラフィックスデータの画像解像度をM(dpi)、前記印刷ヘッドの印刷解像度をN(dpi)とし、Pの値を|M/(N−M)|、または当該除算値の絶対値に最も近い整数値とすると、
M<Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データをコピーして、P行目とP+1行目の間に挿入し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データをコピーして、P列目とP+1列目の間に挿入し、
M>Nの場合には、前記グラフィックスデータの行方向においては、P行目毎に、当該P行目の行データを削除し、前記グラフィックスデータの列方向においては、P列目毎に、当該P列目の列データを削除することを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−111216(P2012−111216A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264681(P2010−264681)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】