説明

プリンターの制御方法及びプリンター

【課題】効率良く印刷を行わせて業務の効率を向上させることができ、なおかつ良好な印刷が可能なプリンターの制御方法及びプリンターを提供する。
【解決手段】ホストコンピューター80から受信した印刷データを記録紙10に印刷した後、用紙カット指示に応じて記録紙をカットするプリンター1の制御方法であって、印刷終了後にインクジェットヘッド17のノズルチェック処理を実行している時に、用紙カット指示を受けた場合(S1:Yes)には、ノズルチェック処理を中断(S2)して、カット処理を実行する(S3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出された用紙をカットする機能を備えたプリンターの制御方法及びプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙からなる記録紙にインク滴を吐出して印刷するインクジェットプリンターには、排出されたロール紙をカットする機構が設けられている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−144785号公報
【特許文献2】特開2007−268749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンターには、各インクノズルからのインクの吐出状態を検査し、その結果に基づいて、必要な場合にノズルクリーニング処理を行ってインクノズルの目詰まりを解消させるものがある。インクの吐出状態を検査するノズルチェック処理中にロール紙の切断が指令されると、そのロール紙の切断は、ノズルチェック処理の終了後に行われることとなる。このため、ロール紙の切断が指令されてから実際にロール紙が切断されるまでに、数秒待たされてしまう。これにより、スループットが上がらず、業務効率の低下を招いてしまう。
【0005】
本発明の目的は、効率良く印刷を行わせて業務の効率を向上させることができ、なおかつ良好な印刷が可能なプリンターの制御方法及びプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができる本発明に係るプリンターの制御方法は、ホストコンピューターから受信した印刷データを用紙に印刷した後、用紙カット指示に応じて用紙をカットするプリンターの制御方法であって、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行している時に、前記用紙カット指示を受けた場合には、
前記ノズル詰まり自動検出処理を中断して、前記カット処理を実行することを特徴とする。
この制御方法によれば、ノズル詰まり自動検出処理を実行している時に用紙カット指示を受けると、ノズル詰まり自動検出処理を中断してカット処理を優先して実行するので、カット処理が行われるまでの待ち時間をほとんどなくすことができ、スループットを向上させることができる。
これにより、効率良く印刷を行わせて業務の効率を大幅に向上させることができる。また、用紙カット指示を受けない場合はノズル詰まり自動検出処理が継続して行われるので、ノズル詰まりなどの不具合を抑えて良好に印刷させることができる。
【0007】
本発明のプリンターの制御方法において、前記ノズル詰まり自動検出処理は、印刷終了後に前記ホストコンピューターからの印刷要求が所定の印刷要求待ち時間を経過しても受信されない時に実行されることが好ましい。
この制御方法によれば、印刷要求待ち時間を経過しても印刷要求を受けない時、すなわち印刷が休止された状態でノズル詰まり自動検出処理が実行されるので、このノズル詰まり自動検出処理を中断してカット処理を実行しても、印刷処理のスループットには影響しない。このように、印刷要求がない状態では要求されたカット処理を優先して行うことで、全体のスループットを向上させることができる。
【0008】
本発明のプリンターの制御方法において、前記ノズル詰まり自動検出処理を中断した後、印刷ヘッドに対するキャッピング処理を実行してから、前記カット処理を実行することが好ましい。
この制御方法によれば、カット処理前に印刷ヘッドに対してキャッピング処理を行って印刷ヘッドを保護し、ノズルのメニスカスを維持することができる。
【0009】
本発明のプリンターの制御方法において、前記ノズル詰まり自動検出処理を中断して、前記カット処理を実行した後に、前記ノズル詰まり自動検出処理を再実行することが好ましい。
この制御方法によれば、カット処理の実行後に、改めてノズル詰まり自動検出処理を実行して待機状態に移行することができ、常に良好な印刷処理を行うことができる。
【0010】
本発明に係るプリンターは、ホストコンピューターから受信した印刷データを用紙に印刷した後、用紙カット指示に応じて用紙をカットするプリンターであって、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行するノズルチェック手段と、
用紙カット指示に応じて前記用紙をカットする用紙カット手段と、
ユーザーによって操作されることにより前記用紙カット手段へ用紙カットを指示するカット操作部と、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行している時に、前記用紙カット指示を受けた場合には、前記ノズル詰まり自動検出処理を中断させて、前記カット処理を実行させる制御部とを備えることを特徴とする。
この構成のプリンターによれば、ノズル詰まり自動検出処理を実行している時に用紙カット指示を受けると、ノズル詰まり自動検出処理を中断してカット処理を優先して実行するので、カット処理が行われるまでの待ち時間をほとんどなくすことができ、スループットを向上させることができる。
これにより、効率良く印刷を行わせて業務の効率を大幅に向上させることができる。また、カット操作部が操作されない場合はノズル詰まり自動検出処理が継続して行われるので、ノズル詰まりなどの不具合を抑えて良好に印刷させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプリンターの制御方法が適用されるプリンターの一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1のプリンターを開けた状態の外観斜視図である。
【図3】図1のプリンターの概略断面図である。
【図4】図1のプリンターにおける吸引プラテン及び記録紙吸引機構を示す部分斜視図である。
【図5】図1のプリンターにおける記録紙が通過する状態の吸引プラテンの平面図である。
【図6】図1のプリンターのヘッドクリーニング機構を示す斜視図である。
【図7】図1のプリンターのヘッドクリーニング機構のノズルチェック状態を示す断面図である。
【図8】図1のプリンターの制御系を示す概略ブロック図である。
【図9】各条件における印刷終了後の制御を示すタイミングチャートである。
【図10】印刷終了後に用紙カット指示がされた場合の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るプリンターの制御方法及びプリンタードライバーの実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るプリンター1は、記録紙であるロール紙9に印刷を行うロール紙プリンターである。プリンター1は全体としてほぼ直方体形状をしたプリンター本体2と、このプリンター本体2の前面に取り付けた開閉蓋3とを有している。プリンター本体2の外装ケース2aの前面には所定幅の記録紙排出口4が形成されている。記録紙排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており、この排紙ガイド5の側方には蓋開閉レバー6が配置されている。外装ケース2aにおける排紙ガイド5及び蓋開閉レバー6の下側には、ロール紙出し入れ用の矩形の開口部2b(図2参照)が形成されており、この開口部2bが開閉蓋3によって封鎖されている。
【0013】
蓋開閉レバー6を操作すると、開閉蓋3のロックが解除される。そして、排紙ガイド5を前方に引くと、図2に示すように、開閉蓋3が下端部を中心として前方にほぼ水平となるまで開く。開閉蓋3が開くと、プリンター本体2の内部に形成されているロール紙収納部7が開放状態となる。同時に、印刷位置を規定している吸引プラテン(プラテン)8が開閉蓋3と一緒に移動して、ロール紙収納部7から記録紙排出口4に到る記録紙搬送経路が開放状態となるので、プリンター本体2の前方からロール紙9の交換作業を行うことができる。
【0014】
ロール紙収納部7にはロール紙9の軸がプリンター幅方向に向いた横置き状態で収納される。ロール紙収納部7は、その収納幅を規定している左右の第1側壁11及び第2側壁12を備えており、これら第1側壁11及び第2側壁12は異なる用紙幅のロール紙9を収納するためにプリンター幅方向にスライド可能になっている。第1側壁11には、第1側壁11がプリンター幅方向に移動しないようにロックするロック機構とロール紙付勢部材13が組み込まれており、第1側壁11の前側の上端部分には、ロック機構の操作部分14が露出している。ロール紙付勢部材13は、その先端部が第1側壁11における内側の表面11aに形成された開口からロール紙収納部7内に向けて突出している。ロール紙付勢部材13は、図2に示されている突出位置とその先端部の先端面が第1側壁11の表面11aに一致する退避位置との間で移動するように構成されており、所定の弾性力で常に突出位置に付勢されている。
【0015】
ロック機構の操作部分14を手動操作によって押し込むと第1側壁11のロックが解除されるので、第1側壁11をプリンター幅方向に移動させて、これから収納するロール紙9の用紙幅に位置決めすることができる。この後に、ロック機構の操作部分14の押し込みを解除すると、第1側壁11の移動が阻止されたロック状態に戻る。収納幅を調整した後にロール紙9を収納すると、ロール紙付勢部材13がロール紙9を第2側壁12の側に向かって押し付けた状態になるので、収納されたロール紙9がガタ付くことはない。なお、図2においては、開閉蓋3の蓋ケース3a及び蓋開閉レバー6を省略してある。
【0016】
図3に示すように、プリンター1の内部には、プリンター本体フレーム15における幅方向の中央部分にロール紙収納部7が形成されている。ロール紙収納部7の上側には、プリンター本体フレーム15の上端にヘッドユニットフレーム16が水平に取り付けられている。ヘッドユニットフレーム16には、インクジェットヘッド17、インクジェットヘッド17の位置を検出するためのリニアスケール18及びエンコーダセンサ19、インクジェットヘッド17及びエンコーダセンサ19を搭載しているキャリッジ20、キャリッジ20のプリンター幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸21が配置されている。
【0017】
インクジェットヘッド17はノズル面17aが下向きになるようにキャリッジ20に搭載されている。キャリッジガイド軸21はプリンター幅方向に水平に掛け渡されている。また、ヘッドユニットフレーム16には、キャリッジ20をキャリッジガイド軸21に沿って往復移動させるためのキャリッジモーター22及びタイミングベルト23を備えたキャリッジ搬送機構が配置されている。
【0018】
インクジェットヘッド17の下側には一定のギャップを開けてプリンター幅方向に水平に延びる吸引プラテン8が配置されている。吸引プラテン8はロール紙9から繰り出されている記録紙(用紙)10が印刷位置を通過する際に、この記録紙10の被印刷面の裏側を表面8aに吸引する。吸引プラテン8及びプリンター本体2には記録紙吸引機構が構成されている。
【0019】
吸引プラテン8の後端には下方に湾曲しているテンションガイド24が取り付けられている。テンションガイド24はバネ力によって上方に付勢されており、ロール紙収納部7に収納されているロール紙9から引き出された記録紙10は、テンションガイド24によって所定の張力が付与された状態で印刷位置を経由する記録紙搬送経路に沿って引き出される。
【0020】
吸引プラテン8の後側には、後側紙送りローラー25がプリンター幅方向に水平に架け渡されている。後側紙送りローラー25には記録紙10を介して所定幅の後側紙押えローラー26が所定の押圧力で押し付けられている。吸引プラテン8における前端側の部位には、前側紙送りローラー27が配置されている。前側紙送りローラー27には、記録紙10を介して上側から前側紙押えローラー28が押し付けられている。後側紙送りローラー25及び前側紙送りローラー27は、プリンター本体フレーム15に搭載されている紙送りモーター29によって駆動される。また、記録紙排出口4には、用紙カッター53が設けられており、前側紙送りローラー27及び前側紙押えローラー28によって記録紙排出口4から送り出される記録紙10が用紙カッター53によって切断される。吸引プラテン8、テンションガイド24、後側紙送りローラー25、前側紙送りローラー27は、開閉蓋3が開閉されると、開閉蓋3と一緒に移動する。
【0021】
図4及び図5に示すように、吸引プラテン8はプリンター幅方向に長い扁平な直方体形状をしている。吸引プラテン8の側方にはインクジェットヘッド17から吐出されるインク滴に起因して発生するインクミストを回収するインクミスト回収部31が、この吸引プラテン8と一体に形成されている。吸引プラテン8の表面8aは複数の縦リブ32によって溝状の複数の区画室33に仕切られている。これら複数の区画室33と、複数の区画室33のそれぞれの底面に形成されている吸引孔34と、プリンター本体フレーム15の背面板に取り付けられている吸引ファン35と、各吸引孔34を介して各区画室33に連通しているとともに、吸引ファン35を経由してプリンター本体2の背面側に形成されている排気口36に連通している空気通路37から記録紙吸引機構は構成されている。
【0022】
吸引プラテン8と空気通路37とは接続及び切り離し可能になっている。開閉蓋3を開けると吸引プラテン8は開閉蓋3とともに前方に移動するので、空気通路37から切り離される。開閉蓋3を閉じると吸引プラテン8は元の位置に復帰するので、空気通路37に接続された状態になる。接続状態で吸引ファン35を作動させると、吸引孔34から空気が吸い込まれるので、吸引プラテン8の表面8aを搬送される記録紙10が吸引される。
【0023】
なお、吸引プラテン8の幅方向はプリンター幅方向であり、各区画室33の上面開口が吸引プラテン8の吸引領域8bである。吸引プラテン8の幅方向における吸引領域8bの幅Aとは、図5に示すように、吸引プラテン8の左端の区画室33(a)の上面開口の左端から右端の区画室33(b)の上面開口の右端までの幅である。記録紙10の用紙幅Bとは、吸引プラテン8の幅方向における記録紙10の幅である。
【0024】
印刷時には、プリンター1は、吸引ファン35を作動させ、ロール紙9から繰り出された記録紙10を吸引プラテン8の吸引領域8bに吸引する。また、プリンター1は、キャリッジ20をキャリッジガイド軸21に沿って移動させることによりインクジェットヘッド17を吸引プラテン8の幅方向に移動させて印刷する動作と、後側紙送りローラー25及び前側紙送りローラー27を回転駆動させることにより、吸引プラテン8の幅方向と直交する方向に記録紙10を所定ピッチだけ搬送する動作とを繰り返す。
【0025】
印刷に使用されている記録紙10の用紙幅Bが吸引プラテン8の吸引領域8bの幅Aよりも狭い場合には、図5に示すように、記録紙10の用紙幅B方向の第1及び第2紙端10a,10bの外側に吸引領域8bの一部分が露出するので、この露出部分の空気の吸引に起因して第1及び第2紙端10a,10b付近に気流が発生する。この気流は第1及び第2紙端10a,10bの上方に紙粉や埃などを飛散させる。記録紙10の端部は紙の繊維の切断面であるため、紙粉が発生し易い。また、本例では、ロール紙収納部7に投入されたロール紙9を両側から挟んでガタ付きを防止する第1及び第2側壁11,12を備えているので、記録紙10が搬送させる毎にロール紙9の両側面と第1及び第2側壁11,12とが摺れて紙粉を発生させる。この紙粉は記録紙10と一緒にロール紙収納部7から吸引プラテン8まで運ばれてきてしまうことがある。
【0026】
このため、プリンター1は、記録紙10の用紙幅Bが吸引プラテン8の吸引領域8bの幅Aよりも狭い場合には、ロール紙収納部7から印刷位置まで運ばれてきた紙粉などが飛散してノズル面17aに付着することがないように、インクジェットヘッド17のノズル面17aが第1及び第2紙端10a,10bから所定の距離だけ離れた位置にあるときに、記録紙10の搬送が行われるように駆動制御される。
【0027】
図6に示すように、プリンター1は、ヘッドクリーニング機構40を備えており、このヘッドクリーニング機構40は、インクジェットヘッド17の待機位置の下方に配置されている。このヘッドクリーニング機構40は、インクジェットヘッド17のノズル面17aを封止するためのヘッドキャップ41と、ノズル面17aに付着しているインクや異物などを払拭するためのワイパー42と、インクジェットヘッド17のノズル内に残留あるいは目詰まり等しているインクを吸引するためのインク吸引部43を備えている。ヘッドキャップ41、ワイパー42及びインク吸引部43はヘッドクリーニング機構40のフレーム44に取り付けられている。フレーム44は、キャリッジガイド軸21や吸引プラテン8などを支持するプリンター本体フレーム15に固定されている。
【0028】
ヘッドキャップ41は、待機位置におけるノズル面17aの真下に配置されており、ノズル面17aに正対する上向きの封止面41aを備えている。ヘッドキャップ41は、図示しない駆動機構を作動させることにより、ノズル面17aに対して垂直な方向、すなわち、キャリッジガイド軸21と直交する方向に上下にスライド可能に構成されている。これにより、封止面41aがノズル面17aに対して近づく方向または遠ざかる方向にヘッドキャップ41が移動する。
【0029】
図7に示すように、ヘッドキャップ41は、封止面41aの縁部41bが垂直に立ち上がっている箱型状であり、ゴムなどの弾力性のある素材で形成されている。ヘッドキャップ41は、ノズル面17aのノズル形成部分を縁部41bで囲むように覆いながら、ノズル面17aに密着させることが可能な大きさ及び形状である。封止面41a及び縁部41bで囲まれる凹部41c内には、インク吸引部43が備える図示しないポンプモータから延びる吸引用チューブが接続されている。縁部41bをノズル面17aに密着させた状態でポンプモータが作動すると、ポンプモータの吸引力により凹部41cとノズル面17aで囲まれた密閉空間が減圧され、インクジェットヘッド17の各ノズルに残留しているインクが吸引されて凹部41c内に吐出される。
【0030】
ワイパー42はゴムなどの弾性材からなる板状の部材であり、ヘッドクリーニング機構40のフレーム44に固定された図示しないガイド部材によって上下にスライド可能に保持されている。ワイパー42は、図示しない駆動機構を作動させることにより、ヘッドキャップ41と同様に、ノズル面17aに対して垂直な方向に移動可能に構成されている。ワイパー42でノズル面17aを払拭する際には、ノズル面17aをワイパー42の真上から横方にずらした状態でワイパー42を上昇させ、ワイパー42の先端をノズル面17aの高さよりもわずかに上に突出させ、この状態でインクジェットヘッド17をキャリッジガイド軸21に沿って移動させ、ワイパー42の先端をノズル面17aに摺接させる。これにより、ノズル面17aに付着した異物やインクがワイパー42の先端によって掻きとられる。
【0031】
印刷ジョブが終了してインクジェットヘッド17を待機位置で待機させる場合には、縁部41bがノズル面17aの周囲に密着する位置までヘッドキャップ41が移動してノズルを封鎖する。これにより、待機時におけるノズル内のインクを増粘しにくくして目詰まり等を発生しにくくすることができる。また、インクジェットヘッド17を待機位置側または印刷位置側に移動させるタイミングに同期させてワイパー42を上昇させることにより、ワイパー42でノズル面17aを払拭するワイピング処理を行うことができる。
【0032】
ノズルの目詰まり等によりヘッドクリーニングが必要になった場合には、ノズルを封鎖する位置にヘッドキャップ41を移動させた状態でポンプモータを作動させて凹部41cとノズル面17aで囲まれた密閉空間内を吸引し、各インクノズルからインクを吐出させるインク吸引処理を実行することができる。
【0033】
また、インクノズル内のインク滴の状態を適切に保つために、インクジェットヘッド17をヘッドキャップ41と対向させた状態で、インクジェットヘッド17の全インクノズルから、印刷動作とは関係なく、所定量のインクをヘッドキャップ41の凹部41c内に吐出させるフラッシング処理が定期的に行われる。また、この定期フラッシング処理で吐出するインク滴よりも多量のインク滴をまとめて吐出させるフラッシング処理を所望のタイミングで実行し、これによりヘッドクリーニングを行ってノズルの目詰まり等を回復することもできる。クリーニング処理として、上記ワイピング処理、インク吸引処理、フラッシング処理のどれか、あるいは、これらの処理を適宜組み合わせて行うことができる。
【0034】
これらのクリーニング処理を実際に行う前等に、インクノズルからのインクの吐出状態を検査するノズルチェック処理(ノズル詰まり自動検出処理)が行われる。そして、ノズルチェック結果に基づき、ノズルクリーニングを行うか否かなどを判断し、必要な場合にノズルクリーニング処理が行われる。
【0035】
このノズルチェック処理を行うために、ヘッドクリーニング機構40には不良ノズルを検出するためのノズルチェック機構が備わっている。すなわち、凹部41c内には、吐出された廃インクを吸収するための吸収材41dが配置されていると共に、吸収材41dと電気的に導通するように導電材41eが取り付けられている。導電材41eを流れた電気信号は配線などによって取り出される。この構成により、インクジェットヘッド17の各ノズルから帯電したインク滴を吐出して、帯電したインク滴が吸収材41dに着弾する際に生じる電流変化の信号を取り出すことができる。インク滴を吐出したにも拘らず、この信号が所定の閾値以下の場合、ノズルの吐出不良と判断することができる。この他に、不良ノズルの検出方法として、吐出したインク滴をレーザーなど光学的な手段で検出する方法がある。
【0036】
ノズルチェック処理は、具体的には、インクジェットヘッド17のノズルから帯電したインク滴を吐出し、このインク滴が凹部41c内の吸収材41dに着弾する際の電流変化の信号に基づき、ノズルからのインク滴の吐出状態を検査する。ノズルチェック処理の際には、ノズル面17aとヘッドキャップ41における縁部41bの上端との隙間L1、及び、ノズル面17aと吸収材41dの表面との隙間L2が所定寸法になるようにヘッドキャップ41を位置決めし、この状態で、インクジェットヘッド17とヘッドキャップ41が所定の電位差になるように、インクジェットヘッド17側を接地し、ヘッドキャップ41側に電圧を印加し所定の電界状態にする。インクジェットヘッド17から吐出したインク滴は、この電界により着弾するまでに所定量の電荷を帯電する。インク滴が着弾すると帯電した電荷が導電材41eに流れる。このようにすると、インク滴の吐出状態を精度良く検査することができる。
【0037】
図8に示すように、プリンター1の制御系は、CPU、ROM、RAMを備えた制御部50を中心に構成されている。制御部50には、ホストコンピューター80からの印刷データが通信インターフェース51及び通信バッファ52を介して入力されるようになっている。また、制御部50には、フラッシュROMなどの不揮発性メモリー54が接続されており、この不揮発性メモリー54は、バッファとして印刷用の展開データや各種設定値等を記憶保持する。
【0038】
制御部50の出力側には、インクジェットヘッド17、キャリッジモーター22、紙送りモーター29、吸引ファン35及び用紙カッター53が、それぞれドライバー55〜59を介して接続されている。制御部50は、印刷手段60、ノズルチェック手段62、ノズル回復処理手段66、用紙カット手段67、用紙吸引手段68及びキャッピング手段69を有している。
【0039】
印刷手段60は、キャリッジモーター22、紙送りモーター29を駆動制御して記録紙10に対して印刷データに基づく印刷を行う。ノズルチェック手段62は、ノズルチェック機構を構成する導電材41eから取り出された電流変化の信号に基づいて、各インクノズルからインク滴が正常に吐出されているか否かのノズルチェック処理を行う。
【0040】
ノズル回復処理手段66は、各インクノズルからインク滴が正常に吐出されていない場合に、各インクノズルのインク滴の吐出状態を正常な状態に回復するためのノズル回復処理を行う。すなわち、ヘッドクリーニング機構40を駆動制御して、各インクノズルからインクを吸引する動作を行う。また、キャリッジモーター22及びヘッドクリーニング機構40を駆動制御してインクジェットヘッド17のノズル面17aをワイパー42で払拭する。
【0041】
用紙カット手段67は、記録紙排出口4に設けられた用紙カッター53を駆動させ、記録紙排出口4から排出された印刷済み等の記録紙10を切断する。用紙吸引手段68は、記録紙吸引機構の吸引ファン35を作動させることにより、吸引孔34から空気を吸い込ませ、吸引プラテン8の表面8aを搬送される記録紙10を吸引させる。
【0042】
キャッピング手段69は、印刷ジョブが終了してインクジェットヘッド17を待機位置で待機させる場合に、ヘッドクリーニング機構40を駆動制御し、縁部41bがノズル面17aの周囲に密着する位置までヘッドキャップ41を移動させてノズルを封鎖する。これにより、待機時におけるノズル内のインクを増粘しにくくして目詰まり等を発生しにくくする。
【0043】
ホストコンピューター80は、プリンター1に接続された上位機器であり、その制御部(プリンタードライバー)81は、CPU、ROM、RAM等から構成されている。このホストコンピューター80からは、印刷データがコマンド生成部82及び通信インターフェース83を介してプリンター1へ送信される。
制御部81は、印刷データ作成手段85、印刷設定手段86及びプリンター設定手段87を有している。印刷データ作成手段85は、入力された画像や文字から印刷データを作成する。印刷設定手段86は、印刷枚数や印刷品質等の各種設定を行う。
【0044】
プリンター設定手段87は、プリンター1における記録紙吸引機構の吸引ファン35の休止状態等の各種設定を行う。このプリンター設定手段87によって、プリンター1は、例えば、印刷終了後に吸引ファン35を休止させる休止モードまたは印刷終了後に吸引ファン35の作動を継続させる不休止モードに設定される。
【0045】
上記のプリンター1では、ホストコンピューター80から印刷指令とともに印刷データを受信すると、用紙吸引手段68によって記録紙吸引機構の吸引ファン35が作動され、吸引孔34から空気が吸い込まれ、吸引プラテン8の表面8aを搬送される記録紙10が吸引される。そして、このように吸引プラテン8に吸着された記録紙10に対して、印刷手段60によってインクジェットヘッド17のインクノズルからインク滴が吐出されて印刷が行われる。印刷された記録紙10は、記録紙排出口4から排出され、用紙カット手段67によって用紙カッター53で切断される。
【0046】
また、制御部50には、プリンター本体2に設けられた押しボタンスイッチ等からなるカット操作部70が接続されている。制御部50は、カット操作部70がユーザーに押下された場合にも、用紙カット手段67へ用紙カット指示を送信し、用紙カッター53により記録紙10の切断処理を行わせる。このカット操作部70は、記録紙10をユーザーが任意に切断する場合に押下される。
【0047】
図9(a)に示すように、プリンター1は、印刷終了後、印刷指令待ちを行う。この印刷指令待ちは、印刷データが送信されるか否かを待機する印刷要求待ち時間であり、所定時間待機する。この印刷指令待ちの間に印刷データを受信したら、プリンター1は、その受信した印刷データに基づいて印刷処理を実行する。
【0048】
印刷データの受信がない場合、印刷指令待ち時間経過後、ノズルチェック手段62によってノズルチェック処理が約5秒間行われ、その後、約1秒間でキャッピング手段69によって待機位置に移動されたインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピングが行われて待機状態となる。なお、休止モードの場合では、印刷終了後、吸引ファン35が停止される。なお、印刷指令待ち時間は、インクジェットヘッド17のインクノズルの乾燥による不具合が生じない程度の3秒から15秒程度の時間とされている。
【0049】
そして、待機中となったプリンター1に対してホストコンピューター80から印刷データが送信されて印刷が指令されると、まず、用紙吸引手段68によって吸引ファン35が作動され、この吸引ファン35によって吸引プラテン8へ記録紙10が確実に吸着される約2秒後から印刷手段60による記録紙10への印刷が開始される。
【0050】
次に、印刷終了後のプリンター1に対して、ユーザーによってカット操作部70が押下された場合について説明する。
図9(b)に示すように、印刷終了後のプリンター1に対して、ユーザーによってカット操作部70が押下された場合、印刷指令待ち時間中では、カット操作部70の押下によって、用紙カット手段67が用紙カッター53を作動させる。これにより、記録紙10は、カット操作部70の押下後すぐに切断される。
【0051】
印刷指令待ち時間が終了してノズルチェック処理を実行している時は、制御部50は、図10に示すフローチャートに沿って制御を行う。
まず、制御部50は、カット操作部(カットボタン)70が押下されたか否かを判定し(ステップS1)、カット操作部70が押下されたと判定した場合(ステップS1:Yes)、ノズルチェック処理を中断し、このノズルチェック処理における結果を廃棄する(ステップS2)。
【0052】
次に、用紙カット手段67による記録紙10の切断処理を実行させる(ステップS3)。具体的には、ノズルチェック処理の中断後、キャッピング手段69によってインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピングを行う。その後、用紙吸引手段68によって吸引ファン35を作動させ、この吸引ファン35によって吸引プラテン8へ記録紙10を確実に吸着させて記録紙10を安定した姿勢に保持し、用紙カッター53を作動させて記録紙10を切断する。なお、記録紙10を切断した直後には、事後動作としてフラッシング処理を行う。
【0053】
その後、用紙カッター53による記録紙10の切断にエラーが生じているか否かが判定され(ステップS4)、エラーなく記録紙10が切断されたと判定すると(ステップS4:No)、ノズルチェック手段62によってノズルチェック処理が再度開始されて最初のノズルから順にチェックが行われ(ステップS5)、その後、キャッピング手段69によってインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピングが行われて待機状態となる(ステップS6)。なお、ステップS4の判定は、記録紙排出口4から送り出される記録紙10の有無を検出する紙検出器等を用いて行うことができる。
【0054】
記録紙10の切断にエラーが生じていると判定すると(ステップS4:Yes)、キャッピング手段69によってインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピングを行い(ステップS7)、ホストコンピューター80のディスプレイに切断エラーを表示させる(ステップS8)。
【0055】
ノズルチェック処理中にカット操作部70が押下されてもノズルチェック処理を中断しない制御(参考例)について説明する。
図9(c)に示すように、ノズルチェック処理中にカット操作部70が押下されても、ノズルチェック処理を継続して実行し、このノズルチェック処理の終了後、キャッピング手段69によってインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピング処理を行う。その後、用紙吸引手段68によって吸引ファン35が作動され、この吸引ファン35によって吸引プラテン8へ記録紙10が確実に吸着されたら、用紙カット手段67が用紙カッター53を作動させ、記録紙10を切断する。
【0056】
このように、ノズルチェック処理を中断しない参考例の制御では、印刷指令待ち時間経過後のノズルチェック処理中にカット操作部70が押下されても、ノズルチェック処理を行う最大約5秒、キャッピングするまでの約1秒及び吸引プラテン8へ記録紙10を吸着させるまでの約2秒の処理時間(最大で合計8秒)の経過後に記録紙10の切断が実行される。つまり、ユーザーは、カット操作部70の押下後に、最大で約8秒間待たなければならないこととなる。
【0057】
これに対して、図9(b)に示す本発明に係る制御では、印刷指令待ち時間経過後のノズルチェック処理中にカット操作部70が押下されても、その後のノズルチェック処理に要する最大約5秒の時間Tが省略され、キャッピングするまでの約1秒及び吸引プラテン8へ記録紙10を吸着させるまでの約2秒の処理時間(合計3秒)の経過後に記録紙10の切断がすぐに実行される。つまり、ユーザーは、カット操作部70の押下後に、約2秒間程度待つだけで良いこととなる。
【0058】
このように、本発明に係る実施形態の制御によれば、ノズルチェック処理を実行している時に、用紙カット指示を受けると、ノズルチェック処理を中断してカット処理を実行するので、カット処理が行われるまでの待ち時間をほとんどなくすことができる。
【0059】
つまり、印刷終了後、印刷要求を受けずにノズルチェック処理が実行されても、このノズルチェック処理を中断させて、要求されたカット処理を優先して実行してスループットを向上させることができる。これにより、効率良く印刷を行わせて業務の効率を大幅に向上させることができる。しかも、ノズルチェック処理中に用紙カット指示を受けなければノズルチェック処理が行われるので、その結果により必要に応じてクリーニング処理を実行し、ノズル詰まりなどの不具合を解消することができる。そして、良好な印刷処理を実行することができる。
【0060】
また、印刷指令待ち時間を経過しても印刷指令を受けない時、すなわち印刷が休止された状態でノズルチェック処理が実行されるので、このノズルチェック処理を中断してカット処理を実行しても、印刷処理の実行を阻害しない。印刷要求がない状態では要求されたカット処理を優先して行うことで、プリンター1の処理全体のスループットを向上させることができる。
【0061】
また、カット処理前にインクジェットヘッド17に対してキャッピング処理を行ってインクジェットヘッド17を保護し、ノズルのメニスカスを維持することができる。
しかも、カット処理の実行後に、改めてノズルチェック処理を実行して待機状態に移行することができ、常に良好な印刷処理を行うことができる。
【0062】
なお、上記の制御は、プリンター設定手段87によってプリンター1が休止モードとされている場合の制御であるが、プリンター設定手段87によってプリンター1が不休止モードとされている場合は、印刷終了後も吸引ファン35が継続して作動し、記録紙10が吸引プラテン8に吸着された状態が維持される。
【0063】
したがって、この不休止モードでは、図9(d)に示すように、印刷指令待ち時間経過後にカット操作部70が押下されてノズルチェック処理が中断された後、キャッピング手段69によってインクジェットヘッド17のノズル面17aをヘッドキャップ41で覆うキャッピング処理を行い、用紙カッター53を作動させて記録紙10を切断することとなる。
【0064】
これにより、印刷指令待ち時間経過後のノズルチェック処理中にカット操作部70が押下されると、キャッピングするまでの約1秒の処理時間の経過後に記録紙10の切断がすぐに実行されることとなり、吸引ファン35の再起動に伴う待ち時間も省略することができ、記録紙10の切断のさらなる迅速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1:プリンター、10:記録紙(用紙)、17:インクジェットヘッド(印刷ヘッド)、50:制御部、62:ノズルチェック手段、67:用紙カット手段、70:カット操作部、80:ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピューターから受信した印刷データを用紙に印刷した後、用紙カット指示に応じて用紙をカットするプリンターの制御方法であって、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行している時に、前記用紙カット指示を受けた場合には、
前記ノズル詰まり自動検出処理を中断して、前記カット処理を実行することを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンターの制御方法であって、
前記ノズル詰まり自動検出処理は、印刷終了後に前記ホストコンピューターからの印刷要求が所定の印刷要求待ち時間を経過しても受信されない時に実行されることを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンターの制御方法であって、
前記ノズル詰まり自動検出処理を中断した後、印刷ヘッドに対するキャッピング処理を実行してから、前記カット処理を実行することを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のプリンターの制御方法であって、
前記ノズル詰まり自動検出処理を中断して、前記カット処理を実行した後に、前記ノズル詰まり自動検出処理を再実行することを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項5】
ホストコンピューターから受信した印刷データを用紙に印刷した後、用紙カット指示に応じて用紙をカットするプリンターであって、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行するノズルチェック手段と、
用紙カット指示に応じて前記用紙をカットする用紙カット手段と、
ユーザーによって操作されることにより前記用紙カット手段へ用紙カットを指示するカット操作部と、
印刷終了後に印刷ヘッドのノズル詰まり自動検出処理を実行している時に、前記用紙カット指示を受けた場合には、前記ノズル詰まり自動検出処理を中断させて、前記カット処理を実行させる制御部と、を備えることを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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