説明

プリンタ装置

【課題】複数の異なった特性の印画紙に対応した適切な印画処理を使用者に負担をかけることなく行えるプリンタ装置を得る。
【解決手段】制御部17の制御下で、ホルダー支持シャフト14を上方に待機させる。そして、モーター10を駆動して、ウォームギヤ9、ギヤ8〜6を介してカム4を回転させ、選択溝31が最上部の頂点位置で停止させた後、この状態で固定する。その後、ホルダー支持シャフト14を下方に回転駆動することにより、サーマルヘッド1の位置決めピン3を選択溝31内に挿入する。この際、ホルダー5はバネ11の弾性力によりX方向に押圧されるため、位置決めピン3は選択溝31の一方側面に当接することにより、X方向において精度良く位置決めが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サーマルヘッドを用いて感熱紙等の印画紙に印画を行うプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ装置は、複数の異なった特性(仕様)の印画紙を印画する際には、各印画紙に合わせた最適位置にサーマルヘッドをセットする必要があるために位置決め用部材をセットごとに個別に構成する必要があり、同一セットでは複数の異なった特性の印画紙を使用することができなかった。
【0003】
この改善策として、例えば、特許文献1において、複数の異なった特性の印画紙に対応して位置決め部材を交換可能にした、サーマルプリンタのサーマルヘッド位置決め装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−122495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されたサーマルヘッド位置決め装置では、複数の異なった特性の印画紙毎に位置決め部材を交換する必要があり、使用者に位置決め部材交換という手間をかけてしまい、装置の利便性において劣るという問題点があった。
【0006】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、複数の異なった特性の印画紙に対応した適切な印画処理を使用者に負担をかけることなく行えるプリンタ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る請求項1記載のプリンタ装置は、サーマルヘッドと、印画処理時に印画紙を前記サーマルヘッドとの間に挟んで支持する印画紙支持部材と、前記サーマルヘッドの前記印画紙支持部材に対する相対位置によって規定される、複数種のヘッド位置が設定可能なサーマルヘッド位置決め機構と、前記印画紙の特性を検出する印画紙特性検出部と、前記印画紙特性検出部により検出された前記印画紙の特性に基づき前記複数種のヘッド位置のうち一のヘッド位置を選択ヘッド位置として選択し、前記サーマルヘッド位置決め機構を駆動制御して、前記サーマルヘッドを前記選択ヘッド位置に設定させる制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明における請求項1記載のプリンタ装置は、制御部の制御下でサーマルヘッド位置決め機構を駆動することにより、印画紙の特性に基づき決定される選択ヘッド位置にサーマルヘッドを自動的に位置決めするため、複数の異なった特性の印画紙に対応した適切な印画処理を使用者に負担をかけることなく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。図1はサーマルヘッドの位置決め前の状態を示している。
【0010】
同図に示すように、印画紙支持部材であるプラテンローラー2の上方に位置するサーマルヘッド1はホルダー5の一方主面(図1では下方の面)に装着され、ホルダー5の他方主面側には位置決めピン設置部21が設けられる。後述するが、位置決めピン設置部21は、実際には、ホルダー5が上部に設けられていないサーマルヘッド1の端部上に設けられている。
【0011】
位置決めピン設置部21の所定箇所に位置決めピン3が設けられる。ホルダー5はホルダー支持シャフト14の一端に装着され、ホルダー支持シャフト14の他端にホルダー回転軸13が設けられる。また、ホルダー支持シャフト14の中間位置にストッパー12が設けられ、ホルダー5,ストッパー12間のホルダー支持シャフト14にはバネ11が巻かれている。なお、ヘッド押しバネ15はプリント時にサーマルヘッド1を押圧するために設けられている。
【0012】
上述したホルダー支持シャフト14はホルダー回転軸13を回転中心として図示しないホルダー支持シャフト駆動手段によって回転動作が可能であり、さらに、バネ11の弾性力によって常にストッパー12からホルダー5の方向への向かう力が作用している。一方、サーマルヘッド1の位置決め用にカム4が設けられている。カム4には外周に沿って90度間隔で4つの溝31〜34が設けられる。後に詳述するが、溝31〜34のいずれかへの位置決めピン3の挿入によって、サーマルヘッド1の位置決めが行われる。
【0013】
カム4は外周がギヤ6と歯(図示せず)が噛み合うように接触している。ギヤ6〜8及びウォームギヤ9において、ギヤ6,7間,ギヤ7,8間,ギヤ8,ウォームギヤ9間それぞれの外周の歯(図示せず)が噛み合うように接触している。ウォームギヤ9はモーター10によって回転駆動される。したがって、ウォームギヤ9の回転によって生じる動力が、ギヤ8〜6を介してカム4に伝達され、カム4を回転させることができる。
【0014】
モーター10は制御部17によって動作制御され、制御部17は印画紙特性検出部18より得られる検出情報S18に基づき、モーター10の動作を制御する。また、制御部17は上述したホルダー支持シャフト駆動手段を制御することもできる。
【0015】
印画紙特性検出部18は、プリント対象となる感熱紙等の印画紙16からその特性(紙の厚み、硬度等)を検出して検出情報S18を得る。例えば、印画紙16に特性情報を格納したICチップ、ICタグ等の特性情報記憶部が付随しており、印画紙特性検出部18は、印画紙16に付随する特性情報記憶部から特性情報の読み取り機能を有することにより、検出情報S18を得ることができる。
【0016】
図2はこの発明の実施の形態1であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。図2はサーマルヘッドの位置決め後の状態を示している。
【0017】
同図に示すように、カム4の外周に設けられた溝31に位置決めピン3が挿入されている。ホルダー5はバネ11の弾性力によってストッパー12と反対方向であるX方向(印画方向)に押圧される。その結果、溝31内に挿入された位置決めピン3は溝31の左端に接するように、サーマルヘッド1のプラテンローラー2への接触面の位置決めが行われる。また、ヘッド押しバネ15の弾性力によって、上方からホルダー5を介してサーマルヘッド1は押圧される。
【0018】
図3はサーマルヘッドの位置決め後の状態を示す斜視図である。同図に示すように、カム4は実際にはプラテンローラー2の両端側に一対のカム4a,4bとして設けられる。カム4a及び4bはそれぞれ溝31a〜34a及び溝31b〜34bが設けられ、溝31a〜34aと溝31b〜34bとの位置関係は鏡像関係になるように配置され、溝31a〜34aと溝31b〜34bとのそれぞれの形状についても鏡像関係になるように形成される。
【0019】
一方、位置決めピン設置部21a,21bはホルダー5が上部に設けられていないサーマルヘッド1の両端上に配置され、位置決めピン設置部21a,21b上に位置決めピン3a,3bがカム4a,4b方向に立設される。すなわち、サーマルヘッド1の一端にネジ止めされた位置決めピン設置部21aの上部に位置決めピン3aが設けられ、サーマルヘッド1の他端にネジ止めされた位置決めピン設置部21bの上部に位置決めピン3bが設けられ、位置決めピン3aが溝31a〜34aのうちいずれかに挿入されるとともに、位置決めピン3bが溝31b〜34bのいずれかに挿入される。図3の例では、溝31aに位置決めピン3aが挿入され、溝31bに位置決めピン3bが挿入されている状態が示されている。
【0020】
一方、プラテンローラー2の中心に位置するプラテンローラー回転軸23は、ギヤ22の中心に設けられ、プラテンローラー2駆動用のギヤ22の回転運動に従って回転する。また、カム4a。ギヤ6a及びプラテンローラー回転軸23の位置決め用にフレーム20aが設けられる。なお、カム4b側にもギヤ6a相当のギヤ及びフレーム20a相当のフレームが設けられているが、説明の都合上、図3では図示していない。また、図3では図示しないヘッド押しバネ15はホルダー5の押圧領域39上に設けられる。なお、図1,図2は説明用に装置構成を模式化しているため、プラテンローラー2とカム4との相対位置等、図3と正確に一致しない部分が存在する。
【0021】
図4は実施の形態1のプリンタ装置のサーマルヘッド位置決め動作の処理手順を示すフローチャートである。これらの処理は、主として制御部17の制御下で自動的に行われる。以下、同図、図1〜図3等を参照して処理内容を説明する。
【0022】
まず、ステップS1において、図1に示すように、ホルダー支持シャフト駆動手段を駆動制御して、ホルダー回転軸13を中心としてホルダー支持シャフト14を上方に回転駆動(図1の例では角度α分、上方に回転)することにより、サーマルヘッド1を上方に待機させる。その結果、カム4が回転可能な状態となる。
【0023】
次に、ステップS2において、印画紙特性検出部18により印画紙16の厚み、硬度等の特性を検出し、検出情報S18を得る。
【0024】
そして、ステップS3において、制御部17は印画紙特性検出部18より得られる検出情報S18に基づき、溝31〜34のうちサーマルヘッド位置に最適な溝を選択溝(以降、「選択溝3i(i=1〜4のいずれか)」として記載する場合あり)として決定する。
【0025】
続いて、ステップS4において、制御部17はモーター10を駆動して、ウォームギヤ9、ギヤ8〜6を介してカム4を回転させ、選択溝3iが最上部の頂点位置で停止させた後、この状態で固定する。
【0026】
その後、ホルダー回転軸13を中心としてホルダー支持シャフト14を下方に回転駆動することにより、サーマルヘッド1の位置決めピン3を選択溝3i内に挿入する。図2及び図3の例では、選択溝3iが溝31の場合における位置決めピン3の挿入状態を示している。この際、図2に示すように、ホルダー5はバネ11の弾性力により印画方向であるX方向に押圧されるため、位置決めピン3は選択溝3i(溝31)の一方側面(図2における左側の面)に当接することにより、X方向において精度良く位置決めされる。この際、位置決め部材の交換等の負担を使用者に強いることはない。
【0027】
このように、制御部17は、カム4、ギヤ6〜8,ウォームギヤ9及びモーター10を含むサーマルヘッド位置決め機構を駆動制御して、選択溝3iに位置決めピン3を挿入することにより、サーマルヘッド1のプラテンローラー2(の中心線)に対する相対位置によって規定されるヘッド位置を設定する。
【0028】
図5はカム4の溝31,32の寸法を示す説明図である。同図に示すように、溝31はカム回転軸24上の中心線45から寸法DAの幅を有している。したがって、溝31が選択溝3iの場合、位置決めピン3は上記中心線45から寸法DA分、印画方向Xに位置する溝31の側面に当接されることにより位置決めされることになる。
【0029】
同様に、溝32はカム回転軸24上の中心線45から寸法DBの幅を有している。したがって、溝32が選択溝3iの場合、位置決めピン3は上記中心線45から寸法DB分、印画方向Xに位置する溝32の側面に当接されることにより位置決めされることになる。
【0030】
このように、溝31〜34間においてカム回転軸24の中心線45からの寸法を異なる値に設定することにより、選択溝3iによってサーマルヘッド1のプラテンローラー2に対する相対位置であるヘッド位置を変更することができる。すなわち、位置決めピン3が挿入される溝31〜34に相当する複数種のヘッド位置が予め準備されており、これら複数種のヘッド位置のうち選択溝3iに対応するヘッド位置が選択ヘッド位置して設定される。
【0031】
図6〜図11はサーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。理想的には、印画紙16に対して印画処理を行う場合、図6に示すように、プラテンローラー2のプラテン中心線41に、サーマルヘッド1の発熱体1aの発熱体中心線42が重なるように位置関係で印画処理を行うことが望ましい。
【0032】
図7は図6の印画中心点36aの近傍領域50の拡大して示す説明図である。同図に示すように、印画紙16の印画表面における印画領域36の印画中心点36a上にプラテン中心線41及び発熱体1aの発熱体中心線42とが一致しており、発熱体1aの最適感応位置40も発熱体中心線42上に存在し、プラテンローラー2とサーマルヘッド1との位置関係が理想的な状態となっている。
【0033】
しかしながら、図8に示すように、サーマルヘッド1はホルダー回転軸13を中心にY方向に回転運動をするため、印画紙16の印画紙厚d1の影響によって印画紙16に対して少し傾きが生じる。
【0034】
その結果、発熱体1aの中心と印画紙16の表面とが接する印画中心点36aを通過する垂線を印画紙垂直線44とすると、印画紙垂直線44とプラテン中心線41との間にはズレ量L1が生じる。そして、このズレ量L1に伴い、発熱体1aの発熱体中心線42も傾くため印画紙垂直線44との間にズレ角θ1が生じる。
【0035】
さらに、図9に示すように、印画紙16の印画紙厚d2(>d1)になると、印画紙垂直線44とプラテン中心線41との間にはズレ量L2(>L1)が生じる。そして、このズレ量L2に伴い、発熱体1aの発熱体中心線42と印画紙垂直線44との間にズレ角が生じる。
【0036】
図10は図9の印画中心点36aの近傍領域50を拡大して示す説明図である。同図に示すように、プラテン中心線41と印画紙垂直線44とのズレ量L2によって、発熱体中心線42上に存在する最適感応位置40の印画紙垂直線44からのズレ角θ2が生じている。また、最適感応位置40のプラテン中心線41からのズレ量L3(<L2)が生じることになる。ここで、ズレ量L2とズレ量L3との差をΔLとする。
【0037】
以下、ズレ量L2、L3、ズレ角θ2の関係について述べる。サーマルヘッド1の発熱体1aの中心点の回転軸(ホルダー回転軸13に相当)からの距離をRとすると、ズレ角θ2は{θ2=sin-1(d2/R)}となり、ズレ量L2は{L2=R−(R・cosθ2)}となる。一方、発熱体1aの曲率半径をRhとすると、ΔLは{ΔL=sinθ2・Rh}で求まり、ズレ量L3は{L3=L2−ΔL}で求まる。
【0038】
したがって、図11に示すように、サーマルヘッド1のプラテンローラー2に対する位置を印画方向Xに沿ってズレ量L3分補正することにより、プラテン中心線41と印画紙垂直線44のズレ量はΔLとなり、印画紙垂直線44からズレ角θ2の発熱体中心線42上に存在する発熱体1aの最適感応位置40をプラテン中心線41上に位置させることにより、印画紙16の印画紙厚d2によって生じたズレ量L2、ズレ角θ2による、発熱体1aの最適感応位置40のプラテン中心線41からのズレ量L3を補正することができる。
【0039】
例えば、溝31の寸法DAと溝32の寸法DBとの差がズレ量L3であり、印画紙厚d2の印画紙16の印画時に溝31を選択溝3iとして位置決めした場合に図9及び図10で示すズレ(L2,θ2)が想定される場合、溝32を選択溝3iとして位置決めすれば、図11に示すように、発熱体1aの最適感応位置40をプラテン中心線41上に位置させることができるため、印画紙厚d2の印画紙16に適した印画処理が可能となる。
【0040】
<実施の形態2>
図12はこの発明の実施の形態2であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。図12はサーマルヘッドの位置決め後の状態を示している。同図に示すように、カム4の軸心をプラテンローラー2のプラテンローラー回転軸25に一致させている。
【0041】
図13はプラテンローラー2、カム4、及びプラテンローラー回転軸との関係を模式的に示す断面図である。同図に示すように、プラテンローラー回転軸25を内輪部としてカム用軸受け47が設けられ、カム用軸受け47の外輪部にカム4が設けられる。一方、フレーム20に設けられたプラテンローラー用軸受け48の内輪部にプラテンローラー回転軸25が挿入される。
【0042】
したがって、カム4とプラテンローラー2とは軸心は共にプラテンローラー回転軸25する点で一致するが、プラテンローラー回転軸25によって回転動作が実行されるのはプラテンローラー2のみであり、カム4に関してはプラテンローラー回転軸25は位置決め用にすぎない。なお、他の構成は図1〜図3で示した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
上記構造の実施の形態2のプリンタ装置は、カム4の中心をプラテンローラー2のプラテンローラー回転軸25に一致させることにより、プラテンローラ2とカム4との相対位置精度を向上に伴い、カム4を用いたサーマルヘッド1のヘッド位置設定における位置精度の向上を実施の形態1以上に図ることができる。
【0044】
さらに、実施の形態2では、プラテンローラー回転軸25をカム4の軸心としても利用することにより、必要な部品をカム用軸受け47のみで済ますことができる。したがたって、図3で示す実施の形態1の構成のように、フレーム20(20a)上にカム4(4a)を装着するための種々の部品を省略することにより、部品数を少なくすることができる効果も奏する。
【0045】
このように、実施の形態2のプリンタ装置は、実施の形態1に比べ、部品数削減に伴ういコスト低減を図るとともに、カム4とプラテンローラー2との軸心を一致させることにより、プラテンローラ2とカム4との相対位置精度を向上に伴い、カム4を用いたサーマルヘッド1のヘッド位置設定における位置精度の向上を図ることができる。
【0046】
<実施の形態3>
図14はこの発明の実施の形態3であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。図14はサーマルヘッドの位置決め後の状態を示している。
【0047】
同図に示すように、実施の形態3は、実施の形態1の構成に加え、ヘッド押しバネ15に付随して、高さ調整部材26及びバネ抑え部材27を設けた点、カム4に代えてカム19を設けた点が異なる。カム19は一方主面にはカム4と同様に溝31〜34を設けているが、他方主面には高さ調整部材26の高さ調整用の溝を設けている点が異なる。
【0048】
図15は第1の押圧力設定時におけるカム19の他方主面方向からみたカム19及び高さ調整部材26の構成を模式的に示す説明図である。図16は図15で示す状態時におけるカム4及び高さ調整部材26等の断面構造を模式的に示す断面図である。
【0049】
図15及び図16に示すように、カム19の他方正面にはカム用回転軸49を中心とした楕円状の裏面溝35が設けられている。一方、高さ調整部材26は、カム19のカム用回転軸49に転結される調整部材用回転軸28を有している。また、高さ調整部材26の下部に可動領域30が設けられており、高さ調整部材用回転軸28の可動領域30内における位置は任意に移動可能となっている。したがって、可動領域30内における高さ調整部材用回転軸28の位置によって、高さ調整部材26のカム中心平行線46からの高さが変化する。
【0050】
高さ調整部材26の中央部に高さ調整用ピン29が設けられており、この高さ調整用ピン29は裏面溝35内において移動可能に裏面溝35内に挿入されている。
【0051】
このような構成において、図15及び図16に示すように、一方主面側の溝31がカム19の最上部に位置し、この溝31に位置決めピン3が挿入されている状態時において、他方主面側の裏面溝35の長軸方向がカム中心平行線46に対して垂直方向の位置関係を呈する。その結果、高さ調整部材用回転軸28は可動領域30の最下部近傍に位置することになり、カム中心平行線46から高さ調整用ピン29の最上部までの距離が最長の高さDDとなるため、高さ調整部材26はバネ抑え部材27を最も高く設定することになる。したがって、第1の押圧力設定時は、ヘッド押しバネ15の弾性力によって比較的小さい押圧力でホルダー5を介してサーマルヘッド1を押圧することになる。
【0052】
なお、図16に示すように、裏面溝35はカム4の外側の面に設けられ、バネ抑え部材27は、カム4の外側から内側にかけて設けられ、バネ抑え部材27下に設けられるヘッド押しバネ15は、ホルダー5上の所定の押圧領域(図3の押圧領域39に相当)上に配置される。
【0053】
図17は第2の押圧力設定時におけるカム19の他方主面方向からみたカム19及び高さ調整部材26の構成を模式的に示す説明図である。
【0054】
同図に示すように、溝32がカム19の最上部に位置するとき、すなわち、溝32に位置決めピン3が挿入されている状態時において、裏面溝35の短軸方向がカム中心平行線46に対して水力方向の位置関係を呈する。その結果、高さ調整部材用回転軸28は可動領域30の最上部近傍に位置することになり、カム中心平行線46から高さ調整用ピン29の中心までの距離が最短の高さDEとなるため、高さ調整部材26はバネ抑え部材27の形成高さを最も低く設定することになる。したがって、第2の押圧力設定時は、ヘッド押しバネ15の弾性力によって最大の押圧力でホルダー5を介してサーマルヘッド1を押圧することになる。
【0055】
このように、実施の形態3では、サーマルヘッド位置決め機構の一部として、ヘッド押しバネ15、カム19、高さ調整部材26及びバネ抑え部材27等から押圧部をさらに構成している。この押圧部は、高さ調整部材26により決定される複数種のバネ抑え部材27の形成高さに対応して複数種の押圧力が設定可能であり、選択溝3iに対応したバネ抑え部材27の形成高さに基づき一の押圧力が選択押圧力として選択される。例えば、図15及び図16の例では第1の押圧力が選択押圧力となり、図17の例では第2の押圧力が選択押圧力となる。このように、選択溝3iによって決定される選択押圧力でヘッド押しバネ15によりサーマルヘッド1を押圧させることができる。
【0056】
このように、実施の形態3のプリンタ装置では、サーマルヘッド位置決め時に、サーマルヘッドの選択ヘッド位置と共に、サーマルヘッド1に対する選択押圧力も設定することができるため、実施の形態1の効果に加え、印画紙16の特性に最適なサーマルヘッド1のヘッド圧を設定することができ、より精度の良い印画処理が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態1であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。
【図2】実施の形態1のプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。
【図3】実施の形態1のサーマルヘッドの位置決め後の状態を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1のプリンタ装置のサーマルヘッド位置決め動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1のカムに形成される複数の溝の寸法を示す説明図である。
【図6】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図7】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図8】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図9】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図10】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図11】サーマルヘッド位置決め変更の効果を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。
【図13】実施の形態2におけるプラテンローラー、カム、及びプラテンローラー回転軸との関係を模式的に示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3であるプリンタ装置の構成を模式的に示した説明図である。
【図15】実施の形態3のプリンタ装置におけるカム及び高さ調整部材の構成(第1の押圧力設定時)を模式的に示す説明図である。
【図16】図15で示す状態時におけるカム及び高さ調整部材周辺の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図17】実施の形態3のプリンタ装置におけるカム及び高さ調整部材の構成(第2の押圧力設定時)を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 サーマルヘッド、2 プラテンローラー、3 位置決めピン、4,19 カム、5 ホルダー、6〜8 ギヤ、9 ウォームギヤ、10 モーター、11 バネ、12 ストッパー、13 ホルダー回転軸、14 ホルダー支持シャフト、15 ヘッド押しバネ、16 印画紙、17 制御部、18 印画紙特性検出部、23,25 プラテンローラー回転軸、26 高さ調整部材、27 バネ抑え部材、31〜34 溝、35 裏面溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドと、
印画処理時に印画紙を前記サーマルヘッドとの間に挟んで支持する印画紙支持部材と、
前記サーマルヘッドの前記印画紙支持部材に対する相対位置によって規定される、複数種のヘッド位置が設定可能なサーマルヘッド位置決め機構と、
前記印画紙の特性を検出する印画紙特性検出部と、
前記印画紙特性検出部により検出された前記印画紙の特性に基づき前記複数種のヘッド位置のうち一のヘッド位置を選択ヘッド位置として選択し、前記サーマルヘッド位置決め機構を駆動制御して、前記サーマルヘッドを前記選択ヘッド位置に設定させる制御部と、
を備えるプリンタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタ装置であって、
前記サーマルヘッドは所定箇所に位置決めピンを有し、
前記印画紙支持部材はプラテンローラーを含み、
前記サーマルヘッド位置決め機構は、
外周にそって前記位置決めピンが挿入可能な複数の溝が設けられたカムを含み、前記複数の溝のいずれかに前記位置決めピンを挿入することにより、前記複数種のヘッド位置のいずれかが設定される、
プリンタ装置。
【請求項3】
請求項2記載のプリンタ装置であって、
前記カムの軸心を前記プラテンローラの回転軸に一致させたことを特徴とする、
プリンタ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載のプリンタ装置であって、
前記サーマルヘッド位置決め機構は、複数種の押圧力で前記サーマルヘッドを押圧可能な押圧部をさらに含み、
前記制御部は、
前記印画紙の特性に基づき前記複数種の押圧力のうち一の押圧力を選択押圧力として選択し、前記サーマルヘッド位置決め機構を駆動制御して、前記サーマルヘッドを前記選択押圧力で押圧させる、
プリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−272603(P2006−272603A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91359(P2005−91359)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】