説明

プリンタ

【課題】サーマルヘッドの調整を容易にして組立効率を向上させることができるプリンタを提供すること。
【解決手段】本発明のプリンタ1においては記録紙2の搬送方向と直交方向に配列された発熱素子13を有するラインサーマルヘッド11を備える複数のヘッドユニット10が記録紙の搬送方向に配列される。ヘッドユニット10は記録紙2の搬送方向と発熱素子13の配列方向とのなす角を調整する角度調整手段と発熱素子13の配列方向にサーマルヘッド11をスライド移動させる位置調整手段とを有する。角度調整手段の角度調整ねじ41および位置調整手段の位置調整ねじ51はサーマルヘッド11の調整者と対向するヘッドユニット10の外面に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに係り、特に、複数の記録ユニットにそれぞれラインサーマルヘッドが備えられたサーマル型プリンタに好適に利用できるプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、カラー印刷を行なうサーマル型プリンタは複数のヘッドユニットを備えている。このヘッドユニットには記録紙の搬送方向と直交する方向(記録紙の幅方向)に発熱素子が配列されたラインサーマルヘッドが取付けられている。
【0003】
プリンタに複数のヘッドユニットを組み付けた際、印画品質を向上させるため、発熱素子の配列方向を記録紙の幅方向と平行にするとともに、発熱素子の位置を記録紙の幅方向に揃える必要がある。そのため、従来のプリンタにおいては、サーマルヘッドの角度調整手段および位置調整手段がヘッドユニットに設けられており、角度調整ねじおよび位置調整ねじによってサーマルヘッドの角度および位置が調整されていた(特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−254715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーマルヘッドの調整機構については、角度調整ねじおよび位置調整ねじがヘッドユニットの配列により隠れてしまい、それら角度調整ねじおよび位置調整ねじの操作を行なうことが困難であるという問題があった。角度調整ねじおよび位置調整ねじの種類が異なっているとそれらの操作性はさらに悪化するという問題もあった。
【0006】
また、サーマルヘッドを調整した後に角度調整ねじおよび位置調整ねじの操作を誤って操作してしまうことがあり、再調整を余儀なくされるという問題があった。
【0007】
ただし、複雑な機構の角度調整手段および位置調整手段を形成してしまうと、プリンタの製造コストが増大するとともに、角度調整手段および位置調整手段の故障も増えてしまう原因ともなる。
【0008】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドの調整を容易にして組立効率を向上させることができるプリンタを提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明のプリンタは、その第1の態様として、記録紙の搬送方向と直交する方向に配列される発熱素子を有するラインサーマルヘッドと、ラインサーマルヘッドを固定するために発熱素子の配列方向に伸びて形成されている可動板と、記録紙の搬送方向と発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる方向および発熱素子の配列方向に可動板を移動自在に保持するために発熱素子の配列方向に伸びて形成されている保持板と、ラインサーマルヘッドが固定された可動板の回転移動により記録紙の搬送方向と発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる角度調整機構を操作する角度調整ねじを有する角度調整手段と、ラインサーマルヘッドが固定された可動板を発熱素子の配列方向にスライド移動させる位置調整機構を操作する位置調整ねじを有する位置調整手段とを有する複数のヘッドユニットが記録紙の搬送方向に配列されており、角度調整ねじおよび位置調整ねじは、ヘッドユニットの外面であって角度調整ねじおよび位置調整ねじを操作する調整者と対向する面にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の第1の態様のプリンタによれば、サーマルヘッドの調整者が作業しやすい位置に角度調整ねじおよび位置調整ねじが配置されているので、ヘッドユニット組付後に行なうサーマルヘッドの調整を容易かつ瞬時に行なうことができる。
【0011】
本発明の第2の態様のプリンタは、第1の態様のプリンタにおいて、ヘッドユニットは、角度調整手段の角度調整機構および位置調整手段の位置調整機構を不動にするロック手段を有していることを特徴としている。
【0012】
本発明の第2の態様のプリンタによれば、サーマルヘッドの調整後にサーマルヘッドが誤って移動してしまうことを防止することができるので、サーマルヘッドの再調整が不要になる。
【0013】
本発明の第3の態様のプリンタは、第1または第2の態様のプリンタにおいて、角度調整ねじおよび位置調整ねじは、同じ調整工具により操作される形状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
本発明の第3の態様のプリンタによれば、調整工具を変更することなく角度調整ねじおよび位置調整ねじの操作を行なうことができるので、サーマルヘッドの調整効率が向上する。
【0015】
本発明の第4の態様のプリンタは、第1から第3のいずれか1の態様のプリンタにおいて、可動板は発熱素子の配列方向の両端において発熱素子の配列方向に伸びた切欠き部または長穴をそれぞれ有しており、保持板は発熱素子の配列方向の両端において角度調整ねじに連結した偏心軸および係合部を有する支軸を有しており、支軸はその係合部を係合させながら可動板の一端に形成された切欠き部または長穴に挿通しており、偏心軸は可動板の他端に形成された切欠き部または長穴に挿通しており、角度調整ねじは角度調整ねじを回転させて連結した偏心軸を回転させることにより支軸を中心として可動板を記録紙の搬送方向と発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる方向に移動させることを特徴としている。
【0016】
本発明の第4の態様のプリンタによれば、角度調整ねじを操作して偏心軸を回動させることによって可動板が支軸を中心にして回転するため、簡易な角度調整機構によりサーマルヘッドの角度調整を行なうことができる。また、切欠き部および長穴が発熱素子の配列方向に伸びているので、支軸および偏心軸が可動板に係る発熱素子の配列方向へのスライド移動を阻害することを防止することができる。
【0017】
本発明の第5の態様のプリンタは、第4の態様のプリンタにおいて、位置調整ねじは、可動板と保持板に固定もしくは係合している補助板とを発熱素子の配列方向に螺合しており、位置調整ねじの回転により可動板を発熱素子の配列方向に移動させることを特徴としている。
【0018】
本発明の第5の態様のプリンタによれば、位置調整ねじを操作して可動板と補助板との位置関係を変更することにより可動板の両端の長穴または切欠き部を利用して可動板をスライド移動させることができるので、簡易な位置調整機構によりサーマルヘッドの位置調整を行なうことができる。
【0019】
本発明の第6の態様のプリンタは、第4または第5の態様のプリンタにおいて、保持板は、係合部を有する補助軸を偏心軸の周辺に有しており、可動板は、補助軸の軸径よりも大きな径を有する大穴を補助軸の対向位置に有しており、補助軸は、その係合部を係合させながら大穴に挿通していることを特徴としている。
【0020】
本発明の第6の態様のプリンタによれば、可動板の両端に支軸および補助軸が係合しているので、可動板を安定して保持およびスライド移動させることができる。また、補助軸に挿通される大穴が補助軸の軸径よりも大きな直径を有しているので、補助軸が大穴に接触して可動板の回転移動およびスライド移動を制限してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプリンタによれば、ヘッドユニット組付後に必ず行なわれるサーマルヘッドの調整を容易かつ瞬時に行なうことができるので、プリンタの組立効率が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1から図7を用いて、本発明のプリンタをその一実施形態により説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のプリンタ1を筐体内部の側方から示した概略側面図である。本実施形態のプリンタ1は、図1に示すように、略直方形状の筐体(図示せず)の内部に、記録紙2、1個の供給ローラ3、4個のプラテンローラ4、複数の搬送ローラ5、インクリボン6aを有する4個の記録ユニット6および1個のカッター7を備えている。
【0024】
記録紙2は長尺状のロール紙であり、駆動モータ(図示せず)に連結した供給ローラ3に巻き付けられている。プラテンローラ4は記録紙2の搬送経路に配列されており、それら4個のプラテンローラ4の対向位置に記録紙2を挟んで4個の記録ユニット6がそれぞれ配設されている。記録紙2を搬送する搬送ローラ5は配列した4個のプラテンローラ4に対して記録紙2の搬送経路の上流側および下流側に適宜配設されている。カッター7は筐体外部に形成された排紙トレイ8の周辺に配設されており、記録紙2を所定の長さに切断するように形成されている。
【0025】
図2は本実施形態のヘッドユニット10をラインサーマルヘッド11側から示した斜視図であり、図3は図2の分解斜視図である。また、図4は本実施形態のヘッドユニット10の部分拡大斜視図であり、図5は図4の分解斜視図である。本実施形態のヘッドユニット10は、図1に示すように、4個の記録ユニット6における記録紙2との対向位置にそれぞれ1個ずつ配設されている。また、本実施形態のヘッドユニット10は、図2および図3に示すように、ラインサーマルヘッド11、可動板20、保持板30、角度調整手段40、位置調整手段50およびロック手段60を備えている。
【0026】
ラインサーマルヘッド11は、図2および図3に示すように、最前部にヘッド本体12および発熱素子13を有している。ヘッド本体12は略直方形状の筐体を有しており、その筐体における記録紙2との対向面において記録紙2の搬送方向と直交する方向(記録紙2の幅方向)に複数の発熱素子13が配列されている。
【0027】
可動板20はラインサーマルヘッド11を支承する部材であり、発熱素子13の配列方向に伸びる略矩形平板状に形成されており、L字状の保護板21を介してその可動板20にラインサーマルヘッド11が固定されている。この可動板20における保護板21から外れた位置には、図3に示すように、切欠き部22、長穴23および大穴25が形成されている。切欠き部22は発熱素子13の配列方向の一端(図2および図3においては左端)において発熱素子13の配列方向に伸びている。長穴23は、図2から図5に示すように、その他端(図2から図5においては右端)において、切欠き部22と同様、発熱素子13の配列方向に伸びている。大穴25は、長穴23の周辺(図2から図5においては長穴23の左側)において、挿入される補助軸36の軸径よりも大きな直径を有して形成されている。
【0028】
また、長穴23が形成された可動板20の端部にはラインサーマルヘッド11が設けられている方向に伸びる平板状の側端部24が折り曲げ形成されている。この側端部24の中心付近には、位置調整手段50の位置調整ねじ51が挿通されている。
【0029】
保持板30は、ラインサーマルヘッド11が固定された可動板20を支承する部材であり、可動板20を記録紙2の搬送方向と発熱素子13の配列方向とのなす角を変化させる方向と、可動板20を発熱素子13の配列方向とに移動自在に保持するように形成されている。具体的には、本実施形態の保持板30は、図3に示すように、それぞれ矩形平板状に形成された保持部31、側端部32および保護部33を有して形成されている。保持部31は可動板20との対向位置において発熱素子13の配列方向に伸びて形成されている。
【0030】
また、保持部31には、図3および図5に示すように、可動板20と対向する方向に延在する支軸34、補助軸36および偏心軸35が挿通して支持されている。支軸34は、図3に示すように切欠き部22側に切欠き部22の幅よりも大きな傘部(係合部)34aを有しており、図2に示すようにその傘部34aを切欠き部22の外側に係合させて切欠き部22に挿通している。補助軸36は、図5に示すように、大穴25側に大穴25の幅よりも大きな傘部(係合部)36aを有しており、その傘部36aを大穴25の外側に係合させて大穴25に挿通している。偏心軸35はクランク状に形成されており、図5に示すように偏心回転する先端部が長穴23に挿通している。また、偏心軸35は、図5に示すように、ラインサーマルヘッド11が設けられている方向と反対側の端部に傘歯35aを有している。
【0031】
保持板30の保護部31の端縁部からは、図4および図7に示すように、保護部33が折り曲げ形成されている。この保護部33は、組立てられた際に保護板21と対向するようになる。また、保護部33における偏芯軸35が設置される端部には、図4および図7に示すように、保持板30の側端部32を形成する端部ユニット32aがねじ32bをもって固着される。この端部ユニット32aは側端部32を形成する平板状の基部32cから折り曲げ部32d、32eを順に折り曲げ形成したものである。この側端部32は、図4および図5に示すように、保持部31の偏心軸35側の端部から可動板20の側端部24と反対方向に伸びるように配置される。そして、その側端部32には偏心軸35に連結した角度調整ねじ41が挿通している。
【0032】
角度調整手段40は、ラインサーマルヘッド11に対して記録紙2の搬送方向と発熱素子13の配列方向とのなす角を変化させる手段であり、可動板20をわずかに回転移動させることにより記録紙2の搬送方向と発熱素子13の配列方向とのなす角を変化させる角度調整機構(図番なし)と、その角度調整機構を操作する角度調整ねじ41とを有している。本実施形態の角度調整機構は、図2から図5に示すように、支軸34、切欠き部22、偏心軸35および長穴23からなる。また、角度調整ねじ41は、図4および図5に示すように、偏心軸35側に傘歯41aを有するマイナスねじとなっており、その傘歯41aが偏心軸35の傘歯35aと係合している。
【0033】
位置調整手段50は、可動板20を発熱素子13の配列方向に移動させる手段であり、ラインサーマルヘッド11が固定された可動板20を発熱素子13の配列方向にスライド移動させる位置調整機構(図番なし)と、その位置調整機構を操作する位置調整ねじ51とを有している。本実施形態の位置調整機構は、図2および図5に示すように、前述した支軸34、切欠き部22、補助軸36、大穴25、偏心軸35、長穴23の他に、補助板53およびポスト52からなる。
【0034】
補助板53は、図5に示すように、L字形の板状に形成されており、可動板20の側端部24の付近において可動板20のL字形状に合わせて配置されている。この補助板53における可動板20との対向部53dには、発熱素子13の配列方向に伸びるポスト用長穴53aと、発熱素子13の配列方向と直交方向に伸びる補助長穴53bとを有している。
【0035】
2本のポスト52は、図5に示すように、円筒状に形成されている。ポスト52の一端は可動板20の長穴23の周辺に固定されている。ポスト52の他端は雄ねじが形成されており、その雄ねじが補助板53のポスト用長穴53aを挿通してちょうナット54と螺合されている。ちょうナット54の締め具合は補助板53が発熱素子13の配列方向にスライド移動自在になるように調整されている。
【0036】
そして、大穴25に係合した補助軸36は、図5に示すように、その傘部36aの中心から更に外方に延在する係合ピン36bを有している。この係合ピン36bは、図4に示すように、補助板53の補助長穴53bに挿通されている。
【0037】
また、位置調整ねじ51は、補助板53の対向部53dからラインサーマルヘッド11が設けられた方向に直角に折り曲げ形成された側端部53cに対して発熱素子13の配列方向に回軸自在に挿通しており、位置調整ねじ51の回動操作なしに軸方向に移動しないように取付けられているとともに、そのねじ部を可動板20の側端部24に螺合させている。本実施形態の位置調整ねじ51としてはマイナスねじが選択されている。ここで、図4および図5に示すように、補助板53が保持板30に挿通した補助軸36の係合ピン36bに係合しているため、可動板20が位置調整ねじ51の締緩操作により発熱素子13の配列方向に移動するようになっている。
【0038】
図6は、ヘッドユニット10の側面図を示している。図6に示すように、角度調整ねじ41および位置調整ねじ51は、可動板20の側端部24および保持板30の側端部32、すなわちヘッドユニット10の側面に配置されている。ヘッドユニット10の側面はプリンタ1の筐体を開けたときに角度調整ねじ41および位置調整ねじ51を操作する調整者と対向する外面となる。
【0039】
図7はロック手段およびその周辺を示す分解斜視図である。ロック手段60は、図5および図7に示すように、ロックレバー61、ラック62、タップ63および補助軸36からなる。ロックレバー61は保持部31の内側に回動ピン61aをもって回動自在に取付けられており、同じく保持部31の内側に設けられた発熱素子13の配列方向に伸びたラック62に連結ピン62bをもって連結している。ラック62はピ二オンを有するタップ63と噛合しており、ロックレバー61の回動操作により補助軸36に取付けられたタップ63が回転する。タップ63の内側に形成された雌ねじ部63aは補助軸36の途中に形成された雄ねじ部36cと螺合している。補助軸36の内側端部の矩形軸部36dが端部ユニット32aの折り曲げ部32eに形成された回り止め溝32fに係合されて、補助軸36が回転しないように軸方向に移動自在にされている。側端部32に形成した切欠き部32gから外部に露出しているロックレバー61を回動させて締めたり弛めたりすると、補助軸36が軸方向に移動して補助軸36は、傘部36aとタップ63とによって可動板20および保持板30を挟持して締めつけ、可動板20を不動にさせたり移動自在にさせたりする。言い換えると、ロックレバー61の操作により、角度調整手段40の角度調整機構および位置調整手段50の位置調整機構が不動状態または可動状態になる。
【0040】
次に、図1から図7を用いて、本実施形態のプリンタ1の作用を説明する。
【0041】
本実施形態のプリンタ1においては、図1に示すように、プリンタ1の筐体の内部に、記録紙2、1個の供給ローラ3、4個のプラテンローラ4、複数の搬送ローラ5、4個の記録ユニット6および1個のカッター7が組み込まれる。そして、プリンタ1の組立工程が終了すると、記録ユニット6に取付けられたラインサーマルヘッド11の角度調整および位置調整が行なわれる。このとき、図6に示すように、角度調整ねじ41および位置調整ねじ51が可動板20の側端部24および保持板30の側端部32、すなわちラインサーマルヘッド11の調整者が対向するヘッドユニット10の外面に配置されているため、ラインサーマルヘッド11の調整者が角度調整ねじ41および位置調整ねじ51の操作をしやすくなり、ラインサーマルヘッド11の調整を容易かつ瞬時に行なうことができる。
【0042】
また、図6に示すように、角度調整ねじ41および位置調整ねじ51は、いずれもマイナスねじとなっている。そのため、マイナスドライバのみによって角度調整ねじ41および位置調整ねじ51を操作することができるので、調整工具を変更することなく角度調整ねじ41および位置調整ねじ51の操作を行なうことができ、ラインサーマルヘッド11の調整効率が向上する。
【0043】
図4に示すように、角度調整ねじ41を操作すると、角度調整ねじ41に係合した偏心軸35が回動し、可動板20が発熱素子13の配列方向の直交方向に移動する。ここで、図2に示すように、可動板20の一端において発熱素子13の配列方向に形成された切欠き部22に支軸34が挿通しているため、可動板20は支軸34を中心にして回転する。このように、本実施形態においては、簡易な角度調整機構によりラインサーマルヘッド11の角度調整を行なうことができる。
【0044】
なお、図3および図4に示すように、可動部の切欠き部22および長穴23が発熱素子13の配列方向に伸びているので、支軸34および偏心軸35が可動板20に係る発熱素子13の配列方向へのスライド移動を制限してしまうことを防止することができる。
【0045】
また、図2および図5に示すように、保持板30に貫通した支軸34および補助軸36はそれらの傘部34a、36aを用いて可動板20を保持し、保持板30に貫通した支軸34および偏心軸35は発熱素子13の配列方向に伸びて形成された切欠き部22および長穴23に挿通している。そして、補助軸36の先端から伸びる係合ピン36bが発熱素子13の配列方向と直交方向に伸びている補助板53の補助長穴53bに係合している。そのため、図4に示すように、位置調整ねじ51を操作すると、補助軸36を介して保持板30に係合した補助板53を基準にして可動板20が発熱素子13の配列方向にスライド移動する。このように、保持板30に係合した補助板53と可動板20との位置関係を変更することにより、可動板20をスライド移動させることができるので、簡易な位置調整機構によりラインサーマルヘッド11の位置調整を行なうことができる。
【0046】
特に、本実施形態においては、図2および図5に示すように、可動板20の両端に支軸34および補助軸36が係合しているので、可動板20を安定して保持およびスライド移動させることができる。また、図5に示すように、補助軸36に挿通される大穴25が補助軸36の軸径よりも大きな直径を有しているので、補助軸36が大穴25に接触して可動板20の回転移動およびスライド移動を制限してしまうこともない。
【0047】
そして、これら角度調整ねじ41および位置調整ねじ51の操作によりヘッドユニット10の調整が終了すると、4個全ての記録ユニット6が記録紙2の所定の位置に印刷することができるようになるので、プリンタ1は所望する印画品質を持って記録紙2に記録をすることができる。ただし、角度調整ねじ41または位置調整ねじ51を誤操作したり、外力によりラインサーマルヘッド11の位置が狂ってしまうと、印画品質は低下してしまう。
【0048】
そこで、本実施形態のヘッドユニット10は、角度調整手段40の角度調整機構および位置調整手段50の位置調整機構を不動にするロック手段60を有している。図5および図7に示すように、ロック手段60のロックレバー61を回動操作して、ロックレバー61が起立した状態にすると、ラック62およびタップ63を介して補助軸36が軸方向に移動して可動板20を保持板30側に締め付ける。そのため、ラインサーマルヘッド11の調整後にラインサーマルヘッド11が誤って移動してしまうことを防止することができるので、ラインサーマルヘッド11の再調整が不要になる。ロックレバー61を倒すと、ロックが解除されてラインサーマルヘッド11の角度調整および位置調整が可能になる。
【0049】
すなわち、本実施形態のプリンタ1によれば、ヘッドユニット10の組付後に必ず行なわれるラインサーマルヘッド11の調整を容易かつ瞬時に行なうことができるので、プリンタ1の組立効率が向上するという作用効果を生じる。
【0050】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態の可動板20の切欠き部22は取付容易性を向上させるために採用されているが、他の実施形態においては、切欠き部22の代わりに発熱素子13の配列方向に伸びる長穴23を採用してもよい。
【0052】
また、本実施形態においては、支軸34、補助軸36および偏心軸35を用いているが、他の実施形態においては、支軸34および偏心軸35のみを用いてもよい。この際、支軸34のみでなく、偏心軸35にも傘部(図示せず)などの係合部を形成して可動部を保持することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態のプリンタを筐体内部の側方から示した概略側面図
【図2】本実施形態のヘッドユニットをラインサーマルヘッド側から示した斜視図
【図3】図2の分解斜視図
【図4】本実施形態のヘッドユニットを示す部分拡大斜視図
【図5】図4の分解斜視図
【図6】本実施形態のヘッドユニットを側方から示す側面図
【図7】本実施形態のロック手段およびその周辺を示す分解斜視図
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ
2 記録紙
6 記録ユニット
10 ヘッドユニット
13 発熱素子
20 可動板
22 切欠き部
23 長穴
24 (可動板の)側端部
25 大穴
30 保持板
31 保持部
32 (保持板の)側端部
34 支軸
35 偏心軸
36 補助軸
41 角度調整ねじ
51 位置調整ねじ
61 ロックレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙の搬送方向と直交する方向に配列される発熱素子を有するラインサーマルヘッドと、
前記ラインサーマルヘッドを固定するために前記発熱素子の配列方向に伸びて形成されている可動板と、
前記記録紙の搬送方向と前記発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる方向および前記発熱素子の配列方向に前記可動板を移動自在に保持するために前記発熱素子の配列方向に伸びて形成されている保持板と、
前記ラインサーマルヘッドが固定された前記可動板の回転移動により前記記録紙の搬送方向と前記発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる角度調整機構を操作する角度調整ねじを有する角度調整手段と、
前記ラインサーマルヘッドが固定された前記可動板を前記発熱素子の配列方向にスライド移動させる位置調整機構を操作する位置調整ねじを有する位置調整手段と
を有する複数のヘッドユニットが前記記録紙の搬送方向に配列されており、
前記角度調整ねじおよび前記位置調整ねじは、前記ヘッドユニットの外面であって前記角度調整ねじおよび前記位置調整ねじを操作する調整者と対向する面にそれぞれ配置されている
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記ヘッドユニットは、前記角度調整手段の角度調整機構および前記位置調整手段の位置調整機構を不動にするロック手段を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記角度調整ねじおよび前記位置調整ねじは、同じ調整工具により操作される形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記可動板は、前記発熱素子の配列方向の両端において前記発熱素子の配列方向に伸びた切欠き部または長穴をそれぞれ有しており、
前記保持板は、前記発熱素子の配列方向の両端において、前記角度調整ねじに連結した偏心軸および係合部を有する支軸を有しており、
前記支軸は、その係合部を係合させながら前記可動板の一端に形成された切欠き部または長穴に挿通しており、
前記偏心軸は、前記可動板の他端に形成された切欠き部または長穴に挿通しており、
前記角度調整ねじは、前記角度調整ねじを回転させて連結した前記偏心軸を回転させることにより、前記支軸を中心として前記可動板を前記記録紙の搬送方向と前記発熱素子の配列方向とのなす角を変化させる方向に移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記位置調整ねじは、前記可動板と前記保持板に固定もしくは係合している補助板とを前記発熱素子の配列方向に螺合しており、前記位置調整ねじの回転により前記可動板を前記発熱素子の配列方向に移動させる
ことを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記保持板は、係合部を有する補助軸を前記偏心軸の周辺に有しており、
前記可動板は、前記補助軸の軸径よりも大きな径を有する大穴を前記補助軸の対向位置に有しており、
前記補助軸は、その係合部を係合させながら前記大穴に挿通している
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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