説明

プリンタ

【課題】例えばレシートとジャーナルのような2つの媒体を同時にプリントすることができ、これによりレシートおよびジャーナルの作成に要する時間を短縮して業務効率の向上が図れるプリンタを提供する。
【解決手段】両面サーマル用紙30を格納部Aから引き出し、その両面サーマル用紙30の表面30aに第1サーマルヘッド31によりレシート用のプリントデータをプリントするとともに、同じプリントデータを第2サーマルヘッド32により両面サーマル用紙30の裏面30bにプリントする。そして、プリント後の両面サーマル用紙30の表面30aを剥離部材33によって剥離し、剥離した表面30aのプリント済み領域をカットする。このカット片をレシートとして排出する。剥離により残る裏面はジャーナルとして回収部Bに巻き取り回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント用媒体にデータをプリントして例えばレシートおよびジャーナルを作成するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
POS端末などを利用した会計処理では、商品販売データをプリントしたレシートを発行して購入者に提供するとともに、同じ商品販売データをプリントしたジャーナルを店舗側に保存することが必須の業務となる。
【0003】
このようなプリンタの例として、感熱層が形成されたサーマル用紙を用いるサーマルプリンタが知られている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レシートおよびジャーナルを1台のプリンタで作成するためには、レシートとジャーナルを交互にプリントしなければならない。このため、レシートおよびジャーナルの作成に時間がかかり、業務効率の低下を招いてしまう。
【0005】
この発明は、上記の事情を考慮したもので、例えばレシートとジャーナルのような2つの媒体を同時にプリントすることができ、これによりレシートおよびジャーナルの作成に要する時間を短縮して業務効率の向上が図れるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明のプリンタは、表面と裏面との剥離が可能なプリント用媒体を格納する格納部と、この格納部から引き出される前記プリント用媒体の表面に第1データをプリントする第1ヘッドと、前記格納部から引き出される前記プリント用媒体の裏面に第2データをプリントする第2ヘッドと、これら第1および第2ヘッドを経た前記プリント用媒体の表面を剥離する剥離手段と、この剥離手段で剥離された表面のプリント済み領域を排出のためにカットするカッタと、前記剥離手段の剥離により残る裏面を保存用として回収する回収部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明のプリンタによれば、例えばレシートとジャーナルのような2つの媒体を同時にプリントできる。これにより、レシートおよびジャーナルの作成に要する時間を短縮できて、業務効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態に関わるPOS端末の概観を示す図。
【図2】図1のPOS端末の制御回路のブロック図。
【図3】同実施形態の構成を示す図。
【図4】同実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【図5】同実施形態の変形例の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。まず、この発明に関わる商品販売データ処理装置たとえばPOS(Point Of Sales)端末の外観を図1に示す。
POS端末1は、現金等を収容するためのドロワ2上に載置され、このドロワ2の引出し2aの開閉を制御する。そして、POS端末1は、正面側にキーボード3、モードスイッチ4、カードリーダ5、およびオペレータ表示器6を有し、背面側に客面表示器7を有する。また、POS端末1は、オペレータ表示器6の隣り位置に、本願発明のプリンタ8を搭載している。このプリンタ8は、2つの媒体たとえばレシートおよびジャーナルをプリントするもので、上部のカバー8aを開くことにより、プリント用媒体である後述の両面サーマル用紙30または両面サーマル用紙40を装填することができる。さらに、POS端末1は、コードスキャナ10を有する。このコードスキャナ10は、商品に付された商品ラベルに印刷されているバーコードや2次元コードを光学的に読取る。
【0010】
このPOS端末1の制御回路を図2に示す。
主制御部であるCPU20に、バスライン21を介して、ROM22、RAM23、時計回路24、通信インタフェース25、I/Oポート26、キーボードコントローラ27、表示コントローラ28,29、プリンタコントローラ50、スキャナコントローラ51を接続する。
【0011】
ROM22は、CPU20が実行するプログラムなどの固定的データを記憶している。RAM23は、販売登録商品の売上データを登録処理するための記憶部として機能するとともに、商品に商品コードや価格などの商品情報が対応付けられた商品テーブル、カラー写真やカラー動画による複数のコマーシャル情報や顧客案内情報などを記憶している。時計回路24は、現在の日時を計時する。通信インタフェース25は、LANなどの通信回線を通じて接続される上位のホスト装置とのデータ通信を制御する。I/Oポート26は、上記モードスイッチ4から発せられるモード選択信号を取込んだり、上記ドロワ開放装置2bに対する駆動信号を出力する。キーボードコントローラ27は、キーボード3の操作に応じたキー信号を取込む。表示コントローラ28は、上記オペレータ表示器6を制御する。表示コントローラ29は、上記客面表示器7を制御する。プリンタコントローラ50は、上記プリンタ8を制御する。スキャナコントローラ51は、上記コードスキャナ10を制御する。
【0012】
上記プリンタ8の構成を図3に示す。
【0013】
Aは格納部で、表面と裏面との剥離が可能なプリント用媒体たとえばロール状の両面サーマル用紙30を格納する。この格納部Aにおける両面サーマル用紙30の装填および取り外しは、上記カバー8aを開くことにより可能である。
【0014】
格納部Aに両面サーマル用紙30が装填されると、その両面サーマル用紙30の先端が格納部Aから所定量だけ引き出されて搬送される。この引き出された両面サーマル用紙30を上下に挟んで相対向する位置に、第1サーマルヘッド31および第2サーマルヘッド32を配置する。第1サーマルヘッド31は、両面サーマル用紙30の表面30aに、第1データをプリントする。この第1データは、レシート用のプリントデータである。第2サーマルヘッド32は、両面サーマル用紙30の裏面30bに、第2データをプリントする。第2データは、第1データと同じプリントデータである。
【0015】
プリント待機時、両面サーマル用紙30は、第1および第2サーマルヘッド31,32の相互間に進入したところで待機する。
【0016】
プリントが始まると、第1および第2サーマルヘッド31,32を経た両面サーマル用紙30の先端が、くさび状の剥離部材33に当接する。剥離部材33は、送られてくる両面サーマル用紙30と向き合う側に鋭角なエッジ部を有し、そのエッジ部が両面サーマル用紙30の搬送に伴って同両面サーマル用紙30の表面30aと裏面30bとの間に滑るように入り込むことにより、表面30aを剥離する。剥離部材33の具体例として、例えば特開2001−261226号公報に記載のものが知られている。
【0017】
剥離部材33で剥離された表面30aはカッタ34に達する。カッタ34は、表面(レシート面)30aのプリント済み領域をレシートとしてかつ排出のためにカットする。
【0018】
剥離部材33の剥離により残る裏面(ジャーナル面)30bは、ローラ35,36,37により回収部Bに導かれる。回収部Bは、上記格納部Aと隣接する位置に配置され、裏面(ジャーナル面)30bを保存用のジャーナルとして巻き取り回収する。
【0019】
このプリンタ8の作用を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
POS端末1における係員の操作によって商品販売の決済が終了すると(ステップ101のYES)、CPU20は、その商品販売に関するレシート用のプリントデータを生成し、それをプリンタコントローラ50へ供給する。プリンタコントローラ50は、供給されるプリントデータを第1サーマルヘッド31および第2サーマルヘッド32に送る。第1サーマルヘッド31は、送られてきたプリントデータを両面サーマル用紙30の表面(レシート面)30aにプリントする(ステップ102)。第2サーマルヘッド32は、送られてきたプリントデータを両面サーマル用紙30の裏面(ジャーナル面)30bにプリントする(ステップ103)。
【0020】
第1および第2サーマルヘッド31,32でのプリントが終了した両面サーマル用紙30の先端は、剥離部材33に当接する。この当接およびその後の両面サーマル用紙30の搬送により、剥離部材33のエッジ部が両面サーマル用紙30の表面30aと裏面30bとの間に滑るように入り込み、表面30aが剥離される。
【0021】
剥離された表面(レシート面)30aのプリント済み領域は、カッタ34でカットされる(ステップ104)。カット片は、レシートとして、POS端末1から排出される。剥離部材33の剥離により残った裏面30bは、ジャーナルとして回収部Bにロール状に巻き取り回収される(ステップ105)。
【0022】
このように、レシート用のプリントデータを両面サーマル用紙30の表面(レシート面)30aおよび裏面(ジャーナル面)30bに同時にプリントし、プリント後の表面30aを剥離およびカットしてレシートとして排出するとともに、剥離によって残る裏面(ジャーナル面)30bをジャーナルとして回収部Bに回収することにより、レシートおよびジャーナルの作成に要する時間を短縮できる。結果として、POS端末1による商品販売業務の効率が大幅に向上する。
【0023】
回収部Bに巻き取り回収されるジャーナルは、回収が進むに従ってロール径が増えていくが、裏面30bのみの巻き取りなので、そのロール径は両面サーマル用紙30のロール径のほぼ半分程度である。したがって、回収部Bの占有スペースをできるだけ小さく抑えることができる。
【0024】
しかも、回収部Bに隣接する格納部A内の両面サーマル用紙30は使用が進むに従ってロール径が減少していくので、その減少分によってジャーナルのロール径の増加分を吸収できる。したがって、格納部Aと回収部Bとの間の壁を取り除いて両空間を連通状態とすることにより、回収部Bの占有スペースをさらに縮減できる。
【0025】
また、第1および第2サーマルヘッド31,32は同じプリントデータをプリントするので、POS端末1のCPU20からプリンタコントローラ50へのデータ転送量が少なくてすむ。これにより、CPU20およびプリンタコントローラ50の制御負担を軽減できて、CPU20およびプリンタコントローラ50の処理速度が向上するとともに、軽減分を他の制御に活用することができる。
【0026】
プリンタ8の変形例を図5に示す。
格納部Aおよび回収部Bに代えて格納・回収部Cを採用する。格納・回収部Cは、表面と裏面との剥離が可能なプリント用媒体である両面サーマル用紙40を蛇腹状に折り曲げ集積する格納部を上部空間に有し、後述の裏面(ジャーナル面)40bを蛇腹状に折り曲げ集積した回収部を下部空間に有する。格納部には、両面サーマル用紙40を載置するためのトレイ41、このトレイ41に上方への偏倚力を与えるスプリング42を配置している。回収部には、上記トレイ41の下面側にスプリング43を介して揺動板44を配置している。スプリング43は、揺動板44に上方への偏倚力を与える。揺動板44は、剥離部材33から導かれる裏面(ジャーナル面)40bの自重と同裏面(ジャーナル面)40bの各ミシン目でのテンション変化とのバランスにより、図示矢印で示すように上下方向に揺動を繰り返す。裏面(ジャーナル面)40bは、揺動板44の揺動に伴い、回収空間内で蛇腹状に折り曲がりながら落下し、集積される。
【0027】
上記ミシン目は、両面サーマル用紙40の搬送方向に沿う一定間隔の位置に、かつその両面サーマル用紙40の搬送方向と直行する幅方向に、それぞれ形成されている。
【0028】
プリント待機時、両面サーマル用紙40は、第1および第2サーマルヘッド31,32の相互間に進入したところで待機する。プリントが始まると、第1および第2サーマルヘッド31,32を経た両面サーマル用紙40の先端が剥離部材33に当接する。剥離部材33は、送られてくる両面サーマル用紙40の表面40aと裏面40bとの間に滑るように入り込むことにより、表面40aを剥離する。剥離された表面(レシート面)40aはプリント済み領域がカッタ34でカットされ、そのカット片がレシートとして排出される。
【0029】
剥離部材33の剥離により残る裏面(ジャーナル面)40bは、ローラ35,36およびガイド部材38により回収部の揺動板44に導かれる。回収部は、裏面(ジャーナル面)40bを保存用のジャーナルとして蛇腹状に折り曲げ集積する。
【0030】
回収部に回収されるジャーナルは、回収が進むに従って高さが増していくが、裏面30bのみの集積なので、その高さは格納部における両面サーマル用紙40の高さのほぼ半分程度である。したがって、回収部の容量をできるだけ小さく抑えることができる。
【0031】
しかも、格納部内の両面サーマル用紙40は使用が進むに従って高さが減少していくので、その減少分によってジャーナルの高さの増加分を吸収できる。この点でも、回収部の容量をさらに縮減することが可能である。
【0032】
なお、上記実施形態では、2つの媒体としてレシートおよびジャーナルを作成する場合を例に説明したが、レシートに限らず領収書やクーポンを作成して排出してもよい。また、POS端末に搭載されるプリンタを例に説明したが、POS端末に限らず、他の電子機器に搭載されるプリンタであっても、同様に実施できる。その他、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…POS端末、8…プリンタ、20…CPU、50…プリンタコントローラ、A…格納部、B…回収部、C…格納・回収部、30…両面サーマル用紙(プリント用媒体)、30a…表面、30b…裏面、31…第1サーマルヘッド、32…第2サーマルヘッド、33…剥離部材、34…カッタ、35,36,37…ローラ、40…両面サーマル用紙(プリント用媒体)、40a…表面、40b…裏面、41…トレイ、42…スプリング、43…スプリング、44…揺動板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2001−71569号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面との剥離が可能なプリント用媒体を格納する格納部と、
この格納部から引き出される前記プリント用媒体の表面に第1データをプリントする第1ヘッドと、
前記格納部から引き出される前記プリント用媒体の裏面に第2データをプリントする第2ヘッドと、
これら第1および第2ヘッドを経た前記プリント用媒体の表面を剥離する剥離手段と、
この剥離手段で剥離された表面のプリント済み領域を排出のためにカットするカッタと、
前記剥離手段の剥離により残る裏面を保存用として回収する回収部と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記プリント用媒体は、表面および裏面に感熱層を有する両面サーマル用紙であり、
前記第1ヘッドは、第1サーマルヘッドであり、
前記第2ヘッドは、第2サーマルヘッドである、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記プリント用媒体は、表面および裏面に感熱層を有するロール状の両面サーマル用紙であり、
前記第1ヘッドは、第1サーマルヘッドであり、
前記第2ヘッドは、第2サーマルヘッドであり、
前記カッタは、前記剥離手段で剥離された表面のプリント済み領域をレシートとしてカットし、
前記回収部は、前記剥離手段の剥離により残る裏面をジャーナルとして巻き取り回収する、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第2データは、前記第1データと同じであることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項5】
前記プリント用媒体は、表面および裏面に感熱層を有し、蛇腹状に折り曲げ集積した両面サーマル用紙であり、
前記第1ヘッドは、第1サーマルヘッドであり、
前記第2ヘッドは、第2サーマルヘッドであり、
前記カッタは、前記剥離手段で剥離された表面のプリント済み領域をレシートとしてカットし、
前記回収部は、前記剥離手段の剥離により残る裏面をジャーナルとして蛇腹状に折り曲げ集積する、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項6】
前記回収部は、前記格納部に隣接することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183700(P2011−183700A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52170(P2010−52170)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】