説明

プリンタ

【課題】記録紙Pを搬送しながらプリントヘッドHからインク吐出することで画像を印刷する印刷部2と、印刷部2の搬送下流側に配設され、記録紙Pを先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出するスイッチバック部5と、スイッチバック部5の搬送下流側に配設され、記録紙Pの乾燥を行う乾燥部7とを備えたプリンタAにおいて、同じ記録紙P内に生じる乾燥度合のばらつきを抑制して、印刷画像の画質の向上を図るとともに、記録紙Pの後端側に過乾燥による過度のカールが生じるのを防止する。
【解決手段】スイッチバック後の記録紙Pの先端側の部分を乾燥する際には、乾燥装置53の風量を第1風量Q1に制御する一方、後端側の部分を乾燥する際には、乾燥装置53の風量を第1風量よりも少ない第2風量Q2に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
所定の搬送経路に沿って記録紙を搬送しながら該記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで所定画像を印刷する印刷部を備えたプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンタとして、印刷後の記録紙に付着しているインクを乾燥させるために、印刷部の下流側に乾燥部を設けるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このプリンタでは、乾燥部をヒータと送風ファンとで構成して、ヒータにより加熱された空気を送風ファンにより記録紙に吹き付けることで、記録紙に付着したインクを乾燥させるようにしている。
【0003】
前記乾燥部を備えたプリンタでは、記録紙のインク吸収性能や乾燥部における記録紙の搬送速度によって、乾燥部を通過後の記録紙(記録紙に付着したインク)の乾燥度合にばらつきが生じるという問題があり、この問題を解決するべく、現在までに様々な技術が提案されている。例えば、特許文献2に示すものでは、記録紙の乾燥条件を、記録紙の種類(材質や厚み等)や乾燥部における記録紙の搬送速度に応じて変更するようにしている。
【0004】
ここで、前記プリントヘッドを備えたプリンタにおいて、装置のコンパクト化(設置面積の低減化)を図る観点から、例えば、特許文献3に示すように、記録紙排出部を印刷部の略真上に配設するようにしたものも知られている。このプリンタでは、記録紙排出部を印刷部の略真上に配設するために、両者の間の記録紙搬送経路を上下に並ぶ水平搬送部と上下方向に延びる垂直搬送部とによって略コ字状に形成するようにしている。下側の水平搬送部と垂直搬送部との接続部には、スイッチバック機構が配設されており、このスイッチバック機構は、記録紙を先端側から受け入れてその搬送方向を水平方向から垂直方向に変更した後に後端側から排出するように構成されている。このように、記録紙の搬送経路上にスイッチバック機構を設けることで、記録紙が前記記録紙排出部に排出される際にその印刷面を上側に向けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−233876号公報
【特許文献2】特開2006−205506号公報
【特許文献3】特開2008−037579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、装置のコンパクト化とインクの乾燥性向上との両立を図るために、例えば、前記特許文献3に示すスイッチバック機構を備えたプリンタに対して、前記特許文献1及び2に示す乾燥部を設けることが考えられる。この場合、プリンタの設置面積を低減する観点から、乾燥部を上記水平搬送部に配設するよりも上記垂直搬送部に配設することが好ましい。
【0007】
しかし、乾燥部を垂直搬送部に設けた場合、乾燥部がスイッチバック機構の下流側に位置することとなるため、以下のような問題が生じる。すなわち、スイッチバック機構は、記録紙を先端側から受け入れ後端側から排出するように構成されているため、スイッチバック機構の通過前後では、記録紙の先端側と後端側が入れ替わってしまう。このため、記録紙における最初に印刷が行われた部分(スイッチバック前の先端であってスイッチバック後の後端側の部分)の方が、最後に印刷が行われた側の部分よりも遅れて乾燥部に進入し、この結果、スイッチバック後の記録紙の後端側の部分は、インクが付着してから乾燥部に進入するまでの自然乾燥時間が先端側に比べて長くなる。したがって、乾燥部において記録紙の先端側と後端側とを同じ乾燥条件で乾燥したとすると、記録紙の後端側の方が先端側に比べて自然乾燥時間が長い分だけ乾燥部を通過後のインクの乾燥度合が高くなり、同じ記録紙の中でも先端側と後端側とでインクの乾燥度合にばらつきが生じてしまう。この結果、記録紙の印刷画像に濃度ムラが生じたり、記録紙の後端側に過乾燥による過度のカールが生じたりするという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録紙を搬送しながら該記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで所定画像を印刷する印刷部と、該印刷部の搬送下流側に配設され、該記録紙を搬送しながらその印刷面を乾燥する乾燥部と、前記印刷部の上方に配設され、前記乾燥部を通過後の記録紙が排出される記録紙排出部と、前記印刷部の搬送下流側で且つ前記乾燥部の搬送上流側に配設され、前記記録紙を先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出することで、前記記録紙を前記記録紙排出部においてその印刷面が上側に向いた状態で排出可能とするスイッチバック部と、前記乾燥部における記録紙の乾燥条件を制御する制御手段とを備えたプリンタに対して、その構成に工夫を凝らすことで、同じ記録紙内に生じるインクの乾燥度合のばらつきを抑制し、延いては、印刷画像の画質の向上を図るとともに、記録紙の後端側に過乾燥による過度のカールが生じるのを防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、この発明では、スイッチバック後の記録紙の先端側と後端側とで乾燥部における記録紙の乾燥条件を異ならせるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、所定の搬送経路に沿って記録紙を搬送しながら該記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで所定画像を印刷する印刷部と、該印刷部の搬送下流側に配設され、該記録紙を搬送しながらその印刷面を乾燥する乾燥部と、前記印刷部の上方に配設され、前記乾燥部を通過後の記録紙が排出される記録紙排出部と、前記印刷部の搬送下流側で且つ前記乾燥部の搬送上流側に配設され、前記記録紙を先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出することで、前記記録紙を前記記録紙排出部においてその印刷面が上側に向いた状態で排出可能とするスイッチバック部と、前記乾燥部における記録紙の乾燥条件を制御する制御手段とを備えたプリンタ対象とする。
【0011】
そして、前記制御手段は、前記スイッチバック後の記録紙の先端側と後端側とで前記乾燥部における記録紙の乾燥条件を異ならせるように構成されているものとする。
【0012】
この構成によれば、印刷部において、搬送中の記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで、記録紙の先端側の所定位置から画像の印刷が開始されて後端側の所定位置で画像の印刷が終了する。印刷部における画像の印刷が終了した記録紙は、印刷部の搬送下流側に配設されたスイッチバック機構へと搬送され、スイッチバック機構では、この搬送されてきた記録紙を先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出する。そうして、スイッチバック機構から排出された記録紙は、スイッチバック機構の通過前後で先端側と後端側とが入れ替わることにより、最初に印刷が行われた部分(スイッチバック前の先端側の部分であってスイッチバック後の後端側の部分)が、最後に印刷が行われた部分よりも遅れて乾燥部に進入することとなる。
【0013】
したがって、乾燥部において記録紙の先端側と後端側とを同じ乾燥条件で乾燥したとすると、記録紙の後端側の方が先端側に比べて自然乾燥時間(インクが付着してから乾燥部に進入するまでの時間)が長い分だけ乾燥部を通過後のインクの乾燥度合が高くなり、この結果、同じ記録紙でも先端側と後端側とで乾燥度合にばらつきが生じるという問題がある。
【0014】
これに対して、本発明では、制御手段によって、乾燥部における記録紙の乾燥条件を記録紙の先端側と後端側とで異ならせるようにしたことで、上述したインクの乾燥度合のばらつきを抑制することができ、これにより、記録紙の印刷画像に濃度ムラが生じたり、記録紙の後端側に過乾燥による過度のカールが生じたりするのを防止することができる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記スイッチバック後の記録紙における後端側の部分の方が先端側の部分に比べて、前記乾燥部における記録紙の乾燥能力が低くなるように前記乾燥条件を制御するよう構成されているものとする。
【0016】
この構成によれば、スイッチバック後の記録紙の後端側の部分(最初に印刷された側の部分)の方が先端側の部分(最後に印刷された側の部分)に比べて、前記乾燥部における記録紙の乾燥能力が低くなるように、前記制御手段によって記録紙の乾燥条件が制御される。こうして、スイッチバック後の記録紙の後端側の部分に対しては、先端側に比べて自然乾燥時間が長い分だけ乾燥部におけるインクの乾燥能力を低下させることで、同じ記録紙でも先端側と後端側とでインクの乾燥度合がばらつくのを確実に防止することができる。
【0017】
なお、本明細書において、乾燥能力とは、例えば、記録紙の種類や記録紙に付着したインク量等が同じであると仮定したときのインク乾燥速度として定義することができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記乾燥部は、前記記録紙の印刷面に対して乾燥用風を吹き付けることで該印刷面に付着したインクを乾燥させるように構成されており、前記乾燥条件には、前記乾燥部における記録紙の搬送速度、前記乾燥用風の温度、及び前記乾燥用風の風量のうち少なくとも一つが含まれているものとする。
【0019】
この構成によれば、制御手段によって、乾燥部における記録紙の搬送速度、乾燥用風の温度、及び該乾燥用風の風量のうち少なくとも一つを制御することで、乾燥部におけるインクの乾燥能力を制御することができる。
【0020】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、前記制御手段は、前記記録紙に対して前記所定画像を印刷するために前記プリントヘッドから吐出されたインクの量を検出する検出手段を有していて、該検出手段により検出されたインクの量に応じて、前記乾燥部における当該記録紙の乾燥条件を制御するように構成されているものとする。
【0021】
この構成によれば、記録紙に所定画像を印刷するためにプリントヘッドから吐出されたインク量に応じて、制御手段により乾燥部における当該記録紙の乾燥条件が制御される。これにより、例えば、複数の記録紙に対してそれぞれ画像を印刷する場合に、各記録紙に対してプリントヘッドから吐出されるインク量が異なっていたとしても、乾燥部を通過後の各記録紙のインクの乾燥度合を互いに略同じレベルにすることができる。したがって、各記録紙同士でインクの乾燥度合が異なることにより印刷画像の見え方に違いが生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のプリンタによると、スイッチバック後の記録紙の先端側と後端側とで乾燥部における記録紙の乾燥条件を異ならせるようにしたことで、同じ記録紙内に生じるインクの乾燥度合のばらつきを抑制して、印刷画像の画質の向上を図るとともに、記録紙の後端側に過乾燥による過度のカールが生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す、プリント前側の斜め右側から見た斜視図である。
【図2】プリンタの内部の構成を示す、プリンタ右側から見た概略図である。
【図3】印刷部のプラテンの構成を示す平面図である。
【図4】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、切断後搬送ローラ対より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図5】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図6相当図である。
【図6】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】画像形成に使用したインク量と風量倍率係数との関係を示すグラフである。
【図8】乾燥制御部における乾燥制御示すフローチャートである。
【図9】乾燥制御部における乾燥制御を示すタイムチャートである。
【図10】変形例1を示す図9相当図である。
【図11】変形例2を示す図9相当図である。
【図12】他の実施形態を示す図9相当図であって(a)乾燥用風の風量をステップ状に変化させる例を示し、(b)乾燥用風の風量を連続的に変化させる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット式のプリンタの構成を一部省略して示す斜視図である。このプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行い必要な補正処理等を行う受付ブロック200(図6参照)から通信ケーブルを介して伝送される画像データを、オーダ情報に基づいて記録紙Pに対して印刷を行うように構成されている。
【0026】
−全体構成−
図2は、プリンタAの構成を示す概略図である。図2に示すように、このプリンタAは、ロール状の記録紙Pを収容するためにプリンタ下部に設けられた記録紙収容部1と、記録紙収容部1から引き出された記録紙Pに対して画像データの記録印刷を行うようにプリンタ上部に設けられた印刷部2とを備えている。
【0027】
前記プリンタAの上部で且つ印刷部2の搬送下流側には、印刷後の記録紙Pを所定のプリントサイズに切断するカッター部4、切断後の記録紙Pをスイッチバックさせることで印刷面の向きを変更するスイッチバック部5、記録紙Pの裏面に整理番号等を印字するための裏面印字ユニット6、記録紙Pの印刷面を乾燥させるための乾燥部7、ロール状に巻かれていた記録紙Pのカールを取り除いて排出するためのデカールユニット8、排出された記録紙Pをそのサイズに応じてプリンタ左右方向(図2の紙面に垂直な方向)の一側に振り分けるためのコンベア装置150、振り分けられたB5サイズやA4サイズ等の大判の記録紙Pを受け止めるための大判トレイ104(図1参照)、及びL版等の写真サイズの記録紙Pを受け止めてオーダ毎に集積するための集積装置210が配設されている。
【0028】
なお、前記プリンタAは、大判トレイ104や集積装置210以外が筐体3によって覆われており、筐体3の下面には移動用のキャスター3aが取り付けられている。
【0029】
前記記録紙収容部1は、印刷部2のほぼ真下に位置していて、記録紙Pを収容するための2つのマガジンM1,M2を収容可能になっている。マガジンM1,M2は、上下方向に並んで配設されており、各マガジンM1,M2内には、ロール状の記録紙Pが、巻芯Rにより保持された状態で収容されている。
【0030】
また、前記プリンタAは、所定サイズに切断された単票状の記録紙Pがセットされる手差し供給部9を備えており、これによって、手差し供給部9から供給される単票状の記録紙Pに対して印刷可能になっている。
【0031】
−記録紙搬送機構−
図2に示すように、前記プリンタAの上部には、記録紙収容部1から記録紙Pを引き出して所定の搬送経路に沿って搬送しつつ画像の印刷や切断等の各種処理を行う記録紙搬送機構が収容された搬送機構収容部20が設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、前記記録紙収容部1から記録紙Pを供給する以外にも、手差しトレイ102から手差し供給ローラ対27を介して所定サイズの記録紙Pを供給できるように構成された手差し供給部9を備えている。なお、以下の説明において、手差しトレイ102が設けられる側をプリンタ前側と定義し、その反対側をプリンタ後側と定義する。また、プリンタ前側から見て左側をプリンタ左側と定義し、右側をプリンタ右側と定義する。
【0033】
前記記録紙収容部1には、2つのマガジンM1,M2が収容されており、幅広サイズの記録紙Pに印刷を行う場合には、マガジンM1内に収容された記録紙Pが、その先端部から引き出されてガイドローラ21によりガイドされながらマガジンローラ対22によりマガジン外へと送り出される。マガジン外に送り出された記録紙Pは、上流側が2つに分岐したガイド部23のプリンタ後側の分岐部23bを通って、供給ローラ24と供給ローラ24に対向配置された一対の圧着ローラ24a,24bとの間に挟み込まれる。この圧着ローラ24a(又は圧着ローラ24b)と供給ローラ24とによって主搬送ローラ対100が構成されている。
【0034】
前記供給ローラ24の回転により搬送された記録紙Pは、搬送下流側の印刷部2に供給され、プリントヘッドHによって記録紙Pに対して画像の印刷が行われる。
【0035】
前記ガイド部23は、記録紙Pの先端部を搬送経路からずれないように案内するとともに、各記録紙Pの幅方向の位置決めを行うためのものである。
【0036】
印刷後の記録紙Pは、印刷後搬送ローラ対25によりカッター部4に送られて所定のプリントサイズに切断される。切断後の記録紙Pは、3つの切断後搬送ローラ対26によりスイッチバック部5へと受け渡される。なお、これら3つの切断後搬送ローラ対26は、記録紙Pをスイッチバック部5へと受け渡した後に、同時に圧着解除して次に搬送されてくる記録紙Pの受け入れに備える。
【0037】
前記スイッチバック部5では、切断後の記録紙Pを、その先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出する。これにより、記録紙Pが後述する搬送ベルト151上に排出される際に、記録紙Pの印刷面を上側に向けることができ、印刷画像の画質確認が容易になるとともに、記録紙Pの印刷面が搬送ベルト151に擦れて印刷画像の画質が低下するのを防止することができる。
【0038】
前記スイッチバック部5から排出された記録紙Pは、供給ローラ対75により裏面印字ユニット6に送られて記録紙Pの裏面に整理番号等が印字された後、乾燥部7へと搬送される。
【0039】
前記乾燥部7では、記録紙Pを搬送ローラ対28によって搬送しながらその印刷面の乾燥処理が行われる。乾燥処理が終了した記録紙Pは、搬送ローラ対29によってデカールユニット8に送られる。乾燥部7の上流側及び下流側にはそれぞれ、記録紙Pを検出するためのセンサ43、センサ44が配設されており、各センサ43,44は記録紙Pの検出情報を後述する乾燥制御部204へと出力する。
【0040】
前記デカールユニット8では、ロール状に巻かれた記録紙Pのカールを取り除くために、駆動搬送ローラ81とデカールローラ82とで記録紙Pを挟持搬送しながら、デカールローラ82を駆動搬送ローラ81の外周面に沿って図2の時計回り方向に移動させる。これにより、記録紙Pはそのカール方向とは反対方向に曲げられた状態でデカールされて、排出口90からコンベア装置150の搬送ベルト151(記録紙排出部に相当)上に排出される。
【0041】
−各構成要素の詳細−
以下、プリンタAの各構成要素について詳細に説明する。記録紙収容部1には、マガジンM1,M2をそれぞれ載置するためのスライド台30が設けられている。スライド台30は、筐体3内の左右両側に設けられてプリンタ前後方向に延びるリニアガイド(図示省略)等により、プリンタ前後方向にスライド自在に構成されている。これにより、スライド台30をスライド移動させることで、マガジンM1,M2を筐体3内から出し入れできるようになっている。このスライド台30の前面は、筐体3の一部をなすとともに開閉可能な扉部材31によって覆われており、この扉部材31を開放状態にすることで、記録紙Pの取り替え作業を行うことができる。
【0042】
前記マガジンM1,M2は、持ち運び可能に構成された略密閉状の箱型容器とされている。マガジンM1,M2の上面には、マガジンM1,M2内に収容された記録紙PをマガジンM1,M2外へと引き出すための開口部111が形成されている。開口部111は、マガジン長さ方向に延びる略矩形状をなしている。
【0043】
前記マガジンM1,M2内部の記録紙収容室S1,S2に設けられたマガジンローラ対22は、マガジン駆動ローラ32及びマガジン従動ローラ33からなる圧着型ローラ対である。
【0044】
前記供給ローラ24の下流側には、供給ローラ24より送り出された記録紙Pの先端を検出するセンサ42(投光部と受光部とからなる)が配設されている。このセンサ42による記録紙P先端の検出から、記録紙Pの印刷開始部分がプリントヘッドHの下側位置に達するような量だけ供給ローラ24により記録紙Pを搬送したときに、当該記録紙Pへの印刷を開始する。また、センサ42による記録紙Pの先端の検出から、記録紙Pの先端が印刷後搬送ローラ対25のところに達するような量だけ供給ローラ24により記録紙Pを搬送したときに、供給ローラ24を圧着状態から圧着解除状態にし且つ印刷後搬送ローラ対25を圧着解除状態から圧着状態にして、今度は印刷後搬送ローラ対25で記録紙Pを搬送する。
【0045】
一方、前記主搬送ローラ対100よりも搬送上流側(プリンタ前側)には、手差し供給ローラ対27が配設されている。この手差し供給ローラ対27は、手差しトレイ102にセットされた単票状の記録紙Pを引き出して主搬送ローラ対100まで搬送するためのものであり、記録紙Pの印刷面に接触する手差し駆動ローラ27aと、印刷面とは反対側の面に接触する手差し従動ローラ27bとを備えている。
【0046】
前記手差し駆動ローラ27aは、ローラ面の一部がカットされた、いわゆる半月型ローラで構成されている。そして、手差し駆動ローラ27aをモータ(図示省略)により駆動すると、手差しトレイ102の記録紙Pがローラ面に圧着されて主搬送ローラ対100に向かって送り出される。そして、記録紙Pの先端部が主搬送ローラ対100に受け渡されたときに、ローラ面のカット部分と手差し従動ローラ27bとが対向することで、手差し供給ローラ対27の圧着状態が解除される。
【0047】
前記印刷部2は、記録紙Pに対してインクを吐出し、それによって多数のインクドットからなる画像を形成するプリントヘッドHと、プリントヘッドHの下方に設けられ記録紙Pを印刷位置に吸着保持する記録紙保持部Dとを備えている。記録紙保持部Dの下流側には、圧着型の印刷後搬送ローラ対25が配設されている。
【0048】
前記プリントヘッドHは、主走査方向Xに延びるガイドレール(図示省略)に沿って移動可能に構成されている。さらに、プリントヘッドHは、副走査方向(記録紙搬送方向)Yに並ぶ2つのヘッドユニット13a,13bを有しており、これらのヘッドユニット13a,13bに設けられているインク吐出ノズルからインクを吐出することで、記録紙Pに対して所定の画像や文字等を印刷できるようになっている。
【0049】
前記インクジェットプリンタAの左右両側の下部には、それぞれ、互いに色相の異なるインクが封入された7つのインクカートリッジ(図示省略)が着脱可能に収容されている。したがって、これらのインクカートリッジをケースから着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。
【0050】
なお、これらのインクカートリッジには、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、バイオレット(V)及びクリア(CL:透明)の各インクが封入されている。
【0051】
前記各ヘッドユニット13a,13bは全て同一構成であり、それぞれ、主走査方向Xに配設された各インクを吐出する複数のノズルアレイから構成されている。各ノズルアレイには、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット13a,13bは、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。
【0052】
ここで、前記各ヘッドユニット13a,13bの構成としては特に限定されるものではないが、本実施形態における各ヘッドユニット13a,13bは、インク吐出ノズル毎に設けられ、且つインクの充填された圧力室の容積を圧電素子(ピエゾ素子)によって変動させることでインクを吐出する一般的なピエゾ方式とされている。
【0053】
そして、前記記録紙保持部D上の記録紙Pは、記録紙保持部Dの搬送上流側に設けられた供給ローラ24により一定の単位搬送量Tで間欠的に副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット13a,13bのインク吐出ノズルからインクが吐出される。
【0054】
また、プリントヘッドHの主走査方向Xのプリント領域外の位置には、印刷を行っていない場合にプリントヘッドHが待機するためのヘッド待機位置が設定されており、このヘッド待機位置には、プリントヘッドHを使用しないときに、インクの増粘を防止すべくプリントヘッドHのヘッドユニット13a,13bに密着させるキャップ部(図示省略)が設けられている。
【0055】
前記記録紙保持部Dは、図3に示すように、プリントヘッドHのプリント領域に対応して表面(上面)に開口する複数の吸引孔60が形成され且つフラッシング領域に対応してフラッシング孔61が形成されたプラテン45を有している。プラテン45の下側には、吸引ファン(図示省略)が収容された空間が形成されている。この吸引ファンは、プラテン45上を通過する記録紙Pに対して吸引孔60を介して負圧を作用させることで、記録紙Pをプラテン45の表面上に吸着保持する。
【0056】
前記フラッシング孔61は、インクの増粘を防止するために印刷開始時にプリントヘッドHのインク吐出ノズルから吐出される少量のインクを受け止めるためのものであり、フラッシング孔61に吐出された廃インクは、廃棄管を介して廃液タンク(図示省略)に貯留される。
【0057】
前記プラテン45の支持面45aには、さらに、副走査方向Yに延びる凹部45bが主走査方向Xに間隔をあけて複数形成されている(図3参照)。この凹部45bには、インク吸収部材72が収容されている。このインク吸収部材72は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドHの各ヘッドユニット13a,13bより吐出したインクの一部が支持面45a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン45の支持面45aが汚れるのを防止するために設けられたものである。
【0058】
前記インク吸収部材72は、凹部45bに沿って副走査方向Yに延びる略直方体状に形成されている。そして、インク吸収部材72は、凹部45bに着脱可能に収容されている。
【0059】
前記カッター部4は、記録紙Pの搬送経路の下側に配置された固定刃4aと、記録紙Pの搬送経路の上側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃4aに対して上下方向に移動する可動刃4bとを有していて、可動刃4bを記録紙Pの上側から下側に移動させることで記録紙Pを切断するように構成されている。この切断による切り屑は、筐体3の下部に配設された屑箱(図示省略)に落下して収容される。
【0060】
前記スイッチバック部5は、記録紙Pを先端側から受け入れてスイッチバックローラ対73により引き込んだ後、搬送方向を水平方向から垂直方向に変更して(スイッチバックさせて)後端側から排出する。このように、スイッチバック部5は、記録紙Pをスイッチバックさせることで、コンベア装置150の搬送ベルト151上において記録紙Pが印刷面を上面に向けた状態で排出されるようになる。
【0061】
図2,図4及び図5に示すように、前記スイッチバック部5には、下側の駆動ローラ73aと上側の従動ローラ73bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対73と、このスイッチバックローラ対73の上流側において搬送路を挟むように設けられ、切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対73へ導く一対の第1ガイド部材74と、スイッチバックした記録紙Pを裏面印字ユニット6へ供給する圧着型の供給ローラ対75と、スイッチバックローラ対73と供給ローラ対75との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対75へ導く一対の第2ガイド部材76とが設けられている。
【0062】
前記スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aは、モータ(図示省略)により駆動されるものであって、記録紙Pをプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pをプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0063】
前記スイッチバックローラ対73及び第1ガイド部材74は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aの回転軸周りに一体的に移動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aに対する従動ローラ73bの相対位置が、図4に示すように駆動ローラ73aに対してほぼ真上に位置して、記録紙Pをプリンタ後側へ搬送する第1の位置と、図5に示すように駆動ローラ73aに対してプリンタ後側に位置して、スイッチバックされた記録紙Pを後端側から裏面印字ユニット6へ供給する第2の位置とに切り換えられるようになっている。
【0064】
ここで、前記切断後搬送ローラ対26から搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせるスイッチバック動作について説明する。スイッチバックローラ対73が、切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ73aは正回転しており、従動ローラ73bは第1の位置にある。そして、記録紙Pの後端が第1ガイド部材74に位置するような量だけスイッチバックローラ対73により記録紙Pをプリンタ後側へ搬送したところで(図4参照)、駆動ローラ73aの正回転を停止する。
【0065】
このとき、前記記録紙Pの先端部は、記録紙Pの自重により下方に湾曲して撓んでいる。なお、記録紙Pにコシがあって自重で撓まない場合には、搬送下流側に設けられた湾曲ガイド板77にその先端部が当接することで、湾曲ガイド板77に沿って下方に折り曲げられるようになっている。
【0066】
続いて、前記スイッチバックローラ対73及び第1ガイド部材74を、図4で時計回り方向に回動させて従動ローラ73bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの後端側(プリンタ前側)が持ち上げられる。
【0067】
その後、前記駆動ローラ73aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側からプリンタ上側に配置された供給ローラ対75の側へ向けて搬送する。スイッチバックローラ対73によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材74及び第2ガイド部材76を通って、供給ローラ対75のところに達する。
【0068】
なお、本実施形態では、スイッチバックローラ対73の駆動ローラ73aの周りに従動ローラ73bを移動させることで、スイッチバックローラ対73の位置を第1の位置と第2の位置とに切り換えるようにしたが、この形態に限定するものではなく、例えば、駆動ローラ73aと従動ローラ73bとを両方とも移動可能な構成として、スイッチバックローラ対73全体の位置を変更することで第1の位置と第2の位置とを切り換えるようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、スイッチバックローラ対73を、記録紙Pを搬送する駆動ローラ73aと、駆動ローラ73aに従動して回転する従動ローラ73bとで構成したが、従動ローラ73bを駆動可能とすることで、スイッチバックローラ対73をなすローラを両方とも駆動ローラ73aで構成するようにしてもよい。
【0070】
前記裏面印字ユニット6は、ドットインパクト式のサーマルプリンタからなるものであって、記録紙Pの裏面側(搬送経路に対してプリンタ後側)に配設されている。
【0071】
前記裏面印字ユニット6の搬送下流側には、裏面印字後の記録紙Pを送り出す3つの搬送ローラ対28が配設されている。そして、該搬送ローラ対28の回転により、記録紙Pが搬送下流側の乾燥部7へと搬送される。
【0072】
前記乾燥部7は、3つの搬送ローラ対28のうち上流側に位置する2つの搬送ローラ対28と、該両搬送ローラ対28によって形成された搬送経路Rの真横に配設された乾燥装置53とで構成されている。乾燥装置53は、該装置内に空気を取り込むための吸入ファン54と、吸入ファン54の排気側に配設された加熱ヒータ55と、各加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥用風として記録紙Pの印刷面に吹き付ける排気ノズル部56とで構成されている。乾燥装置53は、後述する待機モードと乾燥モードとの2つのモードを有していて、乾燥制御部204(図6参照)により作動制御される。本実施形態では、乾燥装置53の吸入ファン54として、ミネベア社製の型式2410ML−05W−B60を使用しており、その最大風量は0.71m/mimとされている。
【0073】
前記デカールユニット8は、駆動搬送ローラ81と、駆動搬送ローラ81の周りに移動可能に構成されたデカールローラ82とを有している。デカールユニット8は、記録紙Pの種類(ロール紙/単票紙)に応じて、デカールローラ82の位置を搬送位置とデカール位置とに切り換える。
【0074】
前記搬送位置は、デカールローラ82が駆動搬送ローラ81の真上に存在する位置として定義される。この搬送位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされることなく搬送される。
【0075】
前記デカール位置は、デカールローラ82を搬送位置から駆動搬送ローラ81周りに時計回り方向に回動させた位置として定義される。このデカール位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされつつ搬送される。
【0076】
前記デカールユニット8は、乾燥部7から搬送されてきた記録紙Pが、手差し供給部9から供給された単票状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82を搬送位置に制御する一方、記録紙PがマガジンM1,M2から引き出されたロール状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82をデカール位置に制御するようになっている。これにより、手差し供給部9から供給された記録紙Pを不必要にカールさせることなく、マガジンM1,M2から引き出された記録紙Pを確実にデカールすることができる。
【0077】
前記集積装置210は、コンベア装置150から搬送された記録紙Pを集積するためのものであり、プリンタ前側が開口した箱型の集積本体部211と、集積本体部211内の上下両端に配設されたローラ対(図示省略)に適当なテンションを有した状態で巻き掛けられた無端状の集積ベルト213と、集積ベルト213の外周面に略等間隔に設けられた集積プレート212とを備えている。ローラ対は、集積ベルト213を回転させて集積プレート212を搬送方向に移動させるための駆動モータ(図示省略)に接続されている。
【0078】
前記複数枚の集積プレート212のうち、集積本体部211外部に露出している集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して下方に移動する一方、集積本体部211内部に収容されている集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して上方に移動するように構成されている。すなわち、集積プレート212は、集積ベルト213とともに、ローラ対の周囲を連続して回転可能に構成されている。
【0079】
前記集積プレート212は、搬送ベルト151の下流側の記録紙Pの受け渡し位置において、プレート表面が水平で且つ搬送ベルト151のベルト面と略面一になるように待機しており、所定のプリントオーダに対応した枚数が集積された後、次のオーダの記録紙Pが搬送される前に、集積ベルト213により下方に搬送される。
【0080】
本実施形態におけるプリンタAの主要構成要素間の搬送距離は以下の通りである。すなわち、印刷部2からスイッチバック部5までの搬送距離a(印刷部2の搬送方向中央位置から、スイッチバック後の記録紙Pを搬送するための垂直搬送経路50までの距離)は363mmに設定され、スイッチバック部5から乾燥部7までの搬送距離b(スイッチバック前の記録紙Pを搬送するための水平搬送経路51から乾燥部7の上流側端までの距離)は131mmに設定され、乾燥部7の上流側端から下流側端までの搬送距離cは80mmに設定され、乾燥部7の下流側端からデカールユニット8の下流側端までの搬送距離dは219mmに設定されている。
【0081】
−制御系の構成−
本インクジェットプリンタAは、制御系として、図6に示すように、マイクロプロセッサ201(以下、CPUという)と、このCPU201とデータバスを介して接続された搬送制御部202、ヘッド制御部203、乾燥制御部204、プリント制御部205、半導体メモリRAM/ROM206、及び通信インタフェース207を備えている。
【0082】
前記搬送制御部202は、記録紙搬送機構の動作制御を行う。ヘッド制御部203は、プリントヘッドHを主走査方向に往復移動させるとともに、各圧電素子に所定波形の電圧を供給することによってプリントヘッドHの制御を行う。乾燥制御部204は、プリント制御部205から各種情報を取得して、乾燥装置53(吸入ファン54及び加熱ヒータ55)の作動を制御する。通信インタフェース207は、受付ブロック200との間で情報の送受信を行う。
【0083】
搬送制御部202、ヘッド制御部203及び乾燥制御部204は、それぞれプリント制御部205からの指令を受けて必要な制御信号を出力する。プリント制御部205は、受付ブロック200から通信インタフェース207を介して受信した画像データに基づき、記録紙Pに対して画像データの印刷を実現するための制御を行う。ここで、オーダ情報には、印刷を行う記録紙Pの大きさ等を特定するためのプリントチャンネル情報と、印刷枚数等を特定するためのプリントフォーム情報とが含まれている。
【0084】
プリント制御部205は、記録紙搬送機構により記録紙Pを一定の単位搬送量Tで間欠搬送しながら、該間欠搬送時における記録紙Pの停止時に前記プリントヘッドHの2つのヘッドユニット13a,13bからそれぞれインクを吐出させて記録紙Pに印刷を行うように構成されている。
【0085】
前記乾燥制御部204は、乾燥装置53の加熱ヒータ55の温度を予め設定された設定温度に制御するとともに、記録紙Pの搬送方向の位置に応じて吸入ファン54の回転数を制御する。記録紙Pの搬送方向の位置は、プリント制御部205において、各センサ42〜44からの記録紙検出情報及び各ローラを駆動するモータからの回転速度情報を基に算出され、該算出された位置情報が乾燥制御部204へと送信される。
【0086】
そして、乾燥制御部204は、プリント制御部205からの記録紙Pの位置情報を基に乾燥部7内に記録紙Pが存在しないと判断した場合には、乾燥装置53を待機モードで作動させる。乾燥制御部204は、待機モードでは吸入ファン54を所定回転数に制御することで、乾燥用風の風量を所定風量Q0に制御する。
【0087】
乾燥制御部204は、乾燥部7内に記録紙Pが進入したと判断した場合には、乾燥装置53を乾燥モードで作動させる。本実施形態では、乾燥制御部204は、この乾燥モードにおいて、記録紙Pの先端側の方が後端側に比べて乾燥装置53から吹き付けられる乾燥用風の風量が多くなるように各吸入ファン54の作動を制御する。具体的には、乾燥制御部204は、記録紙Pの先端側の部分を乾燥する際には、この乾燥用風の風量を第1風量Q1に制御する一方、記録紙Pの後端側の部分を乾燥する際には、該乾燥用風の風量を第1風量Q1よりも少ない第2風量Q2に制御する。この第1及び第2風量Q1,Q2は、第1及び第2基準風量q1,q2を基に乾燥制御部204にて算出される。第1基準風量q1及び第2基準風量q2(<q1)は、記録紙Pの先端側と後端側とでインクの乾燥度合にばらつきが生じないように予め実験等により設定された風量であって、ROMメモリ206内に記憶されている。
【0088】
さらに、乾燥制御部204は、プリント制御部205から画像データ情報を取得して、この画像データを基に、乾燥対象となる記録紙Pの印刷に使用したインク量(画像全体を印刷するためにプリントヘッドHから吐出されたインク量)を算出する。そして、乾燥制御部204は、前記算出したインク量が多いほど乾燥用風の風量を増加させるよう吸入ファン54の作動を制御する。この制御は、ROM206内に記憶された風量倍率係数kを基に行われる。
【0089】
風量倍率係数kは、図7に示すように、インク量の増加に比例して直線的に増加するように設定されていて、マップデータの形式で予めROM206内に記憶されている。
【0090】
−乾燥制御部における乾燥制御−
乾燥制御部204における記録紙Pの乾燥制御について図8のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0091】
最初のステップS1では、プリント制御部205からの画像データ情報、及び記録紙Pの搬送方向の位置情報を読み込む。
【0092】
ステップS2では、ステップS1で読み込んだ記録紙Pの位置情報を基に、記録紙Pの先端縁が乾燥部7内に進入したか否かを判定し、この判定がNOであるときにはリターンする一方、YESであるときにはステップS3に進む。
【0093】
ステップS3では、乾燥装置53の作動モードを乾燥モードに設定する。
【0094】
ステップS4では、画像の印刷に使用したインクの量を算出するとともに、該算出したインク量に対応する風量倍率係数kをROMメモリ206から読み込む。
【0095】
ステップS5では、ROMメモリ206内に記憶された第1基準風量q1にステップS4で読み込んだ風量倍率係数kを掛け合わせた風量を目標風量Q1とする。
【0096】
ステップS6では、ステップS1で読み込んだ記録紙Pの位置情報を基に、記録紙Pの搬送方向中央位置が乾燥部7の下流端よりも上流側にあるか否かを判定し、この判定がYESであるときにはステップS5に戻る一方、NOであるときにはステップS7に進む。
【0097】
ステップS7では、ROMメモリ206内に記憶された第2基準風量q2(<q1)にステップS4で読み込んだ風量倍率係数kを掛け合わせた風量を目標風量Q2とする。
【0098】
ステップS8では、乾燥用風の風量がステップS5又はステップS7で設定した目標風量になるように、吸入ファン54に対して制御信号を出力してその回転数を制御する。
【0099】
ステップS9では、記録紙全体が乾燥部7外に排出されたか否かを判定し、この判定がNOであるときには本ステップS9の判定を再度行う一方、YESであるときにはステップS10に進む。
【0100】
ステップS10では、乾燥装置53の作動モードを待機モードに設定する。
【0101】
ステップS11では、吸入ファン54の回転数を上記所定回転数(乾燥用風の風量をQ0)に制御するべく、吸入ファン54に対して必要な制御信号を出力する。
【0102】
以上のように構成されたプリンタAでは、印刷部2において、記録紙Pを間欠搬送しながらプリントヘッドHからインクを吐出することで、記録紙Pの先端側の所定位置から画像の印刷が開始されて後端側の所定位置で画像の印刷が終了する。印刷部2における画像の印刷が終了した記録紙Pは、印刷部2の搬送下流側に配設されたスイッチバック部5へと搬送され、スイッチバック部5では、この搬送されてきた記録紙Pを先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出する。そうして、スイッチバック部5から排出された記録紙Pは、スイッチバック部5の通過前後で先端側と後端側とが入れ替わる結果、最初に印刷が行われた部分が(スイッチバック前の先端であってスイッチバック後の後端側の部分)、最後に印刷が行われた部分よりも後に乾燥部7に進入することとなる。したがって、乾燥部7において記録紙Pの先端側と後端側とを同じ乾燥条件(乾燥用風の風量)で乾燥したとすると、記録紙Pの後端側の方が先端側に比べて自然乾燥時間(インクが付着してから乾燥部7に進入するまでの時間)が長い分だけインクの乾燥度合が高くなり、この結果、同じ記録紙Pでも先端側と後端側とで乾燥度合にばらつきが生じてしまう。
【0103】
これに対して、前記実施形態では、乾燥制御部204は、乾燥部7における記録紙Pの乾燥条件(本実施形態では乾燥用風の風量)を記録紙Pの先端側と後端側とで異ならせるようにしたことで、前記乾燥度合のばらつきを抑制することができる。
【0104】
すなわち、前記実施形態では、時刻t0で印刷部2における記録紙Pの印刷が終了した後に、記録紙Pがさらに下流側に搬送されてその先端が乾燥部7内に進入すると(図9の時刻t1になると)、乾燥制御部204においてステップS3〜S6の処理が実行され、この結果、乾燥装置53の作動モードが乾燥モードに設定されて、乾燥用風の風量は第1風量Q1となる。
【0105】
そして、記録紙Pがさらに下流側に搬送されて、記録紙Pの搬送方向中央位置が乾燥部7の後端位置に達すると(図9の時刻t2になると)、記録紙Pの先端側の半分の乾燥が終了する。記録紙Pの先端側の半分の乾燥が終了した後は、乾燥制御部204にてステップS7の処理が実行されて、乾燥用風の風量が第1風量Q1から第2風量Q2に減少する。こうして、乾燥部7における乾燥能力を、記録紙Pの後端側(最初に印刷された側)の方が先端側(最後に印刷された側)に比べて低下させることができる。よって、記録紙Pをスイッチバックさせることにより、スイッチバック後の記録紙Pの後端側の部分の自然乾燥時間が先端側に比べて長くなったとしても、乾燥部7を通過後の記録紙Pの先端側と後端側とでインクの乾燥度合にばらつきが生じることもない。これにより、記録紙Pの印刷画像に濃度ムラが生じるのを防止することができるとともに、記録紙Pの後端部に過乾燥による過度のカール(デカールユニット8により除去できないレベルのカール)が生じるのを防止することができる。
【0106】
また、前記実施形態では、乾燥制御部204は、乾燥対象となる記録紙Pの画像印刷に使用したインク量を算出して(ステップS4の処理を実行して)、該算出したインク量が多いほど、乾燥装置53から吹き出される乾燥用風の風量を増加させるように構成されている。これにより、例えば、複数の記録紙Pに対してそれぞれ画像を印刷する場合に、各記録紙Pに対してプリントヘッドHから吐出されるインク量が異なっていたとしても、乾燥部7を通過後の各記録紙Pのインクの乾燥度合を互いに略同じレベルにすることができる。したがって、各記録紙同士でインクの乾燥度合が異なることにより印刷画像の見え方に違いが生じるのを防止することができる。
【0107】
(変形例1)
図10は、前記実施形態の変形例1を示し、乾燥制御部204における記録紙Pの乾燥制御の内容を前記実施形態とは異ならせたものである。なお、以下の説明において、図9と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。
【0108】
すなわち、本変形例では、乾燥制御部204は、プリント制御部205からの記録紙Pの搬送位置情報を基に、加熱ヒータ55の作動制御を行うことで乾燥装置53から吹き出される乾燥用風の温度を制御するように構成されている。具体的には、乾燥制御部204は、記録紙Pの先端側の部分を乾燥する際には(時刻t1〜t2では)乾燥用風の温度を第1設定温度T1に制御する一方、記録紙Pの後端側の部分を乾燥する際には(時刻t2〜t3では)乾燥用風の温度を第1設定温度T1よりも低い第2設定温度T2(<T1)に制御するようにしている。第1設定温度T1及び第2設定温度T2は、記録紙Pの先端側と後端側とでインクの乾燥度合にばらつきが生じないように予め実験等により設定された温度であって、本変形例では、第1設定温度T1は80℃に設定され、第2設定温度T2は60℃に設定されている。該第1及び第2設定温度T1,T2はROMメモリ206内に記憶されている。以上の構成により、本変形例1では、前記実施形態と同様の作業効果を得ることができる。
【0109】
(変形例2)
図11は、前記実施形態の変形例2を示し、乾燥制御部204における記録紙Pの乾燥制御の内容を前記実施形態とは異ならせたものである。
【0110】
すなわち、本変形例では、乾燥制御部204は、プリント制御部205からの記録紙Pの搬送位置情報を基に、搬送ローラ対28の作動制御を行うことで乾燥部7における記録紙Pの搬送速度を制御するように構成されている。具体的には、乾燥制御部204は、乾燥部7にて記録紙Pの先端側の部分を乾燥する際には(時刻t1〜t2では)記録紙Pの搬送速度を第1設定速度V1に制御する一方、記録紙Pの後端側の部分を乾燥する際には(時刻t2〜t3)記録紙Pの搬送速度を第1設定速度V1よりも高い第2設定速度V2に制御するように構成されている。第1設定速度V1及び第2設定速度V2は、記録紙Pの先端側と後端側とでインクの乾燥度合にばらつきが生じないように予め実験等により設定された速度であって、本変形例では第1設定速度V1は30mm/sに設定され、第2設定速度V2は60mm/sに設定されている。該第1及び第2設定速度V1,V2は、ROMメモリ206内に記憶されている。以上の構成により、本変形例2では、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0111】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0112】
すなわち、前記実施形態及び変形例では、前記乾燥制御部204は、乾燥モードにおいて、乾燥用風の風量を第1風量Q1と第2風量Q2との二段階に制御するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、図12(a)に示すように、乾燥用風の風量を、三段階以上(図の例では、第1風量Q1〜第4風量Q4までの四段階)に変化させるようにしてもよい。また、図12(b)に示すように乾燥用風の風量を、時間の経過と共に徐々に低下(図の例では直線的に低下)させるようにしてもよい。
【0113】
また、前記実施形態及び変形例の任意の組み合わせも可能である。すなわち、前記実施形態、変形例1及び変形例2では、乾燥制御部204はそれぞれ、乾燥用風の風量、乾燥用風の温度、乾燥部7における記録紙Pの搬送速度を制御するようにしているが、前記乾燥制御部204によって、乾燥部7における乾燥用風の風量及び乾燥用風の温度及び記録紙Pの搬送速度のうち少なくとも一つを制御するものであればよい。
【0114】
また、前記実施形態では、乾燥装置53は搬送方向に並ぶ2つの吸入ファン54を有するものとされているが、これに限ったものではなく、例えば、吸入ファン54を一つだけ設けるようにしてもよいし、3つ以上設けるようにしてもよい。
【0115】
また、前記実施形態では、乾燥装置53は待機モードを有するものとされているが、必ずしも待機モードを設ける必要はない。
【0116】
また、前記実施形態では、乾燥装置53は、吸入ファン54と加熱ヒータ55とを有するものとされているが、これに限ったものではなく、例えば、吸入ファン54を設けずに加熱ヒータ55のみで構成するようにしてもよい。すなわち、乾燥装置53は、記録紙Pに付着したインクを乾燥することができる装置であればどのような装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、記録紙を搬送しながら該記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで所定画像を印刷する印刷部と、該印刷部の搬送下流側に配設され、該記録紙を先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出するスイッチバック機構と、該スイッチバック機構の搬送下流側に配設され、該記録紙を搬送しながらその印刷面を乾燥する乾燥部とを備えたプリンタに有用であり、特に、プリントヘッドの略真上に記録紙排出部を設けて、記録紙の印刷面が上側を向いた状態で記録紙排出部に排出されるように構成されたプリンタに有用である。
【符号の説明】
【0118】
A インクジェットプリンタ
H プリントヘッド
P 記録紙
2 印刷部
5 スイッチバック部
7 乾燥部
54 吸入ファン
151 搬送ベルト(記録紙排出部)
204 乾燥制御部(制御手段、検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って記録紙を搬送しながら該記録紙に対してプリントヘッドからインクを吐出することで所定画像を印刷する印刷部と、該印刷部の搬送下流側に配設され、該記録紙を搬送しながらその印刷面を乾燥する乾燥部と、前記印刷部の上方に配設され、前記乾燥部を通過後の記録紙が排出される記録紙排出部と、前記印刷部の搬送下流側で且つ前記乾燥部の搬送上流側に配設され、前記記録紙を先端側から受け入れてスイッチバックさせた後に後端側から排出することで、前記記録紙を前記記録紙排出部においてその印刷面が上側に向いた状態で排出可能とするスイッチバック部と、前記乾燥部における記録紙の乾燥条件を制御する制御手段とを備えたプリンタであって、
前記制御手段は、前記スイッチバック後の記録紙の先端側と後端側とで前記乾燥部における記録紙の乾燥条件を異ならせるように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
前記制御手段は、前記スイッチバック後の記録紙における後端側の部分の方が先端側の部分に比べて、前記乾燥部における記録紙の乾燥能力が低くなるように前記乾燥条件を制御するよう構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2記載のプリンタにおいて、
前記乾燥部は、前記記録紙の印刷面に対して乾燥用風を吹き付けることで該印刷面に付着したインクを乾燥させるように構成されており、
前記乾燥条件には、前記乾燥部における記録紙の搬送速度、前記乾燥用風の温度、及び前記乾燥用風の風量のうち少なくとも一つが含まれていることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
前記制御手段は、前記記録紙に対して前記所定画像を印刷するために前記プリントヘッドから吐出されたインクの量を検出する検出手段を有していて、該検出手段により検出されたインクの量に応じて、前記乾燥部における当該記録紙の乾燥条件を制御するように構成されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−139820(P2012−139820A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291854(P2010−291854)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】