説明

プリンタ

【課題】媒体上に感温インクの像を形成するにあたって、感温インクの変色による不都合が生じにくいプリンタを提供する。
【解決手段】媒体Mを搬送する搬送部50と、搬送部50による媒体Mの搬送路Pに設けられ、温度によって変色する感温インクの像を搬送される媒体Mに対して形成する画像形成部30と、画像形成部30の媒体搬送方向下流側に位置する搬送路Pに設けられ、搬送路Pを搬送された媒体Mを切断する切断部60と、切断部60の媒体搬送方向下流側に位置する搬送路Pに設けられ、切断された媒体Mに形成された感温インクの像を加熱または冷却して感温インクの像の発色状態を変更する発色変更部10と、発色変更部10の媒体搬送方向下流側に位置する搬送路Pに設けられ、発色変更部10により発色状態が変更された感温インクの像が形成された媒体Mを排紙する排紙口40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体上に像を形成する像形成部として複数の印字ヘッドを備えたプリンタが知られている。この種のプリンタでは、複数の像形成部が、それぞれのインクの像を、媒体上に形成することができる。また、インクとしては、温度によって変色する感温インクが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のプリンタでは、媒体上に感温インクの像を形成するにあたって、感温インクの変色による不都合が生じにくいことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態のプリンタは、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部による前記媒体の搬送路に設けられ、温度によって変色する感温インクの像を搬送される前記媒体に対して形成する画像形成部と、前記画像形成部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送された前記媒体を切断する切断部と、前記切断部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、切断された前記媒体に形成された前記感温インクの像を加熱または冷却して前記感温インクの像の発色状態を変更する発色変更部と、前記発色変更部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、前記発色変更部により発色状態が変更された前記感温インクの像が形成された前記媒体を排紙する排紙口と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図2は、感温インクの感温特性の一例を示す説明図であって、(a)は、一つの閾値温度を有した感温インクの変色特性、(b)は、二つの閾値温度を有した感温インクの変色特性を示す図である。
【図3】図3は、プリンタに含まれる冷却機構を示す正面図である。
【図4】図4は、図3の冷却機構に含まれる噴出部の断面図であって、(a)は、媒体に対してガスが直角に噴射される状態を示す図、(b)は、媒体に対してガスが斜めに噴射される状態を示す図である。
【図5】図5は、図3の冷却機構に含まれる噴出部の一部を台紙側から見た平面図である。
【図6】図6は、阻止部を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は、阻止部の側面を示す側面図である。
【図8】図8は、プリンタに含まれる制御回路の一例を示すブロック図である。
【図9】図9は、プリンタに含まれるCPUの一例を示すブロック図である。
【図10】図10は、プリンタで得られた媒体としての商品ラベルの一例を示す図であって、(a)は、感温インクの像が見えにくい(見えない)状態を示す図、(b)は、感温インクの像が見えやすい(見える)状態を示す図である。
【図11】図11は、プリンタに含まれるインクリボンカートリッジの一部を模式的に示す側面図であって、(a)は、インクリボンと媒体との密着区間が長いものを示す図、(b)は、インクリボンと媒体との密着区間が短いものを示す図である。
【図12】図12は、実施形態の変形例にかかるプリンタに含まれる可動プレートを示す平面図である。
【図13】図13は、変形例にかかるプリンタで得られた媒体としての商品ラベルの一例を示す図である。
【図14】図14は、第2の実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図15】図15は、プリンタに含まれる制御回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。本実施形態では、プリンタ1は、一例として、インクリボンを加熱してインクを紙等の媒体Mに転写するサーマルプリンタとして構成されている。媒体Mは、一例としては、図10に示すようなラベルである。
【0007】
複数の媒体Mは、帯状の台紙2の表面上に、所定の間隔(ピッチ)で貼り付けられる。なお、台紙2上に切込みが設けられ、媒体Mを台紙2から切り取れるように構成することもできる。
【0008】
図1に示すように、プリンタ1は、本体部1aの内部に、台紙2のロール2aを排紙口40まで導く搬送路Pを搬送部50により形成している。プリンタ1は、搬送路Pに沿わせてその媒体搬送方向上流側から媒体搬送方向下流側に向けて、印字ブロック30、カッタ機構60及び冷却機構10を順に配列させている。
【0009】
プリンタ1の印字ブロック30には、複数(本実施形態では四つ)のインクリボンカートリッジ3(3A〜3D)を着脱可能に装着することができる。複数のインクリボンカートリッジ3は、プリンタ1内に形成された帯状の台紙2の搬送路Pに沿って並べて配置されている。これら複数のインクリボンカートリッジ3は、それぞれ、ヘッド(サーマルヘッド)3aおよびインクリボン3d(図11参照)を有し、ヘッド3aによってインクリボン3dのインクを加熱することで、搬送路P上を搬送された媒体Mに、それぞれのインクの像(図1には図示せず)を形成する。すなわち、インクリボンカートリッジ3のヘッド(サーマルヘッド)3aが、像形成部に相当する。なお、インクリボンカートリッジ3の数は、四つには限定されず、種々に設定することができる。
【0010】
本体部1aの、搬送路Pの最上流側となる位置には、台紙2のロール2aが、着脱可能かつ回転可能に装着されている。搬送ローラ4の回動によってロール2aから台紙2が引き出され、搬送路P内で搬送される。
【0011】
搬送路Pは、インクリボンカートリッジ3の他、搬送ローラ4や補助ローラ5等の配置によって定められる。プリンタ1は、モータ6によって回転駆動される複数の搬送ローラ4を備えている。モータ6の回転は、回転伝達機構(減速機構)7を介して、各搬送ローラ4に伝達される。補助ローラ5は、搬送ローラ4とともに台紙2を挟持する位置や、複数の搬送ローラ4や補助ローラ5間で台紙2が架け渡される位置等に、配置される。なお、プリンタ1は、媒体Mを検出するセンサ8や、台紙2の張りを検出する張り検出機構9等も備えている。本実施形態では、これらモータ6や、回転伝達機構7、搬送ローラ4、補助ローラ5等によって、台紙2(媒体M)の搬送部50が構成されている。
【0012】
搬送部50の媒体搬送方向下流側には、搬送路Pの一部を形成する印字ブロック30が設けられている。このプリンタ1の印字ブロック30には、温度によって変色しない非感温インクのインクリボンを有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。また、このプリンタ1の印字ブロック30には、温度によって変色する感温インクのインクリボンを有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。さらに、このプリンタ1の印字ブロック30には、色違いのインクリボン(非感温インク、感温インク)を有するインクリボンカートリッジ3を装着することができる。インクリボンカートリッジ3は、本体部1aの印字ブロック30に設けられた複数のインクリボンカートリッジ3(3A〜3D)の装着位置のいずれかに、着脱可能に装着することができる。
【0013】
なお、インクリボンカートリッジ3に近接して設けられていて、インクリボン3dを介してヘッド(サーマルヘッド)3aに対向する搬送ローラ4は、いわゆるプラテンローラとして機能する。プラテンローラとして機能する搬送ローラ4は搬送路Pに沿ってその下方に配置されており、ヘッド(サーマルヘッド)3aはそのような搬送ローラ4に搬送路Pを介して接離自在に当接している。このような構造により、搬送ローラ4が回転駆動されることで台紙2(媒体M)に搬送力を与え、台紙2(媒体M)を排紙口40に向けて搬送する。
【0014】
感温インクには、例えば、図2の(a)に示すように、閾値温度Thを境界として発色状態が変化するものがある。一例として、図2の(a)の感温インクは、温度Tが閾値温度Thを超えた場合には白色であり(S2)、温度Tが閾値温度Th以下の場合には有色となる(S1)。媒体Mが白色である場合、感温インクが白色の状態(S2)では、媒体M上に形成されたその感温インクの像は見えにくくあるいは見えなくなる。なお、感温インクにおける温度による発色状態の変化は可逆変化である。
【0015】
また、感温インクには、例えば、図2の(b)に示すように、温度Tが下降する際と上昇する際とで相異なる閾値温度Th1,Th2を境界として発色状態が変化するものがある。一例として、図2の(b)の感温インクは、温度Tが下降する際には、温度Tが第一の閾値温度Th1より高い状態では白色であり(S2)、温度Tが第一の閾値温度Th1以下になったときに有色に変化する(S1)。媒体Mが白色である場合、感温インクが白色の状態(S2)では、媒体M上に形成されたその感温インクの像は見えにくくあるいは見えなくなる。また、温度Tが上昇する際には、温度Tが第二の閾値温度Th2以下の状態では有色であり(S1)、温度Tが第二の閾値温度Th2より高くなったときに白色に変化する(S2)。ここで、図2の(b)に示すように、第二の閾値温度Th2は第一の閾値温度Th1より高い。したがって、この場合は、温度Tが第一の閾値温度Th1と第二の閾値温度Th2との間にある状態では、温度Tが下降する場合と上昇する場合とで、感温インクの発色状態が異なる。なお、感温インクとしては、種々のものが開発されており、閾値温度Th,Th1,Th2や、各状態での色は、適宜に変更することが可能である。
【0016】
加えて、印字ブロック30の媒体搬送方向下流側には、搬送路Pを搬送された台紙2(媒体M)を切断する切断部であるカッタ機構60が設けられている。このようなカッタ機構60は、搬送路Pの一部を形成する。
【0017】
ところで、サーマルプリンタでは、像形成時(熱転写時)に温度Tが上昇する。したがって、プリンタ1で、媒体M上に、上述した例のような閾値温度Th,Th1,Th2より高い状態で媒体Mと同色に変化する感温インクの像が形成された場合、媒体M上に、その感温インクの像が形成されたのか否かが判別できなかったり、判別しにくかったりする場合がある。また、感温インクの種類によっては、媒体M上に形成された感温インクの像が、常温では視認しにくい場合もある。そこで、本実施形態では、プリンタ1は、媒体M上に形成された感温インクの像の発色状態を変更する発色変更部として、カッタ機構60の媒体搬送方向下流側に搬送路Pの一部を形成する冷却機構10を備えている。冷却機構10は、プリンタ1に設けられた排紙口40の近傍、かつ、搬送路Pに沿ってその下方に配置されている。本実施形態では、一例として、冷却機構10によって感温インクの像を冷却することで、温度Tが下がり、その感温インクの像が顕在化してより視認しやすくなり、感温インクの像の媒体M上での形成状況を確認しやすくなる。すなわち、冷却機構10は、感温インクの像の発色変更部や、可視化部と言うこともできる。
【0018】
そして、本実施形態では、冷却機構10は、一例として、ガス(気体)を噴出させ、例えば、その際の断熱膨張や潜熱等によって、媒体Mひいては感温インクの像の温度を低下させる。具体的に、冷却機構10は、ガスシリンダのガスカートリッジ11の装着部10aや、噴出部10b、チューブ10c、バルブ10d、冷却フィン10e等を有している。
【0019】
装着部10aには、ガスカートリッジ11が着脱可能に装着される。装着部10aは、ガスカートリッジ11のコネクタ11aを受容するコネクタとして機能する。また、装着部10aは、ガスカートリッジ11を取り外す際に用いる可動レバー(図示せず)や、装着位置でガスカートリッジ11を固定するロック機構(図示せず)等を、有することができる。
【0020】
ガスカートリッジ11は、例えば、液化されたガスが封入されたガスシリンダ(ガスボンベ)として構成することができる。ガス(冷媒)としては、例えば、テトラフルオロエタン等を用いることができる。
【0021】
噴出部10bは、図1,3に示すように、台紙2の裏面に沿って当該台紙2の幅方向に沿って延びた姿勢で設けられている。噴出部10bは、内部にガスの通路が形成されたガスの管として設けられており、図5に示すように、その上壁10fには、一定の間隔(ピッチ)で複数のノズル孔10gが並べて設けられている。ノズル孔10gからは、台紙2の裏面に向けてガスが噴出される。なお、ノズル孔10gは、複数列設けることができる。
【0022】
また、噴出部10bは、台紙2の幅方向に沿った回動軸Ax回りに回動可能にブラケット10hに支持されており、図4の(a)や(b)に示すように、ガスGの噴出角度(噴出方向)を変化させることができる。具体的には、図3に示すように、噴出部10bが所定の噴出角度に配置された状態で、ブラケット10hの貫通孔(図示せず)に挿通された噴出部10bの雄ねじ部10iにナット10jを締め付けることで、噴出部10bを任意の角度で固定することができる。噴出角度を可変設定することで、ガスGによる台紙2の冷却度合いを可変設定することができる。例えば、図4の(a)の場合は、(b)の場合に比べてより強く冷却されるため、媒体M上の感温インクの像は、より低温の状態となる。このように、本実施形態では、噴出部10bは、噴出状態可変機構を有している。
【0023】
チューブ10cは、噴出部10bの角度が変わっても装着部10aと噴出部10bとの間のガスの管路として機能するため、所要の耐圧性かつ柔軟性を有している。
【0024】
バルブ10dは、ガスカートリッジ11から噴出部10bに至るガスの通路を開閉することで、噴出部10bからのガスの噴出および停止を切り替えることができる。バルブ10dは、一例としては、CPU20a(図8参照)からの電気信号によって開くソレノイドバルブとして構成することができ、装着部10aに取り付けることができる。なお、バルブ10dの開閉(開期間の長さ、開閉の反復回数、反復周期等)を制御することで、ガスの噴出状態を可変設定することができる。
【0025】
冷却フィン10eは、ガスカートリッジ11の外周面11bに密接あるいは近接したベース部10kと、媒体搬送方向に沿った姿勢でベース部10kから台紙2の裏面に近接する位置に向けて突出した複数の板状部10mと、を有している。ガスの噴出によってガスカートリッジ11の温度が低下する場合、冷却フィン10eを設けることで、媒体Mの冷却性能をより高めることができる。なお、冷却機構10は、本体部1aに着脱可能に装着することができる。
【0026】
加えて、冷却機構10と印字ブロック30との間に位置するように、冷却機構10により冷却された空気の少なくとも一部が印字ブロック30に流入するのを阻止するとともに、冷却機構10により冷却された空気が一定箇所に留まるのを阻止する阻止部70を備えている。阻止部70は、冷却機構10により冷却された空気を吹き送る送風部71と、その送風部71により吹き送られる空気が印字ブロック30に到達しないように案内する案内部72とを有している。
【0027】
図6は、阻止部70を概略的に示す斜視図である。図6に示すように、阻止部70の案内部72は、送風部71により吹き送られる空気を、媒体Mを媒体搬送方向下流側に案内する搬送路Pの一部を形成する形状を有する部材である。なお、この案内部72は、例えば、金属材や樹脂材などで形成される。案内部72は、搬送路Pの媒体搬送方向下流端寄りに配置される正面壁部72Aと、その正面壁部72Aに対向して配置される背面壁部72Bと、それら正面壁部72Aおよび背面壁部72Bを連結して搬送路Pの上方で搬送路Pの搬送面に平行な天井面部72Cとから構成されている。
【0028】
図7は、阻止部70の側面を示す側面図である。図7に示すように、阻止部70の案内部72は、側方断面が、略凹状となるように形成されている。なお、案内部72は、幅方向Zの全長が、搬送路Pの幅の全長と略同じであり、搬送路Pの幅に合せて搬送路Pの一面(上面)側に近接して配置される。
【0029】
このような形状を有する案内部72は、送風部71から吹き送られた空気(風)を、送風部71の下方に配置された冷却機構10に向って案内し、その案内した風により冷却機構10で冷却された空気(冷気)Yを、正面壁部72Aの下方に形成される排出口Oから排出させる。
【0030】
また、阻止部70には、搬送ローラ4が設けられている。搬送ローラ4は、搬送路Pに沿ってその上方に配置されており、冷却機構10は搬送ローラ4に搬送路Pを介して接離自在に当接している。このような構造により、搬送ローラ4が回転駆動されることで台紙2(媒体M)に搬送力を与え、台紙2(媒体M)を排紙口40に向けて搬送する。
【0031】
加えて、図1に示すように、プリンタ1は、排紙口40近傍の本体部1aに、結露除去部材16を備えている。この結露除去部材16は、例えばスポンジ材やゴムベラなどで構成されている。このような結露除去部材16を排紙口40近傍の本体部1aに備えることにより、排紙口40から排紙される際に、媒体Mを発色する際に台紙2に生じる少量の結露による水分を取り除くことができるので、印刷および切断されたラベルの取り扱い(ラベルが付きにくくなる等)が容易になる。
【0032】
また、図8に示すように、プリンタ1の制御回路20は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)20aや、ROM(Read Only Memory)20b、RAM(Random Access Memory)20c、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)20d、通信インタフェース(I/F)20e、搬送モータコントローラ20f、ヘッドコントローラ20g、リボンモータコントローラ20h、バルブコントローラ20i、入力部コントローラ20j、出力部コントローラ20k、センサコントローラ20m、カッタモータコントローラ20q、送風部コントローラ20r等を有し、これらが、アドレスバスやデータバス等のバス20nを介して接続されている。
【0033】
CPU20aは、ROM20b等に記憶されたコンピュータ読み取り可能な各種プログラムを実行することにより、プリンタ1の各部を制御する。ROM20bは、例えば、CPU20aが実行する各種データや各種プログラム(BIOS(Basic Input Output System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等)等を記憶する。RAM20cは、CPU20aが各種プログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。また、NVRAM20dは、例えば、OS(Operating System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等の他、電源がOFFされても保持しておきたい各種のデータを記憶する。
【0034】
また、通信インタフェース(I/F)20eは、電気通信回線等を通じて接続される他の装置とのデータ通信を制御する。
【0035】
搬送モータコントローラ20fは、CPU20aからの指示に基づいてモータ6を制御する。ヘッドコントローラ20gは、CPU20aからの指示に基づいてヘッド3a(図11参照)等を制御する。リボンモータコントローラ20hは、CPU20aからの指示に基づいてインクリボンカートリッジ3に内蔵されるリボンモータ3bを制御する。また、バルブコントローラ20iは、CPU20aからの指示に基づいて冷却機構10のバルブ10d(のソレノイド)を制御する。
【0036】
カッタモータコントローラ20qは、CPU20aからの指示に基づいてカッタ機構60の駆動源であるカッタモータ61を駆動制御する。また、送風部コントローラ20rは、CPU20aからの指示に基づいて阻止部70の送風部71を駆動制御する。
【0037】
また、入力部コントローラ20jは、ユーザ等の手動操作や音声等の入力部(例えば、押しボタンや、タッチパネル、キーボード、マイク、つまみ、ディップスイッチ等)12で入力された信号を、CPU20aに送る。出力部コントローラ20kは、CPU20aからの指示に基づいて画像や音声等の出力部(例えば、ディスプレイや、発光部、スピーカ、ブザー等)13を制御する。また、センサコントローラ20mは、センサ8の検出結果を示す信号を、CPU20aに送る。
【0038】
制御部としてのCPU20aは、図9に示すように、プログラムにしたがって、プリント制御部21aや、発色変更設定部21b、カウント部21c、判断部21d、発色変更制御部21e等として動作する。プログラムには、少なくとも、プリント制御部21aや、発色変更設定部21b、カウント部21c、判断部21d、発色変更制御部21eに対応するモジュールが含まれる。
【0039】
プリント制御部21aは、搬送モータコントローラ20fや、ヘッドコントローラ20g、リボンモータコントローラ20h、カッタモータコントローラ20q等を介して、モータ6や、ヘッド3a、リボンモータ3b、カッタモータ61等を制御する。プリント制御部21aの動作によって、媒体M上に、文字や画像等の像が形成される。また、プリント制御部21aの動作によって、画像形成後の台紙2(媒体M)を搬送路P上で印字ブロック30の媒体搬送方向下流側に位置付けたカッタ機構60で切断して冷却機構10に渡す。
【0040】
発色変更設定部21bは、媒体M上の感温インクの像の発色変更(本実施形態では冷却機構10による冷却)に関する各種設定を行う。具体的には、入力部12で入力された、複数の媒体Mに対して発色変更(冷却)を実行するピッチ(頻度)や、バルブ10dの開閉状態(開閉タイミング、開閉期間、開閉回数、開閉周期等)を設定するパラメータ等を、NVRAM20d等の記憶部に保持したりすることができる。
【0041】
カウント部21cは、センサ8で検出された媒体Mの数(または像形成領域の数)をカウントする。また、判断部21dは、カウント部21cでカウントされたカウント値と、記憶部に記憶されたピッチ(頻度)とを比較して、発色変更(本実施形態では冷却)を実行するか否かを判断する。そして、発色変更制御部21eは、判断部21dで発色変更を実行すると決定された媒体M(上に形成された感温インクの像)に対して発色変更(本実施形態では冷却)を実行するために、各部(本実施形態では冷却機構10の各部)を制御する。本実施形態では、発色変更制御部21eは、バルブ10dの開閉状態を制御することでガスの噴出状態を制御して、媒体Mの発色変更を実行する。なお、発色変更制御部21eは、噴出状態可変機構にも相当する。このように、本実施形態では、ピッチ(頻度)の設定に応じて、全ての媒体M上に形成された感温インクの像に対して発色変更を実行することができるし、あるいは、いくつかの媒体Mに形成された感温インクの像に対して発色変更を実行することもできる。
【0042】
以上のような構成のプリンタ1によって、例えば、図10に示すような媒体Mを得ることができる。図10の(a)は、冷却機構10による冷却が実行されることなくプリンタ1から出力された媒体Mとしての商品ラベルを示す。図10(b)は、冷却機構10による冷却が実行されてプリンタ1から出力された媒体Mとしての商品ラベルを示す。このように、冷却機構10によって冷却を実行することで、感温インクの像Im1,Im2が顕在化するため、プリンタ1の使用者や作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が媒体M上に形成されたことを、視認しやすくなる。また、図10には、媒体M上に、閾値温度Thが異なる2種類の感温インクの像Im1,Im2を形成した場合が例示されている。さらに、媒体M上には、温度によって発色状態が変化しない通常のインクによって形成された像Im3(例えばバーコード等)も形成されている。
【0043】
図10に例示される媒体Mは、一例としては、商品の冷蔵あるいは冷凍における温度管理に利用することができる。すなわち、プリンタ1によって図2の(a)に示した感温特性を有した感温インクの像Im1,Im2を形成した媒体Mが、商品のラベルとして用いられる。プリンタ1では、閾値温度Thが商品の冷蔵あるいは冷凍でそれ以上の温度上昇が許容されない管理温度(例えば5℃)である感温インクを用いる。こうすることで、商品の温度が閾値温度Thを超えた場合には、媒体Mは図10の(a)の状態となって、感温インクの像Im1,Im2は、見えにくく、あるいは見えなくなる(図2の(b)のS2)。一方、商品の温度が管理温度としての閾値温度Th以下である場合、媒体Mは図10の(b)の状態(図2の(a)のS1)となる。すなわち、作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が見えやすい(見える)かあるいは見えにくい(見えない)かによって、商品の温度が管理温度より高いか低いかを判断することができる。さらに、図10の例では、媒体M上に、閾値温度Thの異なる二種類の感温インクの像Im1,Im2が形成されることで、二種類の管理温度(第一管理温度、第二管理温度)に対する商品の管理結果が表示される。さらに、この例では、冷却機構10によって媒体Mを冷却することで、媒体Mでの感温インクの像Im1,Im2の形成状態を視認することができる。
【0044】
また、別の一例では、プリンタ1によって、図10の媒体Mとしての商品ラベル上に、図2の(b)に示したような降温時と昇温時とでヒステリシスとなる感温特性を有する感温インクの像Im1,Im2を形成することができる。その場合、プリンタ1は、媒体M上に、商品の冷蔵あるいは冷凍でそれ以上の温度上昇が許容されない管理温度(例えば−5℃)が閾値温度Th2であり、かつ、所定の冷蔵あるいは冷凍では実現されない温度(例えば−30℃)が閾値温度Th1である感温インクによって、像Im1,Im2を形成する。そして、プリンタ1では、冷却機構10が像Im1,Im2を閾値温度Th1以下(例えば−40℃)となるまで冷却することで、媒体M上に、プリンタ1によって形成された像Im1,Im2が顕在化される。なお、この例の場合は、全ての媒体Mについて、冷却機構10による冷却が実行され、一旦、閾値温度Th1以下に下げられる。こうすることで、商品の温度が、一度でも管理温度としての閾値温度Th2を超えた場合には、媒体Mは図10の(a)の状態となって、感温インクの像Im1,Im2が見えにくく、あるいは見えなくなり(図2の(b)のS2)、その状態(S2)が維持される。一方、商品の温度が管理温度としての閾値温度Th2以下に維持された場合、媒体Mは図10の(b)の状態(図2の(b)のS1)で維持される。すなわち、作業者等は、感温インクの像Im1,Im2が見えやすい(見えない)かあるいは見えにくい(見える)かによって、商品の温度が管理温度を超えたことがあったか否かを判断することができる。なお、この場合も、媒体M上に、閾値温度Th2の異なる二種類の感温インクの像Im1,Im2が形成されることで、二種類の管理温度(第一管理温度、第二管理温度)に対する商品の管理結果が表示される。
【0045】
なお、本実施形態にかかるプリンタ1では、図11に示すように、ヘッド3aに対するリボンローラ3cの位置が異なるインクリボンカートリッジ3を用いることができる。図11の(a)の構成では、インクと媒体Mとの接触時間が長くなり、(b)の構成では、インクリボン3dと媒体Mとの接触時間が短くなる。どちらの構成とするかは、感温インクや通常インクの特性に応じて選択することができる。本実施形態では、インクリボンカートリッジ3がインクリボン保持部に相当する。また、リボンモータ3bやリボンローラ3c等によって、リボン搬送部が構築されている。
【0046】
以上、説明したように、本実施形態にかかるプリンタ1は、像形成部としてのインクリボンカートリッジ3のヘッド3aが、媒体M上に感温インクの像を形成し、発色変更部としての冷却機構10が、像の発色を変更する。よって、本実施形態によれば、プリンタ1から出力された媒体M上に形成された感温インクの像について、所期の発色状態を得ることができる。また、媒体M上に所望の感温インクの像が形成されたか否かを確認しやすくなる。
【0047】
また、本実施形態では、発色変更部としての冷却機構10は、ガス(気体)を噴出して温度を低下させる。よって、冷却機構10を、比較的簡素な構成として得ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、プリンタ1は、ガスの噴出状態を変化させる噴出状態可変機構として、噴出部10bの姿勢(例えばノズル孔10gからのガスGの噴射方向)を変化させる機構や、ガスの噴出タイミングや噴出期間(例えばバルブ10dの開閉期間等)等を可変設定する機構を備えている。よって、ガスによる冷却状態をより適切に調整することが可能となる。
【0049】
なお、噴出状態可変機構としては、例えば、図12に示すように、有効となるノズル孔10gを変更する可動プレート14を設けることができる。可動プレート14は、噴出部10bの上壁10f上に、当該上壁10fに沿ってスライド可能に支持される。可動プレート14には、所定の位置で全てのノズル孔10gと重なり合うことができる貫通孔14aと、別の位置で一部のノズル孔10gと重なり合うことができる貫通孔14bとが設けられている。可動プレート14の位置をスライドさせることで、全てのノズル孔10gから貫通孔14aを介してガスが噴出される状態と、一部のノズル孔10gから貫通孔14bを介してガスが噴出される状態とを切り替えることができる。これにより、ガスの量を可変設定することで、感温インクの像の冷却度合いを可変設定することができる。
【0050】
また、本実施形態では、プリンタ1は、媒体M上に相異なる感温インクの像を形成する複数の像形成部としてのインクリボンカートリッジ3のヘッド3aを備えることができる。よって、媒体M上に、感温特性が異なる複数のインクの像を形成することができ、より多段階での温度管理が可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、冷却機構10は、抽出された(選択された、あるいは指定された)感温インクの像を冷却して発色状態を変化させる。このような構成により、全ての感温インクの像を冷却する場合に比べて、エネルギ消費を抑制することができる。
【0052】
また、プリンタ1では、上記感温インクとは逆の特性、すなわち、管理温度を超えたときに顕在化する特性の感温インクを、用いることもできる。その一例として、図13に示すように、商品ラベルとしての媒体Mには、閾値温度を超えたときに、感温インクの像Im4,Im5が、管理温度を超えたことを示す「注意」や「警告」のメッセージが現れる。この例でも、媒体Mには、閾値温度が異なる感温インクの像Im4,Im5が形成されているため、異なる温度での商品の管理が可能となる。また、その場合、図13の例に対応するプリンタ1では、発色変更部として、冷却機構10に替えて、加熱機構を設けることができる。また、この例では、感温インクの像Im4,Im5は、所定の温度条件が満たされなかったときに顕在化して、注意あるいは警告等を示す像である。
【0053】
このように本実施形態によれば、発色変更部としての冷却機構10で発色状態が変更された媒体M上に形成された感温インクの像がカッタ機構60で切断するまでに温度の上昇等の要因によって消えてしまった場合には、カッタ機構60で切断された後の媒体Mでは媒体M上に所望の感温インクの像が形成されたか否かを確認することができないという問題に対し、切断部であるカッタ機構60を発色変更部としての冷却機構10の上流に配置させることにより、発色変更部により発色状態が変更された感温インクの像が形成された媒体を排紙口からの排紙直後に、発色状態が変更された感温インクの像を確認することができるので、媒体M上に感温インクの像を形成するにあたって、感温インクの変色による不都合が生じにくいプリンタを提供することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0055】
図14は、第2の実施形態にかかるプリンタの概略構成を示す側面図である。図14に示すように、本実施形態にかかるプリンタ101は、第1の実施形態のプリンタ1の冷却機構10に代えて、発色変更部として冷却素子90を搬送路Pに沿ってその下方に配置している。この冷却素子90は、例えば、ペルティエ素子である。このようなペルティエ素子は、阻止部70の送風部71により吹き送られる空気によって冷却される。
【0056】
このような冷却素子90は、図15に示すように、CPU20aからの指示に基づいて冷却素子コントローラ20sによって制御される。
【0057】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態のプリンタ1の冷却機構10に代えて冷却素子90を備えるようにしたことにより、冷却素子90は、第1の実施形態のプリンタ1の冷却機構10と比較して、冷却装置の体積が小さくプリンタ装置の小型化が容易であり、冷却に際して湿度の変化が少なくなるとともに、騒音・振動の発生を抑えることができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、プリンタは、相異なる感温インクの像を形成する像形成部を三つ以上備えることもできる。また、プリンタは、発色変更部として、冷却機構と加熱機構との双方を備えることができる。その場合、例えば、冷却機構および加熱機構のうち一方を感温インクの像に作用させて一旦見えやすい状態(見える状態)にして、その後、他方を感温インクの像に作用させて見えにくい状態(見えない状態)にする(すなわち、元の状態に戻す)ことができる。こうすれば、見えやすい状態(見える状態)で、作業者等が感温インクの像を確認することができる。また、冷却機構の数、加熱機構の数は、種々に変更することができる。
【0059】
また、プリンタは、冷却機構や加熱機構として、冷却あるいは加熱されたガスの噴出部を有し、その噴出部にコネクタや配管等を介して外部から冷却されたガスあるいは加熱されたガスを送り込むことができる。このような構成では、ガスカートリッジ等を省略できる分、プリンタをより小型化することができる。
【0060】
また、プリンタは、インクを用いる他の形式のプリンタ(例えばインクジェットプリンタ等)として構成することができる。インクジェットプリンタの場合、インクヘッドが像形成部に相当する。
【0061】
また、各構成要素(プリントシステム、プリンタ、媒体、インクリボンカートリッジ、像形成部、発色変更部(冷却機構、加熱機構、噴出状態可変機構、発色変更装置、像、感温インク等)のスペック(方式や、構造、形状、大きさ、配置、位置、個数、成分、感温特性等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0062】
上記実施形態および変形例によれば、媒体上に感温インクの像を形成するにあたって、感温インクの変色による不都合が生じにくいプリンタを得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1,101 プリンタ
4 搬送ローラ
10,90 発色変更部
16 結露除去部材
30 画像形成部
40 排紙口
50 搬送部
60 切断部
70 阻止部
Im1,Im2,Im4,Im5 (感温インクの)像
M 媒体
P 搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開平7−256965号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部による前記媒体の搬送路に設けられ、温度によって変色する感温インクの像を前記媒体に対して形成する画像形成部と、
前記画像形成部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送された前記媒体を切断する切断部と、
前記切断部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、切断された前記媒体に形成された前記感温インクの像を加熱または冷却して前記感温インクの像の発色状態を変更する発色変更部と、
前記発色変更部の媒体搬送方向下流側に位置する前記搬送路に設けられ、前記発色変更部により発色状態が変更された前記感温インクの像が形成された前記媒体を排紙する排紙口と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記排紙口に設けられ、前記搬送路を搬送された前記媒体に生じる当該媒体を発色させる際に生じる結露による水分を取り除く結露除去部材を更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記切断部と前記発色変更部との間に設けられ、前記発色変更部により加熱または冷却された空気について前記切断部および前記画像形成部に対する流入を阻止する阻止部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
前記阻止部は、前記搬送部を構成するものであって、前記切断部によって切断された前記媒体に搬送力を与え、当該媒体を前記排紙口に向けて搬送する搬送ローラを備える、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載のプリンタ。
【請求項5】
前記発色変更部は、気体を噴出させて前記媒体に形成された前記感温インクの像の温度を低下させる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載のプリンタ。
【請求項6】
前記発色変更部は、ペルティエ素子を用いて前記媒体に形成された前記感温インクの像の温度を低下させる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−139894(P2012−139894A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293606(P2010−293606)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】