説明

プリント回路基板

【目的】 基板上に形成する回路素子の回路定数を、パターンの構造,サイズを同一としたままで微妙に調整することのできるプリント回路基板を提供する。
【構成】 回路素子を形成するパターンの構造,サイズを変えるとともに、その材料として導電性材料,誘電性材料,磁性材料を選択して使用することによって、回路素子の回路定数を設定するようにした。例えば、フィルタ素子2の櫛形パターン2a,2bには磁性材料を使用し、オーバーコート材2cには誘電性材料を使用する。そして、使用する磁性材料,誘電性材料あるいは導電性材料のそれぞれについて成分や配合を変えて、透磁率,誘電率あるいは導電率を適宜に変えれば、基板上に形成する回路素子の回路定数を、パターンの構造,サイズを同一としたままで微妙に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子機器に用いられるプリント回路基板、特にパターンによって回路素子を形成して成るプリント回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、高周波回路等を構成するプリント回路基板では、基板上に、パターンによって回路素子を形成している。即ち、パターンの構造(形状,層構造)およびそのサイズを変えることによって、回路素子のL(インダクタンス),C(キャパシタンス),R(抵抗)といった回路定数を設定している。例えば、スパイラルパターンやパラレルパターンにより、インダクタを形成したり、遅延時間を持たせたりして指定信号回路を形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこの種のプリント回路基板では、その回路素子の回路定数が、パターンの構造,サイズによって決まってしまうため、パターンの構造,サイズを同一としたままで回路定数を微妙に調整することは不可能である。従って、設計通りの回路定数を持った回路素子を形成することは非常に難しかった。
【0004】本発明は、この問題を解決し、基板上に形成する回路素子の回路定数を、パターンの構造,サイズを同一としたままで微妙に調整することのできるプリント回路基板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係るプリント回路基板では、回路素子(2,5,6,7)を形成するパターン(2a,2b,5a,6a,7a,7b)の構造,サイズを変えるとともに、任意の規定されたサイズ内であってもその回路素子の材料の導電率,誘電率,透磁率を変更することによって、所望の回路定数を得るようにした。
【0006】
【作用】上記構成のプリント回路基板では、回路素子(2,5,6,7)の機能に応じて導電性材料あるいは誘電性材料あるいは磁性材料を選択し、その選択した材料のそれぞれについて成分や配合を変えて導電率あるいは誘電率あるいは透磁率を適宜に変えれば、パターン(2a,2b,5a,6a,7a,7b)の構造,サイズを同一としたままで、回路定数を微妙に調整することが可能となる。
【0007】なお、上記カッコ内の符号は、図面を参照するためのものであり、何等本発明の構成を限定するものではない。
【0008】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
〈実施例1〉図1は、実施例1におけるプリント回路基板の要部平面図、図2は図1のA−A線断面図である。
【0009】この実施例は、基板1上に回路素子としてフィルタ素子2を形成した例を示すものである。図のようにそのフィルタ素子2は、一対の櫛形パターン2a,2bが対向した状態で組み合わされるとともに、オーバーコート材2cでコートされたパターン構造を有し、所定のサイズに形成されている。
【0010】上記一対の櫛形パターン2a,2bは、材料として、熱硬化性樹脂に粉末状のフェライトを混入して成るペースト状の磁性材料が使用され、そのペースト状の磁性材料が基板1上に塗布されることによって形成されたものである。そして各パターン2a,2bには信号線3が接合されている。このようにペースト状の材料を用いることにより、パターンを基板上にスクリーン印刷等によって簡単に形成することができる。
【0011】また、上記オーバーコート材2cは、樹脂にグラスファイバを混入して成る誘電性材料であり、上記櫛形パターン2a,2bの上から、パターンの隙間をも埋めるように吹き付け塗装されている。
【0012】上記構成のプリント回路基板では、フィルタ素子2を形成するパターンの構造,サイズを適宜に設定するとともに、その素子2の材料として磁性材料と誘電性材料とを選択して使用することによって、インダクタンスとキャパシタンスとの回路定数を設計通りの大きな値に設定している。しかも、使用する磁性材料と誘電性材料とのそれぞれについて成分や配合を変えれば、透磁率および誘電率が変わるため、フィルタ素子2のインダクタンスとキャパシタンスとを微調整することができる。
〈実施例2〉図3は、実施例2におけるプリント回路基板の要部平面図である。
【0013】この実施例は、基板1上に、電源/GND系のノイズフィルタ回路として3つのフィルタ素子(回路素子)5,6,7を形成した例を示すものである。電源ライン9には、抵抗およびインダクタンスの大きな、パラレルパターン5aを有するフィルタ素子5とスパイラルパターン6aを有するフィルタ素子6とが直列に配置され、また電源ライン9とGNDライン10との間には、キャパシタンスが大きく、インダクタンスも含む一対の対向した櫛形パターン7a,7bを有するフィルタ素子7が配置されている。
【0014】上記各フィルタ素子5,6,7は、それぞれのパターン5a,6a,7a,7bがオーバーコート材5b,6b,7cでコートされたパターン構造を有し、所定のサイズに形成されている。
【0015】さらに、各フィルタ素子5,6,7およびオーバーコート材5b,6b,7cは、それぞれの材料として、磁性材料あるいは導電性材料あるいは誘電性材料が選択されて使用されており、それにより、電源ライン9にのった特定周波数のノイズを外部に漏らさないように、抵抗,キャパシタンス,インダクタンスの回路定数が適宜に設定されている。
【0016】上記導電性材料としては、樹脂に、金属微粉末、あるいはカーボン、あるいは金属酸化物を混入して成るものが用いられる。この導電性材料を使用する場合には、メッキを利用することによって基板1上に簡単に回路素子を形成することができる。
【0017】また、上記誘電性材料としては、樹脂,グラスファイバ,セラミックのいずれか1種類から成るもの、あるいは3種類を選択的に混合して成るものが用いられる。この誘電性材料を使用する場合には、電着を利用することによって基板1上に簡単に回路素子を形成することができる。
【0018】さらに、上記磁性材料としては、樹脂に、フェライト、あるいは金属酸化物、あるいはアモルファスを混入して成るものが用いられる。この磁性材料を使用する場合には、メッキを利用することによって基板1上に簡単に回路素子を形成することができる。
【0019】そして、使用する導電性材料,誘電性材料,磁性材料のそれぞれについて成分や配合を変えれば、導電率,誘電率,透磁率が変わるため、各フィルタ素子5,6,7の抵抗,キャパシタンス,インダクタンスを微調整することができる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るプリント回路基板では、回路素子を形成するパターンの構造,サイズを変えるだけでなく、その回路素子の材料として導電性材料,誘電性材料,磁性材料を選択して使用することによって、回路定数を設定する。このため、使用する導電性材料,誘電性材料,磁性材料のそれぞれについて成分や配合を変えて、導電率,誘電率,透磁率を変えることにより、基板上に形成する回路素子の回路定数を、パターンの構造,サイズを同一としたままで微妙に調整することができる。
【0021】従って、例えば、導電率,誘電率,透磁率が段階的に異なる複数種類の材料を用意しておけば、所望の周波数特性を持ったフィルタ等を、他の部品を実装することなく基板上に形成することができる。これは、コスト面でも、基板上の実装空間の確保の面でも大変有効である。また特性面でも、効果的に機能する回路素子を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるプリント回路基板の要部平面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の実施例2におけるプリント回路基板の要部平面図。
【符号の説明】
1 基板
2,5,6,7 フィルタ素子(回路素子)
2a,2b,7a,7b 櫛形パターン
5a パラレルパターン
6a スパイラルパターン
2c,5b,6b,7c オーバーコート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に、パターンによって回路素子を形成して成るプリント回路基板において、上記回路素子は、フィルタであり、L,C,Rのうち少なくとも2つ以上の特性を合わせ持っており、該回路素子を形成するパターンの構造,サイズを変えるとともに、任意の規定されたサイズ内であっても該回路素子の材料の導電率,誘電率,透磁率を変更することによって、所望の回路定数が得られることを特徴とするプリント回路基板。
【請求項2】 上記導電率を変化させる材料としては、樹脂に、金属微粉末、あるいはカーボン、あるいは金属酸化物を混入して成るものであることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板。
【請求項3】 上記誘電率を変化させる材料としては、樹脂,グラスファイバ,セラミックのいずれか1種類から成るもの、あるいは3種類を選択的に混合して成るものであることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板。
【請求項4】 上記透磁率を変化させる材料としては、樹脂に、フェライト、あるいは金属酸化物、あるいはアモルファスを混入して成るものであることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板。
【請求項5】 上記回路素子の材料がペースト状であり、該ペースト状材料が上記基板上に塗布されることによって上記回路素子が形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプリント回路基板。
【請求項6】 上記回路素子の材料として導電性材料あるいは磁性材料が選択され、かつ該導電性材料あるいは磁性材料が、上記基板上にメッキされることによって上記回路素子が形成されたことを特徴とする請求項1,2,4のいずれか1項に記載のプリント回路基板。
【請求項7】 上記回路素子の材料として誘電性材料が選択され、かつ該誘電性材料が、上記基板上に電着されることによって上記回路素子が形成されたことを特徴とする請求項1または3に記載のプリント回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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