説明

プリント回路板

【課題】 高温条件下及び高湿度条件下での寸法安定性、材料の再利用性等に優れたプリント回路板を提供する。
【解決手段】 基板フィルムと導体回路とを接着剤層を介して積層一体化したプリント回路板において、基板フィルムとして、弾性率が500kg/mm2 以上、熱膨張係数が1.5×10-5/℃以下、湿度膨張係数が1.2×10-5/%RH以下、水蒸気透過率が15g/m2 /mil・day以下、吸水率が2%以下、融点が280℃以下であるポリエチレンナフタレートフィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として電気・電子機器分野で使用される機能性部品であるプリント回路板に係り、特には、フレキシブルプリント回路板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電気・電子機器にはプリント回路板が多く用いられている。プリント回路板は、電気絶縁性を有する基板フィルムと導体回路を接着剤を介して積層一体化することにより形成され、通常、導体回路を、接着剤を介して、2枚の基板フィルムで挟持することにより形成される。また、複数の導体回路と複数の基板フィルムを接着剤を介して、積層一体化する場合もある。
【0003】従来、これら基板フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムが多く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、エレクトロニクス分野の発展がめざましく、電気・電子機器の高密度化、軽薄短小化に伴って、それらに用いられるプリント回路板も高密度化が求められ、回路パターンの寸法安定性の向上が益々厳しく要求されている。
【0005】特に、高湿度条件下では、プリント回路板に水分が吸収され、プリント回路板が寸法変化を生じ、プリント回路板とコネクター等の他の電子部品との接続不良が生じるので、耐湿信頼性の向上が要求されている。
【0006】さらに、世界的な環境保全対策のため、プリント回路板においても、材料資源の再利用による有効活用が求められている。
【0007】上記のようなプリント回路板の寸法安定性、耐湿信頼性、材料の再利用性等の要求特性を満足させるためには、最適な基板フィルムおよび接着剤組成物を選択し、プリント回路板の製造を設計する必要がある。その際、基板フィルムの種々の物理特性および、場合により、接着剤の組成等がプリント回路板の特性に及ぼす影響を十分に考慮する必要がある。特に基板フィルムの物理特性の最適化がプリント回路板の要求特性を満足させるためには重要である。
【0008】ところで、従来、基板フィルムとして用いられているポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムでは、プリント回路板の上記要求特性をすべて満足させるようなものはない。また、基板フィルムとしてポリエチレンナフタレートフィルムを用いることも、特開平8−130368で提案されているが、通常のポリエチレンナフタレートフィルムでは、その物理特性がポリエチレンテレフタレートフィルムに近いため高温条件下での寸法変化が大きいという欠点がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明者は、プリント回路板の製造工程及び実使用下で、高温条件化で良好な寸法安定性を得るためには、基板として用いるフィルムは、弾性率が高く、熱膨張係数が小さいことが必要であり、高湿度条件下でも高い寸法安定性を得るためには、湿度膨張係数が小さく、水蒸気透過率が小さく、吸水率が小さいことが必要であり、さらに、廃棄となったプリント回路板の材料を再利用する場合、基板フィルムの熱溶融による導体回路との分離が容易となるために、融点が低いことが必要であることに着目した。
【0010】そこで、この発明者は、種々の基板フィルムの材料について、それらの物理特性がプリント回路板の特性に及ぼす影響について鋭意検討した結果、弾性率が500kg/mm2 以上、熱膨張係数が1.5×10-5/℃以下、湿度膨張係数が1.2×10-5/%RH以下、水蒸気透過率が15g/m2 /mil・day以下、吸水率が2%以下、融点が280℃以下であるポリエチレンナフタレートフィルムがプリント回路板の基板フィルムとして最適であることを突き止め本発明として完成させた。
【0011】本発明の要旨は弾性率が500kg/mm2 以上、熱膨張係数が1.5×10-5/℃以下、湿度膨張係数が1.2×10-5/%RH以下、水蒸気透過率が15g/m2 /mil・day以下、吸水率が2%以下、融点が280℃以下であるポリエチレンナフタレートフィルムと導体回路とが接着剤層を介して積層一体化されていることを特徴とするプリント回路板に関するものである。
【0012】本発明において、ポリエチレンナフタレートフィルムの上記物理特性は、それぞれ、以下のようにして試験を行い測定した。
【0013】〔弾性率〕ASTM−D−882−88に準拠して試験を行った。
【0014】〔熱膨張係数〕ASTM−D−696に準拠して試験を行った。
【0015】〔湿度膨張係数〕まず、フィルム面上に2つの基準点を設けたフィルムを温度23℃、相対湿度20%で1時間放置した後、2つの基準点間の長さをスケール付き顕微鏡を用いてμmの単位まで精密に測定する。(この長さをL1 とする。)
次に、そのフィルムを、さらに、温度23℃、相対湿度80%で1時間放置した後、2つの基準点間の長さをスケール付き顕微鏡を用いてμmの単位まで精密に測定する。(この長さをL2 とする。)
そして、下記数式(1)により、湿度膨張係数(αH )を算出する。
【0016】
αH =(L2 −L1 )/60/L1 ・・・(1)
【0017】〔水蒸気透過率〕ASTM−D−96に準拠して試験を行った。
【0018】〔吸水率〕ASTM−D−570に準拠して試験を行った。
【0019】〔融点〕マイクロスコープ法により試験を行った。
【0020】本発明の実例を図面を用いて説明する。図1R>1および2は本発明の基本的な実施態様であり、図中1は基板フィルム、2は接着剤、3は導体回路である。図3R>3は本発明を多層回路板に適用してなるもので、符号の説明は上記の通りである。
【0021】本発明において上記特性のポリエチレンナフタレートフィルムを用いた理由は次の通りである。
【0022】弾性率が500kg/mm2 より小さい場合、あるいは熱膨張係数が1.5×10-5/℃より大きい場合は、プリント回路板の製造工程及び実使用下で、高温条件化で良好な寸法安定性が得られず、湿度膨張係数が1.2×10-5/%RHより大きい場合、水蒸気透過率が15g/m2 /mil・dayより大きい場合、あるいは吸水率が2%より大きい場合では、高湿度条件下で良好な寸法安定性が得られず、融点が280℃より高い場合は、廃棄となったプリント回路板の材料を再利用する際に、基板フィルムの熱溶融による導体回路との分離に高エネルギーが必要となり困難となる。
【0023】上記ポリエチレンナフタレートフィルムの物理特性において、特に好ましい範囲は、弾性率が500〜800kg/mm2 、熱膨張係数が0.3〜1.5×10-5/℃、湿度膨張係数が0.8〜1.2×10-5/%RHである。
【0024】上記物性を満足するポリエチレンナフタレートフィルムとしては、例えば、ICI社製のKALADEXが挙げられる。
【0025】従来技術で基板フィルムとして用いられていたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリイミドフィルム等の汎用フィルムでは、上記物理特性をすべて満足しないので前述のプリント回路板の要求特性を満足しない。
【0026】例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムは弾性率が400〜500kg/mm2 、熱線膨張係数が1.2〜2.0×10-5/℃であり、本発明の上記物理特性の限定範囲から外れているため、高温条件化で良好な寸法安定性が得られない。
【0027】また、ポリイミドフィルムは、湿度膨張係数が2.0〜2.5×10-5/%RH、水蒸気透過率が40〜50g/m2 /mil・day、吸水率が2.5〜3.5%であり、本発明の上記物理特性の限定範囲から外れているため、高湿度条件下で寸法安定性が悪く寸法不良を生じる上に、熱硬化性樹脂であるがゆえに、高温でも溶融しないため、廃棄となったプリント回路板の材料を再利用する場合、基板フィルムの熱溶融による導体回路との分離が不可能となる。
【0028】本発明のプリント回路板を構成する導体回路は、特に限定するものでなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニクロム箔等の導電性の良好な金属箔があげられる。また、厚みも特に限定するものではなく適宜に設定される。そして、必要によっては、金属箔表面に、錫、半田、金、ニッケル等のめっきを施してもよい。
【0029】基板フィルムと導体回路を積層するために用いる接着剤としては、従来、ニトリルゴム系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤等、種々の接着剤が提案され、用いられている。
【0030】本発明においては、従来から用いられている上記の汎用的な接着剤も使用可能であるが、一般に、接着剤は対象とする基材の材質によって適宜選択されるものであり、本発明のポリエチレンナフタレートフィルムについて、最適の接着剤を種々検討した結果、下記の(A)〜(D)成分を含有する接着剤が該ポリエチレンナフタレートフィルムに対し強い接着強度を発現することがわかった。
(A)ポリエステル樹脂。
(B)ノボラック型エポキシ樹脂。
(C)ポリイソシアネート化合物。
(D)三級アミン。
【0031】上記ポリエステル樹脂(A成分)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物等のポリオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、セバシン酸あるいはそれらの酸無水物等の酸成分とを用いて、重縮合等の公知の条件で合成される。ポリエステル樹脂(A成分)の分子量については、GPCで測定される重量平均分子量が10000〜30000であることが好ましく、特に、20000〜25000が好ましい。
【0032】上記(B)成分であるノボラック型エポキシ樹脂としてはフェノールノボラックエポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラックエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ当量が300〜320g/eq、融点が65〜75℃のものが好ましい。
【0033】(B)成分であるノボラック型エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステ樹脂(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、50〜150部に設定することが好ましく、特に好ましいのは80〜120部である。
【0034】また、基板フィルムと導体回路の接着性をより良好にするためには、上記(B)成分であるノボラック型エポキシ樹脂が、1分子中に少なくとも3個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0035】上記A成分およびB成分とともに用いられるポリイソシアネート化合物(C成分)としては、芳香族系ポリイソシアネート化合物、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のどちらでもよいが、芳香族系ポリイソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネートと多官能アルコール類とから得られるポリイソシアネート化合物が好ましく、脂肪族系ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート系化合物が好ましい。また、イソホロンジイソシアネート三量体化合物等の多官能性ポリイソシアネート化合物も好ましく用いられる。
【0036】上記ポリイソシアネート化合物(C成分)の配合量は、前記ポリエステル樹脂(A成分)100部に対して10〜30部の割合に設定することが好ましい。なかでも、ポリイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物とイソホロンジイソシアネート三量体化合物の2種類の化合物を併用する場合は、2種類の化合物の総量は上記10〜30部に設定され、しかも、ポリエステル樹脂(A成分)100部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物を3〜5部、イソホロンジイソシアネート三量体化合物を15〜25部の割合に設定することが好ましい。すなわち、C成分の配合量が、10部未満では、耐薬品性が低下する傾向がみられ、逆に、30部を超えると、ポリエチレンナフタレートフィルムに対する接着性が低下する傾向がみられるからである。
【0037】上記A〜C成分とともに用いられる三級アミン(D成分)としては、特に限定するものではないが、なかでも、1.8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下「DBU」と略す)を用いることが好ましい。この三級アミン(D成分)の配合量は、前記ポリエスル樹脂(A成分)100部に対し、0.1〜0.5部の割合に設定することが好ましい。
【0038】上記の接着剤は、前記A〜D成分を含有する接着剤を使用することが好ましいが、その場合、接着剤溶液は、A〜D成分及び必要により他の添加剤を、樹脂固形分濃度が40〜60%となるように、メチルエチルケトン、トルエン等の溶媒に攪拌溶解および分散して接着剤溶液を調整すればよい。
【0039】ところで、プリント回路板を使用している電気・電子機器ではその安全性の観点から、プリント回路板の難燃性も要求されている。
【0040】本発明においては、得られるプリント回路板の難燃性を向上させ、耐熱劣化後の接着性を向上させるために、上記(A)〜(D)成分を含む接着剤において、ノボラック型エポキシ樹脂((B)成分)を臭素化ノボラック型エポキシ樹脂とするとともに難燃助剤((E)成分)を添加するとが好ましい。
【0041】上記臭素化ノボラック型エポキシ樹脂としては臭素化フェノールノボラックエポキシ樹脂あるいは臭素化クレゾールノボラックエポキシ樹脂が好ましく、エポキシ当量が300〜320g/eq、融点が65〜75℃のものが好ましい。
【0042】この臭素化ノボラック型エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステ樹脂(A成分)100部に対して、50〜150部に設定することが好ましく、特に好ましいのは80〜120部である。すなわち、B成分の配合量が50部未満では、難燃性が得られ難く、逆に150部を超えると、特に接着性および耐熱性が低下する傾向が見られるからである。
【0043】また、基板フィルムと導体回路の接着性および難燃性をより良好にするためには、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂が、1分子中に少なくとも3個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、その臭素含有率が、上記(A)〜(E)成分の全量[(A)成分+(B)成分+(C)成分+(D)成分+(E)成分]に対して12重量%(以下「%」と略す)以上となるように設定することが好ましい。特に好ましいのは12〜22%の範囲内である。すなわち、臭素の含有量が12%未満では、優れた難燃性を得ることが困難となるからである。
【0044】上記難燃助剤としては、三酸化アンチモン(Sb2 3 )、五酸化アンチモン(Sb2 5 )、水酸化アルミニウム[Al(OH)3 ]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2 ]等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、本発明においては、三酸化アンチモンを用いることが好ましく、なかでも、粒径の細かいもの(例えば粒径5μm以下)が好ましい。また、粒子表面にシリコーン系カップリング剤またはチタネート系カップリング剤等でカップリング剤処理を施したものを用いても良い。
【0045】上記難燃助剤(E成分)の配合量は、前記ポリエステル樹脂(A成分)100部に対し、20〜35部の割合に設定することが好ましい。または、前記A成分+B成分+C成分+D成分+E成分の合計量に対して10%以上となるよう設定することが好ましい。すなわち、E成分の配合量が20部未満では、難燃性が低下する傾向が見られ、逆に35部を超えると、接着性および屈曲性が低下する傾向が見られるからである。
【0046】このような難燃助剤を含有する上記接着剤を使用することにより、基板フィルムのポリエチレンナフタレートフィルムが有していない高い難燃性(UL−94−VTM−0)をプリント回路板に付与することができる。
【0047】上記接着剤には、上記A〜E成分以外に、必要に応じて、接着改良剤としてのシランカップリング剤、無機質充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料および顔料を含む着色剤等の通常の添加剤を適宜に配合することができる。
【0048】本発明のプリント回路板は、上記特定の物理特性を有するポリエチレンナフタレートフィルムと導体回路を接着剤を介して積層一体化してなるものであり、例えば、次のようにして製造される。すなわち、まず、接着剤をメチルエチルケトン、トルエン等の溶媒に溶解した溶液をリバースコーター、コンマコーター等を用いて、基板フィルムとするポリエチレンナフタレートフィルムもしくは金属箔表面に乾燥状態で厚み10〜50μmとなるよう塗布する。そして、50〜150℃、1〜10分間乾燥して溶媒を揮発させ、Bステージ状態の接着剤層形成済みポリエチレンナフタレートフィルム、または接着剤形成済み金属箔を作成する。
【0049】ついで、上記接着剤層形成済みポリエチレンナフタレートフィルム(または接着剤層形成済み金属箔)の接着剤層形成面に、金属箔(またはポリエチレンナフタレートフィルム)を、バッチプレス法、または連続ロールラミネート法により加熱圧着し、必要に応じてアフターキュアを行うことにより、プリント回路基板(パターン形成前のプリント回路板)が製造される。
【0050】上記連続ラミネート法の実施条件としては、温度条件80〜120℃、線圧1〜50kg/cm、速度1〜10m/分の範囲が適している。また、アフターキュア条件としては、80〜120℃の温度条件で1〜24時間の範囲が適している。
【0051】つぎに、金属箔を印刷法、サブトラクティブ法、アディティブ法等の公知の方法により処理することによって、回路パターンの形成を行い導体回路を作製する。この状態でプリント回路板が形成されたことになるが、通常、導体回路の上に上記と同じ基板フィルムをカバーレイフィルムとして接着剤を介して貼り合わせる。
【0052】すなわち、その場合、前記に示す方法で得られた接着剤付きポリエチレンナフタレートフィルムをカバーレイフィルムとして用い、導体回路の上に加熱圧着する。その際の加熱圧着の条件としては、バッチプレス法により圧着する場合、温度条件80〜150℃、圧力20〜100kg/cm2 、時間1〜60分の範囲の条件に設定することが好ましい。
【0053】つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0054】
【実施例1】ポリエステル樹脂(重量平均分子量23000)100部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量310g/eq、臭素含有量45%、融点70℃)100部、ポリイソシアネート化合物であるイソホロンジイソシアヌレート三量体化合物20部、ヘキサメチレンジイソシアネート4部、DBU0.25部を、メチルエチルケトン224部に攪拌溶解および分散して、固形分濃度50%のプリント回路板用接着剤溶液を調整した。
【0055】ついで、基板フィルムとして用いる、厚み25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(弾性率600kg/mm2 、熱膨張係数1.3×10-5/℃、湿度膨張係数1.0×10-5/%RH、水蒸気透過率9.5g/m2 /mil・day、吸水率2.0%、融点262℃ )の表面に、上記接着剤溶液を、乾燥後25μmの厚みとなるようにリバースコーターで塗布し、100℃の熱風循環式乾燥機中で3分間乾燥させて接着剤層形成済みポリエチレンナフタレートフィルムを得た。
【0056】その後、接着剤層形成面と、厚み35μmの圧延銅箔とをその処理面(例えば、ニッケル−銅合金処理)とが接触するように重ね合わせ、熱プレスで温度条件150℃、圧力30kg/cm2 で60分圧着することにより、パターンを形成する前のプリント回路板中間品を得た。
【0057】その後、銅箔上にフォトマスク法でエッチングレジストを形成し、エッチング液にて銅箔の不必要な部分を溶解除去し所定の回路パターンを形成し、導体回路を作製した。
【0058】また、その導体回路の上にさらに貼り合わせる接着剤層形成済みポリエチレンナフタレートフィルムを、前記と同方法で製造した。そして、その基板フィルムの接着剤層と導体回路が接触するように重ね合わせ、熱プレスで温度条件150℃、圧力30kg/cm2 で60分圧着することにより、目的とするプリント回路板を得た。
【0059】
【実施例2】プリント回路板用接着剤の調整を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、プリント回路板を作製した。
【0060】ポリエステル樹脂(重量平均分子量23000)100部、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量310g/eq、臭素含有量45%、融点70℃)100部、ポリイソシアネート化合物であるイソホロンジイソシアヌレート三量体化合物20部、ヘキサメチレンジイソシアネート4部、DBU0.25部、三酸化アンチモン25部を、メチルエチルケトン249部に攪拌溶解および分散して、固形分濃度50%のプリント回路板用接着剤溶液を調整した。
【0061】
【実施例3】実施例2のプリント回路板用接着剤溶液の調整において、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂の配合量を50部に、イソホロンジイソシアヌレート三量体化合物の配合量を15部に、ヘキサメチレンジイソシアネートの配合量を3部に、DBUの配合量を0.1部に、三酸化アンチモン(チタネート系カップリング剤で表面処理したもの)の配合量を20部に、メチルエチルケトンの配合量を188部に変えた以外は、実施例1と同様にしてプリント回路板を作製した。
【0062】
【比較例1】基板フィルムとして、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ICI社製、商品名:MELINEX、弾性率450kg/mm2、熱膨張係数1.5×10-5/℃、湿度膨張係数1.0×10-5/%RH、水蒸気透過率25g/m2 /mil・day、吸水率2%、融点256℃)を用いた以外は、実施例2と同様にしてプリント回路板を作製した。
【0063】
【比較例2】基板フィルムとして、厚み25μmのポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名:KAPTONH、弾性率350kg/mm2 、熱膨張係数2.6×10-5/℃、湿度膨張係数2.2×10-5/%RH、水蒸気透過率50g/m2 /mil・day、吸水率が3.0%)を用いた以外は、実施例2と同様にしてプリント回路板を作製した。
【0064】このようにして得られた実施例品および比較例品のプリント回路板について、各特性試験を実施し評価した。実施例品及び比較例品の結果を表1に示す。
【0065】
【表1】


【0066】〔寸法収縮率〕IPC−TM−650に準拠し試験を行った。
【0067】〔難燃性〕UL−94に準拠して試験を行った。
【0068】表1の結果から、実施例は比較例に比べて、高温条件下での熱収縮率が小さく寸法安定性に優れている結果が得られた。
【0069】比較例2は基板フィルムとしてポリイミドフィルムを用いているため、実施例に比較して高湿度条件下での寸法安定性が劣っていた。
【0070】また、実施例はいずれも基板フィルムを加熱溶融することにより導体回路と基板フィルム分離することができたが、比較例2は基板フィルムとしてポリイミドフィルムを用いているため、導体回路と基板フィルム分離することができず材料の再利用が不可能であった。
【0071】
【発明の効果】本発明のプリント回路板は、基板フィルムとしてのポリエチレンナフタレートフィルムと導体回路を接着剤を介して積層一体化したものであり、そのポリエチレンナフタレートフィルムの弾性率、熱膨張係数、湿度膨張係数、水蒸気透過率、吸水率、融点が特定の範囲に限定されているため、プリント回路板の製造工程及び実使用下で、高温条件下及び高湿度条件下でも良好な寸法安定性が得られ、さらに、廃棄となったプリント回路板の材料を再利用する場合、基板フィルムの熱溶融による導体回路との分離が容易となる。
【0072】また、接着剤として、上記の(A)〜(E)成分を含有する接着剤(ただし、(B)成分は臭素化ノボラック型エポキシ樹脂)を用いて上記ポリエチレンナフタレートフィルムと導体回路を積層一体化して得られるプリント回路板は、ポリエチレンナフタレートフィルムが本来有していない高い難燃性(UL−94−VTM−0)を発現するので、電気・電子機器の安全性を高めるために、非常に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント回路板の構造を示す断面図である。
【図2】基板フィルムが1枚の場合のプリント回路板の構造を示す断面図である。
【図3】多層プリント回路板の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板フィルム
2 接着剤
3 導体回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性率が500kg/mm2 以上、熱膨張係数が1.5×10-5/℃以下、湿度膨張係数が1.2×10-5/%RH以下、水蒸気透過率が15g/m2 /mil・day以下、吸水率が2%以下、融点が280℃以下であるポリエチレンナフタレートフィルムと導体回路とが接着剤層を介して積層一体化されていることを特徴とするプリント回路板。
【請求項2】 接着剤が下記の(A)〜(D)成分を含有するものである請求項1記載のプリント回路板。
(A)ポリエステル樹脂。
(B)ノボラック型エポキシ樹脂。
(C)ポリイソシアネート化合物。
(D)三級アミン。
【請求項3】 ノボラックエポキシ樹脂((B)成分)が臭素化ノボラック型エポキシ樹脂であるとともに、難燃助剤((E)成分)を含有してなる請求項2記載のプリント回路板。
【請求項4】 臭素化ノボラック型エポキシ樹脂が、1分子中に少なくとも3個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、その臭素含有率が、上記(A)〜(E)成分の全量[(A)成分+(B)成分+(C)成分+(D)成分+(E)成分]に対して12重量%以上となるように設定されている請求項3記載のプリント回路板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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