説明

プリント配線基板、基板積層体、平面コイルおよび平面トランス

【課題】ターン数の異なる平面コイルを簡易に実現する上での基盤となるプリント配線基板を提供する。
【解決手段】プリント配線基板の基体をなす絶縁基板の両面に、所定の領域(ホール)を囲んでループを形成する第1および第2導体部をそれぞれ設けると共に、第1および第2導体部を選択的に接続するための第3および第4導体部と選択接続部並びに基板間接続部を設ける。またホールを通る基準線を中心として選択接続部と線対称となる領域を導体の非形成領域(ホール)とする。そして複数枚のプリン配線基板を、その第1表面どうしを、或いは第2表面どうしを当接させて積層し、第1および第2導体部を順に直列接続して所定ターン数の平面コイルを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、基板積層体、平面コイルおよび平面トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の小型化に応えるべく、例えば絶縁基板の両面に導体パターンをそれぞれループ状に形成したプリント配線基板を用いて平面コイル(誘導素子)を構築する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。また上記と同様な構成のプリント配線基板を複数枚積層して平面コイルや平面トランス等の誘導素子を構築する技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−294085号公報
【特許文献2】特開2009−259922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1,2に紹介される従来の技術においては、仕様の異なる誘導素子を実現するに際して、例えばコイル部をなす導体パターンや基板間接続部の形状・位置等が異なる、複数種類のプリント配線基板を準備する必要がある。この為、複数種類のコイル部を含むプリント配線基板の設計工数や、複数種類のプリント配線基板を用いることによって製造コストが増大するという課題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、単独で、若しくは所定枚数積層して用いられて仕様の異なる誘導素子を簡易に実現する上での基盤となるプリント配線基板を提供することにある。
即ち、本発明は同一仕様のプリント配線基板を1枚または複数枚積層して用いることで、平面コイルや平面トランスなどの誘導素子の設計自由度を高めるとともに、コイル部を含むプリント配線基板の設計工数や製造コストの低減と製造品質の向上とを実現できるプリント配線基板とそれを積層した基板積層体、並びに上記プリント配線基板または基板積層体を備えた平面コイルおよび平面トランスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明に係るプリント配線基板は、絶縁基板の両面をなす第1表面および第2表面にそれぞれ導体部を備え、且つ複数枚積層して形成される基板積層体の構成要素をなすものであって、前記第1表面の予め定めた第1領域を囲むループを形成して該第1表面に設けた第1導体部と、前記第1領域に重ねて前記第2表面に定めた第2領域を囲むループを形成して該第2表面に設けた第2導体部と、前記第1導体部から離反して前記第1表面に設けた第3導体部、および前記第2導体部から離反して前記第2表面に設けた第4導体部と、前記絶縁基板の両面間に跨って設けられて前記第1導体部と前記第4導体部、および前記第2導体部と前記第3導体部をそれぞれ接続した第1および第2面間接続部と、前記第1領域を通る基準線を中心として区分される前記第1表面の一側の領域において前記第1導体部および前記第3導体部にそれぞれ連なって設けられて前記第1導体部と前記第3導体部との選択接続に供される第1および第2選択接続部とを具備し、前記基準線を中心として区分される前記第1基板の他側の領域において前記第1および第2選択接続部の形成領域と線対称となる領域を導体部の非形成領域としたことを特徴としている。
【0007】
好ましくは前記第1および第2領域は、前記絶縁基板に穿たれたホールの開口領域として規定される。また前記基準線を中心として前記第1および第2選択接続部の形成領域と線対称となる導体部の非形成領域についても、前記絶縁基板に穿いたホールの開口領域としておくことが望ましい。
【0008】
また本発明に係るプリント配線基板は、更に前記第2導体部に連なって前記第2表面に設けられて別のプリント配線基板における前記第2導体部との接続に用いられる第1基板間接続部と、前記第4導体部に連なって前記第2表面に設けられて別のプリント配線基板における第1導体部との接続に用いられる第2基板間接続部とを備えることを特徴としている。
【0009】
更に本発明に係る基板積層体は、同一仕様の上述した複数枚のプリント配線基板を積層したものであって、前記複数枚のプリント配線基板は、前記第1表面どうしを、または前記第2表面どうしを当接させ、且つ前記第1領域および第2領域を相互に重ね合わせて積層し、前記第1および第2基板間接続部を介して基板間接続したことを特徴としている。
【0010】
そして本発明に係る平面コイルは、前述したプリント配線基板、若しくは基板積層体を備えたことを特徴とし、また本発明に係る平面トランスは、前述した複数の基板積層体を備え、該複数の基板積層体がそれぞれ備える平面コイルを互いに電磁結合させて積層したことを特徴としている。この平面コイルの電磁結合は、例えば複数の基板積層体間に跨って、前記第1領域および第2領域を形成したホールに挿通させたコア体を介して行われる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成のプリント配線基板によれば、基本的には前記第1および第2選択接続部間を接続するだけで第1表面および第2表面にそれぞれループを形成した第1導体部と第2導体部を簡易に直列接続することができる。更に前記基準線を中心として前記第1および第2選択接続部の形成領域と線対称となる領域が導体部の非形成領域となっているので、同一仕様の複数枚のプリント配線基板の第1表面どうしを、或いは第2表面どうしを当接させて積層した際、当接する各プリント配線基板の選択接続部どうしが干渉し合うことがない。従って前記第1および第2基板間接続部を介して複数枚のプリント配線基板間を接続するだけで、各プリント配線基板がそれぞれ備える第1導体部と第2導体部を順に直列接続することができる。
【0012】
従って同一仕様の本発明に係る複数枚のプリント配線基板を、その第1表面どうしを、或いは第2表面どうしを当接させて積層し、これらのプリント配線基板間を順に接続するだけで各プリント配線基板の第1導体部および第2導体部を直列に接続した平面コイル等の誘導素子を容易に実現することができ、平面コイルや平面トランスなどの誘導素子の設計自由度を高めるとともに、コイル部を含むプリント配線基板設計の工数を低減することができる。また統一された同一仕様のプリント配線基板を用いるだけなので、プリント配線基板の調達や管理などを含む総合的な製造コストの低減と製造品質の向上とを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の概略構成を示す図で、(a)は斜視図、(b)は第1表面(A面)の構成図、(c)は第2表面(B面)の構成図。
【図2】図1に示すプリント配線基板を用いた1ターンおよび2ターンの平面コイルを形成する導体間接続例を示す図。
【図3】図1に示すプリント配線基板を2枚積層した基板積層体における3ターンおよび4ターンの平面コイルを形成する導体間接続例を示す図。
【図4】積層した2枚のプリント配線基板間の接続構造例を示す図。
【図5】図1に示すプリント配線基板を3枚積層した基板積層体における5ターンおよび6ターンの平面コイルを形成する導体間接続例を示す図。
【図6】3枚のプリント配線基板の積層構造例を示す図。
【図7】本発明の別の実施形態に係るプリント配線基板の概略構成を示す図で、(a)は第1表面(A面)の構成を示す図、(b)は第2表面(B面)の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の概略構成を示す図であり、(a)はプリント配線基板Pの概略的な外観斜視図、(b)はプリント配線基板Pにおける第1表面(表面側;A面)の構成を、そして(c)は該プリント配線基板Pにおける第2表面(裏面側;B面)の構成を示している。このプリント配線基板Pは、単独で用いられて、或いは複数枚積層して構成される基板積層体Sの構成要素となるもので、所定厚みの絶縁基板1の両面をなす第1表面(A面)1aおよび第2表面(B面)1bのそれぞれに印刷配線により形成した導体部2を有する。
【0015】
図1に示すように、プリント配線基板Pの基体をなす絶縁基板1は、全体的には基準線Xを中心として略対称な凸型の形状を有し、その凸部には前記基準線Xを中心とする矩形状のホール(開口部)3が穿たれている。このホール3により、平面コイルの形成領域を規定する為の矩形状の第1領域3aが第1表面1aに設定され、同時に第2表面1bには上記第1領域3aと重なる矩形状の第2領域3bが設定されている。
【0016】
このような絶縁基板1の第1表面(A面)1aおよび第2表面(B面)1bにそれぞれ印刷配線により形成される導体部2は、基本的には第1領域3a(ホール3)を囲むループを形成して該第1表面1aに設けた第1導体部11と、前記第2領域3b(ホール3)を囲むループを形成して該第2表面1bに設けた第2導体部12、更に前記第1導体部11から離反して前記第1表面1aに設けた第3導体部13、および前記第2導体部12から離反して前記第2表面1bに設けた第4導体部14とからなる。
尚、ここではホール3の周囲にそれぞれ1ターンの導体ループを形成した例について説明するが、後述するように複数ターンの導体ループを形成した第1導体部11および第2導体部12を設けることも勿論可能である。
【0017】
具体的には前記第1導体部11は、図1(b)に示すように第1表面1aにおいて前記凸型の絶縁基板1の底辺部一端側から凸部に掛けて延在し、前記第1領域3aの周囲を略一周(1ターン)した後、前記絶縁基板1の底辺部他端側に延びる導体パターンからなる。また第2導体部12は、図1(c)に示すように第2表面1bにおいて前記第2領域3bの近傍から該第2領域3bの周囲を略一周(1ターン)した後、前記絶縁基板1の底辺側に掛けて延びる導体パターンからなる。
【0018】
このような第1および第2導体部11,12に加えて、前記第1表面1aには図1(b)に示すように第1領域3aの近傍から前記絶縁基板1の底辺部中央に掛けて前記第1導体部11と略平行に第3導体部13が設けられており、また第2表面1bには図1(c)に示すように前記絶縁基板1の略中央部に位置し、前述した基準線Xを跨いで前記第3導体部13と交差するように第4導体部14が設けられている。
【0019】
ちなみに前記第1導体部11と前記第4導体部14とは、凸型形状をなす前記絶縁基板1の底辺側において該絶縁基板1の両面間を挿通して設けられた貫通ビアからなる第1面間接続部15を介して接続されている。また同様に前記第2導体部12と前記第3導体部13とは、該第3導体部13の端部が位置付けられた前記ホール3の近傍において前記絶縁基板1の両面間を挿通して設けられた貫通ビアからなる第2面間接続部16を介して接続されている。
【0020】
また前記絶縁基板1の第1表面1a側において、前記第1導体部11と前記第3導体部13とが互いに近接して並行に配設された部位には、前記第1導体部11および前記第3導体部13にそれぞれ連なる第1および第2選択接続部(パッド)17,18が近接させて設けられている。これらの選択接続部17,18は、前記第1導体部11と第3導体部13との選択的な接続に供されるもので、その接続は、例えば外付けの接続部品である0Ωのチップ抵抗を前記選択接続部17,18間に跨って装着することにより実現される。接続部品は0Ωのチップ抵抗に限らず、例えば選択接続部どうしを直接半田付けなどで電気的に接続する方法であっても良い。
【0021】
特に上記選択接続部17,18は、前記基準線Xにて区分される第1表面1aの一方の領域、具体的には図1(b)において前記基準線Xの右側の領域に設けられている。そして前記基準線Xにて区分される第1表面1aの他方の領域、具体的には図1(b)において基準線Xの左側領域における前記選択接続部17,18の形成領域とは線対称となる領域には、導体の非形成領域としてのホール4が設けられている。
【0022】
このホール4は、後述するように2枚のプリント配線基板を、その第1表面1aどうしを当接させて重ね合わせたとき、つまり一方のプリント配線基板を裏返しに重ね合わせたとき、別のプリント配線基板における前記選択接続部17,18を当該プリント配線基板の第2表面1b側に露出させる役割を担う。またこのホール4は、2枚のプリント配線基板を重ね合わせたとき、別のプリント配線基板の選択接続部17,18に装着される前述した接続部品の逃げ領域(非干渉領域)としても機能する。
【0023】
一方、上述した構成のプリント配線基板Pの第2表面1bには、更に前記第2導体部12に連なって、別のプリント配線基板Pにおける前記第2導体部12との接続に用いられる第1基板間接続部(パッド)19が設けられる。またプリント配線基板Pの第2表面1bには、前記第4導体部14に連なって別のプリント配線基板Pにおける第1導体部11との接続に用いられる第2基板間接続部(パッド)20が設けられる。
【0024】
特にこの第2基板間接続部20は、前記第4導体部14の一端部に設けられており、更にこの第2基板間接続部20の側部には導体の非形成領域としてのホール5が設けられている。このホール5は、2枚のプリント配線基板を、その第1表面1aどうしを当接させて重ね合わせたときに、別のプリント配線基板における前記第1導体部11の一部を当該プリント配線基板の第2表面1b側に露出させる役割を担う。
【0025】
そして前記基準線Xを中心として前記ホール5とは線対称となる領域であって、前記第1導体部11の上述した如くホール5を介して露出される一部の領域は、該第1導体部11と別のプリント配線基板Pにおける第4導体部の前述した第2基板間接続部20との接続に供される第3基板間接続部(パッド)21として設定されている。この第3基板間接続部21は、前記第2基板間接続部20と対をなす接続領域である。
【0026】
また前記第2導体部12の前述した第1基板間接続部19の側部には、導体の非形成領域としての切り欠き(ホール)6が設けられている。この切り欠き6は、2枚のプリント配線基板Pを、その第2表面1bどうしを当接させて重ね合わせたときに、別のプリント配線基板Pにおける前記第2導体部12の一部を当該プリント配線基板Pの第2表面1b側に露出させる役割を担う。そして前記基準線Xを中心として前記切り欠き6と線対称となる領域であって、前記第2導体部12の上述した如く切り欠き6を介して露出される領域は、2枚のプリント配線基板Pにおける第2導体部12どうしの接続に供される第4基板間接続部(パッド)22として設定されている。この第4基板間接続部22は、前記第1基板間接続部19と対をなす接続領域である。
【0027】
尚、前述した凸型の絶縁基板1の底辺部にそれぞれ位置付けられた前記第1導体部11の両端部、および前記第3導体部13の他端部は、外部配線接続部(パッド)23,24,25として設定されている。そして前記プリント配線基板Pの第1表面1aおよび第2表面1bは、前述した基板間接続部19,20,21,22および前記外部配線接続部23,24,25を除いて後述するソルダーレジスト26にて被覆され、外部に対して絶縁されている。
【0028】
次に上記構成のプリント配線基板Pを用いて実現される平面コイル(プレーナコイル)について説明する。
図2は1枚のプリント配線基板Pを用いて1ターンおよび2ターンの平面コイルを実現する例を示している。尚、図2においては、プリント配線基板Pの両面にそれぞれ形成した導体部を、その一面側から透視した状態で示している。
【0029】
1ターンの平面コイルを実現する場合、前述した選択接続部17,18間を離反させた状態のまま、図2に示すように第1外部配線接続部23から第1導体部11を経て第2外部配線接続部24に至る、図中太実線Aで示す導体路を形成する。すると第1導体部11は、ホール3の周囲を略1周しているだけなので、ここに1ターンの平面コイルが実現される。
【0030】
これに対して2ターンの平面コイルを実現する場合、前述した選択接続部17,18間に接続部品である0Ωのチップ抵抗27を装着し、第1導体部11と第3導体部13を接続する。そして図2に示すように第1外部配線接続部23から第1導体部11を経て選択接続部17に至り、更にチップ抵抗27を介して選択接続部18から第3導体部13に至る導体路を形成する。この第3導体部13の端部は前記第2面間接続部16を介して第2表面1b側の第2導体部12に接続されているので、該第2導体部12を経てその端部の基板間接続部19に至る、図中太実線Aおよび太破線Bで示す導体路が形成される。すると第1導体部11はホール3の周囲を略1周しており、第2導体部12は前記第1導体部11に重なってホール3の周囲を略1周しているので、ここに2ターンの平面コイルが実現される。
【0031】
一方、3ターンおよび4ターンの平面コイルを実現する場合には、上述した2ターンの平面コイルを構築したプリント配線基板P1に加えて、該プリント配線基板P1と同一仕様の別(2枚目)のプリント配線基板P2を前記プリント配線基板P1に積層して実現する。そして1枚目のプリント配線基板P1については、前述した図2に示すように2ターンの平面コイルを形成する接続を行う。
【0032】
また2枚目のプリント配線基板P2ついては1枚目のプリント配線基板P1に対して裏返しにし、第2表面1bどうしを当接させて積層する。つまり図3に示すように上記1枚目のプリント配線基板P1の第2表面1bに2枚目のプリント配線基板P2の第2表面1bを重ね合わせる。この際、2枚のプリント配線基板P1,P2における前述したホール3を同軸に位置合わせし、これらの各プリント配線基板P1,P2にそれぞれ設けられた第1導体部11および第2導体部12が前記ホール3の周囲において互いに重なり合うように配置する。
【0033】
尚、この図3においても各プリント配線基板P1,P2の両面にそれぞれ設けられた導体部については、1枚目のプリント配線基板P1の第1表面1a側から見た透視パターンとして示してある。そして1枚目のプリント配線基板P1における第1基板間接続部19を、2枚目のプリント配線基板P2における第4基板間接続部22に接続し、これによって両プリント配線基板P1,P2における第2導体部12どうしを接続する。
【0034】
すると2枚目のプリント配線基板P2における第2導体部12は、前述した第2面間接続部16を介して該2枚目のプリント配線基板P2における第1導体部11に接続されているので、図3に太実線Cで示すように第2導体部12から第1面間接続部16を経て該2枚目のプリント配線基板P2における第3導体部13に接続され、これによって第3導体部13の端部に設けられた第3外部接続領域25に至る導体路が形成される。このとき2枚目のプリント配線基板P2における第2導体部12も前記ホール3の周囲を略1周しているので、前述した1枚目のプリント配線基板P1と合わせて3ターンの平面コイルを実現した基板積層体Sが構築される。
【0035】
尚、2枚のプリント配線基板P1,P2の積層と、2枚のプリント配線基板P1,P2間の接続については、図4(a)にその断面構造を模式的に示すように半田や異方性導電フィルム等の導電接続部材31を用いて2枚のプリント配線基板P1,P2の導体部間を電気的に接続すれば良い。この際、各プリント配線基板P1,P2の両面にそれぞれ配設された導体部間を相互に接続する貫通ビア28を適宜設けておけば、図4(b)に示すように他のプリント配線基板Pの導体部との接続領域を拡大することができ、その接続信頼性を高めることが可能となる。
【0036】
また4ターンの平面コイルを実現する場合には、2枚目のプリント配線基板P2における前記選択接続部17,18間に接続部品である0Ωのチップ抵抗27を装着し、2枚目のプリント配線基板P2における第1導体部11と第3導体部13を接続する。すると2枚目のプリント配線基板P2における第3導体部13により、図中太破線Dに示すような導体路が追加され、従って1枚目のプリント配線基板P1における第1および第2導体部11,12がなす2ターンの平面コイルに、2枚目のプリント配線基板P2における第2および第1導体部12,11がなす2ターンの平面コイルが直列に接続される。そして1枚目のプリント配線基板P1の第1外部配線接続部23から前記ホール3の周囲を囲んで2枚目のプリント配線基板P2の第1外部配線接続部23に至る導体部11,12により、計4ターンの平面コイルが実現される。
【0037】
また5ターンおよび6ターンの平面コイルを実現する場合には、前述した4ターンの平面コイルを構築した2枚のプリント配線基板P1,P2の基板積層体Sに加えて、更に上記各プリント配線基板P1,P2と同一仕様の3枚目のプリント配線基板P3を積層する。この3枚目のプリント配線基板P3ついては1枚目のプリント配線基板P1に積層した2枚目のプリント配線基板P2に対して裏返しにして積層する。この際、3枚のプリント配線基板P1,P2,P3における各ホール3を互いに同軸に位置合わせし、これらのプリント配線基板P1,P2,P3にそれぞれ設けられた第1導体部11および第2導体部12が前記ホール3の周囲において互いに重なり合うように配置することは言うまでもない。
【0038】
具体的には1枚目および2枚目のプリント配線基板P1,P2については、前述した図3に示すように4ターンの平面コイルを形成する接続を行い、図5に示すように上記2枚目のプリント配線基板P2の第1表面1aに3枚目のプリント配線基板P3の第1表面1bを当接させてこれらを重ね合わせる。尚、この図5においても前述した図2および図3と同様に各プリント配線基板P1,P2,P3の両面にそれぞれ設けた導体部については、1枚目のプリント配線基板P1の第1表面1a側から見た透視パターンとして示してある。そして2枚目のプリント配線基板P2における第3基板間接続部22を、3枚目のプリント配線基板P3における第2基板間接続部20に接続し、これによって2枚目のプリント配線基板P2における第1導体部11と3枚目のプリント配線基板P3における第4導体部14とを接続する。
【0039】
すると第4導体部14は、前述したように第1面間接続部15を介して第1導体部11に接続されているので、図5に太実線Dで示すように3枚目のプリント配線基板P3における第1導体部11によって前記ホール3の周囲に5ターン目のループが形成される。
そしてこの3枚目のプリント配線基板P3についても、その選択接続部17,18間に接続部品である0Ωのチップ抵抗27を装着すれば、これによって該3枚目のプリント配線基板P3における第1導体部11に前述した第2面間接続部16を介して第2導体部12が接続されるので、図5に太破線Eで示すように3枚目のプリント配線基板P3の第2導体部12によって前記ホール3の周囲に6ターン目のループが形成される。
【0040】
ちなみに上述した如くして3枚のプリント配線基板P1,P2,P3を積層して基板積層体Sを構成するに際しては、例えば図6に示すようなE字形のクランプ部材29を用いて各プリント配線基板P1,P2,P3のホール3を設けた凸部側をクランプする。この際、クランプ部材29の中央突部を前記各プリント配線基板P1,P2,P3のホール3にそれぞれ挿通させることで各プリント配線基板P1,P2,P3を位置合わせする。この際、インダクタンス値を増加させたり洩れ磁束を低減させたりするために、該クランプ部材29として前記平面コイルのコア体となる部材を用いることが好ましい。このようなクランプ部材(コア体)29を用いれば、複数の平面コイルを磁気結合させて平面トランスを実現する場合にも好都合である。
【0041】
上述した構成のプリント配線基板Pによれば、同一仕様の複数枚のプリント配線基板Pを交互に裏返し、その第1表面1aどうしを、或いは第2表面1bどうしを当接させて順次重ね合わせて基板積層体Sを構築し、前記選択接続部17,18間に適宜接続部品である0Ωのチップ抵抗27を装着すると共に、これらのプリント配線基板Pにおける第1導体部11間を、また第2導体部12間を順に接続していくことで、簡易に所望とするターン数の平面コイルを実現することができる。
【0042】
しかも前述した第3導体部13と第4導体部14とを利用し、隣り合って積層されるプリント配線基板Pの導体部間を接続するだけなので、前述した特許文献1,2等に紹介される従来技術と異なって、プリント配線基板毎にコイル部をなす導体パターンや、その接続部の位置等を変える必要がない。換言すれば形状や大きさ、更には導体パターン等を統一した同一仕様のプリント配線基板Pを1枚または複数枚積層して用いることで、所望とするターン数の平面コイルや平面トランス等の誘導素子を自由に設計することができ、その設計自由度が高い。また同一仕様のプリント配線基板Pを統一的に用いるだけなので、基となるプリント配線基板Pの設計工数の低減ができるとともに、平面コイルや平面トランス等の誘導素子を構成する上での製造コストを低減でき、製造品質の向上を図ることも可能となる。
【0043】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、プリント配線基板Pの形状や第1表面および第2表面に印刷配線により形成される導体部などの構成要素の形状やその配置などは、実施形態以外にも選択可能である。
【0044】
また、ホール3を囲んでその周囲に設ける第1導体部11および第2導体部12については、予めその周回数(ターン数)を任意に設定しておけば良い。図7はホール3の周囲にそれぞれ2ターンの導体部11,12を設けた例を示しており、3ターン以上の導体部11,12を設けることも勿論可能である。また第1および第2導体部11,12間を接続するための第3および第4導体部13,14の導体パターンや面間接続部の位置等については、前記第1および第2導体部11,12が同じ向きの周回パターンをなすように定めることは勿論のことである。
【0045】
さらに、第1および第2表面1a,1bにおける第1領域3aと第2領域3bとをそれぞれ規定する上で、必ずしも絶縁基板1にホール3を設ける必要がないことも勿論のことであり、要は第1および第2導体部11,12による導体ループ(平面コイル)の形成位置を規定する領域を設定すれば十分である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
P,P1,P2,P3:プリント配線基板、S:基板積層体、1:絶縁基板、2:導体部、3(3a,3b):ホール(第1および第2領域)、4,5:ホール(導体の非形成領域)、6:切り欠き(導体の非形成領域)、11:第1導体部、12:第2導体部、13:第3導体部、14:第4導体部、15,16,28:面間接続部(貫通ビア)、17:第1選択接続部(パッド)、18:第2選択接続部(パッド)、19:第1基板間接続部(パッド)、20:第2基板間接続部(パッド)、21:第3基板間接続部(パッド)、22:第4基板間接続部(パッド)、23,24,25:外部配線接続部(パッド)、26:ソルダーレジスト、27:チップ抵抗、29:クランプ部材、31:導電接続部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の両面をなす第1表面および第2表面にそれぞれ導体部を備え、且つ複数枚積層して形成される基板積層体の構成要素をなすプリント配線基板であって、
前記第1表面の予め定めた第1領域を囲むループを形成して該第1表面に設けた第1導体部と、
前記第1領域に重ねて前記第2表面に定めた第2領域を囲むループを形成して該第2表面に設けた第2導体部と、
前記第1導体部から離反して前記第1表面に設けた第3導体部、および前記第2導体部から離反して前記第2表面に設けた第4導体部と、
前記絶縁基板の両面間に跨って設けられて前記第1導体部と前記第4導体部、および前記第2導体部と前記第3導体部をそれぞれ接続した第1および第2面間接続部と、
前記第1領域を通る基準線を中心として区分される前記第1表面の一側の領域において前記第1導体部および前記第3導体部にそれぞれ連なって設けられて前記第1導体部と前記第3導体部との選択接続に供される第1および第2選択接続部とを具備し、
前記基準線を中心として区分される前記第1基板の他側の領域において前記第1および第2選択接続部の形成領域と線対称となる領域を導体部の非形成領域としたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線基板であって、
更に前記第2導体部に連なって前記第2表面に設けられて別のプリント配線基板における前記第2導体部との接続に用いられる第1基板間接続部と、
前記第4導体部に連なって前記第2表面に設けられて別のプリント配線基板における第1導体部との接続に用いられる第2基板間接続部と
を備えることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の同一仕様の複数枚のプリント配線基板を積層した基板積層体であって、
前記複数枚のプリント配線基板は、前記第1表面どうしを、または前記第2表面どうしを当接させ、且つ前記第1領域および第2領域を相互に重ね合わせて積層し、前記第1および第2基板間接続部を介して基板間接続したことを特徴とする基板積層体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプリント配線基板、若しくは請求項3に記載の基板積層体を備えた平面コイル。
【請求項5】
請求項3に記載の複数の基板積層体を備え、該複数の基板積層体がそれぞれ備える平面コイルを互いに電磁結合させて積層したことを特徴とする平面トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−26556(P2013−26556A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162052(P2011−162052)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】