説明

プリント配線基板およびボールグリッドアレイパッケージ

【課題】インターポーザーとして利用され、大幅な温度変化の下でも安定した応力緩和作用と弾性率を示すプリント配線基板およびこのプリント配線基板を使用したボールグリッドアレイパッケージを提供する。
【解決手段】プリント配線基板1は、ボールグリッドアレイパッケージのインターポーザーとして用いられるものであり、リジッド絶縁層8および多孔質PTFEシート9からなる3層以上の多層シート構造を有し、多孔質PTFEシート9は内層に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、および当該プリント配線基板をインターポーザーとして有するボールグリッドアレイパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より使用されているプリント配線基板は、ガラスクロス、紙、アラミド不織布、LCP不織布等に熱硬化性樹脂が含浸されてなるプリプレグを所望枚数積層し、最外層の少なくとも片面に銅箔等の金属箔を積層するものである。そして、このプリント配線基板をICパッケージ用配線板(以下、「インターポーザー」という)として用いてICパッケージを構成する場合、マザーボードとの接続態様としては、図1の様に半田ボールを介するものがある。
【0003】
接続端子として半田ボールを使用するICパッケージはボールグリッドアレイパッケージと呼ばれ、通常、頭文字を取ってBGAパッケージと称される。このBGAパッケージの利点は、接続端子の高密度化が容易に図られることである。即ち、従来のリードフレームを使用していたICパッケージでは、周辺からのみしか接続端子を得ることができない。それに対してBGAパッケージでは、パッケージの裏面全体を利用して接続端子を得ることができる。
【0004】
しかし、従来のプリント配線基板をインターポーザーとして使用したBGAパッケージでは、熱衝撃により半田ボールが破壊されるという問題がある。その理由としては、シリコン素材で作られているICチップの熱膨張係数が約3ppm/℃であるのに対して、マザーボードの熱膨張係数が約20ppm/℃であり、両者が大きく異なることが挙げられる。
【0005】
つまりICパッケージは、寒冷地での使用や加速信頼性を考慮して一般的には−50℃での耐性が求められる一方で、製造時には半田付けなどによる熱履歴を受ける。ICパッケージがこの様な温度変化を受けると、ICチップとマザーボード間の熱膨張係数の違いに由来する応力が点接触に近い半田ボール部に集中して破壊が起こる。
【0006】
上述した半田ボール部の破壊を抑制するための方法としては、従来、主に以下のものが採用されてきた。
【0007】
1つは、半田ボール部に耐熱樹脂を埋め込む図2に示すような方法である。通常では、半田ボールの接続部分、即ち点接触部にのみ応力は加わるが、耐熱樹脂を半田ボール部に埋め込むと応力は耐熱樹脂の埋め込み部に均等に加わる為に半田ボール部が保護される。この方法はアンダーフィルと呼ばれており、半田ボール部の保護に関して非常に有効な方法である。
【0008】
もう1つは、ICチップ3とプリント配線基板1との間の接着層2に(図1を参照)、応力を緩和するためのフィルム等を挿入する方法である。例えば特許文献1には、多孔質フッ素樹脂層の両面に接着性樹脂層が形成されているICチップ接着用シートが開示されている。
【特許文献1】特開平10−22325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した様に、BGAパッケージにおける半田ボールの破壊を抑制するための技術は従来検討されていたが、十分に満足できるものではなかった。
【0010】
例えば上述したアンダーフィルでは、いったん耐熱樹脂を埋め込むとICパッケージに故障が生じた場合でも取り外しができないため、マザーボードごと交換する必要があり非常に不経済であるという問題がある。即ち、アンダーフィルで用いられる樹脂としては熱硬化性樹脂が通常用いられるが、この熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂と異なり一度硬化すると再び軟化させることはできない。また、熱硬化性樹脂を硬化させるには、例えば150℃という高温を有することから各部品には耐熱性も要求されることになり、さらに硬化に時間を要することから生産効率に劣るという問題もある。
【0011】
また、接着層に応力を緩和するためのフィルムを挿入する技術では、従来のBGAパッケージの製造装置が適用できないという問題がある。即ち、ICチップとプリント配線基板とを単に接着するのであれば、何れかの表面に接着剤を塗布して圧着すればよい。しかし応力緩和用のフィルムを挿入する場合、そのための装置が新たに必要となる。
【0012】
さらに近年、ICチップが処理すべき情報量の増大によりICパッケージの大型化も求められる場合がある。その結果、ICチップとマザーボード間の熱膨張係数の違いにより半田ボール部へ付与される応力は非常に大きくなっている。また、特に近年では環境問題から鉛フリーの半田が用いられるが、かかる鉛フリー半田に要する温度は240〜280℃程度と極めて高温である。その結果、製造時における半田ボール部への応力はさらに大きくなる。
【0013】
よって、BGAパッケージにおける半田ボールへの応力をより一層緩和する技術が強く求められている。また、上述した様な温度変化の下でも安定した弾性率を維持することも、当該応力を緩和するための材料に求められる。
【0014】
そこで本発明が解決すべき課題は、BGAパッケージのインターポーザーとして利用されるものであり、大幅な温度変化の下でも安定した応力緩和作用と弾性率を示すプリント配線基板を提供することにある。また、本発明では、大幅な温度変化の下でも安定的に使用できるBGAパッケージを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、先ず、応力緩和層をプリント配線基板の内部に設けることを考えた。その上で、当該応力緩和層を構成する材料につき種々検討したところ、多孔質PTFEシートが大幅な温度変化の下でも安定した応力緩和作用と弾性率を示すことを見出して、本発明を完成した。
【0016】
本発明のプリント配線基板は、BGAパッケージのインターポーザーとして用いられるものであり;リジッド絶縁層および多孔質PTFEシートからなる3層以上の多層シート構造を有し;当該多孔質PTFEシートが内層に配置されていることを特徴とする。
【0017】
上記多孔質PTFEシートとしては、その平均孔径が0.05〜0.5μmであるものが好適である。多層シート構造を有するプリント配線基板では層間の接着性も重要であるが、かかる平均孔径を有する多孔質PTFEシートであれば優れた層間接着性を示すことによる。
【0018】
上記多孔質PTFEシートは無機フィラーを含むものであってもよい。無機フィラーを添加することにより、当該シートの親水性、静電特性、熱伝導率などの特性を向上でき得るからである。
【0019】
本発明のボールグリッドアレイパッケージは、上記プリント配線基板をインターポーザーとして有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプリント配線基板は、応力を緩和するための多孔質PTFEを有する。よって、ICチップとマザーボートとの熱膨張係数の相違に起因するBGAパッケージ内のストレスを効果的に吸収することができ、半田ボール部への応力集中を低減できる。その結果、BGAパッケージの製造時や使用時における半田ボール部の破壊を抑制することができる。また、当該応力緩和層はプリント配線基板の内部に存在するため、本発明のBGAパッケージは既存の装置による製造が可能である。
【0021】
従って、本発明のプリント配線基板は、大幅な温度変化に関わらず効率的に製造することができ且つ安定的に使用できるものとして産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のプリント配線基板は、
ボールグリッドアレイパッケージ(BGAパッケージ)のインターポーザーとして用いられるものであり;
リジッド絶縁層および多孔質PTFEシートからなる3層以上の多層シート構造を有し;
当該多孔質PTFEシートが内層に配置されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るBGAパッケージの模式図を図3に示す。図3の通り、本発明のプリント配線基板はBGAパッケージのインターポーザーとして用いられるものであり、その内部に多孔質PTFEからなる応力緩和層を有する。当該応力緩和層によりICチップとマザーボートとの熱膨張係数の相違に起因するストレスを低減でき、半田ボール部の破壊を抑制できる。また、当該応力緩和層はプリント配線基板の内部に存在することから、本発明のBGAパッケージは既存の装置で効率的に製造することができる。
【0024】
本発明のプリント配線基板は、リジッド絶縁層と多孔質PTFEシートからなる3層以上の多層シート構造を有する。プリント配線基板は、導体層の数により、絶縁層の片面に導体層が形成されている片面板、絶縁層の両面に導体層が形成されている両面基板、および3層以上の導体層を有する多層基板に分類される。本発明で規定されている「3層以上の多層シート構造」とは、導体層の数とは関係なく、プリント配線基板を構成するリジッド絶縁層と応力緩和層の合計数が3層以上であることを意味する。またリジッド絶縁層は、プリプレグを硬化させたものなど従来の絶縁層であり且つ強度は十分であるものの応力緩和作用を有しないもの或いは応力緩和層が十分でないものをいい、その種類は特に限定されず、多孔質PTFEシートと区別するために「リジッド」の語を便宜上付したものである。よって本発明のリジッド絶縁層には、フレキシブルなものも含まれるものとする。
【0025】
また、本発明のプリント配線基板において多層シート構造を構成する多孔質PTFEシートは、多層シート構造の内層に配置されている。
【0026】
例えば、本発明のプリント配線基板におけるリジッド絶縁層と応力緩和層の組み合わせを下記に例示する。例示中、リジッド絶縁層を「PP」と略し、応力緩和層を「EL」と略する。
(1) PP−EL−PP
(2) PP−EL−PP−PP
(3) PP−EL−PP−EL−PP
(4) PP−EL−PP−PP−PP
(5) PP−PP−EL−PP−PP
【0027】
本発明は上記例示により何ら制限されるものではないが、基板の反りを低減するという観点からは対称であるものが好適である。上記例示でいえば、(1)、(3)および(5)である。なお、導体層は各リジッド絶縁層の片面または両面に形成されているか、或いは導体層が形成されていないリジッド絶縁層が存在していてもよいが、プリント配線基板の最外部の少なくとも一方には形成されている必要がある。
【0028】
2層のリジッド絶縁層を有し、多孔質PTFEからなる応力緩和層が間に挟まれている両面プリント配線基板の例を図4に示す。また、同じく2層のリジッド絶縁層を有し多孔質PTFEシートからなる応力緩和層が間に挟まれているものであるが、導体層を4層有する多層プリント配線基板の例を図5に示す。図4と図5において、導体層同士はスルーホール等により結合されていてもよい。
【0029】
本発明のプリント配線基板は、応力緩和層として多孔質PTFEシートを内層に含む。
【0030】
応力緩和層に求められる特性としては、幅広い温度範囲での低弾性、鉛フリー半田リフロー工程での高温に対する耐熱性、リジッド絶縁層を構成する熱硬化性樹脂との接着性が挙げられる。また、鉛フリー半田時においても金属腐食ガスを生じない材料が最適である。これら特性を満たす材料としては多孔質PTFEが最適である。
【0031】
弾性率に関しては、本発明においては−50℃から250℃で500MPa以下という基準が求められる。例えば、応力緩和層を構成する材料として一般的なシリコーン樹脂を用いることが考えられるが、シリコーン樹脂は低温での弾性率が高く、また、鉛フリー半田リフロー工程における240〜280℃という高温での耐熱性に劣る。さらに、半田リフロー時には金属を腐食させるシロキサンガスを発生させるという問題も有する。
【0032】
一方、多孔質PTFEシートはPTFEを延伸多孔質化したフィルムであり、23℃においては50〜200MPaという低弾性を有す。この数値は23℃におけるシリコーンの数値とほぼ同等であるが、−50℃といった低温時におけるシリコーンの弾性率は一般的に500〜2000MPa程度であるのに対し、多孔質PTFEは100〜500Mpと安定している。また、PTFEは280℃以下で極めて安定であることから、半田リフロー時においても金属を腐食させるガスを生じない。
【0033】
ところで、プリント配線基板において絶縁コア層材料として用いられるガラスエポキシの23℃における弾性率は約10000MPa程度である。よって、ICチップとマザーボードとの間の応力を緩和することができない。しかし、弾性率がガラスエポキシの100分の1以下である多孔質PTFEシートであれば、当該応力を十分に緩衝することができる。
【0034】
また、本発明の応力緩和層は、プリント配線基板の内層に存在するためリジッド絶縁層との接着性も求められる。しかしPTFEシートの接着性は一般的には著しく低いといえる。よって本発明では、PTFEシートを多孔質のものとする。多孔質構造のアンカー効果、即ち、樹脂が多孔質構造の微細孔に入り込んで機械的に接着性を高める効果が発揮されるからである。かかる効果をより確実に発揮せしめるためには、多孔質PTFEシートの平均孔径を0.05μm以上、0.5μm以下にすることが好ましく、さらに0.1μm以上、0.2μm以下にすることが好ましい。平均孔径が小さ過ぎると接着樹脂の微細孔への入り込みが難しく十分なアンカー効果が得られ難く接着強度が下がる場合がある。一方、平均孔径が大きくなり過ぎると接着強度が再び下がるおそれがある。平均孔径が大きくなり過ぎた場合に接着強度が下がるという現象は、接着界面の樹脂が浸透圧により微細孔内奥深くまで入り込み、その結果接着界面の樹脂が不足するためではないかと考えている。いずれにしろ、サブミクロンの世界において接着強度を保つためには平均孔径の制御が重要となり得る。
【0035】
一般的に、多孔質材料の孔径は最大孔径(または「最大平均孔径」と呼ぶ場合もある)または平均孔径により規定される場合が多い。この2種類の孔径の中で使用頻度が高いのは最大孔径である。その理由は、多孔質材料の平均孔径を測定する場合と比較して、最大孔径の測定は非常に簡便に測定できることによる。つまり最大孔径は、バブルポイント装置を用い、多孔質材料の片面に溶媒を入れてその片面に空気圧をかけ、溶媒中から泡が発生した際の空気圧から換算することにより測定できる。また、最初に泡が発生した部分として最大孔径を有する部分を特定することができる。しかし、接着強度に影響する孔径は最大孔径ではなく明らかに平均孔径である。その理由は、最大孔径として得た情報は最大孔径を有する場所でのみにしか該当しないが、平均孔径として得た情報は多孔質材料全体に該当するといえることによる。よって平均孔径は、接着強度に影響を与えるということができる。
【0036】
本発明においては、全ての細孔を円筒形と仮定し、孔径は直径で表すことにして細孔に対する容積分布を細孔分布計で測定し、細孔容積の中間値に対応する細孔径を平均孔径として求めた。なお、本発明では、平均孔径をポロメーター(PMI社製、製品名:Perm−Porometer 1200AE)で測定した。
【0037】
本発明の多孔質PTFEシートには無機フィラーを配合してもよい。添加する無機フィラーにより好ましい特性を付与できるからである。例えば、シリカフィラーを配合することにより親水性を向上させることができ、カーボンを配合することにより帯静電気性を低減し、不純物の付着を抑制できる。その他、グラファイトの配合により熱伝導率を向上させることができ、また、チタンにより比誘電率の数値を高めることができる。
【0038】
さらに多孔質PTFEシートは、親水性が極めて低く吸湿がほぼ皆無である。よって多孔質PTFEシートは、吸湿を著しく嫌うプリント配線基板の材料として非常に優れている。
【0039】
但し多孔質PTFEシートは親水性が低いため十分にメッキできない場合がある。よって、本発明のプリント配線基板にスルーホールを設ける場合には、通常の銅メッキ方法では多孔質PTFEシートのスルーホールには十分にメッキできないおそれがある。この場合は、潤工社製のテトラエッチなどPTFEの金属ナトリウム系の溶剤でエッチング処理したり、スルーホール内をプラズマで表面処理したり、或いはスルーホール内に導体ペーストを埋め込むといった方法でスルーホールの接続信頼性をより一層高めることが可能である。
【0040】
また、通常のウェットメッキでも十分な信頼性を得ようとする場合には、内部に親水性の無機フィラーを導入した多孔質PTFEシートを使用することで解決することができる。本発明者による知見によれば、親水性の無機フィラーとしてシリカフィラーを30質量%以上、好ましくは50質量%以上配合することにより、スルーホール内の親水性を大幅に向上させることができ、通常の銅メッキ工程でも十分な信頼性を得ることができる。
【0041】
応力緩和層としては特許文献1に開示されている接着フィルムを利用してもよい。特許文献1の接着フィルムは応力緩和層として働く多孔質PTFEシートを有し、その両面に接着樹脂層が構成されているものであり、応力緩和特性、樹脂の低フロー性、接着強度等の観点から好ましい。
【0042】
本発明のプリント配線基板を構成するリジッド絶縁層はプリプレグから形成することができる。このプリプレグのマトリックスとしては、寸法安定性と曲げ強さの観点からガラスクロス、アラミド不職布、LCP不職布が好適である。また、当該マトリックスに含浸する接着樹脂としては、半田耐熱性を有する樹脂であればどのような樹脂でも可能であるが、BT樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。また、例えばBT樹脂とエポキシ樹脂をブレンドした樹脂の使用も可能である。
【0043】
また、ポリイミドフィルムやLCPフィルム等の耐熱フィルムの両面に上記接着樹脂をコーティングしたフィルムをプリプレグとして使用することも可能である。さらに、これら耐熱フィルムを融点近辺以上でプレスすることにより、当該フィルム自体をプリプレグとして使用することも可能である。
【0044】
プリプレグ以外にも、リジッド絶縁層としてはTABやセラミックス基板を用いることが可能である。この場合、応力緩和層との接着は接着剤等により行えばよい。もちろん、プレプレグを用いる場合であっても接着剤を使用してもよい。
【0045】
リジッド絶縁層を形成するプリプレグの厚さとしては20〜150μm程度が一般的である。応力緩和特性を優先する場合の厚さは薄い方が好ましく、より具体的には50μm以下とすることが好ましい。一方曲げ強さを優先する場合の厚さは厚い方が好ましく、より具体的には100μm以上とすることが好ましい。なお、硬化後におけるリジッド絶縁層の厚さはプリプレグの厚さとほぼ同等である。
【0046】
本発明のプリント配線基板は常法により製造することができる。即ち、上述した多孔質PTFEシートとプリプレグを積層した上で熱プレスすればよい。もちろん接着剤を用いてもよい。
【0047】
この際、多孔質PTFEであればその弾性率をコントロールすることも可能である。具体的には、プレス条件により空孔率をコントロールすることができ、空孔率のコントロール、即ち密度コントロールにより、弾性率を所望の値に設定することが可能となる。
【0048】
プリプレグ上の導体層は、熱プレス前にエッチングしてもよいし熱プレス後にエッチングしてもよいが、基板内部の配線パターンは当然に熱プレス前にエッチングする必要がある。なお、配線パターンを形成する方法はエッチングに限定されず、所望の配線パターンをプリプレグに積層して接着剤や熱プレスにより固定してもよい。
【0049】
両面または多層プリント配線基板の場合、必要であればスルーホールを設けてもよい。また、実装密度を向上させたい場合には基板の少なくとも片面にビルドアップ層を設けることも可能である。
【0050】
本発明のプリント配線基板は、少なくとも2つのリジッド絶縁層を有し、応力緩和層を内層として有する。この少なくとも2つのリジッド絶縁層は、ポリイミドやLCPなどのフレキシブルな材料からなる場合、図6の通り1枚のフレキシブルなリジッド絶縁層を折り曲げて構成することができる。この場合、プリント配線基板における層間の電気的接続を極めて容易にすることができる。
【0051】
本発明のプリント配線基板の厚さに関しては特別な制限はないが、現在使用されている基板の厚さは、通常、200μmから300μm程度である。ICパッケージ加工設備の観点からも基板の厚さは通常の基板とほぼ同等であることが好ましい。よって、例えばPP−EL−PPの構成のプリント配線基板においては、PP(リジッド絶縁層)の厚さは50〜120μm程度、EL(応力緩和層)の厚さは20〜200μm程度とすることが好ましい。
【0052】
本発明のプリント配線基板の主な用途は、BGAパッケージのインターポーザーである。しかし本発明で用いる多孔質PTFEは、誘電率や誘電損失といった誘電特性に極めて優れることから基板自体も優れた誘電特性を有する。よって本発明のプリント配線基板は、アンテナ基板や高周波基板としても利用することが期待されている。
【0053】
本発明のプリント配線基板をBGAパッケージのインターポーザーとして利用する場合、BGAパッケージの製法としては常法を用いることができる。なお、プリント配線基板に搭載するICチップは通常1つであるが、複数個のICチップを搭載することも可能である。具体的には、複数個のICチップを本発明のプリント配線基板の平面方向に複合、縦方向に積層、或いは両者の組合せにより搭載することが考えられる。なお、複数のICチップを基板の平面方向と縦方向に搭載したパッケージはシステムインパッケージ(SiP)と称される。また、複数のBGAパッケージを縦方向に積層するパッケージオンパッケージ(PoP)とすることも可能である。これらSiPとPoPを複合することもできる。
【0054】
本発明のBGAパッケージは、応力緩和層を内層に含むプリント配線基板を構成要素とする。よって、ICチップとマザーボード間に生じる応力を効果的に抑制できるため、製造時や使用時における激しい温度変化下でも歩留良く製造することができ、また、安定的な使用が可能である。
【実施例】
【0055】
以下、製造例と試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
製造例1
プリプレグとして三菱ガス化学社製のGHPL−830HS(公称厚さ:100μm)、応力緩和層としてジャパンゴアテックス社製の多孔質PTFEシート(初期厚さ:200μm、平均孔径:0.10μm、空孔率:80%、目付け:84g/m3)、銅箔として三井金属社製の電解銅箔3EC−VLP(厚さ:18μm)、プレス用クッション(ヤマウチ社製、商品名:トップボードKN−42、厚さ:1.0mm)を用いて、両面銅箔基板を作製した。そして、真空プレス機の圧力を0.50MPa、1.0MPaまたは2.0MPaに設定し、熱板温度を180℃、プレス時間90分にてプレスすることによってプレス圧力のみが異なる3種類の両面銅箔基板を得た。なお、上記プレス時間には昇温および降温時間は含まれていない。即ち、積層体を180℃でプレスした時間である。また、得られた両面銅箔基板の銅箔をエッチングした。
【0057】
得られた両面銅箔基板の全体厚さ、多孔質PTFEシートの厚さ、および多孔質PTFEシートの23℃における弾性率を表1に示す。なお、多孔質PTFEシートの厚さはエッチング後の厚さからプリプレグ2枚分の厚さである200μmを引いた値である。また、多孔質PTFEシートの弾性率は原材料である多孔質PTFEシートのみを各プレス条件と同一の条件でプレスして測定した引張り弾性率である。
【0058】
【表1】

【0059】
製造例2
プリプレグとして三菱ガス化学社製のGHPL−832HS(公称厚さ:100μm)、応力緩和層としてジャパンゴアテックス社製のシリカ入り多孔質PTFEシート(厚さ:200μm、平均孔径:0.10μm、空孔率:80%、シリカ混入率:20wt%)、銅箔として三井金属社製の電荷銅箔3EC−VLP(厚さ:18μm)、プレス用クッション(ヤマウチ社製、商品名:トップボードKN−42、厚さ:1.0mm)を用い、上記製造例1と同様にして両面銅箔基板を作製した。製造例1と同様に測定した各両面銅箔基板の全体厚さ等を、表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
製造例3
三菱ガス化学株式会社製の両面銅張り基板CCL−HL830HS(厚さ100μm)を所望の配線パターンでエッチングした。2枚の当該基板の間に平均孔径が0.20μmの多孔質PTFEを応力緩和層として中心層に有している接着シート(ジャパンゴアテックス社製、商品名:FLEXIBOND BF−8028、最終厚さ:100μm)を挟み、真空プレス機でプレスすることにより製造番号7〜9の4層基板を作製した。その断面は図5に示す通りである。なお、プレス条件は、温度170℃、圧力1.0MPa、時間は90分とした。
【0062】
また、比較用として従来基板である製造番号10をあげた。当該従来基板は、三菱ガス化学株式会社製のプリプレグ(商品名:GHPL−830HS、厚さ100μm)を3枚積層し、真空プレス機でプレスすることにより得た。この時のプレス条件は、温度:170℃、圧力:2.0Mpa、プレス時間:90分とした。
【0063】
製造例1と同様に測定した各基板の全体厚さ等を表3に示す。また、Rheometoric Scientific F.E.社製の弾性率測定装置(製品名:RSA−II)を用いて測定した弾性率を表3に示す。弾性率の測定条件は、以下の通りである。
Tension Direction: Tension
Strain: プリプレグの場合は0.10%、多孔質PTFEの場合は0.20%
周波数: 1Hz
【0064】
【表3】

【0065】
製造例4
上記製造例1で製造した製造番号2の基板にワイヤーボンド用のウインドウをパンチングした。次いで、ダイアタッチ接着シート(ジャパンゴアテックス社製、商品名:単層ABSORBOND、厚さ:40μm)を介して、温度160℃、圧力1MPaで当該基板にICダイを5秒間プレスした。その後、100℃で30分間加熱し、さらに170℃で90分間加熱することにより接着剤を硬化させた。当該ICダイと基板とをワイヤーボンドで接続し、また、ワイヤーボンド用のウインドウを埋め込み樹脂で埋めた。最後に半田ボールを搭載し、図7に示すBGAパッケージを作成した。
【0066】
試験例1
製造例2で用いた多孔質PTFEシート、ガラスBT基板(三菱ガス化学社製、商品名:BT−830)、およびポリイミドフィルム(宇部興産製、商品名:ユーピレックス50S)の、−50℃、23℃および250℃における弾性率を測定した。結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
表4に示されている通り、製造例2で用いた多孔質PTFEシートの弾性率は比較材料よりも低く、鉛フリー半田リフロー工程を想定した250℃という高温下でも実際上使用可能な1MPa以上の弾性率を有していた。一方、従来技術に係るガラスBT基板とポリイミドフィルムの弾性率は、−50℃においては10GPa程度と多孔質PTFEフィルムと比較すると著しく高い。
【0069】
よって、BGAパッケージにおける応力緩和層は、多孔質PTFEフィルムで構成すべきことが明らかとなった。
【0070】
試験例2
上記製造例1において、応力緩和層として平均孔径の異なる多孔質PTFEフィルムを用い、また、プリプレグとしてエポキシプリプレグ(住友ベークライト社製、商品名:ELC−4756、厚さ:0.1mm)またはBTプリプレグ(三菱ガス化学社製)を用い、さらにプレス温度を170℃、プレス圧力を0.50MPaまたは2.0MPaにして両面銅箔基板を作製した。但し、エッチングは行わなかった。
【0071】
得られた両面銅箔基板において、応力緩和層である多孔質PTFEフィルムとプリプレグ層の間を、ピール角:90°、引き剥がし速度:50mm/分で引き剥がし、その際に要した強度を測定した。また、当該基板を2枚のベーク板に挟み、カットソウ(ヤマウチ株製、WCS−1300B)で100mm角に各3枚切り出し、各辺の切断面を実態顕微鏡(100倍)で観察することにより、多孔質PTFEフィルムとプリプレグがカット時においても確実に接着しているか否かを観察した。結果を表5〜7に示す。なお、表中の「デラミ」はデラミネーションの略であり、切断時に層間剥離が生じた状態を示す。また、正常な切断面の写真を図8と図9に、剥離が生じた切断名の写真を図10〜図12に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
表5〜7に示す結果の通り、応力緩和層である多孔質PTFEフィルムの平均孔径を0.05〜0.5μmにすることにより切断面における層間剥離を抑制できる、即ち、切断時における衝撃を十分に緩和できていることが分かる。よって、応力緩和層として平均孔径0.05〜0.5μmの多孔質PTFEフィルムを用いれば、BGAパッケージとして実用可能な接着強度が得られると考えられる。
【0076】
試験例3
応力緩和層として、シリカを25wt%含み且つ平均孔径の異なる多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス社製)を用い、また、プリプレグとしてBTプリプレグ(三菱ガス化学社製)を用いて、上記試験例4と同様に両面銅箔基板を作製した。なお、プレス時の圧力は1.0MPaとした。結果を表8に示す。
【0077】
【表8】

【0078】
表8に示す結果の通り、応力緩和層として無機フィラーを有する多孔質PTFEフィルムを用いた場合でも、その平均孔径を0.05〜0.5μmにすることにより切断面における層間剥離を抑制できた。よって、応力緩和層として平均孔径0.05〜0.5μmの無機フィラー含有多孔質PTFEフィルムを用いた場合も半田ボール部の破壊を防ぐことができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来におけるBGAパッケージの模式図である。
【図2】アンダーフィルで保護された、従来におけるBGAパッケージの模式図である。
【図3】本発明に係るBGAパッケージの模式図である。
【図4】2層のリジッド絶縁層を有し、多孔質PTFEからなる応力緩和層が間に挟まれている両面プリント配線基板の模式図である。
【図5】2層のリジッド絶縁層を有し、多孔質PTFEからなる応力緩和層が間に挟まれている多層プリント配線基板の模式図である。
【図6】2層のリジッド絶縁層を有し、多孔質PTFEからなる応力緩和層が間に挟まれている多層プリント配線基板であって、2層のリジッド絶縁層が1枚のフレキシブルフィルムで構成されているものの模式図である。
【図7】本発明に係るBGAパッケージの一態様を模式的に示す図である。
【図8】プリント配線基板の端部における、正常な切断面の写真である。
【図9】プリント配線基板の正常な切断面の中心部の写真である。
【図10】プリント配線基板の切断面において、多孔質PTFEが脱落している状態を示す写真である。
【図11】プリント配線基板の切断面において、多孔質PTFEと絶縁体層が剥離している状態を示す写真である。
【図12】プリント配線基板の正常な切断面の中心部で多孔質PTFEと絶縁体層が剥離している状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0080】
1:ICパッケージ用プリント配線基板(インターポーザー)、 2:接着層、 3:ICチップ、 4:封止樹脂、 5:半田ボール、 6:マザーボード、 7:耐熱樹脂(アンダーフィル)、 8:リジッド絶縁層、 9:多孔質PTFEからなる応力緩和層、 10:導体層、 11:ワイヤーボンド、 12:埋め込み樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールグリッドアレイパッケージのインターポーザーとして用いられるものであり;
リジッド絶縁層および多孔質PTFEシートからなる3層以上の多層シート構造を有し;
当該多孔質PTFEシートが内層に配置されていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
多孔質PTFEシートの平均孔径が0.05〜0.5μmである請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
多孔質PTFEシートが無機フィラーを含むものである請求項1または2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線基板をインターポーザーとして有するボールグリッドアレイパッケージ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−244325(P2008−244325A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85540(P2007−85540)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)