説明

プリント配線基板

【課題】リターンパスが確保され、しかも位相統一精度が高い、電子部品が実装されたプリント配線基板を提供する。
【解決手段】抵抗10の端子対13にあって、一方の端子11に短路表層導電路17aを導通させ、他方の端子11に長路表層導電路17bを導通させた。しかも、隣り合う表層導電路17にあっては、短路表層導電路17aと長路表層導電路17bとが隣り合うように各々配置し、隣り合うビア15を、千鳥状となるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装用基板に実装されてなるプリント配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品と、該電子部品が実装された実装用基板とからなるプリント配線基板はよく知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、前記電子部品は、受動部品であっても良く、該受動部品には、単一受動部品(チップ部品)やアレイ部品が含まれる。さらに該受動部品の例としては、抵抗、コンデンサ等が挙げられる。
具体的に説明すると、従来のプリント配線基板a1は、図5に示すように、実装用基板bと該実装用基板bに実装されている抵抗c(受動部品)等で構成されている。ここで、該実装用基板bの表面には複数のパッドが形成され、該パッドが前記抵抗cの実装面に形成された複数の端子dと半田を介して各々接続されている。なお、該抵抗cの前記端子dは、入力信号端子d1と出力信号端子d2とで構成されており、図5に示すように、入力信号端子d1および出力信号端子d2によって一組(一対)の端子対Dが構成されている。そして、該端子対Dが一列に複数配置されている。また、実装用基板bに形成されている各パッドは、当該パッドから所定距離だけ離間して配設された複数のビアeと、当該実装用基板bの表面に形成された表層導電路fを介してそれぞれ導通している。また、各ビアeは、実装用基板b内に設けられた内層導電路gとも導通している。
【0003】
かかる構成にあって、前記抵抗cに信号が伝送される際の経路は、まず入力信号端子d1側のビアe、該ビアeと導通する表層導電路f、該入力信号端子d1と通過し、それから対応する出力信号端子d2、該出力信号端子d2と導通する表層導電路f、該出力信号端子d2側のビアe、該出力信号端子d2側の内層導電路gと通過していく。なお、図5に示す構成は、各端子対Dにあって、表層導電路fの路長の総和Xがすべて等しいため、各端子対Dごとで信号の位相が統一されている。このため、抵抗c(受動部品)において各Bitで信号の位相が統一された回路設計となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−317848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示す構成は、ビアeが一直線状に横並びとなって当該実装用基板bにおいてビアe同士が近接するため、いわゆる内層スリットが形成されて当該実装用基板bのリターンパスが大幅に遮断される問題がある。そこで、図6に示すように、前記ビアeが、千鳥状に配置され、該ビアeが一直線状に横並びとなることを防止しているプリント配線基板a2も提案されている。さらに述べれば、図5に示す構成は、ビアe同士の離間距離が、表層導電路fが1本通る距離より狭く設定されているが、これに対して図6に示す構成は、ビアe同士の離間距離が、表層導電路fが1本通る幅に設定されている
【0006】
しかしながら、図6に示す構成は、抵抗c(受動部品)において各Bitで信号の位相を統一すべき回路設計の場合に、互いに隣り合う信号伝送経路で信号伝播遅延時間に差が生じ、問題となる場合がある。具体的には、図6で1−8番の端子(いわゆる1−8Pin)を伝送する信号と、4−5番の端子(いわゆる4−5Pin)を伝送する信号とでは、表層導電路fの路長の総和が異なるため(X≠Y)、表層導電路fと内層導電路gの信号の伝播遅延速度が異なることにより伝播遅延差が生じる。このことは、信号の位相を統一する設計としては、位相統一精度が低下して問題となる。
【0007】
そこで本発明は、いわゆる内層スリットの発生を防止しつつ、しかも位相統一精度を向上させ得るプリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のパッドおよび複数のビアを有し、それぞれの該パッドが該ビアに表層導電路を介して接続された実装用基板と、複数の端子を有し、該端子が前記パッドに半田を介して接続された一または複数の電子部品とを備えたプリント配線基板であって、前記一または複数の電子部品の前記端子は、入力信号端子および出力信号端子からなり、該入力信号端子および該出力信号端子で端子対が構成され、前記端子対には、前記入力信号端子および前記出力信号端子の間の中心を通る基準軸が設定され、当該端子対が該基準軸方向に並んで複数配置されていると共に、前記表層導電路は、前記端子と前記ビアとの間で、前記基準軸と直交する方向に形成され、前記端子対の一方の前記端子に前記半田および前記パッドを介して接続された前記表層導電路は、所定の路長に設定された短路表層導電路とされ、前記端子対の他方の前記端子に前記半田および前記パッドを介して接続された前記表層導電路は、前記短路表層導電路の路長より長く設定された長路表層導電路とされ、かつ、前記基準軸方向で隣り合う前記表層導電路にあっては、前記短路表層導電路と前記長路表層導電路とが交互に隣り合うように各々配置され、前記短路表層導電路の路長と前記長路表層導電路の路長の和は、すべての該端子対で等しいことを特徴とするプリント配線基板である。また、前記電子部品は、受動部品であることが望ましい。
【0009】
かかる構成にあっては、前記の各端子対において、表層導電路の路長の総和は、短路表層導電路と長路表層導電路との和となるため、端子対間で表層導電路の総路長に差が生じない。このため、当該電子部品(受動部品)に信号が伝送される場合において、端子対ごとで伝播遅延に差が生まれず、位相が統一されることとなる。しかも、前記基準軸方向で隣り合うビアにあっては、該基準軸からの離間距離が互いに異なる位置で配置されるため、各ビアが千鳥状に配されることとなって、当該実装用基板にはいわゆる内層スリットが形成されず、ビアとビアとの間に内層銅箔が十分に確保されて十分なリターンパスが形成され得る。
【0010】
なお、上記構成にあっては、隣り合う前記ビア同士の離間距離が、少なくとも前記表層導電路の路幅より広くなるように設定されている構成が望ましい。かかる構成とすると、より一層確実にリターンパスを形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプリント配線基板は、いわゆる内層スリットが発生しないためリターンパスが確保されると共に、端子対間で表層導電路の総路長に差がないため、電子部品に信号が伝送されたときにも端子対間で伝播遅延に差がでない優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るプリント配線基板1の実施例を説明する。
図1等に示すように、プリント配線基板1は、薄板形状の実装用基板2と、該実装用基板2の表面2Aに実装されている電子部品としての抵抗10とを有する。ここで、前記電子部品は、受動部品であり、該受動部品には、単一受動部品(チップ部品)やアレイ部品が含まれる。また、該受動部品としては、抵抗10のほかに、コンデンサ等であってもよい。
【0013】
前記抵抗10は、図1に示すように、外形が平面視長方形で薄板形状であり、その実装面となる裏面10A(図2参照)には、導電材料からなる複数の端子11が整列して形成されている。具体的には、前記端子11は、1番から8番までの端子番号がそれぞれ付されている。ここで、前記端子11は、入力信号端子11aと出力信号端子11bとで構成され、図1に示すように、前記入力信号端子11a(例えば1Pin)および前記出力信号端子11b(例えば8Pin)により一組の端子対13が構成されている。そして、該端子対13が、前記入力信号端子11aおよび前記出力信号端子11bの間の中心を通る基準軸Lを設定した場合に該基準軸L方向に整列して複数並んでいる。なお、前記実装用基板2および前記抵抗10は、公知品が好適に採用される。
【0014】
また、図2に示すように、前記実装用基板2上には、前記した抵抗10の各端子11に半田を介して接続されたパッド12が複数形成されている。ここで、該パッド12は、前記抵抗10の各端子11に対応して配置されている。
【0015】
また、図1等に示すように、前記プリント配線基板1にあって、抵抗10の各端子11から前記基準軸Lと直交する方向へ離間した位置に、導電材料からなるビア15が複数配設されている。さらに詳述すると、該ビア15は、図2に示すように、上端が実装用基板2の表面2Aに位置して露出し、下端は当該実装用基板2の内部または下端に位置している。そして、当該ビア15の前記上端は、実装用基板2の表面2Aに形成された表層導電路17を介して、各パッド12と導通している。これに対し、当該ビア15の中腹または下端は、当該実装用基板2の内部に設けられた内層導電路19と各々導通している。なお、本実施例にあって、前記の表層導電路17は、前記の各パッド12からビア15に向かって最短距離で直線状に形成されており、前記パッド12と前記ビア15との間で前記基準軸Lと直交する方向に形成されている。なお、上記ビア15は、特定の層間のみを接続するIVH(Interstitial Via Hole)でもよいし、実装用基板2を貫通するスルーホールビアであっても勿論よい。
【0016】
かかる構成にあって、入力信号は、一側(例えば図1において下側)に配された内層導電路19、該内層導電路19に導通するビア15、該ビア15に導通する表層導電路17の順に伝送され、該表層導電路17に導通するパッド12を介して抵抗10の入力信号端子11aに入力される。さらに、該信号は、該入力信号端子11aに対応する出力信号端子11bから出力され、該出力信号は、パッド12を介して表層導電路17、該表層導電路17に導通するビア15、該ビア15に導通する内層導電路19の順に伝送される。なお、図1において、前記内層導電路19は、一部省略して示している。
【0017】
また、図1〜3に示すように、前記端子対13の一方の端子11に導通する表層導電路17は、所定の路長αに設定された短路表層導電路17aとされ、他方の端子11に導通する表層導電路17は、路長が前記短路表層導電路17aの路長αより長い路長βとされた長路表層導電路17bとされている。
【0018】
具体的には、1番の入力信号端子11a(いわゆる1Pin)には、長路表層導電路17bが導通し、1Pinに対応する8番の出力信号端子11b(いわゆる8Pin)には、短路表層導電路17aが導通している。
【0019】
さらに、前記基準軸L方向で隣り合う表層導電路17にあっては、短路表層導電路17aと長路表層導電路17bとが隣り合うように各々配置されている。
【0020】
具体的には、図3等に示すように、1Pinと導通する表層導電路17は上述のように長路表層導電路17bであるところ、その隣の2Pinと導通する表層導電路17は、短路表層導電路17aとされる。さらに、その隣の3Pinと導通する表層導電路17は、長路表層導電路17bとされる。また、当然に、8Pinに導通する短路表層導電路17aに隣接する7Pinと導通する表層導電路17は、長路表層導電路17bとされる。
【0021】
上記構成とすると、前記基準軸L方向で隣り合うビア15にあっては、前記基準軸Lからの離間距離が互いに異なることとなる。したがって、実装用基板2上における各ビア15の配置が、千鳥状となる。例えば、図3等に示すように、1Pinと導通するビア15は、該1Pinと長距離で離間し、2Pinと導通するビア15は、該2Pinと短距離で離間し、3Pinと導通するビア15は、該3Pinと長距離で離間することとなる。さらに、隣り合う前記ビア15同士の離間距離が、少なくとも前記表層導電路17の路幅より広くなるように設定され、ビア15同士の間に表層導電路17が1本通るような配置とされている。
【0022】
これまでに述べた構成とすることにより、全ての端子対13について、表層導電路17の総路長が、上記短路表層導電路17aの路長αと上記長路表層導電路17bの路長βとの和で構成されるため、各端子対13間(換言すれば各Bit間)で表層導電路17の総路長に差が生じない(図3においてX=X)。このため、当該抵抗10を信号が伝送される場合において、各Bitごとで伝播遅延に差がでない。したがって、信号の位相を統一すべき回路設計の場合に、位相が統一された信号伝送が可能となる。しかも、ビア15は千鳥状に配されているため、当該実装用基板2にいわゆる内層スリットが形成されない。このため、ビア15とビア15との間に内層銅箔が十分に確保でき、十分なリターンパス(図4a矢印参照)が確保されたプリント配線基板1が提供され得る。補足説明すると、ビアが横一列状に配置されると、図4bに示すように、リターンパスが十分に確保できない。
【0023】
なお、本発明のプリント配線基板1は、少なくとも端子11の配列が上記条件で形成されていればよく、受動部品は、単数であってもよいし、複数個が近接して並列に並べられていてもよい。さらに述べると、例えば8端子の受動部品が単一で用いられてもよいし、8端子の受動部品が複数用いられてもよい。
【0024】
上記した端子11、パッド12、および導電路17,19は、公知の導電性材料により構成され、公知のスクリーン印刷等によって形成される。また、本発明のプリント配線基板1は、これまでに述べた実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜変更することは勿論可能である。
【0025】
例えば、前記した実施例においては、8端子の受動部品を用いたものを示したが、本発明は、8端子の受動部品に限られるわけではなく、端子数が複数(2端子以上)である電子部品であれば適用可能である。このため、単一のチップ部品(入力信号端子が1つ、出力信号端子が1つ)を複数用いたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】プリント配線基板1の平面図である。
【図2】プリント配線基板1の縦断側面図である。
【図3】表層導電路17の路長について説明する説明図である。
【図4】a)はリターンパスが確保できるプリント配線基板1を示す拡大平面図であり、b)はリターンパスが遮断されるプリント配線基板の拡大平面図である。
【図5】従来のプリント配線基板a1の平面図である。
【図6】従来のプリント配線基板a2の平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 プリント配線基板
2 実装用基板
2A 実装用基板の表面
10 抵抗(受動部品)
11 端子
11a 入力信号端子
11b 出力信号端子
12 パッド
13 端子対
15 ビア
17 表層導電路
17a 短路表層導電路
17b 長路表層導電路
L 基準軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパッドおよび複数のビアを有し、それぞれの該パッドが該ビアに表層導電路を介して接続された実装用基板と、
複数の端子を有し、該端子が前記パッドに半田を介して接続された一または複数の電子部品とを備えたプリント配線基板であって、
前記一または複数の電子部品の前記端子は、入力信号端子および出力信号端子からなり、該入力信号端子および該出力信号端子で端子対が構成され、
前記端子対には、前記入力信号端子および前記出力信号端子の間の中心を通る基準軸が設定され、当該端子対が該基準軸方向に並んで複数配置されていると共に、
前記表層導電路は、前記端子と前記ビアとの間で、前記基準軸と直交する方向に形成され、
前記端子対の一方の前記端子に前記半田および前記パッドを介して接続された前記表層導電路は、所定の路長に設定された短路表層導電路とされ、
前記端子対の他方の前記端子に前記半田および前記パッドを介して接続された前記表層導電路は、前記短路表層導電路の路長より長く設定された長路表層導電路とされ、
かつ、前記基準軸方向で隣り合う前記表層導電路にあっては、前記短路表層導電路と前記長路表層導電路とが交互に隣り合うように各々配置され、
前記短路表層導電路の路長と前記長路表層導電路の路長の和は、すべての該端子対で等しいことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記電子部品は、受動部品であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板。
【請求項3】
隣り合う前記ビア同士の離間距離が、少なくとも前記表層導電路の路幅より広くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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