説明

プリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は一種の化学成分で臭素低含量ポリオキサゾリドン(Polyoxazolidone)のプレポリマー(Prepolymer)と硬化剤(Curing agent)とを混合してなり、これを用いて高ガラス転移温度をもつプリント配線板の生産に用いる材料である。この材料は一般のガラスエポキシ積層板より耐熱性、熱膨張率(Z軸)が低く、高温接着性が高いという特性をもっている。この臭素低含量ポリオキサゾリドンのプレポリマーは、二級ジアミンで変性した臭素化エポキシ樹脂とポリイソシアネート樹脂とを化合させてなるものである。
〔従来の技術〕
従来の方法によれば、多官能エポキシ樹脂は高ガラス転移温度(Tgと略称)をもつプリント配線板の製作に用いることができる。しかしエポキシ樹脂は硬化状況下において脆弱性や耐火性不良などの問題点を有する。
〔発明が解決しようとする問題点〕
前記の欠点を補足する為に、二官能臭酸化樹脂を加えて、多官能エポキシ樹脂が硬化状態下で強度と耐火性を増加させることができる。しかしこのような二官能臭酸化樹脂は樹脂のTg値を著しく低下させてしまう。本発明は一種のすでに変性した臭素低含量エポキシ樹脂を利用し、適当に硬化剤を加えて、高Tg値の要求を果たし、かつ耐火性と脆弱性の問題を改善して、大いに経済価値を向上させるものである。
一般に使用するFR4樹脂のTg値は、約110〜130℃で、含臭量が22%前後(ガラス布を含まない)であるので、どうしても多官能基エポキシ樹脂を加えてそのTg値を向上させなければならない。しかしこうすると製品がたいへん脆くなり、かつこの樹脂は一種の非含臭素化学品であるので、耐火性が低いという問題が発生する。ある文献資料によれば、ポリイソシアヌレート(Polyisocyanurate)は一種の高耐熱および耐火の材料であるが、その脆弱性のためにB−stage含浸材(Prepreg)にすることができないので、プリント配線板の生産には滅多に使用することがない。
例えば、特開昭53−30697号公報と特開昭62−74649号公報で述べているのを参照してみると、ポリオキサゾリドンはすべてエポキシ樹脂の脆弱性改良に利用されており、その生産はポリエポキシ樹脂とポリイソシアネートを加熱した後に熱硬化性樹脂に化合されており、そこでポリオキサアゾリドンはプリント配線板の製造過程において、安定したB−stage含浸材の生産に適合しないものである。
又、特開昭57−3815号公報を参照してみると、そのなかでエポキシ樹脂中の水酸基(Hydroxyl group=ヒドロキシル基)はイソシアネート基が化合してポリウレタン樹脂(Polyurethane resin)にならないように防止するのに用いられ、高温硬化を経てオキサゾリドン構造をもつ耐熱樹脂になる。但しこの材料には一つの主要な欠点がある。即ちその製造過程で長い圧縮時間、及びその高粘度の液体含浸材を要し、その生産を困難にしている。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、一種の臭素低含量ポリオキサゾリドンプレポリマーを合成し、商業用の硬化剤と溶剤を添加して、一種の安定貯蔵、長期適用できるB−stage含浸材を製造し、これを多層プリント配線板の生産に用いる。本発明は伝統的に使用されてきたFR−4のTg値、耐火性と脆弱性という常時の問題を改良しただけではなく、更にポリオキサゾリドンとポリイソシアヌレートの生産と貯蔵の困難を解決しており、この特典が本発明の組成物の化合過程の優れた点でもある。
本発明の組成物は、非常に良好な電気的特性、粘着力と硬さをもつばかりではなく、且つ極めて高い耐熱、耐湿、耐火性および生産性をもち、本発明をして多層プリント配線板を製造する最良の材料にしている。
〔最良実施例と詳細な説明〕
本発明に使用する基本原料には次のものを含む:(a)臭素化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂(b)ポリイソシアネート(c)二級ジアミン(d)環化触媒(e)硬化剤本発明の組成物の化合過程と合成成分を次に詳しく述べる。
(1)臭素化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂と二級ジアミンを三級アミン塩を触媒にして100〜150℃の温度の下で1〜5時間作用させる。その中、二級ジアミンとエポキシ基の当量比は0.01〜0.5であることが好ましい。この作用後に得られた変性含臭エポキシ樹脂は透明で淡黄色の固体である。
(2)130〜160℃の温度の中にポリイソシアネートを加えて、既に過程(1)で得られた変性エポキシ樹脂と3〜6時間作用させる。その中イソシアネート基とエポキシ基の当量比は0.25〜0.8で;環化触媒の重量比は1〜0.01%;水酸基と変性エポキシ樹脂内のイソシアネート基とは約0.1〜0.5であることが好ましい。作用完成後にこれを冷却すると、琥珀色固体樹脂が形成される。
(3)過程(2)で取得した琥珀色含臭素固体樹脂を近似の溶剤に溶かし、しかる後に琥珀色含臭素固体樹脂との当量比が0.85〜1.0である硬化剤を添加し、良好な貯蔵安定特性をもつワニス(Varnish)が得られる。
本発明で採用する典型的な原料の一例を挙げて詳しく述べてみる。
(a)本発明で使用する臭素化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂は下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、および一般式(IV)から構成される群から選択されることが好ましい。


式中、R:1〜4ケのカーボンアルキル基R1:H,Br n=0〜2 (I)
エポキシ当量:150〜575

式中、R1=H、CH3 R2=H、Br n=1〜4エポキシ当重量:150〜350



(b)本発明で採用するポリイソシアネート樹脂は下記一般式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、および(X)から構成される群から選択されることが好ましい。












(c)本発明で採用する二級ジアミンは下記一般式(XI)、(XII)、および(XIII)から構成される群から選択されることが好ましい。


式中、R1、R2=H、CH3、C2H5、C6H5



(d)本発明で採用する環化触媒は次のものから選ばれることが好ましい。
(1)三級アミン塩(2)三級アルコキシド(酸塩)
(4)四級アミン塩(e)本発明で採用する硬化剤は次のものから選ばれることが好ましい。
(1)芳香族のジアミンH2N−R−NH2

(2)ジシアンジアミド(dicyandiamides)
(3)芳香族のポリカルボン酸無水物(dianhydrides)
(4)ポリカルボン酸(Polycarboxylic acid)
以下の実験で示すように、従来の技術のTg=130℃に比べて、本発明の組成物はTgが180℃にまで向上している。またTgの増加と同時に高度の粘着力を維持しており、170℃のテスト温度において従来の技術に比べほとんど二倍も高くなっている。さらに本発明の樹脂は、Z軸膨張係数が240であり従来の技術の350に比べて大きく低下している。
したがって製造した多層プリント配線板集積層材料樹脂に、よい安定性、品質安定性をもたせ、並びに容易に加工できる長所をもたせることができる。また本発明の組成において臭素の含量を5%以内に制御して、UL−94の耐火基準にマッチさせ、かつ臭素の含量が低いことにより、臭素の分解を減少するので組成全体の耐熱性を向上させることができる。特に一般の多層プリント配線板集積樹脂材料の製造において、多層プレス合せの過程に適合する為に、樹脂は基本的にB−stageの含浸状態を要する。従来知られている樹脂、例えば特開昭53−30697号公報と特開昭62−74649号公報におけるポリイソシアヌレートは、B−stageの含浸状態に達成しにくいものであるか、またはB−stage含浸樹脂の安定性がよくないものである。
本発明の組成物をみると、より高い粘着力と低い熱膨張係数をもつばかりでなく、更に非常に安定したB−stage含浸状態をもっているので、多層プリント配線板集積層の製造に適した樹脂材料である。
以上述べたのを総合してみると、本発明は二級ジアミンと臭素化エポキシ樹脂の反応により数ケの水酸基を発生して、変性エポキシ樹脂を形成し、この変性エポキシ樹脂をポリイソシアネートと環化触媒と反応させ、更に硬化剤を混合することによって得られるものであり、高ガラス移転温度、低脆弱性、高粘着力、低膨張係数と加工容易性を有するB−stage含浸集積層樹脂材料を構成し、これにより多層プリント配線板を生産することができるので、本発明は確実に産業上の利用価値をもつ。
本発明の実施例1道爾化学会社のエポキシ樹脂(DER322)を340gとり、更にエポキシ樹脂(DER542)を179gとって、25gのジメチルヒダントイン(5,5−dimethyl hydantoin)と0.2gのN,N−ジメチルベンジルアミン(N,N−dimethyl benzylamine)を混合し、140℃まで加熱して、二時間後に更に160gのジフェニルメタンジイソシアネート(diphenyl methane−4,4 diisocyanate=MD1)と0.7gの臭化テトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium bromide)を添加して150℃まで加熱し、三時間保持して、冷却後に一当量値を486gの琥珀色樹脂にする。しかる後、486gの前記反応物に165gのジメチルホルムアミド(N,N−dimethyl formamide=DMF)を添加して、溶解後に更に370gのアセトン(acetone)及びジアミンジフェニルスルホン(diamine diphenyl sulfone)を添加し、5〜10分間混合撹拌すると、固体成分が50%消失した樹脂が得られ、7628のガラス布で処理して、B−stage含浸材料を形成し、しかる後に180℃加圧力250psiで1.5時間維持すれば、厚さ1.6mmの銅/含浸材/銅の積層板が得られ、その特性は表1で示す通りである。
本発明の実施例2道爾化学会社のエポキシ樹脂(DER331)380gとエポキシ樹脂(DER542)120g,および日本の葯化フェノリックエポキシ樹脂(XOX NIPPN Phenolic epoxy resin)BREN−S60gを120gのDMFに溶かし、更に19gのバルビツル酸(即ちマロニル尿素、barbituric acid=malonylurea)を添加し、145℃で二時間作用してから、更に126gのTDIと0.4gのヘキサメチレンテトラアミン(hexamethlene tetramine=hexamine)を添加して150℃内で三時間反応し、冷却後に一種の琥珀色で、耐火耐熱、それに当量470をもつ粘着液体が得られる。更に480gのアセトン、120gのDMFおよび26gのジシアンジアミド(dicyandiamide)を添加して一時間撹拌すると、固体含量を51%消失した樹脂を形成し、7628のガラス布処理を経てB−stage含浸材となり、180℃、250psiで1.5時間加圧すれば、厚さ1.6mmの銅/含浸材/銅の積層板(その銅は1オンス)が得られ、その特性は表1で示す通りである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】臭素化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂に二級ジアミンを加え、100〜150℃、1〜5時間で反応させ、含水酸基変性エポキシ樹脂を形成し、さらにポリイソシアネート樹脂と環化触媒を該変性エポキシ樹脂に添加し、130〜160℃、3〜6時間維持して、オキサゾリドン環とウレタン構造を含む琥珀色エポキシ樹脂に形成した後、該琥珀色エポキシ樹脂を溶剤に溶かし硬化剤を加えて得られたプリント配線板用臭素低含量高耐熱性樹脂組成物。
【請求項2】前記二級ジアミンと前記エポキシ樹脂の当量比が0.01〜0.5であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。
【請求項3】前記イソシアネート基と前記エポキシ基の当量比が0.25〜0.8であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。
【請求項4】前記変性エポキシ樹脂および前記ポリイソシアネート樹脂に対する前記環化触媒の重量百分比が0.01〜1%であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。
【請求項5】前記臭素化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂は下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、および一般式(IV)から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。


式中、R:1〜4ケのカーボンアルキル基R1:H,Br n=0〜2 (I)
エポキシ当量:150〜575

式中、R1=H、CH3 R2=H、Br n=4エポキシ当重量:150〜350



【請求項6】前記ポリイソシアネート樹脂は下記一般式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、および(X)から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。












【請求項7】前記二級ジアミンは下記一般式(XI)、(XII)、および(XIII)から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。


式中、R1、R2=H、CH3、C2H5、C6H5

式中、R1、R2=H、CH3、C2H5、C6H5

【請求項8】前記環化触媒は三級ジアミン、三級アルコキシド、および四級アミン塩から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。
【請求項9】前記硬化剤が、(1)化学式NH2RNH2で表され、式中Rが下記のものから選択されるジアミン

(2)ジシアンジアミド(dicyandiamides)
(3)二無水物(dianhydrides)
(4)ポリカルボン酸(Polycarboxylic acid)
から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用臭素低含量耐熱性樹脂組成物。

【公告番号】特公平7−86135
【公告日】平成7年(1995)9月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−125249
【出願日】平成2年(1990)5月15日
【公開番号】特開平4−23821
【公開日】平成4年(1992)1月28日
【出願人】(999999999)インダストリアル テクノロジィ リサーチ インスティテュート
【参考文献】
【文献】特開昭61−181816(JP,A)
【文献】特開昭60−60126(JP,A)
【文献】特開昭53−30697(JP,A)
【文献】特開昭62−74649(JP,A)
【文献】特開昭57−3815(JP,A)